(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051655
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157938
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 彩音
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓臣
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 嵩正
(72)【発明者】
【氏名】只野 みゆう
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD01
2D039AE04
2D039CB01
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】便器本体の後部に形成された空間の下面に水を留まりにくくできる水洗式便器を提供する。
【解決手段】便鉢部21と、前記便鉢部21の後方に空間40を形成する壁部23と、を有する便器本体20を備え、前記空間40は、前記便器本体20の左右方向に広がっており、前記空間40の下面を形成する下壁部31は、後端部において前記左右方向の外側に向けて下がる傾斜部37を有している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、前記便鉢部の後方に空間を形成する壁部と、を有する便器本体を備え、
前記空間は、前記便器本体の左右方向に広がっており、
前記空間の下面を形成する下壁部は、後端部において前記左右方向の外側に向けて下がる傾斜部を有している、水洗式便器。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記左右方向の中央部から前記左右方向の外側に向かって下がる傾斜をなしている、請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記空間と連続し、前記便鉢部に向けて洗浄水を吐水する吐水口は、前記便鉢部の後面の左右両側のうち少なくとも一方の側に形成されている、請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記空間の上方に取り付けられる機能部を備え、
前記機能部の下面は、前記空間に水を排出する排水口を有し、
前記下壁部は、前記排水口の下方に位置する突起部を有している、請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記傾斜部は、少なくとも前記突起部より前記便器本体の左右方向中心側に設けられている、請求項4に記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗式便器における便器本体の後部には、空間が形成されている。例えば下記特許文献1に記載された水洗式便器において、便鉢部を洗浄する洗浄水は、便器本体の後部に形成された空間を通って便鉢部に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水洗式便器において、便器本体の後部に形成された空間の下面に水を留まりにくくしたい、という要望があった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、便器本体の後部に形成された空間の下面に水を留まりにくくできる水洗式便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水洗式便器は、便鉢部と、前記便鉢部の後方に空間を形成する壁部と、を有する便器本体を備え、前記空間は、前記便器本体の左右方向に広がっており、前記空間の下面を形成する下壁部は、後端部において前記左右方向の外側に向けて下がる傾斜部を有しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】機能部を取り外した状態の水洗式便器を示す平面図
【
図3】機能部を取り外した状態の水洗式便器を示す断面図であって、
図2のA-A位置における断面に相当する断面図
【
図4】機能部を取り外した状態の水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、
図2のB-B位置における断面に相当する断面図
【
図5】機能部を取り外した状態の水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、
図2のC-C位置における断面に相当する断面図
【
図7】機能部を取り外した状態の水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、
図2のD-D位置における断面に相当する断面図
【
図8】水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、
図2のE-E位置における断面に相当する断面図
【
図9】水洗式便器を示す一部拡大断面図であって、
図2のF-F位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
水洗式便器10は、
図1に示すように、便器本体20及び機能部83を備えている。機能部83は、便器本体20の上方に取り付けられている。水洗式便器10は、トイレルームの床面に設置される。便器本体20は、
図2及び
図3に示すように、便鉢部21、トラップ部22及び壁部23を有している。壁部23は、便鉢部21の後方に空間40を形成している。便鉢部21、トラップ部22及び壁部23は、陶器製である。
【0009】
以下、各構成部材において、便鉢部21が設けられている側を前側、機能部83が取り付けられている側を後側、トイレルームの床面に設置した状態における床面側を下側、その反対側を上側、水洗式便器10を前側から見て右側を右側、左側を左側とする。各図において、X軸の正方向側は右側、X軸の負方向側は左側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は前側、Z軸の負方向側は後側を示す。Y軸は、鉛直方向に延びている。
【0010】
便鉢部21は、
図3に示すように、上方に開口している。便鉢部21は、便器本体20の前部に設けられている。便鉢部21は、立面部24、鉢面部25及び溜水部26を備えている。立面部24及び鉢面部25は、環状に連続している。立面部24は、便鉢部21の上端部に設けられている。立面部24は、鉛直に近い角度で立っている。鉢面部25は、立面部24の下側に繋がっている。鉢面部25は、溜水部26に向けて下り勾配で傾斜している。溜水部26は、鉢面部25の下側に繋がっている。溜水部26の底部の後方領域には、トラップ部22の入口が形成されている。トラップ部22は、便鉢部21の下流側に形成されている。トラップ部22は、便鉢部21から汚物を排出するための排水路を構成する。
【0011】
壁部23は、
図2に示すように、上面部28、前壁部29、下壁部31、左右の側壁部32、左右の内壁部45及び後壁部33を有している。空間40は、開口部41と閉塞部42A,42Bとを有している。開口部41の上面は、開放されている。開口部41は、便器本体20の後部において左右方向に広がっている。開口部41の左右方向の寸法は、開口部41の前後方向の寸法よりも大きい。開口部41は、前壁部29と後壁部33と左右の側壁部32とによって囲まれている。
【0012】
閉塞部42A,42Bは、開口部41よりも前側に形成されている。閉塞部42A,42Bは、左右に一対設けられている。左右の閉塞部42A,42Bはそれぞれ、開口部41の左右両端部から前方に延びている。閉塞部42A,42Bは、前後方向に細長い空間である。閉塞部42A,42Bの上面は、上面部28によって閉塞されている。各閉塞部42A,42Bは、後述する吐水口27A,27Bに連続している。
【0013】
上面部28は、便鉢部21の上端から開口部41の前端まで広がっている。上面部28には、取付穴34及び固定穴35が設けられている。取付穴34及び固定穴35は、左右に一対ずつ設けられている。各取付穴34には、機能部83を固定するボルト等の固定具が挿通される。各固定穴35には、後述する第1リブ57が挿入される。
【0014】
前壁部29は、
図2に示すように、開口部41の前面を形成している。前壁部29は、左右の閉塞部42A,42Bの後端位置において、左右方向に延びている。前壁部29の左右両端と左右の側壁部32との間には、開口部41から閉塞部42A,42Bへの入り口36が形成されている。左右の側壁部32は、上面部28の左右両端から略鉛直に垂下している。左右の側壁部32は、開口部41から閉塞部42A,42Bまで延びている。左右の内壁部45は、閉塞部42A,42Bを形成している。左右の内壁部45は、前壁部29の左右両端部から前方に延びている。下壁部31は、空間40の下面を形成している(
図7参照)。下壁部31については後ほど詳しく説明する。
【0015】
吐水口27A,27Bは、
図4に示すように、立面部24の後側領域に形成されている。吐水口27A,27Bは、便器本体20の左右方向中心を基準に左側と右側とに一ずつ設けられている。左側の吐水口27Aは、前方を向いている。左側の吐水口27Aは、Z軸に平行な前側からみると、横長の形状である。右側の吐水口27Bは、左方を向いている。右側の吐水口27Bは、Z軸に平行な前側から見ると縦長の形状である。吐水口27A,27Bから便鉢部21に吐水された洗浄水は、平面視において反時計回りで旋回する。
【0016】
便鉢部21を洗浄する洗浄水は、空間40に配置された通水部材50を通って吐水口27A,27Bから便鉢部21に流入する。通水部材50は、
図2に示すように、洗浄水の流入口51と洗浄水の流出口52とを有している。流入口51は、第1管部53の上端に形成されている。第1管部53は、上下方向に延びている。第1管部53は、機能部83の洗浄タンクに接続される。
【0017】
流出口52は、2本の第2管部54A,54Bの前端部にそれぞれ設けられている。第2管部54A,54Bは、第1管部53の下流側に連続している。第2管部54A,54Bは、前後方向に延びている。第1管部53と左右の第2管部54A,54Bとは、樹脂材料によって一体に形成されている。第2管部54A,54Bは、屈曲管部55と直管部56とを有している。屈曲管部55は、蛇腹形状をなし、屈曲しやすい。屈曲管部55は、後述する左右の突起部39の後側から左右の突起部39の左右両外側に屈曲している。直管部56は、閉塞部42A,42Bに挿入されている。左右の流出口52はそれぞれ、吐水口27A,27Bの近傍に位置している。流出口52は、固定穴35よりも下流側に配置されている。
【0018】
直管部56の上面には、
図5に示すように、第1リブ57及び第2リブ58が設けられている。第1リブ57は、固定穴35に挿入される。これによって、通水部材50は、空間40の所定位置に固定される。第2リブ58は、入り口36の上面部28に当たることによって、通水部材50の前方への移動を制限する。
【0019】
機能部83は、各種機能部品(図示せず)とケーシング84とを備えている(
図1参照)。各種機能部品は、洗浄タンク、局部洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置、便器洗浄装置、便座・便蓋開閉装置、人体検知装置及びこれらを制御する制御装置等である。機能部品は、ケーシング84に収容されている。
【0020】
ケーシング84は合成樹脂製である。ケーシング84は、便器本体20の後部に取り付け固定されている。ケーシング84には、便座85及び便蓋86が開閉自在に取り付けられている。ケーシング84は、
図6に示すように、機能部83の下面を形成するベース部87を有している。ベース部87は、便器本体20の上面部28に固定具によって固定されている。
【0021】
ベース部87には、
図6に示すように、接続口88及び排水口89が設けられている。接続口88及び排水口89はそれぞれベース部87を上下方向に貫通している。接続口88には、通水部材50の第1管部53が挿入される。排水口89は、接続口88の前側に左右一対設けられている。排水口89は、接続口88よりも小さい穴である。左右の排水口89は、便器本体20の左右方向中心を基準に左右対称である。各排水口89は、下側から見ると、多角形状をなしている。左右の排水口89は、溜水部26に封水を完成させるための補給水や局部洗浄装置の給水路の途中から排水される初期冷水などの水を下方に落下させる。
【0022】
下壁部31は、
図7に示すように、左右方向の中央部44から左右方向の両外側に向けて下がる第1傾斜部37を有している。第1傾斜部37は、中央部44の左右両側に設けられている。第1傾斜部37は、便器本体20の左右方向中心を基準に左右対称である。左右の第1傾斜部37は、同一勾配で下っている。第1傾斜部37は、開口部41の前端から後端まで形成されている(
図2参照)。
【0023】
中央部44の後部は、
図7に示すように、第1管部53を支持している。中央部44の後部は、第1管部53の真下の位置において水平に近い。第1管部53より前側にある中央部44の前部は、
図2及び
図4に示すように、左右の第1傾斜部37の頂点によって形成されている。言い換えると、左右の第1傾斜部37の上端同士は、中央部44の前部において交わっている。
【0024】
下壁部31は、
図5に示すように、後側から前側に向けて下がる第2傾斜部38を有している。第2傾斜部38は、開口部41の後端縁から左右の吐水口27A,27Bまで形成されている。
【0025】
下壁部31には、
図8に示すように、2つの突起部39が設けられている。2つの突起部39は、便器本体20の左右方向中心を基準に右側と左側とに一ずつ配置されている。2つの突起部39の間には、第1傾斜部37及び第2傾斜部38が形成されている。各突起部39は、正面側から見ると三角形状をなしている(
図4参照)。各突起部39の左右の側面は、突起部39の上端に向かって互いに接近し、突起部39の上端81において連続している。
【0026】
左右の突起部39は、
図8及び
図9に示すように、左右の排水口89の下方に位置している。上方から見た平面視において、各排水口89の外形はそれぞれの真下に位置する突起部39の外形よりも小さい。これによって、各排水口89からの排水を確実に突起部39に当たりやすくできる。
図8及び
図9では、通水部材50を省略している。
【0027】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。水洗式便器10は、便器本体20を備えている。便器本体20は、便鉢部21と、壁部23と、を有している。壁部23は、便鉢部21の後方に空間40を形成している。空間40は、便器本体20において左右方向に広がっている。空間40の下面を形成する下壁部31は、後端部において左右方向の外側に向けて下がる第1傾斜部37を有している。この構成によれば、空間40の後端部に入り込んだ水は、下壁部31の第1傾斜部37によって左右方向の外側に流下しやすい。したがって、便器本体20の後部に形成された空間40の下面に水を留まりにくくできる。
【0028】
第1傾斜部37は、左右方向の中央部44から左右方向の外側に向かって下がる傾斜をなしている。この構成によれば、空間40の後端部に入り込んだ水は、下壁部31の第1傾斜部37によって、左右方向の中央部44から左右方向の両外側に流下しやすい。したがって、便器本体20の後部に形成された空間40の下面の左右方向中央領域に水を留まりにくくできる。
【0029】
吐水口27A,27Bは、便鉢部21の後面の左右両側に形成されている。吐水口27A,27Bは、空間40と連続し、便鉢部21に向けて洗浄水を吐水する。この構成によれば、空間40の後端部に入り込んだ水は、下壁部31の第1傾斜部37によって左右両側に形成された吐水口27A,27Bに向かって流れやすいから、空間40の下面に水を留まりにくくできる。
【0030】
水洗式便器10は、機能部83を備えている。機能部83は、空間40の上方に取り付けられている。機能部83の下面を構成するベース部87は、排水口89を有している。排水口89は、空間40に水を排出する。下壁部31は、排水口89の下方に位置する突起部39を有している。この構成によれば、排水口89から落ちた水は突起部39にあたる。ここで、仮に空間の下面に水が溜まっている場合、排水口から落ちた水が空間の下面に溜まっている水に直接当たると水の跳ね返りが生じやすい。水の跳ね返りが生じると、壁部23や機能部83の下面に水が飛んで付着し、カビやぬめりを生じる虞がある。しかしながら、水洗式便器10によれば、排水口89から落ちた水は突起部39に当たるから、仮に空間の下面に水が溜まっていても、水の跳ね返りが生じにくい。したがって、壁部23や機能部83の下面にカビ等を生じにくくできる。
【0031】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において吐水口27A,27Bは、便器本体20の左右方向中心を基準に左側と右側とに一ずつ設けられている。これに限らず、吐水口の位置や、数、形状等は適宜変更しても良い。
(2)上記実施形態では、空間40に通水部材50を配置する場合を例示した。これに限らず、空間に通水部材を配置しなくてもよい。言い換えると、洗浄水は、空間を直接流れてもよい。
(3)上記実施形態において空間40の具体的な形態を例示した。これに限らず、空間の形態は変更しても良い。
(4)上記実施形態において第1傾斜部37は、左右方向の中央部44から左右方向の両端に向けて下がる。これに限らず、第1傾斜部は、左右方向の一端側から他端側に向かって下がるものであってもよい。
(5)上記実施形態において排水口89は左右一対設けられている。これに限らず、排水口の位置や個数は変更してもよい。
(6)上記実施形態において下壁部31は突起部39を有している。これに限らず、必ずしも突起部を設けなくても良い。
(7)上記実施形態において突起部39の形状を例示した。これに限らず、突起部の形状は変更してもよい。
(8)上記実施形態において突起部39は左右に一対設けられ、第1傾斜部37は左右の突起部39の間に設けられている。これに限らず、突起部は、左右のうちいずれか一方のみに設けてもよく、この場合、第1傾斜部は、突起部より便器本体の左右方向中心側に設けるとよい。
【符号の説明】
【0032】
10…水洗式便器、20…便器本体、21…便鉢部、27A,27B…吐水口、23…壁部、31…下壁部、37…第1傾斜部(傾斜部)、39…突起部、40…空間、44…中央部、83…機能部、89…排水口