(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051638
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】研磨パッド、及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20240404BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157908
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】伊地 修平
(72)【発明者】
【氏名】守 純哉
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
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5F057EB07
(57)【要約】
【課題】強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できる研磨パッド等を提供する。
【解決手段】
樹脂シートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂と、撥水剤と、加水分解抑制剤とを含む、研磨パッド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂と、撥水剤と、加水分解抑制剤とを含む、研磨パッド。
【請求項2】
前記撥水剤が、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤及び炭化水素系撥水剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記撥水剤が、パーフルオロアルキル基を有するポリウレタン樹脂を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記加水分解抑制剤が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記加水分解抑制剤が、50以上1000以下のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド化合物を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記樹脂シートが、内部において、立体網目状に連通した気泡を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記樹脂シートの密度が、0.15g/cm3以上0.35g/cm3以下であり、
前記樹脂シートのショアA硬度が、15度以上50度以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
ポリウレタン樹脂と溶媒と撥水剤と加水分解抑制剤とを含む樹脂溶液を調製する工程と、
前記樹脂溶液を成膜用基材の表面に塗布する工程と、
前記樹脂溶液中の樹脂を凝固再生して、前駆体シートを形成する工程と、
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項9】
強酸化剤を含む研磨液の存在下、請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する、研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、及び研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パワーデバイスとして、SiCやGaN等の半導体を用いたものが知られている。これらの半導体基板を実用するに際して、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)技術が用いられる。
【0003】
上述した半導体は、一般的に硬度が高く、耐腐食性に優れるため、CMPを行うにあたっては、研磨パッドと、研磨液として過マンガン酸カリウム等の強酸化剤を含む溶液とが併用される(例えば、特許文献1参照)。研磨液としては、III-V族化合物半導体の鏡面仕上げ研磨における研磨レートや加工精度の向上を目的とした酸化剤の添加も検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6106535号公報
【特許文献2】国際公開第2022/024726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CMP用の研磨パッドとしては、ポリウレタン樹脂シートを含む研磨パッドが広く用いられている。かかるポリウレタン樹脂シートは、典型的には、表面に開孔部を有すると共に、その内部に形成された気泡が立体網目状に連通した構造(以下、この構造における立体網目状に連通した気泡を指して「連通孔」ともいう。)を有している。このような構造に起因して、研磨面の開孔から浸透した研磨液は気泡間を移動することができ、したがって、当該研磨液は研磨パッド内部に保持される傾向にある。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されているような強酸化剤を含む研磨液を使用する場合、研磨パッド内部に研磨液が滞留すると、ポリウレタン樹脂シートが加水分解により低分子量化するために著しい物性低下が起こり、製品寿命の低下を招くことが判明している。特にその傾向は、研磨の仕上げの工程において用いられることが多いスウェードパッド(湿式成膜法により製造された軟質の研磨層を有する研磨パッド)において顕著である。その要因は必ずしも明らかではないが、湿式成膜法は水系凝固液中で有機溶媒と水とを置換させる製法上、連通孔が形成されやすいこと、また、ポリウレタン樹脂のポリオール成分は涙形状気泡を得やすい観点からポリエステルポリオールが用いられやすい傾向にあること等が挙げられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できる研磨パッド等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、所定の成分を含む研磨パッドによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
樹脂シートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、
前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂と、撥水剤と、加水分解抑制剤とを含む、研磨パッド。
[2]
前記撥水剤が、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤及び炭化水素系撥水剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の研磨パッド。
[3]
前記撥水剤が、パーフルオロアルキル基を有するポリウレタン樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4]
前記加水分解抑制剤が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5]
前記加水分解抑制剤が、50以上1000以下のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨パッド。
[6]
前記樹脂シートが、内部において、立体網目状に連通した気泡を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の研磨パッド。
[7]
前記樹脂シートの密度が、0.15g/cm3以上0.35g/cm3以下であり、
前記樹脂シートのショアA硬度が、15度以上50度以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の研磨パッド。
[8]
ポリウレタン樹脂と溶媒と撥水剤と加水分解抑制剤とを含む樹脂溶液を調製する工程と、
前記樹脂溶液を成膜用基材の表面に塗布する工程と、
前記樹脂溶液中の樹脂を凝固再生して、前駆体シートを形成する工程と、
を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法。
[9]
強酸化剤を含む研磨液の存在下、[1]~[7]のいずれかに記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有する、研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できる研磨パッド等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る研磨パッドの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、樹脂シートを有する研磨層を備える研磨パッドであって、前記樹脂シートが、ポリウレタン樹脂と、撥水剤と、加水分解抑制剤とを含む。本実施形態の研磨パッドは、このように構成されているため、強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できる。
【0013】
図1は、本実施形態の研磨パッドの一例を示す模式断面図である。研磨パッド110は、ポリウレタン樹脂と、撥水剤と、加水分解抑制剤とを含む樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」という。)112と基材114とをこの順に積層して含む。樹脂シート112と基材114は、直接又は間接的に、互いに接合されており、この例では、樹脂シート112と基材114とは接着層116を介して接合されている。なお、基材114や接着層116は本実施形態の研磨パッドにおいて任意の構成であり、本実施形態の研磨パッドは、基材114や接着層116を有する態様に限定されない。
【0014】
樹脂シートは、研磨層として機能するものである。
図1の例において、樹脂シート112は、研磨面Pを有する。すなわち、本実施形態の研磨パッドの少なくとも1つの表面が本実施形態における樹脂シートの表面に対応しており、当該樹脂シートの表面が、本実施形態における研磨の際、被研磨物に押し当てられる研磨面となる。
【0015】
樹脂シートの密度(かさ密度)は、特に限定されないが、25℃において0.15g/cm3以上0.35g/cm3以下であると好ましい。この密度が0.15g/cm3以上であることにより、樹脂シートの永久歪みが生じ難くなり、また、0.35g/cm3以下であることにより、樹脂シートの全体に亘って被研磨物をより均一に研磨しやすくなる。
密度は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
密度は、例えば、後述する本実施形態の研磨パッドの製造方法を採用すること等により上記した範囲に調整することができる。例えば、本実施形態における樹脂シートの製造工程において、乾式成型法の場合は水、不活性ガス、中空微粒子等の発泡剤の量を、湿式成膜法の場合は発泡を促進させる親水性活性剤の量を少なくすることで樹脂シートの密度は高くなる傾向にある。
【0016】
樹脂シートのショアA硬度は、特に限定されないが、15度以上50度以下であると好ましく、20度以上40度以下であるとより好ましい。ショアA硬度が15度以上であることにより、研磨レートをより高めることができると共に、研磨加工後の被研磨物における被研磨面の平坦性をより向上することができる傾向にある。また、ショアA硬度が50度以下であることにより、被研磨物の微小欠陥をより低減することができる傾向にある。更に、ショアA硬度が上記範囲内であることにより、化合物半導体の中でも脆い基板とされるInP基板等から、所謂難削材料であるSiCやGaN等まで、幅広い被研磨物に対して本実施形態の研磨パッドを適用できる傾向にある。
ショアA硬度は、25℃におけるものであり、JIS K 7311に準拠して測定される。より詳しくは、複数枚の試料を合計厚さが4.5mm以上となるように重ね、ショアA デュロメータを用いて測定される。
ショアA硬度は、例えば、樹脂シートに用いる樹脂の種類や組成、樹脂シート作成の際に使用し得る添加剤(例えば、カーボンブラック等)の添加量を調整することにより制御することができる。
【0017】
本実施形態において、研磨の均一性、研磨レート、研磨加工後の平坦性を両立すると共に被研磨物の微小欠陥低減の観点から、樹脂シートの密度が、0.15g/cm3以上0.35g/cm3以下であり、かつ、当該樹脂シートのショアA硬度が、15度以上50度以下であることがとりわけ好ましい。
密度及びショアA硬度は、例えば、上述した方法により各々上記した範囲に制御することができる。
【0018】
樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。樹脂シートの厚さは、JIS K 6505に記載された測定方法に準拠して測定される。すなわち、樹脂シートの厚さ方向に初荷重として1cm2当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さである。
【0019】
樹脂シートの圧縮率は、特に限定されないが、1%以上30%以下であると好ましく、3%以上20%以下であるとより好ましい。圧縮率が上記範囲内にあることにより、研磨パッドが、研磨加工時に被研磨物上に存在する研磨屑等を、適度に拭き取って除去することができる傾向にある。したがって、特に研磨屑等の凝集物に起因する微小欠陥を抑制することができる傾向にある。圧縮率は、例えば、樹脂シートにおける気泡の大きさや数、形状等を調整することにより制御することができる。圧縮率は、下記の方法に準じて測定される。
【0020】
樹脂シートの圧縮弾性率は、特に限定されないが、50%以上100%以下であると好ましく、80%以上100%以下であるとより好ましい。圧縮弾性率が上記範囲内にあることにより、被研磨物の微小欠陥をより低減することができる傾向にある。圧縮弾性率は、例えば、樹脂シートに用いる樹脂の種類や組成を調整することにより、制御することができる。圧縮弾性率は、下記の方法に準じて測定される。
【0021】
樹脂シートの圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L 1021に準拠して、ショッパー型厚み測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求める。具体的には、室温において、無荷重の状態から初荷重を30秒間かけた後の厚みt0を測定し、次に厚みt0の状態から最終荷重をかけて、そのまま1分間放置後の厚みt1を測定する。更に厚みt1の状態から全ての荷重を除き、1分間放置後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚みt0’を測定する。これらから、圧縮率及び圧縮弾性率を下記式:
圧縮率(%)=(t0-t1)/t0×100
圧縮弾性率(%)=(t0’-t1)/(t0-t1)×100
により算出する。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とする。
【0022】
樹脂シートの研磨層を構成するポリウレタン樹脂の100%モジュラスは、1MPa以上30MPa以下であることが好ましく、5MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。100%モジュラスが30MPa以下であるポリウレタン樹脂を用いることにより、被研磨物にスクラッチが発生することを抑制し、高精度の研磨が達成される傾向にある。また、100%モジュラスが1MPa以上であるポリウレタン樹脂を用いることにより、被研磨物上に存在する欠陥を除去しやすい傾向にある。100%モジュラスは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%(元の長さの2倍の長さまで)伸ばしたときにかかる荷重を単位面積で除した値である。この値が大きくなるほど、硬い樹脂であることを意味する。
【0023】
樹脂シートは、その内部に複数の気泡(図示しない。)を有するものであることが好ましい。このような複数の気泡は、湿式成膜法により形成されたものであってもよく、乾式成型法により形成されたものであってもよい。湿式成膜法の一例としては、以下に限定されないが、ポリウレタン樹脂等の樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜用基材に塗布した後、水系凝固液中で有機溶媒と水とを置換させることで樹脂シートを得る方法等が挙げられる。乾式成型法の一例としては、以下に限定されないが、種々公知のポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物およびポリアミン化合物を反応させることで樹脂シートを得る方法等が挙げられる。
一般に、樹脂シートは、乾式成型法により形成された場合よりも湿式成膜法により形成された場合の方が、樹脂組成や比表面積の観点から加水分解を受けやすい傾向にある。そのため、湿式成膜法により形成された樹脂シートの方が、研磨において使用される強酸化剤の影響を受けやすく、したがって、本実施形態における長期使用に係る効果が顕著となる傾向にある。
樹脂シートが湿式成膜法により形成されたものである場合、研磨面P側に図示しない緻密な微多孔が形成されたスキン層を有したままでもよいし、研削処理(バフ処理)により後述の空孔を研磨面に開孔させてもよい。なお、スキン層の表面は微細な平坦性を有している。スキン層のより内側(樹脂シートの内部)には、スキン層の微多孔よりも大きな孔径で樹脂シートの厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の空孔(涙形状気泡;図示しない。)が形成されていることが好ましい。その空孔は、研磨面P側の大きさが、研磨面Pと反対の面側よりも小さく形成されていることが好ましい。樹脂シートには、スキン層の微多孔よりも大きく空孔よりも小さいサイズの孔(微細気泡;図示しない。)がスキン層の表面やスキン層のより内側に形成されていてもよい。
樹脂シートが乾式成型法により形成されたものである場合、樹脂シートの内部に断面が円形状ないし楕円形状(略球状)の空孔が略均等に分散して形成されていてもよい。
本実施形態において、樹脂シートは、その内部において、立体網目状に連通した気泡(連通孔)を有していてもよい。例えば、スキン層の微多孔、空孔及び微細気泡は互いに連通孔で網目状につながっていてもよく、略球状の空孔が連通孔で網目状につながっていてもよい。本実施形態において、以下に限定されないが、樹脂シートが湿式成膜法により形成されたものである場合、このような構造が得られやすい傾向にある。
【0024】
樹脂シートは、ポリウレタン樹脂を含む組成であれば特に限定されず、例えば、樹脂シートは、その全体量(100質量%)に対して、ポリウレタン樹脂を80質量%以上100質量%以下含むものであってもよい。樹脂シートは、その全体量(100質量%)に対して、ポリウレタン樹脂を85質量%以上100質量%以下含むことが好ましく、90質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、90質量%以上95質量%以下含むことが更に好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、含まれるポリオール成分の種類に応じて、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中では、研磨時において、研磨液の貯留、排出により研磨液の循環を促す涙形状気泡が形成されやすいことから、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。一般に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂により形成された樹脂シートは、研磨において使用される強酸化剤の影響を受けやすく、したがって、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を採用する場合、本実施形態における長期使用に係る効果が顕著となる傾向にある。
【0026】
ポリウレタン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、クリスボン(DIC社製、商品名)、サンプレン(三洋化成工業社製、商品名)、レザミン(大日本精化工業社製、商品名)が挙げられる。ポリウレタン樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
樹脂シートは、ポリウレタン樹脂以外に、ポリサルホン樹脂及び/又はポリイミド樹脂などの他の樹脂を含んでもよい。ポリサルホン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、ユーデル(ソルベイアドバンストポリマーズ社製、商品名)が挙げられる。ポリイミド樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、オーラム(三井化学社製、商品名)が挙げられる。
【0028】
樹脂シートは、ポリウレタン樹脂に加えて、撥水剤を含む。撥水剤とは、樹脂シートに含有させることにより、樹脂シートの表面が有する撥水性を向上させる効果を有するものをいう。ここで、撥水性は、例えば研磨面と水との接触角を指標とすることができる。樹脂シートは、撥水剤を含むことにより、強酸化剤を含む研磨液のパッド内部への浸透を抑制することができる。とりわけ、樹脂シートが湿式成膜法により製造され、その内部において、立体網目状に連通した気泡を有する場合、涙形状気泡内部に研磨液が保持されることを許容しつつ、涙形状気泡の壁に存在する微細気泡への強酸化剤の浸透を抑制することができる。
樹脂シートが撥水剤を含有していることは、元素分析等の公知の分析方法を用いることにより、確認することができる。
【0029】
撥水剤としては、例えば、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤及び炭化水素系撥水剤が挙げられる。これらの中でも、耐薬品性、ポリウレタン樹脂との撹拌均一性等の観点から、フッ素系撥水剤(フッ素原子を含む撥水剤)が好ましい。撥水剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
フッ素系撥水剤としては、パーフルオロアルキル基を有する化合物が挙げられ、パーフルオロアルキル基を有するポリウレタン樹脂を含むことが好ましく、下記式(1)で表されるフッ素テロマーに由来する構造を有することがより好ましい。これは、C-F結合間の結合エネルギーが116kcal/molであり、特に高い安定性を有しており、これが他の分子との結合(粘着)を妨げることに因るものと推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)
Rf-R-X (1)
式(1)中、Rfは、パーフルオロアルキル基を表し、その炭素数は3~8であり、4~8であることが好ましく、6~8であることがより好ましく、6であることが更に好ましい。また、Rは、アルキレン基を表し、その炭素数は1~6であり、2~4であることが好ましく、2であることがより好ましい。Xは、官能基を表し、その官能基として、例えば、ヒドロキシ基、CH2=CHC(=O)CO-、H(OCH2CH2)xO-、YSO3-〔Yは、水素原子又はNH4を表す。〕が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基である。
【0031】
また、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤として、樹脂をパーフルオロアルキル基で変性したフッ素系撥水剤も挙げられる。樹脂としては、樹脂シートに対する分散性及び経時安定性を向上させる観点から、研磨パッドの樹脂シートを構成し得る樹脂と同種の樹脂、例えばポリウレタン樹脂が挙げられ、変性方法としては、例えば、樹脂の末端及び/又は側鎖にパーフルオロアルキル基を導入する方法が挙げられ、上記(1)式で挙げたフッ素テロマーを用いることで樹脂にパーフルオロアルキル基を導入することができる。パーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0032】
本実施形態において、強酸化剤を用いた研磨に供した場合の長期使用の観点から、上記フッ素テロマーの中でも、Rfの炭素数が6であるものが好ましく、更にRの炭素数が1又は2であるもの、すなわちパーフルオロヘキシルメチル基(C6F13CH2-)又はパーフルオロヘキシルエチル基(C6F13C2H4-)を有するものが好ましい。また、樹脂シートに対する分散性及び経時安定性を考慮すると、樹脂をパーフルオロアルキル基で変性したフッ素系撥水剤として、フッ素テロマーをその樹脂に導入したフッ素系撥水剤、例えば、上記式(1)のうちのRf-R-で表される基を有する樹脂が好ましく、上記式(1)のうちのRf-R-で表される基を有するポリウレタン樹脂がより好ましい。そのような樹脂としては、例えば、国際公開第2012/172936号に記載のポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0033】
また、撥水剤としてフッ素テロマーのようなフッ素系撥水剤を用い、そのフッ素系撥水剤が炭素数6のRfを有するフッ素系撥水剤を含む場合、樹脂シートに含まれるフッ素系撥水剤の60モル%以上100モル%以下が、炭素数6のRfを有するフッ素系撥水剤であると好ましい。このことは、炭素数が6を超えるRfを有するフッ素テロマーのようなフッ素原子を多く含む化合物や、炭素数が6未満のRfを有するフッ素テロマーのようなフッ素原子を少なく含む化合物を制限することになる。これにより、フッ素原子を多く含む化合物の含有量を低減して研磨液を保持しつつ、連通孔への浸み込みをより有効に抑制することができ、また、フッ素原子を少なく含む化合物の含有量を低減して上述の適度な撥水性をより有効に確保できる傾向にある。
【0034】
上記フッ素系撥水剤は常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、クリスボンアシスターSDシリーズ(DIC社製、商品名)、アサヒガードEシリーズ(AGCセイミケミカル社製、商品名)、NKガードSシリーズ(日華化学社製、商品名)、ユニダインマルチシリーズ(ダイキン工業社製、商品名)などが挙げられる。
【0035】
樹脂シートにおける撥水剤の含有量は、特に限定はないが樹脂シート(100質量%)に対して、0.01質量%以上5質量%以下であると好ましく、0.02質量%以上1質量%以下であるとより好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であると更に好ましい。撥水剤の含有量が樹脂シート(100質量%)に対して0.01質量%以上であることにより、研磨液の連通孔への浸み込みを抑制できる傾向にある。また、撥水剤の含有量が樹脂シート(100質量%)に対して5質量%以下であることにより、撥水剤の溶出を防止できる傾向にあり、かつ、樹脂シート中の涙形状気泡等への研磨液の侵入が容易となり、研磨液を好ましく保持できる傾向にあり、かつ、研磨液の貯留、排出による研磨液の循環がより良好となり、研磨レート及び研磨精度が向上する傾向にある。
【0036】
樹脂シートは、ポリウレタン樹脂に加えて、加水分解抑制剤を含む。加水分解抑制剤とは、樹脂シートに含有させることにより、周囲環境に起因する樹脂シートの加水分解を抑制する効果を有するものをいう。樹脂シートは、加水分解抑制剤を含むことにより、強酸化剤による加水分解を抑制することができる。
樹脂シートが加水分解抑制剤を含有していることは、元素分析等の公知の分析方法を用いることにより、確認することができる。
【0037】
本実施形態において、強酸化剤を用いた研磨に供した場合の長期使用の観点から、加水分解抑制剤が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エステル結合やウレタン結合の加水分解により生じるカルボキシ基末端由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点からカルボジイミド化合物を含むことがより好ましい。
【0038】
カルボジイミド化合物は、分子内にカルボジイミド基を含有する化合物であれば特に限定されないが、分子内にカルボジイミド基を2個以上含むポリカルボジイミド化合物が好ましく、下記式(2)で表されるカルボジイミド化合物がより好ましい。
(-N=C=N-R-)n (2)
式(2)中、nは1以上50以下の整数であり、5以上40以下の整数が好ましく、10以上30以下の整数がより好ましい。Rは脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのいずれかに由来する構造であり、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
具体的には、Rは1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート等に由来する構造であり、これらのポリイソシアネート化合物をカルボジイミド化触媒の存在下で脱炭酸縮合反応させることによって生成するポリカルボジイミド化合物が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
本実施形態において、樹脂シート作成の際に採用し得る凝固浴の水等との副反応(脱炭酸反応)に起因する発泡の発生を防止し、より均一な成膜を達成する観点から、カルボジイミド化合物は、末端にイソシアネート基を含有しない化合物であることが好ましく、例えば、ポリイソシアネートのポリカルボジイミド化合物の両末端をモノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン等で封鎖したポリカルボジイミドが挙げられる。
【0040】
本実施形態において、ポリカルボジイミド化合物の溶出を防止する観点から、加水分解抑制剤が、50以上1000以下のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド化合物を含むことが好ましく、100以上800以下のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド化合物を含むことがより好ましく、150以上500以下のカルボジイミド当量を有するカルボジイミド化合物を含むことが更に好ましい。なお、カルボジイミド当量は、「カルボジイミド化合物の分子量」を「カルボジイミド化合物1分子中のカルボジイミド基の数」で除することで求めることができる。
上記ポリカルボジイミド化合物は常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、カルボジライトシリーズ(日清紡ケミカル社製、商品名)、カルボジスタシリーズ(帝人社製、商品名)、スタバクゾールシリーズ(ラインケミー社製、商品名)等が挙げられる。
【0041】
オキサゾリン化合物は、分子内にオキサゾリン基を含有する化合物であれば特に限定されない。好ましくはビスオキサゾリン化合物であり、その具体例としては、以下に限定されないが、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4,4’-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-9,9’-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)および2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
エポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を含有する化合物であれば特に限定されない。エポキシ化合物の好ましい例としては、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0043】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステルおよびピロメリット酸テトラグリシジルエステル等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
また、グリシジルエーテル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
本実施形態において、樹脂シートにおける加水分解抑制剤の含有量は、特に限定はないが樹脂シート(100質量%)に対して、0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.05質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下含まれることが更に好ましい。加水分解抑制剤の含有量が樹脂シート(100質量%)に対して0.01質量%以上であることにより、研磨層の加水分解を十分に抑制できる傾向にある。また、加水分解抑制剤の含有量が樹脂シート(100質量%)に対して10質量%以下であることにより、加水分解抑制剤の溶出を防止できる傾向にあり、かつ、加水分解抑制剤が樹脂シート中で均一に分散しやすくなり、研磨層自体の物性変化も防止できる傾向にある。
【0046】
本実施形態の研磨パッドにより、強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できる理由としては、特に限定する趣旨ではないが、以下のように推察される。
本実施形態において、樹脂シートは、典型的には、樹脂シートに形成された気泡が立体網目状に連通した構造を有し得る。この場合、研磨面の開孔から研磨液が気泡間を移動可能となり、研磨液を研磨パッド内部全体に保持する性質を有する。ここで、強酸化剤を含む研磨液が研磨パッド内部に滞留した場合、ポリウレタン樹脂シートが加水分解により低分子量化するために著しい物性低下が起こり、製品寿命の低下を招く。本発明者らは、鋭意検討の結果、撥水剤及び加水分解抑制剤の併用が製品寿命の延長に寄与することを見出した。加水分解抑制剤として、カルボジイミド化合物を用いる例でいえば、強酸化剤が浸透した場合、加水分解で生じたカルボキシ基とカルボジイミド化合物とが反応することでカルボキシ基が消失し、研磨層を構成するポリウレタン樹脂の更なる加水分解による低分子量化を抑制できる。加水分解抑制剤のみを添加した場合、強酸化剤を含む研磨液の連通孔への浸透を抑制することはできず、ポリウレタン樹脂シートと研磨液の接触面積は変わらないため、ポリウレタン樹脂シートの加水分解を十分に抑制することができない。そこで、本実施形態においては、撥水剤を加水分解抑制剤と併用することにより、強酸化剤を含む研磨液の浸透度合いを制御しつつ研磨層を構成するポリウレタン樹脂の低分子量化を抑制できる構成となり、したがって、強酸化剤を用いた研磨に供した場合でも十分に長い製品寿命を確保できるものと推察される。なお、撥水剤のみを添加した場合、強酸化剤を含む研磨液の連通孔への浸透を抑制することができるが、研磨面には常に研磨液が存在しているため、研磨面表層の加水分解を避けることができない。研磨面に研磨負荷が掛かることでポリウレタン樹脂シートの千切れ等が発生し、これが研磨欠陥となるおそれがある。
【0047】
本実施形態において、研磨レート及び研磨精度をより向上させる観点から、樹脂シートは、カーボンブラックを更に含むことが好ましい。カーボンブラックを含むことにより、研磨レートが向上する要因は、湿式成膜法により製造される場合に樹脂シートがカーボンブラックを含むことにより、樹脂シートが均一な発泡形状を形成することできることに起因して、研磨液の保持能力がより向上するものと推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。加えて、カーボンブラックは、ポリウレタン樹脂に対して発泡形成を安定化させる作用を有するため、被研磨物の平坦性がより向上するものと推察される。更に、カーボンブラックは、樹脂シートに対して脆性を付与するため、ポリウレタン樹脂の毛羽立ち(樹脂伸び)に伴う開孔の閉塞を抑制できる傾向にあり、研磨精度がより向上するものと推察される。カーボンブラックを含ませる場合には、樹脂シート(100質量%)に対して1質量%以上35質量%以下含むことが好ましく、3質量%以上30質量%以下含むことがより好ましく、5質量%以上25質量%以下含むことが更に好ましい。
【0048】
樹脂シートは、上述した成分以外に、研磨パッドの樹脂シートに通常用いられる材料を含んでもよい。更には、樹脂シートには、樹脂シートの製造過程において用いられた溶媒等の各種の材料が一部残存していてもよい。
【0049】
樹脂シートの研磨面Pには微細気泡が存在していてもよい。微細気泡は、例えば、樹脂シートの成膜時に、スキン層の表面やスキン層のより内側に微細気泡を形成させるための孔形成剤を添加すること等により形成することができる。
【0050】
研磨パッド110に備えられる基材114は、樹脂シートを支持するために採用し得る部材であり、特に限定されず、従来の研磨パッドに基材として含まれるものであってもよい。基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)フィルム等の樹脂フィルムやポリウレタン樹脂で固着させた不織布、発泡ポリウレタン樹脂やポリエチレンフォームなどの発泡体シートなどが挙げられる。
【0051】
また、接着層116は、従来知られている研磨パッドに用いられている接着剤又は粘着剤を含むものであってもよい。接着層116の材料としては、例えば、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の各種熱可塑性接着剤が挙げられる。
【0052】
なお、研磨パッド110における、基材114及び接着層116は、それらを備える両面テープ由来のものであってもよい。その両面テープは、基材114の両面に接着剤又は粘着剤を含む接着層を有し、一方の接着層が上記接着層116に相当する。他方の接着層は、研磨機の保持用定盤に研磨パッド110を貼り合わせて装着するためのものである。両面テープは、従来の研磨パッドに含まれるものであってもよく、基材114とは反対側に図示しない剥離紙を有していてもよい。
【0053】
〔研磨パッドの製造方法〕
次に、本実施形態の研磨パッドの製造方法の一例について説明する。ここでは、樹脂シート112を湿式成膜法で作製する場合を説明するが、樹脂シート112の作製方法は、これに限定されない。例えば、本実施形態の研磨パッドは、公知の乾式成型法により形成されたものであってもよい。乾式成型法としては、以下に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物およびポリアミン化合物を反応させることで樹脂シートを得る方法等が挙げられる。
【0054】
本実施形態において採用し得る湿式成膜法としては、例えば、樹脂シート112を準備する工程と、樹脂シート112に基材114を接合して研磨パッド110を得る工程とを有する製造方法が挙げられる。
【0055】
樹脂シート112を準備する工程は、更に、樹脂と溶媒と撥水剤と加水分解抑制剤とを含む樹脂溶液を調製する工程(樹脂溶液調製工程)と、樹脂溶液を成膜用基材の表面に塗布する工程(塗布工程)と、樹脂溶液中の樹脂を凝固再生して、前駆体シートを形成する工程(凝固再生工程)と、前駆体シートから溶媒を除去して樹脂シート112を得る工程(溶媒除去工程)と、樹脂シート112をバフ処理又はスライス処理により研削及び/又は一部除去する工程(研削・除去工程)とを有するものである。以下、各工程について説明する。
【0056】
まず、樹脂溶液調製工程では、上述のポリウレタン樹脂等の樹脂と、その樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、樹脂シート112に含ませる撥水剤、加水分解抑制剤及びその他の材料(例えば、カーボンブラック、その他の顔料、親水性活性剤及び疎水性活性剤等の添加剤)とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡して樹脂溶液を調製する。
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。樹脂溶液の全体量に対する樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば10質量%以上50質量%以下の範囲であってもよく、15質量%以上35質量%以下の範囲であってもよい。
撥水剤としては、〔研磨パッド〕の項目で挙げた撥水剤を用いることができる。撥水剤の量としては、樹脂溶液中のポリウレタン樹脂(100質量部)に対して0.01質量部以上5質量部以下であると好ましく、0.02質量部以上1質量部以下であるとより好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下であると更に好ましい。
加水分解抑制剤としては、〔研磨パッド〕の項目で挙げた加水分解抑制剤を用いることができる。加水分解抑制剤の量としては、樹脂溶液中のポリウレタン樹脂(100質量部)に対して、0.01質量部以上15質量部以下であると好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であるとより好ましく、1質量部以上5質量部以下含まれることが更に好ましい。
その他の材料としては、〔研磨パッド〕の項目で挙げたカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの量としては、樹脂溶液中のポリウレタン樹脂(100質量部)に対して、1質量部以上35質量部以下であると好ましく、3質量部以上30質量部以下であるとより好ましく、5質量部以上25質量部以下含まれることが更に好ましい。
なお、得られる樹脂シートの密度やショアA硬度等を調整する観点から、セルロース誘導体に代表される孔形成剤等の成膜助剤や水を樹脂溶液に添加することもできる。
【0057】
次に、塗布工程では、樹脂溶液を、好ましくは常温下で、ナイフコーター等の塗布装置を用いて帯状の成膜用基材の表面に塗布して塗膜を形成する。このときに塗布する樹脂溶液の厚さは、最終的に得られる樹脂シート112の厚さが所望の厚さになるように、適宜調整すればよい。成膜用基材の材質としては、例えば、PETフィルム等の樹脂フィルム、布帛及び不織布が挙げられる。これらの中では、液を浸透し難いPETフィルム等の樹脂フィルムが好ましい。
【0058】
次いで、凝固再生工程では、成膜用基材に塗布された樹脂溶液の塗膜を、樹脂に対する貧溶媒(例えばポリウレタン樹脂の場合は水)を主成分とする凝固液中に連続的に案内する。凝固液には、樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、例えば、15℃以上65℃以下であってもよい。凝固液中では、まず、樹脂溶液の塗膜と凝固液との界面に皮膜(スキン層)が形成され、皮膜の直近の樹脂中に無数の緻密な微多孔が形成される。その後、樹脂溶液に含まれる溶媒の凝固液中への拡散と、樹脂中への貧溶媒の浸入との協調現象により、立体網目状に連通した構造を有する樹脂の再生が進行する。このとき、成膜用基材が液を浸透し難いもの(例えばPETフィルム)であると、凝固液が成膜用基材に浸透しないため、樹脂溶液中の溶媒と貧溶媒との置換がスキン層付近で優先的に生じ、スキン層付近よりもその内側にある領域の方に、より大きな空孔(涙形状気泡)が形成される傾向にある。こうして成膜用基材上に前駆体シートが形成される。
【0059】
次に、溶媒除去工程では、形成された前駆体シートを成膜用基材より剥離した後、前駆体シート中に残存する溶媒を除去して樹脂シート112を得る。溶媒の除去には、従来知られている洗浄液を用いることができる。また、溶媒を除去した後の樹脂シート112を、必要に応じて乾燥してもよい。樹脂シート112の乾燥には、例えば、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機を用いることができるが、乾燥方法はこれに限定されない。シリンダ乾燥機を用いる場合、前駆体シートがシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。更に、得られた樹脂シート112をロール状に巻き取ってもよい。
【0060】
次いで、研削・除去工程では、樹脂シート112の好ましくはスキン層側の主面と、その反対側である裏面とのうちの少なくとも一方を、バフ処理又はスライス処理で研削及び/又は一部除去する。バフ処理やスライス処理により樹脂シート112の厚さの均一化を図ることができるため、被研磨物に対する押圧力を一層均等化し、被研磨物の損傷を更に抑制すると共に被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0061】
次に、樹脂シート112に基材114を接合して研磨パッド110を得る。この工程では、例えば基材114及び接着層116を有する両面テープを用いて、樹脂シート112の研磨面Pとは反対側の面上に接着層116を介して基材114を接合する。更に、その基材114の接着層116とは反対側に、両面テープの他方の接着層と剥離紙とが備えられてもよい。こうして研磨パッド110が得られる。
【0062】
〔研磨加工物の製造方法〕
次に、本実施形態の研磨パッド110を用いた研磨加工の方法について説明する。
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨液の存在下、本実施形態の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨する研磨工程を有するものである。
研磨加工における被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体ウエハ、半導体デバイス、ガラス基板、各種記録用ディスクの基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板の材料が挙げられる。これらの中でも、被研磨物としては、半導体ウエハが好ましく、半導体ウエハの材料としては、2種類以上の元素からなる化合物半導体が好ましい。また、本実施形態の研磨パッドは、強酸化剤を含む研磨液を用いて化合物半導体ウエハ研磨するための研磨パッドとして、好適に用いることが出来る。
【0063】
研磨加工の一例について説明する。まず、研磨機の被研磨物ホルダに保持パッドを装着し、保持パッドで被研磨物を保持する。被研磨物ホルダに保持パッドを装着するには、必要に応じて両面テープの剥離紙を取り除き、露出した接着層で保持面が下方(又は上方)に向くように被研磨物ホルダに接着固定する。あるいは、保持パッドが両面テープを備えていない場合は、別に用意した接着剤又は粘着剤で保持パッドを被研磨物ホルダに接着固定する。次に、保持面に適量の水を含ませて被研磨物を押し付けることで、被研磨物が水の表面張力により保持パッドを介して被研磨物ホルダに保持される。このとき、被研磨物の被研磨面(加工面)が下方(又は上方)に向いている。一方、被研磨物ホルダの下方(又は上方)で被研磨物ホルダと対向するように配置された研磨用定盤には、表面に研磨パッド110を研磨面Pが上方(又は下方)に向くように装着する。
【0064】
次に、被研磨物の被研磨面が研磨パッド110の研磨面Pに接触するように、被研磨物ホルダを研磨用定盤の方へ移動させ被研磨物を搬送する。そして、被研磨物と研磨パッドとの間に、砥粒(研磨粒子;例えば、SiO2、CeO2、Al2O3)及び過マンガン酸カリウムに代表される強酸化剤等の化学成分を含む研磨液を循環供給する。それと共に、被研磨物ホルダで被研磨物を研磨パッド110側に押圧しながら、被研磨物ホルダと研磨用定盤とを回転させることで、被研磨物の加工面が研磨パッドでCMPにより研磨加工される。
【0065】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、上記本実施形態では、樹脂シート112と基材114との接合に接着層116を用いているが、それらの接合は接着層116を用いることに限定されない。更には、本実施形態の研磨パッドは、基材を備えていなくてもよいが、研磨パッドの取扱い性の観点から、基材を備えることが好ましい。また、研磨パッドの製造方法において、研削・除去工程を省略してもよい。
【実施例0066】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
100%モジュラス15MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液100質量部(ポリエステル系ポリウレタン樹脂として30質量部)に、DMF50質量部と、水8質量部と、末端にパーフルオロヘキシルエチル基を有するフッ素変性ポリウレタン樹脂(撥水剤)0.06質量部と、両末端イソシアネート基が封鎖されたカルボジイミド化合物(カルボジイミド当量200)1質量部と、カーボンブラック分散液15質量部(カーボンブラックとして2.8質量部)とを混合することにより、実施例1のポリウレタン樹脂溶液を得た。
次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、該ポリウレタン樹脂溶液を凝固させた後、成膜用基材を剥離し、洗浄・乾燥させて、ポリウレタン樹脂シートを得た。その後、スキン層をバフ処理して表面を開孔させ、ポリウレタン樹脂シートのバフ処理面とは反対の面にPETフィルムを貼り合わせた後、PETフィルムのポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に両面テープを貼り合わせ、実施例1の研磨パッドを得た。この研磨パッドの樹脂シートの断面を観察したところ、樹脂シートの内部において、涙形状気泡の壁に存在する微細気泡を有することが確認された。なお、これらの微細気泡は湿式成膜法により得られたものであり、立体網目状に連通した気泡である。
【0068】
(比較例1)
100%モジュラス15MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液100質量部(ポリエステル系ポリウレタン樹脂として30質量部)に、DMF50質量部と、水8質量部と、両末端イソシアネート基が封鎖されたカルボジイミド化合物(カルボジイミド当量200)1質量部と、カーボンブラック分散液15質量部(カーボンブラックとして2.8質量部)とを混合することにより、比較例1のポリウレタン樹脂溶液を得た。
実施例1のポリウレタン樹脂溶液を比較例1のポリウレタン樹脂溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1の研磨パッドを得た。
【0069】
(比較例2)
100%モジュラス15MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液100質量部(ポリエステル系ポリウレタン樹脂として30質量部)に、DMF50質量部と、水8質量部と、末端にパーフルオロヘキシルエチル基を有するフッ素変性ポリウレタン樹脂(撥水剤)0.06質量部と、カーボンブラック分散液15質量部(カーボンブラックとして2.8質量部)とを混合することにより、比較例2のポリウレタン樹脂溶液を得た。
実施例1のポリウレタン樹脂溶液を比較例2のポリウレタン樹脂溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の研磨パッドを得た。
【0070】
(比較例3)
100%モジュラス8.3MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂溶液100質量部(ポリエステル系ポリウレタン樹脂として30質量部)に、DMF50質量部と、水3質量部と、親水性添加剤0.5質量部と、疎水性活性剤0.6質量部と、カーボンブラック分散液44質量部(カーボンブラックとして8.1質量部)とを混合することにより、比較例3のポリウレタン樹脂溶液を得た。
実施例1のポリウレタン樹脂溶液を比較例3のポリウレタン樹脂溶液に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3の研磨パッドを得た。
【0071】
(引張強度保持率)
引張万能試験機(テンシロン RTC-1210A、A&D社製)を用い、JIS K 6550に準拠して、試験用研磨液に浸漬する前のポリウレタン樹脂シートの引張強度(a)[kg/mm2]を測定した。次いで、過マンガン酸カリウム系の研磨液(DSC-201、フジミインコーポレーテッド社製)を硝酸水溶液によりpH3.0に調整した試験用研磨液に、ポリウレタン樹脂シートを25℃で24時間浸漬した。浸漬の開始から24時間経過後、ポリウレタン樹脂シートを試験用研磨液から取り出し、流水洗浄し、乾燥させた後に上記と同様にポリウレタン樹脂シートの引張強度(b)[kg/mm2]を測定した。このようにして測定された引張強度(a)と引張強度(b)の値から、引張強度保持率を以下の式で算出した。結果を表1に示す。
引張強度保持率[%]=引張強度(b)/引張強度(a)×100
【0072】
(厚さ)
JIS K 6505に記載された測定方法に準拠して樹脂シートの厚さを測定した。すなわち、樹脂シートの厚さ方向に初荷重として1cm2当たり100gの荷重をかけた(負荷した)ときの厚さを測定した。
【0073】
(密度)
樹脂シートから切り出したサンプルの体積と重量から密度を算出した。
【0074】
(圧縮率及び圧縮弾性率)
樹脂シートの圧縮率及び圧縮弾性率は、JIS L 1021に準拠して、ショッパー型厚み測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて求めた。すなわち、室温において、無荷重の状態から初荷重を30秒間かけた後の厚みt0を測定し、次に厚みt0の状態から最終荷重をかけて、そのまま1分間放置後の厚みt1を測定した。更に厚みt1の状態から全ての荷重を除き、1分間放置後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚みt0’を測定した。これらから、圧縮率及び圧縮弾性率を下記式:
圧縮率(%)=(t0-t1)/t0×100
圧縮弾性率(%)=(t0’-t1)/(t0-t1)×100
により算出した。ここで、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とした。
【0075】
(ショアA硬度)
ショアA硬度は、25℃におけるものであり、JIS K 7311に準拠して測定した。すなわち、樹脂シートから切り出した試料について、複数枚の試料を合計厚さが4.5mm以上となるように重ね、ショアA デュロメータを用いて測定した。
【0076】
【0077】
撥水剤とカルボジイミド化合物とを添加することにより、引張強度保持率が向上した。また、どちらか一方のみでは十分に高い引張強度保持率が得られないことを確認した。作用機序が異なると考えられる2種類の添加剤を併用することによる効果であると推察される。高い引張強度保持率は研磨液による劣化が抑制されることを示しており、結果として製品寿命の向上が期待される。