IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 芝浦メカトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図1
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図2
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図3
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図4
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図5
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図6
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図7
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図8
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図9
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図10
  • 特開-錠剤搬送装置および錠剤印刷装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051620
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】錠剤搬送装置および錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 69/04 20060101AFI20240404BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20240404BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B65G69/04
A61J3/06 Q
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157889
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】生田 亮
(72)【発明者】
【氏名】栗林 徹
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊幸
【テーマコード(参考)】
2C056
3F078
4C047
【Fターム(参考)】
2C056FA02
2C056FB09
2C056HA29
2C056HA58
2C056HA60
3F078AA05
3F078BA01
4C047LL10
(57)【要約】
【課題】空間を有効に利用して、錠剤の損傷を防ぎつつ、錠剤の回収をすることができる錠剤搬送装置および錠剤印刷装置を提供する。
【解決手段】錠剤Tを搬送する錠剤搬送装置であって、錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、搬送装置により搬送される錠剤を回収する回収装置と、を有し、回収装置は、搬送装置から排出される錠剤を収容する回収ボックスと、回収ボックス内に配置され、搬送装置から排出された錠剤を受ける傾斜面を備えた分散板と、を有し、分散板の傾斜面は、錠剤を受ける位置よりも下端側に、錠剤の外径よりも大きい貫通孔を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、
搬送装置により搬送される前記錠剤を回収する回収装置と、を有し、
前記回収装置は、
前記搬送装置から排出される前記錠剤を収容する回収ボックスと、
前記回収ボックス内に配置され、前記搬送装置から排出された前記錠剤を受ける傾斜面を備えた分散板と、を有し、
前記分散板の前記傾斜面は、前記錠剤を受ける位置よりも下端側に、前記錠剤の外径よりも大きい貫通孔を有することを特徴とする錠剤搬送装置。
【請求項2】
前記回収装置は、前記搬送装置から排出される前記錠剤が前記回収ボックスへ移動する経路となるシュートをさらに有し、
前記シュートから前記錠剤が排出される位置は、前記傾斜面の最も高い位置と対向する位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の錠剤搬送装置。
【請求項3】
前記傾斜面の、水平面に対する傾斜角度は、前記錠剤の安息角よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の錠剤搬送装置。
【請求項4】
前記傾斜面の、水平面に対する傾斜角度は、前記錠剤の摩擦角よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の錠剤搬送装置。
【請求項5】
前記傾斜面は、前記搬送装置から排出された前記錠剤を受ける第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面から前記錠剤を受け渡される第2の傾斜面とを有し、
前記第1の傾斜面の、水平面に対する傾斜角度は、第2の傾斜面の、水平面に対する傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の錠剤搬送装置。
【請求項6】
搬送装置により搬送される錠剤に印刷を行う錠剤印刷装置であって、
前記搬送装置により搬送される前記錠剤に印刷をおこなう印刷装置と、
前記印刷装置を通過した前記錠剤を回収する回収装置と、を有し、
前記回収装置は、
前記搬送装置から排出される前記錠剤を収容する回収ボックスと、
前記回収ボックス内に配置され、前記搬送装置から排出された前記錠剤を受ける傾斜面を備えた分散板と、を有し、
前記分散板の前記傾斜面は、前記錠剤を受ける位置よりも下端側に、前記錠剤の外径よりも大きい貫通孔を有することを特徴とする錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤搬送装置および錠剤印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送装置により錠剤を搬送しながら撮像や印刷を行うことにより、錠剤の外観の検査、錠剤への印刷、当該印刷状態の検査などの処理を行う装置が開発されている。これらの装置には回収ボックスを有する回収装置が設けられ、当該処理を終えた錠剤が回収される。あるいは、錠剤の外観検査や印刷状態の検査で不良品となったものや、なんらかの理由で印刷が行われなかった錠剤については、それ以外の錠剤とは区別して回収がなされることがある。いずれの場合においても、錠剤は搬送装置から順次、回収ボックスに排出され、回収ボックスには複数個の錠剤が収容される。
【0003】
このような回収ボックスは、容量が小さいと頻繁に入替、交換が必要となってしまい、効率が悪い。これを解決するために回収ボックスの容量を大きくすることが考えられる。具体的には、回収ボックスを高さ(鉛直)方向に大きくするか、あるいは水平方向に大きくするかの方法を採ることになるが、高さ方向に大きくすると搬送装置からの落下距離が長くなるので錠剤が破損するリスクが高まり、水平方向に大きくすると搬送装置からの排出位置の真下を中心に山状に積もってしまい(山積する)、回収ボックスの容積を有効に利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-58220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、空間を有効に利用して、錠剤の損傷を防ぎつつ、錠剤の回収をすることができる錠剤搬送装置および錠剤印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る錠剤搬送装置は、錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、搬送装置により搬送される前記錠剤を回収する回収装置と、を有し、前記回収装置は、前記搬送装置から排出される前記錠剤を収容する回収ボックスと、前記回収ボックス内に配置され、前記搬送装置から排出された前記錠剤を受ける傾斜面を備えた分散板と、を有し、前記分散板の前記傾斜面は、前記錠剤を受ける位置よりも下端側に、前記錠剤の外径よりも大きい貫通孔を有することを特徴とする。
【0007】
実施形態に係る錠剤印刷装置は、搬送装置により搬送される錠剤に印刷を行う錠剤印刷装置であって、前記搬送装置により搬送される前記錠剤に印刷をおこなう印刷装置と、前記印刷装置を通過した前記錠剤を回収する回収装置と、を有し、前記回収装置は、前記搬送装置から排出される前記錠剤を収容する回収ボックスと、前記回収ボックス内に配置され、前記搬送装置から排出された前記錠剤を受ける傾斜面を備えた分散板と、を有し、前記分散板の前記傾斜面は、前記錠剤を受ける位置よりも下端側に、前記錠剤の外径よりも大きい貫通孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、空間を有効に利用して、錠剤の損傷を防ぎつつ、錠剤の回収をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置の構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る印刷装置を示す平面図である。
図3】第1の実施形態に係る不良品回収部を示す側面図である。
図4】第1の実施形態に係る分散板を示す斜視図である。
図5】第1の実施形態に係る不良品回収部を示す側面図である。
図6】その他の実施形態に係る分散板を示す斜視図である。
図7】その他の実施形態に係る分散板を示す斜視図である。
図8】その他の実施形態に係る不良品回収部を示す側面図である。
図9】その他の実施形態に係る不良品回収部を示す側面図である。
図10】その他の実施形態に係る不良品回収部を示す側面図である。
図11】その他の実施形態に係る分散板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、錠剤印刷装置1は、供給装置10と、印刷装置20と、回収装置30と、制御装置40とを備える。
【0012】
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有する。この供給装置10は、印刷装置20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを印刷装置20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tを整列フィーダ12に順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に二列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを印刷装置20まで二列で搬送して印刷装置20に渡す。整列フィーダ12としては、例えばベルト搬送機構や振動フィーダが用いられる。受渡フィーダ13としては、例えばベルト搬送機構が用いられる。この受渡フィーダ13のベルト搬送機構は、搬送方向A2(反時計回り方向)に回転している。供給装置10は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
【0013】
印刷装置20は、搬送部21(搬送装置)と、検出部22と、第1の撮像部23と、インクジェットヘッド24と、第2の撮像部25と、乾燥部26とを備える。
【0014】
搬送部21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有する。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置40に接続されており、検出信号を制御装置40に送信する。搬送部21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを走行させ、搬送ベルト21a上の錠剤Tを搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。
【0015】
図2に示すように、搬送ベルト21aには円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔は、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ブロワが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ブロワの作動により吸引チャンバ21f内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ブロワは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。吸引チャンバ21f内が減圧されると、搬送ベルト21aの各吸引孔上に置かれた錠剤Tは吸引孔により吸引され、搬送ベルト21a上に保持される。
【0016】
検出部22は、供給装置10が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される各搬送路の上方に設けられている。この検出部22は、レーザ光の投受光によって検出部22の直下の検出位置に到達した錠剤T(錠剤Tの到来)、すなわち搬送ベルト21a上の錠剤TのX方向の位置を検出する。また、検出部22は、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さを検出する。検出部22としては、例えば、変位センサが用いられる。また、変位センサとしては、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。検出部22は制御装置40に電気的に接続されており、制御装置40に検出信号を送信する。
【0017】
第1の撮像部23は、検出部22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔で形成される各搬送路の上方に設けられている。この第1の撮像部23は、検出部22により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置40に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を検出するため、また、錠剤Tの損傷や異物付着(例えば、割れや欠け、汚れなど)の有無を検出するために用いられる。第1の撮像部23としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部23は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0018】
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域のXY平面に沿った水平面内での錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。なお、X方向およびY方向は、水平方向における位置である。
【0019】
インクジェットヘッド24は、第1の撮像部23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔で形成される各搬送路の上方に設けられている。インクジェットヘッド24は、複数のノズル(図2中では4つのみ図示しているが、数百個から数千個のノズルが設けられることが多い)を有し、ノズルが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向A1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド24は、ノズルごとの駆動素子の動作によって各ノズルから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド24としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド24は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
【0020】
第2の撮像部25は、インクジェットヘッド24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される各搬送路の上方に設けられている。この第2の撮像部25は、検出部22により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置40に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部25としては、前述の第1の撮像部23と同様、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部25は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0021】
図1に戻り、乾燥部26は、搬送ベルト21aに対向する位置に配置されており、例えば、搬送部21の下方に設けられている。この乾燥部26は、二列の搬送路の上方に共通して一つ設けられており、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥部26としては、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機などの各種の乾燥機が用いられる。乾燥部26は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
【0022】
回収装置30は、乾燥部26が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送部21の下方に設けられている。この回収装置30は、再利用品回収部31と、不良品回収部32と、良品回収部33とを有する。これらは、すべて二列の搬送路の下方に共通して一つ設けられている。回収装置30は、再利用品回収部31により再利用品の錠剤Tを回収し、不良品回収部32により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収部33により良品の錠剤Tを回収する。例えば、再利用品は再利用可能な錠剤であり、無損傷及び異物未付着の非印刷錠である。また、不良品は異物付着の非印刷錠や無損傷及び異物未付着の印刷不合格錠(印刷済錠)などであり、良品は無損傷及び異物未付着の印刷合格錠(印刷済錠)である。印刷の良否判定(合格又は不合格)については後述する。なお、再利用品回収部31、不良品回収部32及び良品回収部33における搬送方向A1への並び順は、図1に示す並び順に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。回収装置30は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
【0023】
再利用品回収部31は、噴射ノズル31aと、回収ボックス31bとを有する。また、不良品回収部32は、噴射ノズル32aと、回収ボックス32bとを有する。良品回収部33は、噴射ノズル33aと、回収ボックス33bとを有する。これらの噴射ノズル31a、32aは基本的に同じ構造を有し、各回収ボックス31b、32b、33bも基本的に同じ構造を有する。このため、代表として噴射ノズル32a及び回収ボックス32bについて説明する。噴射ノズル33aのみ構造が異なるため、これについては後述する。
【0024】
図3は、不良品回収部32を錠剤搬送方向下流側から見た図である。なお、搬送ベルト21aのうち、下側部分に位置する一部を示し、搬送部21の他の部分は省略して示している。噴射ノズル32aは図3に示すように搬送ベルト21aの搬送路に対して一つずつ設けられ、二本の噴射ノズル32aは二つの搬送路間に背中合わせになるように設けられている。二本の噴射ノズル32aはそれぞれ、一端には噴射口が形成され、他端は気体供給源60に接続されている。噴射ノズル32aの気体噴射方向は、錠剤Tの搬送方向と直交する方向であることが望ましい。噴射ノズル32aによって吹き飛ばしたい錠剤Tは不良品である錠剤Tのみであるから、搬送方向に並ぶ他の錠剤T(不良品回収部32による回収対象でない錠剤T)に噴射ノズル32aからの気体が吹き付けられることを防ぎつつ、確実に不良品である錠剤Tのみに気体が吹き付けられるようにすることが望ましいからである。搬送ベルト21aの幅方向(錠剤の搬送方向A1と直交する方向)両サイドにはシュート32cが設けられ、シュート32cには噴射ノズル32aに対向するようにシュート開口部32dが設けられる。シュート32cは、噴射ノズル32aにより吹き飛ばされた錠剤Tを、シュート開口部32dを介して受け、回収ボックス32bに落下するまでの経路(図3に矢印で示す)として機能する。シュート32cの最も高い位置(天井部分)は、搬送ベルト21aの錠剤T搬送面よりも高い位置に設けられ、噴射ノズル32aにより吹き飛ばされた錠剤Tがシュート開口部32dに確実に受けられるように配置されている。シュート32cの排出口の下方には回収ボックス32bが設けられる。
【0025】
回収ボックス32bは回収ボックス本体321と、分散板32e(図4参照)、カバー32fを有する。分散板32eは回収ボックス本体321の内部に備えられる。カバー32fはシュート32cと回収ボックス本体321の間に設けられ、これによりシュート32cと回収ボックス本体321の間から錠剤Tが落下しないようになっている。カバー32fは筒状の形状を有し、回収ボックス本体321の側面の延長線上に設けられ、シュート32cから排出される錠剤Tが回収ボックス本体321に回収される移動経路に干渉することなく設けられる。
【0026】
図4および図5に示すように、分散板32eは、中央部分に錠剤Tの搬送方向と直交する方向に延びる稜線部32gを有し、この稜線部32gを境に2つの傾斜面が合わさる切妻屋根形状を有している。つまり、稜線部32gが分散板32eの頂部となる。分散板32eは回収ボックス本体321の内部に設けられ、稜線部32gの高さ位置が回収ボックス32bの鉛直方向における最も高い位置よりもやや低い位置となるよう設けられる。分散板32eの二つの傾斜面の、稜線部32gとは異なる二つの端部は、それぞれ回収ボックス本体321の両側面(搬送方向A1において対向する側面)に接触するように設けられる。回収ボックス本体321の両側面には図示しない突起が設けられ、当該突起に分散板32eの端部が支持される。また、分散板32eには複数の貫通孔32hと、仕切り板32jが設けられる。複数の貫通孔32hは矩形状の貫通孔であり、いずれの辺の長さも錠剤Tの外径よりも大きく(例えば錠剤Tの直径の1.5倍以上)、錠剤Tが通過可能な大きさとなっている。貫通孔32hは、分散板32eの傾斜方向に沿って等間隔に複数並び、稜線部32gが延びる方向に沿って複数列(本実施形態においては四列)形成されている。回収ボックス本体321には、引き出し用のつまみ321aが備えられ(図3参照)、つまみ321aを引っ張ることにより回収ボックス本体321をY方向に引き出すことができるようになっている。回収ボックス本体321を引き出す際にはカバー32fを外して引き出す。なお、回収ボックス本体321の稜線部32gとシュート32cの排出口との間の位置には図示しないセンサ(満杯センサ)が設けられ、この満杯センサにより満杯状態が検知されると、図示しない表示装置などにその旨が表示されるようになっている。
【0027】
ここで、再利用品回収部31及び不良品回収部32を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、噴射ノズル33aによって錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下する。したがって、噴射ノズル33aを設けることで、搬送ベルト21aから錠剤Tを確実に落下させることができる。回収ボックス33bは、噴射ノズル33aから噴射された気体により搬送ベルト21aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。なお、噴射ノズル33aは噴射ノズル32aとは異なり錠剤Tの上方から回収ボックス33bに向かって気体を吹き付ける。
【0028】
制御装置40は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給装置10や印刷装置20、回収装置30などを制御する。また、制御装置40は、搬送部21の位置検出器21eや検出部22からそれぞれ送信される検出情報(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部23や第2の撮像部25から送信される画像情報などを受信する。制御装置40は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
【0029】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について図1を参照して説明する。この印刷工程は、検査工程も含む。なお、印刷に要するデータなどの各種情報は、制御装置40、例えば、制御装置40が備える記憶部(図示せず)に予め記憶されている。
【0030】
供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。ランダムな間隔で搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の搬送速度で搬送されていく。
【0031】
搬送ベルト21a上の錠剤Tは、検出部22によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、検出部22の直下の検出位置(例えば、レーザ光の照射位置)に到達すると検出部22によって検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21aにおいて錠剤Tの搬送方向A1の位置が制御装置40によって認識される。そして、その錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置情報が制御装置40により生成され、制御装置40の記憶部に保存される。
【0032】
次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが第1の撮像部23によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部23によって撮像され、その第1の撮像部23による撮像により得られた第1の画像が制御装置40に送信される。この第1の画像は、制御装置40によって処理される。詳しくは、第1の画像が制御装置40により処理され、その第1の画像に基づいて、錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報、また、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報が生成されて、制御装置40の記憶部に保存される。
【0033】
次いで、錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報に基づき、対象の錠剤Tへの印刷可否が制御装置40により判断される。対象の錠剤Tへの印刷が可であると判断されると、印刷実行に向けた処理が実行される。例えば、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、印刷可に設定された錠剤T(印刷可の錠剤T)に対する使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が制御装置40の記憶部に設定される。また、前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。一方、対象の錠剤Tへの印刷が否であると判断されると、対象の錠剤Tに対する印刷や検査に関する動作が制限される。なお、錠剤Tの印刷可否情報は、適宜制御装置40の記憶部に保存される。なお、印刷や検査に関する動作の「制限」とは、少なくとも対象となる錠剤Tに対する印刷および検査に関する処理を行わないことを意味する。
【0034】
その後、上記の印刷条件に基づいて印刷がインクジェットヘッド24により実行される。つまり、インクジェットヘッド24が、搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tに所定の印刷パターンを印刷するように制御装置40により制御される。詳しくは、第1の撮像部23の下方を通過した搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tは、インクジェットヘッド24の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド24によって印刷される。インクジェットヘッド24では、各ノズルからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(番号、アルファベット、片仮名、記号、図形など)が印刷される。
【0035】
次に、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部25によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部25によって撮像され、その第2の撮像部25による撮像により得られた第2の画像が制御装置40に送信される。この第2の画像は、制御装置40によって処理される。制御装置40により処理された画像に基づき、制御装置40内の検査部(図示せず)により錠剤Tの良否判定が行われる。これにより、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)、また、錠剤Tに汚れがあるか否かが判断される。これらの印刷状態検査の結果情報及び汚れの有無検査の結果情報を含む印刷良否情報は、適宜制御装置40の記憶部に保存される。
【0036】
その後、搬送ベルト21a上の錠剤Tが回収装置30により回収される。詳しくは、再利用品の錠剤Tが搬送ベルト21aの移動に伴って再利用品回収部31に到達すると、噴射ノズル31aによって錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス31bにより収容される。同様に、不良品の錠剤Tが搬送ベルト21aの移動に伴って不良品回収部32に到達すると、噴射ノズル32aによって錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス32bにより収容される。また、良品の錠剤Tが搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達すると、錠剤Tに吸引作用が働かなくなり、噴射ノズル33aによって錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス33bにより収容される。このような気体の吹き付けに関する制御は、例えば、錠剤Tの位置情報、印刷可否情報、印刷良否情報(印刷状態検査の結果情報、汚れの有無検査の結果情報)などの各種の情報に基づいて制御装置40により実行される。
【0037】
ここで、不良品回収部32における、不良品となった錠剤Tの回収について、図3乃至図5を用いて説明する。再利用品回収部31および良品回収部33においても概ね同じ構成である(詳しくは後述する)。制御装置40の検査部において不良品と判断された錠剤Tは、噴射ノズル32aと対向する位置に到達したときに噴射ノズル32aによる気体の吹き付けが実施される。不良品となった錠剤Tの位置情報は、先に述べた位置検出器21eにより把握され、噴射ノズル32aによる気体の噴射タイミングは制御装置40により制御される。
【0038】
噴射ノズル32aからの気体が吹き付けられた錠剤Tはシュート開口部32dからシュート32c内に入り、図3に示す矢印で示す方向に沿って回収ボックス32bへと向かう。シュート32cから排出された錠剤Tは、回収ボックス本体321に設けられる分散板32eの稜線部32g(分散板32eの傾斜面の最も高い位置)に衝突する。つまり、シュート32cの排出口は、稜線部32gに対向するように設けられる。稜線部32gに衝突した錠剤Tは図4に示す矢印の経路をたどって分散板32eの傾斜面を移動し、分散板32eの貫通孔32hから落下していく。貫通孔32hから回収ボックス本体321に落下した錠剤Tは、回収ボックス本体321の底部から順次積み重なっていく。
【0039】
ここで、図5に示すように分散板32eの傾斜面の角度a(水平面に対する傾斜面の傾斜角度)は、10度~30度が望ましい。回収ボックス32bに落下してくる錠剤Tは、噴射ノズル32aによって強制的にシュート32cに移動させられ、その後もシュート32cの壁面などにぶつかりながら落下してくることが考えられる。したがって、角度aが錠剤Tの摩擦角(例えば錠剤の平らな面の分散板32eに対する摩擦角を基準に考えることができる)よりも小さい場合であっても分散板32eの傾斜面を移動していくことができる。しかしながら角度aが錠剤Tの摩擦角よりも極端に小さすぎる場合には、錠剤Tが貫通孔32hから回収ボックス本体321の底面へと落下することなく分散板32e上にとどまってしまうことがある。そうすると、順次シュート32cから落下してくる錠剤Tが次々と分散板32e上にとどまり、ある程度たまったところで錠剤T同士がぶつかりあいながら移動して、貫通孔32hから落下することになる。このように錠剤T同士がぶつかりあいながら移動することになると、錠剤Tの損傷の原因になる。あるいは錠剤Tが印刷後の錠剤である場合には、錠剤T上の印刷部分がこすれ合い、インクにより着色した粉が生じることになる。これによって錠剤Tの印刷がなされていない部分にインクにより着色した粉が付着するなどして錠剤Tに汚れが生じることになる。したがって、角度aは、分散板32e上に他の錠剤Tがないときに、シュート32cから落下してくる錠剤Tが分散板32e上にとどまることなく移動していくことができる角度であることが望ましい。
【0040】
分散板32eの傾斜面の角度aが大きすぎる場合、例えば錠剤Tの安息角(錠剤を山形に積み上げたときに山が崩れることなく斜面を維持することができる最大角度)より大きい場合には、錠剤Tは分散板32e上にとどまることなく移動できるものの、回収ボックス32bにおける収容効率が悪くなってしまう。例えば、傾斜面の角度aを図5に示す角度(およそ20度)よりも大きい角度にしようとすると、回収ボックス本体321の底面(側面との接点よりも内側の領域)に分散板32eの終端部(稜線部32gとは反対側の端部)を設けることになる。傾斜面の角度aが安息角を大幅に超えた角度(例えば50度)に設定し、実験を行った結果、排出された錠剤Tのほとんどが分散板32eの終端部付近に向かってすべり落ちていき、分散板32eの終端部付近に錠剤Tが山状に溜まり(つまり分散板32eの終端部両脇に2つの山ができる)、稜線部32gの真下あたりには錠剤Tが溜まりづらく、スペースが生じた。つまり稜線部32gの真下付近には錠剤Tが収容可能なスペースが多く残されているにもかかわらず、満杯状態となってしまう。さらに、角度aが大きい場合、分散板32eの終端部両脇に錠剤Tが山積みになっていく過程において、錠剤T同士がこすれ合う機会が多くなる。そうすると、錠剤Tの損傷の原因になる。あるいは錠剤Tが印刷後の錠剤である場合には、錠剤T上の印刷部分がこすれ合い、インクにより着色した粉が生じることになる。これによって錠剤Tの印刷がなされていない部分にインクにより着色した粉が付着するなどして錠剤Tに汚れが生じることになる。
【0041】
分散板32eには、図4に示すように仕切り板32jが設けられている。仕切り板32jは、搬送ベルト21a上の二本の搬送路間に対応する位置に設けられ、一方のシュート32cから排出される錠剤Tと他方のシュート32cから排出される錠剤Tとを強制的に分ける役割を果たす。シュート32cの排出口から排出される錠剤Tは、噴射ノズル32aによって強制的にシュート32cに移動させられているため、シュート32cの壁面などにぶつかりながら落下してくる。すなわち、概ね図3に示す矢印の方向に沿って移動しつつも壁面にぶつかることで、稜線部32gの延びる方向における中央あたりに向かって排出されることがある。この位置に仕切り板32jが設けられていると、稜線部32gの延びる方向における中央あたりに移動してきた錠剤Tが仕切り板32jに当たり、中央あたりに存在し続けることなく二つに分かれる。つまり分散板32eは、稜線部32gを有することでX方向における錠剤Tの分散を促し、仕切り板32jを有することでY方向における錠剤Tの分散を促す機能を有する。
【0042】
シュート32cから排出された錠剤Tは、分散板32eの上の貫通孔32hが設けられない領域(錠剤Tを受ける位置)に落下したあと、順次分散板32e上を移動しつつ、貫通孔32hを通過して回収ボックス本体321の底部に到達し、徐々に積もっていく。シュート32cから排出される錠剤Tが最初に分散板32eに接触する箇所である、稜線部32gを挟む一定領域には貫通孔32hが設けられていない。つまり、シュート32cの排出口は平面視で分散板32eの貫通孔32hと重複しない位置、大きさとなるように設けられる。これにより、シュート32cから排出された錠剤Tが分散板32eを経由することなく回収ボックス本体321に落下して山状に積みあがることを防止し、回収ボックス本体321の容積を有効に利用することができる。
【0043】
分散板32eは傾斜面を有しているので、シュート32cから排出される錠剤Tは傾斜面(複数列形成される貫通孔32hの列間)を移動し、稜線部32gから最も離れた、回収ボックス321の両端部に形成される貫通孔32hに最も入りやすい。傾斜面を移動している途中に存在する貫通孔32hから回収ボックス本体321の底部へ落下する錠剤も一定数あるものの、多くの錠剤Tは稜線部32gから最も離れた貫通孔32hを通過することになる。この、回収ボックス本体321の両端部に位置する貫通孔32hの下方に錠剤Tが複数積もっていき、両端部に位置する貫通孔32hが錠剤Tによって塞がれると、錠剤Tは一定数が当該塞がれた貫通孔32hの上方付近にとどまり、一定数は当該塞がれた貫通孔32hの隣(X方向において稜線部32gに近づく方向の隣)に位置する貫通孔32hから落下するようになる。さらにこの貫通孔32hの下方に錠剤Tが複数積もっていき、当該貫通孔32hが錠剤Tによって塞がれると、次に落下してくる錠剤Tは当該塞がれた貫通孔32hの上方付近にとどまり、あるいはその隣に位置する貫通孔32hから落下するようになる。これを繰り返して、回収ボックス本体321内には、分散板32eの下方および上方に多数の錠剤Tが収容されていく。
【0044】
分散板32eは傾斜面を有しているため、この分散板32eが備えられなかった場合には到達しなかった位置(X方向における位置)にまで錠剤Tが移動することになり、回収ボックス本体321の容積を有効に利用することができる。また、分散板32eを有しない場合と比較して、同じ容量の錠剤Tを収容するにも回収ボックス本体321の深さを浅くすることができる。これにより、シュート32cの排出口から落下する高低差を小さくすることができ、錠剤Tに損傷が生じることを防止することができる。さらに、分散板32eが備えられなかった場合には、回収ボックス321のシュート32cの排出口の直下に複数の錠剤Tが山積していき、積みあがれなくなったものが錠剤T上を移動することになっていたが、分散板32eが備えられることにより錠剤Tは主に分散板32e上を移動するので、錠剤T同士がこすれ合う頻度を低下させることができる。これにより、錠剤Tに損傷が生じることを防止できる。さらに、錠剤Tが印刷錠剤であった場合のインクが着色した粉が生じることによる錠剤Tの汚れを防止することができる。また、シュート32cから排出される錠剤Tが直接回収ボックス本体321の底部へ落下する場合と比べ、分散板32e上を経由してから落下することにより、落下の衝撃で錠剤Tが割れたり欠けたりすることを防止することができる。
【0045】
このようにして回収ボックス32bに錠剤Tが回収されていき、満杯センサが満杯を検出すると、不図示の表示装置にその旨が表示される。オペレータはこれを受けて、カバー32fを取り外し、つまみ321aを引っ張って回収ボックス本体321を引き出して回収ボックス本体321内の錠剤Tを別の場所へ移動させる。
【0046】
回収装置30の不良品回収部32以外の回収部について説明する。再利用品回収部31は、不良品回収部32と同じく噴射ノズル31aが二つの搬送路間に設けられ、不図示のシュートを介して回収ボックス31bに回収される。回収ボックス31bにも不図示の分散板が設けられる。
【0047】
良品回収部33においては、回収ボックス33bや回収ボックス33b内に分散板32eが設けられることは共通しているが、噴射ノズル33aは錠剤Tの上方から気体を噴射して回収ボックス33bへ向かって錠剤Tを排出する。なお、この位置には吸引チャンバ21fが存在しないことから(図1参照)この位置では錠剤Tに吸引作用が働かなくなる。したがって、噴射ノズル33aを設けなくとも自動的に落下することになるので、噴射ノズル33aは設けずに、自然に落下する錠剤Tを回収ボックス33bで受けるようにしても良い。
【0048】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、錠剤Tが分散板32eを介して回収されることにより、回収装置30において、空間を有効に利用して、錠剤Tの損傷を防ぎつつ、錠剤Tを回収することができる。さらに、錠剤Tが印刷済の錠剤であった場合には錠剤Tの印刷がなされていない箇所が汚れることを防止することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記の実施形態においては、分散板32eの矩形状の貫通孔32hが傾斜方向に沿って等間隔に並ぶことを例示したが、図6に示すように各傾斜面に2つの貫通孔32hが設けられるようにしても良い。図6に示すような分散板32eによれば、稜線部32gに落下してきた錠剤Tは傾斜面に沿って移動し、貫通孔32hを通過して回収ボックス本体321に収容される。回収ボックス本体321の内部に収容される錠剤Tが多数になってくると、第1の実施形態と同じく、分散板32eの上に積み重なっていくことになる。したがって、図6に示すような分散板32eによっても第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0049】
また、上記の実施形態においては、分散板32eが切妻屋根形状であることを例示したが、これに限らず、例えば図7に示すように寄棟屋根形状としても良い。図7に示すような分散板32eによれば、傾斜面を四面有し、仕切り板32jを設けない。第1の実施形態で説明した傾斜面をY方向に延びる傾斜面とすると、Y方向に延びる傾斜面とは異なる二つのX方向に延びる傾斜面321gをさらに有する。これら四面の傾斜面には複数の貫通孔32hが設けられる(図7では四面のうち二面に形成される貫通孔32hの図示を省略している)。このように、傾斜面を四面有することで、仕切り板32jを設けなくともX方向における錠剤Tの分散およびY方向における錠剤Tの分散を促すことができる。なお、この例においてはシュート32cの排出口の中心が稜線部32gの真上に位置するよう、分散板32eを形成することが好ましい。
【0050】
また、図8に示すように、分散板32eは片流れ屋根形状のものであっても良い。この場合にも、図4と同じく、分散板32eには複数の貫通孔32hを設ける。また、分散板32eの最も高い位置付近(図8に矢印で示す)にシュート32cの排出口が設けられる。これによって、第1の実施形態と同じく、空間を有効に利用して錠剤Tを回収することができる。さらに、錠剤Tが印刷済みの錠剤であった場合には錠剤Tの印刷がなされていない箇所が汚れることを防止することができる。なお、この場合においての分散板32eの傾斜角度(図8に示す角度a)も、第1の実施形態で言及した角度aと同様に考慮して設定することができる。
【0051】
また、分散板32eの稜線部32gは回収ボックス本体321の、X方向における中央に設けられなくても良い。例えば図9に示すように、二つの傾斜面の角度を異ならせて、稜線部32gの位置を図9に示す左側寄りの位置に設けるようにしても良い。この場合においても、シュート32cの排出口は稜線部32gの真上(分散板32eの傾斜面における最も高い位置と対向する位置)であることが望ましい。図9に示すような分散板32eを用いた場合であっても、第1の実施形態と同じく、空間を有効に利用して錠剤Tを回収することができる。さらに、錠剤Tが印刷済みの錠剤であった場合には錠剤Tの印刷がなされていない箇所が汚れることを防止することができる。
【0052】
なお、分散板32eの終端部分(回収ボックス本体321の底面側に位置する端部)は、図9に示すように回収ボックス本体321の底面に接触しているよりも、図8に示すように回収ボックス本体321の底面に接触せず、側面(壁面)に接触している方がより望ましい。図9に示すように回収ボックス本体321の底面に接触している場合、錠剤Tのサイズによっては、回収ボックス本体321の隅部の、分散板32eの下方のエリアにおいて錠剤Tが収容されずにスペースが空いてしまうことがあるからである。
【0053】
また、図10に示すように分散板32eの傾斜面を二段階の傾斜としても良い。すなわち、シュート32cから排出される錠剤Tが稜線部32g上に落下したあと、最初に接触する第1の傾斜面S1と、その後移動していく第2の傾斜面S2とで、傾斜角度を異ならせる。第1の傾斜面S1の傾斜角度を角度b、第2の傾斜面S2の傾斜角度を角度aとすると、角度a<角度bとすることが望ましい。第1の傾斜面S1においては角度を急にすることで錠剤を傾斜方向に向かって移動させる力を与える。第2の傾斜面S2は第1の実施形態の分散板32eと同様の役割を担う。第1の傾斜面S1においては貫通孔32hを設けずに、すべての錠剤Tを第2の傾斜面S2に受け渡すようにする。第2の傾斜面S2の傾斜角度aは、第1の実施形態で言及した角度aと同様に考慮して設定することができる。第1の傾斜面S1の傾斜角度は、錠剤Tの摩擦角を超える角度であることが望ましく、錠剤Tの移動の促進が可能となるよう、考慮して設定することができる。
【0054】
なお、上述の実施形態においては、回収ボックス本体321の側面に設けられた突起により分散板32eの端部を支持することを例示したが、これに限らず、分散板32eの端部に回収ボックス本体321の側面と平行に延びる脚を設け、回収ボックス本体321内で分散板32eが自立するようにしても良い。
【0055】
前述の実施形態においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、印刷装置20を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の印刷装置20で印刷した錠剤Tを下側の印刷装置20に受け渡し、錠剤Tの両面を印刷し、回収装置30で回収するようにしてもよい。
【0056】
また、前述の実施形態においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列であっても三列以上の複数列であってもよく、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21aの本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド24の個数も三個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
【0057】
なお、搬送列が一列の場合には、特に、図7に示した寄棟屋根形状の分散板32eとするか、あるいは図11に示すような方形屋根(宝形屋根)形状であってもよい(図11において図示は省略しているが、各傾斜面に貫通孔32hが設けられる)。この場合、稜線部32gは不要であり、頂点Cの直上にシュート32cが設けられる。
【0058】
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24として、ノズルが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズルが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向A1と直交する方向にインクジェットヘッド24を複数並べて用いるようにしてもよい。
【0059】
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24をノズルが一列に並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズルが一列に並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と斜めに交差する方向になるように設けるようにしてもよい。
【0060】
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21a上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限られるものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21a上に形成された吸引孔によって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21a上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
【0061】
また、前述の説明においては、検出部22により錠剤Tの位置を検出し、これにより得られた位置情報に基づき、撮像や印刷などを行うことを例示したが、これに限られるものではなく、検出部22に代えて第1の撮像部23によって錠剤Tの位置を検出するようにしても良い。
【0062】
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 錠剤印刷装置
20 印刷装置
21 搬送部(搬送装置)
24 インクジェットヘッド
30 回収装置
32 不良品回収部
32e 分散板
32c シュート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11