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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051692
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ロボット用フィンガー装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B25J15/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157984
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】加藤 涼太
(72)【発明者】
【氏名】永井 義隆
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY36
3C707ES03
3C707ES04
3C707EU01
3C707HS27
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】部品点数の少ない簡素、且つ省スペースな構造でありながら、高精度な動作を実現できるロボット用フィンガー装置を提供する。
【解決手段】ナット部材収容空所Sを備えたホルダ10と、基端部51を夫々ホルダの異なった部位により固定的に支持され、先端部55同士を最も接近させた最接近姿勢と、離間させた拡開姿勢との間で変位する少なくとも2つのフィンガー50と、回転自在に軸支されたネジ軸15と、ネジ軸に螺合する螺子部を内面21に備え該ネジ軸の正転時にフィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材20と、を備え、ナット部材20は突出位置にある時に各フィンガーの先端部を最接近姿勢に保持し、退避方向へ移動する過程で各フィンガーを拡開姿勢に移行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通したナット部材収容空所を備えたホルダと、基端部を夫々前記ホルダの異なった部位により固定的に支持され、先端部同士を最も接近させた最接近姿勢と、離間させた拡開姿勢との間で変位する少なくとも2つのフィンガーと、前記ナット部材収容空所内に基端部側が配置されて前記軸方向先端側へ延び、且つ回転自在に軸支されたネジ軸と、前記ネジ軸に螺合する螺子部を内面に備え該ネジ軸の正転時に前記フィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材と、を備え、
前記ナット部材は、前記各フィンガーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴を備え、突出位置にある時に前記各フィンガーの先端部を前記最接近姿勢に保持し、退避方向へ移動する過程で前記各フィンガーを前記拡開姿勢に移行させることを特徴とするロボット用フィンガー装置。
【請求項2】
前記ナット部材の少なくとも一部が前記ナット部材収容空所内に位置する時に該ナット部材の回転を規制する回転規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロボット用フィンガー装置。
【請求項3】
前記各フィンガーは、その先端部から所定長の部位に屈曲部(湾曲部)を備え、該各屈曲部よりも先端部分は互いに接近する方向へ傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のロボット用フィンガー装置。
【請求項4】
前記ホルダ部材には複数のガイドバーの一端が固定され、該各ガイドバーは前記ネジ軸と並行な方向へ延びて他端を連結片に固定され、
前記ナット部材は、前記各ガイドバーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のロボット用フィンガー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用フィンガー装置、特に産業ロボットや協働ロボットに適したフィンガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ライン、物流ライン等においては、自動化のために各種ワークを把持したり、把持したワークをラインに投入する等の種々の目的のために産業ロボット(ハンドリングロボット)が導入されている。産業ロボットはロボットアームを備え、その先端にはワークを着脱するロボットフィンガー装置が設けられている。
特許文献1「産業用ロボットのハンド装置」には、ボールねじと、ボールねじの回転により軸方向へ進退するナットと、ナットと共に軸方向移動するブロックにより回転自在に支持されたカムフォロアと、ハンド装置のフレームに設けた水平軸により基端部を揺動自在に軸支された複数のフィンガーと、を備え、各フィンガーの基端部に設けた突部をカムフォロアに連動させることで各フィンガーを開閉動作させる構成が開示されている。
しかし、このハンド装置におけるフィンガーの開閉機構は部品点数が多く、しかも構造が複雑化するという問題がある。
次に、特許文献2「電子部品取付け用グリッパー装置」は、ワークの中心に向かって水平移動する支持部と、支持部と共に移動し、ワークを把持するフィンガーを備えるグリッパーと、フィンガー同士を水平方向へ接近させる弾性手段と、各フィンガー間に配置されて上下動作してフィンガーを開閉させるカムと、を備えている。
しかし、このグリッパー装置は、フィンガーを水平移動させるための構造が複雑、大型化し、またフィンガーによる把持はバネ力のみに依存しているため、把持力の微調整ができない、という問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-073823号公報
【特許文献2】特開2010-142941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、部品点数の少ない簡素、且つ省スペースな構造でありながら、高精度な動作を実現できるロボット用フィンガー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、軸方向に貫通したナット部材収容空所を備えたホルダと、基端部を夫々前記ホルダの異なった部位により固定的に支持され、先端部同士を最も接近させた最接近姿勢と、離間させた拡開姿勢との間で変位する少なくとも2つのフィンガーと、前記ナット部材収容空所内に基端部側が配置されて前記軸方向先端側へ延び、且つ回転自在に軸支されたネジ軸と、前記ネジ軸に螺合する螺子部を内面に備え該ネジ軸の正転時に前記フィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材と、を備え、前記ナット部材は、前記各フィンガーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴を備え、突出位置にある時に前記各フィンガーの先端部を前記最接近姿勢に保持し、退避方向へ移動する過程で前記各フィンガーを前記拡開姿勢に移行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部品点数の少ない簡素、且つ省スペースな構造でありながら、高精度な動作を実現できるロボット用フィンガー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態(第1実施形態)に係るロボット用フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す正面図である。
図2】(a)(b)及び(c)は夫々図1(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。
図3】(a)(b)及び(c)は同フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す斜視図である。
図4】(a)(b)及び(c)は夫々図3(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。
図5】(a)は同フィンガー装置の一部分解斜視図、(b)は全体的な分解斜視図である。
図6】(a)(b)及び(c)は本発明の第2実施形態に係るロボット用フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す正面図である。
図7】(a)(b)及び(c)は夫々図6(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。
図8】(a)(b)及び(c)は同フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す斜視図である。
図9】(a)(b)及び(c)は夫々図8(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。
図10】(a)及び(b)は同フィンガー装置を構成するホルダユニットを中心とした斜視図である。
図11】同フィンガー装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
[第1実施形態]
図1(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態(第1実施形態)に係るロボット用フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す正面図であり、図2(a)(b)及び(c)は夫々図1(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。また、図3(a)(b)及び(c)は同フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す斜視図であり、図4(a)(b)及び(c)は夫々図3(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。また、図5(a)は同フィンガー装置の一部分解斜視図、(b)は全体的な分解斜視図である。
【0010】
ロボット用フィンガー装置(以下、フィンガー装置、という)1は、略円筒状のホルダ10と、基端部(上端部)51を夫々ホルダ10の異なった部位により固定的に支持され、長手方向先端部55同士を最も接近させた最接近姿勢と、先端部同士を離間させた拡開姿勢との間で変位させるように変形する少なくとも2本、本例では2本のフィンガー50、50と、ホルダの軸方向に貫通したホルダの支持孔11(ナット部材収容空所S)内に基端部側が配置され、且つ回転自在に軸支されたネジ軸15と、ネジ軸に螺合する雌螺子部を内面に備え、ネジ軸の正転時にフィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材20と、ネジ軸を駆動するモータMと、を備える。更に、ナット部材20は、最突出位置にある時に各フィンガーの先端部を最接近姿勢に保持し、退避方向へ移動する過程で各フィンガーを拡開姿勢に移行させる。
【0011】
ホルダ10と、ネジ軸15と、ナット部材20とは、送りネジ機構FM(Feed screw mechanism)を構成している。送りネジ機構FMは、モータなどの駆動源から得られる回転運動を直線運動に変換する手段である。送りネジ機構は、ネジ棒とナットとの組合せ、ボールネジ、或いは、すべりネジであってもよい。
ネジ軸15のネジピッチを種々調整することによりナット部材20の送り速度の細かい制御が可能になる。
ホルダ10は固定側部材であり、回転しない。ホルダ10は、図2の縦断面図、図5(a)(b)の分解斜視図等に示すようにドーナツ状の第1の部材100と、第1の部材の上面にビス75により固定されるドーナツ状の第2の部材(軸受部材)102と、第2の部材の上面にビス76により固定されるドーナツ状の第3の部材(軸受部材)104と、から構成される。
【0012】
ネジ軸15は受動部材(ネジ軸支持部材)120により上端部を支持(固定)されて受動部材と共にホルダ10に対して回転する。ネジ軸の基端部(上端部)寄りの部分はナット部材収容空所S内に位置しているが、それよりも下側の部分は先端(下端部)方向へ延びており、各フィンガーの先端部55よりも上方で終端している。
即ち、ネジ軸15の上端部にはモータMからの駆動力を受ける受動部材(ネジ軸支持部材)120が固定されている。受動部材120はそのフランジ部120aをホルダの第2の部材102と第3の部材104との間で回転自在に軸支されている。従って、モータにより受動部材120を回転することによりこれと一体のネジ軸15が回転する。ホルダ10の支持孔11の内壁とネジ軸15とは非接触状態に保持されている。ネジ軸は軸方向位置、及びホルダの支持孔11に対する径方向位置を変化させない。
【0013】
ナット部材20は、ホルダ10の支持孔11の内壁とネジ軸15との間に形成されるナット部材収容空所S内において回転を規制されつつ軸方向へ進退自在に支持されている。
ナット部材20の中心孔(軸ガイド穴)21の内面にはネジ軸15の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成されている。送りネジ機構FMをボールネジから構成する場合には、雄螺子部と雌螺子部との間に図示しないボールが配置される。
ナット部材20の下部にはナット部材の外周から張り出したガイド板(ナット部材を構成する)24が固定されており、ガイド板の張出し部には各フィンガー50を長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴24aが貫通形成されている。本例では各フィンガー50の断面形状が四角形であるため、各ガイド穴24aをフィンガーの断面形状と略相似形で、且つ若干大きい四角形とすることにより、ガイド穴24aによりナット部材20の回転を阻止、規制する機能を発揮しつつ、フィンガーに沿ってナット部材を移動可能に構成している。このようにネジ軸15の回転によりネジ軸の軸方向に沿って進退するナット部材と一体のガイド板に設けたガイド穴24aにフィンガーを挿通させることにより、ガイド穴24aとフィンガーがカムとカムフォロアの役目を果たし、簡単な構造で高精度なフィンガーの動作を実現することができる。
【0014】
モータMによりネジ軸15を正転させることによりナット部材20はネジ軸に沿って下降し、ネジ軸が逆転することにより上昇する。ナット部材20が図1(a)、図2(a)等に示した最上昇位置にある時に各フィンガー50、50は同図に示した拡開姿勢にあり、ネジ軸の正転によりナット部材が下降するにつれて各フィンガーは接近し、ナット部材が図1(c)、図2(c)等に示した最下降位置に達したときに各フィンガーは同図に示した最接近姿勢となる。ナット部材が最下降位置にある時にネジ軸が逆転を開始すると、正転時とは逆の手順でナット部材は上昇してゆき最終的に各フィンガーは拡開姿勢となる。
なお、図示していないが各フィンガーが最接近姿勢にある時に各フィンガーの先端部55間で図示しないワークを挟圧保持する。
【0015】
ナット部材20の外面適所に図示しない凸部(回転規制部)を設け、ホルダ10の支持孔11(ナット部材収容空所)の内壁にこの凸部を上下方向へ直線的にガイドする図示しないガイド溝(回転規制部)を設けることにより、ナット部材の少なくとも一部がホルダの支持孔11内に位置している間にネジ棒15の回転によりナット部材が連れ回りすることを阻止している。その結果、ホルダに対するナット部材の回転が防止され、フィンガーに捻り力が作用することによるフィンガーの変形と、それによる開閉動作の不安定化、ワークをグリップする性能の低下を防止できる。
なお、ホルダ10に対するナット部材20の回り止め構造(回転規制部)としては、ナット部材の外面形状とホルダの支持孔11の内面形状を互いに整合するDカットとしてもよい。要するに、ホルダの支持孔に対してナット部材が軸方向へ進退自在でありながら、相対回転を阻止できれば、どのような構成であってもよい。
【0016】
ところで、本実施形態ではナット部材20の小径部(ナット部材収容空所S内に入り込む部分)の軸方向長L1とナット部材収容空所S(支持孔11)の軸方向長L2との関係は、ナット部材が図1(a)、図2(a)に示した最上昇位置にある時にナット部材収容空所Sの軸方向長L2内に該小径部が全て収納されるように寸法設定されている。この場合、ナット部材20が図1(a)、図2(b)に示した中間位置にあるときにナット部材はナット部材収容空所S内から離脱するため、ホルダ側の回転規制部からナット側の回転規制部が離脱した状態となり、充分な回転規制効果を発揮できない懸念もある。
これに対する対策として、ナット部材の小径部の軸方向長L1を図示した寸法よりも上方へ向けて長尺化することにより図1(b)の中間位置、及び図1(c)の最下降位置においても常にナット部材小径部がナット部材収容空所S内に位置しているように構成する。これにより、ナット部材は常に回転が規制された状態で軸方向移動することができる。なお、この場合にはナット部材が最上昇位置にある時にナット部材収容空所S内に収納されるように、ナット部材収容空所の軸方向長も上方向に長く構成することになる。このように構成することにより部品点数を増やすことなく、ナット部材の回転規制を常時行うことができる。
【0017】
各フィンガー50は、その基端部(上端部)51を取付板72を介してボルト70により締結固定される。本例では、ホルダの第1の部材100にV溝100aを設けると共に、取付板72にはV溝と嵌合する凸部72aを設け、両者を嵌合させた状態で各ネジ穴100b、72b内にボルト70を螺着する(図5)。これによりフィンガーをホルダの外面の特定位置に180度間隔で固定することができる。各フィンガーの先端部55の形状を把持するワークの形状に合わせた形状としたり、ゴム等の滑り止めを配置することにより把持を安定化させることが好ましい。
【0018】
本実施形態では、各フィンガー50は基端部をホルダ10に固定した状態において、図1(a)に示すように外径方向へ所定角度θ1だけ傾斜(拡開)した状態としている。つまり、ナット部材が図1(a)の最上昇位置にある時に各フィンガーは外径方向へ所定角度θ1だけ傾斜している。ナット部材が図1(b)、(c)の状態へと順次移動するに連れて各フィンガーはガイド板24のガイド穴24aにより規制されながら内径方向へ弾性的に姿勢を変形させて行く。各フィンガーの先端部間にワークが位置している状態で図1(c)に示した閉止状態に移行するとワークは先端部間により把持(挟圧保持)される。ホルダ10に対する各フィンガーの取付角度θ1を大きく設定しておくことによりナットの移動量に対するフィンガーの内径側への変形量(変形速度)を増大させることができる。
【0019】
各フィンガー50は、金属、或いは樹脂等の弾性材料から構成することにより、図1(c)の状態においてワークを把持する際に、先端部55間の圧接力をフィンガーの撓み(弾発力)により増強された把持力として利用することができる。
各フィンガー50は、その先端部55から所定長L3の部位に角度θ2だけ内側に傾斜した屈曲部(湾曲部)60を備え、各屈曲部60よりも先端側に位置する傾斜部分62は互いに接近する方向へ傾斜している。この傾斜角度θ2は把持しようとするワークの幅寸法に応じて任意に設定することができる。即ち、フィンガーを交換可能に構成したことにより、屈曲部60の位置や傾斜角度θ2が異なるフィンガーを選択使用することが可能となり、開閉速度、閉止姿勢にある時の把持力を自由に調整できることになる。図1(c)に示した例では最接近姿勢にある時に各フィンガーの先端部55同士が接触しているが、最接近姿勢において所定距離離間させた状態で停止させるように構成することもできる。
なお、屈曲部60は必須ではなく、フィンガーは全長に渡って直線状であってもよい。また、把持対象となるワークの形状、サイズによっては、図示した屈曲部60とは逆方向、つまり外径方向へフィンガーを屈曲させるように構成することもあり得る。
【0020】
図示の例ではフィンガーは基端部51をボルト70等によりホルダの外周面に着脱自在に固定されているため、異なったサイズ、異なった形状を有した他のフィンガーと交換することができる。つまり、フィンガーを交換するだけで、形状や重量等の条件が異なる他のワークの把持等々、種々のニーズに応じた柔軟な対応が可能なる。
例えば、屈曲部60における屈曲角度θ2、即ち基端寄り部分64に対する傾斜部分62の屈曲角度θ2を異ならせたフィンガーを用いることにより、図1(c)に示したフィンガーの閉止状態(最接近姿勢)における先端部55間の距離、圧接力(把持力)、開閉動作における開閉速度を種々に調整することができる。
図示した構成例ではフィンガーを180度の周方向間隔で2本配置した例を示したが、フィンガーの本数は3本以上であってもよい。
【0021】
以上の構成において、図1(a)、図2(a)のようにナット部材20が最上昇位置にある時、即ちホルダ内部にナット部材の少なくとも一部が収納されている時には、各フィンガーは図示のように拡開状態にあり、各フィンガーの先端部55間の距離は最も離間している。つまり、各フィンガーの基端部51をボルト70によりホルダの側面に180度間隔をおいて固定した状態では各フィンガーの先端部55は離間した状態にある。また、各フィンガーをガイド板のガイド穴24aに挿通した状態においても、図1(a)、図2(a)の状態では各フィンガーは最も開放した状態にある。フィンガーが開放した状態で図示しないロボットアームによりフィンガー装置1を図示しないワークに向けて移動させ、各フィンガーの先端部55間の間隙内にワークを位置させる。
続いて、モータMからの駆動力をネジ軸15に伝達して正転させるとナット部材20、及びガイド板24が軸方向下方へ移動を開始し、図1(a)、図2(a)の拡開状態から図1(b)、図2(b)の中間段階に達する。中間段階ではナット部材20はフィンガーの基端寄り部分64の途中にあり、この段階では各フィンガーの先端部は最接近位置にはないが、ワークの把持動作が開始されている。
【0022】
更にネジ軸15を正転させると、図1(c)、図2(c)に示したようにナット部材が最下降位置に達し、それ以上の下降が阻止された状態にある。この時点では、各フィンガーの姿勢は最接近姿勢に保持される。この時点でフィンガーの先端部間に位置する図示しないワークを各フィンガーの先端部により確実に挟圧保持することができる。
なお、図示の例ではナット部材が中間段階にある時にはフィンガーの先端部は接触していないが、この段階でフィンガーの先端部同士が接触するように構成し、更にナット部材が最下降位置に達した時にフィンガー先端部による圧接力が更に増加するように構成することもできる。
フィンガーの先端部間に保持したワークを離脱させる場合にはモータMを逆転させることによりナット部材を図1(c)の状態から図1(b)の状態を経て、図1(a)の最上昇位置に移動させることにより、各フィンガーを拡開状態に移行させる。
【0023】
本実施形態に係るフィンガー装置1は、部品点数が少ないため小型化、省スペース化を実現できる。また、各フィンガーが閉じた状態にある時にはナット部材がそれ以上の下降を阻止されているため、ナット部材が停止した状態でもフィンガー先端による挟持力を維持することができる。また、フィンガーの確実な開閉動作をシンプルな構成により実現することができる。特に、送りネジ機構を構成するネジ軸により細かいピッチによりナット部材を進退させることができるため、フィンガーによる把持力、開閉タイミングを細かく高精度に制御することができる。従って、軽量で小さいワークのピッキングに適している。
フィンガーが閉止方向へ変形する速度は、ネジ軸15のネジストロークと、ホルダに対するフィンガーの初期取付角度θ1により調整することができる。
【0024】
[第2実施形態]
図6(a)(b)及び(c)は本発明の第2実施形態に係るロボット用フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す正面図であり、図7(a)(b)及び(c)は夫々図6(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。また、図8(a)(b)及び(c)は同フィンガー装置のフィンガー拡開状態、中間段階、及びフィンガー閉止状態を示す斜視図であり、図9(a)(b)及び(c)は夫々図8(a)(b)及び(c)に対応する縦断面図である。また、図10(a)及び(b)は同フィンガー装置を構成するホルダユニットを中心とした斜視図であり、図11は同フィンガー装置の分解斜視図である。
なお、第2実施形態に係るフィンガー装置1は、フィンガーの本数と、ホルダユニットの構成を除けば、第1の実施形態とほぼ変わりがないため、同一部分には同一符号を付し、重複した構成、動作の説明は省略する。
【0025】
第2実施形態に係るロボット用フィンガー装置(以下、フィンガー装置、という)1は、略円筒状(環状)のホルダ10と、基端部(上端部)51を夫々ホルダ10の異なった部位(外周面)により固定的に支持され、長手方向先端部55同士を最も接近させた最接近姿勢と、先端部同士を離間させた拡開姿勢との間で変位させるように変形(変位)する3本のフィンガー50と、ナット部材収容空所S内に配置されて軸方向へ延び、且つ回転自在に軸支されたネジ軸15と、ネジ軸に螺合する雌螺子部を中心孔21の内面に備え、ネジ軸の正転時にフィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材20と、ネジ軸を駆動するモータMと、ナット部材の回転を規制するガイドバー30等を備える。更に、ナット部材20は、ネジ軸が図6(c)等に示した最突出位置にある時に各フィンガーの先端部55を最接近姿勢に保持し、ネジ軸が図6(a)等に示した退避方向へ移動する過程で各フィンガーを拡開姿勢に移行させる。
【0026】
フィンガー装置1では、ホルダ部材20には複数のガイドバー30の一端が固定され、該各ガイドバーはネジ軸と並行な方向へ延びて他端を連結片32に固定され、ナット部材は、各ガイドバーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴24bを備えている。
ナット部材20が最上昇位置にある時に各フィンガー50は図6(a)、図7(a)等に示した拡開姿勢にあり、ネジ軸の正転によりナット部材が下降するにつれて各フィンガーは接近し、ナット部材が最下降位置に達したときに各フィンガーは図6(c)、図7(c)等に示した最接近姿勢となる。ナット部材が最下降位置にある時にネジ軸が逆転を開始すると、正転時とは逆の手順でナット部材は上昇してゆき最終的に各フィンガーは拡開姿勢となる。
【0027】
ナット部材20がナット部材収容空所S内において回転を規制されつつ軸方向へ進退自在に支持されている点は第1実施形態と同じである。ホルダ10の構成が第1実施形態と相違する点は、ホルダの底面に120度間隔でネジ軸15と並行なガイドバー30の上部が固定され、三本のガイドバーの下部は連結片32に固定されている点にある。従って、各ガイドバー30はホルダ10の底面に対して直交した姿勢を維持しつつ、ホルダ10及び連結片32に一体化されている。ホルダ10、ガイドバー30、及び連結片(連結リング)32は、ホルダユニットを構成している。
【0028】
連結片32の中心孔(軸受部)32aにはネジ軸15の下端部から突設された突起(被軸支部)16が嵌合されて回転自在に軸支される。これによりネジ軸15は上端部を受動部材120を介してホルダ部材により軸支されるだけでなく、下端部を連結片32により軸支されることにより、その支持状態がより安定化する。
ホルダ10に対してガイドバー30、及び連結片32を一体化し、ナット部材(ガイド板24)の各挿通孔24bを各ガイドバーに挿通することにより、ナット部材は安定してネジ軸に沿った直線移動を行うことができる。
【0029】
ホルダ10の構成は、図7の縦断面図、図11(a)(b)の分解斜視図等に示すように第1の実施形態と同様である。
ナット部材20は、中心孔(軸ガイド穴)21を備えた円筒体であり、その下部には大径円盤状のガイド板24が同心円状に固定されている。ガイド板24には3本のフィンガーを挿通するためのガイド穴24aが120度間隔で貫通形成されると共に、ガイド穴間のガイド板面には各ガイドバー30を挿通するための挿通孔24bが120度間隔で貫通形成されている。フィンガー用の各挿通孔24aの下面側開口周縁には挿通されるフィンガーを更に安定してガイドするためのガイド突起24cが突設されている。
【0030】
個々のフィンガー50の構成、ナット部材(ガイド板)との関係は第1実施形態と同様である。
ガイド板24に設けたガイドバー用の挿通孔24bには各ガイドバー30が挿通されることにより、ナット部材20は回転を規制されつつ安定して軸方向移動することができる。
なお、本実施形態において採用しているホルダユニットの構造、即ちホルダ部材20に対してガイドバー30を介して連結片32を固定した構造は、第1実施形態にも適用することができる。即ち、第1実施形態ではホルダ部材20の外周面に対して180度の周方向間隔で二本のフィンガーを固定しているが、このホルダ本体から180度間隔でガイドバーを二本突設し、各ガイドバーの先端に連結片32を固定することにより、ナット部材をガイドバーにより安定してガイドするように構成してもよい。
【0031】
第2実施形態ではフィンガーを120度の周方向間隔で3本配置した例を示したが、フィンガーの本数は3本以上であってもよい。
【0032】
以上の構成において、図6(a)、図7(a)等のようにナット部材20が最上昇位置にある時、即ちホルダ内部にナット部材の少なくとも一部が収納されている時には、各フィンガー50は図示のように拡開状態にあり、各フィンガーの先端部55間の距離は最も離間している。つまり、各フィンガーの基端部51をボルト70によりホルダの側面に120度間隔をおいて固定した状態では各フィンガーの先端部は離間した拡開状態(最も外径側に退避した位置)にある。また、各フィンガーをガイド板のガイド穴24aに挿通したとしても、図6(a)、図7(a)等の状態では各フィンガーは最も開放(拡開)した状態にある。フィンガーが開放した状態で図示しないロボットアームによりフィンガー装置1を図示しないワークに向けて移動させ、各フィンガーの先端部55の間の間隙内にワークを位置させる。
【0033】
続いて、モータMからの駆動力をネジ軸15に伝達して正転させるとナット部材20(ガイド板24)が軸方向下方へ移動を開始し、図6(a)、図7(a)の拡開状態から図6(b)、図7(b)の中間段階に達する。中間段階ではナット部材20はフィンガーの基端寄り部分64の途中にあり、この段階では各フィンガーの先端部は最接近位置にはないが、ワークの把持動作が既に開始されている。
更にネジ軸15を正転させると、図6(c)、図7(c)に示したようにナット部材が最下降位置に達する。この時点では、各フィンガーの姿勢は最接近姿勢に保持される。この時点でフィンガーの先端部間に位置する図示しないワークを各フィンガーの先端部により確実に挟圧保持することができる。
フィンガーの先端部間に保持したワークを離脱させる場合にはモータMを逆転させることによりナット部材を図6(c)の状態から図7(b)の状態を経て、図6(a)の最上昇位置に移動させることにより、各フィンガーを開放状態に移行させる。
【0034】
本実施形態に係るフィンガー装置1は、部品点数が少ないため小型化を実現できる。また、各フィンガーが閉じた状態にある時にはナット部材が各フィンガーの屈曲部60にあってそれ以上の下降が阻止されているため、ナット部材が停止した状態でもフィンガー先端による挟持力を維持することができる。また、フィンガーの確実な開閉動作をシンプルな構成により実現することができる。特に、送りネジ機構を構成するネジ軸により細かいピッチによりナット部材を進退させることができるため、フィンガーによる把持力、開閉タイミングを細かく制御することができる。従って、軽量で小さいワークのピッキングに適している。
【0035】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
第1の本発明に係るロボット用フィンガー装置は、軸方向に貫通したナット部材収容空所Sを備えたホルダ10と、基端部51を夫々ホルダの異なった部位により固定的に支持され、先端部55同士を最も接近させた最接近姿勢と、離間させた拡開姿勢との間で変位させる少なくとも2つのフィンガー50と、ナット部材収容空所S内に基端部側が配置されて軸方向先端側へ延び、且つ回転自在に軸支されたネジ軸15と、ネジ軸に螺合する螺子部を内面21に備え該ネジ軸の正転時にフィンガーの先端方向へ突出移動し、逆転時に該フィンガーの基端部方向へ退避移動するナット部材20と、を備え、ナット部材20は、各フィンガーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴24aを備え、突出位置にある時に各フィンガーの先端部を最接近姿勢に保持し、退避方向へ移動する過程で各フィンガーを拡開姿勢に移行させることを特徴とする。
【0036】
各フィンガーが閉じた状態(或いは、最接近した状態)にある時にはナット部材が各フィンガーの先端寄り位置にあってそれ以上の下降が阻止されているため、ナット部材が停止した状態でもフィンガー先端による挟持力を維持することができる。
フィンガーの確実な開閉動作を部品点数が少ないシンプルな構成により実現することができる。特に、送りネジ機構を構成するネジ軸により細かいピッチによりナット部材を進退させることができるため、フィンガーによる把持力、開閉タイミングを細かく制御することができる。従って、小サイズのネジ、小型の電子部品など、軽量で小さいワークのピッキングに適している。
フィンガーをホルダに対して着脱自在に構成することにより、種々の形状を有したフィンガーを交換使用することができ、フィンガーの閉止速度、閉止タイミングなどを種々調整することができる。
【0037】
第2の本発明に係るロボット用フィンガー装置では、ナット部材20の少なくとも一部がナット部材収容空所S内に位置する時に該ナット部材の回転を規制する回転規制部が設けられている。
ナット部材がネジ軸に連れ回りすることを防止できる。ナット部材収容空所とナット部材の軸方向長を種々調整することにより、ナット部材の軸方向移動の全行程中においてナット部材の回転を規制することが可能となる。
【0038】
第3の本発明に係るロボット用フィンガー装置では、各フィンガーは、その先端部から所定長の部位に屈曲部(湾曲部)60を備え、該各屈曲部よりも先端部分は互いに接近する方向へ傾斜していることを特徴とする。
屈曲部60の角度θ2を大きくすればする程、小さいワークを把持するのに適した構造とすることができる。
【0039】
第4の本発明に係るロボット用フィンガー装置では、ホルダ部材20には複数のガイドバー30の一端が固定され、該各ガイドバーはネジ軸15と並行な方向へ延びて他端を連結片に固定され、ナット部材は、各ガイドバーを長手方向へ進退自在に挿通させるガイド穴24bを備えていることを特徴とする。
これによれば、ナット部材がホルダのナット部材収容空所Sから離脱した後においてもガイドバーによりナット部材の回転を規制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…ロボット用フィンガー装置、FM…送りネジ機構、10…ホルダ、11…支持孔(ナット部材収容空所)20…ナット部材、21…中心孔(軸ガイド穴)、24…ガイド板、24a…ガイド穴、24b…挿通孔、30…ガイドバー、32…連結片(連結リング)、50…フィンガー、55…先端部、60…屈曲部、62…傾斜部分、64…基端部寄り部分、72…取付板、100…第1の部材、102…第2の部材(軸受部材)、104…第3の部材(軸受部材)、120…受動部材、120a…フランジ部。
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