(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051670
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 11/10 20200101AFI20240404BHJP
B62K 19/30 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B62J11/10
B62K19/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157955
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】沢崎 和也
(72)【発明者】
【氏名】浦野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 孝二
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BH08
(57)【要約】
【課題】車体前部のステアリング軸の周囲を車体前部カバーで覆った鞍乗り型車両において、車体前部カバー内に回動側および非回動側の各索状部材を集約して配置して内部空間の有効利用を図る。
【解決手段】操舵ハンドルに支持され、操舵ハンドルと一体的に回動する第一機能部品と、第一機能部品に接続される第一索状部材33と、操舵ハンドルと一体的に回動することなく、車体本体に支持される第二機能部品35と、第二機能部品35に接続される第二索状部材37と、を備え、第一索状部材33および第二索状部材37は、フロントボディカバー16の内側に形成される内部空間K2内に配置され、第二索状部材37における複数の固定部41~44に固定される範囲H1は、ステアリング軸23を中心として第一索状部材33が回動する領域R1よりも径方向外側に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体本体(22)に操舵ハンドル(2)がステアリング軸(23)を中心に回動可能に支持され、前記ステアリング軸(23)の周囲が車体前部カバー(16)で覆われる鞍乗り型車両(1)において、
前記操舵ハンドル(2)に支持され、前記操舵ハンドル(2)と一体的に回動する第一機能部品(31)と、
前記第一機能部品(31)に接続される第一索状部材(33)と、
前記操舵ハンドル(2)と一体的に回動することなく、前記車体本体(22)に支持される第二機能部品(35)と、
前記第二機能部品(35)に接続される第二索状部材(37)と、を備え、
前記第一索状部材(33)および前記第二索状部材(37)は、前記車体前部カバー(16)の内側に形成される内部空間(K2)内に配置され、
前記車体本体(22)には、前記第二索状部材(37)の中間部を固定する複数の固定部(41~44)を備え、
前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)は、前記ステアリング軸(23)を中心として前記第一索状部材(33)が回動する領域(R1)よりも径方向外側に配置されている、鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)よりも車幅方向一側に配置された第一車体側電装部品(35b)を備え、
前記第二索状部材(37)は、前記第一車体側電装部品(35b)に接続される第一ハーネス(37a3)を備え、
前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第一ハーネス(37a3)は、前記ステアリング軸(23)を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品(35b)よりも外側に配置されている、請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ステアリング軸(23)を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品(35b)よりも内側に、前記第一索状部材(33)が配置されている、請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記車体前部カバー(16)は、前記ステアリング軸(23)の車両前方側を覆う前方カバー(11a)と、前記ステアリング軸(23)の車両後方側を覆う後方カバー(11b)と、を備え、
前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第一ハーネス(37a3)は、前記第一車体側電装部品(35b)と前記前方カバー(11a)との間に配置されている、請求項2又は3に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記車体前部カバー(16)は、前記ステアリング軸(23)の車両前方側を覆う前方カバー(11a)と、前記ステアリング軸(23)の車両後方側を覆う後方カバー(11b)と、を備え、
前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)と前記前方カバー(11a)との間に配置される第二車体側電装部品(35a)を備え、
前記第二索状部材(37)は、前記第二車体側電装部品(35a)に接続される第二ハーネス(37a1,37a2)を備え、
前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第二ハーネス(37a1,37a2)は、前記第二車体側電装部品(35a)よりも車両前方側に配索され、
前記複数の固定部(41~44)の内の少なくとも一つは、前記第二車体側電装部品(35a)を支持する支持部材(39)に固定されている、請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)よりも車幅方向一側に配置され、かつ前記第一車体側電装部品(35b)よりも後方に配置される第三車体側電装部品(35c)を備え、
前記複数の固定部(41~44)の内、前記第二索状部材(37)における前記第一索状部材(33)が回動する領域(R1)よりも径方向外側に配置される範囲(H1)の始点となる第一固定部(41)は、車両側面視において、前記第三車体側電装部品(35c)よりも上方に配置され、
前記第二索状部材(37)は、前記ステアリング軸(23)の近傍から前記第一固定部(41)に向かって上方に延びるように配索され、前記第一固定部(41)を通過後に車両前方側かつ下方へ延び、
車両上面視において、前記第三車体側電装部品(35c)と前記第一固定部(41)とは、少なくとも一部が互いに重なっている、請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車体前部のステアリング軸の周囲が車体前部カバーで覆われ、車体前部カバーの内部空間にはバッテリが配置され、バッテリの前方にハーネスが配索された鞍乗り型車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術では、車体前部カバー内に収納ボックスの配置スペースを確保するために、ハンドルの転舵とともに動くブレーキケーブルと、ハンドルの転舵とともに動くことのない車体側ハーネスと、を車幅方向一側に集約して配置するための工夫については開示がない。
【0005】
そこで本発明は、車体前部のステアリング軸の周囲を車体前部カバーで覆った鞍乗り型車両において、車体前部カバー内に回動側および非回動側の各索状部材を集約して配置して内部空間の有効利用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、車体本体(22)に操舵ハンドル(2)がステアリング軸(23)を中心に回動可能に支持され、前記ステアリング軸(23)の周囲が車体前部カバー(16)で覆われる鞍乗り型車両(1)において、前記操舵ハンドル(2)に支持され、前記操舵ハンドル(2)と一体的に回動する第一機能部品(31)と、前記第一機能部品(31)に接続される第一索状部材(33)と、前記操舵ハンドル(2)と一体的に回動することなく、前記車体本体(22)に支持される第二機能部品(35)と、前記第二機能部品(35)に接続される第二索状部材(37)と、を備え、前記第一索状部材(33)および前記第二索状部材(37)は、前記車体前部カバー(16)の内側に形成される内部空間(K2)内に配置され、前記車体本体(22)には、前記第二索状部材(37)の中間部を固定する複数の固定部(41~44)を備え、前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)は、前記ステアリング軸(23)を中心として前記第一索状部材(33)が回動する領域(R1)よりも径方向外側に配置されている。
この構成によれば、車体本体に固定される第二索状部材が、操舵ハンドルとともに回動する第一索状部材の回動領域よりも径方向外側に配置されることで、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間において、第一索状部材および第二索状部材を互いに干渉することなくコンパクトに配置することができる。これにより、車体前部カバー内に他部品の配置スペースを確保しやすく、車体前部カバーの内部空間をコンパクトにしながら有効に利用することができる。
また、操舵ハンドルとともに回動する第一索状部材が、第二索状部材よりもステアリング軸に近付いて配置されることで、第一索状部材の回動領域が小さくなり、電装部品および収納ボックス等の他部品の配置スペースを確保しやすくなり、車体前部カバーの内部空間をより有効に利用することができる。
また、車幅方向一側に第一索状部材および第二索状部材をまとめて配置しやすくなり、車幅方向他側のスペースを収納ボックス等の配置スペースとして有効利用するとともに、収納ボックスの容量を大きくすることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)よりも車幅方向一側に配置された第一車体側電装部品(35b)を備え、前記第二索状部材(37)は、前記第一車体側電装部品(35b)に接続される第一ハーネス(37a3)を備え、前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第一ハーネス(37a3)は、前記ステアリング軸(23)を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品(35b)よりも外側に配置されている。
この構成によれば、形状が固定された電装部品よりも形状自由度の高い索状部材(ハーネス)を、ステアリング軸中心の径方向で電装部品よりも外側に配置することで、形状が固定された電装部品は径方向内側の配置スペース内に収めながら、形状自由度の高いハーネスは径方向外側に配置して車体前部カバー近傍に沿わせて配置することができる。このため、車体前部カバーのデザイン自由度を高めつつ、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間を効率よく利用することができる。
また、車体前部カバー内で車幅方向一側に偏った第一車体側電装部品よりも径方向外側に、第一ハーネスが配置されることで、車幅方向他側からハーネスを退避させ、車体前部カバー内の車幅方向他側を他部品の配置スペースとして有効利用することができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記ステアリング軸(23)を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品(35b)よりも内側に、前記第一索状部材(33)が配置されている。
この構成によれば、ステアリング軸中心の径方向で電装部品よりも内側に、転舵部品である第一索状部材が配置されることで、第一索状部材と第二索状部材(第一ハーネス)とが電装部品を挟んで径方向で離間し、索状部材同士の干渉を抑えやすくすることができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第二又は第三の態様において、前記車体前部カバー(16)は、前記ステアリング軸(23)の車両前方側を覆う前方カバー(11a)と、前記ステアリング軸(23)の車両後方側を覆う後方カバー(11b)と、を備え、前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第一ハーネス(37a3)は、前記第一車体側電装部品(35b)と前記前方カバー(11a)との間に配置されている。
この構成によれば、ステアリング軸の後方側は車体フレーム等が存在するのに対し、ステアリング軸の前方側は部品配置スペースを確保しやすいので、第一車体側電装部品と前方カバーとの隙間を有効利用でき、全体として当該部位を利用して第一車体側電装部品と前方カバーとの間に第一ハーネスを配置することで、車体前部カバーの内部空間をコンパクト化しつつ、効率よく利用することができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第二から第四の態様の何れか一つにおいて、前記車体前部カバー(16)は、前記ステアリング軸(23)の車両前方側を覆う前方カバー(11a)と、前記ステアリング軸(23)の車両後方側を覆う後方カバー(11b)と、を備え、前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)と前記前方カバー(11a)との間に配置される第二車体側電装部品(35a)を備え、前記第二索状部材(37)は、前記第二車体側電装部品(35a)に接続される第二ハーネス(37a1,37a2)を備え、前記第二索状部材(37)における前記複数の固定部(41~44)に固定される範囲(H1)において、前記第二ハーネス(37a1,37a2)は、前記第二車体側電装部品(35a)よりも車両前方側に配索され、前記複数の固定部(41~44)の内の少なくとも一つは、前記第二車体側電装部品(35a)を支持する支持部材(39)に固定されている。
この構成によれば、形状が固定された電装部品はステアリング軸と比較的近い前方位置に配置しながら、形状自由度の高いハーネスは電装部品よりも車両前方側に配置し、車体前部カバー近傍に沿わせて配置することができる。このため、車体前部カバーのデザイン自由度を高めつつ、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間を効率よく利用することができる。第二車体側電装部品に接続される第二ハーネスは、第二車体側電装部品よりも車両前方側に離隔して配策されながら、第二車体側電装部品の直近で支持部材に固定されるので、第二ハーネスを安定して第二車体側電装部品に接続することができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第二から第五の態様の何れか一つにおいて、前記第二機能部品(35)は、前記車体前部カバー(16)の内部空間(K2)内で前記ステアリング軸(23)よりも車幅方向一側に配置され、かつ前記第一車体側電装部品(35b)よりも後方に配置される第三車体側電装部品(35c)を備え、前記複数の固定部(41~44)の内、前記第二索状部材(37)における前記第一索状部材(33)が回動する領域(R1)よりも径方向外側に配置される範囲(H1)の始点となる第一固定部(41)は、車両側面視において、前記第三車体側電装部品(35c)よりも上方に配置され、前記第二索状部材(37)は、前記ステアリング軸(23)の近傍から前記第一固定部(41)に向かって上方に延びるように配索され、前記第一固定部(41)を通過後に車両前方側かつ下方へ延び、車両上面視において、前記第三車体側電装部品(35c)と前記第一固定部(41)とは、少なくとも一部が互いに重なっている。
この構成によれば、第二索状部材をステアリング軸の近傍で一端上方まで配索させた後、第一固定部を通過した後の範囲(第一索状部材が回動する領域よりも径方向外側に配置される範囲)で、下方へ配索する。このように、第三車体側電装部品を上下方向で避けながら第二索状部材を配策し、第三車体側電装部品の配置スペースを設けやすくなるため、車体前部カバーの内部空間を有効利用するとともに、第三車体側電装部品のハーネスのコネクタ方向の自由度を上げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体前部のステアリング軸の周囲を車体前部カバーで覆った鞍乗り型車両において、車体前部カバー内に回動側および非回動側の各索状部材を集約して配置して内部空間の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の右面図である。
【
図2】上記自動二輪車の車体前部の右側面図であり、車体カバーを透過して示す。
【
図3】上記車体前部の前面図であり、車体カバーを透過して示す。
【
図4】上記車体前部の上面図であり、車体カバーを透過して示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車両左右中央を示す線CLが示されている。本実施形態で用いる「中間」とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意である。本実施形態で用いる「位置決め」とは、前後左右上下の各方向において位置が一意的に定められること(弾性変位しても元の位置に戻ればよい)の意である。
【0015】
<車両全体>
図1には、鞍乗り型車両の一例として、スクータ型の自動二輪車1が示されている。自動二輪車1は、操舵輪である前輪3と、駆動輪である後輪4と、を備えている。前輪3は、フロントフォーク3aに支持され、バーハンドル2によって回動(転舵)可能である。後輪4は、スイング式のパワーユニット8に支持され、パワーユニット8によって駆動可能である。図中符号2aはバーハンドル2の左右両側のグリップ部、符号2bは左右グリップ部2aを除いてバーハンドル2の周囲を覆うハンドルカバーを示している。
【0016】
バーハンドル2、フロントフォーク3aおよび前輪3を含むステアリング系部品9は、車体フレーム21の前端部のヘッドパイプ21aに、ステアリング軸23を介して回動可能(転舵可能)に支持されている。パワーユニット8の前部は、車体フレーム21の下部に上下揺動可能に支持されている。
車体フレーム21は、ヘッドパイプ21aと、ヘッドパイプ21aから下後方へ延びるダウンフレーム21bと、ダウンフレーム21bの下部から後方へ延びるロアフレーム21cと、ロアフレーム21cの後部から後上方へ延びるリヤフレーム21dと、を備えている。ダウンフレーム21bおよびロアフレーム21cを含んでメインフレームということがある。
【0017】
前輪3と後輪4との間には、運転者が足を置くフロアステップ6が設けられている。フロアステップ6の前方には、フロントボディ14が設けられている。フロアステップ6の後方には、リアボディ15が設けられている。フロントボディ14およびリアボディ15の間でフロアステップ6の上方の空間K1は、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間K1とされる。フロントボディ14の上方には、ハンドル2が配置されている。リアボディ15の上方には、乗員が着座するシート5が支持されている。フロアステップ6の下部左側には、車体を左側に傾斜させた起立状態で支持可能な可倒式のサイドスタンド(不図示)が設けられている。
【0018】
パワーユニット8は、例えば内燃機関であるエンジン8aと、エンジン8aで生じた駆動力を後輪4に伝達する伝動装置(例えばベルト式無段変速機、不図示)と、を備えている。前記伝動装置は、例えば車体左側に設けられている。パワーユニット8の構成は様々であり、例えば駆動源に電気モータを備えてもよい。
【0019】
自動二輪車1の車体フレーム21の周囲は、車体カバー11で覆われている。車体カバー11は、車体フレーム21の前部を前方から覆うフロントカバー11aと、車体フレーム21の前部を後方から覆うインナーカバー11bと、車体フレーム21の下部を上方から覆うフロアカバー11cと、車体フレーム21の後部を前方および側方から覆うリアボディカバー11dと、を備えている。フロントカバー11aおよびインナーカバー11bは、フロントボディ14の外面を形成するフロントボディカバー16を構成している。フロントボディカバー16は、運転者の脚部の前方を覆うレッグシールドを兼ねている。フロアカバー11cの上面部は、フロアステップ6を構成している。フロアステップ6は、例えば車幅方向の全幅に渡って平坦な上面(足載せ面)を形成している。フロアステップ6は、車幅方向内側で上方に隆起するセンタートンネルを備えてもよい。リアボディカバー11dは、リアボディ15の外面を形成している。車体カバー11は、ハンドルカバー2bを除き、車体フレーム21に直接又は間接的に固定されている。
【0020】
フロントボディカバー16の車両後方側の左側には、物品を収容可能なインナーボックス26が配置されている。フロントボディカバー16の車両後方側(乗員側、インナーカバー11b側)の右側には、イグニッションスイッチおよび各種ロックの施錠解除スイッチを含むメインスイッチ29が配置されている。
【0021】
<電装部品および索状部材の配置>
図2~
図4に示すように、自動二輪車1は、ハンドルカバー2bひいてはバーハンドル2に支持されてバーハンドル2と一体的に回動する第一機能部品31と、フロントボディカバー16内に配策されて第一機能部品31に接続される第一索状部材33と、ステアリング系部品9を除く車体本体22に支持され、ステアリング系部品9と一体的に回動することなく、車体本体22に位置決め状態で保持(固定)される第二機能部品35と、フロントボディカバー16内に配策されて第二機能部品35に接続される第二索状部材37と、を備えている。実施形態の「車体本体22」とは、ステアリング系部品9を支持する車体フレーム21の他、車体フレーム21に固定された部品を含む概念である。
【0022】
例えば、第一機能部品31は、運転者が操作を行うハンドル側操作子(ブレーキレバー、クラッチレバー、アクセルスリーブ等)の他、ヘッドライト、ウインカ、ハンドルスイッチ、メータ装置等のハンドル側電装部品31bが挙げられる。「一体的に回動」とは、一体に回動することの他、連結部品を介して連動(回動)することを含む。ステアリング軸23は、実体のある軸に限らず、仮想軸であってもよい。
実施形態の第一機能部品31は、ハンドル側操作子としての右ブレーキレバー31a、およびハンドル側電装部品31bとしてのヘッドライト、ハンドルスイッチおよびメータ装置である。ヘッドライトおよびウインカ等の灯火器は、機種によって車体本体22側およびバーハンドル2側の何れに設けてもよい。
【0023】
第一索状部材33は、ハンドル側操作子から車両下方(操舵輪側)に延びる操作ケーブル(又は液圧ホース)、ハンドル側電装部品31bに接続されるワイヤハーネス(以下、単にハーネスという。)等が挙げられる。第一索状部材33は、全体が操舵ハンドル2とともに回動するものに限らず、規定の範囲に限定して操舵ハンドル2とともに回動するものでもよい。
実施形態の第一索状部材33は、右ブレーキレバー31aから延びてフロントブレーキのキャリパに至るブレーキホース33a、およびメインハーネス部38aから分岐してハンドル側電装部品31bに接続されるハンドル側分岐ハーネス33bである。
【0024】
第二機能部品35は、バーハンドル2とともに回動することなく車体本体22に固定されるものであり、バッテリ35a、ヒューズボックス35b、ECU35c(Engine Control Unit)、USB(Universal Serial Bus)ポート(USBソケット)、ホーン、メインスイッチ29等の車体側電装部品の他、種々の施錠機構やパーキングブレーキを操作するための車体側操作子等が挙げられる。「車体本体22に固定」とは、「バーハンドル2とともに回動しない」の意であり、車体本体22に完全固定されることの他、バーハンドル2の回動とは独立した作動が可能な態様を含む。
実施形態の第二機能部品35は、車体側電装部品としてのバッテリ35a、ヒューズボックス35b、ECU35c等である。
【0025】
第二索状部材37は、車体側電装部品に接続されるワイヤハーネス(以下、単にハーネスという。)、車体側操作子から延びる操作ケーブル(又は液圧ホース)等が挙げられる。
実施形態の第二索状部材37は、車体側電装部品に接続される車体側分岐ハーネス37aである。車体側分岐ハーネス37aの詳細については後述する。
【0026】
フロントカバー11aとインナーカバー11bとの間に形成される内部空間K2内(あるいはカバー外面)には、第二機能部品35として車体側電装部品および車体側操作子の少なくとも一つが配置される。実施形態では、内部空間K2内には、車体側電装部品としてのバッテリ35a、ヒューズボックス35b、ECU35c等が配置されている。
内部空間K2内には、第一索状部材33および第二索状部材37が配置されている。実施形態では、内部空間K2には、第一索状部材33としてのブレーキホース33a、ハンドル側分岐ハーネス33bが配置され、第二索状部材37としての車体側分岐ハーネス37aが配置されている。
第一索状部材33および第二索状部材37は、車体前部のみに配策されるものに限らず、車体前部から車体後部に向けて延びるものを含む。
【0027】
バーハンドル2右側の右ブレーキレバー31a(実施形態では右ブレーキレバー31aと連動するマスターシリンダ)とフロントブレーキ(実施形態ではキャリパ)との間に、液圧ホースであるブレーキホース33aが配策される。ブレーキホース33aは、右ブレーキレバー31a(マスターシリンダ)から車両左右中央CL側かつ下方に向けて斜めに延び、ハンドルカバー2bの下端部からフロントボディカバー16内に入り込む。
【0028】
ブレーキホース33aは、フロントボディカバー16内で車体左側に至ってから右側に向けて湾曲し、ヘッドパイプ21aの前方において車体右側かつ下方に向けて斜めに延びる。その後、ブレーキホース33aは、バッテリ35aとヒューズボックス35bとの間の後方を通るように前下方に向けて湾曲する。その後、ブレーキホース33aは、前輪3右側に配置されたキャリパに下端を接続する。ブレーキホース33aは、ヘッドパイプ21aの前方を通過した後は、車両左右中央CLよりも車体右側(車幅方向一側)に偏って配策されている。
【0029】
フロントボディカバー16におけるフロントカバー11aおよびインナーカバー11bに挟まれた内部空間K2には、バッテリ35a、ECU35cおよびヒューズボックス35b等の車体側電装部品が配置されている。
【0030】
図4を参照し、バッテリ35aとヒューズボックス35bとの間には、平面視で後側ほど広い三角形状の空間K3が形成されている。ヒューズボックス35bは、バッテリ35aの右側に、平面視三角形状の空間K3を空けて配置されている。
図5を併せて参照し、空間K3の下方には、後述するバッテリケース39の右側に延びる板状の延出部39aの基端部39bが配置されている。基端部39bは、バッテリ35aの右側面と、斜めに配置されたヒューズボックス35bの左側面と、の間に位置する平面視三角形状の部位である。
【0031】
基端部39bの後縁部の後方(空間K3の後方)において、ブレーキホース33aが下方に向けて延びている。延出部39aの後縁部(ブレーキホース33a側の縁部)には、ブレーキホース33aへのエッジ干渉を抑えるために上方に屈曲して延びる立壁39cが形成されている。
【0032】
バッテリ35aは、ヘッドパイプ21aの前方で車両左右中央CLを跨ぐように配置される。バッテリ35aは、12Vの車載電源であり、直方体形状をなしている。バッテリ35aは、前後面を車幅方向と平行にし、かつ車両側面視で前後面をヘッドパイプ21aと略平行に傾斜させた姿勢で配置されている。バッテリ35aの上面の左右両側には、正極端子および負極端子が配置されている。
【0033】
バッテリ35aは、合成樹脂製のバッテリケース39内に収容されている。バッテリケース39は、バッテリ35aの外形状に沿うように直方体形状の箱体に形成され、前方側を開放している。本実施形態で単に「バッテリ35a」という場合、バッテリ35aの他にバッテリケース39を含むことがある。バッテリケース39の下壁の右側には、下壁を右側方に延長するように形成された板状の延出部39aを備えている。延出部39aの上面には、ヒューズボックス35bを支持するためのステー等(不図示)が形成されている。
【0034】
図2~
図4を参照し、ヒューズボックス35bは、複数のヒューズを整列させた状態で収容する。ヒューズボックス35bは、一方向に長尺な概ね直方体状の外形を有している。ヒューズボックス35bは、バッテリ35aの右側において、下面をバッテリケース39の延出部39aに沿わせるように配置される。ヒューズボックス35bは、長尺方向を、平面視で後側ほど車幅方向外側に位置するように傾斜させて配置される。ヒューズボックス35bの下面に、後述するヒューズハーネス37a3が接続される。
【0035】
ECU35cは、例えば点火装置および燃料噴射装置といったエンジン補機の作動を制御する。ECU35cは、一方向の厚さを抑えた偏平状をなし、ヒューズボックス35bの後方に配置される。ECU35cは、厚さ方向をヒューズボックス35bの長尺方向に向けて配置される。ECU35cは、例えばインナーカバー11bに固定される。ECU35cは、上下にコネクタを備え、例えば上側のコネクタに車体側分岐ハーネス37aが接続され、下側のコネクタに制御対象の機器から延びる外部ハーネスが接続される。後述する第一固定部41は、平面視でECU35cの右端部と重なるように配置されている。
【0036】
第二機能部品35は、フロントボディカバー16の内部空間K2内でステアリング軸23よりも前方(ステアリング軸23とフロントカバー11aとの間)に配置されるバッテリ35a(第二車体側電装部品)と、フロントボディカバー16の内部空間K2内でステアリング軸23よりも車幅方向一側(右側)かつ前方に配置されるヒューズボックス35b(第一車体側電装)と、フロントボディカバー16の内部空間K2内でステアリング軸23よりも車幅方向一側かつヒューズボックス35bよりも後方に配置されるECU35c(第三車体側電装部品)と、を備えている。
【0037】
<ハーネス>
自動二輪車1は、種々の電装部品に接続されるハーネス38を備えている。ハーネス38は、複数の電装部品の各々に接続される複数のサブハーネス(ハンドル側分岐ハーネス33b、車体側分岐ハーネス37a)と、複数のサブハーネス33b,37aを束ねたメインハーネス部38aと、を備えている。メインハーネス部38aは、車体の前後に渡って延びている。メインハーネス部38aは、フロアステップ6内を前方に延びた後、ダウンフレーム21bの後面に沿うように上方に延びている。メインハーネス部38aは、インナーカバー11bとメインフレーム(ダウンフレーム21b)との間を上下方向に延びている。
【0038】
自動二輪車1の車体各部に配置された電装部品は、ハーネス38を介して互いに電気的に接続されている。ハーネス38は、車載電源であるバッテリ35aから車体各部の電装部品に電力を供給するワイヤー(電線)を複数束ねて一体化し、各ワイヤー端にコネクタ装着等の処理を施したものである。
【0039】
ダウンフレーム21bの後方で上方に延びるメインハーネス部38aは、ヘッドパイプ21aの後面近傍の分岐点38bに至った後、複数の分岐ハーネス33b,37aに分岐する。複数の分岐ハーネス33b,37aは、車体側電装部品に接続される複数の車体側分岐ハーネス37aと、ハンドル側電装部品31bに接続される複数のハンドル側分岐ハーネス33bと、に分けられる。分岐部は、車両側面視においてECU35cと重なる位置にある。
【0040】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、メインハーネス部38a側から車体側電装部品に向かう経路において、分岐点38bよりも下流側で適宜束ねられている。複数の車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bよりも下流側の好適な位置で分岐し、対象部品に向けて延びている。
【0041】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bから上方へ延び、ECU35cよりも上方の高さで車幅方向外側(右側)かつ前下方に向けて湾曲して延びる。複数の車体側分岐ハーネス37aは、ステアリング軸23よりも前方の領域に取り回され、対応する車体側電装部品に接続される。
【0042】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、バッテリ35aの正負極端子にそれぞれ接続される正極ハーネス37a1および負極ハーネス37a2と、ヒューズボックス35bに接続されるヒューズハーネス37a3と、ECU35cに接続される制御ハーネス37a4と、左右ウインカにそれぞれ接続される左右ウインカハーネス37a5,37a6と、メインスイッチ29に接続されるスイッチハーネス37a7と、USBポート等のアクセサリ部品に接続されるアクセサリハーネス37a8と、を備えている。
【0043】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bよりも下流側において、長さ方向中間部(中央に限らない)の複数箇所が、車体本体22側に保持(固定)されている。複数の車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bよりも下流側において、環状のクリップ41a~44aによって複数箇所が車体本体22の部品に保持(固定)されている。
【0044】
具体的に、複数の車体側分岐ハーネス37aは、先ず、ECU35cの上部近傍で第一クリップ41aを介してフロントボディカバー16等に保持される。次に、複数の車体側分岐ハーネス37aは、ヒューズボックス35bの車幅方向外側(車体右側)からヒューズボックス35bの前下方に至り、車幅方向内側に湾曲して延びてバッテリ35aの前方を通過し、車体左側まで至った後に、第二クリップ42aを介してバッテリケース39の前部左側に保持される。
【0045】
次に、複数の車体側分岐ハーネス37aは、バッテリ35aよりも左側で上方に湾曲して延び、バッテリ35aよりも上方の高さで第三クリップ43aを介してフロントボディカバー16等に保持される。複数の車体側分岐ハーネス37aは、ヒューズボックス35bの前下方で車幅方向内側に湾曲する位置で、第四クリップ44aを介してフロントボディカバー16等に保持される。バッテリケース39の前部右側には、車体側分岐ハーネス37aの束を保持する右保持部39dが備えられ、バッテリケース39の前部の左右中央部には、車体側分岐ハーネス37aの束およびスペアのアクセサリハーネス37a8のコネクタを保持する中央保持部39eが備えられる。
【0046】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、ヒューズボックス35bの車幅方向外側(右側)を延びる際、右ウインカハーネス37a6(スペアハーネス含む)、制御ハーネス37a4およびヒューズハーネス37a3を分岐させる。複数の車体側分岐ハーネス37aは、バッテリ35aの前方を延びる際、正負極ハーネス37a1,37a2ならびにスペアのアクセサリハーネス37a9(ダミーハーネス)を分岐させる。複数の車体側分岐ハーネス37aは、バッテリ35aの左側を上方に延びる際、左ウインカハーネス37a5(スペアハーネス含む)およびアクセサリハーネス37a8を分岐させる。複数の車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bからスイッチハーネス37a7を分岐させる。
【0047】
複数のハンドル側分岐ハーネス33bは、車体側分岐ハーネス37aとは別に分岐点38bから分岐する。複数のハンドル側分岐ハーネス33bは、ヘッドパイプ21a近傍を上方に延び、ハンドルカバー2b内に至ってハンドル側電装部品31bに接続される。
【0048】
複数の車体側分岐ハーネス37aは、長さ方向の中間部の複数箇所において車体本体22に固定されている。
図中符号41は、第一クリップ41aを用いて車体側分岐ハーネス37aを固定する第一固定部、符号42は第二クリップ42aを用いて車体側分岐ハーネス37aを固定する第二固定部、符号43は第三クリップ43aを用いて車体側分岐ハーネス37aを固定する部位を第三固定部、符号44は第四クリップ44aを用いて車体側分岐ハーネス37aを固定する第四固定部、をそれぞれ示す。
【0049】
図4を参照し、車体側分岐ハーネス37aにおける複数の固定部41~44に固定される範囲H1(最も上流側の第一固定部41から最も下流側の第三固定部43までの範囲H1)は、車体本体22側に保持(固定)されている。この範囲H1は、第一索状部材33がステアリング軸23を中心として回動する領域R1よりも径方向外側に配置されている。領域R1は、特にブレーキホース33aの回動領域によって規定される。ハンドル側分岐ハーネス33bの回動領域は、領域R1の内側に収まっている。
【0050】
車体側分岐ハーネス37aは、分岐点38bよりも下流側において、フロントボディカバー16の内部空間K2の右側から前方側へ湾曲して延び、車体側電装部品に接続される。フロントボディカバー16の内部空間K2の右側には、車体側分岐ハーネス37aの他にブレーキホース33aが配策されている。しかし、ブレーキホース33aがステアリング軸23中心で回動する領域R1は、車体側分岐ハーネス37aが複数の固定部41~44によって経路を固定される範囲H1よりも内周側に設けられている。これにより、車体側分岐ハーネス37aおよびブレーキホース33aをまとめて車体右側に配置しながら、車体側分岐ハーネス37aおよびブレーキホース33aが互いに干渉することを抑えている。また、車体側分岐ハーネス37aおよびブレーキホース33aがまとめて車体右側に配置されるので、車体左側に収納ボックスを配置するためのスペースを広く確保することができる。
なお、
図4において、領域R1を示す円弧よりも内周側にスイッチハーネス37a7が位置しているが、スイッチハーネス37a7が配索される上下方向高さでは、ブレーキホース33aはステアリング軸23近くに配置され、スイッチハーネス37a7よりも内周側を回動するため、ブレーキホース33aとスイッチハーネス37a7とが干渉することはない。
【0051】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1は、車体本体22に操舵ハンドル2がステアリング軸23を中心に回動可能に支持され、前記ステアリング軸23の周囲が車体前部カバー(フロントボディカバー16)で覆われる鞍乗り型車両である。自動二輪車1は、前記操舵ハンドル2に支持され、前記操舵ハンドル2と一体的に回動する第一機能部品31(右ブレーキレバー31a、ハンドル側電装部品31b)と、前記第一機能部品31に接続される第一索状部材33(ブレーキホース33a、ハンドル側分岐ハーネス33b)と、前記操舵ハンドル2と一体的に回動することなく、前記車体本体22に支持される第二機能部品35(バッテリ35a、ヒューズボックス35b、ECU35c)と、前記第二機能部品35に接続される第二索状部材37(車体側分岐ハーネス37a)と、を備えている。前記第一索状部材33および前記第二索状部材37は、前記車体前部カバーの内側に形成される内部空間K2内に配置されている。前記車体本体22には、前記第二索状部材37の中間部を固定する複数の固定部41~44を備えている。前記第二索状部材37における前記複数の固定部41~44に固定される範囲H1は、前記ステアリング軸23を中心として前記第一索状部材33が回動する領域R1よりも径方向外側に配置されている。
【0052】
この構成によれば、車体本体22に固定される第二索状部材37が、操舵ハンドル2とともに回動する第一索状部材33の回動領域R1よりも径方向外側に配置されることで、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間K2において、第一索状部材33および第二索状部材37を互いに干渉することなくコンパクトに配置することができる。これにより、車体前部カバー内に他部品の配置スペースを確保しやすく、車体前部カバーの内部空間K2をコンパクトにしながら有効に利用することができる。
また、操舵ハンドル2とともに回動する第一索状部材33が、第二索状部材37よりもステアリング軸23に近付いて配置されることで、第一索状部材33の回動領域R1が小さくなり、電装部品および収納ボックス等の他部品の配置スペースを確保しやすくなり、車体前部カバーの内部空間K2をより有効に利用することができる。
また、車幅方向一側に第一索状部材33および第二索状部材37をまとめて配置しやすくなり、車幅方向他側のスペースを収納ボックス等の配置スペースとして有効利用するとともに、収納ボックスの容量を大きくすることができる。
【0053】
また、上記自動二輪車1において、前記第二機能部品35は、前記車体前部カバーの内部空間K2内で前記ステアリング軸23よりも車幅方向一側に配置された第一車体側電装部品(ヒューズボックス35b)を備え、前記第二索状部材37は、前記第一車体側電装部品に接続される第一ハーネス(ヒューズハーネス37a3)を備え、前記第二索状部材37における前記複数の固定部41~44に固定される範囲H1において、前記第一ハーネスは、前記ステアリング軸23を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品よりも外側に配置されている。
この構成によれば、形状が固定された電装部品よりも形状自由度の高い索状部材(ハーネス)を、ステアリング軸23中心の径方向で電装部品よりも外側に配置することで、形状が固定された電装部品は径方向内側の配置スペース内に収めながら、形状自由度の高いハーネスは径方向外側に配置して車体前部カバー近傍に沿わせて配置することができる。このため、車体前部カバーのデザイン自由度を高めつつ、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間K2を効率よく利用することができる。
また、車体前部カバー内で車幅方向一側に偏った第一車体側電装部品よりも径方向外側に、第一ハーネスが配置されることで、車幅方向他側からハーネスを退避させ、車体前部カバー内の車幅方向他側を他部品の配置スペースとして有効利用することができる。
【0054】
また、上記自動二輪車1において、前記ステアリング軸23を中心とした径方向で前記第一車体側電装部品よりも内側に、前記第一索状部材33が配置されている。
この構成によれば、ステアリング軸23中心の径方向で第一車体側電装部品よりも内側に、転舵部品である第一索状部材33が配置されることで、第一索状部材33と第二索状部材37(第一ハーネス)とが第一車体側電装部品を挟んで径方向で離間し、索状部材同士の干渉を抑えやすくすることができる。
【0055】
また、上記自動二輪車1において、前記車体前部カバーは、前記ステアリング軸23の車両前方側を覆う前方カバー(フロントカバー11a)と、前記ステアリング軸23の車両後方側を覆う後方カバー(インナーカバー11b)と、を備え、前記第二索状部材37における前記複数の固定部41~44に固定される範囲H1において、前記第一ハーネスは、前記第一車体側電装部品と前記前方カバーとの間に配置されている。
この構成によれば、ステアリング軸23の後方側は車体フレーム21等が存在するのに対し、ステアリング軸23の前方側は部品配置スペースを確保しやすいので、第一車体側電装部品と前方カバーとの隙間を有効利用でき、全体として当該部位を利用して第一車体側電装部品と前方カバーとの間に第一ハーネスを配置することで、車体前部カバーの内部空間K2をコンパクト化しつつ、効率よく利用することができる。
【0056】
また、上記自動二輪車1において、前記第二機能部品35は、前記車体前部カバーの内部空間K2内で前記ステアリング軸23と前記前方カバーとの間に配置される第二車体側電装部品(バッテリ35a)を備え、前記第二索状部材37は、前記第二車体側電装部品に接続される第二ハーネス(正負極ハーネス37a1,37a2)を備え、前記第二索状部材37における前記複数の固定部41~44に固定される範囲H1において、前記第二ハーネスは、前記第二車体側電装部品よりも車両前方側に配索され、前記複数の固定部41~44の内の少なくとも一つ(第二固定部42)は、前記第二車体側電装部品を支持する支持部材(バッテリケース39)に固定されている。
この構成によれば、形状が固定された電装部品はステアリング軸23と比較的近い前方位置に配置しながら、形状自由度の高いハーネスは電装部品よりも車両前方側に配置し、車体前部カバー近傍に沿わせて配置することができる。このため、車体前部カバーのデザイン自由度を高めつつ、スペースが限られた車体前部カバーの内部空間K2を効率よく利用することができる。第二車体側電装部品に接続される第二ハーネスは、第二車体側電装部品よりも車両前方側に離隔して配策されながら、第二車体側電装部品の直近で支持部材に固定されるので、第二ハーネスを安定して第二車体側電装部品に接続することができる。
【0057】
また、上記自動二輪車1において、前記第二機能部品35は、前記車体前部カバーの内部空間K2内で前記ステアリング軸23よりも車幅方向一側(右側)に配置され、かつ前記第一車体側電装部品の後方に配置される第三車体側電装部品(ECU35c)を備え、前記複数の固定部41~44の内、前記第二索状部材37における前記第一索状部材33が回動する領域R1よりも径方向外側に配置される範囲H1の始点となる第一固定部41は、車両側面視において、前記第三車体側電装部品よりも上方に配置され、前記第二索状部材37は、前記ステアリング軸23の近傍から前記第一固定部41に向かって上方に延びるように配索され、前記第一固定部41を通過後に車両前方側かつ下方へ延び、車両上面視において、前記第三車体側電装部品と前記第一固定部41とは、少なくとも一部が互いに重なっている。
この構成によれば、第二索状部材37をステアリング軸23の近傍で一端上方まで配索させた後、第一固定部41を通過した後の範囲H1(第一索状部材33が回動する領域R1よりも径方向外側に配置される範囲H1)で、下方へ配索する。このように、第三車体側電装部品を上下方向で避けながら第二索状部材37を配策し、第三車体側電装部品の配置スペースを設けやすくなるため、車体前部カバーの内部空間K2を有効利用するとともに、第三車体側電装部品のハーネスのコネクタ方向の自由度を上げることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態の構成は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 バーハンドル(操舵ハンドル)
9 ステアリング系部品
11a フロントボディカバー(前方カバー)
11b インナーカバー(後方カバー)
16 フロントボディカバー(車体前部カバー)
K2 内部空間
22 車体本体
23 ステアリング軸
31 第一機能部品
33 第一索状部材
35 第二機能部品
35a バッテリ(第二車体側電装部品)
35b ヒューズボックス(第一車体側電装部品)
35c ECU(第三車体側電装部品)
37 第二索状部材
37a1 正極ハーネス(第二ハーネス)
37a2 負極ハーネス(第二ハーネス)
37a3 ヒューズハーネス(第一ハーネス)
39 バッテリケース(支持部材)
41 第一固定部(固定部)
42 第二固定部(固定部)
43 第三固定部(固定部)
44 第四固定部(固定部)
H1 範囲
R1 領域