(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051640
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】点群情報生成システム、点群情報生成システムの制御方法及び点群情報生成システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240404BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240404BHJP
G06F 3/04842 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G06F3/01 510
G06F3/01 570
G06F3/04842
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157916
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 光晴
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA64
5E555BA02
5E555BA08
5E555BB02
5E555BB08
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB21
5E555CB66
5E555CC05
5E555DA08
5E555DB03
5E555DB06
5E555DB51
5E555DC09
5E555DC19
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】簡易且つ迅速に所望の対象物について点群情報を生成することができると共に、容易且つ迅速に点群情報を修正することができる点群情報生成システム等を提供すること。
【解決手段】対象物600の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置1と、使用者が装着可能なXR(クロスリアリティ)生成装置100と、を備え、XR生成装置は、少なくとも使用者の視線に対応した撮像情報を取得する撮像部111aと、表示部113を備え、表示部に表示された対象物についての実行指示情報に基づいて、点群情報生成装置が実行指示情報で特定された対象物について3次元点群情報を生成すると共に、生成された対象物についての3次元点群情報を表示部に対象物と共に表示する点群情報生成システム500。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、
使用者が装着可能なXR(クロスリアリティ)生成装置と、を備える点群情報生成システムであって、
前記XR生成装置は、少なくとも前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得する撮像部と、
表示部を備え、
前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成すると共に、生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示することを特徴とする点群情報生成システム。
【請求項2】
前記点群情報システムの前記実行指示情報に基づいて特定された前記対象物の部分について前記3次元点群情報を生成し、前記実行情報に基づいて生成された前記3次元点群情報を修正することを特徴とする請求項1に記載の点群情報生成システム。
【請求項3】
前記点群情報生成装置は、点群情報を生成するための測距光を射出すると共に、前記測距光の射出方向を偏向する光軸偏向部を有し、前記光軸偏向部で前記測距光を偏向することで、前記測距光を前記対象物の部分のみに照射させる構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の点群情報生成システム。
【請求項4】
前記点群情報システムに関する設計図情報を、前記表示部に表示する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の点群情報生成システム。
【請求項5】
前記点群情報システムに関する設計図情報を、前記表示部に表示する構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の点群情報生成システム。
【請求項6】
前記点群情報システムに関する設計図情報を、前記表示部に表示する構成となっていることを特徴とする請求項3に記載の点群情報生成システム。
【請求項7】
対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、使用者が装着可能なXR生成装置とを備える点群情報生成システムの制御方法であって、
前記XR生成装置の撮像部は、前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得し、
前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成し、
生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示することを特徴とする点群情報生成システムの制御方法。
【請求項8】
対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、使用者が装着可能なXR現実生成装置とを備える点群情報生成システムに、
前記XR生成装置の撮像部が前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得し、前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成する機能、
生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示する機能、を実現させることを特徴とする点群情報生成システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の点群情報を取得する点群情報生成システム、点群情報生成システムの制御方法及び点群情報生成システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木や建築現場等で、例えば、建築物の形状等を把握するとき、3次元スキャナ装置がレーザ等を照射し、対象物である建築物等の3次元形状を点群データとして取得することが提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際の現場では、建築物全体ではなく、その一部の1本の柱等の対象について点群データを取得したい等の要望がある。
この場合、スキャナ装置を操作し、その建築物エリア全体あるいは一定のエリアのデータを取得し、柱等のみの点群データとする必要があり、対象エリアにレーザ照射し、点群取得後、特定の対象である1本の柱等のみの点群にするために、後処理にて不要な点群を除去してデータの編集等を行うため、必要な柱の点群データを取得するには、手間がかかり、また時間や熟練が必要で、大幅なコスト増となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡易且つ迅速に所望の対象物について点群情報を生成することができると共に、容易且つ迅速に点群情報を修正することができる点群情報生成システム、点群情報生成システムの制御方法及び点群情報生成システムの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、本発明によれば、対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、使用者が装着可能なXR(クロスリアリティ)生成装置と、を備える点群情報生成システムであって、前記XR生成装置は、少なくとも前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得する撮像部と、表示部を備え、前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成すると共に、生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示することを特徴とする点群情報生成システムにより達成される。
【0007】
前記構成によれば、使用者はXR生成装置を装着して、対象物について実行指示情報を入力するだけで、点群情報生成装置は、自動的に対象物について点群情報を生成することができる。
したがって、簡易且つ迅速に所望の対象物について点群情報を生成することができる。
また、前記構成によれば、生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示するので、前記XR生成装置の利用者は、表示部に表示された対象物の3次元点群情報を対象物と比較しながら修正等することができ、より精度の高い3次元点群情報を取得することができる。
【0008】
好ましくは、前記点群情報システムの前記実行指示情報に基づいて特定された前記対象物の部分について前記3次元点群情報を生成し、前記実行情報に基づいて生成された前記3次元点群情報を修正することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、実行指示情報に基づいて対象物の部分を指定することで、簡易且つ迅速に対象物の部分についてのみ3次元点群情報を生成することができる。
また、前記構成によれば、前記実行情報に基づいて生成された前記3次元点群情報を修正するので、例えば、3次元点群情報の部分的削除や追加等の修正を精度良く行うことが可能となる。
【0010】
好ましくは、前記点群情報生成装置は、点群情報を生成するための測距光を射出すると共に、前記測距光の射出方向を偏向する光軸偏向部を有し、前記光軸偏向部で前記測距光を偏向することで、前記測距光を前記対象物の部分のみに照射させる構成となっていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、実行指示情報に基づいて特定された対象物の部分に向かって、点群情報生成装置の光軸偏向部が測距光を偏向し、照射させることで、精度良く、対象物の部分についてのみ3次元点群情報を生成することができる。
【0012】
好ましくは、前記点群情報システムに関する設計図情報を、前記表示部に表示する構成となっていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、未だ存在しない設計図上の構造物等の周辺等を範囲指定し、3次元点群情報を取得することができる。
また、実際に建築現場等に部材等を設置した後に設計図情報と比較して検査をする際、検査をする部材等を設計図情報上で指定し、実際の空間に設置されたものの3次元点群情報を取得することで、直感的に検査対象等を指定等することが可能となる。
さらに、設計図上の部材等の位置が、設置予定場所等と異なり「ズレ」ている場合、この異なっている量を視認しながら、設置完了前に3次元点群情報を取得することで、完成後の設置位置等まで変更する等の作業が容易且つ迅速にすることができる。
【0014】
前記目的は、本発明によれば、対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、使用者が装着可能なXR生成装置とを備える点群情報生成システムの制御方法であって、前記XR生成装置の撮像部は、前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得し、前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成し、生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示することを特徴とする点群情報生成システムの制御方法により達成される。
【0015】
前記目的は、本発明によれば、対象物の3次元点群情報を生成する点群情報生成装置と、使用者が装着可能なXR現実生成装置とを備える点群情報生成システムに、前記XR生成装置の撮像部が前記使用者の視線に対応した撮像情報を取得し、前記表示部に表示された前記対象物についての実行指示情報に基づいて、前記点群情報生成装置が前記実行指示情報で特定された前記対象物について3次元点群情報を生成する機能、生成された前記対象物についての前記3次元点群情報を前記表示部に前記対象物と共に表示する機能、を実現させることを特徴とする点群情報生成システムの制御プログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、簡易且つ迅速に所望の対象物について点群情報を生成することができると共に、容易且つ迅速に点群情報を修正することができる点群情報生成システム、点群情報生成システムの制御方法及び点群情報生成システムの制御プログラムを提供することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係る「点群情報生成システム500」の主な構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のレーザスキャナ3の主な構成と示す概略図である。
【
図3】
図2の光軸偏向部35の主な構成を示す概略図である。
【
図4】
図1のヘッドマウントディスプレイ100の主な構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】
図3の「HMD側各種情報記憶部120」の主な内容を示す概略ブロック図である。
【
図6】
図1のレーザスキャナ3の主な構成を示す概略ブロック図である。
【
図7】
図5の「レーザスキャナ側各種情報記憶部310」の主な構成と示す概略ブロック図である。
【
図8】点群情報生成システム500の動作例を示す概略フローチャートである。
【
図9】点群情報生成システム500の動作例を示す他の概略フローチャートである。
【
図10】光軸偏向部35等が局所スキャンを行う際のスキャンパターンの一例を示す概略説明図である。
【
図11】光軸偏向部35等が局所スキャンを行う際のスキャンパターンの一例を示す他の概略説明図である。
【
図12】HDM側ディスプレイ113を介して視認できる柱600とA地点乃至B地点の3次元点群データを重ね合わせて表示した状態を示す概略説明図である。
【
図13】誤って柱600の地点A乃至地点B以外の突起Cも含めて3次元点群データを生成した場合を示す概略説明図である。
【
図14】作業者Pが、柱600の地点A乃至地点Bの間を十分に指定できなかった場合を示す概略説明図である。
【
図15】(A)(B)は、対象エリアを分割して指定し、3次元点群データを生成する工程を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る「点群情報生成システム500」の主な構成を示す概略図である。
図1に示すように、点群情報生成システム500は、点群情報生成装置の一例である「測量装置1」、XR生成装置の一例である「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)100」を有している。
ここで、XR(クロスリアリティ)とは、「VR(Virtual Reality(仮想現実))」「AR(Augmented Reality(拡張現実))」及び「MR(Mixed reality(複合現実))を含む概念であり、本実施の形態では、MRを例に以下説明する。
したがって、本発明のXR生成装置は、本実施の形態のMRのみならずVR、AR等も含まれる。
【0020】
この測量装置1は、スキャニング等を行うことで対象物(例えば、柱600等)の3次元点群情報を生成するレーザスキャナ3等を有している。
また、ヘッドマウントディスプレイ100は、本システム500の使用者(例えば、作業者P)が頭部に装着する構成となっている。
【0021】
測量装置1は、
図1に示すように、レーザスキャナ3を有し、レーザスキャナ3は、レーザ光を照射し受光することで3次元の点群データを取得することができると共に、特定の測定点について測距することもできる。
【0022】
すなわち、
図1の柱600等の対象物の3次元の点群データと、レーザスキャナ3と柱600との距離データを取得可能な構成となっている。
また、レーザスキャナ3は、ヘッドマウントディスプレイ100との距離データ等も取得可能な構成となっている。
【0023】
(ヘッドマウントディスプレイ100の主な構成等)
以下、これらヘッドマウントディスプレイ100及び測量装置1等の構成について詳述する。
本実施の形態のヘッドマウントディスプレイ100は、例えば、複合現実(Mixed Reality)用の器機である。
具体的には、透過型のHDM側ディスプレイ113(表示部の一例)に現実世界の情報を透過させ。その座標情報を生成することができると共に、コンピュータ等で作成した仮想世界の情報等も融合して表示させることができる構成となっている。
【0024】
本実施の形態では、後述のように、ヘッドマウントディスプレイ100は、HDM側ディスプレイ113に現実世界である柱600等と、この柱600の部分の3次元点群データを合成して表示することが可能な構成となっている。
【0025】
具体的には、
図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ100は、作業者Pの頭部に装着される「本体部110」と、作業者Pの両眼に対して向かい合うように配置される「HMD側ディスプレイ113」と、作業者Pの視線に沿って配置される撮像部である例えば、2つの「HMD側カメラ111a、111b」と、を備えている。また、光源であるHMD側照明部112も有している。
【0026】
そして、この2つのHMD側カメラ111a、111bは、作業者Pの視線と同じ方向を向いて設置され、この2つのHMD側カメラ111a、111bで撮像した撮像情報は、作業者Pの視線及び視界と同様となる。
そして、HMD側ディスプレイ113は「透過型」となっているため、作業者Pは、同ディスプレイ113を透過して対象を見ることができる構成となっている。
【0027】
また、HMD側照明部112は、作業者Pの視線と同じ方向に光を照射する構成となっているが、HMD側カメラ111a、111bとは異なった角度で配置されている。
そして、HMD側照明部112は、様々なパターン光を照射する構成ともなっており、照射した光の歪みを計測することで、「奥行き」を測定することが可能な構成となっている。
【0028】
したがって、この2つHMD側カメラ111a、111bで作業者Pの視線と同じ方向に配置される対象物(例えば、柱600)を撮像し、この柱600にHMD側照射部112が光を照射すると、「構造化照明」の手法を用いて柱600の立体的な3次元座標データである「HMD側座標データ(MR座標データ)」を生成することができる構成となっている。
また、この「HMD側座標データ」の基準は、HMD側カメラ111a、111bの座標位置となる。
【0029】
なお、本実施の形態では、「構造化照明」の手法で3次元データを生成したが、本発明は、これに限らず、「2つのカメラ」のみで「3次元データ」を生成する場合や、光源から照射された光がカメラに戻ってくるまでに時間から「3次元データ」を生成する「ToF(Time of Flight)の手法でデータを生成する場合も含まれる。
また、本発明は本実施の形態と異なり、光学式カメラと深度センサをヘッドマウントディスプレイに配置し、カメラから赤外線を照射して物体に反射させ、反射した赤外線が戻るまでに時間を計測することで物体の深度(奥行き)を計算する構成としても構わない。
【0030】
(測量装置1の主な構成等)
以下、測量装置1の構成について詳述する。
図1に示すOは光軸が偏向されていない状態での測距光軸を示 し、この時の測距光軸を基準光軸とする。
測量装置1は、主に支持装置としての三脚2、レーザスキャナ3、操作装置4、回転台5から構成される。
回転台5は三脚2の上端に取付けられ、回転台5にレーザスキャナ3が横回転可能及び縦回転可能に取付けられる。
【0031】
また、回転台5は、レーザスキャナ3の横方向の回転角(水平方向の回転角)を検出する機能を有している。
回転台5には横方向に延びるレバー7が設けられる。レバー7の操作により、レーザスキャナ3を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、又所要の姿勢で固定することも可能となっている。
また、レーザスキャナ3自体にも水平に回転できる機構を有し、対象物を追尾するための自動回転可能な機構も備わっている。
【0032】
レーザスキャナ3は、後述する測距部、姿勢検出部を内蔵し、測距部は測距光を測定対象物、或は測定範囲に射出し、反射測距光を受光して測距を行う。また、姿勢検出部は、レーザスキャナ3の鉛直(又は水平)に対する姿勢を高精度に検出可能である。
【0033】
操作装置4は、レーザスキャナ3との間で有線、無線等所要の手段を介して通信を行う通信機能を有する。
レーザスキャナ3からは、画像、測定状態、測定結果等が操作装置4に送信され、該画像、測定状態、測定結果等が、操作装置4に記憶されるようになっている。
【0034】
図2は、
図1のレーザスキャナ3の主な構成と示す概略図である。
図2に示すように、レーザスキャナ3は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14(カメラ)、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、第1通信部18、演算制御部19、第1記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。
【0035】
なお、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13等は測距部を構成する。
測距光射出部11は射出光軸26を有し、射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。
また、射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、射出光軸26は、受光光軸31と合致するように偏向される。第1反射鏡29と第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0036】
発光素子27はパルスレーザ光線を発し、測距光射出部11は、発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測距光23として射出する。
受光部12には、測定対象物(即ち測定点)からの反射測距光24が入射する。
受光部12は、受光光軸31を有し、受光光軸31には、上記したように、第1反射鏡29、第2反射鏡32によって偏向された射出光軸26が合致する。
なお、射出光軸26と受光光軸31とが合致した状態を測距光軸40とする(
図1参照)。
【0037】
偏向された射出光軸26上に、すなわち、受光光軸31上に光軸偏向部35が配設される。光軸偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、基準光軸Oとなっている。基準光軸Oは、光軸偏向部35によって偏向されなかった時の射出光軸26又は受光光軸31と合致する。
【0038】
光軸偏向部35を透過し、入射した受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、又受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。
結像レンズ34は、反射測距光24を受光素子33に結像する。受光素子33は反射測距光24を受光し、受光信号を発生する。
受光信号は、測距演算部13に入力される。測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0039】
図3は、
図2の示す光軸偏向部35の主な構成を示す概略図である。
図3を参照して、前記光軸偏向部35について説明する。
該光軸偏向部35は、一対の光学プリズム36a,36bから構成される。該光学プリズム36a,36bは、それぞれ円板状であり、前記受光光軸31上に直交して配置され、重なり合い、平行に配置されている。
前記光学プリズム36a,36bとして、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0040】
前記光軸偏向部35の中央部は、前記測距光23が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部35aとなっており、中央部を除く部分は前記反射測距光24が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部35bとなっている。
【0041】
前記光学プリズム36a,36bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素37a,37bと多数のプリズム要素38a,38bによって構成され、円板形状を有する。前記光学プリズム36a,36b及び各プリズム要素37a,37b及びプリズム要素38a,38bは同一の光学特性を有する。
【0042】
前記プリズム要素37a,37bは、前記測距光偏向部35aを構成し、前記プリズム要素38a,38bは前記反射測距光偏向部35bを構成する。
【0043】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0044】
前記光学プリズム36a,36bはそれぞれ前記受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム36a,36bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される前記測距光23の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、受光される前記反射測距光24の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
【0045】
前記光学プリズム36a,36bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸31を中心とする円形であり、前記反射測距光24の広がりを考慮し、充分な光量を取得できるように前記光学プリズム36a,36bの直径が設定されている。
【0046】
前記光学プリズム36aの外周にはリングギア39aが嵌設され、前記光学プリズム36bの外周にはリングギア39bが嵌設されている。
【0047】
前記リングギア39aには駆動ギア41aが噛合し、該駆動ギア41aはモータ42aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア39bには駆動ギア41bが噛合し、該駆動ギア41bはモータ42bの出力軸に固着されている。前記モータ42a,42bは、前記モータドライバ16に電気的に接続されている。
【0048】
前記モータ42a,42bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ42a,42bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ16により前記モータ42a,42bが個別に制御される。
尚、エンコーダを直接前記リングギア39a,39bにそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア39a,39bの回転角を直接検出するようにしてもよい。
【0049】
前記駆動ギア41a,41b、前記モータ42a,42bは、前記測距光射出部11と干渉しない位置、例えば前記リングギア39a,39bの下側に設けられている。
【0050】
前記投光レンズ28、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32、前記測距光偏向部35a等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光偏向部35b、前記結像レンズ34等は受光光学系を構成する。
【0051】
前記測距演算部13は、前記発光素子27を制御し、前記測距光23としてパルスレーザ光線を発光させる。該測距光23が、前記プリズム要素37a,37b(前記測距光偏向部35a)により、測定点に向うように前記射出光軸26が偏向される。
【0052】
測定対象物から反射された前記反射測距光24は、前記プリズム要素38a,38b(前記反射測距光偏向部35b)、前記結像レンズ34を介して入射し、前記受光素子33に受光される。該受光素子33は、受光信号を前記測距演算部13に送出し、該測距演算部13は前記受光素子33からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記第1記憶部20に格納される。
而して、前記測距光23をスキャンしつつ、パルス光毎に測距を行うことで各測定点の測距データが取得できる。
【0053】
前記射出方向検出部15は、前記モータ42a,42bに入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ42a,42bの回転角を検出する。
あるいは、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ42a,42bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部15は、前記モータ42a,42bの回転角に基づき、前記光学プリズム36a,36bの回転位置を演算する。
更に、前記射出方向検出部15は、前記光学プリズム36a,36bの屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部19に入力される。
【0054】
該演算制御部19は、測距光の偏角、射出方向から測定点の水平角、鉛直角を演算し、各測定点について、水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定点の3次元データを求めることができる。
【0055】
また、撮像部14は、レーザスキャナ3の基準光軸Oと平行な撮像光軸43を有し、例えば50°の画角を有するカメラであり、レーザスキャナ3のスキャン範囲を含む画像データを取得する。
撮像光軸43と射出光軸26及び前記基準光軸Oとの関係は既知となっている。また、撮像部14は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0056】
撮像制御部21は、撮像部14の撮像を制御する。撮像制御部21は、撮像部14が動画像、または連続画像を撮像する場合に、動画像、または連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングとレーザスキャナ3でスキャンするタイミングとの同期を取っている。演算制御部19は画像とスキャンデータである点群データとの関連付けも実行する。
【0057】
また、レーザスキャナ3が実行する測定の態様としては、光軸偏向部35を所要偏角毎に固定して測距を行うことで、特定の測定点についての測距を行うことができる。
また、測距時の方向角(水平角、鉛直角)は射出方向検出部15の検出結果に基づき取得できる。
【0058】
また、レーザスキャナ3の水平に対する傾斜及び傾斜方向は、姿勢検出部17によって検出でき、姿勢検出部17の検出結果に基づき測定結果を水平基準のデータに補正することができる。
すなわち、レーザスキャナ3をトータルステーションと同様に使用することができる。
【0059】
また、測距時の測距光の射出方向角は、モータの回転角により検出でき、測距時の射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。
したがって、レーザスキャナ3を3次元位置データを有する点群データを取得するレーザスキャナとして機能させることができる。
【0060】
図1の測量装置1、ヘッドマウントディスプレイ100は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バス等を介して接続されている。
【0061】
(ヘッドマウントディスプレイ100の主な構成等)
図4は、
図1のヘッドマウントディスプレイ100の主な構成を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、ヘッドマウントディスプレイ100は「HMD側制御部101」を有し、同制御部101は、
図1の測量装置1等と通信する「HMD側側通信装置102」、HMD側カメラ111a、111b、HMD側照明部112、HMD側ディスプレイ113等を制御する。
【0062】
また、同制御部101は、
図3に示すHMD側各種情報記憶部120も制御する。
図5は、
図4の「HMD側各種情報記憶部120」の主な内容を示す概略ブロック図である。これらの構成については、後述する。
【0063】
(レーザスキャナ3の主な構成等)
図6は、
図1のレーザスキャナ3の主な構成を示す概略ブロック図である。
図6に示すように、レーザスキャナ3は、「レーザスキャナ側制御部301」を有し、同制御部301は、
図1のレーザスキャナ3の主な構成である「レーザスキャナ本体302」を制御すると共に、「レーザスキャナ側各種情報記憶部310」も制御する。
図7は、
図6の「レーザスキャナ側各種情報記憶部310」の主な構成と示す概略ブロック図である。これらの構成については、後述する。
【0064】
(点群情報生成システム500の動作例)
図8及び
図9は、点群情報生成システム500の動作例を示す概略フローチャートである。
本実施の形態では、建築現場で、作業者Pが特定の1本の柱600のA地点からB地点の間の3次元点群データを取得するために、作業者Pが、ヘッドマウントディスプレイ100を装着し、測量装置1でスキャンを実施し、これにより、A地点からB地点の間の部分の3次元点群データを取得し、取得した3次元点群データをHMD側ディスプレイ113に表示する例で、以下、本システム500主な動作例を具体的に説明する。
【0065】
先ず、
図8のステップ(以下「ST」とする、)1で、作業者Pは、
図1に示すように、測量装置1を所定位置に設置すると共に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)100を自己の頭部に装着する。
【0066】
次いで、ST2へ進む。ST2では、作業者Pが、ヘッドマウントディスプレイ100のHMD側カメラ111a、111bをON状態にし、HMD側照明部112もON状態とする。作業者Pは、HMD側ディスプレイ113が「透過型」であるため、同ディスプレイ113を介して外部を視認可能な状態となる。
【0067】
また、ST3では、ヘッドマウントディスプレイ100の
図5の「HMD座標情報生成部(プログラム)121」が動作し、HMD側カメラ111a、111b及びHMD側照明部112が動作し、構造化照明手法で作業者PがHMD側ディスプレイ113で視認している柱600の3次元座標情報が生成され、HMD座標情報(MR座標データ)として、
図5の「HMD座標情報記憶部122」に記憶される。
【0068】
次いで、ST4へ進む。ST4では、作業者Pが右手を動かすと共に、
図1に示すように、人差指を柱600に向け、右手がHMD側カメラ111a、111bの撮像範囲内(作業者Pの視界内)に入ると、ST5で、
図5の「HMD座標情報生成部(プログラム)121」が動作し、自動的に、HMD側照明部112等が動作し、構造化照明手法で、右手のHMD座標情報が生成され、
図5の「HMD座標情報記憶部122」に記憶する。
【0069】
次いで、ST6へ進む。ST6では、作業者Pが、右手の人差指をスキャン対象物である
図1に示す柱600の「始点A」に向け、図示しない「トリガースイッチ」をON状態とする。
この作業者Pの動作が、実行指示情報の一例となっている。
そして、ST7へ進み、
図5の「HMD座標データ生成部(プログラム)125」が人差指の傾き情報等から、その方向情報を生成し、柱600の例えばA地点を特定し、「スキャン開始地点座標情報」を生成し、
図5の「スキャン開始地点座標情報記憶部126」に記憶する。
【0070】
次いで、ST8へ進む。ST8では、作業者Pは、右手の人差指をスキャン対象物である柱600の「終点B」に向け、「トリガースイッチ」ON状態とする。
この作業者Pの動作が、実行指示情報の一例となっている。
そして、ST9へ進む。ST9では、
図5の「HMD座標データ生成部125」が人差指の傾き情報等から、その方向情報を生成し、柱600の例えばB地点を特定し、「スキャン終了地点座標情報」を生成し、
図5の「スキャン終了地点座標情報記憶部127」に記憶する。
【0071】
以上で、ヘッドマウントディスプレイ100によるスキャニングの対象範囲(
図1の地点A~地点B)の特定工程が終了する。
この地点A~地点Bの範囲が、対象物の部分の一例となっている。
【0072】
次いで、
図1の測量装置1のレーザスキャナ3の動作を説明する。
測量装置1は、常時、ヘッドマウントディスプレイ100との距離を測定し「HMD距離情報」を
図7の「HMD距離情報記憶部311」に記憶する。
従って、レーザスキャナ3は、ヘッドマウントディスプレイ100との距離情報を常時取得している。
【0073】
また、レーザスキャナ3は、ヘッドマウントディスプレイ100と常時通信し、ヘッドマウントディスプレイ100の
図5の「HMD座標情報記憶部122」、「スキャン開始地点座標情報記憶部126」及び「スキャン終了地点座標情報記憶部127」の情報を取得する。
そして、それぞれ「スキャナ側HMD座標情報」、「スキャナ側スキャン開始地点座標情報」及び「スキャナ側スキャン終了地点座標情報」を生成する。
そして、それぞれ
図7の「スキャナ側HMD座標情報記憶部312」、「スキャナ側スキャン開始地点座標情報記憶部313」及び「スキャナ側スキャン終了地点座標情報記憶部314」に記憶する。
【0074】
このようにして、ヘッドマウントディスプレイ100に記憶されていた座標情報がレーザスキャナ3側に記憶される。
【0075】
次いで、レーザスキャナ3の
図7の「レーザスキャナ側修正座標情報生成部(プログラム)315」が動作し、「HMD距離情報記憶部315」の「HMD距離情報」と、「スキャナ側HMD座標情報」、「スキャナ側スキャン開始地点座標情報」及び「スキャナ側スキャン終了地点座標情報」の各座標情報からレーザスキャナ3の座標位置で修正された「修正スキャナ側HMD座標情報」、「修正スキャナ側開始地点座標情報」及び「修正スキャナ側スキャン終了地点情報」を生成する。
【0076】
次いで、上述のように生成したそれぞれの情報を「修正スキャナ側HMD座標情報記憶部316」、「修正スキャナ側開始地点座標情報記憶部317」及び「修正スキャナ側スキャン終了地点情報記憶部318」に記憶する。
【0077】
このようにしてレーザスキャナ3は、ヘッドマウントディスプレイ100のデータと同期されると共に、常時ヘッドマウントディスプレイ100の座標情報を取り込んだレーザスキャナ3基準の座標情報を生成し記憶する。
【0078】
次いで、レーザスキャナ3の
図6の「スキャン対象特定処理部(プログラム)319」が動作し、「修正スキャナ側開始地点座標情報記憶部317」及び「修正スキャナ側スキャン終了地点情報記憶部318」等を参照し、スキャン対象である柱600のA地点~B地点の範囲の座標情報をレーザスキャナ3基準で、特定し、この範囲内をスキャニング(局所スキャン)し、3次元点群データを取得する。
【0079】
このとき、
図2及び
図3に示す光軸偏向部35等が動作して、上述の範囲内を局所スキャンするが、その局所スキャンパターンの例を以下、説明する。
図10及び
図11は、光軸偏向部35等が局所スキャンを行う際のスキャンパターンの一例を示している。
図10に示すスキャンパターン53は、花びら形状のスキャンパターンとなっており、
図11(A)、(B)に示すスキャンパターンは54a、54bは、直線スキャンのパターンとなっている。
【0080】
このように、本実施の形態によれば、スキャン対象として特定された局所のみを部分的にスキャンすることが可能な構成となっている。
【0081】
そして、このように、レーザスキャナ3で取得された
図1の柱600のA地点~B地点の範囲の3次元点群データは、
図7の「スキャナ側3次元点群データ記憶部320」に記憶される。
【0082】
以上のように、本実施の形態によれば、作業者Pがヘッドマウントディスプレイ100を装着し、指でスキャニングの対象範囲を特定するだけで、レーザスキャナ3は、自動的に対象範囲のみを精度良く迅速且つ容易にスキャニングすることができ、対象範囲の3次元点群データを取得することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、上述のように、ヘッドマウントディスプレイ100を含めた座標情報は、レーザスキャナ3を基準に保持されている。
このため、
図1の作業者Pが頭を横方向等に回転させた結果、ヘッドマウントディスプレイ100が回転すると、その回転を検知し、上述のように
図1の測量装置1のレーザスキャナ3自体の水平機構が同様に回転する構成となっている。
【0084】
したがって、本実施の形態では、作業者Pの視線に同期してレーザスキャナ3も回転する構成とすることができ、レーザスキャナ3は、スキャニングする対象を自動的に追従する構成とすることもできる。
【0085】
また、本実施の形態では、ヘッドマウントディスプレイ100が回転しない場合でも、HMD側カメラ111a、111bが撮像している「画角」と同じエリアにレーザスキャナ3が向くように構成することもできる。
【0086】
また、本実施の形態では、ヘッドマウントディスプレイ100が、座標情報を生成し、その後、レーザスキャナ3がヘッドマウントディスプレイ100の座標情報を取得して、レーザスキャナ3、ヘッドマウントディスプレイ100及び柱600を含む全体の座標情報がレーザスキャナ3を基準に生成したが、本発明はこれに限らず、以下のように構成しても構わない。
【0087】
すなわち、レーザスキャナ3のカメラ(撮像部14)やヘッドマウントディスプレイ100のHMD側カメラ111a等、HMD側照明部112等を用いて、ヘッドマウントディスプレイ10の座標情報を取得することなく、レーザスキャナ3が全体の座標情報を生成する構成としても構わない。
【0088】
この場合、その後、ヘッドマウントディスプレイ100を装着した作業者Pが、柱600のスキャニング部分(A地点~B地点)を人差指で指定することととなり、これらの工程は上述の実施の形態と同様である。
【0089】
次いで、レーザスキャナ3で取得された柱600の3次元点群データは、ヘッドマウントディスプレイ100に送信され、透過型のHDM側ディスプレイ113を介して、作業者Pが、透過して視認している柱600と同じ座標位置で表示される。
すなわち、本実施の形態にかかるHMD100は、MR機器であるため、HDM側ディスプレイ113を介して、視認可能な柱600に、実際には存在しない仮想の3次元点群データを重ね合わせ融合させることができる構成となっている。
【0090】
図12は、HDM側ディスプレイ113を介して視認できる柱600とA地点乃至B地点の3次元点群データを重ね合わせて表示した状態を示す概略説明図である。
図12で示すように、作業者Pは、自己が指示してレーザスキャナ3がスキャンすることで生成された柱600の地点A乃至地点Bの間の3次元点群データが正しく形成されているか否かを直ちに確認することができる。
【0091】
また、本実施に形態では、HDM側ディスプレイ113を介して視認できるA地点乃至B地点の3次元点群データの位置を修正等することができる構成となっている。
すなわち、上述のST6乃至ST8同様に、作業者Pが右手の人差指を3次元点群データの修正部分情報の向け、トリガースイッチをON状態とすることで、修正部分を特定可能となる。
【0092】
具体的に以下説明する。
ところで、本実施の形態では、例えば、誤って不必要な部分の3次元点群データを取得した場合や、必要な部分の3次元点群データを十分に取得できなかった場合等について、以下説明するが、本発明は、これらの場合に限定されない。
例えば、スキャン対象の境界部等でノイズが発生したり、スキャン対象近傍で動いているもの(例えば、歩いている人等)を計ってしまい、実際の対象物の構造と異なるものを3次元点群データとした場合等も含まれる。
そして、本発明では、このような不必要な3次元点群データも本実施の形態と同様に削除等することができる。
【0093】
図13は、誤って柱600の地点A乃至地点B以外の突起Cも含めて3次元点群データを生成した場合を示す概略説明図である。
この場合、作業者Pは、自己の希望と異なり突起Cの3次元点群データも生成したことを、HDM側ディスプレイ113を介して確認することができる。
そこで、作業者Pは、3次元点群データの生成を指示した後、直ちに、突起Cの部分の3次元点群データを削除する指示を実行することができる。
【0094】
具体的には、作業者Pが右手の人差指を3次元点群データの修正部分情報の向け、トリガースイッチをON状態として、削除範囲を指定することで実行可能となる。
より具体的には、
図5のHMD100の「3次元点群データ修正処理部(プログラム)128」が動作して、修正データ生成すると共に、レーザスキャナ3へ送信する。
レーザスキャナ3は、受信した修正データに基づき、「スキャナ側3次元点群データ記憶部320」のデータを修正する。
【0095】
また、
図14は、作業者Pが、柱600の地点A乃至地点Bの間を十分に指定できなかった場合を示す概略説明図である。
この場合、作業者Pは、自己の希望と異なり部分Dの3次元点群データが生成されていないことを、HDM側ディスプレイ113を介して確認することができる。
【0096】
具体的には、作業者Pが右手の人差指を3次元点群データの修正部分情報に向け、トリガースイッチをON状態として、レーザスキャナ3に追加してスキャンを開始させる範囲を指定する。
そして、追加してスキャンされたD部分の3次元点群データは「スキャナ側3次元点群データ記憶部320」に修正のうえ記憶される。
【0097】
このように、本実施の形態では、作業者Pは、柱600の地点A乃至地点Bの間の3次元点群データを生成する場合、HDM側ディスプレイ113を介して、実際に柱600と生成された3次元点群データを比較しながら確認することができるので、修正等を行う場合、3次元点群データの生成直後、又は、生成しながら、かつ、その修正部分をHDM側ディスプレイ113で視認しながら修正できる。
このため、迅速且つ容易に精度の高い3次元点群データを生成することができる。
【0098】
従来、生成した3次元点群データを修正する場合、生成した3次元点群データを別のPC(コンピュータ)等に格納した後に行ってたため、実際の柱600等との関係等が分からず、修正に困難が伴っていた。
この点、本実施の形態では、対象物である柱600と生成された3次元点群データを同時に見比べながら修正することができるので、より修正し易い構成となっている。
【0099】
本発明には、
図12に示すようにスキャン対象エリア(地点A乃至地点B)を連続して指定する場合に限らず、スキャン対象エリアを分割して指定する場合も含まれる。
図15(A)(B)は、対象エリアを分割して指定し、3次元点群データを生成する工程を示す概略説明図である。
先ず、
図15(A)に示すように、柱600のスキャン対象エリア(地点A乃至地点B)の一部分である第1エリアE1をレーザスキャナ3でスキャンし、その3次元点群データを生成し、HDM側ディスプレイ113を介して作業者Pに視認可能な状態で示す。
【0100】
このため、作業者Pは、HDM側ディスプレイ113を通して、第1エリアE1に示された3次元点群データが正しく生成されているか否かを確認することができ、3次元点群データに修正等を同時に加えることが可能な構成となっている。
【0101】
このように、先ず、第1エリアE1の3次元点群データを確認にした後、
図15(B)に示すように、柱600のスキャン対象エリア(地点A乃至地点B)の他の部分である第2エリアE2をレーザスキャナ3でスキャンし、その3次元点群データを生成し、HDM側ディスプレイ113を介して作業者Pに視認可能な状態で示す。
そして、上述の第1エリアE1と同様に修正等の確認作業を行う。
【0102】
このように、スキャン対象エリアである柱600の地点A乃至地点Bの間を分割して順番にスキャンし、分割して3次元点群データを生成することで、より精度の高い3次元点群データの修正等が可能となる。
【0103】
(実施の形態の第1の変形例)
本実施の形態の第1の変形例の多くの構成は、上述の実施の形態と共通しているため、説明を省略し、以下、相違点を中心し説明する。
上述の実施の形態では、作業者Pのヘッドマウントディスプレイ100のHDM側ディスプレイ113には、作業者Pの視界が表示されるが、本変形例では、対応する「設計図」情報がコンピュータ等で3次元情報(例えば、CG(Computer Graphics(コンピュータ・グラフィックス))に加工され、組み合わされて表示される。
【0104】
したがって、実際には建築現場には、未だ存在しない設計図上の構造物の周辺等をスキャニングの範囲等に指定し、レーザスキャナ3でスキャニングすることができる。
また、実際に建築現場に部材を設置した後に設計データと比較して検査をする際、検査をする部材を設計図面上で指定し、実際の空間に設置されたものをスキャニングすることで、直感的に検査対象を指定することができる。
【0105】
したがって、本変形例では、作業者PのHDM側ディスプレイ113には、実際に存在する構造物に仮想現実である設計図情報と3次元点群データが重なり合い、融合されて表示されることになる(MR(Mixed Rearity(複合現実))。
【0106】
このため、設計図上の部材の位置が、設置予定場所と異なり「ズレ」ている場合、この異なっている量を視認しながら、設置完了前にスキャニングしながら完成後の設置位置まで変更する等の作業が容易且つ迅速にすることができる。
【0107】
(本実施の形態の第2の変形例)
本実施の形態の第2の変形例の多くの構成は、上述の実施の形態と共通しているため、説明を省略し、以下、相違点を中心し説明する。
【0108】
上述の実施の形態では、作業者Pは、ヘッドマウントディスプレイ100において表示された柱600等の対象物をスキャン対象として特定し、実際に作業者Pの手が柱600等に触れる必要はない構成となっている。
しかし、本変形では、作業者Pが実際に柱600に触れて、スキャニングの対象や、その範囲を指定しても構わない構成となっている。
したがって、作業者Pは、より正確にスキャニングの範囲を指定することができる。
【0109】
以上説明した本実施形態においては、装置として実現される場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定されず、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納され頒布されてもよい。
【0110】
また、記憶媒体は、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であればよい。記憶媒体の記憶形式は、特には限定されない。
【0111】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
【0112】
さらに、本発明における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体には限定されず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0113】
また、本発明におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づいて本実施形態における各処理を実行すればよく、1つのパソコン(PC)等からなる装置であってもよいし、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等であってもよい。
【0114】
また、本発明におけるコンピュータとは、パソコンには限定されず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0116】
1・・・測量装置、2・・・三脚、3・・・レーザスキャナ、4・・・操作装置、5・・・回転台、7・・・レバー、9・・・筐体、11・・・測距光射出部、12・・・受光部、13・・・測距演算部、14・・・撮像制御部、15・・・射出方向検出部、16・・・モータドライバ、17・・・姿勢検出部、18・・・第1通信部、19・・・演算制御部、20・・・第1記憶部、21・・・撮像制御部、22・・・画像処理部、23・・・測距光、24・・・反射測距光、26・・・射出光軸、27・・・発光素子、28・・・投光レンズ、29・・・第1反射鏡、31・・・受光光軸、32・・・第2反射鏡、33・・・受光素子、34・・・結像レンズ、35・・・光軸偏向部、40・・・測距光軸、43・・・撮像光軸、100、200・・・ヘッドマウントディスプレイ、101・・・HMD側制御部、102・・・HMD側側通信装置、110・・・本体部、111a、111b・・・HMD側カメラ、112・・・HMD側照明部、113・・・HMD側ディスプレイ、120・・・HMD側各種情報記憶部、121・・・HMD座標情報生成部、122・・・HMD座標情報記憶部、125・・・HMD座標データ生成部、126・・・スキャン開始地点座標情報記憶部、127・・・スキャン終了地点座標情報記憶部、128・・・3次元点群データ修正処理部、201・・・高反射物体、301・・・レーザスキャナ側制御部、302・・・レーザスキャナ本体、310・・・レーザスキャナ側各種情報記憶部、311・・・HMD距離情報記憶部、312・・・スキャナ側HMD座標情報記憶部、313・・・スキャナ側スキャン開始地点座標情報記憶部、314・・・スキャナ側スキャン終了地点座標情報、315・・・レーザスキャナ側修正座標情報生成部、316・・・修正スキャナ側HMD座標情報記憶部、317・・・修正スキャナ側開始地点座標情報記憶部、318・・・修正スキャナ側スキャン終了地点情報記憶部、319・・・スキャン対象特定処理部、3次元点群データ記憶部・・・320、600・・・柱、21・・・撮像制御部、O・・・基準光軸、P・・・作業者