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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051650
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】折り畳みブース
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/344 20060101AFI20240404BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20240404BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E04B1/344 F
E04B1/343 Q
E04H1/12 A
E04H1/12 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157932
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】片庭 孝
(72)【発明者】
【氏名】権藤 隆範
(72)【発明者】
【氏名】小高 菜穂子
(72)【発明者】
【氏名】大上 亜弓
(72)【発明者】
【氏名】田垣内 孝夫
(57)【要約】
【解決課題】折り畳みのしやすさと移動の容易性とを向上した折り畳みブースを提供する。
【解決手段】折り畳みブースは、第1キャスタに支持された正面壁と、第2キャスタに支持されるとともに前記正面壁と対向する背面壁と、前記正面壁と前記背面壁とを連結するとともに、伸張した第1位置と、内側に折り畳まれた第2位置と、の間で回動可能な頂壁と、前記正面壁と前記背面壁とを連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャスタに支持された正面壁と、
第2キャスタに支持されるとともに前記正面壁と対向する背面壁と、
前記正面壁と前記背面壁とを連結するとともに、伸張した第1位置と、内側に折り畳まれた第2位置と、の間で回動可能な頂壁と、
前記正面壁と前記背面壁とを連結するとともに、伸張した第3位置と、内側に折り畳まれた第4位置と、の間で回動可能な側面壁と、
を備える折り畳みブース。
【請求項2】
互いに回動可能な複数のパネルを有する前記側面壁と、
前記複数のパネルの内の1つに連なるように設けられた第1ギアと、
前記複数のパネルの内の他の1つに連なるように設けられるとともに前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記第1ギアを回転可能に支持する第1軸部と、
前記第2ギアを回転可能に支持する第2軸部と、
前記第1軸部と前記第2軸部とに一体的に設けられるとともに前記第1ギアおよび前記第2ギアを覆う箱状のカバーと、
を備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項3】
互いに回動可能な複数の壁部を有する前記頂壁と、
前記複数の壁部の内の1つに連なるように設けられた第1ギアと、
前記複数の壁部の内の他の1つに連なるように設けられるとともに前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記第1ギアを回転可能に支持する第1軸部と、
前記第2ギアを回転可能に支持する第2軸部と、
前記第1軸部と前記第2軸部とに一体的に設けられるとともに前記第1ギアおよび前記第2ギアを覆う箱状のカバーと、
を備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項4】
互いに回動可能な複数の壁部を有する前記頂壁と、
前記複数の壁部の内の1つと前記正面壁および前記背面壁のいずれかとの間に設けられ、前記頂壁を前記第1位置から前記第2位置にする際に、前記複数の壁部の付勢を抑制する緩衝部と、
を備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項5】
前記頂壁の近傍に設けられた消火設備を備え、前記消火設備は、前記頂壁が第2位置にあるときに、前記正面壁および前記背面壁の高さの範囲内に位置する請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項6】
前記頂壁の少なくとも一部を覆う第1機能パネルを備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項7】
前記背面壁の上側の略半分を覆う第2機能パネルと、
前記側面壁の上側の略半分を覆う第3機能パネルと、
を備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項8】
前記側面壁は、上部に設けられた開口部と、前記開口部に対して着脱可能で前記開口部を塞ぐことが可能なパネルと、を備える請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項9】
前記パネルは、前記頂壁を支持するストッパを兼ねる請求項8に記載の折り畳みブース。
【請求項10】
前記正面壁および前記背面壁の少なくとも一方は、手掛け部を有する請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項11】
前記側面壁に取り付けられ、前記側面壁が第3位置から第4位置に移動することを規制する規制具を有し、
前記規制具は、前記正面壁と前記背面壁とが接近した状態を維持する連結具を兼ねる請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項12】
前記規制具は、前記側面壁と床との間の隙間を塞ぐことが可能である請求項11に記載の折り畳みブース。
【請求項13】
前記正面壁の内面および前記背面壁の内面の少なくとも一方は、折り畳み可能なテーブルを有する請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項14】
前記頂壁の内面にハンドルを有し、前記ハンドルをユーザが把持して前記頂壁を下側に牽引することで、前記頂壁を前記第1位置から前記第2位置にするとともに、前記第1キャスタおよび前記第2キャスタの作用により、前記正面壁と前記背面壁とが接近することで前記側面壁を第3位置から前記第4位置に移動可能である請求項1に記載の折り畳みブース。
【請求項15】
前記正面壁、前記背面壁、前記頂壁、および前記側面壁は、アルミニウム合金製である請求項1~14のいずれか1項に記載の折り畳みブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳みブースに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ブースが知られている(例えば、特許文献1参照)。このブースは、隔壁の一部に通音領域Rと、通温領域Rの開放割合を調整可能な遮蔽カバーと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-200628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような据え付けタイプのブースでは、一度設置すると、撤去が容易ではない。仮に撤去しようとすると、その撤去のために時間と人手を要する問題がある。一方、このような既存のブースに対して、ニーズの変化に応じて、簡単に折り畳んでコンパクトに保管したり、或いは他の場所に簡単に移設したりしたいというニーズがあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、折り畳みのしやすさと移動の容易性とを向上した折り畳みブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の折り畳みブースは、
第1キャスタに支持された正面壁と、
第2キャスタに支持されるとともに前記正面壁と対向する背面壁と、
前記正面壁と前記背面壁とを連結するとともに、伸張した第1位置と、内側に折り畳まれた第2位置と、の間で回動可能な頂壁と、
前記正面壁と前記背面壁とを連結するとともに、伸張した第3位置と、内側に折り畳まれた第4位置と、の間で回動可能な側面壁と、
を備える。
【0007】
また、本発明(2)の折り畳みブースは、(1)記載の折り畳みブースであって、
互いに回動可能な複数のパネルを有する前記側面壁と、
前記複数のパネルの内の1つに連なるように設けられた第1ギアと、
前記複数のパネルの内の他の1つに連なるように設けられるとともに前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記第1ギアを回転可能に支持する第1軸部と、
前記第2ギアを回転可能に支持する第2軸部と、
前記第1軸部と前記第2軸部とに一体的に設けられるとともに前記第1ギアおよび前記第2ギアを覆う箱状のカバーと、
を備える。
【0008】
また、本発明(3)の折り畳みブースは、(1)記載の折り畳みブースであって、
互いに回動可能な複数の壁部を有する前記頂壁と、
前記複数の壁部の内の1つに連なるように設けられた第1ギアと、
前記複数の壁部の内の他の1つに連なるように設けられるとともに前記第1ギアに噛み合う第2ギアと、
前記第1ギアを回転可能に支持する第1軸部と、
前記第2ギアを回転可能に支持する第2軸部と、
前記第1軸部と前記第2軸部とに一体的に設けられるとともに前記第1ギアおよび前記第2ギアを覆う箱状のカバーと、
を備える。
【0009】
また、本発明(4)の折り畳みブースは、(1)記載の折り畳みブースであって、
互いに回動可能な複数の壁部を有する前記頂壁と、
前記複数の壁部の内の1つと前記正面壁および前記背面壁のいずれかとの間に設けられ、前記頂壁を前記第1位置から前記第2位置にする際に、前記複数の壁部の付勢を抑制する緩衝部と、
を備える。
【0010】
また、本発明(5)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記頂壁の近傍に設けられた消火設備を備え、前記消火設備は、前記頂壁が第2位置にあるときに、前記正面壁および前記背面壁の高さの範囲内に位置する。
【0011】
また、本発明(6)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記頂壁の少なくとも一部を覆う第1機能パネルを備える。
【0012】
また、本発明(7)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースあって、
前記背面壁の上側の略半分を覆う第2機能パネルと、
前記側面壁の上側の略半分を覆う第3機能パネルと、
を備える。
【0013】
また、本発明(8)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記側面壁は、上部に設けられた開口部と、前記開口部に対して着脱可能で前記開口部を塞ぐことが可能なパネルと、を備える。
【0014】
また、本発明(9)の折り畳みブースは、(8)に記載の折り畳みブースであって、
前記パネルは、前記頂壁を支持するストッパを兼ねる。
【0015】
また、本発明(10)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記正面壁および前記背面壁の少なくとも一方は、手掛け部を有する。
【0016】
また、本発明(11)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記側面壁に取り付けられ、前記側面壁が第3位置から第4位置に移動することを規制する規制具を有し、
前記規制具は、前記正面壁と前記背面壁とが接近した状態を維持する連結具を兼ねる。
【0017】
また、本発明(12)の折り畳みブースは、(11)に記載の折り畳みブースであって、
前記規制具は、前記側面壁と床との間の隙間を塞ぐことが可能である。
【0018】
また、本発明(13)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記正面壁の内面および前記背面壁の内面の少なくとも一方は、折り畳み可能なテーブルを有する。
【0019】
また、本発明(14)の折り畳みブースは、(1)に記載の折り畳みブースであって、
前記頂壁の内面にハンドルを有し、前記ハンドルをユーザが把持して前記頂壁を下側に牽引することで、前記頂壁を前記第1位置から前記第2位置にするとともに、前記第1キャスタおよび前記第2キャスタの作用により、前記正面壁と前記背面壁とが接近することで前記側面壁を第3位置から前記第4位置に移動可能である。
【0020】
また、本発明(15)の折り畳みブースは、(1)~(14)のいずれか1項に記載の折り畳みブースであって、
前記正面壁、前記背面壁、前記頂壁、および前記側面壁は、アルミニウム合金製である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、折り畳みのしやすさと移動の容易性とを向上した折り畳みブースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の折り畳みブースを示す斜視図である。
図2図1に示す折り畳みブースの正面図である。
図3図1に示す折り畳みブースの背面図である。
図4図1に示す折り畳みブースの平面図である。
図5図1に示す折り畳みブースの底面図である。
図6図1に示す折り畳みブースの右側面図である。
図7図4に示す折り畳みブースの頂壁の連結する部分(第1ヒンジ部)を拡大して示す断面図であり、頂壁が第1位置にある状態を示す断面図である。
図8図7に示す第1ヒンジ部を示す断面図であり、頂壁が第2位置にある状態を示す断面図である。
図9図2に示す折り畳みブースのF9-F9線の位置に沿った一部省略断面図である。
図10図2に示す折り畳みブースのF10-F10線の位置に沿った一部省略断面図である。
図11図1に示す折り畳みブースの緩衝部を示す部分拡大図である。
図12図1に示す折り畳みブースにおいて、正面壁および側面壁の一方を省略して内部構造を示した斜視図である。
図13図1に示す折り畳みブースにおいて、正面壁および側面壁の一方を省略して内部構造を示した斜視図である。
図14図1に示す折り畳みブースを2台横並びで集約的に配置した状態を示す斜視図である。
図15図1に示す折り畳みブースにおいて、正面壁および側面壁の一方を省略して、テーブルを折り畳む途中の過程を示した斜視図である。
図16図1に示す折り畳みブースにおいて、固定部材を取り外す過程を示す斜視図である。
図17図16に示す折り畳みブースにおいて、第3パネルを開口部から取り外す途中の過程を示す斜視図である。
図18図17に示す折り畳みブースにおいて、取り外した第3パネルを一対のフック部に吊下げる途中の過程を示す斜視図である。
図19図18に示す折り畳みブースにおいて、規制具が側面壁の底部に取付けられている状態を示す斜視図である。
図20図19に示す折り畳みブースにおいて、規制具を側面壁の底部から完全に取り外した後の側面壁の底部を示した斜視図である。
図21図20に示す折り畳みブースにおいて、頂壁を第1位置から第2位置に完全に折り畳む途中の過程を示した斜視図である。
図22図21に示す折り畳みブースを側方から示した右側面図である。
図23図21に示す折り畳みブースにおいて、頂壁を第2位置に移動させて完全に折り畳み状態にした後の状態を示した斜視図である。
図24図23に示す折り畳みブースの正面図である。
図25図23に示す折り畳みブースにおいて、規制具の貫通孔を側面壁の枠部の外面の突起に対して通して固定する過程を示した斜視図である。
図26図24に示す折り畳みブースのF26-F26線の位置に沿った一部省略断面図である。
図27図24に示す折り畳みブースのF27-F27線の位置に沿った一部省略断面図である。
図28】(a)図1に示す折り畳みブースの正面図であり、(b)オフィスの壁に対して紐100で固定した状態を示す右側面図である。
図29】第2実施形態の折り畳みブースの正面図である。
図30図29に示す折り畳みブースの背面図である。
図31図29に示す折り畳みブースの右側面図である。
図32図29に示す折り畳みブースの平面図である。
図33図29に示す折り畳みブースの底面図である。
図34図29に示す折り畳みブースにおいて、頂壁を第1位置から第2位置に移動させる途中の過程を示す斜視図である。
図35図34に示す折り畳みブースにおいて、頂壁を第1位置から第2位置に移動させ、折り畳みブースを完全に折り畳んだ状態を示した右側面図である。
図36】第3実施形態の折り畳みブースを示す斜視図である。
図37図36に示す折り畳みブースの正面図である。
図38図36に示す折り畳みブースの背面図である。
図39図36に示す折り畳みブースの平面図である。
図40図36に示す折り畳みブースの底面図である。
図41図36に示す折り畳みブースの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明の折り畳みブースの実施形態について説明する。本発明の折り畳みブースは、主としてオフィス内に設けられ、この内部に利用者が入ってWeb会議などを行うことができるものである。
[第1実施形態]
【0024】
図面を参照して、本発明の折り畳みブースについて説明する。本発明の折り畳みブースは、内部に人が入れるスペースを有する中空の箱状をなしている。図1に示すように、第1実施形態の折り畳みブース11は、平板状をなした正面壁12と、平板状をなして正面壁12と対向した背面壁13と、正面壁12と背面壁13とを接続する頂壁14と、正面壁12と背面壁13とを接続する一対の側面壁15と、正面壁12を支持する第1キャスタ16と、背面壁13を支持する第2キャスタ17と、を有する。正面壁12、背面壁13、頂壁14、および一対の側面壁15のそれぞれは、例えば、アルミニウム合金製であり、アルミニウム合金の押出材等で形成されている。第1キャスタ16および第2キャスタ17は、回転可能な状態と、ストッパを作動させて回転不能な状態と、を切り替えて使用することができる。以下では、図1に示すように、正面壁12の延びている方向を幅方向Wとし、側面壁15の延びている方向を前後方向FRとし、高さ方向(鉛直方向、上下方向)をHとして説明する。
【0025】
図2に示すように、正面壁12は、ドア21と、ドア21の横並び位置に設けられた覗き窓10と、その外面であってドア21を間に挟んだ左右の両側(図1の折り畳みブース11の幅方向Wの両端部)に一対に設けられた手掛け部22と、を有する。手掛け部22は、折り畳みブース11を移動する際に作業者が手を掛ける部分である。図12等に示すように、正面壁12は、その内面にドリンクや小物などを置くための上下一対の小テーブル23を有する。
【0026】
ドア21は、例えば、アルミニウム合金で形成された枠体24と、枠体24の内側に嵌め込まれたガラス板25と、ノブ(ドアレバー)26と、を有する。ドア21は開閉することができ、利用者が折り畳みブース11内に出入りすることができる。図14に示すように、ガラス板25は、プライバシーを確保するための不透明部25Aと、利用者が折り畳みブース11を利用していることを確認できる透明部25Bと、を有する。不透明部25Aは、着席状態の利用者の頭部に対応する位置に設けられ、透明部25Bは、不透明部25Aを間に挟んだ両側(上下の両側)に設けられている。
【0027】
図3に示すように、背面壁13は、平坦に形成されている。なお背面壁13は、後述する図12の操作部27の位置に応じて適宜電源、給気用の孔等を適宜配置することができるが、図3においては図示を省略する。背面壁13は、その外面において、左右の両側(ブースの幅方向Wの両端部)に一対の手掛け部22を有する。手掛け部22の構造および配置は、正面壁12の手掛け部22の構造および配置と同様である。本実施形態では、正面壁12および背面壁13に手掛け部22を設け、側面壁15に手掛け部22等を設けていない。このため、図14に示すように、2台の折り畳ブース11が隣り合わせになるように側面壁15同士を近づけた状態でも、手掛け部22同士が干渉することがなく、折り畳みブース11同士を横並びで集約的に配置することができる。これによって、限られたオフィス内のスペースを有効に活用することができる。
【0028】
図12図13図18に示すように、背面壁13は、その内面に、上下方向の中央部に横方向に帯状に設けられた操作部27と、操作部27の下側位置で回動可能に取り付けられたテーブル28と、側面壁15の後述する第3パネル73を吊り下げるための左右一対のフック部31と、を有する。折り畳みブース11は、さらに、操作部27よりも上側位置で背面壁13を覆う第2機能パネル32として吸音パネル32を備える。背面壁13は、操作部27よりも下側位置では、第2吸音パネル32で覆われておらず、この部分で十分な熱伝導性が確保されている。テーブル28は、水平方向に延びた使用状態と、鉛直方向に折り畳まれた折り畳み状態と、の間で回動できる。なお、本発明において、機能パネルは、吸音パネルに限られず、ブース11に何等かの機能を追加できるものであればよく、その機能は、吸音、断熱、耐火、内部の明るさ向上、湿度(吸湿)、装飾(木目調等)、消臭、抗菌、匂い付き等の公知の様々な機能を備えたパネルや、正面壁、背面壁、側面壁、頂壁と同質の素材で補強する等の目的で備えるものでも良く、使用用途に応じて公知のパネル素材を使用することができる。
【0029】
第2吸音パネル32は、多孔質(スポンジ状)の内部構造を有する一般的な吸音パネルで構成され、背面壁13に対して接着又は磁石によって着脱可能に固定されている。磁石を用いて第2吸音パネル32を固定する場合には、例えば、背面壁13に鉄板(スチール板)およびマグネット板のいずれか一方を固定し、第2吸音パネル32に鉄板(スチール板)およびマグネット板のいずれか他方を固定することで実現できる。
【0030】
図12に示すように、操作部27には、電源となるコンセント33や、照明34をオンオフするスイッチ35、社内LAN等に接続するためのLANケーブルを差し込める差し込み口36、およびブース外から空気を取り入れるための給気孔37を有する。
【0031】
図12図13に示すように、折り畳みブース11は、さらに、ハンドル41と、照明34と、換気扇42と、消火設備43と、を有する。ハンドル41、照明34、および換気扇42は、頂壁14の後述する第1壁部44の内面に集約的に設けられている。消火設備43および消火設備43を取り囲む目隠し壁45は、第1壁部44の外面(上側)に設けられている。
【0032】
頂壁14は、伸張した第1位置P1と、内側に折り畳まれた第2位置P2と、の間で回動可能である。頂壁14は、中央部に位置する第1壁部44と、正面壁12と第1壁部44とを接続する第2壁部46と、背面壁13と第1壁部44とを接続する第3壁部47と、を有する。折り畳みブース11は、さらに、頂壁14の少なくとも一部を覆う第1吸音パネル51を有する。第1吸音パネル51は、第1機能パネルの一例である。
【0033】
図13に示すように、第1吸音パネル51は、第2壁部46の少なくとも一部を覆う第1吸音パネル片51Aと、第3壁部47の少なくとも一部を覆う第2吸音パネル片51Bと、を有する。第1吸音パネル片51Aおよび第2吸音パネル片51Bの構造は、第2吸音パネル32と同様である。また、第2壁部46に対する第1吸音パネル片51Aの固定方法および第3壁部47に対する第2吸音パネル片51Bの固定方法は、背面壁13に対する第2吸音パネル32の固定方法と同様で接着又は磁石によって着脱可能に固定されている。
【0034】
図6図7図9に示すように、頂壁14は、複数の第1ヒンジ部52と、複数の第2ヒンジ部53と、を有する。第1ヒンジ部52の1つは、第1壁部44と第2壁部46とを互いに回動可能に連結している。第1ヒンジ部52の他の1つは、第1壁部44と第3壁部47とを互いに回動可能に連結している。第2ヒンジ部53の1つは、第2壁部46と正面壁12とを互いに回動可能に連結している。第2ヒンジ部53の他の1つは、第3壁部47と背面壁13とを互いに回動可能に連結している。第1ヒンジ部52および第2ヒンジ部53のそれぞれは、ギア付きヒンジで構成されている。第1ヒンジ部52および第2ヒンジ部53は、同一の構成を有するため、以下では第1ヒンジ部52のみを説明する。
【0035】
図7に示すように、第1ヒンジ部52のそれぞれは、第1ギア54と、第1ギア54に取り付けられた第1取付部55と、第1ギア54を回転可能に支持する第1軸部56と、第1ギア54に噛み合う第2ギア57と、第2ギア57に取り付けられた第2取付部58と、第2ギア57を回転可能に支持する第2軸部61と、第1ギア54と第2ギア57を覆うカバー62と、を有する。カバー62は、断面C字状(箱状)に形成されており、第1軸部56および第2軸部61と一体的に設けられる。第1取付部55は、第1壁部44に固定されている。第2取付部58は、第2壁部46(第3壁部47)に固定されている。一方、第2ヒンジ部53の第1取付部55は、第2壁部46(第3壁部47)に固定され、第2ヒンジ部53の第2取付部58は、正面壁12(背面壁13)に固定される。第1ヒンジ部52の各部材は、例えば、アルミニウム合金の押出材で構成されている。
【0036】
このように、第1ヒンジ部52および第2ヒンジ部53をギア付きヒンジで構成することにより、第1取付部55および第2取付部58の折り畳み(それらの回動角度)が同期してなされることとなる。これによって、頂壁14の折り畳み時に頂壁14の形状が不安定化することを防止すると共に、折り畳みブース11全体の左右、前後及び頂壁14の動作形状が終始安定するので、折り畳みブース11の開閉をスムーズに行うことができる。
【0037】
図11に示すように、折り畳みブース11は、さらに、正面壁12と第2壁部46との間に介在された第1緩衝部63と、背面壁13と第3壁部47との間に介在された第2緩衝部64と、を有する。第1緩衝部63および第2緩衝部64のそれぞれは、一般的なオイルダンパーで構成される。第1緩衝部63は、折り畳みブース11を折り畳む際に、正面壁12に対して第2壁部46の付勢を抑制することができ、第2壁部46が勢いよく近づくことを防止できる。第2緩衝部64は、折り畳みブース11を折り畳む際に、背面壁13に対して第3壁部47の付勢を抑制することができ、第3壁部47が勢いよく近づくことを防止できる。
【0038】
側面壁15同士は、互いに同一の構成を有する。このため、ここでは、一対の側面壁15の一方についてのみ説明する。側面壁15は、図1に示すように伸張した第3位置P3と、図27に示すように内側に折り畳まれた第4位置P4と、の間で回動可能である。図1図6図10に示すように、側面壁15は、上下方向に細長く延びて正面壁12又は背面壁13に対して固定的に設けられた平板状の枠部65と、第1パネル66と、第2パネル67と、第1パネル66と第2パネル67とを互いに回動可能に連結する第3ヒンジ部68と、枠部65に対して第1パネル66および第2パネル67のいずれか一方を回動可能に連結する第4ヒンジ部71と、上部に設けられた開口部72と、開口部72を塞ぐように着脱可能に設けられた第3パネル73と、を有する。第3パネル73は、平板状に構成され頂壁を支持し、頂壁14を定位置に保持でき、消火設備43等の自重で下方に落ち込むことを阻止するストッパの役割を兼ねることができる。
【0039】
図12に示すように、折り畳みブース11は、第1パネル66の上側略半分および第2パネル67の上側略半分を覆う第3吸音パネル74を有する。側面壁15は、下側位置では、第3吸音パネル74で覆われておらず、この部分でアルミ合金の性質を活かした十分な熱伝導性が確保されている。第3吸音パネル74は、第3機能パネルの一例である。
【0040】
第3吸音パネル74は、第1パネル66に対応する第1部分74Aと、第2パネル67に対応する第2部分74Bと、に2分割されている。第1部分74Aは、第1パネル66に対して、第1吸音パネル51と同様の方式で固定されている。第2部分74Bは、第2パネル67に対して、第1吸音パネル51と同様の方式で固定されている。
【0041】
第3ヒンジ部68および第4ヒンジ部71のそれぞれは、ギア付きヒンジで構成され、第1ヒンジ部52と同一の構成を有する。すなわち、第3ヒンジ部68および第4ヒンジ部71のギアは、歯数および直径において、第1ヒンジ部52のギアと同一である。このため、同一の名称を用いて説明する。第3ヒンジ部68において、第1取付部55は、第1パネル66に固定されている。第3ヒンジ部68において、第2取付部58は、第2パネル67に固定されている。一方、第4ヒンジ部71において、第1取付部55は枠部65に固定されている。第4ヒンジ部71において、第2取付部58は、第1パネル66又は第2パネル67に固定されている。
【0042】
このように、一対の側面壁15のそれぞれに設けられた第2ヒンジ部53および第3ヒンジ部68をギア付きヒンジで構成することにより、一対の側面壁15の折り畳み(回動角度)が同期してなされることとなる。また、この一対の側面壁15の折り畳み(それらの回動角度)は、頂壁14の第1~第3壁部47の折り畳み(それらの回動角度)とも同期してなされる。これによって、側面壁15の折り畳み時に側面壁15の形状が不規則になって不安定化することを防止する。従って、折り畳みブース11全体の左右、前後及び頂壁14の動作形状が終始安定するので、折り畳みブース11の開閉を更にスムーズに行うことができる。
【0043】
図1図6に示すように、開口部72は、矩形の貫通孔として形成されており、側面壁15の高さの約1/4の高さを占める高さで形成されている。第3パネル73は、矩形板状のパネルで構成されている。折り畳みブース11は、第3パネル73に固定された第4吸音パネル76を有する。側面壁15は、さらに、第3パネル73を頂壁14に固定するための固定部材77を有する。図16に示すように、本実施形態において、固定部材77は、ねじで構成されている。なお、固定部材77の構成は機能パネルを固定するものであればこれに限られるものではない。固定部材77は、スイッチを押下することで、軸部が突出したり後退して元に戻ったり可能な部品(プッシュラッチ)で構成されていてもよい。
【0044】
図19に示すように、折り畳みブース11は、一対の側面壁15の底部に対して着脱可能に取り付けられる一対の規制具81を有する。規制具81は、例えば、アルミニウム合金によって平板状に形成されており、周囲よりも突出している一対の第4ヒンジ部71を避けることができる一対の切込部81Aを有する。規制具81は、貫通孔81Bを有し、貫通孔81Bに対して枠部65の内面に設けられた突起82を通すことで、側面壁15の内面に係合することができる。図19に示すように、規制具81は、側面壁15の内面に係合した状態で、一対の側面壁15が伸長した第3位置P3から内側に折り畳まれた第4位置P4に移動することを規制することができる。また、規制具81を側面壁15の底部から取り外すことで、側面壁15の底部と床との間に隙間83が形成され、当該隙間83から空気を流通させることができる。一方、規制具81は、側面壁15の内面の底部に取り付けられた状態で、当該隙間83を塞ぐことができる。
【0045】
また、図25図28に示すように、規制具81は、折り畳み状態の折り畳みブース11において、貫通孔81Bに対して枠部65の外面に設けられた突起82を通すことで、側面壁15(枠部65)の外面に係合することができる。図28(b)に示すように、規制具81は、側面壁15の外面に係合した状態で、正面壁12と背面壁13とを連結する連結具となっており、移動中に、折り畳み状態として接近した正面壁12と背面壁13とが分離してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0046】
本実施形態の折り畳みブース11を、2022年8月21日に、出願人の社屋内で、発明者のみが入室が許可される区画において、実際に発明者が利用して、内部の温度が上昇するか否かを確かめた。結果は以下の通りであった。
【0047】
【表1】
【0048】
上記から明らかなように、利用者が折り畳みブース11に発明者が出入りする状況であっても、折り畳みブース11内で温度上昇は見られなかった。したがって、利用者は、折り畳みブース11内において、エアコンが効いているオフィス内と同等の環境下で、快適に折り畳みブース11を利用できることが理解できる。本発明の折り畳みブース11は、その構成に床部分を設けることは任意で、床部分が構成されないことで軽量化に優れ、また内部スペースを十分に利用でき、通気性に優れるが、ブースの用途に応じて、必要により適宜床材(カーペット、板等)公知のものを使用することもできる。
【0049】
続いて、図7図8図15図28を参照して、本実施形態の折り畳みブース11の折り畳み作業について説明する。本実施形態の折り畳みブース11では、基本的に1名の作業員によって折り畳み作業を簡単に完結することができる。
【0050】
図15に示すように、折り畳みに先立ち、テーブル28を水平位置から持ちあげて起立位置に移動させる。図16に示すように、側面壁15の固定部材77を取り外して、頂壁14と第3パネル73との固定状態を解除する。そして、図17に示すように、第3パネル73を開口部72から取り外す。
【0051】
側面壁15上部の開口部72から取り外された第3パネル73は、図18に示すように、左右一対のフック部31に対して吊下げることができる。図19図20に示すように、側面壁15の底部から規制具81を取り外す。一対の側面壁15から一対の規制具81を取り外すことで、側面壁15は、伸張した第3位置P3から内側に折り畳まれた第4位置P4に移動することができるようになる。
【0052】
この状態で、ドア21を開放して作業者が折り畳みブース内に入って、頂壁14のハンドル41を下方に牽引する。これと同時に、作業者が手によって側面壁15を内側に折り畳むようにする。これによって、図21図22に示すように、複数の第1ヒンジ部52の作用によって、頂壁14の第1壁部44が下方に下がるとともに、第1壁部44に対して第2壁部46が折り畳まれ、第1壁部44に対して第3壁部47が折り畳まれる(なお、作図の関係上、図21図22では、ドア21が閉まった状態となっているが、実際の作業はドア21を開放した状態でなされる。)。また、第2ヒンジ部53の作用により、正面壁12に対しても第2壁部46が折り畳まれるとともに、背面壁13に対しても第3壁部47が折り畳まれる。その際、図7図8に示すように、ギア付きヒンジで構成される第1ヒンジ部52の作用によって、各壁部の回動が同期してなされ、各壁部の間で回動角度を揃えてバランスよく折り畳みが行われる。
【0053】
また、本実施形態では、正面壁12と第2壁部46との間の第1緩衝部63が設けられ、背面壁13と第3壁部47との間に第2緩衝部64が設けられているため、作業者がハンドルを大きな力で牽引する場合でも、頂壁14が伸長した第1位置P1から折り畳まれた第2位置P2に勢いよく折り畳まれてしまうことが防止される。このため、折り畳みブース11内で作業をしている作業者に危険を生じることがない。
【0054】
正面壁12および背面壁13は、第1キャスタ16および第2キャスタ17によって支持されている。このため、頂壁14が第1位置P1から第2位置P2に移動する際に、頂壁14の折り畳みに起因して第1キャスタ16および第2キャスタ17の作用によって正面壁12と背面壁13との間の距離が小さくなるように、正面壁12と背面壁13とが接近する。
【0055】
正面壁12と背面壁13とが接近することによって、側面壁15の折り畳みも半自動的になされる。すなわち、図21図22に示すように、第3ヒンジ部68および第4ヒンジ部71の作用によって第1パネル66と第2パネル67との折り畳みが同期してなされ、第1パネル66と第2パネル67との間で回動角度を揃えてバランスよく折り畳みが行われる。
【0056】
作業者が頂壁14の下方への牽引を完了し、頂壁14が第1位置P1から第2位置P2に移動完了し、側面壁15が第3位置P3から第4位置P4に移動完了すると、図23図24図26図27に示すように、折り畳みブース11が完全に折り畳まれた状態となる。この状態で、図25に示すように、側面壁15の枠部65の外面側の突起82に対して規制具81の貫通孔81Bを通すことで、正面壁12と背面壁13とが分離しないようにこれらを連結・固定できる。この状態で、作業者は、望みの場所に折り畳みブースを移動することができる。その際、図28に示すように、頂壁14が第2位置P2にあるときに、消火設備が正面壁12および背面壁13の高さの範囲内に位置されるために、折り畳みブース11がコンパクトになり、折り畳みブース11を移動中に消火設備が建物の天井や梁などに干渉してしまう危険を防止できる。
【0057】
また、図28(b)に示すように、オフィスの壁に対して紐100で固定するようにしても当然によい。
【0058】
折り畳みブース11の移動が完了し、再び折り畳みブース11を折り畳み状態から開かれた使用状態にする場合には、上記と逆の手順でなされる。
【0059】
第1実施形態によれば以下のことがいえる。折り畳みブース11は、第1キャスタ16に支持された正面壁12と、第2キャスタ17に支持されるとともに正面壁12と対向する背面壁13と、正面壁12と背面壁13とを連結するとともに、伸張した第1位置P1と、内側に折り畳まれた第2位置P2と、の間で回動可能な頂壁14と、正面壁12と背面壁13とを連結されてなる。この構成によれば、折り畳みブース11を折り畳むという動作で頂壁の折りたたみ動作も連動するので、ワンタッチで折り畳みブース11を使用状態から収納状態に変形させることができる。
【0060】
この場合、上記伸張した第3位置P3と、内側に折り畳まれた第4位置P4と、の間で回動可能な側面壁15と、頂壁14の内面に設けられユーザが把持可能なハンドルであって、ユーザが把持して頂壁14を下側に牽引することで、頂壁14を第1位置P1から第2位置P2にするとともに、第1キャスタ16および第2キャスタ17の作用により、正面壁12と背面壁13とが接近することで側面壁15を第3位置P3から第4位置P4にするハンドル41と、を備える。
【0061】
この構成によれば、ハンドル41を引き下げるという簡単な操作によって、一人の作業員によって、折り畳みブース11を折り畳むという動作を極めて簡単に行うことができる。これによって、ワンタッチで折り畳みブース11を使用状態から収納状態に変形させることができる。
【0062】
折り畳みブース11は、互いに回動可能な複数のパネルを有する側面壁15と、前記複数のパネルの内の1つに連なるように設けられた第1ギア54と、前記複数のパネルの内の他の1つに連なるように設けられるとともに第1ギア54に噛み合う第2ギア57と、第1ギア54を回転可能に支持する第1軸部56と、第2ギア57を回転可能に支持する第2軸部61と、第1軸部56と第2軸部61とに一体的に設けられるとともに第1ギア54および第2ギア57を覆う箱状のカバー62と、を備える。
【0063】
この構成によれば、複数のパネル同士の回動角度を同期して行うことができる。これによって、1つのパネルだけが急激に回動して、他のパネルがほとんど回動しないというように、折り畳みブース11を折り畳む際に、バランスが悪くなって折り畳みが上手くいかなくなる事態を生じることを防止できる。
【0064】
折り畳みブース11は、互いに回動可能な複数の壁部を有する頂壁14と、前記複数の壁部の内の1つに連なるように設けられた第1ギア54と、前記複数の壁部の内の他の1つに連なるように設けられるとともに第1ギア54に噛み合う第2ギア57と、第1ギア54を回転可能に支持する第1軸部56と、第2ギア57を回転可能に支持する第2軸部61と、第1軸部56と第2軸部61とに一体的に設けられるとともに第1ギア54および第2ギア57を覆う箱状のカバー62と、を備える。
【0065】
この構成によれば、複数の壁部同士の回動角度を同期して行うことができる。これによって、1つの壁部だけが急激に回動して、他の壁部がほとんど回動しないというように、折り畳みブース11を折り畳む際に、バランスが悪くなって折り畳みが上手くいかなくなる事態を生じることを防止できる。
【0066】
折り畳みブース11は、互いに回動可能な複数の壁部を有する頂壁14と、前記複数の壁部の内の1つと正面壁12および背面壁13のいずれかとの間に設けられ、頂壁14を第1位置P1から第2位置P2にする際に、正面壁12に対して前記複数の壁部の内の1つが勢いよく接近することを阻止する緩衝部と、を備える。
【0067】
この構成によれば、ユーザが折り畳みブース11を折り畳む際に、ハンドル41に大きな力を加えた場合でも、折り畳みブース11が急激に折り畳まれてしまうような危険を生じることを防止でき、安全に使用することができる。
【0068】
折り畳みブース11は、頂壁14の近傍に設けられた消火設備43を備え、消火設備43は、頂壁14が第2位置P2にあるときに、正面壁12および背面壁13の高さの範囲内に位置する。
【0069】
この構成によれば、折り畳みブース11を折り畳む際に、消火設備43を正面壁12および背面壁13の高さから突出しないようにすることができる。これによって、折り畳みブース11を折り畳んで移動させる際に、折り畳みブース11を極力コンパクトにして折り畳みブース11の移動時に建物を傷つけてしまう危険を低減できる。
【0070】
折り畳みブース11は、頂壁14の少なくとも一部を覆う機能パネルとして、特にワーキングスペースとして使用する場合、第1吸音パネル51を備える。人の円滑なコミュニケーションに影響する部分は、人の頭部付近である折り畳みブース11の上側の略半分である。上記の構成によれば、頂壁14周りで吸音をすることができ、折り畳みブース11内でWEB会議など行う場合に、折り畳みブース11内の人の声が周囲に漏れ出すことを抑制できる。また、周囲の騒音が折り畳みブース11内の人のコミュニケーションに悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0071】
折り畳みブース11は、背面壁13の上側の略半分を覆う第2吸音パネル32と、側面壁15の上側の略半分を覆う第3吸音パネル74と、を備える。
【0072】
上記の構成によれば、折り畳みブース11内でWEB会議など行う場合に、折り畳みブース11内の人の声が周囲に漏れ出すことを抑制できる。また、周囲の騒音が折り畳みブース11内の人のコミュニケーションに悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、背面壁13の下半分および側面壁15の下半分については、吸音パネルを設けないようにすることで、オフィス内の館内放送等の安全に関する最低限の情報を聞こえやすくることができる等、使用や設置環境に応じた調整が可能になる。また、背面壁13の下半分および側面壁15の下半分に吸音パネルを設けると、折り畳みブース11内外の熱伝導性が悪くなって折り畳みブース11内の温度が上昇する傾向があるところ、上記構成によれば、背面壁13の下半分および側面壁15の下半分については、防音パネルを設けないので、折り畳みブース11内外で温度差を減らすことができる。
【0073】
側面壁15は、上部に設けられた開口部72と、開口部72に対して着脱可能で開口部72を塞ぐことが可能なパネルと、を備える。この構成によれば、折り畳みブース11の用途に応じて、開口部72を開放したり閉塞したりすることができる。したがって、開口部72を設けて児童向けの着替え用のブースとしたり、或いは開口部72を設けることで換気を良くしたりするなど、用途に応じて適宜にアレンジを加えることができる。
【0074】
前記パネルは、前記頂壁頂壁を支持するストッパを兼ねることができる。この構成によれば、頂壁を定位置に保持でき、例えば、消火設備43の自重によって頂壁14が下方に落ち込んでしまうことを防止できる。
【0075】
正面壁12および背面壁13の少なくとも一方は、移動時に把持される手掛け部22を有し、側面壁15には手掛け部22が設けられない。この構成によれば、側面壁15側に手掛け部22が設けられないため、側面壁15同士を近接させて折り畳みブース11同士を密集的に配置することができる。これによって、オフィス内の限られたスペースを有効に活用することができる。
【0076】
折り畳みブース11は、側面壁15に取り付けられ、側面壁15が第3位置P3から第4位置P4に移動することを規制する規制具81を有し、規制具81は、正面壁12と背面壁13とが接近した状態を維持する連結具を兼ねる。この構成によれば、移動中に正面壁12と背面壁13とが分離して折り畳み状態が解除となってしまう事態を生じることを防止できる。
【0077】
規制具81は、側面壁15と床との間の隙間83を塞ぐことが可能である。この構成によれば、規制具81によって防音性の程度を調整することができる。すなわち、防音性を高めたい場合には、規制具81を用いることで防音性を向上できる。一方、防音性がそこまで求められず、ブース内外の通気性を向上したい場合等には、規制具81を用いないで利用することもでき使用や設置環境に応じた調整が可能になる。
【0078】
正面壁12の内面および背面壁13の内面の少なくとも一方は、折り畳み可能なテーブル28を有する。この構成によれば、正面壁12と背面壁13とを近接させる際に、テーブル28が邪魔になってしまうことを防止できる。
【0079】
正面壁12、背面壁13、頂壁14、および側面壁15は、アルミニウム合金製である。この構成によれば、スチール等で折り畳みブース11を形成した場合に比して、アルミニウム合金を用いることで、およそ5倍の熱伝導率を有する折り畳みブース11を実現できる。これによって、オフィス内の空調で適温に調整された温度を、折り畳みブース11内にもそのまま伝導することができる。これによって、折り畳みブース11内の利用者の快適性を向上できるだけでなく、簡易クーラー等の室内空調設備の使用頻度を削減することができ、省エネ性に貢献する。また、上記構成によれば、スチール等で折り畳みブース11を形成した場合に比して、アルミニウム合金を用いることで、およそ1/3の重量の折り畳みブース11を実現できる。これによって、軽量化が達成でき、折り畳みブース11の移動を容易にすることができる。以上より、利用者の快適性と折り畳みブース11の移動の容易性とを両立した折り畳みブース11を実現できる。また、樹脂等の使用を極力少なくしているため、近年の廃プラスチックの取り組みを進めることができるだけでなく、リサイクルにも配慮した折り畳みブース11を実現できる。
【0080】
以下の実施形態では、主として上記実施形態と異なる部分について説明し、上記実施形態と共通する部分については、図示又は説明を省略する。
[第2実施形態]
【0081】
図29図35を参照して、第2実施形態の折り畳みブース11について説明する。
【0082】
本実施形態において、頂壁14は、第1壁部44と、第2壁部46と、を有する。消火設備43は、背面壁13に隣接した位置に設けられている。頂壁14は、第1ヒンジ部52および第2ヒンジ部53を有する。第1ヒンジ部52および第2ヒンジ部53の構成は第1実施形態と同様である。第1ヒンジ部52は、第1壁部44と第2壁部46とを回動可能に連結する。第2ヒンジ部53の1つは、正面壁12に対して回動可能に第1壁部44と正面壁12とを連結する。第2ヒンジ部53の他の1つは、消火設備43に対して回動可能に第2壁部46と消火設備43とを連結する。本実施形態において、ハンドル41は、頂壁14の第1壁部44および第2壁部46のいずれか一方に設けられる。
【0083】
続いて、図34図35を参照して、本実施形態の折り畳みブース11の折り畳み作業について説明する。
【0084】
第1実施形態と同様に、折り畳みブース11の折り畳みに先立ち、テーブル28を水平位置から持ちあげて起立位置に移動させる。さらに、側面壁15の固定部材77を取り外して、頂壁14と第3パネル73との固定状態を解除する。そして、第3パネル73を開口部72から取り外す。
【0085】
側面壁15上部の開口部72から取り外された第3パネル73は、第1実施形態と同様に、左右一対のフック部31に対して吊下げることができる。第1実施形態と同様に、側面壁15の底部から規制具81を取り外す。一対の側面壁15から一対の規制具81を取り外すことで、側面壁15は、伸張した第3位置P3から内側に折り畳まれた第4位置P4に移動することができるようになる。
【0086】
この状態で、ドア21を開放して作業者が折り畳みブース11内に入って、頂壁14のハンドル41を下方に牽引する。これと同時に、側面壁15を内側に折り畳むようにする。これによって、図34に示すように、複数の第1ヒンジ部52の作用によって、第1壁部44に対して第2壁部46が折り畳まれる(なお、作図の関係上、図34では、ドア21が閉まった状態となっているが、実際の作業はドア21を開放した状態でなされる。)。また正面壁12に対しても第1壁部44が折り畳まれるとともに、背面壁13に対しても第2壁部46が折り畳まれる。その際、図7図8に示すように、ギア付きヒンジで構成される第1ヒンジ部52の作用によって、各壁部の回動が同期してなされ、各壁部の間で回動角度を揃えてバランスよく折り畳みが行われる。
【0087】
また、本実施形態では、正面壁12と第1壁部44との間の第1緩衝部63が設けられ、背面壁13と第2壁部46との間に第2緩衝部64が設けられているため、ハンドル41を大きな力で牽引する場合でも、頂壁14が伸長した第1位置P1から折り畳まれた第2位置P2に勢いよく折り畳まれてしまうことが防止される。このため、折り畳みブース11内で作業をしている作業者に危険を生じることがない。
【0088】
正面壁12および背面壁13は、第1キャスタ16および第2キャスタ17によって支持されている。このため、図34に示すように、頂壁14が第1位置P1から第2位置P2に移動する際に、頂壁14の折り畳みに起因して第1キャスタ16および第2キャスタ17の作用によって正面壁12と背面壁13との間の距離が小さくなるように、正面壁12と背面壁13とが接近する。
【0089】
正面壁12と背面壁13とが接近することによって、側面壁15の折り畳みも半自動的になされる。すなわち、図7図8に示すように、第3ヒンジ部68および第4ヒンジ部71の作用によって第1パネル66と第2パネル67との折り畳みが同期してなされ、第1パネル66と第2パネル67との間で回動角度を揃えてバランスよく折り畳みが行われる。
【0090】
作業者が頂壁14の下方への牽引を完了し、頂壁14が第1位置P1から第2位置P2に移動完了し、側面壁15が第3位置P3から第4位置P4に移動完了すると、図35に示すように、折り畳みブース11が完全に折り畳まれた状態となる。この状態で、第1実施形態と同様に、側面壁15の枠部65の外面側の突起82に対して規制具81の貫通孔81Bを通すことで、正面壁12と背面壁13とが分離しないようにこれらを連結・固定できる。この状態で、作業者は、望みの場所に折り畳みブース11を移動することができる。
【0091】
本実施形態においても、頂壁14が第2位置P2にあるときに、消火設備43が正面壁12および背面壁13の高さの範囲内に位置されるために、折り畳みブース11がコンパクトになり、折り畳みブース11を移動中に消火設備43が建物の天井や梁などに干渉してしまう危険を防止できる。
【0092】
折り畳みブース11の移動が完了し、再び折り畳みブース11を折り畳み状態から開かれた使用状態にする場合には、上記と逆の手順でなされる。
[第3実施形態]
【0093】
図36図41を参照して、第3実施形態の折り畳みブース11について説明する。
【0094】
本実施形態の折り畳みブース11は、頂壁14および消火設備43が着脱可能に取り付けられているもので、頂壁14および消火設備43が取り外された状態を示す。頂壁14および消火設備43を有しない本実施形態の折り畳みブース11では、頂壁14が設けられないために、消防法上の要請から消火設備43が必要となることがない用途に利用することができ、通気性に優れている。
【0095】
本実施形態の折り畳みブース11では、側面壁15の上部に開口部72が設けられていない。すなわち、本実施形態では、側面壁15の第1パネル66および第2パネル67の高さは、正面壁12および背面壁13の高さと同等である。
【0096】
続いて、本実施形態の折り畳みブース11の折り畳み作業について説明する。
【0097】
第1実施形態と同様に、折り畳みブース11の折り畳みに先立ち、テーブル28を水平位置から持ちあげて起立位置に移動させる。続いて、第1実施形態と同様に、側面壁15の底部から規制具81を取り外す。一対の側面壁15から一対の規制具81を取り外すことで、側面壁15は、伸張した第3位置P3から内側に折り畳まれた第4位置P4に移動することができるようになる。
【0098】
作業者は、手を用いて側面壁15を内側に牽引することで、側面壁15を第3位置P3から第4位置P4まで移動させることができる。正面壁12および背面壁13は、第1キャスタ16および第2キャスタ17によって支持されている。このため、側面壁15が第3位置P3から第4位置P4に移動する際に、側面壁15の折り畳みに起因して第1キャスタ16および第2キャスタ17の作用によって正面壁12と背面壁13との間の距離が小さくなるように、正面壁12と背面壁13とが接近する。
【0099】
その際、第3ヒンジ部68および第4ヒンジ部71の作用によって第1パネル66と第2パネル67との折り畳みが同期してなされ、第1パネル66と第2パネル67との間で回動角度を揃えてバランスよく折り畳みが行われる。
【0100】
側面壁15が第3位置P3から第4位置P4に移動完了すると、折り畳みブース11が完全に折り畳まれた状態となる。この状態で、第1実施形態と同様に、側面壁15の枠部65の外面側の突起82に対して規制具81の貫通孔81Bを通すことで、正面壁12と背面壁13とが分離しないようにこれらを連結・固定できる。この状態で、作業者は、望みの場所に折り畳みブース11を移動することができる。
【0101】
折り畳みブース11の移動が完了し、再び折り畳みブース11を折り畳み状態から開かれた使用状態にする場合には、上記と逆の手順でなされる。
【0102】
上記した実施形態は、さらなる種々の置き換えや変形を加えて実施できる。上記実施形態では、側面壁15の第3位置P3から第4位置P4への移動に先立ち、作業者の手を用いて側面壁15を内側に折り畳むようにしているが、これに限られるものではない。側面壁15にばね等を設けて、折り畳みブース11の折り畳みの際に、ばね等の作用によって側面壁15が自動的に内側に折り畳まれるように構成しても当然によい。
【符号の説明】
【0103】
11 折り畳みブース
12 正面壁
13 背面壁
14 頂壁
15 側面壁
16 第1キャスタ
17 第2キャスタ
22 手掛け部
32 第2吸音パネル
41 ハンドル
43 消火設備
44 第1壁部
46 第2壁部
47 第3壁部
51 第1吸音パネル
52 第1ヒンジ部
53 第2ヒンジ部
63 第1緩衝部
64 第2緩衝部
66 第1パネル
67 第2パネル
68 第3ヒンジ部
71 第4ヒンジ部
72 開口部
73 第3パネル
74 第3吸音パネル
76 第4吸音パネル
81 規制具
81A 切込部
81B 貫通孔
83 隙間
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置
図1
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