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特開2024-51630プレビュー路面検出装置、懸架制御装置及びプレビュー路面検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051630
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】プレビュー路面検出装置、懸架制御装置及びプレビュー路面検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 23/00 20060101AFI20240404BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60G23/00
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157900
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小灘 一矢
(72)【発明者】
【氏名】柳 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】増渕 岳人
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA45
3D301AA48
3D301AA77
3D301DA08
3D301DA31
3D301DB31
3D301DB32
3D301EA03
3D301EA59
3D301EC01
3D301EC05
(57)【要約】
【課題】予見制御を中止することが可能であり、また中止するか否かを決定するために必要とされる消費エネルギーが抑制された、プレビュー路面検出装置を提供すること。
【解決手段】プレビュー路面検出装置は、車体部材に設けられ、車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、距離センサが検出した検出値に基づいて、車体部材から計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、距離センサは、所定条件において停止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレビュー路面検出装置であって、
車体部材に設けられ、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、
前記距離センサが検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、
前記距離センサは、所定条件において停止する、
プレビュー路面検出装置。
【請求項2】
停車時、操舵角が所定以上の時、及び後退時のうちの少なくとも一つの時に、前記距離センサは停止する、
請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項3】
停車後に前進した時、後退後に前進した時、又は操舵角が所定の角度以上となった後に前記操舵角が所定の角度未満となった時に、前記距離センサは起動する、
請求項2に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項4】
閾値以上の前記車体部材の上下加速度が所定時間以上続いた時、又はバッテリ電圧が所定電圧以下の時に、距離センサは停止する、
請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項5】
車両の周辺の天気が雪と判定される時、車両の外気温が所定の温度以下である時、又はABS及びVSAのうちの少なくとも一方が作動している時に、距離センサは停止する、
請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項6】
前記の距離センサの検出値が所定時間以上にわたって一定、過小、及び過大のうちの少なくとも1つである場合に、前記距離センサは停止する、
請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れかにおいて前記距離センサが停止した場合に、
前記距離センサが停止した条件が解消された場合、又は、
前記距離センサが停止した後の停車時に、前記距離センサは起動する、
請求項4から6の何れか1項に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項8】
前記所定条件は、算出される前記路面距離の信頼性が低い場合を示す条件、及び算出される前記路面距離を用いての前記車体部材の制御が不要である場合を示す条件のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載のプレビュー路面検出装置。
【請求項9】
請求項1のプレビュー路面検出装置を用いて算出した前記路面距離により、能動型の懸架装置の動作を制御するものであり、
前記距離センサが停止した際に、スカイフック制御又は減衰制御により前記の能動型の懸架装置の動作を制御する、
懸架制御装置。
【請求項10】
プレビュー路面検出方法であって、
車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも中央部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する算出ステップと、を含み、
さらに、車両の状況を把握する状況把握ステップと、
前記状況把握ステップで把握した車両の状況に基づいて、前記検出ステップを実行するか否かを判定する判定ステップと、を含む、
プレビュー路面検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレビュー路面検出装置、懸架制御装置及びプレビュー路面検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が行われている。
【0003】
また、従来、自動車などの車輌のアクティブサスペンションのひとつとして、前方の路面変位を光学式センサで検出する路面検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前輪に対応する部位にて車体に取り付けられ車体の上下加速度を検出する上下加速度検出手段と、路面変位の情報及び上下加速度の情報を時系列に記憶する記憶手段とを有し、路面変位の検出が異常である旨の判定が行われたときには、ホイールベース及び車速に基づき車輌がホイールベースの距離だけ走行した際の車体の後輪に対応する部位の上下加速度が記憶手段に記憶された上下加速度より推定され、その推定された上下加速度に応じて後輪のアクチュエータが予見制御されるアクティブサスペンションが知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
このようなアクティブサスペンションにおいては、車両や路面の状況によっては、予見制御を行わないことが好ましい場合もある。そこで、例えば車輪の路面からの距離などを計測し、その計測結果に応じて予見制御を中止などする技術が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-96922号公報
【特許文献2】特開平7-179114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の技術には、予見制御を中止などしてもシステムの消費エネルギーが大きい、との課題がある。このようなシステムは、例えば、車輪の路面からの距離を距離センサにて計測し、計測した結果に基づいて各種制御などの処理を行う。これらの処理のうち距離センサで消費されるエネルギーが一定量あるため、必要となるシステムの消費エネルギーが大きくなっている。
【0007】
本願は上記の課題を解決するために、距離センサを停止することが可能であるために必要とされる消費エネルギーが抑制された、プレビュー路面検出装置を提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記課題を解決するため、本発明のプレビュー路面検出装置は、車体部材に設けられ、前記車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも一部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する距離センサと、前記距離センサが検出した検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する距離算出部と、を備え、前記距離センサは、所定条件において停止する。
【0009】
このようなプレビュー路面検出装置によると、距離センサを停止することが可能であるために必要とされる消費エネルギーが抑制された、プレビュー路面検出装置を提供することができる。また、システム全体の消費エネルギーを低減することができる。さらには、プレビュー路面検出装置の誤作動を抑制することができる。
【0010】
(2)本発明のプレビュー路面検出装置は、停車時、操舵角が所定以上の時、及び後退時のうちの少なくとも一つの時に、前記距離センサは停止する、ようにすることができる。
【0011】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、算出した路面距離に使用用途がない場合に、距離センサを停止することができる。これにより、システム消費エネルギーを低減することができる。
【0012】
(3)本発明のプレビュー路面検出装置は、停車後に前進した時、後退後に前進した時、又は操舵角が所定の角度以上となった後に前記操舵角が所定の角度未満となった時に、前記距離センサは起動する、ようにすることができる。
【0013】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、適切なタイミングでプレビュー制御に復帰することができる。
【0014】
(4)本発明のプレビュー路面検出装置は、閾値以上の前記車体部材の上下加速度が所定時間以上続いた時、又はバッテリ電圧が所定電圧以下の時に、距離センサは停止する、ようにすることができる。
【0015】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、システムの限界を超えている状況において、距離センサを停止する。これにより、システムの誤作動を抑制することができる。また、システムの消費エネルギーを低減させることができる。
【0016】
(5)本発明のプレビュー路面検出装置は、車両の周辺の天気が雪と判定される時、車両の外気温が所定の温度以下である時、又はABS及びVSAのうちの少なくとも一方が作動している時に、距離センサは停止する、ようにすることができる。
【0017】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、限界環境が予測される状況において、距離センサを停止する。これにより、システムの誤作動を抑制することができる。また、システムの消費エネルギーを低減させることができる。
【0018】
(6)本発明のプレビュー路面検出装置は、前記の距離センサの検出値が所定時間以上にわたって一定、過小、及び過大のうちの少なくとも1つである場合に、前記距離センサは停止する、ようにすることができる。
【0019】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、システム故障が予測される状況において、距離センサを停止する。これにより、システムの誤作動を抑制することができる。また、システムの消費エネルギーを低減させることができる。
【0020】
(7)本発明のプレビュー路面検出装置は、前述の(4)から(6)の何れかにおいて前記距離センサが停止した場合に、前記距離センサが停止した条件が解消された場合、又は、前記距離センサが停止した後の停車時に、前記距離センサは起動する、ようにすることができる。
【0021】
このようなプレビュー路面検出装置によれば、適切なタイミングで、距離センサを起動してプレビュー制御への復帰を試みることができる。
【0022】
(8)本発明のプレビュー路面検出装置は、前記所定条件は、算出される前記路面距離の信頼性が低い場合を示す条件、及び算出される前記路面距離を用いての前記車体部材の制御が不要である場合を示す条件のうちの少なくとも一方を含む、ようにすることができる。
【0023】
このようなプレビュー路面検出装置によると、停止が望まれる状況で、より的確に距離センサを停止することができる。
【0024】
(9)本発明の懸架制御装置は、前述の(1)から(8)のうちの何れかのプレビュー路面検出装置を用いて算出した前記路面距離により、能動型の懸架装置の動作を制御するものであり、前記距離センサが停止した際に、スカイフック制御又は減衰制御により前記の能動型の懸架装置の動作を制御する、ようにすることができる。
【0025】
このような懸架制御装置によると、距離センサが停止した状態においても、一定のフィードバック制御により、快適性の維持を図ることができる。
【0026】
(10)本発明のプレビュー路面検出方法は、車体部材と、車輪の路面接地部の少なくとも中央部に対応する車両前方の路面の計測点と、の間の距離に関する値を検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出された検出値に基づいて、前記車体部材から前記計測点までの距離である路面距離を算出する算出ステップと、を含み、さらに、車両の状況を把握する状況把握ステップと、前記状況把握ステップで把握した車両の状況に基づいて、前記検出ステップを実行するか否かを判定する判定ステップと、を含む。
【0027】
このようなプレビュー路面検出方法によると、予見制御を中止することが可能であり、また中止するか否かを決定するために必要とされる消費エネルギーが抑制された、プレビュー路面検出方法を提供することができる。
【0028】
なお、上述の(1)から(10)は、必要に応じて、任意に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、予見制御を中止することが可能であり、また中止するか否かを決定するために必要とされる消費エネルギーが抑制された、プレビュー路面検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】車両のサスペンションシステムの概要を説明する図である。
図2】距離センサの取り付け構造を示す、車両の側面図である。
図3】距離センサの構成を示す、車両を車輪の前方向から見た図である。
図4】プレビュー制御のON及びOFFについての処理の流れを示す図である。
図5】プレビュー制御をON又はOFFにする際の条件の一例を示す図である。
図6】プレビュー制御をON又はOFFにする際の条件の一例を示す別の図である
【発明を実施するための形態】
【0031】
(サスペンションシステム)
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態のプレビュー路面検出装置1が適用される車両のサスペンションシステム3の概要を示す図である。
【0032】
サスペンションシステム3は、プレビュー路面検出装置1、プレビュー制御部4、サスペンション制御部5、車体部材30、アクティブサスペンションD、及び車輪Wを含む。また、プレビュー路面検出装置1は、距離算出部12、及び距離センサ11を備える。
【0033】
サスペンションシステム3では、サスペンション制御部5が、車体部材30の姿勢が安定するようにアクティブサスペンションDを制御する。この制御は、例えば、スカイフック理論などに基づいて行われる。
【0034】
(路面変位)
アクティブサスペンションDの制御では、まず、プレビュー路面検出装置1が車両前方の路面変位L2を取得する。ここで、路面変位L2とは、現時点で車輪Wが接している路面Rと、計測点Pとの、路面Rと垂直な方向における距離である。なお、路面Rとは、車輪Wが接している地面を意味する。また、計測点Pとは、距離センサ11が距離を測定する地面上の点を意味する。路面変位L2は、予見情報ともいう。
【0035】
(プレビュー制御部)
次に、プレビュー制御部4は、プレビュー路面検出装置1から路面変位L2を取得する。そして、路面変位L2の値に基づいて、アクティブサスペンションDの動作を制御することにより、路面入力によるボディ振動を低減させる。これにより、サスペンションシステム3は、車両の乗り心地の向上を図っている。
【0036】
(車両の構成)
図2も参照しながら、サスペンションシステム3について、より具体的に説明する。図2は、距離センサ11の取り付け機構を示す車両Vの側面図である。車両Vは、車体Bと車輪Wとを備える。そして、車体Bを構成する部材には、車体部材30が含まれる。車体部材30の下側には、車輪Wが設けられている。図2には、車輪Wのうち前輪が示されている。前輪は、左側の車輪及び右側の車輪を含む。図2には、左右の車輪のうち、左側の車輪が示されている。
【0037】
(振動モデル)
アクティブサスペンションD、及び車輪Wのうちのタイヤの部分が、路面Rの凹凸を吸収する。図2に示すサスペンション制御部5は、車輪Wのタイヤの部分を、振動モデルとして制御する。この振動モデルは、ばねW1及びダンパW2が並列に配置された振動モデルである。
【0038】
(アクティブサスペンション)
アクティブサスペンションDは、懸架ばねD1及び油圧アクチュエータを用いて減衰力を制御することができる。又は、アクティブサスペンションDは、懸架ばねD1と、可変ダンパD2とが並列に配置された構成とすることもできる。可変ダンパD2は、電磁力により減衰力及び推力が制御されるダンパである。アクティブサスペンションDは、車体部材30と車輪Wとの間に備えられている。
【0039】
(サスペンション制御部)
サスペンション制御部5は、可変ダンパD2を制御対象として制御を行う。
【0040】
(プレビュー路面検出装置)
プレビュー路面検出装置1は、車体部材30に設置されている。プレビュー路面検出装置1は、距離センサ11及び距離算出部12を備える。
【0041】
(距離センサ)
距離センサ11は、車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離を計測する。車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離を路面距離L1とする。この計測は、超音波、レーザ光、又はミリ波レーダなどにより行われる。
【0042】
(距離算出部)
距離算出部12は、距離センサ11の計測値に基づいて、車輪Wの前方の路面変位L2を算出する。具体的には、プレビュー路面検出装置1は、距離算出部12が算出した路面距離L1から計測時の車高L3を減じて、車輪Wの前方の路面変位L2を算出する。車高L3は、路面接地部41における、車体部材30と路面Rとの間の距離である。
【0043】
すなわち、路面距離L1-車高L3=路面変位L2となる。なお、路面変位L2を算出する際、車高L3は、サスペンション制御部5が制御変数として算出している値を参照して求めることもできる。
【0044】
(到達所要時間)
プレビュー制御部4は、路面変位L2を計測した際の車速と、タイヤの接地点から路面変位L2の計測点Pまでの車両Vの進行方向の距離とから、車輪Wが路面変位L2の計測点Pを走行するまでの所要時間を求める。この所要時間を、到達所要時間とする。なお、タイヤの接地点から路面変位L2の計測点Pまでの車両Vの進行方向の距離は、距離センサ11の取り付け位置に関する情報を参照して求めることもできる。
【0045】
(予見情報)
プレビュー路面検出装置1及びプレビュー制御部4は、路面変位L2を求めることに関する前述の処理を周期的に行うことができる。これにより、路面変位L2の予見情報を得ることができる。予見情報とは、前述のように、所定時間後に通過する車輪Wの前方の路面状態に関する情報である。路面状態とは、路面変位L2、及び路面Rの凹凸の状態などを含む。
【0046】
サスペンション制御部5は、路面変位L2の予見情報に基づいてアクティブサスペンションDを制御する。そのため、サスペンション制御部5は、車両Vの乗り心地を向上させることができる。
【0047】
(プレビュー路面検出装置の取り付け)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1は、前述のように、距離センサ11及び距離算出部12を含む。このうち、距離センサ11は、車体部材30に設置されている。一方、距離算出部12は、車両VのECU(Electronic Control Unit)に実装されている。
【0048】
(距離センサの取り付け)
距離センサ11の取り付けについて、図2に基づいて具体的に説明する。なお、以下に説明する距離センサ11の取り付け構造、及び図2に示す車両Vの他の構造は、説明の便宜上、簡略化されている。また、距離センサ11の取り付けは、以下に説明するものには限定されない。
【0049】
(方向の定義)
なお、車両Vの進行方向を「前」方向、後退方向を「後」方向、鉛直上側方向を「上」方向、鉛直下側方向を「下」方向、車幅方向を「左」方向及び「右」方向として説明する。また、距離センサ11などの車両用センサの取り付け構造は、原則的に左右対称である。そのため、以下の説明では左右のうちの一方側(左側)を主に説明し、他方側(右側)の説明を適宜省略する。
【0050】
図2は、距離センサ11の取り付け構造を示す車両Vの側面図である。なお、図2では、車両Vの外形を二点鎖線で示している。
(車体)
車両Vは、車体Bを主な構成要素として含んでいる。車体Bは、車体部材30に加えて、外装部材20及び距離センサ11などを含んでいる。距離センサ11は、車体部材30に固定されている。
【0051】
また、外装部材20は、車両Vの外側部位を形成する部材である。外装部材20は、車両Vの外郭を形成する。一方、距離センサ11は、路面状態を検出する装置である。
【0052】
(車両)
車両Vは、このように車体部材30、外装部材20、及び距離センサ11を備えた自動車であれば、その形式及び種類は特には限定されない。車両Vは、例えば、乗用車、バス、トラック、作業車などとすることができる。
【0053】
以下、各部材についてより詳しく説明する。
(車体部材)
車体部材30は、外装部材20を支持する機能を有する。また、車体部材30は、フロントサイドフレーム31、アッパメンバ32、バンパビームエクステンション33、及びバンパビーム34などを備えて構成されている。なお、フロントサイドフレーム31、アッパメンバ32、及びバンパビーム34は、フレーム部材と称される場合もある。
【0054】
(外装部材)
外装部材20は、エンジンフード21、フロントバンパ22、及びフロントフェンダ23を備えている。なお、フロントバンパ22は、単にバンパと称される場合もある。
【0055】
エンジンフード21は、フロントガラスの前方の上面を覆うパネル部材である。フロントバンパ22は、車両Vの前面側に位置し、例えば合成樹脂製のパネル部材によって構成されている。また、フロントバンパ22は、エアインテークなどが設けられた前面部22a、及び前面部22aの下端から後方に向けて延びる底面部22bを有している。フロントフェンダ23は、車輪Wの周辺を覆うパネル部材である。
【0056】
(距離センサの取り付け)
距離センサ11は、車両Vの前方の路面Rの状態を検出するセンサである。距離センサ11は、アッパメンバ32に固定されている。アッパメンバ32は、前述のように、車体部材30を構成する部材である。アッパメンバ32は、車輪Wの前方に配置されている。
【0057】
詳しくは、距離センサ11は、アッパメンバ32の車幅方向の外側の側面に取り付けられている。また、距離センサ11は、アッパメンバ32の前後方向の前端部に位置している。
【0058】
(距離センサの構成)
本実施形態の距離センサ11は、図2に矢印A1で示すように、車輪Wの直前の路面Rにおける路面距離L1を検出するように構成されている。路面距離L1とは、車体部材30と、路面Rの計測点Pとの間の距離である。また、距離センサ11は、レーダ式、カメラ式、レーザ式などの各種の方式のセンサから適宜選択することができる。また、距離センサ11は、単一の種類のセンサによって構成される必要はない。距離センサ11は、例えば、カメラ式とレーザ式など複数の方式のセンサが組み合わされた構成とすることもできる。
【0059】
(センサ素子)
次に、図3に基づいて、距離センサ11による距離の検出について説明する。図3は、車両の前方から車輪Wを見た際の距離センサ11の様子を示している。本実施形態の距離センサ11は、センサ素子11aを備えている。センサ素子は、距離センサ11に少なくとも1つ備えられ、距離の検出を行う部品である。個々のセンサ素子の距離の検出の方式は特には限定されない。検出の方式としては、例えば、三角測量原理に基づく方式、発光した赤外光の反射光強度を距離に換算する方式、レーザ光の飛行時間を距離換算する方式など、種々の方式を用いることができる。
【0060】
(センサ素子による検出)
センサ素子11aによる距離の検出について説明する。図3に示すように、車輪Wは、路面Rのタイヤの路面接地面S1に接地している。そして、図1に示したように、距離センサ11、より詳しくは、センサ素子11aは、車輪Wの路面接地幅L4の中央部43に対応する車両Vの前方における計測面S2の計測点(図3の矢印先端位置、図1に点Pとして図示)において、車体部材30と計測点Pとの間の距離を検出する。
【0061】
(路面距離の算出)
プレビュー路面検出装置1の距離算出部12(図1に図示)は、センサ素子11aが検出した値に基づいて路面距離を算出する。
【0062】
車両VのアクティブサスペンションDは、距離センサ11によって検出された路面Rの状態に基づいて制御される。なお、路面Rの状態を単に路面状態と称する場合がある。
【0063】
(他の構成)
図3には、1つの距離センサ11に1つのセンサ素子11aが備えられている構成を示した。ただし、1つの距離センサ11に備えられるセンサ素子の数は、1つには限定されない。1つの距離センサ11に2つ以上のセンサ素子が備えられていてもよい。例えば、距離センサ11に、センサ素子が3つ備えられていてもよい。センサ素子が複数個備えられている場合には、路面距離は、例えば、3つのセンサ素子が検出した値の平均値に基づいて算出することができる。複数個のセンサ素子を用いることにより、路面変位の検出精度を向上させることができる。
【0064】
(距離センサの停止)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1では、距離センサ11は、所定条件において停止することができる。距離センサ11は、プレビュー制御における複数の処理のうちの一部を担う。そのため、プレビュー制御がOFFになると、それに応じて距離センサ11の作動も停止する。すなわち、プレビュー制御が所定条件においてOFFになると、それに伴って、距離センサ11の作動も停止する。
【0065】
ここで、プレビュー制御がOFFになる所定条件とは、例えば、プレビューセンサ値についてその用途がない場合、車両Vの周りの環境が厳しいためプレビューセンサの適用ができない場合、プレビューセンサのシステムの限界をオーバーしている場合、及びプレビューセンサのシステムが故障している場合などを例示することができる。
【0066】
言い換えると、所定条件は、算出される路面距離の信頼性が低い場合を示す条件、及び算出される路面距離を用いての車体部材30の制御が不要である場合を示す条件のうちの少なくとも一方を含むものとすることができる。
【0067】
(所定条件のカテゴリー)
本実施形態では、所定条件を4つのカテゴリーに分類している。具体的には、プレビューセンサ値の用途がない場合をカテゴリー(1)とし、車両Vの周りの環境が厳しいためプレビューセンサの適用ができない場合をカテゴリー(2)とし、プレビューセンサのシステムの限界をオーバーしている場合をカテゴリー(3)とし、プレビューセンサのシステムが故障している場合をカテゴリー(4)としている。
【0068】
また、停止された距離センサは、所定条件において再開することができる。言い換えると、OFFとなったプレビュー制御は、所定条件においてONとすることができる。以下、順に説明する。
【0069】
(処理のフロー)
図4から図6に基づいて、プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフロー、及び所定条件の内容について説明する。図4は、プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフローを示す図である。また、図5及び図6は、プレビュー制御をON又はOFFにする際の所定条件の一例を示す図である。
【0070】
プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフローは、プレビュー制御をOFFにすべき理由がないかを確認し、その理由がない場合にプレビュー制御をONにする、との流れで行われる。そして、プレビュー制御をOFFにすべき理由は、4つのカテゴリーに分類されている。そのため、プレビュー制御をOFFにすべき理由がないかの確認は、4つの段階に分けて行われる。以下、順に説明する。
【0071】
(S1)
ステップ1(S1)において、プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフローが開始する。
【0072】
(S2及びS7)
ステップ2(S2)において、まず、図5に示すカテゴリー(1)についての判定が行われる。ステップ2(S2)で、プレビューセンサ値の用途がない、と判定された場合には、ステップ2(S2)の判定はYesとなる。この場合、ステップは、ステップ7(S7)に進む。そして、ステップ7(S7)で、プレビュー制御がOFFになる。なお、プレビュー制御のON及びOFFに関する各種の判定は、例えば、プレビュー制御部4が行うことができる。
【0073】
一方、ステップ2(S2)で、プレビューセンサ値の用途がない、とは判定されなかった場合には、ステップ2(S2)の判定はNoとなる。この場合、ステップは、ステップ3(S3)に進む。
【0074】
(S3)
ステップ3(S3)においては、次に、図5に示すカテゴリー(2)についての判定が行われる。ステップ3(S3)で、厳しい環境による適用不可がある、と判定された場合には、ステップ3(S3)の判定はYesとなる。この場合、ステップは、ステップ7(S7)に進む。そして、ステップ7(S7)で、プレビュー制御がOFFになる。
【0075】
一方、ステップ3(S3)で、厳しい環境による適用不可がある、とは判定されなかった場合には、ステップ3(S3)の判定はNoとなる。この場合、ステップは、ステップ4(S4)に進む。
【0076】
(S4)
ステップ4(S4)においては、次に、図5に示すカテゴリー(3)についての判定が行われる。ステップ4(S4)で、システムの限界オーバーがある、と判定された場合には、ステップ4(S4)の判定はYesとなる。この場合、ステップは、ステップ7(S7)に進む。そして、ステップ7(S7)で、プレビュー制御がOFFになる。
【0077】
一方、ステップ4(S4)で、システムの限界オーバーがある、とは判定されなかった場合には、ステップ4(S4)の判定はNoとなる。この場合、ステップは、ステップ4(S4)に進む。
【0078】
(S5)
ステップ5(S5)においては、次に、図5に示すカテゴリー(4)についての判定が行われる。ステップ5(S5)で、システムの故障がある、と判定された場合には、ステップ5(S5)の判定はYesとなる。この場合、ステップは、ステップ7(S7)に進む。そして、ステップ7(S7)で、プレビュー制御がOFFになる。
【0079】
一方、ステップ5(S5)で、システムの故障がある、とは判定されなかった場合には、ステップ5(S5)の判定はNoとなる。この場合、ステップは、ステップ6(S6)に進む。
【0080】
(S6)
ステップ6(S6)において、プレビュー制御がONになる。4つのカテゴリーに分類された、プレビュー制御をONにすべきではない理由のいずれにも、該当しなかったためである。
【0081】
(S8)
ステップS8は、プレビュー制御がOFFの場合に、プレビュー制御をONにするかを判定するステップである。プレビュー制御がOFFの場合にプレビュー制御をONにする条件を復帰条件という。復帰条件については後に説明する。
【0082】
(S9)
ステップS6でプレビュー制御がONになったのち、ステップS9で、プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフローは終了する。ただし、フローが一旦終了した後に、例えば車両Vの状況の把握を継続することもできる。この場合、必要に応じて、再度、ステップS1から、プレビュー制御のON及びOFFの切り替えフローを開始することもできる。なお、このような状況の把握は、例えば、サスペンションシステム3に備えられる、図示しない状況把握部などを介して行うことができる。
【0083】
以上のように、本実施形態のプレビュー路面検出装置1では、プレビュー制御が所定条件においてOFFになる。また、プレビュー制御がOFFになることに対応して、距離センサ11が停止する。
【0084】
そのため、本実施形態のプレビュー路面検出装置1によると、予見制御としてのプレビュー制御を中止することが可能であり、また中止するか否かを決定するために必要とされる消費エネルギーが抑制されたプレビュー路面検出装置1を提供することができる。言い換えると、本実施形態のプレビュー路面検出装置1によると、プレビュー路面検出装置1に関するシステム消費エネルギーを低減することができる。また、本実施形態のプレビュー路面検出装置1によると、距離センサ11が所定条件において停止することで、プレビュー路面検出装置1が誤作動防することを抑制することができる。
【0085】
(所定条件)
以下、距離センサ11が停止する所定条件について、カテゴリーごとに説明する。図5は、所定条件の4つのカテゴリーのうち、(1)及び(2)の内容を示す図である。
(カテゴリー(1))
カテゴリー(1)は、プレビューセンサ値の用途がない状況がまとめられたカテゴリーである。その状況の例を、シーンの例として示す。1つ目のシーンは、停車時、及びEPB(EPB:Electric Parking Brake、電動パーキングブレーキ))の作動時である。これらの状況では、車両は停止している。そのためプレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0086】
このシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定の例は、下記のようにすることができる。すなわち、EPBが作動しているとき、又は、車輪速度センサが1輪でもゼロの時に、プレビューセンサの起動を停止させることができる。
【0087】
カテゴリー(1)における2つ目のシーンは、ステアリングの角度が一定以上である場合である。ステアリングの角度が一定以上である場合、車両Vは、例えば車庫に入れられようとする状況や、駐車されようとする状況である。このような状況では、車両Vは、低速で、また短い距離のみを走行する場合が多い。このような場合、プレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0088】
また、ステアリングの角度が一定以上である場合には、車両Vの進行方向は大きく変化する。そのため、プレビュー路面検出装置1によって予見された路面の状況と、実際に車両Vが走行する路面の状況と、が異なることも考えられる。このような場合にも、プレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0089】
このシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定の例は、ステアリング角度の情報が閾値以上の場合に、プレビューセンサの起動を停止させる、との判定を例示することができる。
【0090】
カテゴリー(1)における3つ目のシーンは、バック動作中である。プレビュー路面検出装置1は、通常、車両Vの前方の路面状況を検出する。そのため、後進する際に、プレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0091】
このシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定は、バック動作フラグの受信中に、プレビューセンサの起動を停止させる、との判定を例示することができる。なお、バック動作フラグの受信は、例えば、CAN(Controller Area Network)を介して、VSA(Vehicle Stability Assist)のMAEPS(Motion Active Electric Power Steering)のREVERS F(リバースフラッグ)を受信するようにすることができる。
【0092】
以上のように、プレビュー路面検出装置1では、停車時、操舵角が所定以上の時、及び後退時のうちの少なくとも一つの時に、距離センサ11を停止することができる。これにより、算出した路面距離の使用用途が少ないときに、システムの消費エネルギーを低減することができる。
【0093】
(カテゴリー(2))
カテゴリー(2)は、厳しい環境による適用不可の状況がまとめられたカテゴリーである。その状況の例を、シーンの例として示す。カテゴリー(2)におけるシーンとしては、例えば、雪、路面の凍結、及び路面が変化する場合があげられる。また、路面が変化する場合とは、例えば、路面のぬかるみ、又は砂浜など、車がそこを乗り越える際に、路面の状況が変化するような場合をいう。言い換えると、路面が変化する場合とは、固まっていない路面を乗り越える場合などをいう。このようなシーンにおいては、路面の状況を正確に予測することは困難である。そのためプレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0094】
このようなシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定は、例えば下記のように行うことができる。すなわち、雪に対しては、カーナビゲーションシステムからの天気情報の参照が考えられる。また、路面の凍結に対しては、外気温度センサからの温度の取得が考えられる。より具体的には、路面の凍結については、外気温度センサによって測定された外気温度に閾値を設定しておく。そして、外気温度がその閾値以下となったときに、路面に凍結があると、判定されるようにすることができる。この閾値は、例えば2度以下とすることができる。
【0095】
路面のぬかるみ又は砂浜など、車がそこを乗り越える際に路面の状況が変化するようなシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定は、例えば、プレビュー制御をしているのにもかかわらず、閾値以上のボディGが連続しているとき、とすることができる。
【0096】
以上のように、プレビュー路面検出装置1では、周辺天気が雪と判定されるとき、及び外気温が所定の温度以下であるときなどに距離センサを停止する。また、ABS(Anti-lock Braking System)、又はVSA(Vehicle Stability Assist)が作動しているときに、距離センサを停止することもできる。
【0097】
このような対応をすることにより、限界環境が予測される状況において、距離センサ11を使用することによって生じるサスペンションシステムの誤作動を抑制することができる。また、プレビューセンサを用いてのサスペンションの制御が不要である状況において、システムが消費するエネルギーを低減することができる。
【0098】
(カテゴリー(3))
カテゴリー(1)及び(2)に引き続き、カテゴリー(3)及び(4)について説明する。カテゴリー(3)及び(4)については、図6に基づいて説明する。カテゴリー(3)は、システムの限界オーバーの状況がまとめられたカテゴリーである。その状況の例を、シーンの例として示す。カテゴリー(3)におけるシーンとしては、例えば、山道などの荒れ道を走行する場合をあげることができる。
【0099】
このようなシーンにおいては、路面の状況を正確に予測することは困難である。また、走行中の車両Vの姿勢を予測することは困難である。そのためプレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0100】
このようなシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定は、例えば下記のようにすることができる。すなわち、車両Vにおいて、閾値以上の車体Bの加速度が連続して続いた場合に、プレビューセンサの起動を停止することができる。
【0101】
以上のように、プレビュー路面検出装置1では、閾値以上の車体Bの上下加速度が所定時間以上続いたときに距離センサ11を停止するようにすることができる。また、プレビュー路面検出装置1では、バッテリの電圧値が所定の値以下の時に、距離センサ11を停止するようにすることができる。
【0102】
これにより、システムの限界を超えている場合において、距離センサ11を使用することによるシステムの誤作動を抑制することができる。また、距離センサ11を停止することで、システムの消費エネルギーを低減することができる。
【0103】
(カテゴリー(4))
カテゴリー(4)は、システムの故障に関係する状況がまとめられたカテゴリーである。その状況の例を、シーンの例として示す。カテゴリー(4)におけるシーンとしては、例えば、距離センサ11に泥などの汚れが付着している場合、及び距離センサ11が故障している場合があげられる。このようなシーンにおいては、路面の状況を正確に予測することは困難である。そのためプレビューセンサを用いてのサスペンションの制御は不要である。
【0104】
このようなシーンでのプレビューセンサの起動停止の判定は、例えば下記のようにすることができる。すなわち、センサに泥などの汚れが付着していることに対しては、センサの値が過大又は過少ではないか、若しくは、センサの値が一定期間変化がない状態ではないか、などで判定することができる。また、センサの故障に対しては、センサからの応答がない状態ではないか、などで判定することができる。
【0105】
以上のように、プレビュー路面検出装置1では、距離センサ11の検出値が所定時間にわたって一定、過小又は過大である場合に、距離センサ11を停止する。これにより、システムの故障が予測される場合において、距離センサ11を使用することによるシステムの誤作動を抑制することができる。また、距離センサ11を停止することで、システムの消費エネルギーを低減することができる。
【0106】
(プレビュー制御への復帰)
これまで、プレビュー制御のONとOFFとの切り替えの開始から、プレビュー制御がOFFになることが決定されるまでを中心に説明してきた。プレビュー路面検出装置1では、所定の条件が解消された場合などに、プレビュー制御をONにすることができる。
【0107】
(S8)
ステップS8は、プレビュー制御がOFFの場合に、プレビュー制御をONにするかを判定するステップである。ステップS2からステップS5の判定によって、ステップS7でプレビュー制御がOFFになった場合、次にステップS8に進み、復帰条件を満たすかが判定される。ステップS8において、復帰条件を満たすと判定された場合には、ステップS6に進み、プレビュー制御がONになる。一方、復帰条件を満たすとは判定されなかった場合には、ステップS7に戻り、プレビュー制御のOFFが継続される。プレビュー制御のOFFが継続された場合、例えば車両Vの状況の把握を継続することもできる。この場合、復帰条件が満たされ次第、ステップS8を介してS6に進み、プレビュー制御をONにすることができる。なお、このような状況の把握は、例えば、サスペンションシステム3に備えられる、図示しない状況把握部などを介して行うことができる。以下、復帰条件について、具体的に説明する。
【0108】
前述のように、ステップS7でのプレビュー制御のOFFは、ステップS2からステップS5において各々判定される、カテゴリー(1)からカテゴリー(4)の所定条件に該当したために、行われたものである。そのため、所定条件に該当しなくなった場合には、プレビュー制御をONにすることが好ましい。
【0109】
例えば、カテゴリー(1)の所定条件に該当したためにプレビュー制御がOFFになっている場合には、停車後に発進したとき、又は後退後に前進したときにプレビュー制御をONにすることができる。同様に、ステアリングの操舵角度が閾値以上であった状態から、ステアリングの操舵角度が閾値未満になった場合などにも、プレビュー制御をOFFからONにすることができる。プレビュー制御をONにすることにともない、距離センサ11も起動する。
【0110】
このように、プレビュー制御がOFFになった要因の変化をモニタしておき、プレビュー制御がOFFになった原因が解消するとともに、プレビュー制御がONになるようにすることもできる。これにより、適切なタイミングでサスペンションシステム3をプレビュー制御に復帰させることができる。
【0111】
また、例えば、カテゴリー(2)からカテゴリー(3)の所定条件に該当したためにプレビュー制御がOFFになっている場合には、所定の条件が解消された場合に加えて、車両Vが停車した際に、プレビュー制御がONになるようにすることもできる。これにより、適切なタイミングで距離センサ11を起動してプレビュー制御への復帰を試みることができる。
【0112】
以下、復帰の例について、先に参照した図5及び図6を参照しながら、カテゴリーごとに説明する。前述のように、復帰すること、すなわち、プレビュー制御がONになる条件は、原則として、プレビュー制御がOFFになった条件の解消である。
【0113】
(カテゴリー1)
例えば、カテゴリー1において、停車によりプレビュー制御がOFFになっている場合には、車輪速度センサを用いて車両が動いていると判定されたときに、プレビュー制御がOFFからONに切り替わるようにすることができる。同様に、EPBが作動していることでプレビュー制御がOFFになっている場合には、EPBの作動停止によりプレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。
【0114】
また、ステアリング角度が閾値以上であるためにプレビュー制御がOFFになっている場合には、ステアリング角度が閾値未満になることでプレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。
【0115】
また、バック動作中であるためにプレビュー制御がOFFになっている場合には、バック動作フラグがOFFになり、車両Vが前進していると判定されたときに、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。
【0116】
(カテゴリー2及びカテゴリー3)
カテゴリー2及びカテゴリー3についても同様である。例えば、カーナビからの天気情報が雪であるためにプレビュー制御がOFFになっている場合には、天気情報が雪以外になったときにプレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。また、評価値が、あらかじめ設定された閾値と所定の関係であることによりプレビュー制御がOFFになっている場合には、その関係が解消したときにプレビュー制御がONになるように設定することができる。
【0117】
(カテゴリー4)
カテゴリー4についても、プレビュー制御がOFFになるために満たしていた所定条件が満たされなくなることで、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。ただし、カテゴリー4に分類されるセンサへの泥などの付着、及びセンサの故障については、他のカテゴリーとは異なる対処をすることが好ましい。具体的には、センサの値が過大又は過少であることにより、センサへの泥などの汚れの付着があると判定されていた場合には、例えば、一定期間ごとにセンサ値を取得する。そして、指定範囲内のセンサ値が正常に所得されるようになったときに、センサへの汚れの付着が解消したと判定する。そして、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。この一定期間は、例えば30秒ごとなどとすることができる。
【0118】
同様に、センサの値が一定期間変化がないことにより、センサへの泥などの汚れの付着があると判定されていた場合には、例えば、一定期間ごとに複数のセンサ値を取得する。そして、値に指定範囲内での変化があったときに、センサへの汚れの付着が解消したと判定する。そして、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。この一定期間は、例えば30秒ごとに3回などとすることができる。
【0119】
また、センサからの応答がないことにより、センサが故障していると判定されていた場合には、例えば、イグニッションで再起動されるまでは、復帰すること、すなわちプレビュー制御がONになることはなく、イグニッションで再起動された際に、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。
【0120】
また、別の例として、センサからの応答がないことにより、センサが故障していると判定されていた場合には、車両Vがその後停車した際に、プレビュー制御がONに切り替わるようにすることができる。車両Vが停車した際に、センサからの応答が復活することがあるためである。
【0121】
以上のようにカテゴリー(4)の、センサへの汚れの付着、及びセンサの故障に関しては、他のカテゴリーとは異なる復帰のさせ方を採用することができる。これは、センサへの汚れの付着、及びセンサの故障は、センサの値以外の他の評価値に基づいて判定することが容易ではないためである。また、センサへの汚れの付着、及びセンサの故障は、センサの値に基づいて見極めることが直接的であり、また正確であるためである。
【0122】
(懸架制御装置)
懸架制御装置について説明する。懸架制御装置の具体例として、図1に示したサスペンション制御部5をあげることができる。サスペンション制御部5は、能動型懸架装置の動作を制御するものである。能動型懸架装置の具体例として、アクティブサスペンションDをあげることができる。サスペンション制御部5は、プレビュー路面検出装置1を用いて算出した路面距離L1により、アクティブサスペンションDの動作を制御する。
【0123】
そして、本発明のサスペンション制御部5は、距離センサ11が停止された場合には、スカイフック制御または減衰制御によりサスペンションシステム3の動作を制御する。これにより、距離センサ11が停止し、プレビューに基づくサスペンションの制御ができなくなった状態においても、フィードバック制御による快適性の維持を図ることができる。
【0124】
(プレビュー路面検出方法)
本実施形態のプレビュー路面検出装置1を用いて、以下のようなプレビュー路面検出方法を実行することもできる。すなわち、車体部材30と、車輪Wの路面接地部41の少なくとも中央部43に対応する車両前方の路面Rの計測点Pと、の間の距離に関する値を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された検出値に基づいて、車体部材30から計測点Pまでの距離である路面距離L1を算出する算出ステップと、を含み、さらに、車両Vの状況を把握する状況把握ステップと、状況把握ステップで把握した車両Vの状況に基づいて、検出ステップを実行するか否かを判定する判定ステップと、を含む方法によりプレビュー路面を検出することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 プレビュー路面検出装置
3 サスペンションシステム
4 プレビュー制御部
5 サスペンション制御部(懸架制御装置)
11 距離センサ
12 距離算出部
20 外装部材
30 車体部材
41 路面接地部
43 中央部
B 車体
D アクティブサスペンション(能動型懸架装置)
D1 懸架ばね
D2 可変ダンパ
L1 路面距離
L2 路面変位
L3 車高
L4 路面接地幅
P 計測点
R 路面
V 車両
W 車輪
W1 ばね
W2 ダンパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6