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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051660
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】計測装置、計測システム及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01F1/684 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157943
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(71)【出願人】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 一司
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA01
2F035EA02
(57)【要約】
【課題】配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を測定できる計測装置、計測システム及び計測方法を提供する。
【解決手段】計測装置は、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、配管の流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部と、温度情報に基づいて、配管の壁部の外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部と、温度分布算出部が算出した温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部と、熱伝達率算出部が算出した熱伝達率に基づいて、流体の流速を算出する流速算出部と、流速算出部により算出された流速を示す情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部と、
前記温度分布算出部が算出した前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部と、
前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する流速算出部と、
前記流速算出部により算出された前記流速を示す情報を出力する出力部と
を備える、計測装置。
【請求項2】
前記加熱装置に印加された電力情報を取得する電力情報取得部と、
前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、前記電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部と
をさらに備え、
前記流速算出部は、前記判定部が、前記熱伝達率が前記条件を満たすと判定した場合に前記熱伝達率に基づいて前記流体の流速を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記加熱装置に印加される電力情報を取得する電力情報取得部と、
前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、前記電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部と
をさらに備え、
前記温度分布算出部は、前記判定部が、前記熱伝達率が前記条件を満たさないと判定した場合に前記温度分布を再算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記配管の前記壁部の前記外側表面の前記温度情報をTw,out、前記配管の流体が流れる上流側における地点の温度をTin、前記配管の配管軸方向の位置をz、定数をA,βとした場合に、式(I)が成立し、
Tw,out=A´×exp(βz)+Tin (I)
前記温度分布算出部は、式(I)から前記温度Tin,定数A´,定数βを算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
管内の熱伝達率をα、第1種ベッセル関数をJ0、第2種ベッセル関数をY0、配管の内径をri、配管の外径とr0とした場合に、式(II)が成立し、
α=k×(J0(βri)´×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)´)/(J0(βri)×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)) (II)
前記熱伝達率算出部は、式(II)から前記管内の前記熱伝達率αを算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
流速をu、ヌッセルト数をNu、流体の密度をρ、粘性係数(粘度)をμ、プラントル数をPr、配管の内径をdi、ビオ数をBi、定数をE、G、H、Jとした場合に、式(III)が成立し、
u=(Nu/E×Pr^G×Bi^H)^(1/J)×(μ/ρ×di) (III)
前記流速算出部は、式(III)から前記流体の流速を算出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記加熱装置に印加される電力をP、管内の熱伝達率をα、配管の内径をdi、配管の外径とd0、定数をA´,L,M,β,kとした場合に、式(IVD)が成立し、
(P/2)×{L+M×α(d0-di)/2k}=A´×α×π×di/β (IV)
前記判定部は、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、式(IV)を満たすか否かを判定する、請求項2に記載の計測装置。
【請求項8】
流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部と、
前記温度分布算出部が算出した前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部と、
前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する流速算出部と、
前記流速算出部により算出された前記流速を示す情報を出力する出力部と
を備える、計測システム。
【請求項9】
計測装置が実行する計測方法であって、
流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得するステップと、
前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出するステップと、
前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出するステップと、
前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出するステップと、
算出された前記流速を示す情報を出力するステップと
を有する、計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測システム及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を、短時間で測定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、配管の径、材質毎に用意された変換係数のテーブルに基づいて温度分布から流量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-179383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術は、配管の種類毎の変換係数を決めるために事前のCFD(Computational Fluid Dynamics)解析が必要であり、計測する流体の配管情報が必要であった。経年火力発電所では、配管の設計値データが残存していないこともあり、計測不可となるケースもあった。
【0005】
本発明の目的は、配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を測定できる計測装置、計測システム及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る計測装置は、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部と、前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部と、前記温度分布算出部が算出した前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部と、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する流速算出部と、前記流速算出部により算出された前記流速を示す情報を出力する出力部とを備える、計測装置である。
【0007】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記加熱装置に印加された電力情報を取得する電力情報取得部と、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、前記電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部とをさらに備え、前記流速算出部は、前記判定部が、前記熱伝達率が前記条件を満たすと判定した場合に前記熱伝達率に基づいて前記流体の流速を算出する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記加熱装置に印加される電力情報を取得する電力情報取得部と、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、前記電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部とをさらに備え、前記温度情報取得部は、前記判定部が、前記熱伝達率が前記条件を満たさないと判定した場合に前記温度分布算出部は前記温度分布を再算出する。
【0009】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度情報をTw,out、前記配管の流体が流れる上流側における地点の温度をTin、前記配管の配管軸方向の位置をz、定数をA´,βとした場合に、式(I)が成立し、
Tw,out=A´×exp(βz)+Tin (I)
前記温度分布算出部は、式(I)から前記温度Tin、定数A´,定数βを算出することによって、算出された前記温度Tin、前記定数A´、前記定数βに基づく式(I)の右辺で表される温度分布を算出する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、管内の熱伝達率をα、第1種ベッセル関数をJ0、第2種ベッセル関数をY0、配管の内径をri、配管の外径とr0とした場合に、式(II)が成立し、
α=k×(J0(βri)´×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)´)/(J0(βri)×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)) (II)
前記熱伝達率算出部は、式(II)から前記管内の前記熱伝達率αを算出する。
【0011】
また、本発明の一態様に係る計測装置において、流速をu、ヌッセルト数をNu、流体の密度をρ、粘性係数(粘度)をμ、プラントル数をPr、配管の内径をdi、ビオ数をBi、定数をE、G、H、Jとした場合に、式(III)が成立し、
u=(Nu/E×Pr^G×Bi^H)^(1/J)×(μ/ρ×di) (III)
前記流速算出部は、式(III)から前記流体の流速を算出する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る計測装置は、前記加熱装置に印加される電力をP、管内の熱伝達率をα、配管の内径をdi、配管の外径をd0、配管の熱伝導率をk,定数をA´,L,M,βとした場合に、式(IV)が成立し、
(P/2)×{L+M×α(d0-di)/2k}=A´×α×π×di/β (IV)
前記判定部は、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率が、式(IV)を満たすか否かを判定する。
【0013】
また、本発明の一態様に係る計測システムは、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部と、前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部と、前記温度分布算出部が算出した前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部と、前記熱伝達率算出部が算出した前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出する流速算出部と、前記流速算出部により算出された前記流速を示す情報を出力する出力部とを備える、計測システムである。
【0014】
また、本発明の一態様に係る計測方法は、計測装置が実行する計測方法であって、流体が流れる配管の壁部の外側表面の温度であって、前記配管の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、前記配管の前記流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得するステップと、前記温度情報に基づいて、前記配管の前記壁部の前記外側表面の温度分布を算出するステップと、前記温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出するステップと、前記熱伝達率に基づいて、前記流体の流速を算出するステップと、算出された前記流速を示す情報を出力するステップとを有する、計測方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管を破壊せずに配管の外部から、配管の内部を流れる流体の流速を測定できる計測装置、計測システム及び計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る計測システム1の一例を示す図である。
図2】ヒータ法による温度測定方法を説明するための図である。
図3】配管30と配管30の内部を流れる流体Fの一例を示す模式図である。
図4】管外表面温度分布の一例を示す図である。
図5】配管30の上流側と下流側における、局所熱伝達率αと一様加熱における熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeについて説明するための図である。
図6】本実施形態に係る計測装置100の機能構成の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る計測システム1の動作の一例を示すフロー図である。
図8】実施形態の変形例に係る計測装置100aの機能構成の一例を示す図である。
図9】実施形態の変形例に係る計測システム1aの動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る計測装置、計測システム及び計測方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0018】
(実施形態)
(計測システム1]
図1は、本実施形態に係る計測システム1の一例を示す図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る計測システム1の一例について説明する。
【0019】
計測システム1は、温度測定装置20と、リングヒータ40と、加熱制御装置41と、計測装置100とを含んで構成される。図1には、計測システム1に加えて、配管30が描かれている。配管30は、外側表面31と、壁部32とを含む。
【0020】
計測システム1は、配管30の内部を流れる流体Fの流速を、配管30の外側から計測する。本実施形態における流体Fとは、液体、気体及び粉体等を広く含む。流体Fとは、例えば、水や液体窒素等の液体、ガスや蒸気等の気体、セメントやポリエチレン等の粉体であってもよい。以下、一例として、流体Fが、液体及び気体である場合について説明を続ける。流体Fは、配管30の上流から下流へ流れる。
【0021】
加熱制御装置41は、リングヒータ40を介して配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する。リングヒータ40は、リング状のヒータを含んで構成される加熱装置である。リングヒータ40は、配管30の壁部32の外側表面31に巻回して設置される。
【0022】
加熱制御装置41が、リングヒータ40を介して配管30及び、配管30の内側を流れる流体Fに与えた加熱量をヒータ加熱量Qと記載する。リングヒータ40は、加熱制御装置41が出力した制御信号に基づき、リングヒータ40に電力Pを印加することによって配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱する。例えば、加熱制御装置41は、計測装置100が出力した制御信号に基づいてリングヒータ40に電力Pを印加する。
【0023】
温度測定装置20は、配管30の壁部32の外側表面31の温度Tw,outを配管軸方向の異なる3点以上の位置で測定する。例えば、温度測定装置20は、配管30の壁部32の外側表面31における地点Pの温度Tw,outを測定する。地点Pは、配管30の管軸方向において、リングヒータ40よりも、流体Fが流れる上流側の地点で、軸方向の異なる位置に3点設定する。地点Pは、流体Fが流れる上流側の地点である。温度測定装置20の一例は、熱電対等である。
【0024】
計測装置100は、温度測定装置20から地点Pの温度情報Tw,outを取得する。
計測装置100は、取得した地点Pの温度情報Tw,outに基づき、流体Fの流速uを算出する。計測装置100は、算出した流速uを示す情報を出力する。
【0025】
図2は、ヒータ法による温度測定方法を説明するための図である。同図を参照しながら、ヒータ法による温度測定方法について説明する。
図2(A)は、配管30内を流れる流体Fの流速uが第1速度である場合でのリングヒータ40から配管30内を流れる流体Fへの熱の流れ等を示す。図2(B)は、配管30内を流れる流体Fの流速uが第1速度である場合での配管30の壁部32の外側表面31の温度分布を示す図である。
【0026】
図2(C)は、配管30内を流れる流体Fの流速uが第2速度である場合でのリングヒータ40から配管30内を流れる流体Fへの熱の流れ等を示す。ここで、第2速度は、第1速度に比べて流速が低い。図2(D)は、配管30内を流れる流体Fの流速が第2速度である場合での配管30の壁部32の外側表面31の温度分布を示す。
【0027】
図2(B)及び図2(D)において、横軸は配管Aの管軸方向の位置を示し、縦軸は温度を示している。図2(A)の左右方向の位置と図2(B)の横軸上の位置とが対応し、図2(C)の左右方向の位置と図2(D)の横軸上の位置とが対応している。
図2(B)の極大値は、配管30内を流れる流体Fの流速uが第1速度である場合のリングヒータ40の温度を示している。図2(D)の極大値は、配管30内を流れる流体Fの流速uが第2速度である場合のリングヒータ40の温度を示している。
【0028】
図2(A)に示すように、配管30内を流れる流体Fの流速が大きい場合、管内熱伝達が増加し、配管30の壁部32の管軸方向へ伝導する熱量が減少する。一方、図2(C)に示すように、配管30内を流れる流体Fの流速が小さい場合、管内熱伝達が減少し、配管30の壁部32の管軸方向へ伝導する熱量が増加する。
【0029】
このため、図2(B)及び図2(D)に示すように、配管30内の流速uが大きい場合のリングヒータ40の温度(図2(B)の極大値)は、配管30内の流速uが小さい場合のリングヒータ40の温度(図2(D)の極大値)よりも低くなる。
【0030】
配管30内の流速が大きい場合、図2(B)に示すように、配管30の壁部32の外側表面31に極大値温度が低く、幅が小さい温度分布が生じる。一方、配管30内の流速が小さい場合、図2(D)に示すように、配管30の壁部32の外側表面31に極大値温度が高く、幅が大きい温度分布が生じる。
【0031】
図3は、配管30と配管30の内部を流れる流体Fの一例を示す模式図である。図3において、横軸は管軸方向の位置zであり、縦軸は管軸方向に垂直な方向の位置rである。外気の温度Tairは一定とする。配管30において、内径をdiとし、外径をdoとする。配管30の壁部32において、外側表面31の温度をTw,outとし、内側表面の温度をTw,inとする。流体Fの温度をTb(=Tin)とする。
【0032】
配管30の管材内(円筒である場合)の熱伝導方程式は、式(1)によって表される。
【数1】
式(1)を解くことによって管内温度分布はベッセル関数を用いて式(2)によって表される。
T=(C・Jo(βr)+D・Yo(βr))(Aexp(βz)+Bexp(-βz))+To (2)
式(2)において、Tは壁部温度であり、Jo(cr)(cは定数)は0次の第1種ベッセル関数であり、Yo(cr)は0次の第2種ベッセル関数であり、A、B、C、D、βは定数である。ベッセル関数とは、同心円状・同球円状に広がる波のように軸対象又は点対称の系を取り扱うときに、半径方向の波に振動パターンとして現れる関数である。
【0033】
(境界条件(1))
リングヒータ40から上流側に遠く離れた位置では加熱の影響を受けず、管内温度のz方向の勾配は0となる。つまり、式(3)が成り立つ。
【数2】
境界条件(1)より、管外表面温度分布Tw、out(r=ro)は、式(2´)で表される。T(z=-∞)は入口温度Tinである。
Tw、out=(C・Jo(βro)+D・Yo(βro))・Aexp(βz)+T(z=-∞) (2´)
式(2´)において、「(C・Jo(βro)+D・Yo(βro))・A」は、zによらないため、定数A´とする。つまり、式(2´)は、式(4)のように表される。
Tw、out=A´exp(βz)+Tin (4)
【0034】
図4は、管外表面温度分布の一例を示す図である。図4において、横軸は管軸方向距離zであり、縦軸は管外表面温度Tw、out (K)である。図4によれば、リングヒータ40が備えられた地点で管外表面温度は極大となり、その地点から離れるにしたがって管外表面温度は減少する。
【0035】
(境界条件(2))
管外では、断熱される。r=r0(r0は管外半径)において、式(5)が成り立つ。
【数3】
【0036】
(境界条件(3))
図5は、配管30の上流側と下流側における、局所熱伝達率αと一様加熱における熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeについて説明するための図である。図5において、横軸は配管30の管軸方向の位置zを示し、縦軸局所熱伝達率αと一様熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeを示す。図5には、流速u(m/s)又は流体圧力P(kPa)をそれぞれ変化させた場合の結果を示す。
【0037】
z=0の地点にリングヒータ40が設置される。図5によれば、リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける上流側(すなわち、z<0)では、局所熱伝達率αと一様加熱における熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeは、zの変化に対して一定である。これは,局所熱伝達率αがzの変化に対して一定であることを表す.また、リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける下流側(すなわち、z>0)では、局所熱伝達率αと一様加熱における熱伝達率αdeとの熱伝達率比α/αdeは、zの変化に対して一定でない。これは、局所熱伝達率αがzの変化に対して一定でないことを表す.
【0038】
つまり、リングヒータ40が設置された地点より流体Fの流れにおける上流側(すなわち、z<0)では、熱伝達率がzの変化に対して一定となる。熱伝達率が一定となることは、熱伝導(配管内の伝熱)と対流熱伝達(配管から流体への伝熱)を組み合わせた数値流体解析により、新たに分かったことである。
以下、上流側では、流体温度の上昇は小さく、温度Tinで一定であると仮定する。
【0039】
r=ri(riは管内半径)において、式(6)が成り立つ。
【数4】
式(6)において、kは管材の熱伝導率である。
【0040】
境界条件(2)及び境界条件(3)より、管内熱伝達率αは、管材の熱伝導率kと寸法、定数βを用いて、式(7)のように表される。
α=k×(J0(βri)´・Y0(βr0)´-J0(βr0)´・Y0(βri)´)/(J0(βri)・Y0(βr0)´-J0(βr0)´・Y0(βri)) (7)
熱伝達率αが一定の区間では、定数βも一定となることから、管壁温度Tw,outの測定値から定数βを求め、定数βから、熱伝達率αを算出できる。
【0041】
計測システム1は、温度測定装置20から温度情報である温度Tw、outを取得する。
計測システム1は、温度Tw、outを示す情報に基づいて、式(4)に示される温度Tinと定数β、定数A´とを算出する。
計測システム1は、定数βの算出結果に基づいて、式(7)から熱伝達率αを導出する。
【0042】
計測システム1は、熱伝達率αの算出結果を使用して、式(8)から流速uを計算する。
u=(Nu/E×Pr^G×Bi^H)^(1/J)×(μ/ρ×di) (8)
式(8)において、Nuはヌッセルト数であり、ρは流体の密度であり、μは粘性係数(粘度)、Prはプラントル数であり、Biはビオ数であり、E、G、H及びJは定数である。定数Eの一例は0.223であり、定数Gの一例は0.27であり、定数Hの一例は0.02であり、定数Jの一例は0.831である。以下、定数Eが0.223であり、定数Gが0.27であり、定数Hが0.02であり、定数Jが0.831である場合について説明を続ける。
計測システム1は、流速uの計算結果を示す情報を出力する。
【0043】
[計測装置100]
図6は、実施形態に係る計測装置100の機能構成の一例を示す図である。計測装置100は、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。計測装置100は、温度情報取得部102と、温度分布算出部104と、熱伝達率算出部106と、流速算出部108と、出力部110と、加熱装置制御部112と、記憶部114とを備える。
【0044】
記憶部114は、HDDやフラッシュメモリ、RAM、ROMなどにより実現される。記憶部114は、前述した式(4)、式(7)、式(8)などを記憶する。
温度情報取得部102は、流体Fが流れる配管30の壁部32の外側表面31の温度情報を、入出力IF(インターフェイス)(図示なし)を介して温度測定装置20から取得する。温度情報取得部102は、取得した温度情報に該当する温度を温度Tw、outとする。
【0045】
温度分布算出部104は、温度情報取得部102から温度Tw、outを示す情報を取得する。温度分布算出部104は、記憶部114から式(4)を取得する。温度分布算出部104は、取得した温度Tw、outを示す情報に基づいて、取得した式(4)に示される温度Tinと定数β,定数A´とを算出する。例えば、温度分布算出部104は、最小二乗法によって、温度Tinと定数β,定数A´とを算出する。
【0046】
熱伝達率算出部106は、温度分布算出部104から定数βを取得する。熱伝達率算出部106は、記憶部114から式(7)を取得する。熱伝達率算出部106は、取得した定数βに基づいて、取得した式(7)から熱伝達率αを算出する。
【0047】
流速算出部108は、熱伝達率算出部106から熱伝達率αを示す情報を取得する。流速算出部108は、記憶部114から式(8)を取得する。流速算出部108は、取得した熱伝達率αを示す情報に基づいて、取得した式(8)から流速uを計算する。
【0048】
出力部110は、流速算出部108から流速uを示す情報を取得する。出力部110は、取得した流速uを示す情報を出力する。例えば、出力部110は、流速uを示す情報を音声で出力してもよいし、表示部(図示なし)に表示することによって出力してもよい。
【0049】
加熱装置制御部112は、リングヒータ40を加熱するための制御を行う。例えば、加熱装置制御部112は、入出力IFから加熱制御装置41に制御信号を出力することにより加熱制御装置41にリングヒータ40を加熱させる。
【0050】
(計測システム1の動作)
図7は、本実施形態に係る計測システム1の動作の一例を示すフロー図である。図7を参照して、計測システム1が、配管30内を流れる流体Fの流速uを算出し、算出した流速uを示す情報を出力する処理について説明する。
【0051】
(ステップS1-1)
加熱装置制御部112は、入出力IFから加熱制御装置41に制御信号を出力することにより加熱制御装置41にリングヒータ40に電力Pを印加させることによって、リングヒータ40を加熱する。
(ステップS2-1)
リングヒータ40が加熱されてから所定時間経過後、温度情報取得部102は、流体Fが流れる配管30の壁部32の外側表面31の温度情報を、温度測定装置20から入出力IFを介して取得し、温度情報に該当する温度を、温度Tw、outとする。
ここで、所定時間は、例えば、リングヒータ40の加熱による過渡状態の経過後、すなわち配管30の壁部32の外側表面31の温度が定常状態に変化するのに十分な時間である。
【0052】
(ステップS3-1)
温度分布算出部104は、温度情報取得部102から温度Tw、outを示す情報を取得する。温度分布算出部104は、記憶部114から式(4)を取得する。温度分布算出部104は、取得した温度Tw、outを示す情報に基づいて、取得した式(4)に示される温度Tinと定数β,定数A´とを算出する。
(ステップS4-1)
熱伝達率算出部106は、温度分布算出部104から定数βを取得する。熱伝達率算出部106は、記憶部114から式(7)を取得する。熱伝達率算出部106は、取得した定数βに基づいて、取得した式(7)から熱伝達率αを算出する。
【0053】
(ステップS5-1)
流速算出部108は、熱伝達率算出部106から熱伝達率αを示す情報を取得する。流速算出部108は、記憶部114から式(8)を取得する。流速算出部108は、取得した熱伝達率αを示す情報に基づいて、取得した式(8)から流速uを計算する。
(ステップS6-1)
出力部110は、流速算出部108から流速uを示す情報を取得する。出力部110は、取得した流速uを示す情報を出力する。
【0054】
前述した実施形態では、一例として、リングヒータ40が配管30と接触することにより配管30及び配管30の内部を流れる流体Fを加熱する場合について説明したが、この例に限定されない。
例えば、リングヒータ40の代わりに、不図示の加熱装置により配管30及び配管30の内部を流れる流体Fを加熱するよう構成してもよく、当該加熱装置は、例えば非接触で加熱する方法(レーザー光照射等)等により配管30及び、配管30の内部を流れる流体Fを加熱するように構成してもよい。
【0055】
前述した実施形態において、計測装置100は、流速uを示す情報を、記憶部114に記憶するようにしてもよいし、不図示のネットワークを介して接続された記憶部(図示なし)に記憶するようにしてもよい。この記憶部は、クラウド上の記憶部であってもよい。
【0056】
本実施形態に係る計測装置100によれば、計測装置100は、流体が流れる配管30の壁部の外側表面の温度であって、配管30の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、配管30の流体が流れる上流側における地点の温度情報を取得する温度情報取得部102と、温度情報に基づいて、配管30の壁部の外側表面の温度分布を算出する温度分布算出部104と、温度分布算出部104が算出した温度分布に基づいて管内の熱伝達率を算出する熱伝達率算出部106と、熱伝達率算出部106が算出した熱伝達率に基づいて、流体の流速uを算出する流速算出部108と、流速算出部108により算出された流速uを示す情報を出力する出力部110とを備える。
【0057】
このように構成することによって、計測装置100は、配管30の壁部の外側表面を加熱する加熱装置が備えられた地点よりも、配管30の流体が流れる上流側における地点の温度情報に基づいて配管30の内部を流れる流体の流速uを計算できるため、配管30を破壊せずに配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。
【0058】
従来、温度分布から流量を求める際に、配管の径、材質毎に変換係数のテーブルを用意するために、事前のCFD解析が必要であったが、本実施形態に係る計測装置100によれば、発電所の現場で、例えば、機器の劣化診断等のための管内流量を計測したいときに、事前のCFD解析無しに、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。例えば、石炭ミルのシール空気流量のバランス確認による劣化診断等、プラント稼働への影響が懸念される際に、早急な対応が可能である。
【0059】
計測装置100において、温度分布算出部104は、温度情報に基づいて、最小二乗法によって配管30の壁部の外側表面の温度分布を算出する。このように構成することによって、計測装置100は、温度情報に基づいて、最小二乗法によって配管30の壁部の外側表面の温度分布を算出できる。温度分布の算出結果に基づいて、配管30の内部を流れる流体の流速uを計算できるため、配管30を破壊せずに配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。
【0060】
計測装置100において、配管30の壁部の外側表面の温度情報をTw,out、配管30の流体が流れる上流側における地点の温度をTin、配管30の配管軸方向の位置をz、定数をA,βとした場合に、式(I)が成立し、
Tw,out=A´×exp(βz)+Tin (I)
温度分布算出部104は、式(I)から、例えば最小二乗法によって、温度Tin,定数A´,定数βを算出することによって、算出された温度Tin、定数A´、定数βに基づく式(I)の右辺で表される温度分布を算出する。
このように構成することによって、計測装置100は、温度Tin,定数A、定数βを算出できるため、配管30の壁部の外側表面の温度分布を算出できる。このため、計測装置100は、温度分布の算出結果に基づいて、配管30の内部を流れる流体の流速uを計算できるため、配管30を破壊せずに配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。
【0061】
計測装置100において、管内の熱伝達率をα、第1種ベッセル関数をJ0、第2種ベッセル関数をY0、配管の内径をri、配管の外径とr0とした場合に、式(II)が成立し、
α=k×(J0(βri)´×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)´)/(J0(βri)×Y0(βr0)´-J0(βr0)´×Y0(βri)) (II)
熱伝達率算出部106は、式(II)から管内の熱伝達率αを算出する。
このように構成することによって、計測装置100は、管内の熱伝達率αを算出できる。このため、計測装置100は、管内の熱伝達率αの算出結果に基づいて、配管30の内部を流れる流体の流速uを計算できるため、配管30を破壊せずに配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。
【0062】
計測装置100において、流速をu、ヌッセルト数をNu、流体の密度をρ、粘性係数(粘度)をμ、プラントル数をPr、配管の内径をdi、ビオ数をBi、定数をE、G、H、Jとした場合に、式(III)が成立し、
u=(Nu/E×Pr^G×Bi^H)^(1/J)×(μ/ρ×di) (III)
流速算出部108は、式(III)から流体の流速uを算出する。
このように構成することによって、計測装置100は、配管30を破壊せずに配管30の外部から、配管30の内部を流れる流体の流速uを測定できる。
【0063】
(実施形態の変形例)
(計測システム1a)
実施形態の変形例にかかる計測システム1aは、図1を適用できる。ただし、計測システム1aは、計測装置100の代わりに計測装置100aを備える点で、計測システム1とは異なる。計測装置100aは、計測装置100にリングヒータ40に印加されている電力Pの値と、各パラメータの関係式とが成立することを確認する機能を有する。
【0064】
[計測装置100a]
図8は、実施形態の変形例に係る計測装置100aの機能構成の一例を示す図である。計測装置100aは、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。計測装置100aは、温度情報取得部102と、電力情報取得部103と、温度分布算出部104と、熱伝達率算出部106と、判定部107と、流速算出部108と、出力部110と、加熱装置制御部112と、記憶部114とを備える。
【0065】
記憶部114は、前述した式(4)、式(7)、式(8)に加え、式(9)などを記憶する。
電力情報取得部103は、加熱制御装置41から入出力IFを介してリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得する。
判定部107は、温度分布算出部104から定数A´、定数βの算出結果を取得する。判定部107は、熱伝達率算出部106から熱伝達率αの算出結果を取得する。判定部107は、電力情報取得部103からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得する。判定部107は、取得した数A´、定数β、熱伝達率αの算出結果とリングヒータ40に印加されている電力Pの値とに基づいて、リングヒータに印加されている電力Pの値と各パラメータの関係式が成立することを確認する。
【0066】
具体的には、判定部107は、式(9)が所定の割合を満たすことを確認する。所定の割合の一例は、0.5%以内である。
(P/2)×{L+M×α(d0-di)/2k}=A´απdi/β (9)
式(9)において、L、Mは定数である。定数Lの一例は1.041であり、定数Mの一例は0.615である。以下、定数Lが1.041であり、定数Mが0.615である場合について説明を続ける。
【0067】
流速算出部108は、判定部107で式(9)が所定の割合を満たすことを確認できた場合に、熱伝達率算出部106から熱伝達率αを示す情報を取得する。流速算出部108は、取得した熱伝達率αを示す情報に基づいて、式(8)から流速uを計算する。
温度情報取得部102は、判定部107で式(9)が所定の割合を満たすことを確認できなかった場合に、温度分布を再算出する。例えば、温度分布算出部104は、温度Tinの値を少し変更して,新たな定数A´、定数βを最小二乗法で再算出するようにしてもよい。
【0068】
(計測システム1aの動作)
図9は、実施形態の変形例に係る計測システム1aの動作の一例を示すフロー図である。図9を参照して、計測システム1aが、配管30内を流れる流体Fの流速uを算出し、算出した流速uを示す情報を出力する処理について説明する。
(ステップS1-2)
加熱装置制御部112は、入出力IFから加熱制御装置41に制御信号を出力することにより加熱制御装置41にリングヒータ40に電力Pを印加させることによって、リングヒータ40を加熱する。
【0069】
(ステップS2-2)
リングヒータ40が加熱されてから所定時間経過後、電力情報取得部103は、加熱制御装置41からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得する。
所定時間とは、例えば、リングヒータ40の加熱による過渡状態の経過後、すなわち配管30の壁部32の外側表面31の温度が定常状態に変化するのに十分な時間である。
(ステップS3-2)
温度情報取得部102は、流体Fが流れる配管30の壁部32の外側表面31の温度情報を、温度測定装置20から入出力IFを介して取得し、温度情報に該当する温度を、温度Tw、outとする。
【0070】
(ステップS4-2)
温度分布算出部104は、温度情報取得部102から温度Tw、outを示す情報を取得する。温度分布算出部104は、記憶部114から式(4)を取得する。温度分布算出部104は、取得した温度Tw、outを示す情報に基づいて、取得した式(4)に示される温度Tinと定数β、定数A´とを算出する。
(ステップS5-2)
熱伝達率算出部106は、温度分布算出部104から定数βを取得する。熱伝達率算出部106は、記憶部114から式(7)を取得する。熱伝達率算出部106は、取得した定数βに基づいて、取得した式(7)から熱伝達率αを算出する。
【0071】
(ステップS6-2)
判定部107は、温度分布算出部104から定数βと定数A´とを取得する。判定部107は、熱伝達率算出部106から熱伝達率αの算出結果を取得する。判定部107は、電力情報取得部103からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得する。判定部107は、記憶部114から式(9)を取得する。
判定部107は、取得した定数βと定数A´と熱伝達率αの算出結果とリングヒータ40に印加されている電力Pの値と式(9)とに基づいて、リングヒータ40に印加されている電力Pの値と各パラメータの関係式が成立することを確認する。リングヒータ40に印加されている電力Pの値と各パラメータの関係式が成立することを確認できない場合には、ステップS4-2に戻る。
【0072】
(ステップS7-2)
流速算出部108は、リングヒータ40に印加されている電力Pの値と各パラメータの関係式が成立することを確認できた場合に熱伝達率算出部106から熱伝達率αを示す情報を取得する。流速算出部108は、記憶部114から式(8)を取得する。流速算出部108は、取得した熱伝達率αを示す情報に基づいて、取得した式(8)から流速uを計算する。
(ステップS8-2)
出力部110は、流速算出部108から流速uを示す情報を取得する。出力部110は、取得した流速uを示す情報を出力する。
【0073】
前述した実施形態の変形例においては、電力情報取得部103が、加熱制御装置41からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、電力情報取得部103が加熱装置制御部112からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得するように構成してもよい。このように構成することによって、計測装置100aは、計測装置100aの外部の加熱制御装置41からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得することなく、計測装置100aの内部でリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得できる。また、例えば、判定部107が加熱装置制御部112からリングヒータ40に印加されている電力Pの値を取得するように構成してもよい。このように構成することによって、電力情報取得部103を省略できる。
【0074】
実施形態の変形例に係る計測システム1aによれば、計測システム1において、加熱装置に印加された電力情報を取得する電力情報取得部103と、熱伝達率算出部106が算出した熱伝達率が、電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部107とをさらに備える。流速算出部108は、判定部107が、熱伝達率が条件を満たすと判定した場合に熱伝達率に基づいて流体の流速uを算出する。
このように構成することによって、計測装置100aは、熱伝達率αが、電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定できるため、条件を満たす場合に、流体の流速uを算出できる。このため、算出された流体の流速uの精度を向上できる。
【0075】
計測装置100aにおいて、加熱装置に印加される電力情報を取得する電力情報取得部103と、熱伝達率算出部106が算出した熱伝達率αが、電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定する判定部107とをさらに備える。温度分布算出部104は、判定部107が、熱伝達率αが条件を満たさないと判定した場合に温度Tinと定数β、定数A´とを再算出する。
このように構成することによって、計測装置100aは、熱伝達率αが、電力情報に基づく条件を満たさない場合に、配管30の流体が流れる上流側における温度分布を再算出するため、熱伝達率αを再計算できる。このため、算出された流体の流速uの精度を向上できる。
【0076】
計測装置100aにおいて、加熱装置に印加される電力をP、管内の熱伝達率をα、配管の内径をdi、配管の外径とd0、定数をA´,L,M,β,kとした場合に、式(IV)が成立し、
(P/2)×{L+M×α(d0-di)/2k}=A´×α×π×di/β (IV)
判定部107は、熱伝達率算出部106が算出した熱伝達率が、式(IV)を満たすか否かを判定する。
このように構成することによって、計測装置100aは、熱伝達率αが、電力情報に基づく条件を満たすか否かを判定できるため、条件を満たす場合に、流体の流速uを算出できる。このため、算出された流体の流速uの精度を向上できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【0078】
なお、上述した実施形態における計測装置100及び計測装置100aが備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0079】
1、1a…計測システム、 20…温度測定装置、 100、100a…計測装置、 20…温度測定装置、 30…配管、 31…外側表面、 32…壁部、 40…リングヒータ、 41…加熱制御装置、 102…温度情報取得部、 103…電力情報取得部、 104…温度分布算出部、 106…熱伝達率算出部、 107…判定部、 108…流速算出部、 110…出力部、 112…加熱装置制御部、 114…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9