(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051693
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/14 20140101AFI20240404BHJP
E05B 81/34 20140101ALI20240404BHJP
E05B 81/40 20140101ALI20240404BHJP
E05B 81/20 20140101ALI20240404BHJP
【FI】
E05B81/14
E05B81/34
E05B81/40
E05B81/20 A
E05B81/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157987
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 遼
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ42
2E250KK02
2E250LL05
2E250MM03
2E250PP04
2E250PP05
2E250RR13
2E250RR33
2E250RR34
2E250RR43
(57)【要約】
【課題】ドアを電動で開放及び閉鎖可能なドアラッチ装置の小型化を課題とする。
【解決手段】ドアラッチ装置10は、フォーク21と、クロー25と、駆動源31の駆動力によって回転可能なスピンドル33と、スピンドル33の回転によって第1の向きF1への移動と第2の向きF2への移動とが可能なスライダ38とを備える。スライダ38は、中立位置から第1の向きF1への移動によって、クロー25を押圧して係止位置から係止解除位置に開回動させる一方、中立位置から第2の向きF2への移動によって、フォーク21をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に閉回動させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを離脱可能なオープン位置からハーフラッチ位置を経て前記ストライカを保持するフルラッチ位置に回動可能、かつ前記フルラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を経て前記オープン位置に回動可能なフォークと、
前記フルラッチ位置の前記フォークに係止する係止位置と、前記フォークとの係止が解除された係止解除位置との間を回動可能なクローと、
駆動源の駆動力によって回転可能なスピンドルと、
前記スピンドルに螺合され、前記スピンドルの回転によって第1の向きへの移動と前記第1の向きとは反対の第2の向きへの移動とが可能なスライダと
を備え、
前記スライダは、
前記フォークと前記クローの間の中立位置から前記第1の向きへの移動によって、前記クローを押圧して前記係止位置から前記係止解除位置に開回動させる開操作部と、
前記中立位置から前記第2の向きへの移動によって、前記フォークを前記ハーフラッチ位置から前記フルラッチ位置に閉回動させる閉操作部と
を有する、ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記スライダと前記フォークの間に、前記スライダによる操作を受けて前記フォークを前記閉回動させるクローズ部材を備える、請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記フォークのフォーク軸と前記クローのクロー軸はいずれも第1方向に延びており、
前記スピンドルは、前記第1方向に対して交差する第2方向に延びている、
請求項1又は2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記駆動源の出力軸には第1ギアが配置され、
前記スピンドルの端部には前記第1ギアに噛み合う第2ギアが配置され、
前記駆動源は、前記スピンドルに対して前記クローとは反対側に配置されている、
請求項3に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記第1方向から見て、前記スピンドルから前記クロー軸までの距離は、前記スピンドルから前記フォーク軸までの距離以下である、請求項3に記載のドアラッチ装置。
【請求項6】
前記フォークと前記クローに対して前記スピンドルは、前記第1方向、及び前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する第3方向に間隔をあけて配置されており、
前記開操作部は、前記第3方向において前記閉操作部よりもクロー側に設けられている、請求項3に記載のドアラッチ装置。
【請求項7】
前記閉操作部は、前記フォークに向けて前記第1方向に突出し、前記第3方向において前記スピンドルの軸線に対して前記フォークとは反対側に設けられ、
前記開操作部は、前記クローに向けて前記第3方向に突出し、前記第3方向において前記スピンドルの軸線に対して前記クロー側に設けられている、請求項6に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のハッチバックドアの閉鎖と開放を電動で行うことが可能なドアラッチ装置が開示されている。このドアラッチ装置は、モータの駆動力によって回動可能な扇形状のセクタギアを備える。中立位置から第1の向きへのセクタギアの回動によって、クローをフォークに係止した係止位置からフォークへの係止を解除した係止解除位置に開回動させる。これにより、フォークがオープン位置に回動するため、車体に対してハッチバックドアを開放できる。中立位置から第2の向きへのセクタギアの回動によって、ストライカを保持するフォークをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に閉回動させる。これにより、車体に対してハッチバックドアをウェザーストリップの弾性力に抗して閉鎖できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェザーストリップの弾性力に抗してドアを閉位置に移動させるには大きな力が必要である。そのため、セクタギアの回動によってフォークを閉回動させるためには、モータが備える駆動ギアとセクタギアの減速比を大きくする必要がある。その結果、特許文献1のドアラッチ装置では、径が大きいセクタギアを用いる必要があるため、装置全体の小型化について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、ドアを電動で開放及び閉鎖可能なドアラッチ装置の小型化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ストライカを離脱可能なオープン位置からハーフラッチ位置を経て前記ストライカを保持するフルラッチ位置に回動可能、かつ前記フルラッチ位置から前記ハーフラッチ位置を経て前記オープン位置に回動可能なフォークと、前記フルラッチ位置の前記フォークに係止する係止位置と、前記フォークとの係止が解除された係止解除位置との間を回動可能なクローと、駆動源の駆動力によって回転可能なスピンドルと、前記スピンドルに螺合され、前記スピンドルの回転によって第1の向きへの移動と前記第1の向きとは反対の第2の向きへの移動とが可能なスライダとを備え、前記スライダは、前記フォークと前記クローの間の中立位置から前記第1の向きへの移動によって、前記クローを押圧して前記係止位置から前記係止解除位置に開回動させる開操作部と、前記中立位置から前記第2の向きへの移動によって、前記フォークを前記ハーフラッチ位置から前記フルラッチ位置に閉回動させる閉操作部とを有する、ドアラッチ装置を提供する。
【0007】
スピンドルの回転による第1の向きへのスライダの移動により、開操作部によって、クローを係止位置から係止解除位置に開回動させる。一方、スピンドルの回転による第2の向きへのスライダの移動により、閉操作部によって、フォークをハーフラッチ位置からフルラッチ位置に閉回動させる。つまり、スピンドルの回転による1つのスライダの移動によって、クローによるフォークの係止を解除してドアを開放できるとともに、フォークにクローを係止させてドアを閉鎖できる。そのため、ドアラッチ装置の構造を簡素化できる。しかも、セクタギアと比較してスピンドルは小型であるため、ドアを電動で開放及び閉鎖可能なドアラッチ装置を小型化できる。また、スピンドルのネジピッチの調整により、スライダによってフォークを閉回動させる力を調整可能なため、車体に対してドアをウェザーストリップの弾性力に抗して確実に閉鎖できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ドアを電動で開放及び閉鎖可能なドアラッチ装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】バックドアに配置した本発明の実施形態に係るドアラッチ装置の概略図。
【
図3】ラッチ機構と電動開閉機構を正面上方から見た斜視図。
【
図4】ラッチ機構と電動開閉機構を背面下方から見た斜視図。
【
図7】非作動位置のクローズ部材とスライダの斜視図。
【
図8】スライダとクローズ部材によるラッチ機構の閉作動時の動きの一過程を示す斜視図。
【
図9】スライダとクローズ部材によるラッチ機構の閉作動時の動きの他の一過程を示す斜視図。
【
図11】
図10とは異なる角度から見たスライダと規制部材の斜視図。
【
図13】規制解除位置の規制部材とスライダの斜視図。
【
図14】スライダと規制部材によるラッチ機構の開作動時の動きの一過程を示す斜視図。
【
図15】スライダと規制部材によるラッチ機構の開作動時の動きの他の一過程を示す斜視図。
【
図16】電動開閉機構によるラッチ機構の開作動時の動きを示す平面図。
【
図17】電動開閉機構によるラッチ機構の開作動時の動きを示すグラフ。
【
図18】電動開閉機構によるラッチ機構の閉作動時の動きを示す平面図。
【
図20】ハーフラッチ状態のドアラッチ装置の平面図。
【
図21】フルラッチ状態のドアラッチ装置の平面図。
【
図22】クロー回動開始状態になった開作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図23】フォーク規制状態になった開作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図24】オーバーラッチ状態になった開作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図25】フォーク徐行状態になった開作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図26】開作動完了状態のドアラッチ装置の平面図。
【
図27】リターン状態になった開作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図28】フォーク回動開始状態になった閉作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図29】フルラッチ状態になった閉作動時のドアラッチ装置の平面図。
【
図30】閉作動完了状態のドアラッチ装置の平面図。
【
図31】非常状態からの復帰時の動きを示す平面図。
【
図32】閉作動時にモータが停止した非常状態から開作動が行われた状態を示す平面図。
【
図33】非常状態からの開作動の一工程を示す平面図。
【
図34】非常状態からの開作動の他の一工程を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るドアラッチ装置10は、車体1の後部開口を開閉するバックドア4に配置され、車体1に対してバックドア4を開放可能に閉じた状態に保持する。車体1には、バックドア4との隙間をシールするゴム製のウェザーストリップ3が配置されている。
【0012】
添付図面におけるX方向は車長方向であり、矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Y方向は車幅方向であり、Z方向は車高方向である。以下では、車体1に対してドア3を閉じた状態を基準として説明する。
【0013】
(ドアラッチ装置の概要)
図1及び
図2を参照すると、ドアラッチ装置10は、車体1に配置されたU字形状のストライカ2を離脱可能に保持するラッチ機構20と、ラッチ機構20を
図19に示すオープン状態と
図21に示すフルラッチ状態に切り換える電動開閉機構30とを備える。
【0014】
図2から
図4を参照すると、ラッチ機構20は、フォーク21とクロー25を備え、フレーム12に配置されている。
図19に示すオープン状態のラッチ機構20は、ストライカ2の離脱を許容し、
図1に示す車体1に対するバックドア4の開放を許容する。
図21に示すフルラッチ状態のラッチ機構20は、ストライカ2の保持によって
図1に示す車体1に対してバックドア4を閉状態に保持する。
【0015】
電動開閉機構30は、モータ31、スピンドル33、スライダ38、及び規制部材45を備える。また、電動開閉機構30は、開操作受部48とクローズ部材50を備える。規制部材45とクローズ部材50はフレーム12に配置され、開操作受部48はクロー25に一体に設けられ、その他の部品はケース16に配置されている。モータ31は、
図1に示すバッテリ8とECU(Electronic Control Unit)9に接続されている。
【0016】
開状態のバックドア4が閉じられ、ラッチ機構20が
図19に示すオープン状態から
図20に示すハーフラッチ状態になると、この状態を検出したECU9が電動開閉機構30を閉作動させ、ラッチ機構20を
図21に示すフルラッチ状態に電動で切り換える。バックドア4に配置された開スイッチ(図示せず)が操作されると、ECU9が電動開閉機構30を開作動させ、ラッチ機構20を
図21に示すフルラッチ状態から
図19に示すオープン状態に電動で切り換える。
【0017】
本実施形態のドアラッチ装置10は、バッテリ8の電力不足等によって電動開閉機構30によってラッチ機構20を開作動できないときに、手動でラッチ機構20を開作動させるためのオープンレバー65を備える。また、電動開閉機構30によるラッチ機構20の閉作動中に、この閉作動を手動で緊急停止するための閉作動解除レバー66を備える。
【0018】
以下、フレーム12、ケース16、ラッチ機構20、電動開閉機構30、及びオープンレバー65と閉作動解除レバー66について、具体的に説明する。
【0019】
(フレームの構成)
図2を参照すると、フレーム12は、フェンスブロック13、ベースプレート14、及びカバープレート15を備える。
【0020】
フェンスブロック13は、樹脂製であり、ベースプレート14とカバープレート15の間に挟み込まれた状態で、
図1に示すバックドア4のエンドパネル5に沿って配置される。フェンスブロック13には、車長方向に延びるようにストライカ2を挿通する挿通溝13aが設けられている。
【0021】
ベースプレート14は、プレス加工された金属板からなり、ベース本体14a、補強リブ14b、及びカバー片14cを備える。ベース本体14aは、フェンスブロック13の下側に配置され、
図1に示すエンドパネル5に沿ってXY平面に沿って延びている。補強リブ14bは、ベース本体14aの車長方向後端から上側に突出し、
図1に示すバックドア4のアウタパネル6に沿ってYZ平面に沿って延びている。カバー片14cは、ベース本体14aの車長方向前端から上側に突出し、
図1に示すバックドア4のインナパネル7に沿ってYZ平面に沿って延びている。
【0022】
ベース本体14aには、フェンスブロック13の挿通溝13aと対応する挿通溝14dが形成されている。ベース本体14aの車幅方向両側には、バックドア4に組み付けるためのブラケット14eがそれぞれ設けられている。カバー片14cには、フェンスブロック13とベース本体14aの挿通溝13a,14dを露出させる開口14fが形成されている。
【0023】
カバープレート15は、プレス加工された金属板からなり、フェンスブロック13の上側に配置されている。カバープレート15の車長方向の全長はベース本体14aの車長方向の全長よりも短く、カバープレート15の車長方向後端と補強リブ14bの間には、電動開閉機構30とケース16を配置するための隙間が確保されている。
【0024】
カバープレート15の車幅方向両側には、ベースプレート14のブラケット14eに重ねて配置されて、バックドア4に組み付けられるブラケット15aがそれぞれ設けられている。カバープレート15には、オープンレバー65を軸支するための軸孔を備える取付片15bが設けられている。
【0025】
(ケースの構成)
ケース16は、ケース本体17とカバー18を備え、フレーム12の車長方向後側に配置されている。
【0026】
ケース本体17は、カバープレート15の車長方向後側に配置されている。ケース本体17には、ドアラッチ装置10を
図1に示すバッテリ8とECU9に接続するためのコネクタ部17aが設けられている。
【0027】
ケース本体17には、車幅方向においてクロー25が配置される方に、モータ31を配置する配置部17bが設けられている。この配置部17bの下側には、後に詳述するウォーム32とウォームホイール34を配置し、スピンドル33の一端を保持する配置部17cが設けられている。車幅方向においてフォーク21が配置される方には、スピンドル33の他端を保持する保持部17dが設けられている。
【0028】
ケース本体17には更に、カバープレート15上に配置され、後に詳述するフォーク21のスイッチ操作レバー24を覆うカバー部17eが設けられている。カバー部17eと配置部17cの間には、オープンレバー65を軸支する軸部17fが設けられている。保持部17dの上側には、閉作動解除レバー66を装着するための軸部17gと挿通部17hが設けられている。
【0029】
カバー18は、ケース本体17の車長方向後側に配置され、電動開閉機構30の背面を覆う。カバー18には、ケース本体17に取り付けるための取付構造が設けられている。
【0030】
(ラッチ機構の構成)
図2から
図4を参照すると、ラッチ機構20は、ストライカ2を離脱可能に保持するフォーク21と、フォーク21に離脱可能に係止するクロー25とを備え、スピンドル33及びスライダ38の車高方向下側かつ車長方向前側に配置されている。
【0031】
フォーク21は、フォーク軸22と一体に回動可能である。フォーク軸22は、フレーム12を貫通して回転可能に支持され、車高方向(第1方向)に延びている。
【0032】
フォーク21は、
図19に示すオープン位置から、
図20に示すハーフラッチ位置及び
図21に示すフルラッチ位置を順に経て、
図24に示すオーバーラッチ位置まで向きA1(時計回り)に回動可能である(閉回動)。また、フォーク21は、
図24に示すオーバーラッチ位置から、
図21に示すフルラッチ位置及び
図20に示すハーフラッチ位置を順に経て、
図19に示すオープン位置まで向きA2(反時計回り)に回動可能である。このフォーク21は、キックバネ(第1付勢部材)23によって向きA2へ付勢されている。キックバネ23の一端はフォーク21に係止され、キックバネ23の他端はフレーム12に係止されている。
【0033】
フォーク21は、外周部からフォーク軸22に向けて延びる保持溝21aを備える。
図19に示すように、オープン位置のフォーク21は、保持溝21aの先端の開口部分が挿通溝13a上に位置する姿勢になり、ストライカ2の離脱を許容する。
図21に示すように、フルラッチ位置のフォーク21は、保持溝21aがフェンスブロック13の挿通溝13aに対して直交する姿勢になり、ストライカ2を離脱不可能に保持する。
図20に示すように、
図19に示すオープン位置と
図21に示すフルラッチ位置の間のハーフラッチ位置のフォーク21は、保持溝21aが挿通溝13aに対して傾斜して交差する姿勢になり、ストライカ2を離脱不可能に保持する。
図24に示すように、
図21に示すフルラッチ位置よりも更に向きA1へ回動したオーバーラッチ位置のフォーク21は、保持溝21aが挿通溝13aに対して傾斜して交差する姿勢になり、ストライカ2を離脱不可能に保持する。
【0034】
図4及び
図5を参照すると、フォーク21の外周には、フルラッチ係止部21b、ハーフラッチ係止部21c、及び閉操作受部21dが設けられている。フルラッチ係止部21bは、保持溝21aを画定する向きA1側の側部に設けられている。ハーフラッチ係止部21cは、フルラッチ係止部21bに対して向きA1側に間隔をあけて設けられている。閉操作受部21dは、ハーフラッチ係止部21cに対して向きA1側に間隔をあけて設けられている。閉操作受部21dには、フォーク21が
図20に示すハーフラッチ位置にあるときにクローズ部材50が当接して操作される(
図11参照)。
【0035】
図2及び
図3を参照すると、フォーク軸22の上端には、スイッチ操作レバー24が取り付けられている。スイッチ操作レバー24は、フォーク21及びフォーク軸22と一体に回動可能であり、ロータリースイッチ60を操作して、ロータリースイッチ60の接続状態を切り換える。このロータリースイッチ60からの入力信号によって、
図1に示すECU9は、
図19に示すオープン位置、
図20に示すハーフラッチ位置、及び
図21に示すフルラッチ位置のうち、いずれにフォーク21が回動しているのかを判断する。
【0036】
図2から
図4を参照すると、クロー25は、クロー軸26と一体に回動可能である。クロー軸26は、フレーム12を貫通して回転可能に支持され、フォーク軸22と同様に車高方向に延びている。車高方向から見てクロー軸26は、フォーク軸22よりも車長方向後側に配置されている。但し、クロー軸26は、車長方向においてフォーク軸22と同じ位置に配置されてもよい。つまり、スピンドル33からクロー軸26までの車長方向の距離は、スピンドル33からフォーク軸22までの車長方向の距離以下であればよい。
【0037】
クロー25は、
図21に示す係止位置から
図24に示す係止解除位置を経て、
図26に示す過回動位置まで向きB2(反時計回り)に回動可能である(開回動)。また、クロー25は、
図26に示す過回動位置から
図24に示す係止解除位置を経て、
図21に示す係止位置へ向きB1(時計回り)に回動可能である。このクロー25は、キックバネ27によって向きB1へ付勢されている。キックバネ27の一端はクロー25に係止され、キックバネ27の他端はフレーム12に係止されている。
【0038】
図4及び
図5を参照すると、クロー25は、フォーク21のフルラッチ係止部21bとハーフラッチ係止部21cに係止可能な係止部25aを備える。
図21に示すように、係止位置のクロー25の係止部25aは、フルラッチ位置に回動したフォーク21のフルラッチ係止部21bに係止する。また、
図20に示すように、係止位置のクロー25の係止部25aは、ハーフラッチ位置に回動したフォーク21のハーフラッチ係止部21cに係止する。これにより、クロー25は、キックバネ23の付勢力に抗して、
図19に示すオープン位置へのフォーク21の回動を規制する。
図24に示す係止解除位置から
図26に示す過回動位置までの間に回動したクロー25の係止部25aは、フルラッチ係止部21bとハーフラッチ係止部21cのいずれにも係止不可能である。これにより、クロー25は、キックバネ23の付勢力によるフォーク21の回動を許容する。
【0039】
図3及び
図4を参照すると、クロー25の上方には、開操作受部48による操作によって、クロー25の回動位置を検出するためのスイッチ61が配置されている。このスイッチ61からの入力信号によって、
図1に示すECU9は、クロー25が
図21に示す係止位置に回動しているのか否かを判断する。
【0040】
(電動開閉機構の構成)
図2、
図4、及び
図5を参照すると、電動開閉機構30は、駆動源であるモータ31、モータ31によって回転されるスピンドル33、スピンドル33に沿って車幅方向に移動されるスライダ38、及びスライダ38によって操作される規制部材45を備える。また、電動開閉機構30は、スライダ38によって操作され、クロー25を開回動させる開操作受部48と、フォーク21を閉回動させるクローズ部材50とを備える。
【0041】
以下、開操作受部48、クローズ部材50、規制部材45、モータ31、スピンドル33、及びスライダ38の順で、これらの構成を具体的に説明する。
【0042】
図5を参照すると、開操作受部48は、スライダ38の操作を受けて、クロー25を
図21に示す係止位置から
図24に示す係止解除位置に開回動させるために設けられている。この開操作受部48は、係止部25aに隣接するようにクロー25に一体に設けられている。開操作受部48は、車高方向上側に突出する上行部48aと、上行部48aの上端から車高方向後側へ突出する受部本体48bとを備える。受部本体48bは、車高方向においてスライダ38の下側部分に位置する。スライダ38によって受部本体48bが
図5において左向きに押圧されると、クロー25が
図21に示す係止位置から
図24に示す係止解除位置を経て、
図26に示す過回動位置まで向きB2へ回動する。スライダ38による受部本体48bの押圧が解除されると、キックバネ27の付勢力によってクロー25が
図21に示す係止位置に向けて向きB1へ回動する。
【0043】
図7から
図9を参照すると、クローズ部材50は、スライダ38の操作を受けて、フォーク21を
図20に示すハーフラッチ位置から
図21に示すフルラッチ位置を経て、
図24に示すオーバーラッチ位置に閉回動させるために設けられている。このクローズ部材50は、スピンドル33及びスライダ38の下側、かつフォーク21の車長方向後側に配置されている。
図5及び
図6を参照すると、クローズ部材50は、第1レバー51、第2レバー52、第1回転軸53、第2回転軸54、及び付勢バネ55を備える。
【0044】
図6に最も明瞭に示すように、第1レバー51は、レバー本体51a、屈曲部51b、及び閉操作受部51cを備える。レバー本体51aは平板状で、
図2に示すベース本体14a上に配置される。レバー本体51aには、第1回転軸53を貫通させる第1軸孔51dと、第2回転軸54を貫通させる第2軸孔51eとが設けられている。屈曲部51bは、レバー本体51aの車長方向後側に連なり、上向き突出している。閉操作受部51cは、屈曲部51bのスライダ38と対向する縁に連なり、車長方向後側に向かうように湾曲して延びている。閉操作受部51cは、スライダ38の下側部分に対して、車高方向の同じ高さに位置し、車幅方向に対向する位置にある。
【0045】
第2レバー52は、レバー本体52aと解除操作受部52bを備える。レバー本体52aは平板状で、フォーク21と概ね同一平面上に位置するように第1レバー51のレバー本体51a上に配置され、フォーク21に向けて車長方向前側へ延びている。解除操作受部52bは、レバー本体52aの車長方向後側に連なり、上向き突出している。レバー本体52aには、第2回転軸54を貫通させる軸孔52cと、フォーク21の閉操作受部21dに係止可能な閉操作部52dとが設けられている。軸孔52cの直径は、レバー本体52aの第2軸孔51eの直径よりも大きい。閉操作部52dは、概ね鈎爪状で、レバー本体52aの車長方向前端に設けられている。
【0046】
第1回転軸53は、第1レバー51の第1軸孔51dを貫通して、フレーム12のベースプレート14に加締められ、車高方向に延びている。第1回転軸53には、第1レバー51のレバー本体51a上に配置されるフランジ部53aと、フランジ部53aから上向きに突出する軸部53bとが設けられている。
【0047】
第2回転軸54は、第1軸部54a、第2軸部54b、第3軸部54c、及びフランジ部54dを備える。第1軸部54aは、第1レバー51の第2軸孔51eを貫通して加締められている。これにより、第2回転軸54全体が車高方向に延びている。第2軸部54bは、第1軸部54aの直径よりも大きく、第2レバー52の軸孔52cの直径と対応する直径で、第1軸部54aの上端に連なっている。第3軸部54cは、第2軸部54bの直径よりも大きい直径で、第2軸部54bの上端に連なっている。フランジ部54dは、第3軸部54cの直径よりも大きい直径で、第3軸部54cの上端に連なっている。
【0048】
付勢バネ55は、第1巻回部55a、第2巻回部55b、連続部55c、第1アーム部55d、及び第2アーム部55eを備える。第1巻回部55aは、車高方向下側から見て時計回りの螺旋状で、第1回転軸53の軸部53bを取り囲むように配置されている。第2巻回部55bは、車高方向上側から見て反時計回りの螺旋状で、第2回転軸54の第3軸部54cを取り囲むように配置されている。連続部55cは、第1巻回部55aと第2巻回部55bそれぞれの上端に連なり、第1巻回部55aと第2巻回部55bに対して接線方向に延びている。第1アーム部55dは、第1巻回部55aの下端から突出しており、
図2に示すベースプレート14のベース本体14aに係止されている。第2アーム部55eは、第2巻回部55bの下端から突出しており、第2レバー52に係止されている。
【0049】
このように構成されたクローズ部材50では、
図7及び
図8に示すように、スライダ38によって第1レバー51の閉操作受部51cが
図8において左側に押圧されると、第1レバー51が、
図6に示す付勢バネ55の第1巻回部55aの付勢力に抗して向きC1(時計回り)へ回動する。この際、第2レバー52は、閉操作部52dがフォーク21の閉操作受部21dに係止していない場合、第1レバー51と一体に向きC1へ回動する。一方で、
図9に示すように、閉操作部52dがフォーク21の閉操作受部21dに係止している場合、第2レバー52は、
図6に示す付勢バネ55の第2巻回部55bの付勢力に抗して、第1レバー51に対して第2回転軸54まわり向きD1(反時計回り)へ回動する。これにより、クローズ部材50は、スライダ38による押圧力をフォーク21に伝達し、フォーク21を
図20に示すハーフラッチ位置から
図21に示すフルラッチ位置を経て、
図24に示すオーバーラッチ位置へ向きA1へ回動させる。
【0050】
スライダ38による第1レバー51の操作が解除されると、第1レバー51と第2レバー52は、付勢バネ55の第1巻回部55aの付勢力によって、
図7及び
図21に示す初期位置へ向きC2(反時計回り)に回動する。また、付勢バネ55の第2巻回部55bの付勢力によって、第1レバー51に対して第2レバー52が
図7及び
図21に示す初期位置へ向きD2(時計回り)に回動する。この第2レバー52の回動は、第1回転軸53のフランジ部53aへの当接によって停止する。
【0051】
図13から
図15を参照すると、規制部材45は、スライダ38と協同して、
図21に示すフルラッチ位置から
図19に示すオープン位置へのフォーク21の開回動を規制するために設けられている。より具体的には、本実施形態の規制部材45は、スライダ38の移動に連動して、フォーク21を、
図21に示すフルラッチ位置から
図24に示すオーバーラッチ位置に回動させた後、
図24に示すオーバーラッチ位置から
図19に示すオープン位置側へ回動させるように、向きA2へのフォーク21の回動を規制する。
【0052】
図2及び
図4を参照すると、規制部材45は、スピンドル33に対して、車幅方向の概ね中央、車高方向の下側、かつ車長方向の前側に配置されている。また、規制部材45は、フォーク21に対して車長方向後側かつ車幅方向のクロー25側に隣接して配置されている。この規制部材45は、ベースプレート14を貫通して加締められた回転軸46まわりに回動可能である。回転軸46は、フォーク軸22と同様に車高方向に延びている。
【0053】
規制部材45は、
図21に示す規制解除位置から
図23に示す規制位置を経て、
図24に示す離間操作位置まで向きE1(反時計回り)に回動可能である。また、規制部材45は、
図24に示す離間操作位置から
図23に示す規制位置を経て、
図21に示す規制解除位置まで向きE2(時計回り)に回動可能である。
【0054】
規制部材45は、キックバネ(第2付勢部材)47によって向きE1へ付勢されている。キックバネ47の一端は規制部材45に係止され、キックバネ27の他端は
図2に示すベースプレート14に係止されている。
図26を参照すると、キックバネ47による規制部材45の回動角度範囲は、
図21に示す規制解除位置から、
図23に示す規制位置と
図24に示す離間操作位置の間までである。つまり、キックバネ47によって規制部材45は、
図21に示す規制解除位置から、
図23に示す規制位置は越えるが、
図24に示す離間操作位置には達しない回転角度位置(付勢位置)まで、向きE1へ回動する。
【0055】
キックバネ47によって規制部材45を回動させる向きE1(反時計回り)は、キックバネ23によってフォーク21を回動させる向きA1(時計回り)とは逆向きである。一方で、キックバネ47の付勢力は、フォーク21のキックバネ23の付勢力よりも弱い。よって、
図23に示す規制位置の規制部材45には、キックバネ23の付勢力によるフォーク21の押圧によって、キックバネ47の付勢力に抗して向きE2へ回動する力が作用する。
【0056】
図5、
図10、及び
図11を参照すると、規制部材45は、基部45a、当接部45c、操作受部45g、及び規制操作部45hを備える。以下、これらの構成について、規制部材45が
図21に示す規制解除位置にあるときの姿勢を基準として説明する。
【0057】
基部45aは、回転軸46を貫通させる円形状の貫通孔45bを備える筒体状である。
【0058】
当接部45cは、スライダ38への当接によって規制部材45を
図21に示す規制解除位置に保持するために設けられている。この当接部45cは、車幅方向において基部45aのフォーク21側に位置する部分の上部から、車長方向後側へ突出している。当接部45cは、スピンドル33の軸線が延びる方向である車幅方向かつ車高方向に延び、スライダ38に面接触する当接面45dを備える。当接面45dの車幅方向の長さは、過度に短い場合には
図21に示す規制解除位置への保持が不安定になる一方、過度に長い場合には
図21に示す規制解除位置から
図23に示す規制位置に回動させるとき、スライダ38の移動ストロークが長くなる。そのため、これらの不都合が生じないように、当接面45dの車長方向の長さは設定されている。
【0059】
操作受部45gは、スライダ38の操作を受けて、規制部材45を
図23に示す規制位置から
図24に示す離間操作位置へ回動させるために設けられている。この操作受部45gは、車幅方向において基部45aの当接部45cとは反対側に設けられたアーム部45eの先端に上向きに突出して設けられ、スライダ38による操作を受けて規制部材45を回転軸46まわりに回動させる。アーム部45eは、基部45aの上部から車幅方向に突出しており、車長方向後側の面のうち一部の領域である補助当接部45fのみがスライダ38に当接可能である(
図12参照)。車高方向から見て、アーム部45eの車長方向後側の面は、補助当接部45f以外の領域がスライダ38に当接不可能な曲面状である。
【0060】
規制操作部45hは、スライダ38の移動に連動した規制部材45の回動によって、フォーク21のハーフラッチ係止部21cに当接し、向きA2へのフォーク21の回転を規制するために設けられている。この規制操作部45hは、基部45aから車長方向前側に突出した補強突部45iの先端に設けられ、
図23に示すフルラッチ位置にあるフォーク21のハーフラッチ係止部21cに当接可能である。補強突部45iは、回転軸46に対して当接部45c及び規制操作部45hとは反対側に設けられ、基部45aの下部から概ね扇形状に突出している。補強突部45iの車高方向の厚みは、径方向の外側から内側に外力が加わったとき、圧縮による補強突部45iの変形を抑制可能な寸法である。
【0061】
図13から
図15を参照すると、規制操作部45hは、ブロック状で、補強突部45iから下側かつ径方向外側に突出しており、フォーク21と同一平面上に配置されている。回転軸46まわりの規制操作部45hの回動軌道は、
図21に示すフルラッチ位置のフォーク21のハーフラッチ係止部21cに交差している。言い換えれば、規制操作部45hは、フォーク21が
図21に示すフルラッチ位置にあるときには、ハーフラッチ係止部21c以外には当接しない。これにより、規制操作部45hは、規制部材45が
図23に示す規制位置にあるとき、フォーク21の回動軌道内に位置し、スライダ38と協同してフォーク軸22まわりのフォーク21の回動を規制する。一方、規制操作部45hは、規制部材45が
図19及び
図21に示す規制解除位置にあるとき、フォーク21の回動軌道外に位置し、フォーク21の回動規制を解除してフォーク21の回動を許容する。
【0062】
このように構成された規制部材45は、スライダ38への当接部45cの当接によって
図21に示す規制解除位置に保持され、スライダ38の移動によって当接部45cの当接が解除されると、
図23に示す規制位置に回動する。続いて、
図14に示すように、スライダ38による操作受部45gの操作によって、規制部材45は、
図23に示す規制位置から
図24に示す離間操作位置へスライダ38の移動に連動して回動する。この回動によって、規制操作部45hがフォーク21を押圧し、
図23に示すフルラッチ位置から
図24に示すオーバーラッチ位置に回動させ、
図19に示すオープン位置側への回動を規制する。続いて、
図15に示すように、スライダ38による引き続く操作受部45gの操作によって、規制部材45は、
図24に示す離間操作位置から
図23に示す規制位置側へスライダ38の移動に連動して回動する。この回動によって、規制操作部45hによるフォーク21の押圧を次第に緩め、フォーク21を
図24に示すオーバーラッチ位置から
図23に示すフルラッチ位置側に回動させる。そして、スライダ38による操作受部45gの操作が解除されると、規制部材45はフォーク21の回動規制を解除する。その結果、フォーク21が
図19に示すオープン位置へ回動する。
【0063】
図2、
図4、及び
図5を参照すると、モータ31は、スピンドル33を回転させてスライダ38を移動させるために設けられている。このモータ31は、正転と逆転が可能な直流モータであり、ケース16の配置部17bに配置されることで、スピンドル33の車長方向後側、つまりスピンドル33に対してクロー25とは反対側に配置されている。モータ31の出力軸は、配置部17bの下側の配置部17c内に突出するように車高方向に延びている。この出力軸には、ウォーム(第1ギア)32が一体に回転可能に取り付けられている。
【0064】
図4及び
図5を参照すると、スピンドル33は、螺旋状のネジ山33aを備え、モータ31によって回転する。スピンドル33のうちモータ31が配置される方の端部には、ウォーム32に噛み合ってモータ31の駆動力を受けるウォームホイール(第2ギア)34が一体に回転可能に取り付けられるとともに、ボール軸受35が配置されている。スピンドル33のうちモータ31とは反対側の端部には滑り軸受36が配置されている。
【0065】
図2を参照すると、ウォームホイール34とボール軸受35はケース16の配置部17cに配置され、滑り軸受36はケース16の保持部17dに配置される。これにより、スピンドル33は、フォーク軸22、クロー軸26、及び回転軸46に対して直交する方向である車幅方向(第2方向)に延びるように配置され、回転可能に支持される。また、スピンドル33は、フォーク21、クロー25、及び規制部材45に対して、車高方向の上側に間隔をあけて配置されている。また、スピンドル33は、フォーク21及びクロー25に対して車長方向(第3方向)の後側に間隔をあけて配置されている。
【0066】
図16及び
図18を参照すると、スライダ38は、モータ31の駆動力をラッチ機構20に伝達し、ラッチ機構20を
図21に示すフルラッチ状態と
図19に示すオープン状態に切り換えるために設けられている。より具体的には、スライダ38は、
図16に示す開作動時、開操作受部48と規制部材45を操作し、開操作受部48を介してクロー25を向きB2へ開回動させるとともに、規制部材45を介して向きA2へのフォーク21の回動を規制する。また、スライダ38は、
図18に示す閉作動時、クローズ部材50を操作し、このクローズ部材50を介してフォーク21を向きA1へ閉回動させる。
【0067】
図5、
図10、及び
図11を参照すると、スライダ38は、閉操作部39、開操作部40、規制部材保持部41、規制操作部42、及び挿通溝43を備え、スピンドル33の回転によって、クロー25側である第1の向きF1への移動と、フォーク21側である第2の向きF2への移動とが可能である。
【0068】
図10、及び
図11を参照すると、スライダ38は、スピンドル33のネジ山33aに螺合されるネジ孔38bが形成されたスライダ本体38aを備える。スライダ本体38aには、
図2に示すカバー18に当接し、スピンドル33まわりのスライダ38の回転を規制する台形状で複数(本実施形態では2つ)の突片38cが設けられている。これにより、スライダ38は、スピンドル33の回転によって向きF1,F2へ移動可能である。
【0069】
スライダ38は、モータ31の停止時、車幅方向においてフォーク21とクロー25の間で、規制部材45の直上の中立位置(
図19から
図21参照)に位置する。スライダ38の上端には、上向きに突出して車長方向に延びる断面三角形状の操作部38dが設けられている。中立位置のスライダ38の上方には、操作部38dによって操作されるスイッチ62(
図2参照)が配置されている。このスイッチ62からの入力信号によって、
図1に示すECU9は、スライダ38が
図19から
図21に示す中立位置に移動しているか否かを判断する。
【0070】
閉操作部39、開操作部40、規制部材保持部41、規制操作部42、及び挿通溝43は、スライダ本体38aのうちネジ孔38bよりも下側に設けられている。
【0071】
まず、挿通溝43は、
図1に示すバッテリ8の容量不足等によって、
図18に示す閉作動中にモータ31が停止したとき等の非常時、復旧後(バッテリ8の交換)に開作動が行われた際に規制部材45を正常な作動位置に復帰させるために設けられている。この挿通溝43は、車高方向の下側から上側に窪み、スピンドル33に沿って車幅方向に貫通して設けられている。挿通溝43の車長方向の幅は、
図21に示す規制解除位置にある規制部材45の操作受部45gの車長方向の幅よりも広い。挿通溝43は、車長方向前側に位置する前壁部38eと、車長方向後側に位置する後壁部38fとによって画定され、概ねスピンドル33の直下に位置している。スピンドル33の軸線に対して、前壁部38eは車長方向前側に位置し、後壁部38fは車長方向後側に位置している。後壁部38fは、前壁部38eよりも下側へ突出している。以下では、後壁部38fのうち前壁部38eよりも突出した部分を突出部38gということがある。
【0072】
図7、
図8、及び
図11を参照すると、閉操作部39は、向きF2へのスライダ38の移動によって、クローズ部材50の閉操作受部51cを操作するために設けられている。この閉操作部39は、後壁部38fにおけるクローズ部材50の閉操作受部51cと対向する面によって構成されている。
図19に示す中立位置のスライダ38の閉操作部39は、閉操作受部51cに対して、車幅方向に間隔をあけて位置し、向きF2へのスライダ38の移動によって当接可能である。
【0073】
図10及び
図12を参照すると、開操作部40は、向きF1へのスライダ38の移動によって、開操作受部48を操作するために設けられている。この開操作部40は、前壁部38eからクロー25に向けて車長方向前側に突出している。この開操作部40は、車高方向から見て概ね三角形状で、開操作受部48の受部本体48bに対して、車高方向と車長方向の双方に対応する位置にある。
図21に示す中立位置のスライダ38の開操作部40は、開操作受部48に対して、車幅方向に間隔をあけて位置し、向きF1へのスライダ38の移動によって当接可能である。
【0074】
規制部材保持部41は、
図21に示す中立位置にスライダ38があるときに規制部材45を
図21に示す規制解除位置に保持し、向きF1へのスライダ38の移動によって規制部材45の保持を解除し、
図23に示す規制位置への回動を許容するために設けられている。規制部材保持部41は、後壁部38fの突出部38gと、突出部38gの下端から車幅方向に延出した四角柱状の延出部41aとによって構成され、
図19から
図21、及び
図28から
図30に示す状態で規制部材45を規制解除位置に保持する。突出部38gと延出部41aは、規制部材45の当接部45cとアーム部45eに対して、車高方向に対応し、車長方向後側に隣接している。突出部38g及び延出部41aそれぞれの車長方向前側は、規制部材45の当接面45dに面接触可能な平坦面である。
【0075】
図5及び
図26を参照すると、延出部41aは、スピンドル33に沿ってウォームホイール34側に突出している。また、延出部41aは、ウォームホイール34の車高方向下側、つまりウォームホイール34の径方向外側に位置している。延出部41aの車幅方向の全長は、スライダ38が
図20に示す中立位置から
図30に示す閉作動完了位置まで向きF2に移動したとき、当接部45cへの当接状態を維持し、規制部材45を規制解除位置に保持できる長さである。ここで、閉作動完了位置とは向きF2への移動端である。
【0076】
図10から
図12を参照すると、規制操作部42は、向きF1へのスライダ38の移動によって、向きA2へのフォーク21の開回動を規制する規制部材45を操作するために設けられている。この規制操作部42は、前壁部38eから車長方向前側に突出し、開操作部40の車高方向下側に隣接して設けられ、
図16に示すラッチ機構20の開作動時に規制部材45の回動を規制する。規制操作部42は、車高方向から見て概ね三角形状の板部からなり、車長方向前側に位置する規制本体部42aと、車幅方向において閉操作部39側に位置する回動許容部42dとを備える。規制操作部42は、車高方向において規制部材45の操作受部45gと対応する位置にあり、規制本体部42aと回動許容部42dには操作受部45gが摺接可能である(
図14及び
図15を参照)。
【0077】
規制本体部42aは、キックバネ23によってフォーク21を介して向きE2へ押圧された規制部材45の操作受部45gを受け止め、規制部材45を
図23に示す規制位置から
図24に示す離間操作位置に回動させる。この規制本体部42aは、車幅方向においてフォーク21に近づくに従って車長方向前側、つまりスピンドル33から離れる向きに傾斜している。
図12に最も明瞭に示すように、規制本体部42aのクロー25側に位置する始端42bは、
図23に示す規制位置の規制部材45の操作受部45gよりも車長方向後側に位置している。フォーク21側に位置する終端42cは、始端42bよりも車長方向前側に位置し、
図26に示す付勢位置の規制部材45の操作受部45gよりも車長方向後側に位置している。
【0078】
このように構成された規制本体部42aは、向きF1へのスライダ38の移動によって、規制部材45の操作受部45gを押圧して車長方向前側に移動させる。これにより、規制部材45が、
図23に示す規制位置から
図24に示す離間操作位置まで向きE1へ回動する。その結果、フォーク21が
図23に示すフルラッチ位置から
図24に示すオーバーラッチ位置に向きA1へ回動する。
【0079】
図11及び
図12を参照すると、回動許容部42dは、キックバネ23によってフォーク21を介して向きE2へ押圧された規制部材45の操作受部45gを受け止め、規制部材45を
図24に示す離間操作位置から
図23に示す規制位置を越えて向きE2へ回動させる。この回動許容部42dは、車幅方向においてフォーク21に近づくに従って車高方向後側、つまりスピンドル33に近づく向きに傾斜している。
【0080】
このように構成された回動許容部42dは、向きF1へのスライダ38の移動に連動して、車長方向後側へ規制部材45の操作受部45gを移動させる。これにより、規制部材45が、
図24に示す離間操作位置から
図23に示す規制位置を越えて、規制解除位置側である向きE2へ回動する。その結果、この規制部材45の回動に連動して、フォーク21が
図24に示すオーバーラッチ位置から
図24に示すフルラッチ位置を越えて、オープン位置側へ向きA2へ回動する。
【0081】
図12を参照すると、規制操作部42の始端42b側には、車幅方向に突出し、挿通溝43を画定する前壁部38eの車長方向後側の面に連なる湾曲部42eが設けられている。この湾曲部42eは、規制部材45の操作受部45gが規制本体部42aまで回動していないとき、向きF1へのスライダ38の移動によって、操作受部45gを押圧して規制本体部42a又は挿通溝43へ誘導する。
【0082】
図7から
図9を参照すると、スライダ38は、向きF2への移動によって、閉操作部39がクローズ部材50の閉操作受部51cを押圧し、フォーク21を
図20に示すハーフラッチ位置から
図21に示すフルラッチ位置に閉回動させる。一方で、スライダ38は、向きF1への移動によって、開操作部40が開操作受部48を押圧し、クロー25を
図21に示す係止位置から
図24に示す係止解除位置を経て、
図26に示す過回動位置に開回動させる。また、スライダ38は、向きF1への移動によって、規制部材保持部41が
図21に示す規制解除位置への規制部材45の保持を解除し、
図23に示す規制位置への規制部材45の回動を許容する。また、スライダ38は、向きF1への移動によって、規制操作部42が規制部材45を操作し、
図19に示すオープン位置へのフォーク21の開回動を規制する。
【0083】
(オープンレバーと閉作動解除レバーの構成)
図2及び
図3を参照すると、オープンレバー65は、ケース16外に配置された連結部65aと、ケース16内に配置された開操作部65bを備え、ケース16の軸部17fに軸支されている。開操作部65bは、
図21に示す係止位置にあるクロー25の開操作受部48の右側に配置されている。連結部65aが
図3において右側に手動で操作されると、開操作部65bが
図21に示す開操作受部48を左向きに操作し、クロー25を
図21に示す係止位置から
図24に示す係止解除位置に回動させる。これにより、クロー25によるフォーク21の係止が解除される。一方、モータ31は停止しているため、スライダ38によって規制部材45は規制解除位置に保持されている。よって、
図21に示すフルラッチ位置のフォーク21が
図19に示すオープン位置に回動し、ラッチ機構20がフルラッチ状態からオープン状態に手動で切り換わる。
【0084】
引き続いて
図2及び
図3を参照すると、閉作動解除レバー66は、ケース16外に配置された連結部66aと、ケース16内に配置された閉作動解除部66bを備え、ケース16の軸部17gに軸支されている。閉作動解除部66bは、
図3に示すクローズ部材50の解除操作受部52bの右側に配置されている。連結部66aが
図3において下側に手動で操作されると、閉作動解除部66bが
図28に示す解除操作受部52bを左向きに操作し、第1レバー51に対して第2レバー52を向きD1へ回動させる。これにより、第2レバー52の閉操作部52dとフォーク21の閉操作受部21dとの係止が解除される。その結果、スライダ38からクローズ部材50に伝達された操作力がフォーク21には伝わらなくなるため、フルラッチ位置へのフォーク21の閉回動を解除できる。
【0085】
次に、電動開閉機構30によるラッチ機構20の切り換えについて具体的に説明する。
【0086】
図17は、モータ31とスピンドル33によって、スライダ38を向きF1へ移動させることによる規制部材45、クロー25、及びフォーク21の動きを示すグラフである。言い換えれば、
図17の動きが実現されるように、スライダ38、規制部材45、クロー25、及びフォーク21が構成されている。詳しくは、以下の通りである。
【0087】
図1に示す車体1に対してバックドア4が閉じられている状態では、
図21に示すように、フォーク21はフルラッチ位置に回動している。クロー25は係止位置に回動し、フォーク21に係止している。スライダ38は中立位置に位置している。規制部材45は規制解除位置に回動し、スライダ38によって保持されている。
【0088】
図1に示すバックドア4の開スイッチ(図示せず)が操作されると、
図1に示すECU9がモータ31によってスピンドル33を回転させる。これにより、スライダ38が向きF1へ移動し始める(
図17のSa1参照)。この状態でフォーク21、クロー25、及び規制部材45は、いずれもフルラッチ位置、係止位置、及び規制解除位置に維持されている。
【0089】
向きF1へのスライダ38の移動によって、規制部材保持部41への規制部材45の当接部45cの当接が解除されると、
図22に示すように、規制部材45が向きE1へ回動し始める(
図17のSb1参照)。その後、スライダ38の開操作部40が開操作受部48に当接し、クロー25が向きB2へ回動し始める(
図17のSc1参照)。この状態では、クロー25によるフォーク21の係止は解除されていないため、フォーク21はフルラッチ位置に維持されている。
【0090】
続いて、規制部材保持部41に規制部材45の当接部45cが当接不可能な位置までスライダ38が移動すると、
図23に示すように、スプリング47の付勢力によって規制部材45が向きE1へ回動する。これにより、規制操作部45hは、規制位置まで回動すると、フォーク21のハーフラッチ係止部21cに係止する(
図17のSb2参照)。その後、スライダ38の規制本体部42aの始端42bが規制部材45の操作受部45gに当接するため、向きF1へのスライダ38の移動に連動して、規制部材45が向きE1へ回動し始める(
図17のSb3参照)。その結果、この規制部材45の回動に連動して、フォーク21が向きA1へ回動し始める(
図17のSd1参照)。この間、クロー25は、係止解除位置に向けて向きB2へ回動し続けるが、
図24に示す係止解除位置までは回動していない。
【0091】
続いて、
図24に示すように、スライダ38の規制本体部42aの終端42cに規制部材45の操作受部45gが位置すると、規制部材45は離間操作位置まで回動し(
図17のSb4参照)、フォーク21はオーバーラッチ位置まで回動した状態になる(
図17のSd2参照)。これにより、クロー25は、係止解除位置まで回動した状態になる(
図17のSc2参照)。
【0092】
続いて、スライダ38の回動許容部42dに規制部材45の操作受部45gが位置する。そのため、向きF1へのスライダ38の移動に連動して、
図1に示すウェザーストリップ3の弾性力、及び
図5に示すキックバネ23の付勢力によって、フォーク21を介して押圧された規制部材45が、向きE2へ回動し始める。その結果、この規制部材45の回動に連動して、フォーク21が向きA2へ回動し始める。また、クロー25は、係止解除位置を越えて向きB2へ更に回動し続ける。
【0093】
続いて、
図25に示すように、スライダ38の回動許容部42dの終端に規制部材45の操作受部45gが位置すると(
図17のSb5参照)、フォーク21のハーフラッチ係止部21cへの規制操作部45hの係止が解除される(
図17のSd3参照)。また、この状態でクロー25は、係止解除位置を越えて過回動位置側に位置している。そのため、フォーク21は、オープン位置に向けて向きA2へ回動する(
図17のSd4参照)。
【0094】
続いて、
図26に示すように、スライダ38の回動許容部42dが規制部材45の操作受部45gから離間する(
図17のSb6参照)と、規制部材45は、キックバネ47によって規制位置を越えて向きE1へ回動する(
図17のSb7参照)。その後、スライダ38が、向きF1への移動端である開作動完了位置まで移動する(
図17のSa2参照)。これにより、クロー25は、過回動位置まで回動する(
図17のSc3参照)。なお、開作動完了状態では、スライダ38の延出部41aは、ウォームホイール34を越えて車幅方向外側に突出した状態になる。
【0095】
次に、ECU9は、モータ31を逆転させてスライダ38を向きF2に移動させる。これにより、クロー25は、向きB2への回動から向きB1への回動に切り換わる。なお、中立位置から開作動完了位置までのスライダ38の移動は、例えば
図3に示すスイッチ61からの入力信号の切り換わり、モータ31の回転数、それに伴うスピンドル33の回転数、それに伴うスライダ38の移動ストローク等に基づいて制御される。
【0096】
図27を参照すると、スライダ38の向きF2への移動によって、クロー25は追従して向きB1へ回動する。また、スライダ38の規制操作部42は、付勢位置の規制部材45の操作受部45gに干渉することなく通過する。フォーク21はオープン位置に回動した状態を維持する。
【0097】
続いて、スライダ38の規制部材保持部41が規制部材45の当接部45cに当接すると(
図17のSb8参照)、規制部材が向きE2へ回動し始める。その後、
図19に示すように、クロー25が係止位置に位置し(
図17のSc4参照)、向きB1へのクロー25の回動が停止した後、規制部材45が規制解除位置に位置し(
図17のSb9参照)、向きE2への規制部材45の回動が停止する。
【0098】
最後に、スライダ38が中立位置まで移動すると(
図17のSa3参照)、
図3に示すスイッチ62からの入力信号の切り換わりによって、
図1に示すECU9がモータ31を停止し、ラッチ機構20は
図19に示すオープン状態になる。
【0099】
次に、電動開閉機構30によるラッチ機構20の閉作動時の動きを説明する。
【0100】
開状態のバックドア4が閉じられると、
図19に示すオープン位置のフォーク21にストライカ2が進入し、ストライカ2の押圧によってフォーク21が
図20に示すハーフラッチ位置に向きA1へ回動する。この際、スライダ38は中立位置にあり、規制部材45は規制解除位置に保持されている。また、クローズ部材50も付勢バネ55によって非作動位置に付勢されている。
【0101】
ロータリースイッチ60からの入力信号の切り換わりによって、
図19に示すオープン位置から
図20に示すハーフラッチ位置へのフォーク21の回動を検出したECU9(
図1参照)は、モータ31によってスピンドル33を回転させる。これにより、スライダ38が中立位置から向きF2へ移動し始める。
【0102】
続いて、
図28に示すように、スライダ38の閉操作部39がクローズ部材50の閉操作受部51cに当接して押圧する。これにより、第1レバー51と第2レバー52が向きC1へ回動し、第2レバー52の閉操作部52dがフォーク21の閉操作受部21dに係止する。よって、その後は、向きF2へのスライダ38の移動に連動して、第1レバー51は向きC1へ回動し、第2レバー52は第1レバー51に対して向きD1へ回動する。その結果、スライダ38による操作力がクローズ部材50を介してフォーク21に伝わり、フォーク21が向きA1へ回動し始める。この間、クロー25は係止位置に維持され、規制部材45は規制解除位置に保持される。
【0103】
続いて、
図29に示すように、向きF2へのスライダ38の移動に連動して、第1レバー51は引き続いて向きC1に回動し、第2レバー52は引き続いて向きD1に回動する。これにより、フォーク21は、
図1に示すウェザーストリップ3の弾性力、及び
図5に示すキックバネ23の付勢力に抗して、フルラッチ位置まで回動する。フォーク21のフルラッチ係止部21bが係止部25aを通過するとき、クロー25は、
図5に示すキックバネ27の付勢力に抗して係止解除位置側に一時的に回動し、フルラッチ係止部21bの通過後には
図5に示すキックバネ27の付勢力によって係止位置に復帰する。この間、規制部材45は、スライダ38によって規制解除位置に保持される。
【0104】
その後、
図30に示すように、向きF2へのスライダ38の移動は更に続き、閉作動完了位置まで移動すると、クローズ部材50によってフォーク21がオーバーラッチ位置まで回動する。これにより、フォーク21のフルラッチ係止部21bは、クロー25の係止部25aから向きA1へ離間した状態になる。この間、クロー25は係止位置に維持され、規制部材45は規制解除位置に保持される。
【0105】
次に、ECU9は、モータ31を逆転させてスライダ38を向きF1に移動させる。中立位置から閉作動完了位置までのスライダ38の移動は、
図3に示すロータリースイッチ60からの入力信号の切り換わり、モータ31の回転数、それに伴うスピンドル33の回転数、それに伴うスライダ38の移動距離等に基づいて制御される。
【0106】
続いて、向きF1へのスライダ38の移動に追従して、第1レバー51は向きC2へ回動し、第2レバー52は向きD2へ回動する。その結果、フォーク21は、
図1に示すウェザーストリップ3の弾性力と
図5に示すキックバネ23の付勢力によって、向きA2に回動する。この間、クロー25は係止位置に維持され、規制部材45は規制解除位置に保持される。
【0107】
そして、
図21に示すように、スライダ38が中立位置まで移動すると、
図3に示すスイッチ62からの入力信号の切り換わりによって、
図1に示すECU9がモータ31を停止する。その結果、クローズ部材50は非作動位置に復帰し、フォーク21のフルラッチ係止部21bにクロー25の係止部25aが係止する。その結果、ラッチ機構20が
図21に示すフルラッチ状態になる。
【0108】
次に、
図18に示す閉作動時にモータ31が停止した非常時について説明する。
【0109】
電動開閉機構30によるラッチ機構20の閉作動時、特に、フォーク21が
図28に示すハーフラッチ位置と
図29に示すフルラッチ位置の間の角度位置に回動した状態で、
図1に示すバッテリ8の容量不足等によってモータ31が停止することが考えられる。このような非常時、バッテリ8の交換等によって復旧した後、開作動が行われた場合、
図31に示すように、規制部材45を正常な作動位置に復帰可能としている。
【0110】
具体的には、閉作動中、
図28に示すハーフラッチ位置と
図29に示すフルラッチ位置の間の角度位置にフォーク21が回動した状態で、モータ31が停止する。この場合、モータ31の駆動力が途絶えるため、バックドア4の重み、ウェザーストリップ3の弾性力、及びキックバネ23の付勢力の釣り合いによって、フォーク21が
図32に示す姿勢に回動した状態で止まる。この状態で、バッテリ8の復旧後に電動開閉機構30による開作動が行われると、
図32に示すように、スライダ38が向きF1へ移動し、
図21に示す規制解除位置への保持が解除された規制部材45が向きE1へ回動する。但し、この状態では、フォーク21が
図28に示すハーフラッチ位置と
図29に示すフルラッチ位置の間の角度位置に回動しているため、規制操作部45hがフォーク21のハーフラッチ係止部21cに係止しても、規制部材45は
図23に示す規制位置までは回動しない。つまり、規制部材45は、
図21に示す規制解除位置と
図23に示す規制位置との間の回転角度位置で停止する。その結果、スライダ38の向きF1側の端面に、規制部材45の操作受部45gが位置する。ここで、スライダ38に
図10及び
図12に示す挿通溝43と湾曲部42eが無い場合、スライダ38に規制部材45の操作受部45gが係止するため、スライダ38は向きF1に移動できない。
【0111】
これに対し、本実施形態のスライダ38には、
図10及び
図12に示すように、挿通溝43と湾曲部42eが形成されている。そのため、
図33に示すように、スライダ38が向きF1へ移動すると、湾曲部42eの曲面によって規制部材45の操作受部45gが車長方向後側に移動する。これにより、規制部材45は向きE2へ回動して、操作受部45gがスライダ38の挿通溝43内に入り込むため、向きF1へのスライダ38の移動を阻害しない。また、スライダ38の開操作部40が開操作受部48に当接して、クロー25を過回動位置に向けて向きB2へ回動させる。
【0112】
続いて、
図34に示すように、スライダ38が再開作動完了位置まで移動すると、
図26に示す開作動完了状態と同じ状態になる。具体的には、操作受部45gは挿通溝43を貫通してスライダ38の逆側端から表出し、キックバネ47によって付勢位置に回動した状態になる。また、フォーク21はオープン位置に回動する。よって、モータ31が逆転されてスライダ38が中立位置に向けて向きF2へ移動されると、通常の開作動時と同様に、
図19に示すオープン状態になり、電動開閉機構30とラッチ機構20を正常状態に復帰できる。
【0113】
図32に示す状態で、向きF1へスライダ38が移動し、湾曲部42eの曲面によって、規制部材45の操作受部45gが車長方向前側に移動することもある。この場合、規制部材45は、
図16に示す開作動時の動きに直ぐに復帰する。
【0114】
このように構成されたドアラッチ装置10は、以下の特徴を有する。
【0115】
スピンドル33の回転による第1の向きF1へのスライダ38の移動により、開操作部40によって、クロー25を係止位置から係止解除位置に開回動できる。一方、スピンドル33の回転による第2の向きF2へのスライダ38の移動により、閉操作部39によって、フォーク21をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に閉回動できる。つまり、スピンドル33の回転による1つのスライダ38の移動によって、クロー25によるフォーク21の係止を解除してドア4を開放できるとともに、フォーク21にクロー25を係止させてドア4を閉鎖できる。そのため、ドアラッチ装置10の構造を簡素化できる。しかも、セクタギアと比較してスピンドル33は小型であるため、ドア4を電動で開放及び閉鎖可能なドアラッチ装置10を小型化できる。また、スピンドル33のネジピッチの調整により、スライダ38によってフォーク21を閉回動させる力を調整可能なため、車体1に対してドア4をウェザーストリップ3の弾性力に抗して確実に閉鎖できる。
【0116】
スライダ38とフォーク21の間に、スライダ38による操作を受けてフォーク21を閉回動させるクローズ部材50を備える。これにより、スピンドル33に対するフォーク21の配置の自由度を向上できる。
【0117】
スピンドル33は、フォーク21及びクロー25それぞれの軸22,26に対して交差する車幅方向Yに延びている。つまり、スピンドル33は、フォーク21とクロー25を配置する平面に沿って配置されるため、車高方向Zにおけるドアラッチ装置10の寸法を小型化できる。
【0118】
モータ31がスピンドル33に対してクロー25とは反対側に配置されている。これにより、モータ31がスピンドル33に対してクロー25と同じ側に配置される場合と比較して、クロー25の近傍にスピンドル33を配置可能である。そのため、スライダ38によってクロー25を確実に開回動できるとともに、スライダ38とクロー25を小型化できる。
【0119】
スピンドル33からクロー軸26までの距離は、スピンドル33からフォーク軸22までの距離以下である。つまり、クロー25は、フォーク21よりもスピンドル33側に配置されている。これにより、スライダ38の単位長さ当たりの移動によるクロー25の回動ストロークを、フォーク21の回動ストロークよりも大きくできる。よって、スライダ38の移動距離を短くできる。その結果、スピンドル33の全長を短くできるため、ドアラッチ装置10全体を小型化できる。
【0120】
フォーク21を閉回動させる閉操作部39が、車長方向Yにおいてスピンドル33の軸線に対してフォーク21とは反対側に設けられ、クロー25を開回動させる開操作部40が、車長方向Yにおいてスピンドル33の軸線に対してクロー25側に設けられている。よって、1つのスライダ38によってフォーク21とクロー25を確実に回動できる。つまり、回動に強い力が必要なフォーク21に対しては、閉操作部39をフォーク21から遠ざけることで、クローズ部材50を介してフォーク21をより強い力で回動操作できる。一方で、フォーク21と比べて軽い力で良いクロー25に対しては、開操作部40をクロー25に近づけることで、スライダ38の移動距離をより短く構成できる。
【0121】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0122】
例えば、スライダ38が備える規制操作部42の規制本体部42aをスピンドル33に沿って延びる構成とし、フォーク21を
図24に示すオーバーラッチ位置まで回動させることなく、
図21に示すフルラッチ位置に保持する構成としてもよい。また、回動許容部42dは、スライダ38ではなく規制部材45に設けられていてもよい。
【0123】
クローズ部材50を設けることなく、フォーク21から突出させた閉操作受部を、スライダ38によって直接操作し、
図20に示すハーフラッチ位置から
図21に示すフルラッチ位置に直接回動させてもよい。
【0124】
モータ31の駆動力をスピンドル33に伝達する機構は、一般的な平歯車(ギア)が用いられてもよく、スピンドル33を回転可能な構成であれば、必要に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 車体
2 ストライカ
3 ウェザーストリップ
4 バックドア
5 エンドパネル
6 アウタパネル
7 インナパネル
8 バッテリ
9 ECU
10 ドアラッチ装置
12 フレーム
13 フェンスブロック
13a 挿通溝
14 ベースプレート
14a ベース本体
14b 補強リブ
14c カバー片
14d 挿通溝
14e~14h 軸孔
14i ブラケット
14j 貫通孔
14k 開口
15 カバープレート
15a ブラケット
15b 軸孔
15c 軸孔
15d 取付片
16 ケース
17 ケース本体
17a コネクタ
17b,17c 配置部
17d 保持部
17e カバー部
17f,17g 軸部
17h 挿通部
17i 係止爪
17j ネジ孔
18 カバー
18a 係止片
18b 貫通孔
20 ラッチ機構
21 フォーク
21a 保持溝
21b フルラッチ係止部
21c ハーフラッチ係止部
21d 閉操作受部
22 フォーク軸
23 キックバネ(第1付勢部材)
24 スイッチ操作レバー
25 クロー
25a 係止部
26 クロー軸
27 キックバネ
30 電動開閉機構
31 モータ(駆動源)
32 ウォーム(第1ギア)
33 スピンドル
33a ネジ山
34 ウォームホイール(第2ギア)
35 ボール軸受
36 滑り軸受
38 スライダ
38a スライダ本体
38b ネジ孔
38c 突片
38d 操作部
38e 前壁部
38f 後壁部
38g 突出部
39 閉操作部
40 開操作部
41 規制部材保持部
41a 延出部
42 規制操作部
42a 規制本体部
42b 始端
42c 終端
42d 回動許容部
42e 湾曲部
43 挿通溝
45 規制部材
45a 基部
45b 貫通孔
45c 当接部
45d 当接面
45e アーム部
45f 補助当接部
45g 操作受部
45h 規制操作部
45i 補強突部
46 回転軸
47 キックバネ(第2付勢部材)
48 開操作受部
48a 上行部
48b 受部本体
50 クローズ部材
51 第1レバー
51a レバー本体
51b 屈曲部
51c 閉操作受部
51d 第1軸孔
51e 第2軸孔
52 第2レバー
52a レバー本体
52b 解除操作受部
52c 軸孔
52d 閉操作部
53 第1回転軸
53a フランジ部
53b 軸部
54 第2回転軸
54a 第1軸部
54b 第2軸部
54c 第3軸部
54d フランジ部
55 付勢バネ
55a 第1巻回部
55b 第2巻回部
55c 連続部
55d 第1アーム部
55e 第2アーム部
60 ロータリースイッチ
61 スイッチ
62 スイッチ
65 オープンレバー
65a 連結部
65b 開操作部
66 閉作動解除レバー
66a 連結部
66b 閉作動解除部
X 車長方向(第3方向)
Y 車幅方向(第2方向)
Z 車高方向(第1方向)