(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000517
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法、製品およびシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 25/28 20060101AFI20231225BHJP
C01B 25/37 20060101ALI20231225BHJP
C05D 9/02 20060101ALI20231225BHJP
C05B 11/06 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C01B25/28 C
C01B25/37 Z
C05D9/02
C05B11/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096668
(22)【出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】202210698909.3
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523222219
【氏名又は名称】グゥイヂォウ・パーティアン・エコタイピック・エンジニアリング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUIZHOU BATIAN ECOTYPIC ENGINEERING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Industrial park in Weng’an County, Qiannan Buyi and Miao Autonomous Prefecture, Guizhou Province, China (Postcode 550400)
(71)【出願人】
【識別番号】523222220
【氏名又は名称】シェンツェン・パーティアン・エコタイピック・エンジニアリング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN BATIAN ECOTYPIC ENGINEERING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】30th, 31st Floor, United Headquarters Building, No.63, Xuefu Road, High-tech Park, Nanshan District, Shenzhen City, Guangdong Province, China (Postcode 518057)
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーミン・フアン
(72)【発明者】
【氏名】グオヂュン・ヂァオ
(72)【発明者】
【氏名】ファーアン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ヂィン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】シィーイン・フアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂィン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】リンイン・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュンチアン・フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂィエンチン・フア
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061AA02
4H061BB09
4H061BB30
4H061BB34
4H061BB36
4H061EE16
4H061GG20
4H061GG21
4H061GG22
4H061GG28
4H061GG29
4H061GG30
4H061GG53
4H061GG54
4H061LL25
4H061LL26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法、製品およびシステムを提供する。
【解決手段】方法は、リン鉱石を硝酸で酸分解し、酸不溶物を分離して酸溶液を得ること、酸溶液を冷凍および結晶化し、固液分離して第1の溶液を得ること、第1の溶液をサルフェートを含有する溶液に加えて反応させて、第2の溶液を得ること、第2の溶液を硝酸塩除去処理して第3の溶液を得ること、第3の溶液にアンモニアを加えて中和し、中和溶液を固液分離してリン酸アンモニウム塩溶液を得、リン酸アンモニウム塩溶液に鉄源を加えて反応させてリン酸第二鉄を調製すること、を含む。本発明は、リン鉱石原料から製造することにより高純度のリン酸第二鉄を得、生産過程中の副産物は、そのまま肥料調製に使用したり、独立した製品として使用したりすることができ、廃棄物がない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸でリン鉱石またはリン酸塩濃縮物を酸分解し、酸不溶物を分離して酸溶液を得るステップと、
前記酸溶液を冷凍および結晶化し、固液分離して第1の溶液を得るステップと、
前記第1の溶液をサルフェートを含有する溶液に加えて反応させ、固液分離して第2の溶液Aを得、および/または前記第1の溶液を硫酸に加えて反応させ、固液分離して第2の溶液Bを得るステップと、
前記第2の溶液Aおよび/または第2の溶液Bを硝酸塩除去処理して、第3の溶液Aおよび/または第3の溶液Bを得るステップと、
第3の溶液Aにアンモニアを加えて中和し、中和溶液を固体分離してリン酸アンモニウム塩溶液を得、リン酸アンモニウム塩溶液に鉄源を加えて反応させてリン酸第二鉄を調製するステップと、
および/または、前記第3の溶液Bを抽出溶媒で前処理し抽出して、抽出相を得、前記抽出相を後処理し逆抽出して、リン酸溶液を得、鉄源と前記リン酸溶液を反応させてリン酸第二鉄を得るステップと、を含むことを特徴とする硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項2】
前記鉄源は、鉄塩、第一鉄塩または鉄単量体のうちの少なくとも1つを含み、前記サルフェートを含有する溶液は硫酸溶液、硫酸アンモニウム溶液のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項3】
前記鉄源と前記リン酸アンモニウム塩溶液の反応において、反応系のpH値を4~6に制御し、前記鉄源と前記リン酸溶液の反応において、反応系のpH値を4~6に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項4】
前記第3の溶液Aと第3の溶液B中の硝酸塩の濃度が0.1%未満であり、より好ましくは、前記第3の溶液中の硝酸塩の濃度が0.05%未満であり、より好ましくは、前記第3の溶液中の硝酸塩の濃度が0.01%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項5】
抽出溶媒による前記第3の溶液Bの抽出において、前記抽出溶媒と前記第3の溶液Bの容積比が0.5~5:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項6】
前記アンモニアは、アンモニアガス、液体アンモニアまたはアンモニア水のうちの少なくとも1つからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法。
【請求項7】
請求項1に記載の硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法によって調製されたリン酸第二鉄製品。
【請求項8】
硝酸でリン鉱石を酸分解して反応させるための酸分解反応装置と、
前記酸分解後の酸分解スラリーを固液分離して酸溶液を得るための第1の固液分離装置と、
前記酸溶液を冷凍および結晶化するための冷凍および結晶化装置と、
冷凍および結晶化の酸溶液を固液分離して第1の溶液を得るための第2の固液分離装置と、
前記第1の溶液とサルフェートを含有する溶液を反応させるための脱石灰反応装置と、
前記脱石灰反応装置の生成物を固液分離して第2の溶液を得るための第3の固液分離装置と、
前記第2の溶液を蒸発して硝酸塩を除去し、第3の溶液を得るための脱硝装置と、
第3の溶液を抽出溶媒で前処理して抽出し、抽出相を得るための抽出装置と、
前記抽出相を後処理して逆抽出し、リン酸を得るための逆抽出装置と、
鉄源と前記リン酸またはリン酸アンモニウム塩溶液を反応させてリン酸第二鉄を調製するためのリン酸第二鉄反応装置と、
および/または、第3の溶液とアンモニアを中和反応させて中和反応溶液を得るための中和装置と、中和反応溶液を固液分離してリン酸アンモニウム塩溶液を得るための第4の固液分離装置と、備える、ことを特徴とする硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン鉱石加工の技術分野に関し、特に、硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法、製品およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸第二鉄の生産は通常、鉄源とリン源との反応により、既に用意された鉄源とリン酸を使用してリン酸第二鉄を調製するが、本発明では、硝酸リン酸肥料装置により、リン酸アンモニウム塩を使用してリン酸第二鉄を調製する方法と、リン酸を使用してリン酸第二鉄を調製する方法という2つの方法が可能とし、硝酸リン酸肥料装置を活用してリン酸第二鉄を生産することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施例は、硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法は、
硝酸でリン鉱石またはリン酸塩濃縮物を酸分解し、酸不溶物を分離して酸溶液を得るステップと、
前記酸溶液を冷凍および結晶化し、固液分離して第1の溶液を得るステップと、
前記第1の溶液をサルフェートを含有する溶液に加えて反応させ、固液分離して第2の溶液Aを得、および/または前記第1の溶液を硫酸に加えて反応させ、固液分離して第2の溶液Bを得るステップと、
前記第2の溶液Aおよび/または第2の溶液Bを硝酸塩除去処理して、第3の溶液Aおよび/または第3の溶液Bを得るステップと、
第3の溶液Aにアンモニアを加えて中和し、中和溶液を固液分離してリン酸アンモニウム塩溶液を得、リン酸アンモニウム塩溶液に鉄源を加えて反応させてリン酸第二鉄を調製するステップと、
および/または、前記第3の溶液Bを抽出溶媒で前処理し抽出して、抽出相を得、前記抽出相を後処理し逆抽出して、リン酸溶液を得、鉄源と前記リン酸溶液を反応させてリン酸第二鉄を得るステップと、を含む。
【0004】
前記第3の溶液Bを抽出して金属イオンを除去し、リン酸溶液を得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、酸溶液は酸分解スラリー中の液相成分を直接濾過分離して得られ、またはいくつかの実施形態では、酸溶液は、酸分解スラリー中の液相成分を直接濾過分離すること、酸分解分解の固相成分をプロセス水で1回または複数回洗浄して洗浄液を得ることを組み合わせて得られる。
【0006】
いくつかの実施形態では、リン酸塩濃縮物の酸溶液は、主に硝酸酸分解によって得られたリン酸塩、カルシウムイオンなどを含む不純物金属、硝酸塩などを含む。好ましい実施形態では、酸分解過程で加えられた硝酸は、リン鉱石原料を完全に反応させるために比較的過剰であってもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、固液分離によって得られた酸不溶物は主にシリカ‐カルシウム‐マグネシウム塩を含み、好ましい実施形態では、酸不溶物に含まれる元素の有効利用に基づいて、酸分解によって得られた酸不溶物を土壌改良剤製品に調製して、土壌を改良する。
【0008】
いくつかの実施形態では、酸溶液冷凍および結晶化の温度は-10℃~-5℃であり、この温度範囲において60~85%の硝酸カルシウムがCa(NO3)2・4H2O結晶として沈殿し、その後冷凍溶液を濾過し、結晶粒子の凝固および沈殿を促進して、第1回不純物カルシウム除去の第1の溶液を得る。
【0009】
より好ましい実施形態では、酸溶液の温度を-8℃~-5℃に冷凍した後、ダブルドラムフィルタに直接供給して濾過分離し、濾過後得られた液相成分を第1の溶液とする。
【0010】
または具体的な好ましい実施形態では、濾過分離後得られた固相成分を濾過して得られた濾過ケーキを得、冷凍硝酸と冷凍水で濾過ケーキを洗浄し、生成した洗浄液の一部を循環して酸溶液に合流させて再び冷凍および結晶化分離し、洗浄液の他の部分を酸分解槽に加えて酸分解を行う。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記第1の溶液にサルフェートを含有する溶液、例えば硫酸、硫酸アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
別の実施形態では、サルフェートを含有する溶液は、サルフェート不純物の導入を避けるために過剰ではなく、すなわち、加えたサルフェートのモル量は、脱石灰後の第2の溶液Aがリン酸品質に影響を与えるサルフェートを防ぐために、第1の溶液中のカルシウムイオンのモル量以下である。
【0013】
別の実施形態では、サルフェートを含有する溶液は過剰ではなく、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.5%未満に維持することにより、その後の不純物除去に有利であり、より好ましい実施形態では、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.1%未満に維持し、より好ましくは、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.01%未満に維持する。
【0014】
好ましい実施形態では、前記第2の溶液Aまたは第2の溶液Bを硝酸塩除去処理することは、前記第2の溶液を蒸発により濃縮して硝酸を除去することによって行われる。
【0015】
好ましい実施形態では、前記第2の溶液AまたはBを蒸発により濃縮して硝酸を除去する蒸発温度は70~90℃(真空度10~15kpa)の間で調節可能であり、より好ましい実施形態では、蒸発により濃縮して硝酸を除去する温度を70~90℃に維持する。体系中の硝酸塩の濃度が0.1%未満に蒸発させると、その後の金属不純物の除去およびリン酸の生成に有利であり、さらに、より好ましい実施形態では、体系中の硝酸塩の濃度を0.05%未満に蒸発により濃縮し、より好ましくは、体系中の硝酸塩の濃度を0.01%未満に蒸発により濃縮する。
【0016】
好ましい実施形態では、前記第2の溶液を蒸発により濃縮して硝酸を除去した後の第3の溶液に含まれる硝酸塩イオンの濃度が0.05%未満である。より好ましくは、第3の溶液に含まれる硝酸塩イオンの濃度が0.01%未満である。
【0017】
好ましい実施形態では、以上の抽出は、効率的かつ十分に抽出するために、多段クロスフロー抽出である。
【0018】
「多段クロスフロー抽出」という用語は化学工業用語であり、多段直列装置で多段クロスフロー抽出を行う方法を指す。各段は抽出室と再抽出室を含む。抽出室でドナー相と抽出溶媒を接触させ、抽出溶媒を再抽出室でレシーバー相と接触させて再抽出され、抽出溶媒は同一段では適切にドナー相とレシーバー相をクロスして流動させ、ドナー相とレシーバー相は一部または全部段でカウンターフローする。
【0019】
好ましい実施形態では、
前記抽出によって得られた抽出相を逆抽出し、リン酸と再利用可能な抽出溶媒を分離により得るステップをさらに含む。
【0020】
好ましい実施形態では、前記抽出溶媒は、n-ブタノール、イソアミルアルコールおよびリン酸トリブチルのうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
好ましい実施形態では、抽出溶媒で前記第3の溶液Bを抽出して除去することにおいて、前記抽出溶媒と前記前記第3の溶液Bの容積比が0.5~5:1である。
【0022】
いくつかの具体的な実施形態では、以上の抽出ステップで採用する有機抽出溶媒は、n-ブタノール、イソアミルアルコール、スルホン化パラフィン、260溶剤油、406#環境保護溶剤油、リン酸トリブチル、メチルイソブチルケトンなどの一般に使用される金属イオン抽出溶媒を含み得る。具体的な好ましい実施形態では、ステップS50で採用する抽出溶媒は、リン酸トリブチルであり、混合抽出溶媒中のリン酸トリブチルの割合は1:0.5~2であり、好ましくは1:1である。抽出において、抽出溶媒の添加量と第3の溶液Bの容積比が0.5~5:1であり、好ましくは抽出溶媒の添加量と第3の溶液Bの容積比が1~2:1である。
【0023】
好ましい実施形態では、前記抽出相を逆抽出するステップの前に、
前記抽出相を洗浄して金属イオンを含有する溶液を得ること、
金属イオンを含有する溶液を濃縮して中微量元素肥料製品または肥料生産原料として得ることをさらに含む。
【0024】
好ましい実施形態では、
前記金属イオンを含有する溶液を硝酸リン酸肥料の調製に使用することをさらに含む。
【0025】
好ましい実施形態では、
前記リン鉱石酸分解中の酸は、少なくとも一部が前記第2の溶液Aまたは第2の溶液Bを蒸発により硝酸塩除去処理して得られた硝酸であることをさらに含む。
【0026】
好ましい実施形態では、前記鉄源は、鉄塩、第一鉄塩または鉄単量体のうちの少なくとも1つを含み、前記サルフェートを含有する溶液は硫酸溶液、硫酸アンモニウム溶液のうちの少なくとも1つである。
【0027】
好ましい実施形態では、前記鉄源と前記リン酸溶液の反応において、反応系のpH値を4~6に制御する。
【0028】
好ましい実施形態では、前記アンモニアはアンモニアガス、液体アンモニアまたはアンモニア水のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
本発明は、硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための上記方法に従って調製されたリン酸第二鉄製品をさらに提供する。
【0030】
本発明は、硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するためのシステムをさらに提供し、このシステムは、
硝酸でリン鉱石を酸分解して反応させるための酸分解反応装置と、
前記酸分解後の酸分解スラリーを固液分離して酸溶液を得るための第1の固液分離装置と、
前記酸溶液を冷凍および結晶化するための冷凍および結晶化装置と、
冷凍および結晶化の酸溶液を固液分離して第1の溶液を得るための第2の固液分離装置と、
前記第1の溶液とサルフェートを含有する溶液を反応させるための脱石灰反応装置と、
前記脱石灰反応装置の生成物を固液分離して第2の溶液を得るための第3の固液分離装置と、
前記第2の溶液を蒸発して硝酸塩を除去し、第3の溶液を得るための脱硝装置と、
第3の溶液を抽出溶媒で前処理して抽出し、抽出相を得るための抽出装置と、
前記抽出相を後処理して逆抽出し、リン酸を得るための逆抽出装置と、
鉄源と前記リン酸またはリン酸アンモニウム塩溶液を反応させてリン酸第二鉄を調製するためのリン酸第二鉄反応装置と、
および/または、第3の溶液とアンモニアを中和反応させて中和反応溶液を得るための中和装置と、中和反応溶液を固液分離してリン酸アンモニウム塩溶液を得るための第4の固液分離装置と、備える。
【0031】
好ましい実施形態では、前記脱硝装置は酸分解槽に接続されて、前記脱硝装置によって除去された硝酸が前記酸分解槽に入る。
【0032】
好ましい実施形態では、前記第1の固液分離装置および/または第2の固液分離装置および/または第3の固液分離装置および/または第4の固液分離装置は沈降槽、フィルタープレスまたはフィルター抽出器のいずれか1つである。
【0033】
好ましい実施形態では、前記第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、第3の固液分離および第4の固液分離装置は再利用可能な同じ固液分離装置である。
【0034】
好ましい実施形態では、
前記抽出装置の抽出相を逆抽出するための逆抽出装置をさらに備える。
【0035】
好ましい実施形態では、
前記抽出装置と逆抽出装置間に配置され、前記抽出装置の抽出相を洗浄して金属イオンを含有する洗浄液を得るための洗浄装置と、
前記金属イオンを含有する洗浄液を濃縮して中微量元素肥料製品を得るための第1の濃縮装置と、をさらに備える。
【0036】
好ましい実施形態では、前記抽出装置は、回転抽出塔、多段遠心抽出塔、振動篩板塔または篩板抽出塔のいずれか1つを含む。
【0037】
好ましい実施形態では、
前記逆抽出装置の萃出相を濃縮するための第2の濃縮装置をさらに備える。
【0038】
以上の調製方法により、硝酸リン酸肥料装置によりリン酸第二鉄を調製し、リン鉱石原料から製造することにより高純度のリン酸第二鉄を得、生産過程中の副産物は肥料調製に直接使用するか、または独立の製品として使用することができ、廃棄物がなく、硝酸リン酸肥料装置により、リン酸アンモニウム塩を使用してリン酸第二鉄を調製する方法と、リン酸を使用してリン酸第二鉄を調製する方法という2つの方法が可能とし、この2つの方法はいずれも硝酸リン酸肥料装置によって製造し、2つの方法は別々に、または同時に実施することができ、副生製品である硫酸カルシウムの品質が高く、建築材料や産業硫酸カルシウムの用途に対応でき、副生抽出物中の中微量金属イオンと中和の沈殿物であるリン酸金属塩はいずれも肥料調製の原料として使用でき、肥料として直接生産でき、副生硝酸はリン鉱石分解にリサイクルでき、鉄源の調製、例えば硝酸第二鉄または硝酸第一鉄の調製にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】一実施例における硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法を示す模式図である。
【
図2】一実施例における鉄源の調製を示す模式図である。
【
図3】一実施例における多段クロスフロー抽出、洗浄および逆抽出によってリン酸を得る場合を示す模式図である。
【
図4】一実施例における硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するためのシステムを示す模式図である。
【
図5】もう1つの実施例における硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法を示す模式図である。
【
図6】もう1つの実施例における硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するためのシステムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の目的、機能特徴および利点は、図面を参照しながら実施例に関連してさらに説明される。なお、ここで説明される具体的な実施例は本発明の解釈の目的でのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0041】
本発明の一実施例は、硝酸リン酸肥料装置によってリン酸第二鉄を共生産するための方法を提供し、この方法はリン鉱石および鉄源を原料としてリン酸第二鉄を調製して取得する。
【0042】
いくつかの実施形態では、リン酸第二鉄を調製するためのリン鉱石またはリン酸塩濃縮物原料は自然抽出した高品質リン鉱石であり、リン酸塩濃縮物は中低品質リン鉱石を不純物除去や精製によって得られたリン酸塩濃縮物である。
【0043】
さらに、
図1は一実施例におけるリン酸第二鉄を共生産する方法を示す模式図であり、この方法は、
S10、リン鉱石またはリン酸塩濃縮物原料を硝酸または硝酸を含有する混合酸で酸分解し、酸不溶物酸溶液を分離して除去するステップと、
S20、酸溶液を冷凍して硝酸カルシウムを結晶化させ、結晶化した硝酸カルシウムを濾過で除去して第1の溶液を得るステップと、
S30、第1の溶液に硫酸溶液を加え、カルシウムをさらに除去して第2の溶液を得るステップと、
S40、第2の溶液を濃縮処理し、余分の硝酸を第2の溶液から揮発させ、濃縮脱硝の第3の溶液を得るステップと、
S50、ステップS40で得られた第3の溶液を抽出し、リン酸と一部の金属イオンを第3の溶液から抽出相に分離し、その後洗浄により抽出相から金属イオンを除去し、洗浄した抽出相を逆抽出して、リン酸を有機抽出溶媒から水相に戻してリン酸溶液を得るステップと、
S60、リン酸溶液と鉄源を反応させてリン酸第二鉄を調製するステップと、を含む。
【0044】
ステップS60において、鉄源とステップS50で得られたリン酸溶液を反応させて、リン酸第二鉄を調製する。ここで、いくつかの具体的な実施形態では、鉄源は鉄塩、例えば硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、塩化第二鉄、または鉄粉などの単量体鉄のうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
例えば、
図2の一具体的な実施例では、鉄源は、質量パーセント85%の硫酸第一鉄七水和物原料を溶解および濾過し、その後25%のアンモニア水を加えてさらに濾過して不純物除去することによって得られた鉄塩溶液である。
【0046】
具体的な実施形態では、鉄源をステップS50で得られたリン酸溶液に加えて、反応過程で、好ましは反応系のpHを4~6の範囲に制御する。反応系のpHが6より高い場合に、他の金属不純物や難溶のリン酸第一鉄が大量に析出する一方、反応系のpHが4より低い場合にリン酸第二鉄の沈殿を生じにくいことを回避することができる。
【0047】
具体的な実施形態では、ステップS60の鉄源とリン酸溶液の反応生成物を固液分離し、固相成分は結晶水を含有するリン酸第二鉄であり、さらに乾燥させて結晶水を除去した後、より純度の高い無水リン酸第二鉄製品を得る。ステップS60で反応した生成物を固液分離して得られた液相成分には、リン酸塩、硝酸塩、および他の未沈殿の金属イオンも含まれている。一層より好ましい実施形態では、この方法は、
ステップS60の生成物を固液分離して得られた液相成分を硝酸リン酸肥料原料として硝酸リン酸肥料を調製するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、ステップS10中の酸溶液は酸分解スラリー中の液相成分を直接濾過し分離して得られ、またはいくつかの実施形態では、酸溶液は、直接濾過分離して得られた酸分解スラリー中の液相成分、および酸分解分解の固相成分をプロセス水で1回または複数回洗浄して得られた洗浄液を組み合わせて得られ、
リン酸塩濃縮物の酸溶液は、主に硝酸酸分解によって得られたリン酸塩、カルシウムイオンなどの不純物金属、硝酸塩などを含む。好ましい実施形態では、酸分解過程で添加された硝酸は、リン鉱石原料を完全に反応させるために、比較的過剰であってもよい。
【0048】
この実施形態では、固液分離で得られた酸不溶物は主にシリカ‐カルシウム‐マグネシウムの酸不溶塩を含み、好ましい実施形態では、酸不溶物に含まれる元素の有効利用に基づいて、土壌を改良するために酸分解によって得られた酸不溶物を土壌改良剤製品に調製する。
【0049】
ステップS20では、酸溶液を冷凍して硝酸カルシウムを結晶化し、結晶硝酸カルシウムを濾除して第1の溶液を得、具体的に、ステップS20では、まず酸溶液を冷凍および結晶化し、冷凍および結晶化の過程で大量のカルシウムイオンおよび一部の金属イオン、例えばマグネシウムは硝酸塩の結晶として沈殿し、例えば酸溶液の温度を-10℃~-5℃に冷凍し、好ましくは-8℃~-5℃であり、60~85%の硝酸カルシウムはCa(NO3)2・4H2O結晶として沈殿し、その後真空フィルタに供給して濾過分離し、濾過後の液相成分は第1の溶液である。
【0050】
または、具体的な好ましい実施形態では、濾過分離後で得られた固相成分をプレス濾過してプレス濾過ケーキを得、冷凍硝酸および冷凍水で濾過ケーキを洗浄し、洗浄液の一部をシステム循環に用いて酸溶液に合流させて再び冷凍および結晶化して分離し、洗浄液の他の部分を酸分解槽に加えて酸分解する。
【0051】
ステップS30では、第1の溶液に硫酸溶液を加え、第1の溶液中の残りのカルシウムイオンが微溶または難溶の硫酸カルシウムとして沈殿し、固液分離を行い、得られた固相成分は、一定量の水分を含有する硫酸カルシウム、例えば硫酸カルシウム半水和物、およびさらにカルシウムを除去した第2の溶液である。
【0052】
実施形態では、サルフェートを含有する溶液は、サルフェート不純物の混入を避けるために、過剰ではなく、すなわち、加えられた硫酸溶液中のサルフェートのモル量は、脱石灰後の第2の溶液にリン酸品質に影響を与えるサルフェートを含有しないように、第1の溶液中カルシウムイオンのモル量以下である。
【0053】
実施形態では、サルフェートを含有する溶液は過剰ではなく、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.5%未満に維持することはその後の不純物の除去に有利であり、より好ましい実施形態では、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.1%未満に維持し、より好ましくは、脱石灰後第2の溶液中のサルフェートの濃度を0.01%未満に維持する。
【0054】
ステップS40では、第2の溶液を濃縮処理して、余分の硝酸を第2の溶液から揮発させ、さらに濃縮脱硝した第3の溶液を得る。
【0055】
好ましい実施形態では、前記第2の溶液を蒸発濃縮して硝酸を除去する蒸発温度は120~180℃間で調整可能であり、より好ましい実施形態では、蒸発濃縮して硝酸を除去する温度は160~177℃に維持される。体系中の硝酸塩の濃度が0.5%未満に蒸発させることは、その後の金属不純物の除去およびリン酸の生成に有利であり、一層より好ましい実施形態では、体系中の硝酸塩の濃度を0.1%未満に蒸発濃縮し、より好ましくは、体系中の硝酸塩の濃度を0.01%未満に蒸発濃縮する。
【0056】
実施形態では、前記第2の溶液を蒸発濃縮して硝酸を除去して得られた第3の溶液に含まれる硝酸塩イオン濃度が0.5%未満である。より好ましくは、第3の溶液に含まれる硝酸塩イオン濃度が0.1%である。
【0057】
好ましい実施形態では、プロセス方法では、ステップS40で除去した硝酸を再度吸収または回収した後、ステップS10でリン鉱石原料を酸分解するために使用される。
【0058】
硝酸を濃縮除去した後の第3の溶液は、主にリン酸、一部の不純物および金属イオンを含む。
【0059】
ステップS50では、ステップS40で得られた第3の溶液を抽出して、リン酸と一部の金属イオンを第3の溶液から抽出相に分離し、その後洗浄によって抽出相から金属イオンを洗浄して除去し、および洗浄後の抽出相を逆抽出して、リン酸を有機抽出溶媒から水相に戻してリン酸溶液を得る。
【0060】
「抽出」および「逆抽出」という用語はいずれも化学工業分野の基礎技術用語である。ここで、「抽出」とは、互いに不溶性(またはわずかに可溶性)である2つの溶媒間の溶解度または分配係数の差を利用して、溶質物質をある溶媒から別の溶媒に移すプロセスを意味する。「逆抽出」とは、「抽出」とは逆のプロセスであり、抽出溶媒から溶質物質を戻すプロセスである。
【0061】
いくつかの具体的な実施形態では、以上の抽出ステップで採用する有機抽出溶媒はn-ブタノール、イソアミルアルコール、スルホン化パラフィン、260溶剤油、406#環境保護溶剤油などの一般に使用される金属イオン抽出溶媒を含み得る。具体的な好ましい実施形態では、ステップS50で採用する抽出溶媒は、n-ブタノールとイソアミルアルコールの混合液であり、混合抽出溶媒ではn-ブタノールとイソアミルアルコールの割合は1:0.5~2であり、好ましくは、n-ブタノールとイソアミルアルコールの割合は1:1である。抽出中、抽出溶媒の添加量と第3の溶液の容積比が0.5~5:1である。
【0062】
一層より好ましい実施形態では、逆抽出ステップの後、逆抽出して分離したリン酸溶液を脱色または濃縮などして、溶液中の有機物またはフッ素元素をさらに除去する一方、製品の外観、色および濃度などを向上させ、標準化製品の高純度産業リン酸を得る。具体的な実施形態では、脱色および濃縮した最終的な高純度リン酸溶液は質量パーセント61.58%のP2O5を含有する。
【0063】
他方、逆抽出によってリン酸を得ることに加えて、抽出溶媒を還元して精製することにより抽出溶媒をリサイクルすることができる。
【0064】
好ましい実施形態では、以上の抽出方法は多段クロスフロー抽出であり、抽出をより効率的に行うことができる。
【0065】
「多段クロスフロー抽出」は化学工業用語であり、多段直列に接続された装置で多段クロスフロー抽出を行う方法を指す。各段は抽出室と再抽出室を含む。抽出室ではドナー相と抽出溶媒が接触し、後者は再抽出室でレシーバーと接触して再抽出され、抽出溶媒は同一段で適切な方法でドナー相とレシーバー相の両方に対してクロスして流動させ、ドナー相とレシーバー相は一部または全段でカウンターフローで流れる。
【0066】
例えば、
図3は具体的な実施例における多段クロスフロー抽出を示す模式図である。この実施例では多段抽出、多段洗浄および複数回逆抽出によって、各ステップ中の成分の分離効率を高め、最終的な分離および調製された製品純度を向上させることができる。
【0067】
いくつかの具体的な実施形態では、洗浄によって金属イオン不純物を含有する溶液は、中微量の金属元素、例えばカルシウム、マグネシウム、マンガンなどを含み、リン酸肥料または肥料製品に添加して中微量元素を補充し、または金属イオン不純物を含有する溶液を濃縮し添加した後、独立した中微量元素肥料製品を調製する。
【0068】
本発明のもう1つの実施例は、硝酸リン酸肥料装置によって産業リン酸を共生産するシステムをさらに提供する。この好ましい実施形態では、産業リン酸を共生産するシステムは
図4に示すように、
リン鉱石原料を硝酸または混合酸で酸分解するための酸分解反応装置と、
酸分解後の酸分解スラリーを固液分離して酸溶液を得るための第1の固液分離装置と、
酸溶液を冷凍および結晶化するための冷凍および結晶化装置と、
冷凍および結晶化装置の酸溶液を固液分離して、第1の溶液および固相の硝酸カルシウム結晶水合物を得るための第2の固液分離装置と、
第1の溶液と硝酸溶液を反応させるための脱石灰反応装置と、
脱石灰反応の生成物を固液分離して第2の溶液および固相の硫酸カルシウムを得るための第3の固液分離装置と、
第2の溶液を濃縮脱硝して濃縮脱硝の第3の溶液および硝酸を得るための脱硝装置と、
第3の溶液を有機抽出溶媒で抽出してその中の金属イオンを除去するための抽出装置と、
抽出装置と逆抽出装置間に設けられ、抽出装置で抽出した抽出相を洗浄し、洗浄液と抽出残留相を合流させてリン酸溶液を得るための洗浄装置と、
金属イオンを含有する有機抽出溶媒つまり抽出相を逆抽出してリン酸溶液を得るための逆抽出装置と、
リン酸溶液と鉄源を反応させてリン酸第二鉄を生成するためのリン酸第二鉄反応装置と、
リン酸第二鉄反応装置の反応生成物を固液分離し、固相成分を結晶水を含有するリン酸第二鉄製品として得るための第4の固液分離装置と、を備える。
【0069】
脱硝装置は酸分解反応装置に接続されて、蒸発脱硝によって生成された硝酸を酸分解槽に供給して酸分解する。
さらに、システムは、
第4の固液分離装置で分離した固相成分を焼成して無水リン酸第二鉄製品を得るための焼成装置をさらに備える。
【0070】
いくつかの実施形態では、抽出装置は、回転抽出塔、多段遠心抽出塔、振動篩板塔または篩板抽出塔のいずれか1つを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、および第3の固液分離装置は互いに独立した分離装置または装置であり、またはいくつかの実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、および第3の固液分離装置は分離装置または装置を共有してもよく、異なるステップでは第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、および第3の固液分離装置の分離プロセスを別々に行ってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、および第3の固液分離装置は、沈降槽、フィルタープレス、フィルター抽出器などを備える。
【0072】
本発明の以上のシステムは、既存の硝酸リン酸肥料システムを部分的に利用・改良し、高純度のリン酸第二鉄を製造し、生産過程中の副産物は肥料調製に直接に使用することができるか、または独立した製品として使用することができ、廃棄物がない。
【0073】
本発明のもう1つの実施例のリン酸第二鉄を共生産する方法は、
図5に示すように、
S10、リン鉱石原料を硝酸または硝酸を含有する混合酸で酸分解し、酸不溶物酸溶液を分離除去するステップと、
S20、酸溶液を冷凍して硝酸カルシウムを結晶化し、結晶硝酸カルシウムを濾過除去して第1の溶液を得るステップと、
S30、第1の溶液にサルフェートを含有する溶液を加え、カルシウムをさらに除去して第2の溶液を得るステップと、
S40、第2の溶液を濃縮処理し、余分の硝酸を第2の溶液から揮発させ、濃縮脱硝の第3の溶液を得るステップと、
S50、ステップS40で得られた第3の溶液にアンモニア、例えばパスアンモニアガス、液体アンモニアまたはアンモニア水などを加え、中和反応を行い、濾過してリン酸アンモニウム塩の溶液を得るステップと、
S60、ステップS50で得られたリン酸アンモニウム塩溶液に鉄源を加えて反応させ、固液分離してリン酸第二鉄製品を得るステップと、を含む。
【0074】
ステップS60では、鉄源、例えば硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、塩化第二鉄、または鉄粉などの単量体鉄のうちの少なくとも1つと、ステップS50で得られたリン酸アンモニウム塩溶液を反応させてリン酸第二鉄を得る。
【0075】
同様に、ステップS60の反応過程で、好ましくは反応系のpHを4~6の範囲に制御する。
【0076】
好ましい実施形態では、ステップS50では、アンモニアを加え中和反応を行うことにより、必要な目標生成物であるリン酸アンモニウム塩を得る一方、中和反応の過程で体系のpHが徐々に高くなり、一部の金属イオン、例えばカルシウム、マグネシウム、マンガンなどは固相沈殿を形成し、リン酸アンモニウム塩製品中の不純物の低減および減少に有利であり、その不純物を濾過して除去し、濃縮して純度の高いリン酸アンモニウム塩を得る。
【0077】
さらに、より好ましい実施形態では、ステップS50で濾過分離した固相成分は主にカルシウム、マグネシウム、マンガンを含有するリン酸塩であり、さらにそれらを硝酸リン酸肥料の元素として硝酸リン酸肥料に調製する。
【0078】
さらに、より好ましい実施形態では、ステップS50で、体系のpHが6以上になるまで、第3の溶液にアンモニアガスを通して中和反応を行う。好ましくは、体系のpHが6以上になると、体系中の不純物金属イオン、例えばカルシウム、マグネシウム、マンガンなどはリン酸塩として沈殿し、不純物の低減、およびリン酸アンモニウム塩の純度向上に有利である。
【0079】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップS50では第3の溶液中にアンモニアを加えて反応系のpHを中和し、必要に応じて調製されたリン酸アンモニウム塩製品ではリン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウムおよびリン酸三水素アンモニウムの割合または使用量は異なり、中和反応系のpHは4~7間で調整可能であり、中和反応系のpHを上記範囲に調整することにより、調製された製品中のリン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素アンモニウムとリン酸三水素アンモニウムの割合は調整可能である。
【0080】
本発明のもう1つの実施例は、リン酸第二鉄を共生産するシステムをさらに提供し、
図5に示すように、
リン鉱石原料を硝酸または混合酸で酸分解するための酸分解反応装置と、
酸分解後の酸分解スラリーを固液分離して酸溶液を得るための第1の固液分離装置と、
酸溶液を冷凍および結晶化するための冷凍および結晶化装置と、
冷凍および結晶化装置の酸溶液を固液分離して第1の溶液および固相の硝酸カルシウム結晶水合物を得るための第2の固液分離装置と、
第1の溶液とサルフェートを含有する溶液、例えば硫酸または硫酸アンモニウムなどを反応させるための脱石灰反応装置と、
脱石灰反応の生成物を固液分離して第2の溶液および固相の硫酸カルシウムを得るための第3の固液分離装置と、
第2の溶液を濃縮脱硝して濃縮脱硝の第3の溶液および硝酸を得るための脱硝装置と、
第3の溶液とアンモニアを中和反応させるための中和装置と、
中和反応後の体系を濾過分離し、液相がリン酸アンモニウム塩溶液とする第4の固液分離装置と、
リン酸アンモニウム塩溶液と鉄源を反応させてリン酸第二鉄を生成するためのリン酸第二鉄反応装置と、
リン酸第二鉄反応装置の反応生成物を固液分離して固相成分つまり結晶水を含有するリン酸第二鉄製品を得るための第5の固液分離装置と、を備える。
脱硝装置は酸分解反応装置に接続され、蒸発脱硝によって生成した硝酸を酸分解槽に供給して酸分解する。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、第3の固液分離装置、第4の固液分離装置、第5の固液分離装置は互いに独立した分離装置または装置であり、またはいくつかの実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、第3の固液分離装置、第4の固液分離装置、第5の固液分離装置は分離装置または装置を共用してもよく、異なるステップでは、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、第3の固液分離装置、第4の固液分離装置、第5の固液分離装置を別々に行う分離過程である。いくつかの具体的な実施形態では、第1の固液分離装置、第2の固液分離装置、第3の固液分離装置、第4の固液分離装置、第5の固液分離装置は、沈降槽、フィルタープレス、フィルター抽出器などを含み得る。
【0082】
好ましい実施形態では、脱硝装置は、第2の溶液を受け入れまたは保持するための収容チャンバーと、前記第2の溶液を加熱蒸発するためのヒーターと、を備える。
【0083】
より好ましい実施形態では、ヒーターは抵抗ヒーターであり、動作とき第2の溶液を120~180℃に加熱して蒸発するように構成される。
【0084】
さらに、上記のシステムは、
第5の固液分離装置によって分離した固相成分を焼成して無水リン酸第二鉄製品を得るための焼成装置をさらに備える。
【0085】
本発明のリン酸第二鉄製品の調製効率を例示するために、以下の実施例1は、具体的な実施形態の調製過程の材料使用および収率を例示し、
S10、質量2tの34%P2O5を含有するリン酸塩濃縮物(不純物カルシウム約40.58%、不純物マグネシウム約0.77%、他の不純物、例えば鉄、アルミニウム、珪素、フッ素合計約1~5%)を転化硝酸2.4t(0.53tN)で酸分解し、酸分解スラリーを固液分離し、酸不溶物0.09t(シリカ‐カルシウム‐マグネシウム原料)および酸溶液を得、酸不溶物を水で2~3回洗浄し、洗浄液を酸溶液に合流させるステップと、
S20、酸溶液の温度を-10℃~-5℃に冷凍して結晶化し、冷凍溶液を-2~1℃で真空濾過し、分離して60%粗硝硝酸カルシウム結晶3.54t、および2.186tの第1の溶液(0.635tP2O5)を得るステップと、
S30、第1の溶液に硫酸0.349tを加え、徹底的に固液分離して硫酸カルシウム半水和物0.51t、および2.055t第2の溶液(0.635tP2O5)を得るステップと、
S40、第2の溶液を80~85℃で蒸発濃縮および脱硝酸し、体系中の硝酸塩イオンが0.01%未満になるまで反応を停止し、回収して転化硝酸0.473t、および第3の溶液を得るステップと、
S50、第3の溶液を1倍体積の有機抽出溶媒(n-ブタノールとイソアミルアルコール1:1体積の混合液)で抽出塔で多段クロスフロー抽出し、抽出相を水で洗浄し、最終的に純水で逆抽出し、逆抽出後、分離してリン酸溶液を得るステップと、
S60、鉄源調製:購入した重量2.3tの85%の硫酸第一鉄七水和物を純水で溶解し、不純物を濾過して除去した後、溶液に25%アンモニア水0.93tを加えて中和し、再び不純物を濾過して除去した後鉄塩溶液を得るステップと、
鉄塩溶液とステップS50で逆抽出分離したリン酸溶液を反応させ、反応系pHを4~6に制御し、完全に反応して十分に沈殿した後プレス濾過によって固液分離し、濾過し濃縮結晶化して0.66t硫酸アンモニウム製品を得、固液分離して得られた固相濾過ケーキは結晶水リン酸第二鉄1.24t(0.48tのP2O5を含有する)であり、
さらに結晶水リン酸第二鉄を乾燥し、結晶水を除去して無水リン酸第二鉄1tを得、無水リン酸第二鉄中のP2O5含有量は48%(約0.48tP2O5)であるステップと、
S70、ステップS60の固液分離で得られた液相成分を濃縮して硝酸リン酸肥料を調製するステップと、を含む。
【0086】
以下の実施例2は、具体的な実施形態における調製過程の材料使用および収率を説明し、具体的に、
S10、重量2tの34%P2O5含有のリン酸塩濃縮物を転化硝酸2.4t(0.53tN)で酸分解し、酸分解スラリーを固液分離して、酸不溶物0.09t(シリカ‐カルシウム‐マグネシウム原料を含有)および酸溶液を得、酸不溶物を水で2~3回洗浄し、洗浄液を酸溶液に合流させるステップと、
S20、酸溶液を温度-10℃~-5℃に冷凍して結晶化し、冷却溶液を-2~1℃で真空濾過し、分離して60%粗硝硝酸カルシウム結晶3.54t、および2.186tの第1の溶液(0.635tP2O5)を得るステップと、
S30、第1の溶液に硫酸0.349tを加えて、徹底的に固液分離して硫酸カルシウム半水和物0.51t、および2.055t第2の溶液(0.635tP2O5)を得るステップと、
S40、第2の溶液を濃縮脱硝して、転化硝酸0.473t、および第3の溶液を回収するステップと、
S50、第3の溶液に徐々にアンモニア0.19tを加えて中和反応を行い、中和反応系のpHが到7.0になると完全な沈殿を待ち、分離および精製し、液相成分がリン酸アンモニウム塩溶液であるステップと、
S60、鉄源調製:購入した重量2.3tの85%の硫酸第一鉄七水和物を純水で溶解し、不純物を濾過して除去した後溶液に25%アンモニア水0.93tを加えて中和し、再び不純物を濾過して除去した後鉄塩溶液を得、
ステップS50のリン酸アンモニウム塩溶液に徐々に鉄塩溶液を加え、反応系pHを4~6に制御し、完全に反応させ十分に沈殿した後プレス濾過によって固液分離し、濾過液を濃縮結晶化して0.66t硫酸アンモニウム製品を得、固液分離して得られた固相濾過ケーキは結晶水リン酸第二鉄1.24t(0.48tのP2O5を含有)であり、さらに焼成によって結晶水を除去した後、無水リン酸第二鉄リン酸第二鉄製品1t(48%のP2O5を含有)を得るステップと、を含む。
【0087】
以上の実施例および具体的な実施態様を詳細に説明したが、本発明の保護範囲はここに限定されなく、本発明の明細書の開示内容に基づいて行われた等価構造や等価フローの変更や、他の関連技術分野における直接または間接的な応用は、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。