(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051708
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/09 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E03D5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158009
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】柏村 英明
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大知
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039BA11
2D039EA03
(57)【要約】
【課題】洗浄水の凍結を防止することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、給水源から便器本体の第1吐水口への給水路を開閉する第1開閉弁と、給水源から便器本体の第2吐水口への給水路を開閉する第2開閉弁と、使用者が洗浄操作部を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁および第2開閉弁を作動させる作動機構とを備える。作動機構は、操作エネルギを蓄積する蓄積部と、蓄積部に蓄積されたエネルギを解放する解放部と、解放部から解放されたエネルギを用いて第1開閉弁および第2開閉弁を所定のタイミングで作動させる作動制御部とを備える。作動制御部は、第1開閉弁および第2開閉弁の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から便器本体の第1吐水口への給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記給水源から前記便器本体の第2吐水口への給水路を開閉する第2開閉弁と、
使用者が洗浄操作部を操作することによって生成される操作エネルギにより前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を作動させる作動機構と
を備え、
前記作動機構は、
前記操作エネルギを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されたエネルギを解放する解放部と、
前記解放部から解放されたエネルギを用いて前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を所定のタイミングで作動させる作動制御部と
を備え、
前記作動制御部は、
前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行する、
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記作動制御部は、
前記流動制御を実行中に前記使用者によって前記洗浄操作部が操作された場合であっても、前記流動制御を継続して実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記作動制御部は、
前記流動制御の終了後、前記流動制御を実行する前の初期状態に戻る、
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記作動機構は、
前記使用者が前記流動制御の実行を要求するときに操作される操作部
を備え、
前記作動制御部は、
前記操作部の操作に応じて前記流動制御を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記作動制御部は、
前記便器本体の洗浄時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を前記所定のタイミングで作動させる洗浄用カム部と、
前記流動制御の実行時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを作動させて開弁させ続ける流動制御用カム部と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記第1吐水口は、前記便器本体のリム吐水用のリム吐水口であり、
前記第1開閉弁は、前記リム吐水口への給水路を開閉し、
前記第2吐水口は、前記便器本体におけるゼット吐水用のゼット吐水口であり、
前記第2開閉弁は、前記ゼット吐水口への給水路を開閉する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の操作レバーに対する手動操作によって洗浄水が便器本体のボウル部等に供給され、便器本体の洗浄を行う水洗大便器が種々知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水洗大便器にあっては、例えば寒冷地において便器周辺の温度が0℃以下に冷えると、流路等に残留する洗浄水が凍結するおそれがある。従来技術においては、このような洗浄水の凍結を防止することができず、改善の余地があった。
【0005】
実施形態の一態様は、洗浄水の凍結を防止することができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、給水源から便器本体の第1吐水口への給水路を開閉する第1開閉弁と、前記給水源から前記便器本体の第2吐水口への給水路を開閉する第2開閉弁と、使用者が洗浄操作部を操作することによって生成される操作エネルギにより前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を作動させる作動機構とを備え、前記作動機構は、前記操作エネルギを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積されたエネルギを解放する解放部と、前記解放部から解放されたエネルギを用いて前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を所定のタイミングで作動させる作動制御部とを備え、前記作動制御部は、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行することを特徴とする。
【0007】
このように、第1開閉弁および第2開閉弁の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行するようにした。このように流路等の洗浄水を流動させることで、洗浄水の凍結を防止することができる。
【0008】
また、前記作動制御部は、前記流動制御を実行中に前記使用者によって前記洗浄操作部が操作された場合であっても、前記流動制御を継続して実行することを特徴とする。
【0009】
これにより、洗浄操作部が操作された場合であっても、流路等の洗浄水を流動させ続けることができ、よって洗浄水の凍結を効果的に防止することができる。
【0010】
また、前記作動制御部は、前記流動制御の終了後、前記流動制御を実行する前の初期状態に戻ることを特徴とする。
【0011】
このように、作動制御部は、流動制御の終了後に初期状態に戻る、すなわち通常モードに戻るようにしたので、以降の洗浄を確実に実行することができる。
【0012】
また、前記作動機構は、前記使用者が前記流動制御の実行を要求するときに操作される操作部を備え、前記作動制御部は、前記操作部の操作に応じて前記流動制御を開始することを特徴とする。
【0013】
これにより、使用者が操作部を操作して流動制御の実行を要求する際、流動制御を確実に実行することができる。
【0014】
また、前記作動制御部は、前記便器本体の洗浄時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を前記所定のタイミングで作動させる洗浄用カム部と、前記流動制御の実行時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを作動させて開弁させ続ける流動制御用カム部とを含むことを特徴とする。
【0015】
このような流動制御用カム部を用いることで、流路等の洗浄水を確実に流動させ、洗浄水の凍結をより効果的に防止することができる。
【0016】
また、前記第1吐水口は、前記便器本体のリム吐水用のリム吐水口であり、前記第1開閉弁は、前記リム吐水口への給水路を開閉し、前記第2吐水口は、前記便器本体におけるゼット吐水用のゼット吐水口であり、前記第2開閉弁は、前記ゼット吐水口への給水路を開閉することを特徴とする。
【0017】
これにより、使用者が洗浄操作部を操作することによって生成される操作エネルギにより、リム吐水やゼット吐水を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
実施形態の一態様によれば、洗浄水の凍結を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水洗大便器を示す模式側断面図である。
【
図2】
図2は、水洗大便器において洗浄を行う構成を説明するための図である。
【
図3】
図3は、作動機構等を正面側から見たときの正面図である。
【
図4】
図4は、作動機構等を正面側から見たときの斜視図である。
【
図5】
図5は、作動機構等を背面側から見たときの斜視図である。
【
図8】
図8は、洗浄レバー等の構成を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施形態における洗浄のタイムチャートを示す図である。
【
図11】
図11は、カムシャフト付近を示す拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、カムシャフトにおける、大洗浄および小洗浄の切り替えを説明する図である。
【
図13】
図13は、洗浄水の凍結を防止する構成を説明する図である。
【
図14】
図14は、変形例に係る洗浄レバー付近の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施形態)
まず、水洗大便器1の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る水洗大便器1を示す模式側断面図である。なお、
図1および
図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
【0022】
また、
図1では、説明の便宜のために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、以下の説明では、例えば水洗大便器1が設置されたときの状態を基準として、直交座標系におけるX軸正方向を「右方」、X軸負方向を「左方」、Y軸正方向を「前方」あるいは「正面側」、Y軸負方向を「後方」あるいは「背面側」、Z軸正方向を「上方」、Z軸負方向を「下方」と記載する場合がある。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0023】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、便器本体2の洗浄に使用される洗浄水を貯える洗浄水タンク装置3とを備える。便器本体2は、トイレ室の床面に設置され、洗浄水タンク装置3は、便器本体2の上方に設置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。また、洗浄水タンク装置3は、便器本体2から離れた場所に設置されてもよい。また、水洗大便器1は、洗浄水タンク装置3を備えず、水道などの給水源A(
図2参照)から供給される洗浄水を便器本体2の洗浄に直接使用する構成であってもよい。
【0024】
便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、導水路22と、排水トラップ管路23とを備える。ボウル部21は、リム部24と、リム吐水口25と、ゼット吐水口26とを備える。リム部24は、ボウル部21の上縁を形成する部位である。
【0025】
リム吐水口25は、リム部24に形成され、洗浄水をボウル部21へ吐水してボウル部21内に洗浄水の旋回流を生じさせる。なお、本明細書では、リム吐水口25から洗浄水が吐水されることを「リム吐水」という場合がある。また、リム吐水口25は、第1吐水口の一例である。
【0026】
ゼット吐水口26は、ボウル部21の底部に設けられ、洗浄水を排水トラップ管路23の入口に向けて吐水し、排水トラップ管路23を洗浄水で急速に満たすことで、サイホン作用を早期に発生させる。なお、本明細書では、ゼット吐水口26から洗浄水が吐水されることを「ゼット吐水」という場合がある。また、ゼット吐水口26は、第2吐水口の一例である。
【0027】
導水路22は、洗浄水タンク装置3から供給される洗浄水または給水源Aから直接供給される洗浄水をボウル部21へ導く、詳しくはリム吐水口25やゼット吐水口26へ導く。
【0028】
排水トラップ管路23は、ボウル部21の下部に入口が接続され、ボウル部21内の汚物を排水管(図示せず)へ排出する。具体的には、排水トラップ管路23は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水管に接続される下降路部分とを備える。ボウル部21から排水トラップ管路23の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水が貯留される。なお、以下においては、ボウル部21および排水トラップ管路23の上昇路部分に貯留される洗浄水を「溜水」と記載する。
【0029】
ここで、上記したリム吐水およびゼット吐水について説明する。洗浄レバー(洗浄操作レバー)30が使用者によって操作されて便器洗浄が行われる際、まずリム吐水が行われ、ボウル部21を洗浄しつつ、汚物をボウル部21の中央付近に集める。続いて、リム吐水と並行して、ゼット吐水が行われる。これにより、上記したように排水トラップ管路23においてサイホン作用が生じ、よって吐水された洗浄水や溜水は、汚物とともに排水トラップ管路23から排水管へ排出される。
【0030】
ゼット吐水の終了後も、引き続きリム吐水が行われる。リム吐水口25から吐水された洗浄水は、ボウル部21を再度洗浄するとともに、排水トラップ管路23へ流れる。これにより、排水トラップ管路23の溜水が補給されて水位が上昇し、便器洗浄が完了する。なお、排水トラップ管路23の溜水は封水として機能し、排水管からの臭気等がボウル部21側へ逆流することを防止する。
【0031】
上記した洗浄レバー30は、洗浄水タンク装置3に回転操作可能に取り付けられる。例えば、
図1に示すように、中立位置にある洗浄レバー30は、前方に向けて回転操作された場合(矢印B1参照)、比較的多量の洗浄水で洗浄を行う大洗浄が行われる。また、洗浄レバー30は、後方に向けて回転操作された場合(矢印B2参照)、比較的少量の洗浄水(詳しくは大洗浄の洗浄水より少ない洗浄水)で洗浄を行う小洗浄が行われる。すなわち、洗浄レバー30の回転方向は、二方向(矢印B1(反時計回り方向)および矢印B2(時計回り方向))とされる。なお、ここでは、洗浄レバー30が前方に向けて回転操作された場合に大洗浄、後方に向けて回転操作された場合に小洗浄が行われる例を示すが、これに限られず、洗浄レバー30が前方に向けて回転操作された場合に小洗浄、後方に向けて回転操作された場合に大洗浄が行われる構成としてもよい。
【0032】
本実施形態に係る水洗大便器1は、使用者が洗浄レバー30を手動操作することによって生成される操作エネルギを利用して洗浄を行うようにした。言い換えると、本実施形態に係る水洗大便器1は、商用電源などの電力を用いることなく洗浄を行う、すなわち無給電で洗浄を行うようにした。
【0033】
なお、洗浄レバー30は、洗浄操作部の一例である。また、洗浄操作部は、洗浄レバー30に限定されるものではなく、使用者によって押下される洗浄ボタンなどであってもよい。
【0034】
次に、
図2を参照して、水洗大便器1において洗浄を行う構成について詳説する。
図2は、水洗大便器1において洗浄を行う構成を説明するための図である。
【0035】
図2に示すように、水洗大便器1は、上記したリム吐水口25と、ゼット吐水口26と、洗浄レバー30と、第1開閉弁101と、第2開閉弁102と、作動機構40とを備える。
【0036】
第1開閉弁101は、給水源Aからリム吐水口25への給水路C1に設けられ、給水路C1を開閉する。すなわち、第1開閉弁101が開弁されると、給水源Aから洗浄水がリム吐水口25へ供給されてリム吐水が行われる。また、第1開閉弁101が閉弁されると、給水源Aからリム吐水口25への洗浄水の供給が停止し、リム吐水が終了する。
【0037】
第2開閉弁102は、給水源Aからゼット吐水口26への給水路C2に設けられ、給水路C2を開閉する。すなわち、第2開閉弁102が開弁されると、給水源Aから洗浄水がゼット吐水口26へ供給されてゼット吐水が行われる。また、第2開閉弁102が閉弁されると、給水源Aからゼット吐水口26への洗浄水の供給が停止し、ゼット吐水が終了する。
【0038】
作動機構40は、第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる機構である。作動機構40は、洗浄レバー30と、第1開閉弁101および第2開閉弁102との間に機械的に接続され、使用者が洗浄レバー30を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる。
【0039】
以下、
図3以降を参照して作動機構40や洗浄レバー30、第1、第2開閉弁101,102の詳細な構成について説明する。
図3は、作動機構40等を正面側から見たときの正面図である。
図4は、作動機構40等を正面側から見たときの斜視図である。
図5は、作動機構40等を背面側から見たときの斜視図である。
図6は、作動機構40等の分解斜視図である。
【0040】
なお、
図3等に示す作動機構40や第1、第2開閉弁101,102等は、洗浄水タンク装置3(
図1参照)内に配置され、洗浄レバー30のみが洗浄水タンク装置3(
図1参照)から露出するように配置されるが、これに限定されるものではない。また、
図3等では、図示の簡略化のため、歯車の歯を省略する場合がある。
【0041】
図3~
図6に示すように、洗浄レバー30には、回転シャフト31が接続される。回転シャフト31は、洗浄レバー30の回転に伴って回転可能に支持される。回転シャフト31の端部(正確には、洗浄レバー30が接続される端部とは反対側の端部)には、突起部32が形成される。
【0042】
突起部32は、回転シャフト31の軸方向(X軸方向)に沿って突出するように形成される。突起部32は、回転シャフト31の回転軸に対して偏心した位置に形成される。突起部32は、作動制御部70のカムシャフト71(いずれも後述)を、大洗浄時の位置と小洗浄時の位置との間で切り替えるための部材であるが、これについては、
図12を用いて後述する。
【0043】
作動機構40は、蓄積部50と、解放部60と、作動制御部70とを備える。
【0044】
蓄積部50は、洗浄レバー30の操作によって生成される操作エネルギを蓄積する。具体的には、蓄積部50は、リンク51,52と、錘部材53とを備える。リンク51は、回転シャフト31に固定されて接続される。従って、リンク51は、洗浄レバー30および回転シャフト31の回転に伴って、回転シャフト31の軸方向(X軸方向)回りに回転する。リンク52は、リンク51と錘部材53とを連結する部材である。リンク52とリンク51とは、互いに回転可能に接続される。また、リンク52と錘部材53とは、互いに回転可能に接続される。上記のように構成された蓄積部50は、錘部材53が洗浄レバー30の操作によって持ち上げられることで、操作エネルギを蓄積するが、これについては
図7を参照して後述する。
【0045】
解放部60は、蓄積部50に蓄積されたエネルギを解放する。具体的には、解放部60は、第1歯車61と、リンク62,63と、脱進機64と、第2歯車65と、第3歯車66と、第4歯車67と、第5歯車68(
図5参照)と、第6歯車69とを備える。
【0046】
第1歯車61は、平歯車であり、左右方向(X軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。第1歯車61は、リンク62,63を介して錘部材53に接続される。すなわち、リンク62,63は、第1歯車61と錘部材53とを連結する部材である。リンク62とリンク63とは、互いに回転可能に接続される。また、リンク62と錘部材53とは、互いに回転可能に接続される。
【0047】
リンク63は、第1歯車61の回転シャフト61a(
図5参照)にラチェット機構(図示せず)を介して接続される。例えば、リンク63は、錘部材53が持ち上がるとき、第1歯車61の回転シャフト61aに対して回転するが、ラチェット機構により空回りし、第1歯車61は回転しない。他方、リンク63は、持ち上がった錘部材53が下がるとき、第1歯車61の回転シャフト61aとラチェット機構を介して係合し、第1歯車61を回転させる。
【0048】
脱進機64は、振り子式の脱進機であり、例えば第1歯車61の回転速度を減速させる。具体的には、脱進機64は、がんぎ車64aと、アンクル64bと、振り子64cとを備える。がんぎ車64aは、左右方向(X軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。がんぎ車64aは、小歯車64a1および大歯車64a2(いずれも
図6参照)を備え、小歯車64a1と大歯車64a2とは、同軸とされる。がんぎ車64aの小歯車64a1は、第1歯車61の外歯と噛み合うように設けられる。がんぎ車64aの大歯車64a2の外歯には、アンクル64bが噛み合い、アンクル64bは、連結部材64dを介して振り子64cに連結される。
【0049】
従って、第1歯車61が回転すると、かかる回転ががんぎ車64a(正確には小歯車64a1)に伝達されてがんぎ車64aが回転する。但し、がんぎ車64a(正確には大歯車64a2)には、振り子64cが連結されたアンクル64bが噛み合っている。そのため、振り子64cの往復運動によってアンクル64bとがんぎ車64aとの噛み合わせが外れたときだけがんぎ車64aが回転するため、第1歯車61の回転速度は減速することとなる。言い換えると、第1歯車61は、比較的低速でゆっくり回転し、よって第1歯車61に連結される錘部材53も比較的低速でゆっくり下がっていくこととなる。これにより、解放部60は、蓄積部50に蓄積されたエネルギをゆっくり解放することとなる。
【0050】
第2歯車65は、平歯車であり、左右方向(X軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。第2歯車65は、第1歯車61と同軸に設けられ第1歯車61の回転に伴って回転する小歯車61bの外歯と噛み合う。
【0051】
第3歯車66は、傘歯車であり、左右方向(X軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。第3歯車66は、第2歯車65と同軸に設けられ、第2歯車65の回転に伴って回転する。
【0052】
第4歯車67は、傘歯車であり、前後方向(Y軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。第4歯車67は、第3歯車66と噛み合う。
【0053】
第5歯車68(
図5参照)は、第4歯車67と同軸に設けられる小歯車である。第5歯車68は、第4歯車67の回転に伴って回転する。
【0054】
第6歯車69は、前後方向(Y軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。第6歯車69は、第5歯車68と噛み合う。
【0055】
従って、解放部60にあっては、持ち上がった錘部材53が下がるときに第1歯車61が回転し、かかる回転は、小歯車61b、第2歯車65、第3歯車66、第4歯車67、第5歯車68を介して第6歯車69に伝達され、これにより蓄積部50に蓄積されたエネルギが解放される。
【0056】
作動制御部70は、解放部60から解放されたエネルギを用いて第1、第2開閉弁101,102を所定のタイミングで作動させる。なお、所定のタイミングとは、便器本体2の洗浄が、上記したように、リム吐水、リム吐水と並行して行われるゼット吐水、リム吐水の順で行われるようなタイミングであるが、これに限定されるものではない。
【0057】
具体的には、作動制御部70は、カムシャフト71と、カムシャフト用歯車72と、リム吐水用カム部73a,73bと、ゼット吐水用カム部74a,74bとを備える。
【0058】
カムシャフト71は、前後方向(Y軸方向)を回転軸にして回転可能に支持される。カムシャフト71の端部には、カムシャフト用歯車72が設けられる。カムシャフト用歯車72は、平歯車であり、解放部60の第6歯車69と噛み合う。従って、第6歯車69が回転すると、カムシャフト用歯車72が回転し、カムシャフト用歯車72の回転に伴ってカムシャフト71が回転する。
【0059】
リム吐水用カム部73a,73bおよびゼット吐水用カム部74a,74bは、カムシャフト71に設けられる。リム吐水用カム部73a,73bは、リム吐水による洗浄時に第1開閉弁101を所定のタイミングで作動させるカム部である。詳しくは、リム吐水用カム部73aは、大洗浄時に第1開閉弁101を作動させ、リム吐水用カム部73bは、小洗浄時に第1開閉弁101を作動させる。
【0060】
より詳しくは、大洗浄時、リム吐水用カム部73aは、洗浄レバー30の回転によるカムシャフト71の移動によって、連結ピン111と対応するように位置される。なお、連結ピン111は、パイロットレバー91と連結される。上記したカムシャフト71の回転によってリム吐水用カム部73aが回転すると、予め設定されたカム形状に応じて、連結ピン111を介してパイロットレバー91を駆動し、第1開閉弁101を作動(開弁)させ、リム吐水が行われる。
【0061】
また、小洗浄時、リム吐水用カム部73bは、洗浄レバー30の回転によるカムシャフト71の移動によって、連結ピン111と対応するように位置される。カムシャフト71の回転によってリム吐水用カム部73bが回転すると、予め設定されたカム形状に応じて、連結ピン111を介してパイロットレバー91を駆動し、第1開閉弁101を作動(開弁)させてリム吐水が行われる。
【0062】
ゼット吐水用カム部74a,74bは、ゼット吐水による洗浄時に第2開閉弁102を所定のタイミングで作動させるカム部である。詳しくは、ゼット吐水用カム部74aは、大洗浄時に第2開閉弁102を作動させ、ゼット吐水用カム部74bは、小洗浄時に第2開閉弁102を作動させる。
【0063】
より詳しくは、大洗浄時、ゼット吐水用カム部74aは、洗浄レバー30の回転によるカムシャフト71の移動によって、連結ピン112と対応するように位置される。なお、連結ピン112は、パイロットレバー92と連結される。上記したカムシャフト71の回転によってゼット吐水用カム部74aが回転すると、予め設定されたカム形状に応じて、連結ピン112を介してパイロットレバー92を駆動し、第2開閉弁102を作動(開弁)させ、ゼット吐水が行われる。
【0064】
また、小洗浄時、ゼット吐水用カム部74bは、洗浄レバー30の回転によるカムシャフト71の移動によって、連結ピン112と対応するように位置される。カムシャフト71の回転によってゼット吐水用カム部74bが回転すると、予め設定されたカム形状に応じて、連結ピン112を介してパイロットレバー92を駆動し、第2開閉弁102を作動(開弁)させてゼット吐水が行われる。
【0065】
なお、リム吐水用カム部73a,73bおよびゼット吐水用カム部74a,74bは、洗浄用カム部の一例である。また、カムシャフト71において、リム吐水用カム部73aとリム吐水用カム部73bとの間に、後述する流動制御に対応する流動制御用カム部75(
図6参照)が設けられるが、これについては
図13を用いて後に説明する。
【0066】
上記した第1開閉弁101および第2開閉弁102は、バルブユニット100に設けられる。第1開閉弁101および第2開閉弁102は、例えばダイヤフラム式の開閉弁である。第1開閉弁101は、上記したパイロットレバー91が図示しないパイロット穴を閉塞しているとき閉弁し、パイロットレバー91が連結ピン111によって引っ張られてパイロット穴が開放されると開弁する。同様に、第2開閉弁102は、パイロットレバー92がパイロット穴を閉塞しているとき閉弁し、パイロットレバー92が連結ピン112によって引っ張られてパイロット穴が開放されると開弁する。
【0067】
次いで、作動機構40などについてさらに詳しく説明する。操作エネルギは、上記したように、使用者が洗浄レバー30を操作することによって生成される。本実施形態では、洗浄レバー30の操作によって操作エネルギを適切に生成することができるようにした。
【0068】
具体的には、本実施形態において、操作エネルギは、使用者の洗浄レバー30への操作内容(例えば大洗浄を行う操作や小洗浄を行う操作)によらず所定量生成されて蓄積部50に蓄積される。言い換えれば、洗浄レバー30の回転方向が二方向の場合であっても、操作エネルギは、洗浄レバー30への操作内容(例えば回転方向)によらず所定量生成されて蓄積部50に蓄積される。なお、所定量は、例えば洗浄に必要な操作エネルギの量である。
【0069】
この蓄積部50におけるエネルギの蓄積について、
図7を参照して説明する。
図7は、
図3のVII-VII線断面図である。なお、
図7および
図8以降では、説明に必要な部材だけを図示する場合がある。
【0070】
図7の左図に示すように、洗浄レバー30が中立位置である場合、錘部材53の位置は初期位置とされる。そして、洗浄レバー30が、例えば大洗浄を行う操作方向(矢印D1方向)に回転操作されると、回転シャフト31およびリンク51の回転によってリンク52が錘部材53を持ち上げる。
図7の例では、錘部材53が初期位置から高さH1持ち上げられた状態を示している。
【0071】
また、洗浄レバー30が、さらに回転操作されて(矢印D2参照)、洗浄レバー30が初期角度(例えば0度)から所定角度(例えば90度)まで回転されると、錘部材53がさらに持ち上げられ、初期位置から高さH2持ち上げられる。
【0072】
このように、本実施形態に係る蓄積部50にあっては、錘部材53が持ち上げられることで、洗浄レバー30の操作によって生成された操作エネルギを錘部材53の位置エネルギとして蓄積する。
【0073】
なお、錘部材53が持ち上がると、錘部材53にリンク62を介して接続されるリンク63は、第1歯車61を回転させる方向に回転するが、第1歯車61は、上記したようにラチェット機構を備えているため、回転しない。
【0074】
そして、洗浄レバー30に対する使用者の操作が終わると、洗浄レバー30が中立位置へ戻るように回転するとともに(矢印D3参照)、錘部材53は自重によって下がり始める。この持ち上がった錘部材53が下がるとき、リンク63は、ラチェット機構において第1歯車61と係合する方向に回転することから、第1歯車61を回転させる。解放部60である第1歯車61の回転により、蓄積部50に蓄積されたエネルギが解放され、作動制御部70(
図4等参照)が解放されたエネルギを用いて洗浄(ここでは大洗浄)を行う。
【0075】
そして、蓄積部50に蓄積されたエネルギが全て解放されると、洗浄レバー30は中立位置となり、錘部材53は初期位置に戻る。すなわち、蓄積部50は、洗浄後に、エネルギを蓄積する前の初期状態に戻る。
【0076】
また、洗浄レバー30が、例えば小洗浄を行う操作方向(すなわち、大洗浄を行う操作方向とは反対側の方向)に回転操作された場合であっても、同様な操作エネルギが生成される。そして、生成された操作エネルギによって錘部材53が持ち上げられる、すなわち、蓄積部50は操作エネルギを蓄積する。
【0077】
このように、本実施形態にあっては、操作エネルギが、使用者の洗浄レバー30への操作内容によらず所定量生成されて蓄積部50に蓄積されるようにした。これにより、洗浄レバー30への操作内容によらず操作エネルギは安定して生成されることとなり、結果として洗浄レバー30の操作によって操作エネルギ(例えば洗浄に必要な操作エネルギ)を適切に安定して生成することができる。
【0078】
また、蓄積部50、操作エネルギを位置エネルギとして蓄積するようにした。具体的には、蓄積部50、操作エネルギを、錘部材53の位置エネルギとして蓄積するようにした。
【0079】
このように、蓄積部50は、力学的エネルギである操作エネルギを位置エネルギに変換して蓄積するようにしたので、操作エネルギを簡便な方法で蓄積することができる。
【0080】
また、蓄積部50は、使用者の洗浄レバー30への操作によって変位する錘部材53を含み、錘部材53の変位によって操作エネルギを蓄積するようにした。具体的には、蓄積部50は、錘部材53の上下方向(鉛直方向)の変位によって操作エネルギを蓄積するようにした。
【0081】
このような錘部材53を用いることで、蓄積部50は、操作エネルギを簡易な構成で蓄積することができる。
【0082】
また、洗浄レバー30は、所定量より大きい操作エネルギが生成されないように構成される。これにより、洗浄レバー30の操作性が低下することを抑制することができる。
【0083】
すなわち、洗浄レバー30において所定量より大きい操作エネルギが生成されると、蓄積部50においては、エネルギが過度に蓄積されるなどして洗浄レバー30の動作が重くなり、操作性が低下するおそれがある。これに対し、洗浄レバー30は、所定量より大きい操作エネルギが生成されないように構成されるため、洗浄レバー30の動作は重くなりにくく、よって洗浄レバー30の操作性が低下することを抑制することができる。
【0084】
この洗浄レバー30において所定量より大きい操作エネルギが生成されない構成について、
図8を参照して説明する。
図8は、洗浄レバー30等の構成を説明するための図であり、リンク51付近を回転シャフト31の回転軸(X軸)方向から見たときの図である。なお、
図8では、洗浄レバー30を破線で示し、洗浄レバー30に接続される回転シャフト31およびリンク51を実線で示している。
【0085】
図8に示すように、洗浄レバー30には、洗浄レバー30の回転を規制する規制部200が設けられる。規制部200は、リンク51の回転軌道上に設けられるストッパである。例えば、規制部200は、洗浄レバー30が大洗浄を行う操作方向(矢印E1参照)に所定角度(例えば90度)回転操作されたときに、
図8において二点鎖線で示すように、リンク51と当接する位置に設けられる。また、規制部200は、洗浄レバー30が小洗浄を行う操作方向(矢印E2参照)に所定角度(例えば90度)回転操作されたときに、
図8において一点鎖線で示すように、リンク51と当接する位置に設けられる。なお、ここでは、所定角度は、洗浄レバー30の操作によって所定量の操作エネルギが生成されるときの角度であるものとする。
【0086】
このように、洗浄レバー30にあっては、上記したような規制部200が設けられることで、所定量より大きい操作エネルギが生成されないようにすることができ、よって洗浄レバー30の操作性が低下することを簡易な構成で抑制することができる。
【0087】
なお、上記では、規制部200により、洗浄レバー30において所定量より大きい操作エネルギが生成されないようにしたが、これに限定されるものではなく、その他の構成を用いてもよい。一例としては、洗浄レバー30において所定量より大きい操作エネルギが生成されないように、洗浄レバー30が所定角度以上回転したときに洗浄レバー30を空転させる空転部が設けられるようにしてもよい。このような空転部を用いることで、所定量より大きい操作エネルギが生成されないようにすることができ、洗浄レバー30の操作性が低下することを簡易な構成で抑制することができる。
【0088】
また、上記したように、本実施形態では、蓄積部50に蓄積された洗浄レバー30の操作エネルギによって第1、第2開閉弁101,102を作動させて洗浄が行われる。しかしながら、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第1、第2開閉弁101,102の作動に必要な量に対して不足していた場合(例えば洗浄レバー30が所定角度(90度)まで回転操作されないような場合)、洗浄水が十分に供給されず、結果として洗浄不良などが発生するおそれがあった。
【0089】
そこで、本実施形態にあっては、蓄積部50に蓄積される操作エネルギが不足する場合に、洗浄不良などの発生を回避することができるように構成した。
【0090】
具体的には、本実施形態に係る作動機構40は、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第1、第2開閉弁101,102の作動に要する第1所定量より少ない第2所定量である場合、第1、第2開閉弁101,102を作動させないように構成される。なお、ここでの第1所定量は、例えば洗浄レバー30が所定角度(90度)回転操作されたときに蓄積部50に蓄積されるエネルギの量であるが、これに限定されるものではない。また、第1所定量は、詳しくは第1、第2開閉弁101,102の開閉により、リム吐水およびゼット吐水が開始してから完了するまでに必要なエネルギ(蓄積エネルギ)の量である。
【0091】
このように、例えば洗浄レバー30が所定角度(90度)まで回転操作されず、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第2所定量で不足しているような場合に、第1、第2開閉弁101,102を作動させないようにしたので、洗浄が開始されず、よって洗浄不良などの発生を回避することができる。
【0092】
この蓄積部50に蓄積されたエネルギが第2所定量で不足しているような場合に、第1、第2開閉弁101,102を作動させない構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、
図3のIX-IX線断面図である。
【0093】
図9等に示すように、作動機構40は、歯車制御部80を備える。歯車制御部80は、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第2所定量で不足しているような場合に、第1歯車61が回転することを規制して、第1、第2開閉弁101,102を作動させないようにする。
【0094】
具体的には、歯車制御部80は、本体部81と、ストッパ部82と、ばね部材83と、ボス部84とを備える。本体部81は、回転シャフト31の回転軸(X軸)方向視においてU字状に形成され、回転シャフト31が挿通される。
【0095】
ストッパ部82は、本体部81の底部81aに取り付けられ、本体部81に対して上下方向に移動可能に取り付けられる。ストッパ部82は、ヘッド部82aと、係止部82bと、鍔部82cとを備える、棒状の部材である。
【0096】
ヘッド部82aは、
図9の左図に示すように、洗浄レバー30が中立位置にあるとき、回転シャフト31の外周面に当接する。ここで、回転シャフト31の外周面には、凹部31aが形成される。凹部31aは、洗浄レバー30が所定角度(90度)回転したときにヘッド部82aが入り込むように形成される。係止部82bは、ヘッド部82aから下方に向けて延在し、ボス部84と係止可能に構成される。鍔部82cは、ヘッド部82aと係止部82bとの間に形成される。
【0097】
ばね部材83は、鍔部82cと本体部81の底部81aとの間に配置され、ストッパ部82を上方に向けて付勢する。ボス部84は、第1歯車61に形成される。例えば、ボス部84は、洗浄レバー30が中立位置にあるとき、ストッパ部82の係止部82bが係止されるような位置に形成される。このボス部84と係止部82bとが係止されている間は、第1歯車61は回転しない。
【0098】
そして、洗浄レバー30が、例えば大洗浄を行う操作方向(矢印D1方向)に回転操作されたものの、洗浄レバー30が45度回転した状態で回転操作が終了するものとする。このとき、蓄積部50では、洗浄レバー30が所定角度(90度)回転操作されていないため、第1所定量のエネルギは蓄積されず、蓄積されたエネルギは第2所定量で不足している。
【0099】
このような蓄積部50に蓄積されたエネルギが第2所定量で不足しているような場合に、ストッパ部82の係止部82bはボス部84に係止されたままの状態であるため、第1歯車61は回転しない。そのため、第1、第2開閉弁101,102は作動せず、すなわち洗浄が開始されず、よって洗浄不良などの発生を回避することができる。
【0100】
また、ストッパ部82のヘッド部82aは、ばね部材83の付勢力が作用し、回転シャフト31に押圧して当接しているため、洗浄レバー30は、操作前の初期位置に戻らない。すなわち、ここでは洗浄レバー30は、初期角度(0度)に対して45度回転した状態のままとなる。そのため、蓄積部50は、錘部材53が初期位置から高さH1持ち上げられた状態のままとなり、よって第2所定量のエネルギを蓄積することができる。
【0101】
そして、
図9の右図に示すように、洗浄レバー30が次回操作されて所定角度(90度)まで回転操作されると(矢印D2参照)、回転シャフト31の凹部31aがストッパ部82のヘッド部82aと対応する位置となる。これにより、ストッパ部82のヘッド部82aは、ばね部材83の付勢力によって押し上げられて凹部31aに入り込む。これにより、ボス部84と係止部82bとの係止が解除され、第1歯車61が回転し、第1、第2開閉弁101,102が作動する、すなわち洗浄が行われる。
【0102】
このように、本実施形態に係る蓄積部50は、第2所定量のエネルギを蓄積し、蓄積された第2所定量のエネルギは、洗浄レバー30が次回操作されたときに、第1、第2開閉弁101,102を作動させるエネルギとして利用されるようにした。
【0103】
これにより、洗浄レバー30の操作によって生成されたエネルギ(ここでは第2所定量のエネルギ)を、第1、第2開閉弁101,102を作動させるエネルギとして有効に利用することができる。
【0104】
また、本実施形態に係る蓄積部50は、
図9の右図に示すように、洗浄レバー30が次回操作された場合、当該操作によって生成されるエネルギと、既に蓄積された第2所定量のエネルギとを蓄積するようにした。
【0105】
これにより、洗浄レバー30の操作によって生成されたエネルギ(ここでは第2所定量のエネルギおよび次回操作で新たに生成されたエネルギ)を、第1、第2開閉弁101,102を作動させるエネルギとして有効に利用することができる。
【0106】
また、本実施形態に係る解放部60は、
図9の右図に示すように、次回の洗浄レバー30の操作時に、当該操作によって蓄積部50に蓄積されたエネルギと第2所定量のエネルギとを解放するようにした。
【0107】
このように、次回操作によって蓄積部50に蓄積されたエネルギと第2所定量のエネルギとをまとめて解放するようにしたので、蓄積部50に不要なエネルギが残留しにくくなり、結果として以降の洗浄を適切に行うことができる。
【0108】
また、洗浄レバー30は、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第2所定量である場合、当該操作前の初期位置に戻らないように構成される(
図9の中央図参照)。これにより、使用者は、洗浄レバー30に対する回転操作不足で、洗浄が行われないことを認識することができ、洗浄レバー30をさらに回転操作させることを促すことができる。
【0109】
また、本実施形態では、洗浄レバー30の操作によって生成された操作エネルギを適切な量蓄積することができるように構成した。
【0110】
かかる構成について、
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態における洗浄のタイムチャートを示す図である。
図10においては、上段から順に、第1開閉弁101の開閉状態、第2開閉弁102の開閉状態、蓄積部50に蓄積されるエネルギを示している。
【0111】
図10に示すように、まず時刻T1において蓄積部50に蓄積されたエネルギが解放され、第1開閉弁101が開弁し、リム吐水が開始される(時刻T2参照)。次いで、時刻T3において第2開閉弁102が開弁し、ゼット吐水が開始される(時刻T4参照)。次いで、時刻T5において第2開閉弁102が閉弁し、ゼット吐水が終了する(時刻T6参照)。次いで、時刻T7において第1開閉弁101が閉弁し、リム吐水が終了する(時刻T8参照)。そして、洗浄が終了した時刻T9において、蓄積部50に蓄積されたエネルギが全て解放される。
【0112】
すなわち、本実施形態に係る蓄積部50は、第1開閉弁101および第2開閉弁102を、洗浄に要する所定時間(ここでは時刻T1~T8)以上開弁可能な所定量aのエネルギを蓄積するようにした。この所定時間は、詳しくは第1、第2開閉弁101,102の開閉により、リム吐水およびゼット吐水が開始してから完了するまでに必要な時間である。
【0113】
これにより、第1、第2開閉弁101,102においては、洗浄に必要な時間開弁されるため、十分な洗浄水を供給することができる。すなわち、洗浄レバー30の操作によって生成された操作エネルギを適切な量蓄積して、適切な洗浄を行うことができる。
【0114】
また、蓄積部50に蓄積される所定量aのエネルギは、第1開閉弁101および第2開閉弁102を所定時間以上開弁して、便器本体2の洗浄に要する水量を供給可能なエネルギの量に設定される。
【0115】
これにより、第1、第2開閉弁101,102においては、洗浄に必要な時間開弁されるため、十分な水量の洗浄水を確実に供給することができる。
【0116】
また、蓄積部50に蓄積される所定量aのエネルギは、第1、第2開閉弁101,102を所定時間以上開弁して、リム吐水口25から洗浄水を吐水するリム洗浄およびゼット吐水口26から洗浄水を吐水するゼット洗浄に要する水量を供給可能なエネルギの量に設定される。
【0117】
これにより、第1、第2開閉弁101,102においては、リム吐水やゼット吐水による洗浄に必要な時間開弁されるため、十分な水量の洗浄水を確実に供給することができる。
【0118】
なお、上記では、所定量aのエネルギが、リム洗浄およびゼット洗浄に要する水量を供給可能なエネルギの量に設定されようにしたが、これに限られず、リム洗浄およびゼット洗浄に加えて、あるいは代えて洗浄水タンク装置3への給水に要する水量を供給可能なエネルギの量に設定されてもよい。
【0119】
また、蓄積部50は、上記したように、洗浄後にエネルギを蓄積する前の初期状態に戻る。これにより、蓄積部50に不要なエネルギが残留しにくくなり、結果として以降の洗浄を適切に行うことができる。
【0120】
次に、カムシャフト71を、大洗浄時の位置と小洗浄時の位置との間で切り替える構成について、
図11および
図12を参照して説明する。
図11は、カムシャフト71付近を示す拡大斜視図である。
図12は、カムシャフト71における、大洗浄および小洗浄の切り替えを説明する図である。
【0121】
なお、
図12は、
図3のXII-XII線断面図であり、連結ピン111,112の位置を破線で示している。
図12の上段の例では、連結ピン111,112が、小洗浄用のリム吐水用カム部73bおよびゼット吐水用カム部74bに対応する位置あるため、カムシャフト71は、小洗浄時の位置であることを示している。
【0122】
図11および
図12に示すように、回転シャフト31には、上記した突起部32が形成される。突起部32は、回転シャフト31の回転軸F(
図12参照)に対して偏心した位置に形成される。
【0123】
作動制御部70は、筒部76と、接続部77と、連結部78とを備える。筒部76は、内部に突起部32が挿通された状態で、前後方向(Y軸方向)に移動可能に配置される。接続部77は、カムシャフト71に接続される。詳しくは、接続部77は、カムシャフト71において、リム吐水用カム部73a,73bと、ゼット吐水用カム部74a,74bとの間に接続されて固定される。連結部78は、筒部76と接続部77とを連結する。
【0124】
作動制御部70が上記のように構成されることで、例えば突起部32の回転によって筒部76が前後方向(Y軸方向)に移動すると、連結部78および接続部77を介してカムシャフト71も前後方向(Y軸方向)に移動することとなる。
【0125】
図12を参照して具体的に説明する。
図12の上段は、洗浄レバー30が中立位置にあるときの突起部32の状態を示している。中立位置にある洗浄レバー30が、例えば大洗浄を行う操作方向(矢印G1方向)に回転操作されると、小洗浄時の位置にあったカムシャフト71を大洗浄時の位置に切り替える必要がある。従って、洗浄レバー30の回転に伴って突起部32も回転する(矢印G1方向)。この突起部32の回転により、筒部76を前方(Y軸正方向)へ押して移動させる(矢印G2参照)。筒部76が移動すると、筒部76に連結部78および接続部77を介して接続されるカムシャフト71も移動する(矢印G3参照)。これにより、小洗浄時の位置にあったカムシャフト71が大洗浄時の位置に切り替えられる、すなわち大洗浄が行われる。
【0126】
また、洗浄レバー30および突起部32は、例えば大洗浄を行う操作によって所定角度(例えば90度)回転された後に、大洗浄が終了して中立位置(初期位置)に戻る(矢印G4参照)。筒部76は、この中立位置に戻る突起部32の回転移動によって位置が変わらないように、言い換えると、カムシャフト71の位置が変わらないように構成される。例えば、筒部76は、突起部32が筒部76と干渉せずに、中立位置に戻れるように、内部に幅広な空間が形成される。
【0127】
ところで、水洗大便器1にあっては、例えば寒冷地において便器周辺の温度が0℃以下に冷えると、流路等に残留する洗浄水が凍結するおそれがある。そこで、本実施形態にあっては、洗浄水の凍結を防止することができるように構成した。
【0128】
この洗浄水の凍結を防止する構成について、
図11および
図13を参照して説明する。
図13は、洗浄水の凍結を防止する構成を説明する図である。なお、
図13は、
図12と同様に、
図3のXII-XII線断面図である。
【0129】
図11および
図13に示すように、本実施形態に係る作動制御部70は、流動制御用カム部75と、操作部79(
図13参照)とを備える。
【0130】
流動制御用カム部75は、カムシャフト71において、リム吐水用カム部73aとリム吐水用カム部73bとの間に設けられる。流動制御用カム部75は、第1開閉弁101を開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行できるようなカム形状に設定される。
【0131】
操作部79は、使用者が流動制御の実行を要求するときに操作される。例えば、操作部79は、使用者によって操作可能な位置に配置される。一例として、操作部79は、洗浄水タンク装置3(
図1参照)から露出するように配置される。また、操作部79は、カムシャフト71と機械的に接続される。
【0132】
作動制御部70は、操作部79の操作に応じて流動制御を開始する。具体的には、操作部79は、使用者によって操作されると、
図13に示すように、カムシャフト71を移動させ、流動制御用カム部75が連結ピン111と対応するように位置される。これにより、流動制御用カム部75は、連結ピン111を介してパイロットレバー91(
図6参照)を駆動し、第1開閉弁101を開弁させ続けて流動制御を実行する。
【0133】
このように、本実施形態に係る作動制御部70は、第1開閉弁101を開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行するようにした。このように流路等の洗浄水を流動させることで、洗浄水の凍結を防止することができる。
【0134】
なお、上記では、作動制御部70は、第1開閉弁101を開弁させ続けて流動制御を実行するようにしたが、これに限定されるものではなく、第1開閉弁101に加えて、あるいは代えて第2開閉弁102を開弁させ続けて流動制御を実行してもよい。すなわち、作動制御部70は、第1開閉弁101および第2開閉弁102の少なくともいずれかを開弁させ続けて流動制御を実行すればよい。
【0135】
また、作動制御部70は、操作部79の操作に応じて流動制御を開始するようにした。これにより、使用者が操作部79を操作して流動制御の実行を要求する際、流動制御を確実に実行することができる。
【0136】
また、作動制御部70は、流動制御の実行時に第1開閉弁101を作動させて開弁させ続ける流動制御用カム部75を備えるようにした。このような流動制御用カム部75を用いることで、流路等の洗浄水を確実に流動させ、洗浄水の凍結をより効果的に防止することができる。
【0137】
また、流動制御用カム部75は、カムシャフト71の回転状態に関わらず、言い換えると、カムシャフト71が回転している状態および回転していない状態のいずれであっても、第1開閉弁101を開弁させ続けて流動制御を実行する。
【0138】
すなわち、作動制御部70は、流動制御を実行中に使用者によって洗浄レバー30が操作された場合であっても、流動制御を継続して実行する。具体的には、作動制御部70の流動制御用カム部75にあっては、洗浄レバー30の操作による操作エネルギによってカムシャフト71が回転している状態であっても、第1開閉弁101を開弁させ続けて流動制御を実行する。
【0139】
これにより、洗浄レバー30が操作された場合であっても、流路等の洗浄水を流動させ続けることができ、よって洗浄水の凍結を効果的に防止することができる。
【0140】
また、作動制御部70は、流動制御の終了後、流動制御を実行する前の初期状態に戻るように構成される。すなわち、例えば、使用者が流動制御の終了を要求する場合、操作部79が再度操作される。そして、作動制御部70のカムシャフト71において、流動制御を実行する前の初期状態が、大洗浄時の位置であった場合、操作部79に対する操作に応じてカムシャフト71を移動させ、大洗浄時のリム吐水用カム部73aおよびゼット吐水用カム部74aが連結ピン111,112と対応するように位置される。
【0141】
このように、作動制御部70は、流動制御の終了後に初期状態に戻る、すなわち通常モードに戻るようにしたので、以降の洗浄(ここでは大洗浄)を確実に実行することができる。
【0142】
上述してきたように、実施形態に係る水洗大便器1は、給水源Aから便器本体2のリム吐水口25(第1吐水口の一例)への給水路C1を開閉する第1開閉弁101と、給水源Aから便器本体2のゼット吐水口26(第2吐水口の一例)への給水路C2を開閉する第2開閉弁102と、使用者が洗浄レバー30(洗浄操作部の一例)を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる作動機構40とを備える。作動機構40は、操作エネルギを蓄積する蓄積部50と、蓄積部50に蓄積されたエネルギを解放する解放部60と、解放部60から解放されたエネルギを用いて第1開閉弁101および第2開閉弁102を所定のタイミングで作動させる作動制御部70とを備える。操作エネルギは、使用者の洗浄レバー30への操作内容によらず所定量生成されて蓄積部50に蓄積される。これにより、洗浄レバー30の操作によって操作エネルギを適切に生成することができる。
【0143】
また、実施形態に係る水洗大便器1は、給水源Aから便器本体2のリム吐水口25(第1吐水口の一例)への給水路C1を開閉する第1開閉弁101と、給水源Aから便器本体2のゼット吐水口26(第2吐水口の一例)への給水路C2を開閉する第2開閉弁102と、使用者が洗浄レバー30(洗浄操作部の一例)を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる作動機構40とを備える。作動機構40は、操作エネルギを蓄積する蓄積部50と、蓄積部50に蓄積されたエネルギを解放する解放部60と、解放部60から解放されたエネルギを用いて第1開閉弁101および第2開閉弁102を所定のタイミングで作動させる作動制御部70とを備える。作動機構40は、蓄積部50に蓄積されたエネルギが第1開閉弁101および第2開閉弁102の作動に要する第1所定量より少ない第2所定量である場合、第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させないように構成される。これにより、蓄積される操作エネルギが不足する場合に、洗浄不良などの発生を回避することができる。
【0144】
また、実施形態に係る水洗大便器1は、給水源Aから便器本体2のリム吐水口25(第1吐水口の一例)への給水路C1を開閉する第1開閉弁101と、給水源Aから便器本体2のゼット吐水口26(第2吐水口の一例)への給水路C2を開閉する第2開閉弁102と、使用者が洗浄レバー30(洗浄操作部の一例)を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる作動機構40とを備える。作動機構40は、操作エネルギを蓄積する蓄積部50と、蓄積部50に蓄積されたエネルギを解放する解放部60と、解放部60から解放されたエネルギを用いて第1開閉弁101および第2開閉弁102を所定のタイミングで作動させる作動制御部70とを備える。蓄積部50は、第1開閉弁101および第2開閉弁102を、便器本体2の洗浄に要する所定時間以上開弁可能な所定量のエネルギを蓄積する。これにより、洗浄レバー30の操作によって生成された操作エネルギを適切な量蓄積することができる。
【0145】
また、実施形態に係る水洗大便器1は、給水源Aから便器本体2のリム吐水口25(第1吐水口の一例)への給水路C1を開閉する第1開閉弁101と、給水源Aから便器本体2のゼット吐水口26(第2吐水口の一例)への給水路C2を開閉する第2開閉弁102と、使用者が洗浄レバー30(洗浄操作部の一例)を操作することによって生成される操作エネルギにより第1開閉弁101および第2開閉弁102を作動させる作動機構40とを備える。作動機構40は、操作エネルギを蓄積する蓄積部50と、蓄積部50に蓄積されたエネルギを解放する解放部60と、解放部60から解放されたエネルギを用いて第1開閉弁101および第2開閉弁102を所定のタイミングで作動させる作動制御部70とを備える。作動制御部70は、第1開閉弁101および第2開閉弁102の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行する。これにより、洗浄水の凍結を防止することができる。
【0146】
(変形例)
次に、変形例について
図14および
図15を参照しつつ説明する。
図14は、変形例に係る洗浄レバー30付近の拡大斜視図である。
図15は、変形例に係る蓄積部50を説明する図である。なお、
図14では、理解の便宜のため、洗浄レバー30においてカバーを取り外した状態を示している。また、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0147】
変形例に係る蓄積部50は、実施形態における錘部材53に代えて、トーションばね300を備える。なお、トーションばね300は、弾性部材の一例である。
【0148】
トーションばね300は、洗浄レバー30に内蔵され、洗浄レバー30が使用者によって回転操作されるときに弾性変形し、回転方向とは反対方向に作用する反力が生じる。変形例に係る蓄積部50は、このトーションばね300の弾性変形によって、洗浄レバー30の操作エネルギを蓄積するように構成される。
【0149】
具体的には、
図15の左図に示すように、蓄積部50のリンク52は、解放部60のリンク62に接続される。リンク52とリンク62とは、互いに回転可能に接続される。なお、
図15の左図は、洗浄レバー30が中立位置である状態を示している。
【0150】
そして、洗浄レバー30が、例えば大洗浄を行う操作方向(矢印J1方向)に回転操作されると、トーションばね300が弾性変形し、洗浄レバー30の回転方向とは反対方向に作用する反力が生じる(矢印K1参照)。
【0151】
また、
図15の右図に示すように、洗浄レバー30が、さらに回転操作されて(矢印J2参照)、洗浄レバー30が初期角度(例えば0度)から所定角度(例えば90度)まで回転されると、トーションばね300には、さらに強い反力が生じる(矢印K2参照)。
【0152】
このように、変形例に係る蓄積部50にあっては、トーションばね300が弾性変形することで、洗浄レバー30の操作によって生成された操作エネルギをトーションばね300の弾性エネルギとして蓄積する。
【0153】
そして、洗浄レバー30に対する使用者の操作が終わると、トーションばね300の反力は、リンク51、リンク52、リンク62を介してリンク63に伝達され、リンク63は、ラチェット機構において第1歯車61と係合する方向に回転することから、第1歯車61を回転させる。この解放部60である第1歯車61の回転により、蓄積部50に蓄積されたエネルギが解放され、作動制御部70が解放されたエネルギを用いて洗浄(ここでは大洗浄)を行う。
【0154】
そして、蓄積部50に蓄積されたエネルギが全て解放されると、洗浄レバー30は中立位置となり、トーションばね300は、エネルギを蓄積する前の初期状態に戻る(
図15の左図参照)。
【0155】
また、洗浄レバー30が、例えば小洗浄を行う操作方向(すなわち、大洗浄を行う操作方向とは反対側の方向)に回転操作された場合であっても、同様な操作エネルギが生成される。そして、生成された操作エネルギによってトーションばね300が弾性変形する、すなわち、蓄積部50は操作エネルギを蓄積する。
【0156】
このように、変形例に係る蓄積部50は、使用者の洗浄レバー30への操作によって弾性変形するトーションばね300を含み、トーションばね300の弾性変形によって操作エネルギを蓄積するようにした。
【0157】
このようなトーションばね300を用いることで、蓄積部50は、操作エネルギを簡易な構成で蓄積することができる。
【0158】
なお、上記では、トーションばね300を弾性部材の例として挙げたが、これに限定されるものではなく、弾性部材は、例えばぜんまいばね、板ばね、ゴム部材などその他の種類の弾性部材であってもよい。
【0159】
なお、上記では、水洗大便器1は、蓄積部50および解放部60をそれぞれ1つ備えるように構成したが、蓄積部50および解放部60の組み合わせを複数備えるような構成であってもよい。すなわち、例えば一方の蓄積部50および解放部60がリム吐水用として機能し、他方の蓄積部50および解放部60がゼット吐水用として機能してもよい。
【0160】
また、上記では、第1吐水口がリム吐水口25、第2吐水口がゼット吐水口26である例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば第1、第2吐水口がともにリム吐水口であってもよいし、第1、第2吐水口がともにゼット吐水口であってもよい。
【0161】
また、ゼット吐水用の洗浄水が洗浄水タンク装置3から供給される場合、第2開閉弁102の開弁時間の後半部分において洗浄水タンク装置3への給水が行われるようにしてもよい。また、リム吐水用の洗浄水が洗浄水タンク装置3から供給される場合、第1開閉弁101の開弁時間の後半部分において洗浄水タンク装置3への給水が行われるようにしてもよい。
【0162】
なお、上記では、流動制御用カム部75が、カムシャフト71において、リム吐水用カム部73aとリム吐水用カム部73bとの間に設けられるようにしたが、これに限られない。すなわち、例えば流動制御用カム部75は、ゼット吐水用カム部74aとゼット吐水用カム部74bとの間に設けられ、第2開閉弁102を開弁させ続けて流動制御を実行してもよい。
【0163】
また、上記では、流動制御用カム部75によって流動制御が行われるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば第1、第2開閉弁101,102の他に、流動制御用の開閉弁を備え、流動制御用の開閉弁は、操作部79の操作に応じて開弁し続けて流動制御を実行するような構成であってもよい。
【0164】
<付記>
(1)給水源から便器本体の第1吐水口への給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記給水源から前記便器本体の第2吐水口への給水路を開閉する第2開閉弁と、
使用者が洗浄操作部を操作することによって生成される操作エネルギにより前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を作動させる作動機構と
を備え、
前記作動機構は、
前記操作エネルギを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されたエネルギを解放する解放部と、
前記解放部から解放されたエネルギを用いて前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を所定のタイミングで作動させる作動制御部と
を備え、
前記作動制御部は、
前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを開弁させ続けて洗浄水を流動させる流動制御を実行する、
ことを特徴とする水洗大便器。
(2)前記作動制御部は、
前記流動制御を実行中に前記使用者によって前記洗浄操作部が操作された場合であっても、前記流動制御を継続して実行する、
ことを特徴とする(1)に記載の水洗大便器。
(3)前記作動制御部は、
前記流動制御の終了後、前記流動制御を実行する前の初期状態に戻る、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の水洗大便器。
(4)前記作動機構は、
前記使用者が前記流動制御の実行を要求するときに操作される操作部
を備え、
前記作動制御部は、
前記操作部の操作に応じて前記流動制御を開始する、
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の水洗大便器。
(5)前記作動制御部は、
前記便器本体の洗浄時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を前記所定のタイミングで作動させる洗浄用カム部と、
前記流動制御の実行時に前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の少なくともいずれかを作動させて開弁させ続ける流動制御用カム部と
を含むことを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載の水洗大便器。
(6)前記第1吐水口は、前記便器本体のリム吐水用のリム吐水口であり、
前記第1開閉弁は、前記リム吐水口への給水路を開閉し、
前記第2吐水口は、前記便器本体におけるゼット吐水用のゼット吐水口であり、
前記第2開閉弁は、前記ゼット吐水口への給水路を開閉する、
ことを特徴とする(1)~(5)のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【0165】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0166】
1 水洗大便器
25 リム吐水口
26 ゼット吐水口
40 作動機構
50 蓄積部
60 解放部
70 作動制御部
101 第1開閉弁
102 第2開閉弁