(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051612
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】設備点検評価装置、還元費算出方法および還元費算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240404BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157873
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】衣川 英明
(72)【発明者】
【氏名】熊野 和也
(72)【発明者】
【氏名】井筒 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 文聞
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】設備所有者による適切な設備保全業務を支援することが可能な設備点検評価装置、還元費算出方法および還元費算出プログラムを提供する。
【解決手段】設備点検評価装置10は、入力受付部11と、点検率算出部13と、還元費算出部15と、を備えている。入力受付部11は、設備の日常点検情報D1の入力を受け付ける。点検率算出部13は、入力受付部11において入力された日常点検情報D1に基づいて、設備を所有する設備所有者による設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する。還元費算出部15は、入力受付部11において入力された日常点検情報D1と、点検率算出部13において算出された点検率と、に基づいて、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の日常点検情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部において入力された前記日常点検情報に基づいて、前記設備を所有する設備所有者による前記設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する点検率算出部と、
前記入力受付部において入力された前記日常点検情報と、前記点検率算出部において算出された前記点検率と、に基づいて、前記設備所有者に前記設備の管理費用を還元する還元費を算出する還元費算出部と、
を備えている設備点検評価装置。
【請求項2】
前記点検率算出部は、前記設備所有者による前記日常巡視が前記入力受付部において入力された前記日常点検情報に含まれる実施スケジュールに記録された巡視日に実際に実施された割合を、前記日常巡視の実施率として算出する実施率算出部を、有している、
請求項1に記載の設備点検評価装置。
【請求項3】
前記点検率算出部は、前記入力受付部において入力された前記日常点検情報に含まれる日常巡視点検表に含まれる全体の項目数に対して、前記日常巡視後に前記設備所有者によって記入された前記項目数の割合を、点検項目の記入率として算出する記入率算出部を、さらに有している、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項4】
前記点検率算出部は、前記設備所有者による前記日常巡視が前記入力受付部において入力された前記日常点検情報に含まれる実施スケジュールに記録された巡視日に前記日常巡視が実施された割合を示す前記日常巡視の実施率と、前記入力受付部において入力された前記日常点検情報に含まれる日常巡視点検表に含まれる全体の項目数に対して前記日常巡視後に前記設備所有者によって記入された前記項目数の割合を示す点検項目の記入率と、の乗算に基づいて、前記点検率を算出する、
請求項1に記載の設備点検評価装置。
【請求項5】
前記還元費算出部は、前記点検率と、前記日常巡視の巡視結果を参照して作成される評価内容に基づく補正値と、前記日常巡視の前記巡視結果を参照して作成される評点に基づく補正単価と、所定の条件に基づいて設定される還元係数と、の乗算に基づいて、前記還元費を算出する、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項6】
前記還元係数は、前記設備所有者が契約する契約期間および契約規模、前記日常巡視の前記巡視結果の優劣性、前記設備の老朽度を参考にして設定される、
請求項5に記載の設備点検評価装置。
【請求項7】
前記入力受付部は、前記日常巡視を行う日程が記録された前記実施スケジュールの入力を受け付ける、
請求項2に記載の設備点検評価装置。
【請求項8】
前記入力受付部は、前記日常巡視における点検項目が含まれる日常巡視点検表の入力を受け付ける、
請求項3に記載の設備点検評価装置。
【請求項9】
前記入力受付部は、前記設備の前記管理費用を還元する前記還元費を算出するために用いられる評点補正テーブルの入力を受け付ける、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項10】
前記入力受付部は、前記還元費算出部が、前記還元費の算出を開始するための評価指示の入力を受け付ける、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項11】
前記日常点検情報を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項12】
前記点検率算出部は、前記設備所有者が契約する契約期間の中で、前記契約期間の開始日から満了日までの期間で、所定の日数を判定期間として設定する、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項13】
前記還元費算出部は、前記設備所有者の契約更新時に前回評価の見直しを行い、見直し後の料金を次回料金として設定する、
請求項1または2に記載の設備点検評価装置。
【請求項14】
設備の日常点検情報の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップにおいて入力された前記日常点検情報に基づいて、前記設備を所有する設備所有者による前記設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する点検率算出ステップと、
前記入力受付ステップにおいて入力された前記日常点検情報と、前記点検率算出ステップにおいて算出された前記点検率と、に基づいて、前記設備所有者に前記設備の管理費用を還元する還元費を算出する還元費算出ステップと、
を備えている還元費算出方法。
【請求項15】
設備の日常点検情報の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記入力受付ステップにおいて入力された前記日常点検情報に基づいて、前記設備を所有する設備所有者による前記設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する点検率算出ステップと、
前記入力受付ステップにおいて入力された前記日常点検情報と、前記点検率算出ステップにおいて算出された前記点検率と、に基づいて、前記設備所有者に前記設備の管理費用を還元する還元費を算出する還元費算出ステップと、
を備えている還元費算出方法をコンピュータに実行させる還元費算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備所有者による設備の保全業務を評価する設備点検評価装置、還元費算出方法および還元費算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自家用電気工作物等の設備に関しては、設備の安全性を高く保つために複数の点検項目について定期的な点検作業を行うことが義務付けられている。また、このような設備の保安上のリスクを低減させるために、保守管理を支援するための装置が種々考案されている。
例えば、特許文献1には、管理対象物である各設備の設備情報および点検情報に基づいて算出される将来における各設備の故障発生確率と、各設備が配置されたエリアに関する情報に基づいて算出される各設備の故障時における影響度と、を用いて、将来におけるリスク予測値をエリアごとに予測し、当該リスク予測値が閾値よりも大きいと判定された場合には、当該リスク予測値のエリアに配置された全ての設備または一部の設備を、リスクベースメンテナンスの対象設備として選定する設備保守管理装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の設備保守管理装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された設備保守管理装置では、将来の設備の故障発生確率に応じた点検優先対象を選定するため、設備所有者は設備保全業務を容易に行うことができる。
【0005】
しかし、このような装置構成では、設備所有者による設備保全業務が適切に行われているかどうかを判断することはできない。
また、設備を長期的に保護するためには、設備所有者による設備保全業務が適切に行われていることが必要である。
これらを考慮すると、設備保全業務には、改善の余地がある。
【0006】
本発明の課題は、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することが可能な設備点検評価装置、還元費算出方法および還元費算出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る設備点検評価装置は、入力受付部と、点検率算出部と、還元費算出部と、を備えている。入力受付部は、設備の日常点検情報の入力を受け付ける。点検率算出部は、入力受付部において入力された日常点検情報に基づいて、設備を所有する設備所有者による設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する。還元費算出部は、入力受付部において入力された日常点検情報と、点検率算出部において算出された点検率と、に基づいて、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0008】
ここでは、設備の日常点検情報に基づいて算出された設備所有者による日常巡視の実施度合いを示す点検率を用いて設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
ここで、日常点検情報とは、例えば、設備所有者が設備の点検を行う日程、点検対象となる設備、当該設備の点検項目、点検を適切に行ったかどうかを把握するためのチェックリスト等が含まれる。
【0009】
日常巡視とは、例えば、保安規定に相当する社内規程等に基づいて、設備所有者によって行われる設備の定期的な保守点検である。また、日常巡視は、月ごとに実施される月次点検とは異なり、毎日実施されてもよい。
点検率とは、例えば、実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値であり、日常点検情報に基づいて算出される。ここで、点検率が高い場合は、保全リスクが低減され、点検率が低い場合は、保全リスクが高まると考えられる。
【0010】
管理費用とは、例えば、外部保安事業者への点検委託費用、固定資産として購入した設備の減価償却費用、設備の修理費用、設備の清掃費用、設備設置個所の警備費用、設備管理に伴う人件費、設備の関連法令に遵守した点検費用等が含まれる。また、設備の設置個所に依って老朽度も異なってくるため、管理費用は、地域ごとに調整されてもよい。例えば、塩害地域に設置された設備は、設備劣化の進行度合いが早まることが考えられるため、管理費用が高く設定される等の調整がされてもよい。
【0011】
還元費とは、例えば、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を、設備所有者に還元するための金額として表したものである。
これにより、設備所有者による設備保全業務を、点検率を用いて適切に評価した結果に基づいて、設備の管理費用が還元費として還元することで、設備所有者の設備保全における当事者意識を高めることにつながる。このため、設備所有者による積極的な日常巡視を促すことができる。
この結果、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【0012】
第2の発明に係る設備点検評価装置は、第1の発明に係る設備点検評価装置であって、点検率算出部は、設備所有者による日常巡視が入力受付部において入力された日常点検情報に含まれる実施スケジュールに記録された巡視日に実際に実施された割合を、日常巡視の実施率として算出する実施率算出部を、有している。
【0013】
ここで、実施率算出部とは、上述した点検率算出部の一種であって、点検率に含まれる実施率を算出する。
実施スケジュールとは、上述した日常点検情報の一種であって、例えば、設備所有者によって設定された日常巡視の実施時期が含まれるデータである。
実施率とは、上述した点検率の一種であって、例えば、設備所有者による日常巡視が、予定されていたスケジュール通りに実施されたか否かを定量的に表した値である。
これにより、実施率算出部は、実施スケジュール等を用いて日常巡視の実施率を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
【0014】
第3の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、点検率算出部は、入力受付部において入力された日常点検情報に含まれる日常巡視点検表に含まれる全体の項目数に対して、日常巡視後に設備所有者によって記入された項目数の割合を、点検項目の記入率として算出する記入率算出部を、さらに有している。
【0015】
ここで、記入率算出部とは、上述した点検率算出部の一種であって、例えば、点検率に含まれる記入率を算出する。
日常巡視点検表とは、上述した日常点検情報の一種であって、例えば、設備所有者によって設定された点検設備および当該設備の点検項目の一覧表である。
記入率とは、上述した点検率の一種であって、例えば、設備所有者による日常巡視が、所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である。
これにより、記入率算出部は、日常巡視点検表等を用いて点検項目の記入率を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
【0016】
第4の発明に係る設備点検評価装置は、第1の発明に係る設備点検評価装置であって、点検率算出部は、設備所有者による設備の日常巡視が入力受付部において入力された日常点検情報に含まれる実施スケジュールに記録された巡視日に日常巡視が実施された割合を示す日常巡視の実施率と、入力受付部において入力された日常点検情報に含まれる日常巡視点検表に含まれる全体の項目数に対して日常巡視後に設備所有者によって記入された項目数の割合を示す点検項目の記入率と、の乗算に基づいて、点検率を算出する。
【0017】
これにより、点検率算出部は、日常点検情報に含まれる実施スケジュール等を用いて算出された点検率に含まれる実施率と、日常点検情報に含まれる日常巡視点検表等を用いて算出された点検率に含まれる記入率と、に基づいて、設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
【0018】
第5の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、還元費算出部は、点検率と、日常巡視の巡視結果を参照して作成される評価内容に基づく補正値と、日常巡視の巡視結果を参照して作成される評点に基づく補正単価と、所定の条件に基づいて設定される還元係数と、の乗算に基づいて、還元費を算出する。
ここでは、還元費算出部は、設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率と、日常巡視の巡視結果から設定される補正値および補正単価と、還元係数と、を乗算することで、還元費を算出する。
【0019】
ここで、補正値とは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果における評価項目に対する評価を定量的に表した値である。
補正単価とは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果における評価を金額で表したものである。
還元係数とは、例えば、設備所有者と契約相手との契約内容に基づいて契約相手が設定する任意の定数である。
契約相手とは、例えば、設備所有者が、設備保全に関するアドバイザである外部保安事業者に委託した際の主任技術者等である。
これにより、還元費算出部は、適切な還元費を算出することで、設備所有者に設備の管理費用として適切な還元費を還元することができる。
【0020】
第6の発明に係る設備点検評価装置は、第5の発明に係る設備点検評価装置であって、還元係数は、設備所有者が契約する契約期間および契約規模、日常巡視の巡視結果の優劣性、設備の老朽度を参考にして設定される。
これにより、還元費算出部は、契約内容に応じた精度の高い還元係数を設定することができる。
【0021】
第7の発明に係る設備点検評価装置は、第2の発明に係る設備点検評価装置であって、入力受付部は、日常巡視を行う日程が記録された実施スケジュールの入力を受け付ける。
これにより、実施率算出部は、入力された実施スケジュールを参照することで、適切な実施率を算出することができる。
【0022】
第8の発明に係る設備点検評価装置は、第3の発明に係る設備点検評価装置であって、入力受付部は、日常巡視における点検項目が含まれる日常巡視点検表の入力を受け付ける。
これにより、記入率算出部は、入力された日常巡視点検表を参照することで適切な記入率を算出することができる。
【0023】
第9の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、入力受付部は、設備の管理費用を還元する還元費を算出するために用いられる評点補正テーブルの入力を受け付ける。
ここで、評点補正テーブルとは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果に対する評価を一覧表にまとめたデータテーブルである。
これにより、還元費算出部は、評点補正テーブルを参照することで、適切な還元費を算出することができる。
【0024】
第10の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、入力受付部は、還元費算出部が、還元費の算出を開始するための評価指示の入力を受け付ける。
これにより、還元費算出部は、例えば、設備所有者および契約相手から評価を実施するように入力された指示を受け付けたタイミングで、還元費の算出を行うことができる。
【0025】
第11の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、日常点検情報を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、設備点検評価装置は、設備点検評価装置に設けられた記憶部に保存された日常点検情報に含まれる各種データを用いて、設備所有者による適切な設備保全業務が行われているかどうかを評価することができる。
【0026】
第12の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、点検率算出部は、設備所有者が契約する契約期間の中で、契約期間の開始日から満了日までの期間で、所定の日数を判定期間として設定する。
ここでは、点検率算出部は、契約期間内の所定の期間を判定期間として設定し、当該判定期間における設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率を算出する。
これにより、設備点検評価装置は、所定の期間を判定期間とすることで、設備所有者による設備保全業務を評価して、適切な設備保全業務を行うように設備所有者を支援することができる。
【0027】
第13の発明に係る設備点検評価装置は、第1または第2の発明に係る設備点検評価装置であって、還元費算出部は、設備所有者の契約更新時に前回評価の見直しを行い、見直し後の料金を次回料金として設定する。
これにより、還元費算出部が、契約更新時に契約期間における設備点検評価(例えば、設備所有者が実施した日常巡視に対して、設備点検評価装置が判定した点検率や、契約相手が設定した還元係数等が記録されたデータ等)に基づいて適切な料金設定をすることで、適切な設備保全業務を行うように設備所有者を支援することができる。
【0028】
第14の発明に係る還元費算出方法は、入力受付ステップと、点検率算出ステップと、還元費算出ステップと、を備えている。入力受付ステップは、設備の日常点検情報の入力を受け付ける。点検率算出ステップは、入力受付ステップにおいて入力された日常点検情報に基づいて、設備を所有する設備所有者による設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する。還元費算出ステップは、入力受付ステップにおいて入力された日常点検情報と、点検率算出ステップにおいて算出された点検率と、に基づいて、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0029】
ここでは、設備の日常点検情報に基づいて算出された設備所有者による日常巡視の実施度合いを示す点検率を用いて設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
ここで、日常点検情報とは、例えば、設備所有者が設備の点検を行う日程、点検対象となる設備、当該設備の点検項目、点検を適切に行ったかどうかを把握するためのチェックリスト等が含まれる。
【0030】
日常巡視とは、例えば、保安規定に相当する社内規程等に基づいて、設備所有者によって行われる設備の定期的な保守点検である。また、日常巡視は、月ごとに実施される月次点検とは異なり、毎日実施されてもよい。
点検率とは、例えば、実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値であり、日常点検情報に基づいて算出される。ここで、上記点検率が高い場合は、保全リスクが低減され、上記点検率が低い場合は、保全リスクが高まると考えられる。
【0031】
管理費用とは、例えば、外部保安事業者への点検委託費用、固定資産として購入した設備の減価償却費用、設備の修理費用、設備の清掃費用、設備設置個所の警備費用、設備管理に伴う人件費、設備の関連法令に遵守した点検費用等が含まれる。また、設備の設置個所に依って老朽度も異なってくるため、管理費用は、地域ごとに調整されてもよい。例えば、塩害地域に設置された設備は、設備劣化の進行度合いが早まることが考えられるため、管理費用が高く設定される等の調整がされてもよい。
【0032】
還元費とは、例えば、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を、設備所有者に還元するための金額として表したものである。
これにより、設備所有者による設備保全業務を、点検率を用いて適切に評価した結果に基づいて、設備の管理費用が還元費として還元することで、設備所有者の設備保全における当事者意識を高めることにつながる。このため、設備所有者による積極的な日常巡視を促すことができる。
この結果、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【0033】
第15の発明に係る還元費算出プログラムは、入力受付ステップと、点検率算出ステップと、還元費算出ステップと、を備えている。入力受付ステップは、設備の日常点検情報の入力を受け付ける。点検率算出ステップは、入力受付ステップにおいて入力された日常点検情報に基づいて、設備を所有する設備所有者による設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する。還元費算出ステップは、入力受付ステップにおいて入力された日常点検情報と、点検率算出ステップにおいて算出された点検率と、に基づいて、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0034】
ここでは、設備の日常点検情報に基づいて算出された設備所有者による日常巡視の実施度合いを示す点検率を用いて設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
ここで、日常点検情報とは、例えば、設備所有者が設備の点検を行う日程、点検対象となる設備、当該設備の点検項目、点検を適切に行ったかどうかを把握するためのチェックリスト等が含まれる。
【0035】
日常巡視とは、例えば、保安規定に相当する社内規程等に基づいて、設備所有者によって行われる設備の定期的な保守点検である。また、日常巡視は、月ごとに実施される月次点検とは異なり、毎日実施されてもよい。
点検率とは、例えば、実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値であり、日常点検情報に基づいて算出される。ここで、上記点検率が高い場合は、保全リスクが低減され、上記点検率が低い場合は、保全リスクが高まると考えられる。
【0036】
管理費用とは、例えば、外部保安事業者への点検委託費用、固定資産として購入した設備の減価償却費用、設備の修理費用、設備の清掃費用、設備設置個所の警備費用、設備管理に伴う人件費、設備の関連法令に遵守した点検費用等が含まれる。また、設備の設置個所に依って老朽度も異なってくるため、管理費用は、地域ごとに調整されてもよい。例えば、塩害地域に設置された設備は、設備劣化の進行度合いが早まることが考えられるため、管理費用が高く設定される等の調整がされてもよい。
【0037】
還元費とは、例えば、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を、設備所有者に還元するための金額として表したものである。
これにより、設備所有者による設備保全業務を、点検率を用いて適切に評価した結果に基づいて、設備の管理費用が還元費として還元することで、設備所有者の設備保全における当事者意識を高めることにつながる。このため、設備所有者による積極的な日常巡視を促すことができる。
【0038】
この結果、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る設備点検評価装置によれば、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係る設備点検評価装置の構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の設備点検評価装置に含まれる記憶部の構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される日常点検情報のうち日常巡視点検表の一例を示す図。
【
図4】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される評点補正テーブルの一例を示す図。
【
図5】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される実施スケジュールの各項目の入力画面を示す図。
【
図6】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される実施スケジュールの実施予定日のパターンの登録画面を示す図。
【
図7】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される実施スケジュールの実施予定日のパターンの項目を示す図。
【
図8】
図1の設備点検評価装置に含まれる点検率算出部において日常点検情報に基づいて算出される予定実績テーブルの一例を示す図。
【
図9】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部に入力される評点補正テーブルの作成に用いられる評価記号テーブルの一例を示す図。
【
図10】
図1の設備点検評価装置に含まれる還元費算出部における還元費の算出に用いられる料金テーブルの一例を示す図。
【
図11】
図1の設備点検評価装置に含まれる入力受付部が受け付ける評価指示および還元係数を入力する操作画面の一例を示す図。
【
図12】
図1の設備点検評価装置に含まれる還元費算出部において判定される契約更新に用いられる設備点検評価の一例を示す図。
【
図13】設備点検評価方法の処理の流れを示すフローチャート。
【
図14】
図13の還元費算出ステップにおいて用いられる還元費算出方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の一実施形態に係る設備点検評価装置10および還元費算出方法について、
図1~
図14を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0042】
(1)設備点検評価装置10の構成
本実施形態に係る設備点検評価装置10は、設備の日常点検情報D1に基づいて算出された設備所有者による日常巡視の実施度合いを示す点検率を用いて設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0043】
ここで、設備の日常点検情報D1とは、例えば、設備所有者が設備の点検を行う日程、点検対象となる設備、当該設備の点検項目、点検を適切に行ったかどうかを把握するためのチェックリスト等が含まれる。
点検項目とは、例えば、設備所有者が、点検設備に対して行う点検内容である。例えば、設備所有者は、異音の有無、異臭の有無、変形の有無、腐食の有無、損傷の有無等を点検する。
【0044】
設備所有者とは、例えば、日常巡視を含む設備の保全活動を義務付けられている設備の所有者または設備が設置される施設の所有者である。また、例えば、設備所有者は、設備保全に関するアドバイザである外部保安事業者に主任技術者を委託することで設備保全業務に関するリスクの低減を図る。
日常巡視とは、例えば、保安規定に相当する社内規程等に基づいて、設備所有者によって行われる設備の定期的な保守点検である。また、日常巡視は、月ごとに実施される月次点検とは異なり、毎日実施されてもよい。
【0045】
点検率とは、例えば、実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値であり、日常点検情報D1に基づいて算出される。ここで、上記点検率が高い場合は、保全リスクが低減され、上記点検率が低い場合は、保全リスクが高まると考えられる。
管理費用とは、例えば、外部保安事業者への点検委託費用、固定資産として購入した設備の減価償却費用、設備の修理費用、設備の清掃費用、設備設置個所の警備費用、設備管理に伴う人件費、設備の関連法令に遵守した点検費用等が含まれる。また、設備の設置個所に依って老朽度も異なってくるため、管理費用は、地域ごとに調整されてもよい。例えば、塩害地域に設置された設備は、設備劣化の進行度合いが早まることが考えられるため、管理費用が高く設定される等の調整がされてもよい。
【0046】
還元費とは、例えば、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を、設備所有者に還元するための金額として表したものである。
なお、日常点検情報D1の一種である実施スケジュールD2および日常巡視点検表D3に関しては、後述する入力受付部11にて詳細に説明する。
【0047】
そして、設備点検評価装置10は、
図1に示すように、入力受付部11と、予定実績テーブル作成部12と、点検率算出部13と、還元費算出部15と、記憶部16と、を備えている。
入力受付部11は、設備所有者がウェブ上で作成した、日常点検情報D1の入力を受け付ける。
【0048】
これにより、点検率算出部13は、入力された日常点検情報D1を参照することで、設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率を算出することができる。
また、
図1に示すように、日常点検情報D1の中には、実施スケジュールD2および日常巡視点検表D3が含まれている。
ここで、実施スケジュールD2とは、日常点検情報D1の一種であって、例えば、設備所有者によって設定された設備所有者が設備の点検を行う日常巡視の実施時期が含まれるデータである。また、例えば、実施スケジュールD2は、当該実施時期を設定したウェブ上のカレンダ等であってもよい。さらに、上記実施時期は、設備が稼働している日程のみに設定されるだけでなく、毎週の指定曜日(例えば、土曜日・日曜日・祝日を省く等)等のように任意の日程が設定されてもよい。
【0049】
なお、
図2に示すように、実施スケジュールD2は、設備所有者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
日常巡視点検表D3とは、日常点検情報D1の一種であって、例えば、設備所有者によって設定された点検設備および当該点検設備の点検項目の一覧表である。
より具体的には、日常巡視点検表D3は、
図3に示すように、例えば、設備が設置されている建物の所在地、点検日時、天候、気温、湿度、点検者、点検設備の名称および管理番号、点検設備の写真、点検設備の点検項目、確認チェック項目等が含まれるウェブ上のフォーマット等である。
【0050】
ここで、設備の点検項目とは、例えば、点検設備である〇〇変圧器に対する点検内容は異音・異臭の有無、変色・腐食・変形の有無である。点検設備である〇〇電気室に対する点検内容は、草木・雨滴侵入の有無、小動物等の有無、温度計数値、電力量値である。点検設備である〇〇電動機に対する点検内容は、外観の汚損・傷の有無、異音・異臭の有無、運転電流値等である。このとき、例えば、キュービクル等の高圧受電設備における点検に関しては、設備所有者が点検資格を保有していることが必要とされるが、本実施形態においては、点検資格の有無・資格種別、キュービクルの扉を開放することなく点検可能な構造か等の条件は限定されるものではない。
【0051】
なお、
図2に示すように、日常巡視点検表D3は、設備所有者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
さらに、実施スケジュールD2に含まれる実施時期および日常巡視点検表D3に含まれる設備所有者による日常巡視点における点検設備および点検項目は、設備所有者が契約相手である主任技術者の助言を考慮したうえで設定されてもよい。
【0052】
ここで、契約相手とは、例えば、設備所有者が、設備保全に関するアドバイザである外部保安事業者に委託した際の主任技術者等である。
さらにまた、上記実施時期が設定された実施スケジュールD2および設備所有者による日常巡視点における点検設備および点検項目が設定された日常巡視点検表D3は、設備所有者および契約相手である主任技術者の両者がウェブ上で閲覧可能である。
【0053】
入力受付部11は、設備所有者がウェブ上で作成した、日常巡視の実施率の算出に用いられる実施スケジュールD2の入力を受け付ける。
ここで、実施率とは、点検率の一種であって、例えば、設備所有者による日常巡視が予定されていたスケジュール通りに実施されたか否かを定量的に表した値である。
これにより、後述する実施率算出部13aは、入力された実施スケジュールD2を参照することで、適切な実施率を算出することができる。
【0054】
入力受付部11は、設備所有者がウェブ上で作成した、点検項目の記入率の算出に用いられる日常巡視点検表D3の入力を受け付ける。
ここで、記入率とは、点検率の一種であって、例えば、設備所有者による日常巡視が、所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である。
【0055】
これにより、後述する記入率算出部13bは、入力された日常巡視点検表D3を参照することで適切な記入率を算出することができる。
入力受付部11は、契約相手である主任技術者がウェブ上で作成した、設備の管理費用を還元する還元費を算出するために用いられる評点補正テーブルD4の入力を受け付ける。
【0056】
ここで、評点補正テーブルD4とは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果に対する評価を一覧表にまとめた評点等を含むデータテーブルである。また、評点補正テーブルD4に関しては、以下の還元費算出部15の説明において詳細に説明する。
なお、
図2に示すように、評点補正テーブルD4は、契約相手である主任技術者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
【0057】
これにより、還元費算出部15は、評点補正テーブルD4を参照することで、適切な還元費を算出することができる。
入力受付部11は、契約相手である主任技術者から、還元費算出部15が還元費の算出を開始するための評価指示の入力を受け付ける。
ここで、評価指示とは、例えば、後述する還元係数等に基づいて還元費を算出するための算出開始指令である。
【0058】
これにより、還元費算出部15は、例えば、設備所有者および契約相手である主任技術者から評価を実施するように入力された指示を受け付けたタイミングで、還元費の算出を行うことができる。
点検率算出部13は、
図1に示すように、実施率算出部13aを有している。実施率算出部13aは、設備所有者による日常巡視が入力受付部11において入力された日常点検情報D1に含まれる実施スケジュールD2に記録された巡視日に実際に実施された割合を、日常巡視の実施率として算出する。
【0059】
ここでは、
図5に示すように、設備所有者は、例えば、ウェブ上で実施スケジュールD2の設定項目である次回契約期間と、本日の日程と、前回更新日時と、予定日数と、契約日数と、を実施スケジュールD2に登録する。このとき、契約相手である主任技術者は、当該項目に関して、助言をしてもよい。
また、設備所有者は、当該各種項目を実施スケジュールD2に登録した後、
図6に示すように、例えば、ウェブ上で設備所有者が日常巡視を実施する実施時期の予定候補であるパターンを選択し、当該パターンを実施スケジュールD2に登録する。上記パターンは、例えば、
図7に示すように、パターン1は、「通常毎日」という項目になっており、設備所有者が契約する契約期間中の設備稼働日の全て日程が日常巡視を行うスケジュールである。
【0060】
パターン2は、「週1回」という項目になっており、当該契約期間中の週末のみ日常巡視を行うスケジュールである。
パターン3は、「月1回」という項目になっており、当該契約期間中の月末のみ日常巡視を行うスケジュールである。このとき、契約相手である主任技術者は、当該パターンの内容や選択に関して、助言をしてもよい。
【0061】
このとき、例えば、設備所有者が、パターン3を選択した場合、パターン1および2で定められた日程についても日常巡視を行う。
さらに、設備所有者によって上記各項目が実施スケジュールD2に登録されることで、入力受付部11を介して、実施スケジュールD2が予定実績テーブル作成部12に入力される。
【0062】
さらにまた、設備所有者によって、例えば、ウェブ上で、
図3に示す日常巡視点検表D3に実際に日常巡視を行った点検日時と、天候と、気温と、湿度と、点検者名とが記入されることで、入力受付部11を介して、日常巡視点検表D3が予定実績テーブル作成部12に入力される。
予定実績テーブル作成部12は、設備所有者によって入力された実施スケジュールD2と、設備所有者が日常巡視を行った実際の点検日時が入力された日常巡視点検表D3と、に基づいて、予定実績テーブルD5を作成する。
【0063】
ここで、予定実績テーブルD5とは、
図8に示すように、設備所有者が日常巡視を行った年月日、実施スケジュールD2に含まれる設備所有者が日常巡視を行うスケジュール予定、設備所有者が実際に日常巡視を行ったスケジュール実績等をリスト化したデータテーブルである。また、予定実績テーブルD5は、日常巡視点検表D3に含まれる点検項目のうち、設備所有者が日常巡視を実施する予定の点検項目数である項目予定数、設備所有者が日常巡視を実施した点検項目数の実績を記入する項目実績数が含まれる。
【0064】
ここでは、設備所有者による日常巡視が実施される実施時期の予定候補であるパターンのうち、契約期間中の週末のみ日常巡視を行うパターン2が選択されており、2018/7/1は日曜日であるため、スケジュール予定が未実施を意味する「0」となり、設備所有者による日常巡視が行われない日程となっている。
2018/7/2から2018/7/6の間は、平日であるため、スケジュール予定が実施を意味する「1」となり、設備所有者による日常巡視が行われる予定となっている。
【0065】
2018/7/7から2018/7/8の間は、土曜日・日曜日であるため、スケジュール予定が未実施を意味する「0」となり、設備所有者による日常巡視が行われない日程となっている。
2018/7/4においては、スケジュール予定では実施を意味する「1」になっているのに対し、スケジュール実績では未実施を意味する「0」になっているため、設備所有者による日常巡視が予定していた実施日に行われなかったと判定される。
【0066】
なお、
図2に示すように、予定実績テーブルD5は、契約相手である主任技術者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
また、契約相手である主任技術者は、当該予定日に関して、設備所有者との協議の上、両者合意のもとで変更してもよい。
【0067】
このとき、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者がウェブ上で年月日ごとに登録したスケジュール予定に対するスケジュール実績である実際の点検日時が記入された日常巡視点検表D3を、入力受付部11を介して取得する。また、予定実績テーブル作成部12は、スケジュール予定列の合計値およびスケジュール実績列の合計値が入力された予定実績テーブルD5を作成する。
【0068】
さらに、実施率算出部13aは、予定実績テーブルD5に含まれるスケジュール予定列の合計値を分母としスケジュール実績列の合計値を分子とする実施率を算出する。
すなわち、実施率算出部13aは、設備所有者が予定されていたスケジュール通りに日常巡視を実施したか否かを定量的に表した値である実施率を算出する。
これにより、実施率算出部13aは、実施スケジュールD2等を用いて日常巡視の実施率を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
【0069】
点検率算出部13は、
図1に示すように、記入率算出部13bを、さらに有している。記入率算出部13bは、入力受付部11において入力された日常点検情報D1に含まれる日常巡視点検表D3に含まれる全体の項目数に対して、日常巡視後に設備所有者によって記入された項目数の割合を、点検項目の記入率として算出する。
ここでは、
図5に示すように、設備所有者は、例えば、ウェブ上で実施スケジュールD2の設定項目である次回契約期間と、本日の日程と、前回更新日時と、予定日数と、契約日数と、を実施スケジュールD2に登録する。このとき、契約相手である主任技術者は、当該項目に関して、助言をしてもよい。
【0070】
また、
図6に示すように、設備所有者は、当該各種項目を実施スケジュールD2に登録した後、例えば、ウェブ上で設備所有者が日常巡視を実施する実施時期の予定候補であるパターンを選択し、当該パターンを実施スケジュールD2に登録する。
ここで、設備所有者は、上述したパターンに加えて、設備所有者が日常巡視を実施する点検設備や当該設備の点検項目を、特定の曜日ごとや特定の日ごとに変更したパターンを設定してもよい。例えば、設備所有者が日常巡視を実施する点検設備は、毎週金曜は○○変圧器のみ、毎月末日は○○変圧器と○○電気室等のように設定されてもよい。また、例えば、設備所有者が日常巡視を実施する点検設備の点検項目は、毎週金曜は○○変圧器の異音・異臭の有無のみ、毎月末日は○○変圧器の異音・異臭の有無および変色・腐食・変形の有無、○○電気室等の草木・雨滴侵入の有無および小動物等の有無等と設定されてもよい。このとき、契約相手である主任技術者は、当該パターンの内容や選択に関して、助言をしてもよい。
【0071】
また、設備所有者によって上記各項目が登録されることで、入力受付部11を介して、実施スケジュールD2が予定実績テーブル作成部12に入力される。
さらに、設備所有者によって、例えば、ウェブ上で、
図3に示す日常巡視点検表D3に、設備所有者が日常巡視を行う各点検設備の点検項目に対する点検結果のうち、実際に日常巡視を行った点検結果が記入されることで、入力受付部11を介して、日常巡視点検表D3が予定実績テーブル作成部12に入力される。このとき、例えば、設備所有者は、○○変圧器に関して異音があった場合は、「有」の欄にチェックをつける。
【0072】
さらにまた、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者によって入力された実施スケジュールD2と、設備所有者が実際に日常巡視を行った点検結果が記入された日常巡視点検表D3とに基づいて、予定実績テーブルD5を作成する。
ここでは、
図8に示すように、設備所有者が日常巡視を実施する点検設備や当該設備の点検項目が曜日ごとに異なるパターンが選択されている。
【0073】
2018/7/1は、日曜日であり、項目予定数は「0」となっているため、設備所有者の日常巡視による設備の点検が行われない日程となっている。
2018/7/2から2018/7/5の間は、月曜日から木曜日であり、項目予定数は「18」となっているため、設備所有者の日常巡視による設備の点検が18項目行われる日程となっている。
【0074】
2018/7/6は、金曜日であり、項目予定数は「28」となっているため、設備所有者の日常巡視による設備の点検が28項目行われる日程となっている。
2018/7/4においては、スケジュール予定では実施を意味する「1」になっているのに対し、スケジュール実績では未実施を意味する「0」になっているため、設備所有者による日常巡視が予定していた実施日に行われなかったと判定される。これに伴い、項目実績数も「0」となっていることから、設備所有者の日常巡視による設備の点検が実際には全く行われなかったと判定される。
【0075】
2018/7/6においては、項目予定数は「28」と設定されているのに対し、項目実績数は「26」となっているため、設備所有者の日常巡視による設備の点検が実際には26項目しか行われなかったと判定される。
なお、契約相手である主任技術者は、当該点検項目に関して、設備所有者との協議の上、両者合意のもとで変更してもよい。
【0076】
このとき、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者がウェブ上で年月日ごとに設定した項目予定数に対する項目実績数である実際の点検結果が記入された日常巡視点検表D3を、入力受付部11を介して取得する。また、予定実績テーブル作成部12は、項目予定数列の合計値および項目実績数列の合計値が入力された予定実績テーブルD5を作成する。
【0077】
さらに、記入率算出部13bは、予定実績テーブルD5に含まれる項目予定数列の合計値を分母とし項目実績数列の合計値を分子とする記入率を算出する。
すなわち、記入率算出部13bは、設備所有者による日常巡視において所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である記入率を算出する。
【0078】
これにより、記入率算出部13bは、日常巡視点検表D3を用いて点検項目の記入率を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
点検率算出部13は、上述した日常巡視の実施率と、上述した点検項目の記入率と、の乗算に基づいて、点検率を算出する。
【0079】
ここでは、
図5に示すように、設備所有者は、例えば、ウェブ上で実施スケジュールD2の設定項目である次回契約期間と、本日の日程と、前回更新日時と、予定日数と、契約日数と、を実施スケジュールD2に登録する。このとき、契約相手である主任技術者は、当該項目に関して、助言をしてもよい。
また、
図6に示すように、設備所有者は、当該各種項目を実施スケジュールD2に登録した後、例えば、ウェブ上で設備所有者が日常巡視を実施する実施時期の予定候補であるパターンを選択し、実施スケジュールD2に登録する。または、設備所有者は、当該各種項目を実施スケジュールD2に登録した後、例えば、ウェブ上で設備所有者が日常巡視を実施する点検設備や当該設備の点検項目を、特定の曜日ごとや特定の日ごとに変更したパターンを選択し、実施スケジュールD2に登録する。このとき、契約相手である主任技術者は、当該パターンの内容や選択に関して、助言をしてもよい。
【0080】
さらに、設備所有者によって上記各項目が実施スケジュールD2に登録されることで、入力受付部11を介して、実施スケジュールD2が予定実績テーブル作成部12に入力される。
さらにまた、設備所有者によって、例えば、ウェブ上で、
図3に示す日常巡視点検表D3に実際に日常巡視を行った点検日時と、天候と、気温と、湿度と、点検者名と、設備所有者が日常巡視を行った各点検設備の点検項目に対する点検結果のうち、実際に日常巡視を行った点検結果と、が記入されることで、入力受付部11を介して、日常巡視点検表D3が予定実績テーブル作成部12に入力される。
【0081】
さらにまた、
図8に示すように、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者によって入力された実施スケジュールD2と、設備所有者が日常巡視を行った実際の点検日時および設備所有者が実際に日常巡視を行った点検結果が記入された日常巡視点検表D3と、に基づいて、予定実績テーブルD5を作成する。
なお、契約相手である主任技術者は、予定実績テーブルD5に設定された設備所有者が日常巡視を実施する予定日および設備所有者が日常巡視を行う各点検設備の点検項目に関して、設備所有者との協議の上、両者合意のもとで変更してもよい。
【0082】
このとき、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者がウェブ上で年月日ごとに登録したスケジュール予定に対するスケジュール実績である実際の点検日時が記入された日常巡視点検表D3を、入力受付部11を介して取得する。また、予定実績テーブル作成部12は、スケジュール予定列の合計値およびスケジュール実績列の合計値が入力された予定実績テーブルD5を作成する。
【0083】
ここで、点検率算出部13は、上述した実施率算出部13aにおいて、予定実績テーブルD5に含まれるスケジュール予定列の合計値を分母としスケジュール実績列の合計値を分子とする実施率を算出する。
すなわち、点検率算出部13は、設備所有者が予定されていたスケジュール通りに日常巡視を実施したか否かを定量的に表した値である実施率を算出する。
【0084】
また、予定実績テーブル作成部12は、設備所有者がウェブ上で年月日ごとに設定した項目予定数に対する項目実績数である実際の点検結果が記入された日常巡視点検表D3を、入力受付部11を介して取得する。さらに、予定実績テーブル作成部12は、項目予定数列の合計値および項目実績数列の合計値が入力された予定実績テーブルD5を作成する。
【0085】
ここで、点検率算出部13は、上述した記入率算出部13bにおいて、予定実績テーブルD5に含まれる項目予定数列の合計値を分母とし項目実績数列の合計値を分子とする記入率を算出する。
すなわち、点検率算出部13は、設備所有者による日常巡視が、所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である記入率を算出する。
【0086】
さらに、点検率算出部13は、上記実施率と、上記点検率と、を乗算することで、設備所有者が実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値である点検率を算出する。
例えば、実施率=95%、記入率=98%の場合、点検率=0.95×0.98×100=93.1%となる。このとき、点検率が高い程、保全リスクが低減され、点検率が低い程、保全リスクが高まると考えられる。
【0087】
これにより、設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率(実施率、記入率)を算出することで、設備所有者による日常巡視が適切に行われているか否かを判定することができる。
ここで、点検率算出部13は、設備所有者が契約する契約期間の中で、契約期間の開始日から満了日までの期間で、所定の日数を判定期間として設定する。
【0088】
ここでは、点検率算出部13は、判定期間中に設備所有者が実施した日常巡視の結果に基づいて、設備所有者が実施すべき設備の点検業務が実際に実施された割合であって、設備の保全リスクを定量的に表した値である点検率を算出する。
このとき、入力受付部11にて点検率の算出を開始する評価指示を受け付け、点検率の算出を開始した日が契約期間満了日に満たない場合は、点検率算出部13は、契約期間満了日の前日までの期間を判定期間とする。例えば、契約更新期間が1年間のとき、11カ月目に入力受付部11が評価指示の入力を受け付けた場合、判定期間は11カ月間となり、還元費算出部15は、11カ月分の設備点検評価D8から次回料金の算出を行う。
【0089】
なお、設備点検評価D8に関しては、以下の還元費算出部15の説明において詳細に説明する。
これにより、設備点検評価装置10は、所定の期間を判定期間とすることで、設備所有者による設備保全業務を評価して、適切な設備保全業務を行うように設備所有者を支援することができる。
【0090】
還元費算出部15は、点検率と、日常巡視の巡視結果を参照して作成される評価内容に基づく補正値と、日常巡視の巡視結果を参照して作成される評点に基づく補正単価と、所定の条件に基づいて設定される還元係数と、の乗算に基づいて、還元費を算出する。
ここで、補正値とは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果における評価項目に対する評価を定量的に表した値である。また、補正値は、契約相手である主任技術者によって、入力受付部11を介して入力された評価記号テーブルD6を用いて評点補正テーブルD4を作成する際に算出される。
【0091】
評価記号テーブルD6は、
図9に示すように、項目No(Number)と、設備所有者による日常巡視に対する評価内容を点数で示した評点と、当該評価内容のレベルを記号で表した評価記号と、を含むデータテーブルである。
【0092】
例えば、項目No1では、評価記号が+++のとき、評点は2<Dの範囲で表される。
項目No2では、評価記号が++のとき、評点は1<D≦2の範囲で表される。
項目No3では、評価記号が+のとき、評点は0<D≦1の範囲で表される。
項目No4では、評価記号が-のとき、評点は0となる。
項目No5では、評価記号がXのとき、評点は-1≦D<0の範囲で表される。
項目No6では、評価記号がXXのとき、評点は-2≦D<-1の範囲で表される。
項目No7では、評価記号がXXXのとき、評点はD<-2の範囲で表される。
【0093】
ここでは、評点の値が高い程、補正値の値も高くなり、評点の値が低い程、補正値の値は低くなる。
なお、
図2に示すように、評価記号テーブルD6は、契約相手である主任技術者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
【0094】
評点補正テーブルD4は、
図4に示すように、項目No(Number)と、設備所有者による日常巡視に対する評価内容と、還元費の増減を表す分類と、当該評価内容の点数を示した評点と、当該評価内容のレベルを記号で表した評価と、の項目が含まれており、契約相手である主任技術者によって作成される。
例えば、項目No1では、上記巡視結果に対する評価内容として「気付きを得ている」という項目が設定されており、これに対する評点は1点であり、評価は評点が0<D≦1の範囲である1点であることから+となり、分類は減額となっている。すなわち、設備所有者による日常巡視の実施内容が優れており、努力が見られると評価される。
【0095】
項目No2では、評価内容は「5Sや改善実施」と設定されており、これに対する評点は1.5点であり、評価は評点が1<D≦2の範囲である1.5点であることから++となり、分類は減額となっている。すなわち、設備所有者による日常巡視の実施内容がより優れており、模範的活動であると評価される。
項目No3では、評価内容は「予定・項目が少ない」と設定されており、これに対する評点は0点であり、評価は評点が0点であることから-となり、分類は増額となっている。すなわち、設備所有者による日常巡視の実施内容が標準的であり、還元費を補正する影響はないと評価される。
【0096】
項目No4では、評価内容は「事実と状況が異なる」と設定されており、評価は-であり、評点は0点であり、分類は増額となっている。すなわち、設備所有者による日常巡視の実施内容が標準的であり、還元費を補正する影響はないと評価される。
ここで、補正値は、項目No1からNo4までに対する評点を加減算することで算出され、
図4における例では補正値は2.5となる。
【0097】
なお、契約相手である主任技術者によって、例えば、ウェブ上で、
図4に示す評点補正テーブルD4の評点列における評点が記入されることで、入力受付部11を介して、評点補正テーブルD4が還元費算出部15に入力される。
補正単価とは、例えば、設備所有者による日常巡視の巡視結果における評価を金額で表したものである。また、補正単価は、契約相手である主任技術者によって入力受付部11を介して入力された料金テーブルD7を参考にして算出される。
【0098】
料金テーブルD7は、
図10に示すように、項目Noと、設備所有者の保全業務にかかる費用の名称を表すコスト項目と、設備所有者の保全業務にかかる年間費用を表す年額と、の項目が含まれており、契約相手である主任技術者によって作成される。
項目No1における基本料金は、契約相手である主任技術者が所有する設備代や、作業内容に依存しない固定料金である。また、基本料金の年額は100,000円である。
【0099】
項目No2における共通リスク費は、設備所有者が日常巡視を行う設備にリスクの予兆が見られた場合における、契約相手である主任技術者が実施する詳細確認作業と、回避の処置立案・指示と、指示事項の対応管理と、対応完了確認作業等と、が含まれる。また、共通リスク費の年額は100,000円である。
項目No3における臨時応動見込費は、契約相手である主任技術者が緊急または臨時で現場確認を行う場合における、応急処置と、恒久処置立案・指示と、指示事項の対応管理と、対応完了確認作業等と、が含まれる。また、臨時応動見込費には、移動交通費、機器校正費、保管維持費、社有車維持費、人員教育費、保険料金、記録作成・保管作業等の間接費用が含まれる。さらに、臨時応動見込費の年額は100,000円である。
【0100】
ここで、補正単価は、設備所有者による上述した共通リスク費にかかる契約相手である主任技術者の負担を低減する取り組みと、設備所有者による上述した臨時応動見込費にかかる契約相手である主任技術者の負担を低減する取り組みと、に基づき契約相手である主任技術者によって設定される。
さらに、
図4に示す補正額とは、補正値と、補正単価と、還元係数と、の乗算によって算出される金額である。本実施形態では、補正値=2.5、補正単価=-10,000円であるため、補正額=2.5×-10,000円=-25,000円となる。
【0101】
なお、
図2に示すように、料金テーブルD7は、契約相手である主任技術者によって入力受付部11で入力された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
還元係数とは、例えば、設備所有者と契約相手である主任技術者との契約内容に基づいて契約相手である主任技術者が設定する任意の定数である。
【0102】
また、
図11に示すように、還元係数は、入力受付部11が点検率および還元費の算出を開始する評価指示を受け付ける際に、契約相手である主任技術者によって入力される。
このとき、還元係数は、10段階評価(0.1~1.0)+1と表されてもよい。
さらに、還元費の算出を開始する日程は、例えば、契約満了日の60日前のように、契約相手である主任技術者によって任意に設定されてもよい。
【0103】
還元費とは、例えば、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を、設備所有者に還元するための金額として表したものである。
ここで、還元費は、点検率と、補正値と、補正単価と、還元係数と、の乗算により算出される。例えば、点検率が93.1%、補正値が2.5、補正単価が-10,000円、還元係数が1.2であるとき、還元費=0.931×2.5×-10,000円×1.2=-27,930円となる。
【0104】
これにより、還元費算出部15は、適切な還元費を算出することで、設備所有者に設備の管理費用として適切な還元費を還元することができる。
還元費算出部15において還元費を算出する際に用いられる還元係数は、例えば、設備所有者が契約する契約期間および契約規模、日常巡視の巡視結果の優劣性、設備の老朽度を参考にして設定される。
【0105】
ここで、契約規模とは、例えば、設備所有者の所持する設備が、小規模である場合や、大型ショッピングモールのように大型設備が多数設置されている場合に、契約金額を調整するために考慮される。
巡視結果の優劣性とは、例えば、設備所有者による日常巡視の実施率が意図的に高められている場合は、劣補正が加味され、設備所有者による日常巡視の実施内容が優れている場合には、優補正が加味される仕組みである。このとき、実施率が意図的に高められる状況とは、例えば、必要以上の余分な点検が繰り返し行われ、意図的に実施率を上げようとする取り組みが考えられる。
【0106】
老朽度とは、例えば、設備の劣化度合い表し、巡視結果を評価するための参考となる度合いである。例えば、設備所有者による日常巡視は、設備が古い場合には、多くの点検項目および頻度が必要となり、設備が新しい場合には、比較的少ない点検項目および頻度で成し遂げられる場合がある。
これにより、還元費算出部15は、契約内容に応じた精度の高い還元係数を設定することができる。
【0107】
還元費算出部15は、設備所有者の契約更新時に前回評価の見直しを行い、見直し後の料金を次回料金として設定する。
ここでは、設備所有者の契約更新にあたり契約相手である主任技術者が、還元費算出部15において作成された設備点検評価D8を参照することで、次回料金を設定する。
ここで、設備点検評価D8とは、例えば、設備所有者が実施した日常巡視に対して、設備点検評価装置10が判定した点検率や、契約相手である主任技術者が設定した還元係数や、前回料金および次回料金等が記録されたデータである。
【0108】
また、設備点検評価D8は、
図12に示すように、設備所有者の前回の契約期間および料金と、設備所有者による日常巡視における前回の評価結果と、設備所有者の次回の料金と、が含まれている。ここでは、前回料金に含まれる基本料金、共通リスク費、臨時応動見込費はそれぞれ100,000円であり、合計300,000円である。また、前回の契約期間における設備所有者による日常巡視の評価は、点検率が93.1%、補正値が2.5、還元係数が1.2である。ここで、例えば、補正単価が-10,000円であった場合、還元費=0.931×2.5×-10,000円×1.2=-27,930円となる。
【0109】
このとき、還元費算出部15は、算出された還元費の1/2の金額を基本リスク対応費と臨時応動見込費に分配する。すなわち、前回料金の基本リスク対応費である100,000円から(1/2)×-27,930円を加減算した値は86,035円となり、同様に、臨時応動見込費も86,035円となるため、次回料金の合計額は272,070円に減額される。
【0110】
なお、次回料金が適用される期間は、前回契約期間の翌日から1年間の期間としてもよい。
また、
図2に示すように、設備点検評価D8は、還元費算出部15において作成された後、設備点検評価装置10に含まれる記憶部16に保存される。
これにより、還元費算出部15が、契約更新時に契約期間における設備点検評価D8(例えば、設備所有者が実施した日常巡視に対して、設備点検評価装置10が判定した点検率や、契約相手が設定した還元係数等が記録されたデータ等)に基づいて適切な料金設定をすることで、適切な設備保全業務を行うように設備所有者を支援することができる。
【0111】
記憶部16は、設備所有者によってウェブ上で作成され、入力受付部11に入力された日常点検情報D1を保存する。
ここでは、
図2に示すように、記憶部16は、設備所有者によって入力受付部11に入力された日常点検情報D1の一種である実施スケジュールD2と、日常点検情報D1の一種である日常巡視点検表D3と、契約相手である主任技術者によって入力受付部11に入力された評点補正テーブルD4と、予定実績テーブルD5と、評価記号テーブルD6と、料金テーブルD7と、還元費算出部15において作成された設備点検評価D8とを保存する。
【0112】
これにより、設備点検評価装置10は、設備点検評価装置10に設けられた記憶部16に保存された日常点検情報D1に含まれる各種データ等を用いて、設備所有者による適切な設備保全業務が行われているかどうかを評価することができる。
また、記憶部16は、例えば、設備所有者が所有する設備が改築または増設された場合に、料金テーブルD7に含まれる基本料金等を変更してもよい。
これにより、例えば、還元費算出部15は、設備が改築される等の、周辺環境の変化に対応して新たに変更された料金テーブルD7を用いて、適切な還元費を設定することができる。
【0113】
<主な特徴>
本実施形態の設備点検評価装置10は、以上のように、入力受付部11と、点検率算出部13と、還元費算出部15と、を備えている。入力受付部11は、設備の日常点検情報D1の入力を受け付ける。点検率算出部13は、入力受付部11において入力された日常点検情報D1に基づいて、設備を所有する設備所有者による設備の点検を行う日常巡視の実施度合いを示す点検率を算出する。還元費算出部15は、入力受付部11において入力された日常点検情報D1と、点検率算出部13において算出された点検率と、に基づいて、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0114】
これにより、設備所有者による設備保全業務を、点検率を用いて適切に評価した結果に基づいて、設備の管理費用が還元費として還元することで、設備所有者の設備保全における当事者意識を高めることにつながるため、設備所有者による積極的な日常巡視を促すことができる。
この結果、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【0115】
<設備点検評価方法>
本実施形態の設備点検評価装置10は、
図14に示すフローチャートに従って、還元費算出方法を実行する。
すなわち、本実施形態の還元費算出方法は、
図13に示す設備点検評価方法の処理の一部として実施される。
【0116】
図13に示す設備点検評価方法では、ステップS1において、契約相手である主任技術者が、設備所有者による日常巡視に関するヒアリングおよび状況視察を行い、初回見積もりを作成する。
次に、ステップS2では、契約相手である主任技術者が、ステップS1において作成された初回見積もりを参考にして、設備所有者による日常巡視の委託費用を決定する。また、設備所有者が、日常点検情報D1に含まれる日常巡視点検表D3を作成することで、両者の間で契約が成立する。
【0117】
次に、ステップS3では、入力受付部11が、設備所有者によって設定された日常巡視の予定日と、設備所有者によって記入された実際に行われた日常巡視の日時と、が含まれる実施スケジュールD2の入力を受け付ける。また、入力受付部11が、設備所有者によって設定された日常巡視を行う設備の点検項目と、設備所有者によって記入された実際に行われた日常巡視における設備の点検項目と、が含まれる日常巡視点検表D3の入力を受け付ける。
【0118】
さらに、予定実績テーブル作成部12が、設備所有者によって入力受付部11において入力された上記実施スケジュールD2および日常巡視点検表D3に基づいて予定実績テーブルD5を作成する。
次に、ステップS4では、契約相手である主任技術者が、ステップS3において予定実績テーブル作成部12が作成した予定実績テーブルD5を参考にして、設備所有者に対して問診・指導・助言を含む月次点検を行う。
【0119】
次に、ステップS5では、契約相手である主任技術者が、還元費を算出するための評価開始日に到達または経過したか否かを判定する。このとき、還元費を算出するための評価開始日は、契約相手である主任技術者によって任意に設定される。
ここで、還元費を算出するための評価開始日に到達または経過していない場合は、ステップS2またはステップS3へ移行し、ステップS2またはステップS3以降の処理が繰り返し実行される。また、還元費を算出するための評価開始日に到達または経過している場合は、ステップS6へ移行する。
【0120】
次に、ステップS6では、ステップS5において還元費を算出するための評価開始日に到達または経過していると契約相手である主任技術者によって判定された場合、設備点検評価装置10において、実施スケジュールD2および日常巡視点検表D3と、契約相手である主任技術者によって作成され入力受付部11を介して還元費算出部15に入力された評点補正テーブルD4等と、に基づいて還元費算出部15が還元費を算出する。
【0121】
なお、設備点検評価装置10による還元費の算出方法については、後段において説明する。
次に、ステップS7では、還元費算出部15が、契約相手である主任技術者によって入力受付部11を介して記憶部16に保存された料金テーブルD7等を参考にし、ステップS6において算出された還元費に基づいて、見直し根拠および見直し後の料金が含まれる設備点検評価D8を作成する。
【0122】
ここで、還元費算出部15による見直し根拠および見直し後の料金が含まれる設備点検評価D8の作成が完了していない場合は、ステップS2またはステップS3へ移行し、ステップS2またはステップS3以降の処理が繰り返し実行される。また、還元費算出部15による見直し根拠および見直し後の料金が含まれる設備点検評価D8の作成が完了した場合は、設備点検評価方法の処理は完了する。
【0123】
ここで、
図13に示すステップS6において算出される還元費の算出方法について、
図14のフローチャートを用いてより詳細に説明する。
すなわち、
図14に示すように、ステップS21では、入力受付部11が、設備所有者によってウェブ上で作成された設備所有者による日常巡視の実施時期が含まれる実施スケジュールD2(ウェブ上のカレンダ)を取得する。
【0124】
このとき、契約相手である主任技術者が、ウェブ上で上記実施スケジュールD2の作成支援を行ってもよい。
次に、ステップS22では、入力受付部11が、設備所有者によってウェブ上で作成された設備所有者による日常巡視の点検設備および当該設備の点検項目が含まれる日常巡視点検表D3(ウェブ上のフォーマット)を取得する。
【0125】
このとき、契約相手である主任技術者が、ウェブ上で上記日常巡視点検表D3の作成支援を行ってもよい。
次に、ステップS23では、予定実績テーブル作成部12が、ステップS21において入力受付部11が取得した実施スケジュールD2と、ステップS22において入力受付部11が取得した日常巡視点検表D3とに基づいて、予定実績テーブルD5を作成する。
【0126】
このとき、契約相手である主任技術者は、設備所有者が実施した日常巡視を参考にして、設備所有者に対して現場診察および問診を行ってもよい。
次に、ステップS24では、記憶部16が、契約相手である主任技術者によって、例えば、ウェブ上で作成され、入力受付部11を介して入力された評価記号テーブルD6を保存する。
【0127】
次に、ステップS25では、入力受付部11が、契約相手である主任技術者によって、例えば、ウェブ上で作成された評点が記入された評点補正テーブルD4を取得する。
次に、ステップS26では、入力受付部11が、契約相手である主任技術者から設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率および設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出するための評価指示を受け付ける。
【0128】
次に、ステップS27では、点検率算出部13(実施率算出部13a)が、ステップS23において予定実績テーブル作成部12が作成した予定実績テーブルD5を用いて、設備所有者による日常巡視が予定されていたスケジュール通りに実施されたか否かを定量的に表した値である実施率を算出する。
また、点検率算出部13(記入率算出部13b)が、ステップS23において予定実績テーブル作成部12が作成した予定実績テーブルD5を用いて、設備所有者による日常巡視が所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である記入率を算出する。
【0129】
また、点検率算出部13は、上記実施率と上記記入率とを乗算することで設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率を算出する。
次に、ステップS28では、還元費算出部15が、ステップS27において点検率算出部13が算出した点検率と、ステップS25において入力受付部11が取得した評点補正テーブルD4に含まれる補正値および補正単価と、契約相手である主任技術者によって入力受付部11に入力された還元係数とを乗算することで、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を算出する。
【0130】
次に、ステップS29では、記憶部16が、契約相手である主任技術者によって、例えば、ウェブ上で作成され、入力受付部11を介して入力された料金テーブルD7を保存する。
次に、ステップS30では、還元費算出部15が、ステップS28において還元費算出部15が算出した還元費を、設備所有者の契約更新時における前回料金から差し引くことで、次回料金を設定する。
【0131】
これにより、点検率を用いて、設備所有者による設備保全業務を適切に評価した結果に基づいて、設備の管理費用が還元費として還元することで、設備所有者の設備保全における当事者意識を高めることにつながる。このため、設備所有者による積極的な日常巡視を促すことができる。
この結果、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができる。
【0132】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、設備点検評価装置および還元費算出方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0133】
例えば、上述した還元費算出方法をコンピュータに実行させる還元費算出プログラムとして本発明を実現してもよい。
この還元費算出プログラムは、設備点検評価装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された還元費算出プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが還元費算出プログラムを読み込んで、上述した入力受付ステップと、点検率算出ステップと、還元費算出ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、還元費算出プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0134】
(B)
上記実施形態では、点検率算出部13は、実施率算出部13aにおいて算出される設備所有者による日常巡視が予定されていたスケジュール通りに実施されたか否かを定量的に表した値である実施率と、記入率算出部13bにおいて算出される設備所有者による日常巡視が所定の設備について所定の点検項目に点検結果が記載されている割合を定量的に表した値である記入率と、の乗算に基づいて、設備所有者による点検の実施度合いを示す点検率を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、点検率算出部は、実施率算出部において算出される実施率のみを用いて点検率を算出してもよい。
この場合でも、実施率に基づいて算出された点検率は、設備の保全リスクを定量的に表すことができる。
【0135】
(C)
上記実施形態では、点検率算出部13は、実施率算出部13aにおいて算出される実施率と、記入率算出部13bにおいて算出される記入率と、の乗算に基づいて、点検率を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、点検率算出部は、記入率算出部において算出される記入率のみを用いて点検率を算出してもよい。
この場合でも、記入率に基づいて算出された点検率は、設備の保全リスクを定量的に表すことができる。
【0136】
(D)
上記実施形態では、点検率算出部13は、実施率算出部13aにおいて算出される実施率と、記入率算出部13bにおいて算出される記入率と、の乗算に基づいて、点検率を算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、点検率算出部は、実施率および記入率以外の指標(例えば、設備の経過年数、設置地域、危険物施設の点検リスク等)に基づいて点検率を算出してもよい。
この場合でも、算出された点検率は、設備の保全リスクを定量的に表すことができる。
【0137】
(E)
上記実施形態では、還元費算出部15は、設備所有者に設備の管理費用を還元する還元費を、還元費=点検率×補正値×補正単価×還元係数の計算式で算出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、還元費算出部は、上記計算式を任意に変更してもよく、任意の項を計算式から除外して簡略化することや、新たな項を設けて複雑化してもよい。
この場合でも、算出された還元費は、保安事業者の緊急・臨時点検応動や、設備の事故発生リスクが軽減されるという経済的期待値を金額として表すことができる。
【0138】
(F)
上記実施形態では、還元費算出部15は、契約更新時における次回料金を設定する際に、還元費を設備点検評価D8に含まれる基本リスク対応費および臨時応動見込費に1/2ずつ分配する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、還元費算出部は、還元費を分配する比率を任意に設定してもよく、基本リスク対応費に3/10、臨時応動見込費に7/10のように分配してもよい。
この場合でも、次回料金から減額される合計金額は同じであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0139】
(G)
上記実施形態では、設備所有者によってウェブ上で作成され、入力受付部11に入力された日常点検情報D1を保存する記憶部16が、設備点検評価装置10内に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0140】
例えば、日常点検情報を保存する記憶部は、設備点検評価装置の外部に設けられたサーバ等に設けられてもよい。つまり、本発明の設備点検評価装置は、外部の記憶装置等から必要なデータを取得することができる構成であれば、記憶部を備えていない構成であってもよい。
この場合でも入力受付部は設備点検評価装置の外部に設けられたサーバから、日常点検情報を取得することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の設備点検評価装置は、設備所有者による適切な設備保全業務を支援することができるという効果を奏することから、設備所有者が利用する設備を管理する各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0142】
10 設備点検評価装置
11 入力受付部
12 予定実績テーブル作成部
13 点検率算出部
13a 実施率算出部
13b 記入率算出部
15 還元費算出部
16 記憶部
D1 日常点検情報
D2 実施スケジュール
D3 日常巡視点検表
D4 評点補正テーブル
D5 予定実績テーブル
D6 評価記号テーブル
D7 料金テーブル
D8 設備点検評価