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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051690
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/537 20060101AFI20240404BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20240404BHJP
【FI】
G01S7/537
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157981
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】崎内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍也
(72)【発明者】
【氏名】遠島 康平
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC13
5J083AD04
5J083AE10
5J083AF06
5J083AF07
5J083BB06
5J083BB09
5J083CA01
5J083CB01
5J083DA01
5J083EB11
(57)【要約】
【課題】他の車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、確実に超音波の干渉を回避すること。
【解決手段】物体検出装置であって、送信波を送信し、送信波が物体に反射されることにより生じる受信波を受信する送受信部に対して、所定の送信タイミングで送信波を送信させる制御を行う制御部と、送信波と受信波とに基づいて、物体との距離を算出する距離算出部と、物体との距離が第1の距離より大きい、または物体が検出されない通常状態と、物体との距離が第1の距離以下である第1の接近状態と、物体との距離が、第1の距離より小さい第2の距離以下である第2の接近状態と、のそれぞれに応じて、送信タイミングをずらすための待ち時間であるランダム時間を決定する決定部と、を備え、制御部は、送信タイミングを、決定されたランダム時間だけ遅らせた新たな送信タイミングで、送信波を送信するように送受信部を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出装置であって、
送信波を送信し、前記送信波が前記物体に反射されることにより生じる受信波を受信する送受信部に対して、所定の送信タイミングで前記送信波を送信させる制御を行う制御部と、
前記送信波と受信波とに基づいて、前記物体との距離を算出する距離算出部と、
前記物体との距離が第1の距離より大きい、または前記物体が検出されない通常状態と、前記物体との距離が第1の距離以下である第1の接近状態と、前記物体との距離が、前記第1の距離より小さい第2の距離以下である第2の接近状態と、のそれぞれに応じて、前記送信タイミングをずらすための待ち時間であるランダム時間を決定する決定部と、を備え、
前記制御部は、前記送信タイミングを、決定された前記ランダム時間だけ遅らせた新たな送信タイミングで、前記送信波を送信するように前記送受信部を制御する、
物体検出装置。
【請求項2】
前記第1の距離は、前記第1の接近状態に対応する前記ランダム時間と前記通常状態に対応する前記ランダム時間との差分に基づく距離より小さく、前記第2の距離は、前記第2の接近状態に対応する前記ランダム時間と前記通常状態に対応する前記ランダム時間との差分の時間に基づく距離より小さく、
前記決定部は、前記制御部により前記第1の接近状態または前記第2の接近状態で前記新たな送信タイミングで送信波が送信された後は、前記通常状態に応じた前記ランダム時間を決定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記車両の前部に設けられた前記送受信部からの前記送信波のランダム時間と、前記車両の後部に設けられた前記送受信部からの前記送信波のランダム時間と、を異なる時間に決定する、
請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記通常状態、前記第1の接近状態、および前記第2の接近状態のそれぞれに対応して、ランダム時間が定められたランダム情報を記憶する記憶部、をさらに備え、
前記決定部は、前記通常状態、前記第1の接近状態、および前記第2の接近状態と、前記ランダム情報と、に基づいて、前記ランダム時間を決定する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両制御システム等において、車両から超音波等の送信波を送信し、送信波が物体に反射することにより生じる受信波(反射波)を受信することにより、車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出装置が利用されている。
【0003】
このような物体検出装置において、超音波を送信するタイミングが、自車両と他の車両で一定の関係になった場合に、他の車両が送信した超音波を、自車両で送信した超音波と誤認してしまうという干渉が生じる場合がある。従来技術では、自車両で超音波を送信するタイミングを変えることにより、このような干渉を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6413620号公報
【特許文献2】特開2018-59826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自車両側が干渉を受けているときは、他車両側も同様に自車両からの超音波により干渉を受けている。このため、このような従来技術では、自車両と他車両ともに、干渉回避手法が同じである同一の物体検出装置を搭載している場合、自車両、他車両がともに干渉を回避しあった結果、結局、超音波を送信するタイミングが一致してしまい、干渉を回避できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の物体検出装置は、車両に搭載され、前記車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出装置であって、送信波を送信し、前記送信波が前記物体に反射されることにより生じる受信波を受信する送受信部に対して、所定の送信タイミングで前記送信波を送信させる制御を行う制御部と、前記送信波と受信波とに基づいて、前記物体との距離を算出する距離算出部と、前記物体との距離が第1の距離より大きい、または前記物体が検出されない通常状態と、前記物体との距離が第1の距離以下である第1の接近状態と、前記物体との距離が、前記第1の距離より小さい第2の距離以下である第2の接近状態と、のそれぞれに応じて、前記送信タイミングをずらすための待ち時間であるランダム時間を決定する決定部と、を備え、前記制御部は、前記送信タイミングを、決定された前記ランダム時間だけ遅らせた新たな送信タイミングで、前記送信波を送信するように前記送受信部を制御する。
【0007】
当該構成により、一例として、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【0008】
また、実施形態の物体検出装置において、前記第1の距離は、前記第1の接近状態に対応する前記ランダム時間と前記通常状態に対応する前記ランダム時間との差分に基づく距離より小さく、前記第2の距離は、前記第2の接近状態に対応する前記ランダム時間と前記通常状態に対応する前記ランダム時間との差分の時間に基づく距離より小さく、前記決定部は、前記制御部により前記第1の接近状態または前記第2の接近状態で前記新たな送信タイミングで送信波が送信された後は、前記通常状態に応じた前記ランダム時間を決定する。
【0009】
当該構成により、一例として、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、より確実に干渉を回避することが可能となる。
【0010】
また、実施形態の物体検出装置において、前記決定部は、前記車両の前部に設けられた前記送受信部からの前記送信波のランダム時間と、前記車両の後部に設けられた前記送受信部からの前記送信波のランダム時間と、を異なる時間に決定する。
【0011】
当該構成により、一例として、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、車両の進行方向に応じて、確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【0012】
また、実施形態の物体検出装置において、前記通常状態、前記第1の接近状態、および前記第2の接近状態のそれぞれに対応して、ランダム時間が定められたランダム情報を記憶する記憶部、をさらに備え、前記決定部は、前記通常状態、前記第1の接近状態、および前記第2の接近状態と、前記ランダム情報と、に基づいて、前記ランダム時間を決定する。
【0013】
当該構成により、一例として、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、簡易に、かつより確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態にかかる車両の構成の一例を示す上面図である。
図2図2は、実施形態にかかる車両制御システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態にかかる物体検出装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、本実施形態におけるで車両状態の遷移の一例を示す図である。
図5A図5Aは、本実施形態において車両状態が通常状態である場合のランダムテーブルの一例を示す図である。
図5B図5Bは、本実施形態において車両状態が第1の接近状態である場合のランダムテーブルの一例を示す図である。
図5C図5Cは、本実施形態において車両状態が第2の接近状態である場合のランダムテーブルの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態にかかる超音波の送信処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、従来の物体検出装置におけるランダム時間だけずらした超音波の送信タイミングの一例を示す図である。
図8図8は、従来の物体検出装置におけるランダム時間だけずらした超音波の送信タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0016】
図1は、実施形態にかかる車両1の構成の一例を示す上面図である。車両1は、本実施形態にかかる物体検出装置が搭載される移動体の一例である。本実施形態にかかる物体検出装置は、車両1から送信波を送信し、送信波が物体に反射されることにより生じる受信波(反射波)を受信することにより取得されるTOF(Time Of Flight)、ドップラーシフト等の情報に基づいて、車両1の周辺に存在する物体を検出する装置である。
【0017】
本実施形態にかかる物体検出装置は、複数の送受信部21A~21Lに接続されている。ここで、複数の送受信部21A~21Lを区別する必要がない場合には、以下、送受信部21と称する。
【0018】
各送受信部21は、車両1の外装としての車体2に設置され、車体2の外側へ向けて超音波(送信波の一例)を送信し、車体2の外側に存在する物体からの反射波を受信波として受信する。図1に示す例では、車体2の前端部に4つの送受信部21A~21Dが配置され、後端部に4つの送受信部21E~21Hが配置され、右側面部に2つの送受信部21I,21Jが配置され、左側面部に2つの送受信部21K,21Lが配置されている。なお、送受信部21の数及び設置位置は本例に限定されるものではない。
【0019】
図2は、実施形態にかかる車両制御システム50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。車両制御システム50は、送受信部21から出力される情報に基づいて車両1を制御するための処理を行う。本実施形態にかかる車両制御システム50は、ECU(Electronic Control Unit)100と、複数の送受信部21と、ブレーキシステム221と、ブザー222と、エンジン223と、を主に備えている。
【0020】
ECU100と、各送受信部21とは、車内ネットワークであるLIN(Local Interconnect Network)240によって接続されている。また、ECU100と、ブレーキシステム221、ブザー222、エンジン223、シフトセンサ224のそれぞれは、車内ネットワークであるCAN(Controller Area Network)230によって接続されている。
【0021】
各送受信部21は、圧電素子等を利用して構成される振動子211、増幅器等を含み、振動子211の振動により超音波の送受信を実現するものである。具体的には、各送受信部21は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波が障害物O、路面RS等の物体により反射された反射波(受信波)によりもたらされる振動子211の振動を検出する。振動子211の振動は、電気信号に変換され、当該電気信号に基づいて送受信部21から障害物Oまでの距離に対応するTOF、障害物Oの相対速度に対応するドップラーシフト情報等を取得できる。
【0022】
なお、図2に示す例では、送信波の送信と受信波の受信との両方が単一の振動子211を利用して行われる構成が例示されているが、送受信部21の構成はこれに限定されるものではない。例えば、送信波の送信用の振動子と受信波の受信用の振動子とが個別に設けられた構成のように、送信側と受信側とが分離された構成であってもよい。
【0023】
ECU100は、各種情報に基づいて、車両1を制御するための各種処理を実行するユニットである。ECU100は、CAN230を通じて制御信号を送ることで、ブレーキシステム221やエンジン223等を制御したり、ブザー222に音声を出力することができる。また、ECU100は、CAN230介して、不図示の各種センサ等の検出結果を受け取ることができる。
【0024】
ECU100は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)130と、SSD121(Solid State Drive)と、ROM(Read Only Memory)122と、RAM(Random Access Memory)123と、を備えている。ECU100は、物体検出装置の一例である。ECU100を、物体検出装置100と称する場合もある。
【0025】
CPU130は、例えば、ブザー222への警報の出力処理や、物体の検出、物体との干渉の有無の判断の他、各種の演算処理および制御を実行することができる。ROM122は、不揮発性の記憶装置である。ROM122には、予めプログラムが記憶されている。CPU130は、ROM122に記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。
【0026】
RAM123は、CPU130の演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、SSD121は、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU100の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU130や、ROM122、RAM123等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU100は、CPU130に替えて、DSP(Digital Signal Processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD121に替えてHDD(Hard Disk Drive)が設けられてもよいし、SSD121やHDDは、ECU100とは別に設けられてもよい。
【0027】
ブレーキシステム221は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(Anti-lock Brake System)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(Brake By Wire)等である。
【0028】
エンジン223は、車両1を駆動させる原動機である。
ブザー222は、車両1の内部に設けられ、警報を出力する。
【0029】
次に、物体検出装置(ECU)100の機能的構成について説明する。
図3は、本実施形態にかかる物体検出装置100の機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態にかかる物体検出装置100は、図3に示すように、音波制御部150と、車両状態推定部160と、報知制御部162と、車両情報管理部163と、制動制御部164と、を主に備えた機能的構成となっている。
【0030】
車両状態推定部160は、車両1の各種状態を推定する。本実施形態では、後述する検知距離算出部1521で算出された物体との距離に基づいて、車両1の状態を、通常状態、第1の接近状態、第2の接近状態のいずれかに推定する。ここで、通常状態、第1の接近状態、第2の接近状態の詳細については後述する。
【0031】
報知制御部162は、車両1が物体に接近している場合、すなわち、後述する検知距離算出部1521により送受信部21で送受信する超音波に基づいて物体との距離が,後述する異常検出部1522により所定距離以下となったと判断された場合に、ブザー222から警報を出力させることで報知する。車両情報管理部163は、車両1の各種情報を管理する。制動制御部164は、ブレーキシステム221による制動を制御する。
【0032】
音波制御部150は、送受信部21による超音波の送信を制御したり、送受信部21で受信した反射波に基づく情報を管理する。音波制御部150は、図3に示すように、送受信制御部1510と、送受信情報管理部1520とを備えている。
【0033】
送受信制御部1510は、送受信部21による超音波の送受信を制御する。送受信制御部1510は、図3に示すように、送波制御部1511と、ランダム時間決定部1512と、ランダムテーブル1513と、を備えている。
【0034】
送波制御部1511は、送受信部に対して、所定の送信タイミングで超音波を送信させる制御を行う。より具体的には、送波制御部1511は、送信タイミングを、後述するランダム時間決定部1512で決定されたランダム時間だけ遅らせた新たな送信タイミングで、超音波を送信するように送受信部21を制御する。ここで、ランダム時間とは、超音波の送信タイミングをずらすための待ち時間である。送波制御部1511は、制御部の一例である。
【0035】
ランダム時間決定部1512は、車両1の状態として、通常状態と、第1の接近状態と、第2の接近状態と、のそれぞれに応じて、ランダム時間を決定する。ランダム時間決定部1512は、決定部の一例である。
【0036】
また、通常状態とは、第物体との距離が第1の距離より大きい、または物体が検出されない状態である。第1の接近状態とは、物体との距離が第1の距離以下である状態である。第2の接近状態とは、第1の距離より小さい第2の距離以下である状態である。本実施形態では、検知距離算出部1521で算出された物体との距離に基づき、車両状態を三つの状態に分類しており、車両状態が、この三つの状態の間で遷移する。本実施形態では、第1の距離を3mとし、第2の距離を1mとしているが、これに限定されるものではない。
【0037】
図4は、本実施形態におけるで車両状態の遷移図である。
車両状態が通常状態である場合において、検出された物体との距離が第1の距離である3m以下で連続同じ距離(移動距離補正後15cm以内)で、かつ直前2回に第1の接近状態に遷移していない場合、車両状態は、第1の接近状態に遷移する。
【0038】
車両状態が通常状態である場合において、検出された物体との距離が第2の距離である1m以下で有る場合には、1回目に1m以下となったときに、車両状態は、第2の接近状態に遷移する。
これら以外の場合には、車両状態は、通常状態から遷移しない。
【0039】
また、車両状態が、第1の接近状態に遷移した後は、第2の接近状態に遷移せずに、通常状態に遷移する。車両状態が、第2の接近状態に遷移した後は、第1の接近状態に遷移せずに、通常状態に遷移する。
【0040】
すなわち、ランダム時間決定部1512は、第1の接近状態でのランダム時間または第2の接近状態でのランダム時間を決定して、送波制御部1511で新たな送信タイミングで送信波を送信した後は、通常状態でのランダム時間を決定する。
【0041】
具体的には、ランダム時間決定部1512は、ランダムテーブル1513を参照して、車両1の状態に応じて、車両1の前部に設けられた送受信部21A~21Dからの送信波としての超音波のランダム時間と、車両1の後部に設けられた送受信部21E~21Hからの超音波のランダム時間と、異なる時間に決定する。
【0042】
ランダムテーブル1513は、SSD121等の記憶媒体に記憶されている。ランダムテーブル1513は、車両状態、すなわち、通常状態、第1の接近状態、第2の接近状態ごとに、車両1の前部に設けられた送受信部21A~21Dからの送信波のランダム時間(第1のランダム時間の一例)と、車両1の後部に設けられた送受信部21E~21Hからの送信波のランダム時間(第2のランダム時間の一例)とが定められている。
【0043】
図5A~5Cは、本実施形態にかかるランダムテーブルの一例を示す図である。図5Aは、通常状態の場合のランダムテーブルの一例を示す図である。図5Bは、第1の接近状態の場合のランダムテーブルの一例を示す図である。図5Cは、第2の接近状態の場合のランダムテーブルの一例を示す図である。
【0044】
図5A~5Cにおいて、Fr(フロント)のランダム時間が車両1の前部に設けられた送受信部21A~21Dからの送信波(すなわち、超音波)のランダム時間(第1のランダム時間)であり、Rr(リア)のランダム時間が、車両1の後部に設けられた送受信部21E~21Hからの送信波(すなわち、超音波)のランダム時間(第2のランダム)である。また、それぞれ3つのランダム時間が設定されているが、この中から任意のランダム時間が決定される。
【0045】
ここで、第1の距離は、第1の接近状態に対応するランダム時間と通常状態に対応するランダム時間との差分に基づく距離より小さい。また、第2の距離は、第2の接近状態に対応するランダム時間と通常状態に対応するランダム時間との差分の時間に基づく距離より小さい、
【0046】
すなわち、音波は送信タイミングが1msずれると、約175mmの距離の推定誤差となる。なお、当該推定誤差は、温度によって異なる。車両状態が通常状態から第1の接近状態または第2の接近状態に遷移して、ランダムテーブル1513を変更する場合には、ランダム時間決定部1512は、ランダム時間と遷移条件となる検知距離、すなわち第1の距離、第2の距離が以下の(1)、(2)式の条件をみたすようにランダムテーブルの最小値を選択する。
【0047】
通常状態から第1の接近状態へ遷移する場合
175*(第1の接近状態のランダム時間最小値-通常状態のランダム時間の最大値)
>第1の距離・・・(1)
【0048】
通常状態から第2の接近状態へ遷移する場合
175*(第2の接近状態のランダム時間最小値-通常状態のランダム時間の最大値)
>第2の距離・・・(2)
【0049】
すなわち、本実施形態では第1の距離が3mであるため、図5A図5B式のランダムテーブル1513では、ランダム時間が上記(1)式を満たすように設定されている。また、本実施形態では第2の距離が3mであるため、図5A図5C式のランダムテーブル1513では、ランダム時間が上記(2)式を満たすように設定されている。
【0050】
そして、上述したように、車両状態が、第1の接近状態に遷移した後は、第2の接近状態に遷移せずに、通常状態に遷移する。車両状態が、第2の接近状態に遷移した後は、第1の接近状態に遷移せずに、通常状態に遷移する。すなわち、ランダム時間決定部1512は、通常状態のランダムテーブルからランダム時間を決定する。このため、第1の接近状態に遷移した後、通常状態に遷移すると、第1の接近状態のランダム時間と通常状態のランダム時間の差分に175mを乗じた距離が第1の距離より大きくなり、この距離分、超音波が送信されないことになるため、他車両の超音波との干渉を回避することができる。
【0051】
同様に、第2の接近状態に遷移した後、通常状態に遷移すると、第2の接近状態のランダム時間と通常状態のランダム時間の差分に175mを乗じた距離が第2の距離より大きくなり、この距離分、超音波が送信されないことになるため、他車両の超音波との干渉を回避することができる。
【0052】
送受信情報管理部1520は、送受信部21で受信した反射波に基づく情報を管理する。送受信情報管理部1520は、図3に示すように、検知距離算出部1521と、異常検出部1522と、を備えている。
【0053】
検知距離算出部1521は、送受信部21で送信した送信波および受信した反射波に基づいて、物体までの距離を算出する。具体的には、検知距離算出部1521は、送信波が物体に反射されることにより生じる受信波(反射波)を受信することにより取得されるTOF、ドップラーシフト等の情報に基づいて物体を検出し、物体との距離を算出する。ここで、距離の算出手法は公知の手法が用いられる。
【0054】
異常検出部1522は、車両1等の異常を検出する。本実施形態では、異常検出部1522は、検知距離算出部1521により算出された距離が所定距離以下である場合には、物体に接近していると判断する。また、異常検出部1522は、検知距離算出部1521により算出された距離に基づいて、超音波が干渉しているか否かを検出する。例えば、異常検出部1522は、検知距離算出部1521により算出された距離が所定の閾値以下であることを連続して3回検出した場合には、超音波が干渉していると判断する。なお、超音波の干渉の検出手法はこれに限定されるものではない。
【0055】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる物体検出装置100による超音波の送信処理について説明する。
図6は、本実施形態にかかる超音波の送信処理の手順の一例を示すフローチャートである。この送信処理は、車両1の走行開始から実施される。
【0056】
まず、ランダム時間決定部1512は、検知距離算出部1521で算出された物体との距離を取得する(S11)。そして、ランダム時間決定部1512は、取得した今回の距離が第2の距離以下か否かを判断する(S12)。ここで、第2の距離以下となる回数は1回とする。そして、距離が第2の距離以下である場合には(S12:Yes)、車両状態は第2の接近状態に遷移し、ランダム時間決定部1512は、ランダム時間を、図5Cに示す第2の接近状態のランダムテーブル1513から選択する(S13)。
【0057】
S12で、距離が第2の距離より大きい場合には(S12:No)、ランダム時間決定部1512は、今回の距離が第1の距離以下で2回連続して同じ距離であるか否かを判断する(S14)。今回の距離が第1の距離以下で2回連続して同じ距離である場合には(S14:Yes)、車両状態は第1の接近状態に遷移し、ランダム時間決定部1512は、ランダム時間を、図5Bに示す第1の接近状態のランダムテーブル1513から選択する(S15)。
【0058】
そして、送波制御部1511は、S13,S15で決定されたランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信するように送受信部21を制御し、これにより送受信部21が、ランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信する(S17)。
【0059】
次に、車両状態は通常状態に遷移し、ランダム時間決定部1512は、ランダム時間を、図5Aに示す通常状態のランダムテーブル1513から選択する(S18)。
【0060】
そして、送波制御部1511は、S18で決定されたランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信するように送受信部21を制御し、これにより送受信部21が、ランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信する(S19)。
【0061】
S14に戻り、今回の距離が第1の距離より大きく、あるいは第1の距離以下でも2回連続して同じ距離でない場合には(S14:No)、ランダム時間決定部1512は、ランダム時間を、図5Aに示す通常状態のランダムテーブルから選択する(S16)。
【0062】
そして、送波制御部1511は、S16で決定されたランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信するように送受信部21を制御し、これにより送受信部21が、ランダム時間だけずらしたタイミングで超音波を送信する(S19)。
【0063】
従来、車両において超音波を送信して物体を検出し、物体との距離が所定距離以下の近距離の場合には、ブザーから警報出力を行っている。ここで、超音波を送信するタイミングが自車両と他車両とで一定の関係になった場合に、他車両が送信した超音波を自車両で受信した場合、当該超音波を自車両が送信した超音波の反射波であると誤認識するという、いわゆる干渉が生じる場合がある。例えば、自車両と他車両で同時に超音波を送信したとすると、自車両では半分の距離から返ってきた超音波を反射波と誤認識する。このため、物体が近距離にあり、ブザー出力の範囲内と誤認識すると、ブザーの誤出力につながる。
【0064】
このため、このような干渉による誤認識を回避する方法として、従来の物体検出装置では、所定の閾値以上連続で同一距離を検知した場合に、干渉が生じていると判断する手法がある。例えば、物体検出装置は、距離30cmを3回連続して検知した場合に、干渉が生じていると判断する。干渉していると判断された場合、物体検出装置が超音波の送信タイミングをずらすことで同一距離の連続検知を回避することができる。
【0065】
図7、8は、従来の物体検出装置におけるランダム時間だけずらした超音波の送信タイミングの一例を示す図である。図7に示すように、例えば、168ms間隔で超音波を送信していたが、干渉していると判断された場合に、物体検出装置はランダム時間4msだけずらして172msごとに超音波を送信することで、干渉を回避することが可能となる。
【0066】
しかしながら、自車両が他車両から超音波を受信しているときに、他車両もまた自車両から超音波を受信していることが多い。このような場合において、このような従来の干渉回避処理と同一手法の物体検出装置を搭載した車両同士の場合を考える。このとき、物体検出装置は、干渉を受けていると検知し、自車両の超音波の送信タイミングをずらしても他車両も同様の手法で送信タイミングをずらした場合に、図8に示すように、再度、送信タイミングが一致してしまい、干渉する可能性がある。
【0067】
これに対し本実施形態では、ランダム時間決定部1512が 物体との距離が第1の距離より大きい、または物体が検出されない通常状態と、物体との距離が第1の距離以下である第1の接近状態と、物体との距離が、第1の距離より小さい第2の距離以下である第2の接近状態と、のそれぞれに応じて、送信タイミングをずらすための待ち時間であるランダム時間を決定し、送波制御部1511が、送信タイミングを、決定されたランダム時間だけ遅らせた新たな送信タイミングで、送信波を送信するように送受信部21を制御する。このため、本実施形態によれば、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、車両1の状態に応じてランダム時間を遅らせるので、確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、第1の距離は、第1の接近状態に対応するランダム時間と通常状態に対応するランダム時間との差分に基づく距離より小さく、第2の距離は、第2の接近状態に対応するランダム時間と前記通常状態に対応する前記ランダム時間との差分の時間に基づく距離より小さく、ランダム時間決定部1512は、送波制御部1511により第1の接近状態または第2の接近状態で新たな送信タイミングで送信波が送信された後は、通常状態に応じたランダム時間を決定する。このため、第1の接近状態または第2の接近状態から通常状態に遷移することで、ランダム時間の差分に相当する距離が通常状態から第1の接近状態へ遷移するための遷移条件としての第1の距離、通常状態から第2の接近状態へ遷移するための遷移条件としての第2の距離より大きくなる。このため、本実施形態によれば、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、この差分の距離分、他車両との干渉を生じる可能性が低くなり、より確実に干渉を回避することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では、ランダム時間決定部1512は、車両1の前部に設けられた送受信部21A~21Dからの送信波のランダム時間と、車両1の後部に設けられた送受信部21E~21Hからの送信波のランダム時間と、を異なる時間に決定する。このため、本実施形態によれば、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、さらに、車両1の進行方向に応じて、確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、通常状態、前記第1の接近状態、および前記第2の接近状態のそれぞれに対応して、ランダム時間が定められたランダムテーブル1513を記憶するSSD121、をさらに備え、ランダム時間決定部1512は、通常状態、第1の接近状態、および第2の接近状態と、ランダムテーブル1513と、に基づいて、ランダム時間を決定する。このため、本実施形態によれば、ランダムテーブルの切替えによりランダム時間を決定できるので、他車両が自車両と同一の物体検出装置を搭載している場合でも、簡易に、かつより確実に超音波の干渉を回避することが可能となる。
【0071】
上述の実施形態では、CPU130が、ROM122やSSD121等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、送波制御部1511、ランダム時間決定部1512、検知距離算出部1521、異常検出部1522、車両状態推定部160,報知制御部162、車両情報管理部163、制動制御部164等の各種の機能モジュールを実現する。ただし、これに限定するものではない。例えば、送波制御部1511、ランダム時間決定部1512、検知距離算出部1521、異常検出部1522、車両状態推定部160,報知制御部162、車両情報管理部163、制動制御部164等の各種の機能モジュールは、独立したハードウェアにより実現することも可能である。
【0072】
なお、上記実施形態の物体検出装置100で実行される物体検出プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0073】
上記実施形態の物体検出装置100で実行される物体検出プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態の物体検出装置100で実行される物体検出プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態の物体検出装置100で実行される物体検出プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0075】
上記実施形態の物体検出装置100で実行される物体検出プログラムは、上述した各部(送波制御部1511、ランダム時間決定部1512、検知距離算出部1521、異常検出部1522、車両状態推定部160,報知制御部162、車両情報管理部163、制動制御部164等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから物体検出プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、送波制御部1511、ランダム時間決定部1512、検知距離算出部1521、異常検出部1522、車両状態推定部160,報知制御部162、車両情報管理部163、制動制御部164等が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
21 送受信部
50 車両制御システム
100 物体検出装置(ECU)
121 SSD
211 振動子
150 音波制御部
1510 送受信制御部
1511 送波制御部
1512 ランダム時間決定部
1513 ランダムテーブル
1520 送受信情報管理部
1521 検知距離算出部
1522 異常検出部
160 車両状態推定部
162 報知制御部
163 車両情報管理部
164 制動制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8