IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北川工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-導電反射膜 図1
  • 特開-導電反射膜 図2
  • 特開-導電反射膜 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051676
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】導電反射膜
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/14 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
C23C14/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157962
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 丈
(72)【発明者】
【氏名】朝川 一聡
(72)【発明者】
【氏名】古田 健
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA11
4K029BA04
4K029BA21
4K029CA05
4K029DC04
4K029DC34
4K029DC35
4K029DC39
(57)【要約】
【課題】外観異常が発生しにくく、長期的な使用が可能になるよう耐食性を改善した導電反射膜を提供する。
【解決手段】導電反射膜は、ガラス又は樹脂からなる基材上に、マンガンを3~7mass%含む銀合金の導電層を備えた構成を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス又は樹脂からなる基材上に、マンガンを3~7mass%含む銀合金の導電層を備えた、
導電反射膜。
【請求項2】
請求項1に記載の導電反射膜であって、
前記導電層の厚さが10~40nmであり、60℃、95%RHの空気中で、1000時間後に測定した腐食面積比が3%以下である、
導電反射膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電反射膜に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルやセンサなどに使用される薄膜には、電気抵抗が低く、反射率の高い物が求められている。そして、そうした導電反射膜として、銀をスパッタリングした物の検討が進められている。また、従来のスパッタリングターゲットとして、銀に様々な元素を添加した合金を使用することにより、特に高温・高湿環境下において、電気抵抗の増加や反射率の低下が起こりにくくなるよう特性を改善する試みが行われてきた。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-002929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の銀を用いた導電反射膜は、銀が空気中の酸素や水分、硫黄、ハロゲンなどと反応してしまうため、電気的特性や光学的特性の低下に加え、外観異常が発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、外観異常が発生しにくく、長期的な使用が可能になるよう耐食性を改善した導電反射膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明の構成について説明する。
(1)本発明の導電反射膜は、ガラス又は樹脂からなる基材上に、マンガンを3~7mass%含む銀合金の導電層を備えた構成を有する。
【0007】
なお、上記の導電反射膜は、更に以下のような構成を備えていてもよい。
(2)導電層の厚さが10~40nmであり、60℃、95%RHの空気中で、1000時間後に測定した腐食面積比が3%以下である導電反射膜である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電反射膜は、スパッタリングされた銀合金膜中に含まれるマンガン成分が、膜の表面付近に偏析している。そのため、空気中の酸素や水分、硫黄、ハロゲンなどに対して、銀よりも優先的にマンガンが反応し、導電反射膜の導電層の表面に、マンガンの酸化被膜が形成されやすい構成になっている。こうして形成されるマンガンの酸化被膜は、銀と空気中の酸素や水分、硫黄、ハロゲンなどとの反応を阻害するため、結果的に導電反射膜の耐食性を向上させることができる。
【0009】
なお、スパッタリングによる成膜には、膜を構成する材料となるスパッタリングターゲットが必要となる。スパッタリングターゲットとなる銀合金中のマンガン成分が7mass%より多くなる場合、成分の偏りにより、安定したスパッタリングができなくなり、成膜された導電反射膜の均一性が損なわれてしまうため、本発明のように優れた耐食性を発揮することができなくなる。また、スパッタリングターゲットとなる銀合金中のマンガン成分が3mass%未満の場合、成膜された導電反射膜の表面に、前記のマンガンの酸化被膜が形成されにくくなるため、本発明のように優れた耐食性を発揮することができなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の導電反射膜の構成を模式的に表した断面図である。
図2図2Aは実施例1の表面状態を示す写真である。図2Bは実施例2の表面状態を示す写真である。図2Cは実施例3の表面状態を示す写真である。図2Dは実施例4の表面状態を示す写真である。図2Eは実施例5の表面状態を示す写真である。図2Fは実施例6の表面状態を示す写真である。図2Gは実施例7の表面状態を示す写真である。
図3図3Aは比較例1の表面状態を示す写真である。図3Bは比較例2の表面状態を示す写真である。図3Cは比較例3の表面状態を示す写真である。図3Dは比較例4の表面状態を示す写真である。図3Eは比較例5の表面状態を示す写真である。図3Fは比較例6の表面状態を示す写真である。図3Gは比較例7の表面状態を示す写真である。図3Hは比較例8の表面状態を示す写真である。図3Iは比較例9の表面状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の導電反射膜の実施形態を説明する。
図1に示すように、導電反射膜1は、導電層2及び基材層3を備える。導電層2と基材層3とは互いに接合されている。
【0012】
(導電層)
導電層2は、銀(Ag)を主成分としてマンガン(Mn)を含む合金の薄膜からなり、耐食性や導電性、反射性などの機能を有する。
【0013】
導電層2の厚みは、10nm~40nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。導電層2の厚みが前記範囲にある場合、成膜された導電反射膜1は、優れた耐食性を示す。
【0014】
(基材層)
基材層3は、ガラスや樹脂製フィルムからなり、導電反射膜1の強度確保や、導電層2の支持等の目的で利用される。樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを使用することができる。
【0015】
基材層3が樹脂フィルムの場合、その厚みは8μm~250μmが好ましく、20μm~120μmがより好ましく、38μm~100μmがさらに好ましい。また、基材層3がガラスの場合、その厚みは0.4mm~5mmが好ましく、0.6~3mmがより好ましく、0.6mm~1.0mmがさらに好ましい。基材層3の厚みが前記範囲にある場合、成膜時に基材層中から発生するアウトガス(主に酸素)の導電反射膜1に対する影響を小さくすることができる。
【0016】
(成膜方法)
導電層2を基材層3上に成膜する方法は、目的に応じて適宜選択される。成膜方法としては、例えば、真空蒸着法(電子線ビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、イオンアシスト法、レーザーアブレーション法等の物理的気相成長(PVD)法や、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の化学的気相成長(CVD)法等が挙げられる。これらの中でも、物理的気相成長(PVD)法が好ましく、基材層3に対して、導電層2を確実に積層し易い等の理由により、スパッタリング法が特に好ましい。
【0017】
スパッタリング法としては、例えば、パルスDCマグネトロンスパッタリング法を選択することができ、成膜が速いため、短時間に大量のスパッタリングを施すことができる。また、RFの高周波電力をDC放電に重畳させたRF重畳DCマグネトロンスパッタリング法も選択することができ、RF重畳による低電圧放電により、スパッタリング工程中に発生する負イオンのエネルギーを抑制し、ダメージの少ない成膜をすることができる。
【0018】
また、導電層2を基材層3上へ成膜する際には、枚葉成膜方式またはロールtоロール方式で成膜することが好ましい。枚葉成膜方式の場合には、不純物が混入しづらく、より均質な導電反射膜1を成膜することができる。また、ロールtоロール方式の場合には、高速で大量に導電反射膜1を成膜することができる。
【0019】
(評価方法)
成膜した導電反射膜1に対し、外観上の問題(主に変色)が発生していないか、下記の手順で耐食性の評価を行った。なお、成膜された導電反射膜1の評価は、下記の条件の腐食試験の前後で行った。
【0020】
<腐食条件>
・試験装置:恒温恒湿器(エスペック株式会社製)
・装置型番:PL-1J
・温度:60℃
・湿度:95%RH
・試験時間:1000時間
【0021】
<外観の耐食性評価>
基材層3がガラスの場合、成膜した縦6cm×横6cmの導電反射膜に対し、1マスが縦0.6cm、横0.6cmとなる格子を合計100マス形成し、各マスに対して下記の基準で目視による判定を行い、出された判定値の合計を算出した。
基材層3が樹脂製フィルムの場合、成膜した縦3cm×横3cmの導電反射膜に対し、1マスが縦0.3cm、横0.3cmとなる格子を合計100マス形成し、各マスに対して下記の基準で目視による判定を行い、出された判定値の合計を算出した。
上記で算出した判定値のそれぞれの合計値が、3未満のものを○、3以上10未満のものを△、10以上のものを×として、表1に示す。
・1マスの腐食面積比が75%以上の場合の判定値:1
・1マスの腐食面積比が50%以上75%未満の場合の判定値:0.75
・1マスの腐食面積比が25%以上50%未満の場合の判定値:0.5
・1マスの腐食面積比が5%以上25%未満の場合の判定値:0.25
・1マスの腐食面積比が5%未満の場合の判定値:0
【0022】
【表1】
【0023】
また、成膜した導電反射膜1の電気的特性および光学的特性の評価として、下記の反射率、日射反射率、および表面抵抗率の評価も行った。なお、外観の耐食性評価と同様に、電気的特性および光学的特性の評価も、上記の条件の腐食試験の前後で行った。
【0024】
<反射率>
JIS R 3106に規定される手順に従い、成膜した各導電反射膜1に対する反射率の測定を行った。その結果を表2に示す。なお、変化率とは、腐食前の測定値に対する、腐食で変化した差分の値で表される。
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス株式会社製)
・装置型番:UH4150
・測定波長:2000nm
【0025】
【表2】
【0026】
<日射反射率>
JIS R 3106に規定される手順に従い、成膜した各導電反射膜1に対する日射反射率の測定を行った。その結果を表3に示す。なお、変化率とは、腐食前の測定値に対する、腐食で変化した差分の値で表される。
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス株式会社製)
・装置型番:UH4150
・測定波長:300~2500nm
【0027】
【表3】
【0028】
<表面抵抗率>
JIS K 7194に規定される手順に従い、成膜した各導電反射膜1に対する表面抵抗率(電気抵抗に相当)の測定を行った。その結果を表4に示す。
・測定装置:ロレスタ-GP(三菱化学社製)
・型番:MCP-T6000
・プローブ:ESPプローブ(四探針プローブ)
【0029】
【表4】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
RF重畳DCマグネトロンスパッタリングの装置を用いて、基材層上に厚さ10~40nmのAg合金を成膜した。前記スパッタリング装置の各チャンバー内に供給されるガス(例えば、アルゴンガスや酸素ガス)の流量は、所定のマスフローコントローラを用いて適宜調整した。なお、スパッタリングの成膜条件は以下の通りである。
【0031】
<成膜条件>
・スパッタリングターゲット:Ag-Mnターゲット(田中貴金属工業株式会社製)
・成膜圧力:0.4Pa
・導電反射膜の寸法
・基材がガラスの場合、縦6cm×横6cmの正方形
・基材が樹脂製フィルムの場合、縦3cm×縦3cmの正方形
スパッタリングターゲット中のMnの含有量およびDC電源パワーについては、各実施例・比較例にて記載する。
【0032】
<実施例1>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを3mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.23W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Aは実施例1の表面状態を示す写真である。
【0033】
<実施例2>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを5mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.25W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Bは実施例2の表面状態を示す写真である。
【0034】
<実施例3>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを7mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.26W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Cは実施例3の表面状態を示す写真である。
【0035】
<実施例4>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを3mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.23W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Dは実施例4の表面状態を示す写真である。
【0036】
<実施例5>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを5mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.25W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Eは実施例5の表面状態を示す写真である。
【0037】
<実施例6>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを7mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.26W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Fは実施例6の表面状態を示す写真である。
【0038】
<実施例7>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを7mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.56W/cmのスパッタリングにより厚さ40nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図2Gは実施例7の表面状態を示す写真である。
【0039】
<比較例1>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを1mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.21W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Aは比較例1の表面状態を示す写真である。
【0040】
<比較例2>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀のみを含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.19W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Bは比較例2の表面状態を示す写真である。
【0041】
<比較例3>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてインジウムを20mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.35W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Cは比較例3の表面状態を示す写真である。
【0042】
<比較例4>
基材層3として、厚さ50μmの樹脂製フィルムの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてパラジウムを1mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.21W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Dは比較例4の表面状態を示す写真である。
【0043】
<比較例5>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを1mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.21W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Eは比較例5の表面状態を示す写真である。
【0044】
<比較例6>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてマンガンを1mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.45W/cmのスパッタリングにより厚さ40nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Fは比較例6の表面状態を示す写真である。
【0045】
<比較例7>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀のみを含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.19W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Gは比較例7の表面状態を示す写真である。
【0046】
<比較例8>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてインジウムを20mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.35W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Hは比較例8の表面状態を示す写真である。
【0047】
<比較例9>
基材層3として、厚さ0.7mmのガラスの基材を用意した。その基材の一方の面上に、銀を主成分としてパラジウムを1mass%含むターゲットを用いて、DC電源パワーが0.21W/cmのスパッタリングにより厚さ10nmの導電層2を形成し、導電反射膜1を得た。図3Iは比較例9の表面状態を示す写真である。
【0048】
表1から、実施例1~実施例7は、腐食による外観の変化が小さいことが示唆された。また、比較例1、5、6は、その他の比較例と比較すると判定値は低いものの、実施例と比較すると、少し気になる程度に外観の変化が大きいことが示唆された。共通点として、銀を主成分としてマンガンを含む導電反射膜は、銀単体や他の銀合金と比較して、腐食による外観の変化が起きにくいと予想される。
【0049】
表2から、実施例1~実施例7は、腐食試験後でも55%以上の高い反射率を維持することができると示唆された。また、比較例4~比較例6および比較例9の反射率の変化率も比較的低く、マンガンまたはパラジウムを含む銀合金は、腐食試験後でも反射率を高く維持しやすいと考えられる。なお、実施例1~実施例3および比較例1から、銀合金中に含まれるマンガン量は少ないほど変化率を抑制することが可能だが、マンガン量が少なすぎると変化率の抑制効果は小さくなってしまうことが伺える。
【0050】
表3から、日射反射率も、表2に示される反射率と同様の傾向が見られた。すなわち、マンガンまたはパラジウムを含む銀合金は、腐食試験後でも日射反射率を高く維持しやすいと考えられる。また、銀合金中のマンガン量は少ない方が変化率を抑制することが可能だが、マンガン量が少なすぎると変化率の抑制効果は小さくなってしまうことが伺える。
【0051】
表4から、実施例1~実施例7は、腐食試験後でも約30Ω/cm以下の低い表面抵抗率を維持することができると示唆された。なお、比較例1、比較例4~比較例6、および比較例9も腐食試験後で30Ω/cm以下の表面抵抗率となるが、その中でも比較例4、9の表面抵抗率は、腐食試験後の変化率が高い。つまり、マンガンを含む銀合金は、他の元素を含む銀合金よりも、腐食による変化を抑制しつつ、比較的低い表面抵抗率を有していると考えられる。
【0052】
以上の表1~表4の結果から、マンガンを含む銀合金は、他の元素を含む銀合金と比較して、導電反射膜に要求される特性を有しつつ、外観異常も発生しにくい耐食性も有するということがわかった。
【符号の説明】
【0053】
1…導電反射膜1、2…導電層、3…基材層。
図1
図2
図3