(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051629
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】荷箱の天蓋装置
(51)【国際特許分類】
B60P 7/04 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B60P7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157899
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】末若 尚志
(72)【発明者】
【氏名】坂川 篤弘
(57)【要約】
【課題】手動で行う天蓋フレームの回動操作性を向上し、安価で有用性の高い荷箱の天蓋装置とする。
【解決手段】車両フレーム上に搭載された荷箱のサイドゲート上部に設けた軸受け部材と、当該軸受け部材に軸支された支軸と、当該支軸に連結された基端フレームと、当該基端フレームに対する相対位置が変更可能に設けられた先端フレームとを有し、前記支軸を回動中心として前記サイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される天蓋フレームと、前記基端フレームおよび前記先端フレームの少なくとも一方に係合されて当該一方の移動を付勢または許容する調整部と、を備えており、前記調整部によって前記支軸を回動中心として前記手動回動における回動負荷が軽減可能とされる構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フレーム上に搭載された荷箱のサイドゲート上部に設けた軸受け部材と、
当該軸受け部材に軸支された支軸と、
当該支軸に連結された基端フレームと、当該基端フレームに対する相対位置が変更可能に設けられた先端フレームとを有し、前記支軸を回動中心として前記サイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される天蓋フレームと、
前記基端フレームおよび前記先端フレームの少なくとも一方に係合されて当該一方の移動を付勢または許容する調整部と、
を備えており、
前記調整部によって前記支軸を回動中心として前記手動回動における回動負荷が軽減可能とされる
ことを特徴とする荷箱の天蓋装置。
【請求項2】
前記調整部は前記支軸に設けられており、
前記基端フレームに対して回動付勢する構成を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷箱の天蓋装置。
【請求項3】
前記天蓋フレームは、前記基端フレームの回動側先端部に配されたシャフトを有し、
前記先端フレームは、前記シャフトに軸支され、前記基端フレームに対して前記シャフトを中心に手動回動可能に設けられており、
前記調整部は、前記シャフトを中心とする手動回動に際し、前記シャフトまたは前記基端フレームと前記先端フレームとの間で回動付勢する構成を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷箱の天蓋装置。
【請求項4】
前記天蓋フレームは、前記先端フレームが、前記基端フレームに対して前記手動回動における径方向に移動可能な構成を有しており、
前記調整部は、前記天蓋フレームの径方向の長さに応じて、前記先端フレームを前記基端フレームに係止可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷箱の天蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に架装された荷箱の上方開口部を開閉自在に覆う天蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプカー等の車両の荷箱には、サイドゲートの上部に軸支された天蓋装置が設けられている。天蓋装置は、サイドゲート上端に設けられた軸受け部に例えば金属製の天蓋フレームが軸支された構成を有している。この天蓋フレームにはシート等が掛けられており、その軸支部を回動中心としてサイドゲートの外側方と内側方との間で回動される。天蓋フレームが閉状態の位置まで回動されると、シート等で荷箱の上方開口部の多くが覆われた状態になり、荷箱に積まれた土砂等の飛散を防止することができる。
【0003】
こうした天蓋装置を備えた車両の中でも、土砂等を大量に積載する比較的大型な車両は天蓋装置を構成するフレームの重量が大きくなる。フレームの回動は、サイドゲート上端を中心として、サイドゲート下方からサイドゲート上端を跨ぐようにして荷箱上方まで行われるため、電動モータ等の駆動力を利用した回動操作により、高い作業効率を有するものが多い(例えば、特許文献1)。
【0004】
その一方で、比較的小型で軽量な車両の場合、天蓋フレームの重量が小さく、荷箱設置高さやサイドゲートの高さも低いため、手動で天蓋フレームの回動操作を行うものに対してもその回動操作の簡易化を成す構成も考えられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-126877号公報
【特許文献2】特許第5832874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手動操作する天蓋フレームの回動操作の負荷軽減を図るために、特許文献2のように天蓋フレームの回動半径を小さくするために、天蓋フレームが基端フレームと先端フレームとを有し、その先端フレームが基端フレームに対して折り畳み可能とするが、回動半径を小さくするだけでは実際の操作面に関し、未だ改善の余地がある。そこで、本発明者は、安価で手動操作面で有用性の高い荷箱の天蓋装置とすべく、以下の点に着目した。
【0007】
先ず、小型で軽量の車両に搭載される荷箱の場合、特許文献2に係る構造のように折り畳み可能な天蓋フレームにすると、支軸に近い位置を把持して基端フレームおよび先端フレームの2種のフレーム分の重さに抗して回動開始する必要がある。回動開始となる天蓋フレームの「閉」状態(荷箱内の上方空間を覆うような状態)では支軸とほぼ同じ高さ位置から持ち上げ、「開」状態(荷箱幅を超えて外側まで回動する状態)まで大きな負荷がかかる。この点では、荷箱外側で支軸に支持されて下垂状態の「開」状態から「閉」状態となるように回動開始する場合には、支軸よりも低い位置から回動開始するために特に操作負荷が大きくなってしまう。特に、天蓋フレームを回動操作する作業者は、その回動操作性の点で荷箱の後端(車両後方側)で作業することが多い。つまり、車両前後方向を長手方向とする天蓋フレームの端部を把持して回動操作するため、回動操作における負荷は必然的に大きくなる。
【0008】
次に、上述の折り畳み構造の場合、基端フレームに対して先端フレームを回動させる軸支構造となり、当該構造部分に車両前後方向を長手方向とする長尺物のシャフトが必須となる。その分だけ部品点数が増加してコストが増加する。また、このシャフトは、サイドゲートの上部に設けられて基端フレームを軸支する軸部と比較すると、基端フレームまたは先端フレームに架設されてなる分だけ、天蓋フレームの前後両端の捻じり力の影響も受けやすい。そのため、折り畳む際の回動操作における軸部としての機能性の低下が生じる恐れもある。
【0009】
本発明は、これらの点を鑑みてなされており、手動で行う天蓋フレームの回動操作性を向上し、安価で有用性の高い荷箱の天蓋装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車両フレーム上に搭載された荷箱のサイドゲート上部に設けた軸受け部材と、当該軸受け部材に軸支された支軸と、当該支軸に連結された基端フレームと、当該基端フレームに対する相対位置が変更可能に設けられた先端フレームとを有し、前記支軸を回動中心として前記サイドゲートの外側方と内側方との間で手動回動される天蓋フレームと、前記基端フレームおよび前記先端フレームの少なくとも一方に係合されて当該一方の移動を許容または付勢する調整部とを備えており、前記調整部によって前記支軸を回動中心として前記手動回動における回動負荷が軽減可能とされる「荷箱の天蓋装置」とする。
【0011】
前記調整部は前記支軸に設けられており、前記基端フレームに対して回動付勢する構成を有する構造とすることが好ましい。
【0012】
また、前記天蓋フレームは、前記基端フレームの回動側先端部に配されたシャフトを有し、前記先端フレームは、前記シャフトに軸支され、前記基端フレームに対して前記シャフトを中心に手動回動可能に設けられており、前記調整部は、前記シャフトを中心とする手動回動に際し、前記シャフトまたは前記基端フレームと前記先端フレームとの間で回動付勢する構成を有する構造でも良い。
【0013】
さらに、上述の「荷箱の天蓋装置」であって、前記天蓋フレームは、前記先端フレームが、前記基端フレームに対して前記手動回動における径方向に移動可能な構成を有しており、前記調整部は、前記天蓋フレームの径方向の長さに応じて、前記先端フレームを前記基端フレームに係止可能に設けられている構造としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成とすることで、先端フレームの基端フレームに対する相対位置が変更可能な中、基端フレームおよび先端フレームの少なくとも一方を付勢または許容する調整部によって、手動で回動操作する天蓋フレームの操作負荷を軽減できる。特に、長尺物となる天蓋フレームをその端部(荷箱後端)で操作することが求められるために、その効果は顕著となる。
【0015】
たとえば、調整部を介して基端フレームが付勢される構成では、特に回動開始のときの負荷を軽減できるため好ましい。折り畳み構造の天蓋フレームにおいては、折り畳みによる回動半径の縮小に伴って生じる「把持位置に生じる重量負荷の増加」を抑制できる。したがって、この重量負荷の抑制効果とともに、回動半径の縮小で大きく手を伸ばすことなく簡易に回動操作を行うことができる利便性との相乗効果を得ることができる。これらの点は調整部を介して先端フレームが付勢される場合でもあっても、同等の効果を得ることができる。
【0016】
また、調整部を介して先端フレームが基端フレームに対して移動する構成では、折り畳み構造では必須の軸部(シャフト)のない構造で天蓋フレームの回動半径が調整可能な構成を採ることができる。したがって、長期にわたって安定した品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るサイドゲート及び天蓋装置を示す車両の側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る天蓋フレームを車両側方から見た側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る天蓋フレームの調整部を示す側面拡大図である。
【
図4】第1の実施形態に係る天蓋フレームの回動操作を示す車両後方から見た天蓋フレームの模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る基端フレームを回動操作する際の模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る先端フレームを回動操作する際の模式図である。
【
図7】第2の実施形態に係る天蓋フレームを車両側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
(第1の実施形態)
【0019】
図1(a)は本実施形態の荷箱10とその天蓋装置20とを示しており、車両を左側から見た側面図である。説明の便宜上、天蓋装置20は、荷箱10における起立状態のサイドゲート1と同様に鉛直方向に沿って立ち上がった状態で示している。
【0020】
荷箱10は、ダンプカー等の車両(不図示)に架装されており、車両前後方向に延びた車両フレーム上11で後ろ下がり状態に傾動自在な構成となっている。荷箱10は、車両後方端部(図中の右側端部)における下部にブラケット12を有しており、ブラケット12が車両フレーム11の後端部に対してピン13を介して軸支されている。また、図示はしないが、ブラケット12よりも前方側(図中の左側)で、荷箱10と車両フレーム11との間に傾動装置が配されている。この傾動装置は、周知の装置であり、油圧ポンプからの圧油により伸縮する油圧シリンダによって構成されている。油圧シリンダは、一端部が車両フレーム11に連結されて他端部が荷箱10に連結されており、油圧シリンダが伸長するとピン13を中心に荷箱10が傾動し、油圧シリンダが収縮すると荷箱10は水平状態に戻る。
【0021】
荷箱10は、床面3に対して車両側方側で立設する左右一対のサイドゲート1と、車両後方側で立設するテールゲート2と、車両前方側で立設するフロントパネル(不図示)とで囲まれてなる構成を有する。
【0022】
テールゲート2は床面3の後端部に設けられた下部ヒンジ2aを中心として車両後方で矢印R1の方向に回動可能に構成されている。テールゲート2の高さは、図示のとおり、サイドゲート1よりも低く設定されており、車両後方から見て荷箱10には、テールゲート2の上方に後方開口部が形成されている。本実施形態に係る荷箱10は、その後端部が車両フレーム11の後端部と略一致するように架装されており、いわゆる軽自動車(道路運送車両法の施行規則で定められている軽自動車)仕様のものである。そのため、荷箱10の傾動中心となるピン13までの地上高も比較的低く、上述のようにテールゲート2の高さをサイドゲート1よりも低く設定することで矢印R1に沿って後方に回動(上開き)させた際に、上端部2bが地面に衝突することを防止できる。
サイドゲート1は、床面3に対して固定した状態で配されている。
【0023】
天蓋装置20は、サイドゲート1の上端部で回動可能に軸支されており、所定の枠形状を有する天蓋フレーム200と、天蓋フレーム200に掛けられるシート22と、天蓋フレーム200をサイドゲート1に対して回動可能に軸支する軸受け部材23と、天蓋フレーム200の回動を規制するロック装置24、天蓋フレーム200の回動を付勢する調整部26,27とを有する構成である。この天蓋装置20は、天蓋フレーム200の一部がサイドゲート1に対して、ストッパ部材25を介して取り付けられている。
【0024】
天蓋フレーム200は、車両前後方向に沿ってサイドゲート1と同程度の長さ(車両前後方向の長さ)を有する。軸受け部材23はサイドゲート1の上端部に3つ配されている。天蓋フレーム200においてサイドゲート1に近接した位置に配された支軸21aが、軸受け部材23に軸支されており、天蓋フレーム200はサイドゲート1の外側方(
図1紙面手前側)と内側方(
図1紙面奥側)との間を回動可能となっている。本実施形態に係る天蓋フレーム200は、上述のとおり、軽自動車に架装される荷箱10に設けられる大きさなので、作業者が直接手で把持して回動させることができる程度の重量となっている。
【0025】
シート22は、図示のとおり、天蓋フレーム200が外側から見えるように天蓋フレーム200に対して荷箱の内方側に掛けられており、この掛けられた状態で荷箱10の上方を覆う上方被覆部と、それ以外の後方被覆部とで形成されている。上方被覆部の端部には天蓋フレーム200に沿って複数の穴部211aが設けられている。図示は省略するが、紐をこれらの穴部211aに通して天蓋フレーム200に括り付けることで、シート22が天蓋フレーム200に掛けられている。なお、荷箱10の上方開口部を覆うように天蓋フレーム200を回動させた状態で、シート22の後方被覆部で荷箱10の後方開口部を覆うように、シート22(後方被覆部)を下方に張架させる。後方被覆部の張架は、端部に配されたゴム212等をテールゲート2の所定位置に設けられたフック(不図示)等に掛けることで行われる。シート22が荷箱10に対して掛けられることで、荷箱10の上方開口部や後方開口部から積み込まれた土砂や塵等の飛散を防止できる。
【0026】
軸受け部材23はサイドゲート1の上端部に配された頂板23aに溶着されている。この頂板23aは車両前後方向に沿って見ると、L字状の断面形状を有しており、サイドゲート1の上面部全体を覆うように配されている。頂板23aには、車両前後方向に沿って、所定間隔だけ離れた2本の連結シャフト23bが溶着されている。
【0027】
連結シャフト23bは、
図1(b)及び
図1(b)中となるA-A断面の
図1(c)に示すように、サイドゲート1の外側面1aに設けられた筒状部材14に挿通されている。連結シャフト23bは、先端231bが筒状部材14から突出しており、その先端231bがストッパ部材25によってサイドゲート1に固定されている。ストッパ部材25は、断面凹形状のプレート25aと、このプレート25aに対して連結シャフト23bの先端231bを固定するボルト25b、ナット25cとで構成されている。
【0028】
つまり、
図2(a)で示すように、天蓋フレーム200は、支軸21aが軸受け部材23に軸支された状態で一体的にサイドゲート1に取り付けられる構成である。なお、
図1中のストッパ部材25を解除することで、天蓋フレーム200等は簡単にサイドゲート1から取り外すことができる。また、取り付けることも簡単に行うことができる。この取付構造に関しては上述したボルト25bやナット25cに限定するものではなく、抜け止め機能を有するとともに支持可能なピン状部材(たとえば水平方向に差し込むとともに先端が折り曲げ可能なピン状部材)などを用いても良い。
次に、天蓋フレーム200の構成について説明する。
【0029】
天蓋フレーム200は、支軸21aに連結された基端フレーム201と、基端フレーム201の先端部に配されたシャフト202と、シャフト202に軸支された先端フレーム203とを有し、シャフト202を回動中心として、先端フレーム203が基端フレーム201に対して折り畳み可能な構成となっている。また、手動操作による折り畳みの操作負荷を軽減するために、支軸21aと基端フレーム201との間には第1の調整部26が設けられ、基端フレーム201と先端フレーム203との間には第2の調整部27が設けられている。
【0030】
基端フレーム201は、
図2の状態で車両外側方(紙面手前側)に開口した断面略コ字状のチャンネル材で構成されている。車両前後方向(図中の左右方向)を長手方向とする第1基端フレーム201aと、鉛直方向(図中の上下方向)を長手方向とする3本の第2基端フレーム201bとを有している。
【0031】
シャフト202は、車両前後方向を長手方向とする延伸部材であり、第2基端フレーム201bの先端部に配されている。第2基端フレーム201bの先端部にボスが配されており、当該ボスにシャフト202が挿通された構成となっている。なお、シャフト202に関しては、車両前後方向に沿って天蓋フレーム200と同等の長さを有するように延伸した形状ではなく、それぞれの第2基端フレーム201bの幅と略同等長さに延伸した形状でも構わない。
【0032】
先端フレーム203は、シャフト202の周面を覆っているボスに連結されており、シャフト203を中心軸として基端フレーム201に回動自在に配されている。先端フレーム203はパイプ状部材で構成されており、車両前後方向を長手方向とする第1先端フレーム203aと、鉛直方向を長手方向とする3本の第2先端フレーム203bとを有しており、第2先端フレーム203bが上記のボスに連結されている。
【0033】
基端フレーム201とシャフト202と先端フレーム203とを組み付けることで、天蓋フレーム200は、図示のとおり、略四角形の外枠を有するとともに格子状の内枠とを有する。なお、ボスに先端フレーム203が連結されているが、基端フレーム201に対して先端フレーム203が回動自在であればこれに限定されず、例えば基端フレーム201がボスに固定されている構成でも構わない。
【0034】
天蓋フレーム200の折り畳みに関しては、図示する状態の先端フレーム203を手前側に回動させる。回動された先端フレーム203は基端フレーム201のコ字状断面の内方側に形成される収容部210に収容されるようにして行われる。先端フレーム203が収容部210に収容されることで、天蓋フレーム200が折り畳まれて荷箱外側に回動した状態であっても、天蓋フレーム200の車両幅方向の厚みを小さくすることができる。その結果、車両全体の幅も小さくすることができる。なお、第1基端フレーム201aにおける車両前方側端部(図中の左側端部)には回動された先端フレーム203との干渉を回避するための切り欠き部が設けられており、上述した収容部210に先端フレーム203が良好に収納される構成となっている。
【0035】
先端フレームの回動操作は作業者が天蓋フレーム200のうち車両後方側に設けられた把持部を直接把持することで行われる。具体的には、先端フレーム203の側方部には第1把持部204が配されており、作業者は第1把持部204を把持してシャフト202を中心とした回動操作(天蓋フレーム200の折り畳み)を行う。第1把持部204にはピン状部材206が配されており、天蓋フレーム200が折り畳まれた際に、ピン状部材206が基端フレーム201の側方部に固定されたキャッチ部材207と係合される。キャッチ部材207にはピン状部材206と嵌合可能な断面Ω状の係合部を有する。上述したピン状部材206とキャッチ部材207とが天蓋フレーム200の折り畳み状態を保持する保持部材として機能する。これら保持部材によって、作業者は天蓋フレーム200を折り畳み状態のままサイドゲート1の内側方から外側方まで回動させることができる。なお、第1把持部204は図示する位置に限定されず他の部位に設けられていても良い。たとえば先端フレーム203の第1先端フレーム203aにおける車両後端側に設けられていても良い。この場合、上述したキャッチ部材207も第1把持部204と相対する位置に設けられた構成とする。
【0036】
第1の調整部26は、
図3(a)のように、支軸21aの車両前方側端部において、車両前後方向を軸方向として巻回されてなる金属製のバネ部材26aを有し、そのバネ部材26aの一方の端部26bが基端フレーム201(具体的には第2基端フレーム201b)と軌を一にして回動する係止プレート201Pに係止されるとともに、他方の端部26cがサイドゲート1の車両前方側端部に固定された係止ホルダ1Hに係止される。
図3(b)のように第2基端フレーム201bの車両前方側の端部に固定された係止プレート201Pは、第2基端フレーム201bの回転に伴って同様に回動可能となっている。このため、第2基端フレーム201b(基端フレーム201)の回動操作によって第1の調整部26の一方の端部26bも回動しながらも、他方の端部26cは係止ホルダ1Hに保持されたままとなることで、第1の調整部26は基端フレーム201に対して付勢可能な状態となる。
【0037】
第2の調整部27は、
図3(c)のように、第2先端フレーム203bの長手方向(図中の上下方向)に沿って引張荷重を受けて作用する金属製のバネ部材27aを有し、そのバネ部材27aの一方の端部27bが第2先端フレーム203bに固定された先端第1係止プレート203Pに係止されるとともに、他方の端部27cがシャフト202の車両前方側端部に設けられた筒状の係止部202Hにおける周面に固定された先端第2係止プレート202HPに係止されている。図示のように展開状態の先端フレーム203に対して、バネ部材27aの機能によって、第2の調整部27は折り畳み方向に対して付勢可能な状態となる。
【0038】
次に、荷箱10の上方の開口部に対する天蓋フレーム200の開閉操作について
図4を用いて説明する。
図4は、車両後方から見た車両左側の天蓋フレーム200の模式図である。説明の便宜上、後方から見える他部材の図示は省略している。
【0039】
略一直線状で閉状態(荷箱10の上部を覆うように倒れた状態)の天蓋フレーム200を回動させてサイドゲート1の外側方で開状態(
図4(a)の二点鎖線部の状態)にする際、先ず先端フレーム203を基端フレーム201の収容部210(
図2参照)に収容する(矢印R3)。この先端フレーム203の回動操作R3は、実線で示されている閉状態の天蓋フレーム200に対して行う(第1把持部204を把持して行う)ため、比較的低い位置で行うことができる。ここで、第1把持部204は先端フレーム203のうち回動先端側(シャフト202を中心とする回動半径においてシャフト202に対して遠方側)に設けられているので、比較的重量を感じることなく矢印R3の手動回動を行うことができる。また、ピン状部材206とキャッチ部材207との係合も図示のとおり、サイドゲート1の高さと略同等の高さ位置(高さH1)の場所で行うことができるため、作業者にとっては作業し易い。
【0040】
次に、折り畳み状態の天蓋フレーム200をサイドゲートの外側に回動させて開状態(矢印R4、R5)とする際、基端フレーム201に設けられた第2把持部205を作業者が直接把持して行う。第2把持部205は、基端フレーム201のうち回動先端側(支軸21aを中心とする回動半径において支軸21aに対して遠方側)に設けられている。よって、折り畳み状態の天蓋フレーム200を比較的重量を感じることなく矢印R4、R5の手動回動を行うことができる。また、第2把持部205が設けられている位置は、天蓋フレーム200が略一直線状のときに、中間部となる位置であり、天蓋フレーム200の回動を手動で行う作業者にとっては比較的低い高さ位置(高さH2)となっている。したがって、天蓋フレーム200の回動中心となる支軸21aに近い位置を把持する場合よりも小さい力で天蓋フレーム200を回動させることができる。これは、第2把持部205と天蓋フレーム200の重心位置との位置の違いが要因となる。天蓋フレーム200が略一直線状であれば、重心位置はシャフト202と同等の距離だけ回動中心となる支軸21aから離れた位置となる。第2把持部205は支軸21aから近い位置にあるので、矢印R5への回動操作の際に作業者が感じる負荷を軽減できる。一方で、本実施形態に係る回動操作は、先端フレーム203を基端フレーム201に折り畳むので、折り畳まれた天蓋フレーム200の重心位置は第2把持部205よりも支軸21aに近い位置となる。したがって、作業者は回動操作に感じる負荷が軽減される。さらに、矢印R6のように下方回動させる際にも、第2把持部205よりも支軸21aに近い位置に重心があることから、回動速度が不意に大きくなることはなく、安定した回動操作をすることができる。同時に、天蓋フレーム200が折り畳まれていることで回動半径が小さく、車両外方に必要なスペースも抑制することもできる。また、保持部材によって天蓋フレーム200の折り畳み状態が保持されるので、手動回動中に先端フレーム203が揺動して基端フレーム201に垂れ下がるようなこともないので、周囲に対する安全面も確保することができる。
【0041】
開状態の天蓋フレーム200を閉状態にするには、上述した作業(矢印R3、R4、R5)の作業を反対に順次行えばよい。この場合も、天蓋フレーム200は折り畳み状態を保持したままなので高い位置まで手を伸ばした手動回動を回避することができる。また、
図4(b)のように、基端フレーム201と先端フレーム203とが略一直線状に伸びた状態で両フレーム201、203を一体的に回動操作させることもできる(矢印R6)。基端フレーム201の先端部で、かつ、シャフト202に対して荷箱内方側(図中の右側)にはプレート208が固着されている。先端フレーム203はシャフト202を中心に回動可能となっているが、基端フレーム201に対して荷箱外方側から荷箱内方側へ回動された後で基端フレーム201とともに略一直線状となれば、さらに荷箱内方側に回動されることがプレート208によって規制される。つまり、プレート208は基端フレーム201に対する先端フレーム203の回動を規制するために配されており、天蓋フレーム200が閉状態(図中の二点鎖線部の状態)のときに、天蓋フレーム200が略一直線状を維持することができる。
【0042】
天蓋フレーム200の手動回動に関する負荷軽減効果については上述した点に加えて、調整部26,27によってさらなる効果を奏することができる。
【0043】
図5を用いて第1の調整部26の効果を説明する。
図5は車両前方側から見た荷箱1および天蓋装置20の模式図である。なお、説明の便宜上、
図5では第2の調整部27は省略している。
【0044】
図5(a)のように、折り畳まれて閉状態の天蓋フレーム200に対し、第1の調整部26は矢印T1の方向に付勢力が生じるように設けられている。ただし、その付勢力の大きさに関しては、手動回動操作の負荷を軽減する大きさであって、図示する姿勢から作業者が把持して持ち上げようとするまでは、天蓋フレーム200が図示する姿勢から姿勢変更しないように設定されている。したがって、天蓋フレーム200は不意に姿勢変更することがないよう設けられており、周囲への安全が確保されている。
【0045】
第1の調整部26は、閉状態から開状態に天蓋フレーム200を手動回動する際、
図5(b)のように閉状態から約135度回動させた姿勢において、その付勢力の大きさがゼロとなるように設けられている。このため、付勢力がゼロとなる姿勢までは作業者の手動操作に係る負荷が軽減される。特に、折り畳み姿勢で基端フレーム201および先端フレーム203の両方の重量が直接的にかかる持ち上げ操作、具体的には回動操作開始から約90度回動させるまでは、その天蓋フレーム200の重量に抗した持ち上げ操作となる中、上記の付勢力によって負荷軽減されるため好ましい。さらに、作業者は閉状態まで天蓋フレーム200を把持して操作する必要があるため、その操作スペースを確保する点で荷箱10の後端部に位置した状態で作業(手動操作)することが多い。つまり、車両前後方向を長手方向とする天蓋フレーム200をその後端部に位置した状態で手動回動することになるため、その操作負荷が第1の調整部26による軽減効果は非常に大きい。
【0046】
手動操作を続けて、
図5(c)のように天蓋フレーム200が水平姿勢となる位置まで操作する際には、天蓋フレーム200の重量も加わって図示する時計回りに沿った負荷は小さくなる。また、こうした水平姿勢となる状態においては、第1の調整部26には反時計回りの方向への付勢力が生じるようになる。つまり、天蓋フレーム200の重力がその回動方向に加わる状態においては、第1の調整部26に対してブレーキ力が生じ始める構成となっている。そして、
図5(d)のように、サイドゲート1に沿って天蓋フレーム200が下垂状態となるまで開状態となると、第1の調整部26にはさらに大きな付勢力T3が生じている。つまり、作業者が下垂状態の天蓋フレーム200を水平姿勢まで持ち上げる際の大きな負荷を要する手動操作において、大きな付勢力によってその負荷を軽減できる効果が生じる。
【0047】
本実施形態では、上述のとおり
図5(b)の状態で付勢力がゼロとなるように第1の調整部26が設けられているので、
図5(a)に示す姿勢および
図5(d)に示す姿勢において生じる付勢力T1,T3が略同じ大きさに設定されているが、車両の仕様や作業者のニーズに応じてその大きさは適宜設定変更可能である。
【0048】
次に、第2の調整部27に関する効果について、車両前方側から見た荷箱1および天蓋装置20の模式図となる
図6を用いて説明する。
図6においても、
図5と同様に説明の便宜上、第1の調整部26は省略している。
図6(a)のように、折り畳まれる前でもある展開状態の先端フレーム203に対して矢印T11の方向に付勢力が生じるように設けられている。展開状態から折り畳み状態に天蓋フレーム200を手動回動(先端フレーム203を手動回動)する際、第2の調整部27には矢印T11のように付勢力が生じているので、第1の調整部26の場合と同様に、荷箱10の後端部に位置した状態で作業(手動操作)する作業者の操作負荷を軽減できる。
【0049】
第2の調整部27は、展開状態から折り畳み状態に先端フレーム203を手動回動する際、
図6(b)のように閉状態から約90度回動させた姿勢においても、下方方向ではあるが同等の引張力T12が付勢力として有している。手動操作を続け、
図6(c)のように先端フレーム203が水平姿勢となる位置まで操作する際には、先端フレーム203の重量も加わって図示する時計回りに沿った負荷は小さくなる。また、こうした水平姿勢となる状態においては、第2の調整部27には荷箱内側方向(図中の左方向)への引張力T13が付勢力として生じている。つまり、折り畳まれた先端フレーム203を展開状態に操作する際には、第2の調整部27の引張力が付勢力として先端フレーム203を持ち上げる際の負荷を軽減できる効果を生じる。したがって、第2の調整部27は先端フレーム203の折り畳み開始のとき、および展開開始のときのいずれにも同等の付勢力を作業者に与えることができる構成となっている。特に、簡易な構成で折り畳み操作に係る構成に基づいて、展開および折り畳みの両方に操作に対して負荷軽減効果を与えることができる点で好ましい。
【0050】
本実施形態では、第1の調整部26および第2の調整部27は車両前方側に設けられていることで、主に荷箱10の後端部で作業する作業者の操作を邪魔することのない状態となっているが、作業者の操作性を阻害しなければ、車両後方側に設けられても良いし、前方側および後方側の両方に設けられていても構わない。また、付勢力を生じる構造が第1の調整部26と第2の調整部27とで異なるように設けられているが、車両や天蓋フレーム200の構造または作業者のニーズに応じて適宜設計変更可能である。
(第2の実施形態)
【0051】
本実施形態では第1の実施形態と異なり、先端フレームが基端フレーム側にスライドすることで天蓋フレームの回動半径の大きさを縮小可能な構成を有している。第1の実施形態と異なる部分を中心に
図7を用いて説明する。
【0052】
基端フレーム201は、
図7(a)に示すような櫛歯状となるようにパイプ材で構成されている。本実施形態では、車両前後方向(図中の左右方向)を長手方向とする第1基端フレーム301aと、鉛直方向(図中の上下方向)を長手方向とする3本の第2基端フレーム301bとを有している。
【0053】
先端フレーム302は、同じく櫛歯状となるにパイプ材で構成されており、車両前後方向を長手方向とする第1先端フレーム302aと、鉛直方向を長手方向とする3本の第2先端フレーム302bと、第2先端フレーム302b間に架設されて車両前後方向を長手方向とする連結フレーム302cとを有している。第2先端フレーム302bは、図示のとおり第2先端フレーム301bと相対する位置に設けられており、その内径は第2先端フレーム301bの外径よりも大きく設定されている。
【0054】
次に、一点鎖線で示すF1,F2,F3の部位には、図示していないが第2基端フレーム301bに対して第2先端フレーム302bを固定するための固定部材が設けられる。固定部材に関しては、既知の手段であるボルトおよびナットを用いた構成やピン状部材を差し込む構成などが基端フレーム301および先端フレーム302の材質、強度または重量などに合わせて設定される。
【0055】
本実施形態では、上記の固定部材による固定を解除することで、
図7(b)のように先端フレーム302を基端フレーム301側にスライド(移動)可能となっている。このとき、第2基端フレーム301bは第2先端フレーム302bの内方に収容される。その上で、一点鎖線で示すF11,F21,F31の部位において、同様の固定部材を用いて先端フレーム302のスライドが規制される。
図7(b)の状態で基端フレーム301に対して先端フレーム302に保持された状態とすることで、天蓋フレーム300の手動操作による回動半径が縮小される。したがって、第1の実施形態と同様に、作業者の操作負荷が軽減される。
【0056】
加えて、本実施形態では簡易な手段(固定部材)で天蓋フレーム300の回動半径を縮小できる構成を有しているので、部品点数も少なく、メンテナンス面も含めて費用低減効果も奏する。また、天蓋フレーム300の回動半径方向(図示する上下方向)に先端フレーム302をスライドするだけで回動半径を縮小できるので、第1の実施形態のように折り畳み用の軸部(シャフト202)を設ける必要もない。なお、固定部材に関しては、第2基端フレーム301bと第2先端フレーム302bとの各部位に設ける構成としたが、適宜必要な部位に絞っても良い。また、図示したような回動半径方向に2か所ずつ固定部材を設ける構成としたが、設置箇所の数を増やして回動半径の選択肢を増やしても良い。
【0057】
本発明に係る構成について、第1の実施形態および第2の実施形態に分けて説明したが、両形態を備えた構成(たとえば第2の実施形態に第1の調整部26を適用した構成)としても良い。また、第1の実施形態では天蓋フレーム200に用いる部材、たとえば基端フレーム201に用いる部材をチャンネル部材としたが、第2の実施形態のようにパイプ状の部材を用いても良い。なお、上述した荷箱10は、後ろ下がりに傾動操作されるダンプカー等に架装されるものとしたが、傾動装置を備えていない車両や軽自動車以外の車両等でも手動操作される天蓋装置が配されたものにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両に架装された全ての種類の荷箱に対して有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 サイドゲート
2 テールゲート
3 床面
10 荷箱
11 車両フレーム
20 天蓋装置
22 シート
23 軸受け部材
24 ロック装置
25 ストッパ部材
26、27 調整部
200 天蓋フレーム
201 基端フレーム
202 シャフト
203 先端フレーム
204 第1把持部
205 第2把持部