(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005167
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】塗装装置及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 13/02 20060101AFI20240110BHJP
B05B 12/18 20180101ALI20240110BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240110BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240110BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20240110BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05B13/02
B05B12/18
B05D1/02 Z
B05D3/00 B
B05D3/04 Z
B05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105235
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】518004185
【氏名又は名称】株式会社サーフェステクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健康
(72)【発明者】
【氏名】森 清
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 周一
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DB03
4D073DB10
4D073DB29
4D073DB39
4D073DB43
4D075AA01
4D075AA32
4D075AA43
4D075AA71
4D075AA76
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC02
4D075DC05
4D075EA05
4F035AA03
4F035CA01
4F035CA04
4F035CD05
4F035CD11
(57)【要約】
【課題】本発明は、塗装対象たる壁面への塗装効率を向上させつつ周囲への塗料汚染を、より確実に防止することができる塗装装置を提供する。
【解決手段】本発明の塗装装置(1)は、塗装対象となる壁面(S)に沿って移動する台車(2)と、前記台車(2)に設けられて前記壁面(S)に塗装を施す塗料噴霧ノズル(3a)と、前記台車(2)に設けられて前記塗料噴霧ノズル(3a)から前記壁面(S)へと噴霧される塗料噴霧流の拡散を抑制する気流を発生させる気流発生機構(10)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象となる壁面に沿って移動する台車と、
前記台車に設けられて前記壁面に塗装を施す塗料噴霧ノズルと、
前記台車に設けられて前記塗料噴霧ノズルから前記壁面へと噴霧される塗料噴霧流の拡散を抑制する気流を発生させる気流発生機構と、
を備えることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記気流発生機構は、前記壁面側に向けて空気を噴射する空気噴射ノズルを備え、
前記空気噴射ノズルは、前記壁面に対向する側である塗装装置の正面視で、少なくとも前記塗料噴霧ノズルを中に挟んだ横方向の両側のそれぞれで縦方向に延びるスリット状の一対の縦長噴射口を有していることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記空気噴射ノズルは、前記壁面に対向する側である塗装装置の正面視で、前記塗料噴霧ノズルよりも上方で、前記一対の縦長噴射口同士の間の範囲内にて横方向に延びるスリット状の横長噴射口をさらに有していることを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記一対の縦長噴射口におけるそれぞれの空気噴射方向は、塗装装置を上方から見下ろした塗装装置の平面視で、前記一対の縦長噴射口のうち一方の縦長噴射口から前記壁面に向けて延びる垂線に対して当該縦長噴射口を中心にして他方の前記縦長噴射口側へと所定角度をなして開く方向に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記横長噴射口における空気噴射方向は、塗装装置の側面視で、前記横長噴射口から前記壁面に向けて延びる垂線に対して当該横長噴射口を中心にして下方側へと所定角度をなして開く方向に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の塗装装置。
【請求項6】
前記気流発生機構は、前記空気噴射ノズルに一端側が接続される第1配管と、
前記第1配管の他端側に接続されて、吸入口から導入した空気を前記空気噴射ノズルに供給する第1ポンプと、
第1配管の延在途中に一端側が接続される第2配管と、
前記第2配管の他端側に接続されて、前記空気噴射ノズルに補助的に空気を供給する第2ポンプと、
前記第1配管と前記第2配管との接続部の上流側で前記第1配管の延在途中に設けられる流量調整弁と、
をさらに有していることを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項7】
少なくとも前記塗料噴霧流の通流領域を囲むように配置される塗料の飛散防止カバーと、
前記飛散防止カバーの内側に連通するように一端側が前記飛散防止カバーに接続されるとともに、他端側が前記第1ポンプの前記吸入口に接続されている第3配管と、
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の塗装装置。
【請求項8】
塗装対象となる壁面に沿って台車を移動させる第1工程と、
前記台車に設けられた塗料噴霧ノズルから塗料を噴霧して前記壁面に塗装を施す第2工程と、
前記塗料噴霧ノズルから前記壁面へと噴霧される塗料噴霧流の拡散を抑制するように前記台車に設けられた気流発生機構から気流を発生させる第3工程と、
を有し、
前記第1工程と、前記第2工程と、前記第3工程とが、並行して行われることを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置及びこれを使用した塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吹付けノズルが上下方向に往復移動可能な吹付け装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような吹付け装置が壁面に対する塗装作業に用いられると、広範囲にわたる壁面塗装を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の吹付け装置(例えば、特許文献1参照)は、吹付けノズルが塗料を噴霧することによって、ミスト状の塗料微粒子が周囲に拡散し易くなる。そして、このような塗料微粒子が周囲に拡散すると、塗装対象たる壁面への塗装効率が低下することのみならず、拡散した塗料微粒子が周囲を汚染するという問題を生じることもある。
また、このような問題は、屋外にて風などの外乱がある状態で吹付け装置を使用した場合や、壁面に形成する塗膜の設計条件に応じて塗料成分を希薄化し、或いは塗料微粒子をさらに小径化した場合に、より顕著に現れることとなる。
【0005】
本発明の課題は、塗装対象たる壁面への塗装効率を向上させつつ周囲への塗料汚染を、より確実に防止することができる塗装装置及び塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した塗装装置は、塗装対象となる壁面に沿って移動する台車と、前記台車に設けられて前記壁面に塗装を施す塗料噴霧ノズルと、前記台車に設けられて前記塗料噴霧ノズルから前記壁面へと噴霧される塗料噴霧流の拡散を抑制する気流を発生させる気流発生機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決した塗装方法は、塗装対象となる壁面に沿って台車を移動させる第1工程と、前記台車に設けられた塗料噴霧ノズルから塗料を噴霧して前記壁面に塗装を施す第2工程と、前記塗料噴霧ノズルから前記壁面へと噴霧される塗料噴霧流の拡散を抑制するように前記台車に設けられた気流発生機構から気流を発生させる第3工程と、を有し、前記第1工程と、前記第2工程と、前記第3工程とが、ともに並行して行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗装装置及び塗装方法によれば、塗装対象たる壁面への塗装効率を向上させつつ周囲への塗料汚染をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の塗装装置における右側面図である。
【
図2】本発明の実施形態の塗装装置における平面図である。
【
図3】本発明の実施形態の塗装装置における正面図である。
【
図4】本発明の実施形態の塗装装置における気流発生機構の配管図である。
【
図5】気流発生機構の縦長噴射口から噴射された気流が、塗料噴霧ノズルから噴霧された塗料噴霧流の拡散を抑制する様子を示す模式図である。
【
図6】気流発生機構の横長噴射口から噴射された気流が、塗料噴霧ノズルから噴霧された塗料噴霧流の拡散を抑制する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の塗装装置及び塗装方法を実施するための形態(実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、例えば高速道路などの壁高欄に沿って移動しながら壁高欄の壁面に塗装を施す塗装装置及びこれを使用する塗装方法について説明するが、本発明の塗装装置及び塗装方法はこれに限定されるものではなく、後記するように壁面に対する塗装に広く使用することができる。
なお、以下の説明における塗装装置の前後左右上下の方向は、塗装対象となる壁面に対向する塗装装置の正面側を前側とし、塗装装置の背面側に立った操作者が壁面に対峙した際の右側を塗装装置の右側とし、鉛直方向の上側を塗装装置の上側とした
図1から
図3に矢示する前後左右上下の方向を基準とする。
【0011】
≪塗装装置≫
図1は、本実施形態の塗装装置1における右側面図である。
図2は、本実施形態の塗装装置1における平面図である。
図3は、本実施形態の塗装装置1における正面図である。
図1に示すように、塗装装置1は、台車2と、塗料噴霧機構4と、気流発生機構10と、飛散防止カバー14と、を主に備えて構成されている。
【0012】
<台車>
台車2は、
図1に示すように、台車本体21と、複数の車輪22と、塗料噴霧機構4などを支持する架台23と、スペーサ8と、を有している。
台車本体21は、板状部材を主体に平面視で矩形状に形成されている。なお、台車本体21を構成する材料や、台車本体21の形状は限定されるものではない。例えば、台車本体21は、平面視で矩形枠状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよいし、格子状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよい。
【0013】
本実施形態での車輪22は、
図1に示すように、壁高欄Wが設けられる道路Rを台車2が壁高欄Wの壁面Sに沿って走行可能なように、台車本体21に複数設けられている。具体的には、車輪22は、壁面Sを左右方向(
図1の紙面に垂直な方向)に転動可能なように台車本体21に取り付けられている。
本実施形態では、台車本体21の前後方向に所定の間隔を開けて並ぶ車輪22同士が車軸27で連結され、車軸27で連結された一対の車輪22が台車本体21の左右方向に所定の間隔を開けて複数対並ぶものを想定している。
【0014】
また、これらの複数対からなる車輪22のうち、少なくとも一対の車輪22は、これらの車輪22同士を連結する車軸27が、図示しない所定の減速機を介してモータ、内燃機関などの駆動源に連結されている。つまり、この少なくとも一対の車輪22は、駆動源によって回転する駆動輪となっている。
【0015】
また、これらの複数対からなる車輪22のうち、駆動輪を除く残りの対からなる車輪22は、従動輪を構成している。
なお、従動輪は、対からなる車輪22に限定されずに、道路Rに対して一つの車輪22が個別に転動可能なキャスタなどで構成することもできる。車輪22の数及び位置は、特に制限はなく、台車2の走行安定性を考慮して適宜に決定できる。
以上のような複数の車輪22によって、台車2は、予め設定された一定速度にて壁高欄Wの道路R側を壁高欄Wの壁面Sに沿って走行することとなる。
【0016】
なお、台車2は、手押し式あるいは牽引式とすることもできる。また、台車2の速度は限定されるものではなく、壁高欄Wの形状や、必要な塗装厚などに応じて適宜決定すればよい。また、台車2は、車輪式(タイヤ式)に限定されるものではなく、例えば、クローラ式であってもよい。また、台車2は、壁高欄Wに沿って敷設されたレール上を走行する構成とすることもできる。
【0017】
架台23は、台車本体21上に取り付けられる箱枠構造体にて構成されている。具体的には、架台23は、台車本体21上に立設される4本の脚部材24と、各脚部材24の上端部に平面視で矩形となるように4本の桟部材25が渡し架けられて接続された構造を有している。ただし、架台23は、これに限定されるものではなく、複数の脚部材24と桟部材25とを適宜に組み合わせた立体構造体であれば特に制限はない。
【0018】
スペーサ8は、
図1に示すように、壁高欄Wと台車2との距離を一定に保つように台車本体21上に取り付けられる棒状部材である。
図2に示すように、スペーサ8は、台車本体21の左右両側にそれぞれ設けられている。
スペーサ8は、台車本体21から壁高欄Wの壁面Sに向けて延びる棒状のスペーサ本体8aと、スペーサ本体8aの前端部に取り付けられて壁面S上を壁面Sの左右延在方向に沿って転動するローラ部8bと、を備えている。
なお、本実施形態でのスペーサ本体8aは、壁面Sに対して前後方向への進退が自在となるように台車本体21に取り付けられている。これにより台車2と壁面Sとの間の距離調節が可能となっている。
【0019】
<塗料噴霧機構>
塗料噴霧機構4は、
図1に示すように、塗料噴霧ノズル3aと、回動アーム3bと、塗料噴霧ノズル3aの駆動機構(図示を省略)と、を主に備えて構成されている。
なお、
図1は、飛散防止カバー14の内側に配置されることとなる塗料噴霧ノズル3aを視認可能なように、作図の便宜上、飛散防止カバー14の一部と、後記する第1配管P1の一部と、後記する第3配管P3の一部と、を部分的に切り欠いて表している。
【0020】
塗料噴霧ノズル3aは、図示は省略するが、ポンプによって塗料貯留タンクから配管を介して供給された塗料を壁高欄Wの壁面Sに向けて噴霧するように構成されている。このとき塗料噴霧ノズル3aは、壁面Sの縦方向(上下方向)に往復移動しながら壁面Sに塗装を施すようになっている。
具体的には、塗料噴霧ノズル3aは、架台23に一端側が軸支された回動アーム3bの他端側(回動端側)に取り付けられている。
【0021】
回動アーム3bは、駆動機構(図示を省略)によって軸受26回りに回動することで、回動端側に取り付けられた塗料噴霧ノズル3aを壁面Sの縦方向(上下方向)に往復移動させる。また、本実施形態での塗料噴霧ノズル3aは、回動アーム3bの回動端側に軸支されて、この軸支部回りに上下方向に回動可能となっているものを想定している。具体的には、塗料噴霧ノズル3aは、駆動機構(図示を省略)によって、回動アーム3bの回動端側で、上下方向に首振り動作が可能となっている。
【0022】
なお、本実施形態での前記の駆動機構(図示を省略)は、モータなどの回転電機と、回転電機の回転力を回動アーム3bの軸受26や、塗料噴霧ノズル3aの軸支部(図示を省略)に伝達する複数のプーリや、これらの複数のプーリに架け渡された無端ベルトなどで構成することができる。また、前記の駆動機構(図示を省略)は、回動アーム3bの軸受26や、塗料噴霧ノズル3aの軸支部(図示を省略)のそれぞれに独立に設けられた回転電機や減速機の組み合わせで構成することもできる。
また、塗料噴霧ノズル3aは、前記の回動式の構成に代えて、上下方向に延びるように設けられた摺動レールに沿って直動アクチュエータにて駆動されるリニア駆動形式の構成にすることもできる。
【0023】
<気流発生機構>
次に、気流発生機構10(
図1参照)について説明する。
図1に示すように、気流発生機構10は、空気噴射ノズル11と、第1配管P1を介して空気を空気噴射ノズル11に供給する第1ポンプ13aと、第1配管P1に合流するように、第2配管P2を介して補助的に空気を供給する第2ポンプ13bと、を主に備えて構成されている。
【0024】
(空気噴射ノズル)
空気噴射ノズル11は、後に詳しく説明するように、塗料噴霧ノズル3aから壁高欄Wの壁面Sへと噴霧される塗料噴霧流F1(
図5及び
図6参照)の拡散を抑制する気流F2(
図5及び
図6参照)を発生させる。
空気噴射ノズル11は、塗装装置1の正面図である
図3に示すように、一対の縦管からなる第1ノズル11aと、第1ノズル11aの上端同士を連結する横管からなる第2ノズル11bと、を備えている。具体的には、空気噴射ノズル11は、塗装装置1の正面視で、一対の第1ノズル11aと、第2ノズル11bとが一体に接合されて下方に開くコ字形状を呈している。
【0025】
縦管からなる第1ノズル11aと横管からなる第2ノズル11bとは、互いに連通するように一体に接合されている。なお、第1ノズル11aの下端部は、閉じている。
そして、第2ノズル11bの横方向中央の後部には、第1配管P1の一端側が接続されている(
図1参照)。これにより空気噴射ノズル11には、第1配管P1(
図1参照)を介して空気が供給されることとなる。
【0026】
図3に示すように、一対の第1ノズル11aのそれぞれには、縦方向に延びるスリット状の縦長噴射口12aが形成されている。
これら一対の縦長噴射口12aは、塗装装置1の正面視で、少なくとも塗料噴霧ノズル3aの縦方向の往復移動範囲Tに対して、この往復移動範囲Tを中に挟んだ横方向の両側のそれぞれに設けられることとなる。
これら縦長噴射口12a同士の間隔は、塗料噴霧ノズル3aから噴霧される塗料噴霧流F1(
図5参照)の横幅に応じて適宜に設定することができる。
第2ノズル11bには、塗料噴霧ノズル3aの縦方向の往復移動範囲Tにおける上端より上方(塗料噴霧ノズル3aの上方)で、一対の縦長噴射口12a同士の間の範囲内にて横方向に延びるスリット状の横長噴射口12bが形成されている。
【0027】
以上のような本実施形態での空気噴射ノズル11は、
図1に示すように、壁高欄Wの壁面Sよりも後方であって、塗料噴霧ノズル3aよりも前方に位置するものを想定している。具体的には、空気噴射ノズル11は、後記する飛散防止カバー14の前部外側に取り付けられるものを想定している。
ただし、空気噴射ノズル11は、後記するように、塗料噴霧ノズル3aから噴霧される塗料噴霧流F1(
図5及び
図6参照)の拡散を抑制するように、縦長噴射口12a及び横長噴射口12b(
図5及び
図6参照)のそれぞれが空気を所定角度θ1及び所定角度θ2(
図5及び
図6参照)にて噴霧できれば、塗料噴霧ノズル3aよりも後方に配置することもできる。
【0028】
(第1ポンプ及び第2ポンプ)
図4は、第1ポンプ13a及び第2ポンプ13bを含む気流発生機構10の配管図である。
第1ポンプ13aは、空気噴射ノズル11に一端側が接続される第1配管P1の他端側に接続されている。本実施形態での第1ポンプ13aは、吸入口Inから導入した空気を空気噴射ノズル11に供給するブロアを想定している。
本実施形態での第2ポンプ13bは、空気噴射ノズル11に、補助的に空気を供給するエアブースタを想定している。この第2ポンプ13bは、第1配管P1の延在途中に合流するように一端側が接続される第2配管P2の他端側に接続されている。
図4中、符号V1は、第1配管P1と第2配管P2との接続部の上流側で第1配管P1の延在途中に設けられる流量調整弁である。また、符号V2は、第1ポンプ13aの直ぐ下流側で第1配管P1に設けられる開度が調節可能な排気弁である。符号14は、次に説明する飛散防止カバーである。
【0029】
<飛散防止カバー>
図3に示すように、飛散防止カバー14は、塗料噴霧ノズル3aを中に挟んで互いに左右方向に向き合う一対の側板14aと、これら側板14aの上辺同士を接続する天板14bとによって、コ字断面形状を呈する立体構造体にて構成されている。すなわち、飛散防止カバー14は、側板14aと天板14bとが囲む内側に内部空間を形成するとともに、前後方向及び下方向に開いている。
このような本実施形態での飛散防止カバー14は、
図1に示すように、台車本体21の前部に所定のブラケット(図示を省略)を介して取り付けられるものを想定している。
【0030】
飛散防止カバー14は、後に詳しく説明するように、塗料噴霧ノズル3aから噴霧される塗料噴霧流F1(
図5参照)の通流領域A(
図5参照)を内側に区画することとなる。
また、
図1及び
図3に示すように、飛散防止カバー14の前部外側には、飛散防止カバー14に沿うように、空気噴射ノズル11が配置されている。ちなみに、この空気噴射ノズル11からは、後に詳しく説明するように、飛散防止カバー14の前方で、塗料噴霧流F1(
図5及び
図6参照参照)の拡散を抑制する空気が噴射されることとなる。
【0031】
また、このような飛散防止カバー14には、
図4に示すように、飛散防止カバー14の内側に連通するように、第3配管P3の一端側が接続されている。なお、本実施形態での飛散防止カバー14は、一対の側板14aのうち、一方の側板14aに一対の第3配管P3が接続される構成となっているが、第3配管P3は、一対の側板14aのそれぞれに振り分けられて接続される構成とすることもできる。また、第3配管P3の数は、2つに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0032】
そして、第3配管P3の他端側は、第1ポンプ13aの吸入口Inに接続されている。
この第3配管P3は、飛散防止カバー14の内側で塗料噴霧流F1(
図5参照)から離脱した、壁面Sの塗装に寄与しない塗料微粒子を第1ポンプ13aの吸引力で飛散防止カバー14の外側に排出する排気管を構成している。
【0033】
ちなみに、第1ポンプ13aの吸引力は、飛散防止カバー14の内側からの排気の際に、飛散防止カバー14の内側に形成される塗料噴霧流F1(
図5参照)の流れを乱さないように予め設定されている。具体的には、第1ポンプ13aの吸引力は、第1配管P1の延在途中に設けられた流量調整弁V1にて、第1ポンプ13aの上流側での空気流量を調節することによって設定される。
なお、本実施形態での排気弁V2は、その開度を増加させることで第1ポンプ13aの直ぐ下流側での空気流量を増加させることで、流量調整弁V1にて空気噴射ノズル11から噴射される空気流量を一定に維持しながらも、飛散防止カバー14の内側からの排気量を増加させることを可能にする。
【0034】
また、第3配管P3のそれぞれには、第1ポンプ13aの直ぐ上流側にHEPAフィルタなどのエアフィルタを内蔵するフィルタ装置15が配置されている。また、第3配管P3には、このようなフィルタ装置15に代えて、又はこのフィルタ装置15と併用するように、例えばサイクロン式などの塗料回収装置(図示を省略)を配置することもできる。
【0035】
≪塗装方法≫
次に、本実施形態の塗装装置1(
図1参照)の動作を説明しながら本実施形態の塗装方法について説明する。本実施形態では、供用中の道路R(
図1参照)における既設の壁高欄Wの壁面S(
図1参照)に対して塗料を吹き付けて補修を行う塗装方法について説明する。
【0036】
この塗装方法では、次に説明する第1工程と、第2工程と、第3工程と、が並行して行われる。
塗装方法の第1工程においては、
図1を参照して説明したように、道路R上を、車輪22を構成する前記の駆動輪が転動することによって台車2が壁高欄Wの壁面Sに沿って走行する。
塗装方法の第2工程においては、
図3を参照して説明したように、塗料噴霧ノズル3aが往復移動範囲Tにて縦方向に移動する。この際、塗料噴霧ノズル3aは、塗料を壁高欄Wの壁面S(
図1参照)の上下方向に沿って塗装を施す。
【0037】
塗装方法の第3工程においては、
図3を参照して説明したように、空気噴射ノズル11から空気を噴射させて気流を発生させる。
具体的には、
図4に示したように、第1ポンプ13aは、飛散防止カバー14の内側から第3配管P3を介して前記の予め設定した吸引力で空気を吸引するとともに、吸引した空気を、第1配管P1を介して空気噴射ノズル11に供給する。
その一方で、エアブースタを構成する第2ポンプ13bは、
図4に示したように、第2配管P2及び第1配管P1を介して空気を補助的に空気噴射ノズル11に対して供給する。つまり、第2ポンプ13bは、吸引力が調整された第1ポンプ13aから空気噴射ノズル11へと供給される空気流量を補うように、空気噴射ノズル11に空気を供給する。
【0038】
図5は、空気噴射ノズル11の縦長噴射口12aから噴射された空気による気流F2が、塗料噴霧ノズル3aから壁面Sへと噴霧される塗料噴霧流F1の拡散を抑制する様子を示す模式図である。
図6は、空気噴射ノズル11の横長噴射口12bから噴射された空気による気流F2が、塗料噴霧ノズル3aから壁面Sへと噴霧される塗料噴霧流F1の拡散を抑制する様子を示す模式図である。なお、
図5は、塗料噴霧ノズル3aが上下移動範囲の略中央で壁面Sに向けて塗料を噴霧している塗装装置1を上方から見下ろした様子を部分的に示した図である。
図6は、塗料噴霧ノズル3aが上下移動範囲の上部で壁面Sに向けて塗料を噴霧している塗装装置1を右側面から見た様子を部分的に示した図である。
【0039】
図5に示すように、塗料噴霧ノズル3aから壁面Sへと噴霧された塗料噴霧流F1は、塗料噴霧ノズル3aの軸芯延長線L1周りに末広がりとなるように形成される。
そして、空気噴射ノズル11(第1ノズル11a)の縦長噴射口12aは、縦長噴射口12aから壁面Sへと向かう気流F2を形成する。
【0040】
具体的には、本実施形態での縦長噴射口12aの空気噴射方向Dは、
図5に示すように、左右一対の縦長噴射口12aのうち、一方の縦長噴射口12aから壁面Sに向けて延びる垂線L2に対して当該縦長噴射口12aを中心にして他方の縦長噴射口12a側へと所定角度θ1をなして開く方向に設定されている。
なお、このような角度θ1は、縦長噴射口12aから噴射される空気流量に対応させて、例えば0[deg]を超え、60[deg]以下の範囲に設定することができ、好ましくは30~60[deg]に設定される。
【0041】
そして、気流F2は、
図5に示す塗装装置1の平面視で、縦長噴射口12aから壁面Sへと空気噴射方向Dに沿って僅かな広がりを見せつつ、塗料噴霧流F1の下流側でこの塗料噴霧流F1に交差するように干渉する。
塗料噴霧流F1は、
図5中、網掛けを付したように、気流F2に案内されながら壁面Sに到達する。これにより塗料噴霧流F1は、拡散が抑制される。
なお、
図6中、符号L1は、塗料噴霧ノズル3aの軸芯延長線である。
【0042】
また、空気噴射ノズル11(第2ノズル11b)の横長噴射口12bにおける空気噴射方向Dは、
図6に示す塗装装置1の側面視で、横長噴射口12bから壁面Sに向けて延びる垂線L2に対して当該横長噴射口12bを中心にして下方側へと所定角度θ2をなして開く方向に設定されている。
そして、横長噴射口12bが形成する気流F2は、
図6に示す塗装装置1の側面視で、横長噴射口12bから壁面Sへと空気噴射方向D周りに末広がりとなる。
なお、前記の角度θ2は、横長噴射口12bから噴射される空気流量に対応させて、例えば0[deg]を超え、60[deg]以下の範囲に設定することができ、好ましくは30~60[deg]に設定される。
【0043】
そして、気流F2は、
図6に示す塗装装置1の側面視で、横長噴射口12bから壁面Sへと空気噴射方向Dに沿って僅かな広がりを見せつつ、塗料噴霧流F1の下流側でこの塗料噴霧流F1に交差するように干渉する。
これにより塗料噴霧流F1は、
図6中、網掛けを付したように、気流F2に案内されながら壁面Sに到達する。これにより塗料噴霧流F1は、拡散が抑制される。
【0044】
≪作用効果≫
次に、本実施形態における塗装装置1及びこの塗装装置1を使用した塗装方法の奏する作用効果について説明する。
本実施形態の塗装装置1及びこの塗装装置1を使用した塗装方法においては、気流発生機構10によって、塗料噴霧ノズル3aから壁面Sへと噴霧される塗料噴霧流F1の拡散を抑制する。
このような塗装装置1によれば、塗装対象たる壁面Sへの塗装効率を向上させつつ周囲への塗料汚染をより確実に防止することができる。
【0045】
また、この塗装装置1においては、塗装装置1の正面視で、少なくとも塗料噴霧ノズル3aの縦方向の往復移動範囲Tを中に挟んだ横方向の両側のそれぞれで縦方向に延びるスリット状の一対の縦長噴射口12aを有している。
このような塗装装置1によれば、縦方向の往復移動しながら壁面Sへと噴霧される塗料噴霧流F1についてもその拡散を効率良く抑制することができる。
【0046】
また、この塗装装置1においては、塗装装置1の正面視で、塗料噴霧ノズル3aの縦方向の往復移動範囲Tにおける上端よりも上方で、一対の縦長噴射口12a同士の間にて横方向に延びるスリット状の横長噴射口12bをさらに有している。
このような塗装装置1によれば、塗料噴霧ノズル3aが縦方向の往復移動範囲Tにおける上端側にて噴霧した塗料噴霧流F1についてもその拡散を効率良く抑制することができる。
【0047】
また、この塗装装置1においては、一対の縦長噴射口12aにおけるそれぞれの空気噴射方向Dは、塗装装置1の平面視で、一対の縦長噴射口12aのうち一方の縦長噴射口12aから壁面Sに向けて延びる垂線L2に対して当該縦長噴射口12aを中心にして他方の縦長噴射口12a側へと所定角度θ1をなして開く方向に設定されている。
このような塗装装置1によれば、縦長噴射口12aによって形成された気流F2が、塗装装置1の平面視で、塗料噴霧流F1の下流側にてこの塗料噴霧流F1に交差するように干渉する。
このような塗装装置1によれば、塗料噴霧流F1が縦長噴射口12aによって形成された気流F2によって壁面S側に案内されながら壁面Sに到達する。塗料噴霧流F1の拡散は、より効果的に抑制される。
【0048】
また、この塗装装置1においては、横長噴射口12bにおける空気噴射方向Dは、塗装装置1の側面視で、横長噴射口12bから壁面Sに向けて延びる垂線L2に対して当該横長噴射口12bを中心にして下方側へと所定角度θ2をなして開く方向に設定されている。
このような塗装装置1によれば、横長噴射口12bによって形成された気流F2が、塗装装置1の側面視で、塗料噴霧流F1の下流側にてこの塗料噴霧流F1に交差するように干渉する。
このような塗装装置1によれば、塗料噴霧流F1が横長噴射口12bによって形成された気流F2によって壁面S側に案内されながら壁面Sに到達する。塗料噴霧流F1の拡散は、より効果的に抑制される。
【0049】
また、この塗装装置1においては、気流発生機構10は、空気噴射ノズル11に一端側が接続される第1配管P1と、第1配管P1の他端側に接続されて、空気を空気噴射ノズル11に供給する第1ポンプ13aと、第1配管P1の延在途中に一端側が接続される第2配管P2と、第2配管P2の他端側に接続されて、空気噴射ノズル11に補助的に空気を供給する第2ポンプ13bと、第1配管P1と第2配管P2との接続部の上流側で第1配管P1の延在途中に設けられる流量調整弁V1と、有している。
このような塗装装置1においては、第1ポンプ13aが流量調整弁V1にて空気流量を制御されつつ空気噴射ノズル11に向けて空気を供給するとともに、第2ポンプ13bが補助的に空気を空気噴射ノズル11に供給する。
このような塗装装置1によれば、第1ポンプ13aと第2配管P2とによって、空気が安定的に空気噴射ノズル11に供給される。空気噴射ノズル11が形成する気流は、より安定して塗料噴霧流F1を壁面Sに案内してその拡散をより確実に抑制する。
【0050】
また、この塗装装置1においては、飛散防止カバー14の内側に連通するように第3配管P3の一端側が飛散防止カバー14に接続されるとともに、第3配管P3の他端側が第1ポンプ13aの吸入口Inに接続されている。
このような塗装装置1によれば、飛散防止カバー14の内側に形成される塗料噴霧流F1から離脱した、壁面Sの塗装に寄与しない塗料微粒子を第1ポンプ13aの吸引力で排出することができる。塗料噴霧流F1が形成されることによる塗料微粒子の拡散をより確実に抑制することができる。
また、このような塗装装置1によれば、気流発生機構10と、塗料噴霧流F1から脱離した塗料微粒子の排出機構との両方に第1ポンプ13aを兼用することで、それぞれの機構に個別にポンプを設けたものと比べて省エネルギ化を達成することができる。
【0051】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、壁高欄Wの壁面Sに対して塗装する場合について説明したが、塗装対象は、壁高欄Wに限定されるものではなく、例えば、トンネル内壁面、橋脚、建築構造物の外壁、側壁、擁壁、護岸、防潮堤などであってもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、空気噴射ノズル11について、塗装装置1の正面視で、下方に開くコ字状を呈するものを例示したが、矩形状を呈するように構成することもできる。
このような塗装装置1によれば、塗料噴霧流F1の拡散をより一層確実に抑制することができる。
【0053】
また、前記実施形態では、第1ノズル11aと第2ノズル11bとがコ字状に一体となった空気噴射ノズル11に対して、単一の第1配管P1が接続されるものを例示した。しかしながら、塗装装置1は、第1ノズル11aと第2ノズル11bとが互いに分離しており、これらに対して個別に空気供給管が接続される構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 塗装装置
2 台車
3a 塗料噴霧ノズル
6 飛散防止カバー
10 気流発生機構
11 空気噴射ノズル
12a 縦長噴射口
12b 横長噴射口
13a 第1ポンプ
13b 第2ポンプ
14 飛散防止カバー
A 塗料噴霧流の通流領域
F1 塗料噴霧流
F2 気流
In 第1ポンプの吸入口
L2 垂線
P1 第1配管
P2 第2配管
P3 第3配管
S 壁面
V1 流量調整弁
θ1 所定角度
θ2 所定角度