(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051621
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】防水装置及びサッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240404BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157890
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】加納 直人
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】水原 一也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正博
(72)【発明者】
【氏名】藤森 英樹
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA08
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置することができる防水装置の提供。
【解決手段】開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、開口部に障子SD1、SD2を設置するための枠体(サッシ枠)よりも外側であって、少なくとも枠体(サッシ枠)の下部側の三方を取り囲むように取り付けられる防水部材取付枠12と、防水部材取付枠12に対して止水可能に取り付けられる防水部材11と、を備える、防水装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、
前記開口部にパネル体を設置するための枠体よりも外側であって、少なくとも前記枠体の下部側の三方を取り囲むように取り付けられる防水部材取付枠と、
前記防水部材取付枠に対して止水可能に取り付けられる防水部材と、
を備える、防水装置。
【請求項2】
前記防水部材が止水板であり、
前記防水部材取付枠が、上方から差し込まれる前記止水板を受け入れるガイド溝を備える、請求項1に記載の防水装置。
【請求項3】
前記止水板が、前記ガイド溝の内側に当接するシール部材を備えることにより、前記防水部材取付枠に対して止水可能に取り付けられる、請求項2に記載の防水装置。
【請求項4】
前記防水部材取付枠が、前記開口部の周囲の部材に対して止水可能に取り付けられる取付部と、前記取付部を覆うカバー部材と、を備える、請求項1に記載の防水装置。
【請求項5】
前記防水部材が、前記防水部材取付枠に対して、磁力によって止水可能に取り付けられる、請求項1に記載の防水装置。
【請求項6】
前記防水部材が止水シートであり、前記防水部材取付枠の前記止水シートと対向する箇所に磁石若しくは磁性体が設けられており、前記止水シートの前記防水部材取付枠と対向する箇所に磁性体若しくは磁石が設けられている、請求項5に記載の防水装置。
【請求項7】
前記防水部材取付枠が、前記開口部の周囲の部材に対して取り付けられる取付部と、前記取付部を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材に前記磁石若しくは前記磁性体が設けられている、請求項6に記載の防水装置。
【請求項8】
前記防水部材が止水シートであり、
前記止水シート若しくは前記止水シートと連続して設けられるシート状部材によって、前記開口部の全体を覆うことができることにより、遮光スクリーンとしても機能するように構成されている、請求項1に記載の防水装置。
【請求項9】
前記止水シート若しくは前記止水シート及び前記シート状部材を、シートをコンパクト化した収納状態からシートを展開した展開状態とすることができるように保持するシート保持部を備える、請求項8に記載の防水装置。
【請求項10】
前記防水部材が、展開可能な折り畳み構造を有し、折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、前記防水部材取付枠への取り付けが行われるように構成されている、請求項1に記載の防水装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載の防水装置を備えたサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置及び当該防水装置を備えたサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水害時における、建物等の開口部からの浸水を抑止若しくは低減させるための、開口部に設置する防水装置若しくは止水装置(以下「防水装置」という)が用いられている。
特許文献1には、このような防水装置として、防水シート若しくは止水シート(以下「止水シート」という)を用いるものに関する技術が開示されており、特許文献2には、防水板を用いるものに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-140563号公報
【特許文献2】特開2017-061793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防水装置は、建物等の開口部のうち、特に入口(即ち、基本的に開口の下端が地面と略同一レベルである箇所)に設けられるものであり、建物等の窓(開口の下端が地面よりも高い位置に形成されている開口部)に対して設けられる防水装置はなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置することができる防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して設置される防水装置であって、前記開口部にパネル体を設置するための枠体よりも外側であって、少なくとも前記枠体の下部側の三方を取り囲むように取り付けられる防水部材取付枠と、前記防水部材取付枠に対して止水可能に取り付けられる防水部材と、を備える、防水装置。
【0007】
(構成2)
前記防水部材が止水板であり、前記防水部材取付枠が、上方から差し込まれる前記止水板を受け入れるガイド溝を備える、構成1に記載の防水装置。
【0008】
(構成3)
前記止水板が、前記ガイド溝の内側に当接するシール部材を備えることにより、前記防水部材取付枠に対して止水可能に取り付けられる、構成2に記載の防水装置。
【0009】
(構成4)
前記防水部材取付枠が、前記開口部の周囲の部材に対して止水可能に取り付けられる取付部と、前記取付部を覆うカバー部材と、を備える、構成1から3の何れかに記載の防水装置。
【0010】
(構成5)
前記防水部材が、前記防水部材取付枠に対して、磁力によって止水可能に取り付けられる、構成1から4の何れかに記載の防水装置。
【0011】
(構成6)
前記防水部材が止水シートであり、前記防水部材取付枠の前記止水シートと対向する箇所に磁石若しくは磁性体が設けられており、前記止水シートの前記防水部材取付枠と対向する箇所に磁性体若しくは磁石が設けられている、構成5に記載の防水装置。
【0012】
(構成7)
前記防水部材取付枠が、前記開口部の周囲の部材に対して取り付けられる取付部と、前記取付部を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材に前記磁石若しくは前記磁性体が設けられている、構成5又は6に記載の防水装置。
【0013】
(構成8)
前記防水部材が止水シートであり、前記止水シート若しくは前記止水シートと連続して設けられるシート状部材によって、前記開口部の全体を覆うことができることにより、遮光スクリーンとしても機能するように構成されている、構成1に記載の防水装置。
【0014】
(構成9)
前記止水シート若しくは前記止水シート及び前記シート状部材を、シートをコンパクト化した収納状態からシートを展開した展開状態とすることができるように保持するシート保持部を備える、構成8に記載の防水装置。
【0015】
(構成10)
前記防水部材が、展開可能な折り畳み構造を有し、折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、前記防水部材取付枠への取り付けが行われるように構成されている、構成1に記載の防水装置。
【0016】
(構成11)
構成1から10の何れかに記載の防水装置を備えたサッシ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防水装置若しくはこれを備えたサッシによれば、開口の下端が地面より高い位置にある開口部に対して防水装置を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る実施形態1の防水装置の取り付け状態を示す概略垂直断面図
【
図2】実施形態1の防水装置の取り付け状態を示す概略水平断面図
【
図8】実施形態2の防水装置の取り付け状態を示す概略垂直断面図
【
図9】実施形態2の防水装置の取り付け状態を示す概略水平断面図
【
図11】実施形態3の防水装置の取り付け状態を示す概略垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0020】
<実施形態1>
図1、2は、本発明に係る実施形態1の防水装置をサッシ窓に取り付けた状態を示す概略図であり、
図1:概略垂直断面図、
図2:概略水平断面図である。
本実施形態の防水装置1は、サッシ窓に対して設置される防水装置であって、サッシ窓は「開口の下端が地面より高い位置にある開口部」である。
本実施形態の防水装置1は、開口部にガラス窓等のパネル体(外障子SD1、内障子SD2)を設置するための枠体であるサッシ枠よりも外側であって、少なくともサッシ枠の下部側の三方を取り囲むように取り付けられる防水部材取付枠12と、防水部材取付枠12に対して止水可能に取り付けられる防水部材である止水板11と、を備えている。
【0021】
サッシ窓は、家屋の壁(外壁OWが取り付けられている壁面W)に形成された開口部に取り付けられた、上枠21、下枠22、及び左右一対の竪枠23によって構成されるサッシ枠に対して、ガラス窓等の外障子SD1と内障子SD2が設置されている、引き違い窓である。また、本実施形態におけるサッシ窓は、下枠22が、家屋の土台Bに対して設置され、窓の内側の額縁(化粧窓枠)Fの下側の額縁が、床面と同一レベル(或いは、下側の額縁Fがフローリング材等の床面そのもの)となる掃き出し窓である。
下枠22には、それぞれ下端に戸車を有する外障子SD1、内障子SD2、網戸(特に図示せず)の走行をそれぞれガイドするレール部材222、レール部材223、レール部材221が形成されている。
なお、任意のサッシ窓に対して、本実施形態の防水装置の概念を適用できるものであるため、サッシ窓自体に関するこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0022】
止水板11は、以下で説明する防水部材取付枠12に取り付けられ、サッシ窓(開口部)の少なくとも下部側を覆うことで、水害時の水位上昇時においてサッシ窓部分の止水を行うものである。止水板11の基本的な態様は、正面視で(
図1の左側からみた場合、
図2では上側から見た場合に)略矩形の部材であり、水圧に抗する強度を備えさせると共に軽量化のため、アルミ、スチール、鋼材、ステンレス等の金属、若しくはPVC(板、又は押出材を連結して板状にしたもの)、アクリル板、ポリカーボネート板などの樹脂部材、によって形成された中空のパネル体(又は中空の内部に発泡ウレタンなどの充填剤を充填したもの)の構成を有している。
図1、2に示されるように、止水板の底面と両側面には、シール部材111が設けられている。即ち、止水板の3方を取り囲むように、シール部材111が設けられている。シール部材は遮水性を有しており、また、弾性を有していることが好ましく、軟質ゴム、発泡ゴムやウレタンなどの樹脂を用いて形成される。また、水膨張材(水を吸うことで膨張して隙間をふさぎ、止水する部材)を用いてもよい。
【0023】
防水部材取付枠12は、止水板11を取り付けるための取付枠であり、サッシ窓の室外側において、サッシ窓の少なくとも下部側を、サッシ窓の外側の三方を取り囲むようにして設けられる。即ち、防水部材取付枠12は、サッシ窓より下部側に位置する底辺部と、サッシ窓の両側に設けられる両側辺部とを備えた、正面視で略U字形の部材である。
図1、2に示されるように、防水部材取付枠12は、その断面形状が略矩形の中空の部材である。止水板11と同様に、止水板11を保持して水圧に抗する強度を備えさせると共に軽量化のため、アルミ、スチール、鋼材、ステンレス等の金属、若しくはPVC(板、又は押出材を連結して板状にしたもの)、アクリル板、ポリカーボネート板などの樹脂部材、によって形成された中空の部材(又は中空の内部に発泡ウレタンなどの充填剤が充填されたもの)である。
防水部材取付枠12は、上記の中空部分から突出した平板状の取付部122を備えている。
図1、2に示されるように、取付部122は底辺部及び両側辺部において形成されており、シール部材123を介して、外壁OWに対してネジ止め等によって固定される。これにより、防水部材取付枠12が、サッシ枠の下部側の三方を取り囲むようにして外壁OWに対して止水可能に取り付けられる。なお、防水部材取付枠12が外壁OW(開口部の周囲の部材)に対して止水可能に取り付けられるものであればよく、シール部材は、コーキングによって形成されるシーリング材等であってもよい。
また、防水部材取付枠12には、止水板11を取り付けるためのガイド溝121が形成されている。
図1、2に示されるように、ガイド溝121は底辺部及び両側辺部において形成されており、上方から差し込まれる止水板11を受け入れるように構成されている。前述のごとく、止水板11の底面と両側面にはシール部材111が設けられており、従って、ガイド溝121に止水板11を挿入することで、ガイド溝121の内側にシール部材が当接し、防水部材取付枠12に対して止水板11が止水可能に取り付けられるものである。
【0024】
以上のごとく、本実施形態の防水装置1によれば、既存のサッシ窓に対して比較的安価かつ手軽に止水対策を行うことができる。
近年の水害による被害の甚大化に伴い、床上浸水の被害も増大しており、床上浸水の被害を防止若しくは低減することのニーズが高まっている。床上浸水の被害を防止若しくは低減するためには、掃き出し窓における止水が不可欠であるが、引き違い窓等の引き戸式の窓においては、その構造上、止水をすることが容易でない面がある。これに対して、本実施形態の防水装置1によれば、既存のサッシ窓に対して、比較的安価かつ手軽に止水対策を行うことができるため、非常に有用である。
【0025】
なお、止水板11と防水部材取付枠12は、それぞれ相互に着脱可能であり、且つ、サッシ窓の少なくとも下部側を止水可能な構成であればよく、その具体的な構造としては種々の態様を取り得るものである。
図3~7には、止水板や防水部材取付枠に関する別の態様の例を示した。
【0026】
図3は、防水部材取付枠の別の例を示す図であり、
図3(a):概略垂直断面図(下部側のみ)、
図3(b):概略水平断面図(一端側のみ)である。
図3の例における防水部材取付枠12´は、外壁(開口部の周囲の部材)OWに対してシール部材123を介して取り付けられる取付部124と、取付部124を覆うカバー部材125と、を備えている。
取付部124は、断面視で略L字状の部材であり、L字状の一方の面によって取付面1241が構成されており、L字状の他方の面にガイド溝121が形成されている。取付面1241が、シール部材123を介して外壁OWに対してネジ止め等によって固定されることで、防水部材取付枠12´が、サッシ枠の下部側の三方を取り囲むようにして外壁OWに対して止水可能に取り付けられるものである。
カバー部材125も、断面視で略L字状の部材であり、取付部124に対してネジ止め等によって取り付けられることにより、防水部材取付枠12´を、その断面形状が略矩形の中空の部材となるように構成する。即ち、カバー部材125は、外壁OWに対する取付部を隠ぺいすると共に、防水部材取付枠を中空の部材とすることで、その断面係数を増大させる(即ち、防水部材取付枠の強度を向上する)ものである。
図3の防水部材取付枠12´によれば、外壁OWに対する取付面が露出しないようにすることができる(実施形態1の防水部材取付枠12の取付部122を無くすことができる)ため、意匠性に優れたものとすることができる。
【0027】
図4は、止水板の別の例を示す図であり、止水板が複数のパネル体を用いて構成されたものの例である。
図4の止水板11´は、2枚の止水板がヒンジHで接合されることにより、上下方向の軸に沿って左右に折り畳み及び展開可能な折り畳み構造を有している。2枚の止水板の接合部においては適宜止水構造(シール部材を備えさせること等による密着構造)が設けられる。
止水板11´の両サイドの構成は、実施形態の止水板11と同様の構成である。また、止水板11´の下端側の構成についても、実施形態1の止水板11と同様の概念となるものが形成されている。即ち、止水板11´は、実施形態1の止水板11を2分割にして、ヒンジHで折り畳み可能に接合したものと同様の概念である。
止水板11´の取り付けは、
図4(a)、(b)に示されるように、止水板11´を少し折り畳んだ状態として防水部材取付枠12の間に配し、折り畳みを展開することによって、止水板11´を防水部材取付枠12のガイド溝121に嵌合させる。即ち、止水板11´は、「折り畳みによって減少する幅寸法が、展開によって増大することに伴い、防水部材取付枠への取り付けが行われるように構成されている」ものである。なお、「幅寸法」とは窓の開閉方向(障子のスライド方向)に沿った方向の部材の長さである。
図4(a)、(b)の作業は、止水板11´の下端が防水部材取付枠12の下部側と干渉しない位置(高さ)で行われ、
図4(a)、(b)の作業の後に、
図4(c)に示されるように、止水板11´を下方にスライドさせることで、止水板11´の取り付けが完了するものである。
図4の止水板11´によれば、実施形態と同様の作用効果が得られると共に、止水板の収納時において折り畳みによってコンパクト化ができるという優れた作用効果を得ることができる。
なお、ここでは折り畳み箇所が1か所であるものを例としているが、
図5にその一例である止水板11´´を示したように、折り畳み箇所を複数とする(例えばアコーディオン状に折り畳めるようにする)ことで、収納時によりコンパクトにすることができるようにしてもよい。
【0028】
図4や5の折り畳み方式とする場合に、展開状態を保持するための補強部材を設けるようにしてもよい。
図6にはこのようなものの一例を示した。
図6の止水板11´´´では、かんぬきとして機能するバー部材112と、かすがい部材113によって補強部材が構成されている。
図6(a)に示されるように、止水板11´´´の折り畳み状態において、その折り畳みの内側となる面に、バー部材112と各かすがい部材113が設けられている。
図6(b)~(d)に示されるように、止水板11´´´の展開後に、バー部材112をスライドさせて各かすがい部材113に通し、折り畳み箇所の両サイドにわたってバー部材112を位置させることで(
図6(d))、かんぬきがかかり、止水板11´´´の展開状態を維持するように補強される。
図6(a)に示されるように、折り畳みの内側となる面にバー部材112と各かすがい部材113が設けられていることにより、収納状態(折り畳み状態)におけるコンパクト化が図られている。なお、当該構成は、
図5の止水板11´´のように複数の折り畳み箇所を有する物にも適用することができる。隣り合う板の関係において、
図6と同様の構成を適用すればよいものであり、これによって、
図6と同様に、収納状態(折り畳み状態)におけるコンパクト化を図ることができる。
【0029】
図7は、止水板の別の例を示す図であり、シール部材111の取り付け位置が、実施形態の止水板とは異なっているものである。
図7に示されるように、この例では、止水板の室内側の外周部分にシール部材111が設けられており、これにより、止水板が、防水部材取付枠12のガイド溝の内側の室内側の面に対して、シール部材111を介して接するように構成される。
図7は、概略水平断面図であり、止水板の一方の側部のみ示した図であるが、両側部及び底部で同様の構成であり、シール部材111は、両側部及び底部で連続して設けられ、正面視(背面視)で略U字形に設けられているものである。
なお、
図7の構成においても、実施形態1のシール部材(止水板の底面と両側面に設けられるシール部材)を併用するものであってもよい。
図7の例によれば、同図からも理解され得るように、水害時において水圧が外部からかかると、当該水圧によって止水板を防水部材取付枠12のガイド溝の室内側の壁面に押し付ける力(即ち、シール部材111をガイド溝の室内側の壁面に密着させる力)が生じるため、防水性を向上することができる。
なお、上記各説明では、シール部材が止水板側に設けられるものを例としているが、シール部材が防水部材取付枠側に設けられるものであっても良い。
【0030】
<実施形態2>
図8、9は、実施形態2の防水装置をサッシ窓に取り付ける状態を示す概略図であり、
図8:概略垂直断面図、
図9:概略水平断面図である。
本実施形態の防水装置1-2は、実施形態1と同様にサッシ窓に対して設置される防水装置である。サッシ窓に関しては実施形態1と同様であるため、実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
本実施形態の防水装置1-2は、防水部材としての止水シート11-2を備え、止水シート11-2が、防水部材取付枠12-2に対して、磁力によって止水可能に取り付けられるものである。
【0031】
防水部材取付枠12-2は、実施形態1と同様に、サッシ窓の室外側において、サッシ窓の少なくとも下部側を、サッシ窓の外側の三方を取り囲むようにして設けられる。
本実施形態の防水部材取付枠12-2は、その断面視においてキノコ状の中空部材において、その傘の内部に磁石Mを備えている。これにより、「防水部材取付枠の、止水シートと対向する箇所に磁石が設けられ」るものである。
また、キノコの傘の部分と外壁OWとの間にコーキングによるシーリング材123-2が設けられ、ねじ止めによって外壁OWに固定される。防水部材取付枠12-2をキノコ状の形状とすることで、壁OWとの間にシーリング材123-2を充填させる溝部を防水部材取付枠12-2の両側に形成し、より防水性を高めるようにしているものである。なお、コーキングによるシーリング材123-2に替えて、発泡ゴムやウレタンなどで形成されたシール部材を用いるものであってもよい。
これによって、防水部材取付枠12-2が、サッシ枠の下部側の三方を取り囲むようにして外壁OWに対して止水可能に取り付けられる。なお、ねじが打設される箇所においては、キノコの傘の天井部分及び磁石Mに、ねじを挿通する穴が形成されている(磁石Mが連続的ではなく、断続的に設けられており、ねじを設ける箇所に磁石がない場合には、磁石Mに穴は不要である)。
【0032】
止水シート11-2は、上記の防水部材取付枠12-2に取り付けられ、サッシ窓(開口部)の少なくとも下部側を覆うことで、水害時の水位上昇時においてサッシ窓部分の止水を行うものである。止水シート11-2の基本的な態様は、正面視で(
図8の左側からみた場合、
図9では上側から見た場合に)略矩形の部材であり、例えばポリ塩化ビニル等の、遮水性及び可撓性を有する部材で形成される。
止水シート11-2の室外側の両側部及び底部であって、防水部材取付枠12-2と対向する箇所には、スチールのバーなどによって構成される磁性体11-21(正面視でU字形の部材)が設けられている。
なお、本実施形態では、磁性体11-21が止水シート11-2に対して室外側に設けられているものを例としているが、磁性体11-21が止水シート11-2に対して室内側に設けられているものとしてもよい(この場合、防水部材取付枠12-2との間の止水機能の担保のために必要に応じて磁性体は適宜被膜等される)。また、磁性体11-21は、止水シート11-2に対して取り付けられているものであってもよいし、止水シート11-2とは別体で構成され、止水シート11-2の取り付け時に止水シート11-2を上から押さえる部材であってもよい。
磁性体11-21は、取り付け状態においてU字形となるものであり、取り外し時には分割等されてコンパクトになる構成であってよい。
【0033】
上記構成の止水シート11-2と防水部材取付枠12-2により、磁力でくっつけることによって、止水シート11-2を防水部材取付枠12-2に止水可能に取り付けることができる。これにより、実施形態1と同様の作用効果を、簡易な作業で得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、防水部材取付枠が磁石を備え、止水シートが磁性体を備えるものを例としたが、両者が磁力で取り付け可能なものであればよく、例えば、防水部材取付枠が磁性体を備え、止水シートが磁石を備えるもの等であってもよい。
また、本実施形態では、防水部材として止水シートを例としているが、止水板を用いて、これを防水部材取付枠に対して磁力で取り付けるものであってもよい。
【0035】
なお、防水部材と防水部材取付枠は、それぞれ相互に着脱可能であり、且つ、サッシ窓の少なくとも下部側を止水可能な構成であればよく、その具体的な構造としては種々の態様を取り得るものである。
図10には、防水部材取付枠に関する別の態様の例を示した。
図10の例における防水部材取付枠12-2´は、外壁OW(開口部の周囲の部材)に対して取り付けられる取付部124-2と、磁石Mを備え、取付部124-2を覆うカバー部材125-2と、を備えている。
図10の例における防水部材取付枠12-2´は、実施形態2の防水部材取付枠12を、取付部124-2とカバー部材125-2の2つの部材で構成したものである。
カバー部材125-2を着脱可能としたことにより、外壁に対する取り付けのねじにアクセス可能であるため、ねじを挿通する穴を形成する必要が無い。これにより、意匠性に優れたものとすることができる。
なお、
図10では図示を省略しているが、防水部材取付枠12-2´においても、実施形態2の防水部材取付枠12-2と同様に、キノコの傘の部分と外壁との間にコーキングによるシーリング材(若しくはシール部材)を設けるようにするとよい。シーリング材(若しくはシール部材)を設けることによって、取付部124-2と壁面の間の止水に加えて、取付部124-2とカバー部材125-2の接合部(両者の接合のためのねじ穴を含む)の止水もなされる。
【0036】
<実施形態3>
図11は、実施形態3の防水装置をサッシ窓に取り付ける状態を示す概略垂直断面図である。
本実施形態の防水装置1-3は、実施形態2の防水装置1-2の止水シート11-2の上部に遮光スクリーン(シート状部材)11-3が結合されており、これらの止水シート11-2及び遮光スクリーン11-3を巻き取るシート保持部13を備えている。その他の構成については、実施形態2と同様であるため、実施形態2と同一の符号を使用し、ここでの説明を簡略化若しくは省略する。
【0037】
防水部材取付枠12-2については、実施形態2で説明したものと同様の構成である。
止水シート11-2についても、実施形態2で説明したものと基本的に同様の構成であるが、磁性体11-21は、底部側のみ止水シート11-2に対して取り付けられており、両側部の磁性体については、止水シート11-2とは別体で構成され、止水シートとしての利用時に止水シート11-2を上から押さえる部材である。
【0038】
シート保持部13は、止水シート11-2及び遮光スクリーン11-3を内部に収納するケース部材と、当該ケース部材内で回転可能に保持され、止水シート11-2及び遮光スクリーン11-3を巻き取る巻き芯と、を備えている。当該巻き芯は、ロールスクリーン等と同様の構成により、止水シート11-2及び遮光スクリーン11-3を巻き取るように(回転するように)付勢されている。これらにより、シート保持部13は、シート(止水シート及び遮光スクリーン)を巻き取って内部に収めた(コンパクト化した)収納状態からシートを引き出して展開した展開状態とすることができる。
シート保持部13は、サッシ窓の上部の外壁OW、サッシ枠(枠体)等の、サッシ窓上部の周辺に設けられる部材の何れかに対してネジ止め等によって取り付けられる。
【0039】
上記構成により、本実施形態の防水装置1-3は、止水シート11-2と、これに連続して設けられる遮光スクリーン11-3によって、開口部(サッシ窓)の全体を覆うことができるように構成されており、通常時は遮光スクリーンとして使用できるものである。両側部の防水部材取付枠12-2を、サッシ窓の上部にまで設けることにより、止水シート11-2の底部に取り付けられている磁性体11-21を、任意の高さで両側部の防水部材取付枠12-2に取り付けることも可能である(遮光スクリーンとしての高さ調節ができる)。一方、水害が予想される際等においは、止水シート11-2の底部を防水部材取付枠12-2の底部に合わせた位置で取り付け、別体の両側部の磁性体を、両側部の防水部材取付枠12-2に取り付けて止水シート11-2を上から押さえることで、実施形態2と同様の止水効果を得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、止水シートの上部に遮光スクリーンが結合されているものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、全てが止水シートで構成されているもの(止水シート自体が遮光スクリーンとして機能するもの)等であってもよい。止水シートそのものだけでは遮光性が無い場合には、止水シートに遮光性を有するシートを重畳するようにしても(積層シートとしても)よい。或いは、全てを遮光スクリーンとしたものの下部側に、止水シートを積層したようなものであってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、シート保持部にシートが巻き取られて収納されているものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、シートが、引き出し可能なように、アコーディオン状に折り畳まれてシート保持部に収納されているようなものであってもよい。
【0042】
各実施形態では、防水部材取付枠が、外壁OWに対して取り付けられるものを例としているが、建物の基礎や、土台水切り等の、開口部(サッシ窓)の周辺に設けられる部材に対して取り付けられるものであってよい。或いは、サッシ窓を構成する部材(例えばサッシ枠)に対して取り付けられるものであってもよい。
また、各実施形態では、防水部材取付枠を直接外壁に取り付けるものを例としているが、取付金具などの部材を介して外壁に取り付けるようにしてもよい。例えば、外壁に、防水部材取付枠を締結させるためのねじ穴等が形成された下地プレートを取り付けておき、水害が予想される際等において、当該下地プレートに対して防水部材取付枠をネジで締結させるようなものとしてもよい。このような下地プレートは、例えば、壁面に埋設される等して予め建物に設けられているもの(躯体側に形成されているもの)であってもよい。防水部材取付枠を取り付けるための下地プレートを壁面に埋設する等して躯体側に形成しておくことにより、高い強度を持たせて防水部材取付枠を取り付けることも可能となる。
【0043】
各実施形態においては、引き違いのサッシ窓について説明したが、本発明をこれに限るものでは無い。例えば、片開きのサッシ窓の他、任意の引き戸式の窓に対して、上記説明した概念を適用することができる。
また、掃き出し窓を例として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、腰高窓等に対しても、上記説明した概念を適用することができる。
【0044】
また、各実施形態では、防水装置として、サッシ窓(開口部)の下部側(サッシ窓の一部)を覆うものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、サッシ窓(開口部)の全体を覆うようにするもの(防水部材を、サッシ窓の全体を覆う大きさで形成するもの)であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1...防水装置
11...止水板(防水部材)
111...シール部材
11-2...止水シート(防水部材)
11-21...磁性体
11-3...遮光スクリーン(シート状部材)
12...防水部材取付枠
121...ガイド溝
124...取付部
125...カバー部
13...シート保持部
21...上枠(枠体)
22...下枠(枠体)
23...竪枠(枠体)
SD1、SD2...障子(パネル体)
M...磁石