(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051714
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20240404BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60W50/14
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158020
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】戸田 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 建
(72)【発明者】
【氏名】美浦 彩
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】丁 柯銘
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BB46
3D241CD12
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
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3D241DC45Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】周辺状況に応じた音の通知によって、より適切な運転支援を行うことが可能な運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】実施形態の運転支援装置において、移動体の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定する決定部と、前記決定の結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させる通知制御部と、を備え、前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺状況を認識する認識部と、
前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定する決定部と、
前記決定の結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させる通知制御部と、
を備え、
前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、
運転支援装置。
【請求項2】
前記通知制御部は、前記移動体を加速させる場合と減速させる場合とで、連続的に変化する音の構成を異ならせた通知音を前記スピーカに出力させる、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記通知制御部は、音の周波数または音程を、前記連続的に大きくまたは小さく変化させた構成の通知音を前記スピーカに出力させる、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との乖離度合に応じて、前記周波数または音程を変更させる、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との乖離度合に応じて、繰り返し出力させる前記通知音の周期を変更する、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記スピーカは、前記移動体に複数設けられ、
前記通知制御部は、前記移動体を加速させる場合と減速させる場合とに応じて、前記通知音の音像が前記運転者の後方から前方、または、前記運転者の前方から後方に移動するように、複数の前記スピーカによる出力を制御する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記通知制御部は、
前記移動体の速度と目標速度との差が閾値以上となった場合に前記通知音を前記スピーカに出力させ、
前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記移動体の周辺状況に応じて、前記通知音を継続して出力させるか否かを判定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記通知制御部は、前記移動体の速度が変化することが予測される特定道路区間を前記移動体が走行している場合には、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合であっても、前記通知音を継続して出力させる、
請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記特定道路区間は、合流区間を含み、
前記通知制御部は、前記移動体が前記合流区間における合流車線から本線への合流が完了した場合に、前記通知音の出力を終了する、
請求項8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合であって、且つ前記移動体が前記特定道路区間を走行していない場合に、前記通知音の出力を終了する、
請求項8に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記通知制御部は、前記通知音を出力させた後に、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記通知音と異なる通知音を前記スピーカに出力させる、
請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記運転者によって設定された内容に基づいて、前記通知音を終了させるか否かを判定する、
請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記運転者からの終了指示を受け付けて、前記通知音の出力を終了させる、
請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項14】
前記通知音を出力した後の前記移動体の走行の変化度合に基づいて、前記運転者に通知する通知音を学習する学習部を更に備え、
前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記学習部により予め学習された前記運転者に対応付けられた通知音を前記スピーカに出力させる、
請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項15】
コンピュータが、
移動体の周辺状況を認識し、
認識した前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定し、
決定した結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させ、
前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、
運転支援方法。
【請求項16】
コンピュータに、
移動体の周辺状況を認識させ、
認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定させ、
決定された結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させ、
前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。これに関連して、通知される情報(情報提示、注意喚起、警報)を、情報表現音によって車両の乗員が識別できるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援技術においては、移動体の様々な周辺状況の違いに対して、乗員に適切な運転をさせるように誘導する音を提供することについては考慮されていなかった。したがって、乗員に適切な運転支援が行われていない可能性があることが課題である。
【0005】
本願は、上記課題の解決のため、周辺状況に応じた音の通知によって、より適切な運転支援を行うことが可能な運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、移動体の周辺状況を認識する認識部と、前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定する決定部と、前記決定の結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させる通知制御部と、を備え、前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、運転支援装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体を加速させる場合と減速させる場合とで、連続的に変化する音の構成を異ならせた通知音を前記スピーカに出力させるものである。
【0008】
(3):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、音の周波数または音程を、前記連続的に大きくまたは小さく変化させた構成の通知音を前記スピーカに出力させるものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との乖離度合に応じて、前記周波数または音程を変更させるものである。
【0010】
(5):上記(3)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との乖離度合に応じて、繰り返し出力させる前記通知音の周期を変更するものである。
【0011】
(6):上記(1)の態様において、前記スピーカは、前記移動体に複数設けられ、前記通知制御部は、前記移動体を加速させる場合と減速させる場合とに応じて、前記通知音の音像が前記運転者の後方から前方、または、前記運転者の前方から後方に移動するように、複数の前記スピーカによる出力を制御するものである。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値以上となった場合に前記通知音を前記スピーカに出力させ、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記移動体の周辺状況に応じて、前記通知音を継続して出力させるか否かを判定するものである。
【0013】
(8):上記(7)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体の速度が変化することが予測される特定道路区間を前記移動体が走行している場合には、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合であっても、前記通知音を継続して出力させるものである。
【0014】
(9):上記(8)の態様において、前記特定道路区間は、合流区間を含み、前記通知制御部は、前記移動体が前記合流区間における合流車線から本線への合流が完了した場合に、前記通知音の出力を終了するものである。
【0015】
(10):上記(8)の態様において、前記通知制御部は、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合であって、且つ前記移動体が前記特定道路区間を走行していない場合に、前記通知音の出力を終了するものである。
【0016】
(11):上記(7)の態様において、前記通知制御部は、前記通知音を出力させた後に、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記通知音と異なる通知音を前記スピーカに出力させるものである。
【0017】
(12):上記(7)の態様において、前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記運転者によって設定された内容に基づいて、前記通知音を終了させるか否かを判定するものである。
【0018】
(13):上記(7)の態様において、前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記運転者からの終了指示を受け付けて、前記通知音の出力を終了させるものである。
【0019】
(14):上記(7)の態様において、前記通知音を出力した後の前記移動体の走行の変化度合に基づいて、前記運転者に通知する通知音を学習する学習部を更に備え、前記通知制御部は、前記通知音が出力された状態で、前記移動体の速度と目標速度との差が閾値未満となった場合に、前記学習部により予め学習された前記運転者に対応付けられた通知音を前記スピーカに出力させるものである。
【0020】
(15):本発明の他の態様に係る運転支援方法は、コンピュータが、移動体の周辺状況を認識し、認識した前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定し、決定した結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させ、前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、運転支援方法である。
【0021】
(16):本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、移動体の周辺状況を認識させ、認識された前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定させ、決定された結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させ、前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、プログラムである。
【発明の効果】
【0022】
上記(1)~(16)の態様によれば、周辺状況に応じた音の通知によって、より適切な運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る運転支援装置100を中心とした車両Mに搭載される機器を示す図である。
【
図2】シーン別通知音情報182の内容の一例を示す図である。
【
図3】加速誘導通知音の構成について説明するための図である。
【
図4】減速誘導通知音の構成について説明するための図である。
【
図5】OK通知音(中立通知音)の構成について説明するための図である。
【
図6】第1のシーンにおける通知内容について説明するための図である。
【
図7】第2のシーンにおける通知内容について説明するための図である。
【
図8】実施形態の運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係る運転支援装置100Aを中心とした車両Mに搭載される機器を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る運転支援装置100Bを中心とした二輪車MBに搭載される機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。運転支援装置は、移動体の運転を支援する装置である。移動体とは、三輪または四輪等の車両、二輪車、マイクロモビリティ等を含み、人(運転者)が搭乗するあらゆる移動体を含んでよい。以下に説明する第1実施形態および第2実施形態において、移動体は四輪車両であるものとし、第3実施形態において、移動体は二輪車であるものとする。以下、運転支援装置が搭載された車両を「車両M」と称する。また、以下では、左側通行の法規が適用される場合について説明するが、右側通行の法規が適用される場合、左右を逆に読み替えればよい。
【0025】
<第1実施形態>
[構成]
図1は、第1実施形態に係る運転支援装置100を中心とした車両Mに搭載される機器を示す図である。車両Mは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車、電動機を動力源とした電気自動車、または内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車の何れでもよい。本実施形態において、車両Mを走行させるための構成、例えば、運転操作子、エンジンやモータ等の駆動装置、操舵装置、ブレーキ装置等については図示および説明を省略するが、これらの構成は車両Mに搭載されてよいものである。
【0026】
車両Mには、例えば、車両センサ10、ナビゲーション装置20、物体検知装置30、スピーカ60、表示装置70、および運転支援装置100等が搭載される。
【0027】
車両センサ10は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ、車両Mが居る地点の勾配を検出する勾配センサ等のうち一部または全部を含む。また、車両センサ10は、車両Mの位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、ナビゲーション装置20のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機21を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。
【0028】
ナビゲーション装置20は、例えば、GNSS受信機21と、ナビHMI(Human Machine Interface)22と、経路決定部23とを備える。ナビゲーション装置20は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に地図情報を保持している。GNSS受信機21は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ10の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI22は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。経路決定部23は、例えば、GNSS受信機21により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI22を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、地図情報を参照して決定する。地図情報は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。地図情報は、道路の曲率や勾配(上り坂、下り坂)、車線数、法定速度、種別情報(例えば、市街地、高速道路、一般国道等、合流区間、分岐区間、料金所、および車道と歩道が明確に分離しているかどうかを示す情報)、POI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。ナビゲーション装置20は、地図上経路に基づいて、ナビHMI22を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置20は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置が運転支援装置100と通信接続されることによって実現されてもよい。ナビゲーション装置20は、通信装置を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0029】
物体検知装置30は、例えば、カメラ、レーダ装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、センサフュージョン装置等を含む。物体検知装置30は、公知の機能によって、車両Mの周辺に存在する物体(他車両、二輪車、自転車、歩行者、道路区画線、道路標識、標示等)の種別と位置を検知する。物体検知装置30は、物体の速度を検知可能なものであってもよい。
【0030】
スピーカ60は、車両Mの車室内に音を出力する。スピーカ60は、複数の子スピーカを含むスピーカユニットであってもよく、その場合、音像の位置を任意に設定可能であってもよい。例えば、スピーカ60がスピーカユニットである場合、子スピーカは少なくとも運転者が着座する運転席の前方(例えば、車室内のインストルメントパネル)と後方(例えば、運転席のヘッドレスト、後部座席、または室内空間の後方)のそれぞれ一以上に設けられる。また、子スピーカは、サラウンドスピーカとして、車室内にサラウンド音声が提供できるように、運転席の周囲を囲むように複数設けられてもよい。
【0031】
表示装置70は、例えばタッチパネルであり、車両Mの車室内の任意の箇所に取り付けられる。表示装置70は、運転支援装置100に対する各種の操作を受け付けると共に、運転支援装置100等から指示された画像を表示する。スピーカ60および表示装置70は、ナビHMI22と一体に設けられてもよく、別体に設けられてもよい。
【0032】
運転支援装置100は、例えば、認識部110と、目標速度設定部120と、加減速誘導決定部130と、通知制御部140と、学習部150と、記憶部180とを備える。記憶部180以外の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。加減速誘導決定部130は、「決定部」の一例である。
【0033】
記憶部180は、上記の各種記憶装置、或いはSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部180は、例えば、シーン別通知音情報182、プログラム、その他の各種情報等が格納される。シーン別通知音情報182の内容については、後述する。また、記憶部180には、上述の地図情報が格納されていてもよい。
【0034】
認識部110は、物体検知装置30により検知された結果に基づいて、車両Mの周辺状況(走行シーン)を認識する。例えば、認識部110は、車両Mの周辺に存在する物体の位置、速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心等)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合に、移動体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば、他車両が車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0035】
例えば、認識部110は、例えば、物体検知装置30のカメラによって撮像された画像(以下、カメラ画像)に対する公知の解析処理(例えば、エッジ抽出や特徴量抽出、パターンマッチング処理、文字認識処理等)を行い、画像解析結果から、道路区画線や、道路形状、路肩、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス、壁等を含む車線位置を特定可能な物標(走路境界、道路境界)を認識する。また、認識部110は、カメラ画像の解析結果により得られる道路形状や道路標識等から道路の勾配を認識してもよい。また、認識部110は、車両Mが走行中の道路形状(近い将来に走行することが予測される道路形状を含んでもよい)が、車両Mの速度が変化することが予測される特定道路区間であることを認識してもよい。特定道路区間とは、例えば合流区間、分岐区間、上り坂、下り坂、料金所区間等である。以下、特定道路区間の一例として、合流区間を用いて説明する。例えば、認識部110は、車両Mの走行中の道路形状が合流区間であること、または合流区間でないことを認識してもよい。また、認識部110は、一時停止線、障害物、赤信号、その他の道路事象を認識してもよい。
【0036】
また、認識部110は、車両センサ10やGNSS受信機21により検出された車両Mの位置に基づいて地図情報を参照し、車両Mが走行する走行車線を含む車両Mの周辺の車線を認識してもよい。また、認識部110は、車両Mの走行車線、または将来走行することが予測される道路形状が合流区間であること、または合流区間でないことを認識してもよい。
【0037】
目標速度設定部120は、車両Mが走行すべき目標速度V#を設定する。目標速度設定部120は、例えば、ナビゲーション装置20や認識部110から車両Mが走行する車線の法定速度の情報を取得し、取得した法定速度を目標速度V#に設定する。目標速度設定部120は、道路の曲率や勾配に応じて目標速度V#を法定速度よりも小さい値に設定してもよい。また、目標速度設定部120は、物体検知装置30が検知する物体の混雑度合(例えば、前方の車両数に基づく渋滞度合)に応じて目標速度V#を法定速度よりも小さい値に設定してもよい。また、車道と歩道が明確に分離していない道路において、物体検知装置30が閾値以上の歩行者を検知した場合、目標速度設定部120は、自主的に徐行するために目標速度V#を法定速度よりも小さい値に設定してもよい。車両Mが車道と歩道が明確に分離していない道路を移動していることの情報は、ナビゲーション装置20から取得されてもよいし、物体検知装置30のカメラが撮像した画像を運転支援装置100が解析することで取得されてもよい。
【0038】
加減速誘導決定部130は、車両Mの状態に基づいて、車両Mの運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定する。ここでの状態とは、例えば速度Vと目標速度V#とを含む。例えば、加減速誘導決定部130は、車両Mの速度Vと目標速度V#との比較に基づいて、車両Mの運転者に加減速の何れを促すかを決定する。例えば、加減速誘導決定部130は、速度Vが目標速度V#よりも大きく、且つそれらの差が閾値以上である場合、車両Mの運転者に減速を促すことを決定する。また、加減速誘導決定部130は、速度Vが目標速度V#よりも小さく、且つそれらの差が閾値以上である場合、車両Mの運転者に加速を促すことを決定する。また、加減速誘導決定部130は、速度Vと目標速度V#の差が閾値未満である場合に、車両Mの運転者に加減速の何れも促さないと決定する。なお、これに限らず、加減速誘導決定部130は、道路の曲率や勾配、車両Mの周辺の混雑度合等に基づいて、加減速の何れかを促すか否かを決定してもよい。
【0039】
更に、加減速誘導決定部130は、車両Mの運転者に促す加減速の度合を決定してもよい。例えば、加減速誘導決定部130は、速度Vと目標速度V#の差分の大きさ(乖離度合)が大きくなるほど、加減速の度合が大きくなるように決定する。例えば、加減速誘導決定部130は、乖離度合が基準値(前述した閾値よりも大きい値である)以上である場合に車両Mの運転者に促す加減速の度合を大、基準値未満である場合に車両Mの運転者に促す加減速の度合を小として、大、小の二段階で車両Mの運転者に促す加減速の度合を決定する。上述の基準値を複数設定することで、加速度の度合を多段階で決定することができる。
【0040】
通知制御部140は、加減速誘導決定部130により運転者に加減速の何れかを促す通知を行うことを決定した場合に、対応する通知音(加速誘導通知音、減速誘導通知音)をスピーカ60に出力させる。また、通知制御部140は、速度Vと目標速度V#の差が閾値未満である場合に、車両Mの運転者に加減速の何れか促す通知を行う代わりに、現状の速度で良いこと(加速も減速も必要ないこと)を通知する通知音(OK通知音)をスピーカ60に出力させてもよい。OK通知音は、加速誘導通知音および減速誘導通知音とは異なる通知音である。OK通知音は、例えば、加速誘導通知音または減速誘導通知音を出力した後に、速度Vと目標速度V#の差が閾値未満となった場合に出力されてもよい。これらの通知音を出力する場合、通知制御部140は、認識部110により認識された車両の周辺状況に基づいて、シーン別通知音情報182を参照し、周辺状況(シーン種別)と通知内容(通知種別)とに基づいて、どの通知音でどのように通知を行うかを決定し、決定した通知音をスピーカ60に出力させる。
【0041】
図2は、シーン別通知音情報182の内容の一例を示す図である。シーン別通知音情報182は、シーン種別および通知種別に、通知音情報が対応付けられた情報である。シーン種別には、車両Mの周辺状況(走行シーン)に関する情報が含まれる。シーン種別には、例えば、合流時(合流区間走行時)や、直線道路区間(特定道路区間以外の区間の一例)走行時等が含まれる。通知種別には、通知する内容(例えば、加速誘導、減速誘導、速度差が閾値未満による現状維持(OK通知))に関する情報が含まれる。通知音情報には、シーン種別および通知種別に応じた通知音(例えば、加速誘導通知音、減速誘導通知音、OK通知音)に関する情報が含まれる。実施形態における通知音は、例えば、連続的に音の構成を変化させたものである。「連続的に音の構成を変化させる」とは、例えば、音の周波数または音程を連続的に大きくまたは小さく変化させることである。音程は、より具体的には、順次的に出力される音に対する音程(旋律的音程)である。また、通知音情報には、車両Mの運転者に促す加減速の度合、または車両Mの速度Vと目標速度V#との乖離度合に応じて、周波数または音程の変化度合を変更した通知音が設定されていてもよい。変化度合とは、例えば、通知音の繰り返し周期、周波数の大きさ、周波数の変化量、および音量のうち、少なくとも一つに対する変化の大きさである。また、通知音情報には、通知の出力を伝える音(通知終了音)に関する情報が含まれてよい。また、通知音情報には、通知音に加えて、音声情報(人間の声や機械音声)が含まれてよい。
【0042】
シーン別通知音情報182に含まれる情報は、予め固定された情報が設定されていてもよく、運転者によって任意に設定されてもよい。運転者によって設定される場合には、例えば、表示装置(タッチパネル)70により受け付けられた情報(通知音情報等)がシーン別通知音情報182に登録(または更新)される。
【0043】
また、通知制御部140は、車両Mの速度Vと目標速度V#との差が閾値以上となった場合にシーン別通知音情報182に設定された通知音をスピーカに出力させ、車両Mの速度Vと目標速度V#との差が閾値未満となった場合に、車両Mの周辺状況(通知種別)に応じて、通知音を継続して出力させるか否かを判定してもよい。例えば、通知制御部140は、車両Mが特定道路区間を走行している場合には、車両Mの速度Vと目標速度V#との差が閾値未満となった場合であっても通知音を継続して出力させ、特定道路区間以外を走行している場合には、閾値未満となったタイミングで通知音の出力を終了させる。特定道路区間に合流区間が含まれる場合、通知制御部140は、車両Mが合流区間における合流車線から本線への合流が完了した場合(例えば、車両Mが合流完了地点を通過した場合)に、通知音の出力を終了してもよい。
【0044】
また、通知制御部140は、加速誘導通知音または減速誘導通知音が出力された状態で、車両Mの速度と目標速度V#との差が閾値未満となった場合に、運転者によって設定された内容に基づいて、通知音を終了させるか否かを判定してもよい。また、通知制御部140は、加速誘導通知音または減速誘導通知音が出力された状態で、加速誘導通知音または減速誘導通知音が出力された状態で、車両Mの速度と目標速度V#との差が閾値未満となった場合に、運転者からの終了指示を受け付けて、前記通知音の出力を終了させてもよい。これにより、運転者が指示した通知制御を実行することができる。
【0045】
また、通知制御部140は、シーン別通知音情報182を参照して車両の状態や周辺状況に応じた通知音を取得することに代えて(または加えて)、シンセサイザー等の所望の音を生成および合成可能な装置を介してスピーカ60に通知音を出力させてもよい。また、通知制御部140は、通知音に加えて(または代えて)、加速または減速を運転者に促す画像や現状の速度を維持させるための画像を生成して、表示装置70に表示させてもよい。
【0046】
学習部150は、通知音を出力した後の手動運転による車両Mの走行の変化度合に基づいて、運転者に通知する通知音を学習する。例えば、学習部150は、過去に出力した通知音と、通知後の車両Mの誘導結果とに基づいて、運転者が好む通知音(言い換えると、運転者が特定の運転(加速、減速、現状維持)をするように誘導し易い通知音)を学習し、学習した結果に基づいてシーン別通知音情報182を更新する。例えば、学習部150は、通知制御部140に運転者に車両Mの加速または減速を促す予め決められた通知音を出力させ、通知音を出力させた後に車両センサ10から得られる車両Mの加速度または減速度や、車両Mの速度Vと目標速度v#との差が閾値未満になるまでの時間等に基づいて、運転者の好みの通知音を学習する。例えば、学習部150は、通知音を出力してから、車両Mの速度Vと目標速度V#とが閾値未満になるまでの時間が最も早い通知音を、運転者が好む通知音であるものとして学習する。また、学習部150は、車両Mの速度Vと目標速度v#との差が閾値未満になったときに所定の通知音(OK通知音)を出力させた後、差が閾値未満の状態が継続した時間が最も長い通知音を運転者が好む通知音であるものとして学習してもよい。
【0047】
学習部150は、上記の学習を周辺状況別(シーン別)に行い、それぞれで学習された通知音をシーン別通知音情報182に登録(または更新)することで、各シーンに応じて運転者の好みの通知音を通知させることができ、運転者に気分の良い運転をさせ易くすることができる。
【0048】
なお、学習部150は、認識部110により認識される車両Mの周辺状況を入力とし、通知音を出力とする学習済みモデルを生成してもよい。この学習済みモデルは、例えば、教師(正解)データ等を用いた機械学習(ニューラルネットワーク)や深層学習(ディープラーニング)等のAI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能を用いて更新される。学習済みモデルは、記憶部180に記憶されていてもよく、ネットワークを介して外部装置から取得してもよい。通知制御部140は、学習済みモデルを用いて通知音を出力させる。上述した学習による通知音の更新等を行わない場合、運転支援装置100に学習部150の機能を有していなくてもよい。
【0049】
なお、車両Mには、アクセルペダルやブレーキペダル、ステアリングホイールなどの運転操作子と、運転操作子の操作量に応じて加減速や操舵を行う動力出力装置、ステアリング装置等が搭載されるが、これらについては図示および詳細な説明を省略する。なお以下の説明においてアクセルペダルの操作量であるアクセル開度をQapと称する場合がある。
【0050】
[通知音による運転支援について]
次に、実施形態に係る通知音による運転支援について説明する。なお、以下では、一例として運転支援装置100が、運転者が本線車道への合流をスムーズに行うことを支援する場合について説明する。例えば、合流車線と本線のそれぞれの法定速度等が異なる場合や、合流地点付近に他車両が存在する場合には、走行する車線の法定速度や他車両の速度に応じて車両Mの速度調整が必要になる。しかしながら、運転が不慣れな場合や合流が苦手な場合には、適切な速度調整ができず、スムーズな合流ができない可能性がある。そのため、実施形態の運転支援装置100は、合流時に周辺状況等に応じてスピーカ60から加速誘導通知音、減速誘導通知音、OK通知音等を出力することで車両Mをどのような速度にすべきかを運転者に直感的に把握させることができるため、運転者に適切な速度調整(加速、減速、現状維持)を促すことができる。なお、本実施形態では、合流区間に限らず、分岐、坂道等の他の特定道路区間や、特定道路区間ではない道路(例えば、直線の高速道路等)においても、同様の通知制御を行うことができる。
【0051】
[通知音について]
通知制御部140は、例えば、運転者に車両Mの加速を促す場合には、運転者が加速したくなるような加速誘導通知音を出力させ、運転者に車両Mの減速を促す場合には、運転者が減速したくなるような減速誘導通知音を出力させる。また、通知制御部140は、現在の車両Mの速度を継続させたい場合には、運転者に加速も減速を意識させない安定した中立通知音(OK通知音)を出力させる。以下、運転者に促す速度調整に応じた通知音の一例について説明する。なお、実施形態において出力させる通知音は、以下の例に限定されない。
【0052】
図3は、加速誘導通知音の構成について説明するための図である。図中、横軸は時間を示し、縦軸は音の周波数を示している。後述の
図4、
図5についても同様とする。
図3におけるSA1、SA2のそれぞれは、加速誘導通知音に含まれる一つの通知音である。加速誘導通知音には、3以上の通知音が含まれてよい。複数の通知音SA1、SA2、…のそれぞれを特に分類して説明する場合を除き、「通知音SA」と総称してまとめて説明する。
図3に示す通知音SAは、時間経過に応じた周波数の変化を示しており、通知音SAの矢印は周波数の変化傾向を分かり易くなるために示したものである。通知音SAには、複数の音が含まれる。例えば、通知音SAは、連続的に音の構成を変化させたものであり、より具体的には、音の周波数を連続的(または段階的)に大きく変化させたものである。通知音SAにおける周波数の増加傾向は、
図3に示すように非線形(例えば、下に凸の曲線)に変化してもよく、線形に変化してもよい。また、通知音SAにおける最小周波数Fminや最大周波数Fmax、周波数変化量△F、一つの通知音SAの出力時間(通知開始時間Tsから通知終了時間Teまでの期間)△T、繰り返し周期△C、周波数の増加傾向(線形、非線形)等については、周辺状況(シーン種別)や加速度合(乖離度合でも可)によって変更可能であり、これらの情報は、例えば、シーン別通知音情報182に格納される。また、
図3の例では、加速誘導通知音として繰り返し出力される通知音SAは同一であるが、これに代えて、繰り返すほど最小周波数Fminや最大周波数Fmax、周波数変化量△F等を大きくしたり、出力時間△Tや繰り返し周期△Cを短くしたり、音量を上限値まで大きくしてもよい。
【0053】
図3に示すように加速誘導時には、連続的に周波数を大きくさせた通知音を繰り返し出力させることで、次第に高くなる音の連続音によって、運転者に加速を連想させ易くなるため、運転者が加速したくなるような加速誘導通知音を出力することができる。
【0054】
図4は、減速誘導通知音の構成について説明するための図である。
図4におけるSD1、SD2のそれぞれは、減速誘導通知音に含まれる一つの通知音である。減速誘導通知音には、3以上の通知音が含まれてよい。複数の通知音SD1、SD2、…のそれぞれを特に分類して説明する場合を除き、「通知音SD」と総称してまとめて説明する。
図4に示す通知音SDは、上述した通知音SAと同様に、複数の音が含まれる。例えば、通知音SDは、連続的に音の構成を変化させたものであり、より具体的には、音の周波数を連続的(または段階的)に小さく変化させたものである。通知音SDにおける周波数の減少傾向は、
図4に示すように非線形(例えば、上に凸の曲線)に変化してもよく、線形に変化してもよい。また、通知音SDにおける最小周波数Fminや最大周波数Fmax、周波数変化量△F、通知音SDの出力時間△T、繰り返し周期△C、周波数の減少傾向(線形、非線形)等については、周辺状況(シーン種別)や減速度合(乖離度合でも可)によって変更可能であり、これらの情報は、例えば、シーン別通知音情報182に格納される。また、
図4の例では、減速誘導通知音として繰り返し出力される通知音SDは同一であるが、これに代えて、繰り返すほど周波数変化量△Fを大きくしたり、出力時間△Tや繰り返し周期△Cを短くしたり、音量を上限値まで大きくしてもよい。
【0055】
図4に示すように減速誘導時には、加速誘導時と連続的に変化する音の構成を異ならせた通知音をスピーカ60に出力させる。例えば、減速誘導時には、連続的に周波数を小さくさせた通知音を繰り返し出力させることで、次第に低くなる音の連続音によって、運転者に減速を連想させ易くなるため、運転者が減速したくなるような減速誘導通知音を出力することができる。
【0056】
図5は、OK通知音(中立通知音)の構成について説明するための図である。
図5におけるSO1、SO2のそれぞれは、OK通知音に含まれる一つの通知音である。OK通知音には、3以上の通知音が含まれてよい。複数の通知音SO1、SO2、…のそれぞれを特に分類して説明する場合を除き、「通知音SO」と総称してまとめて説明する。
図5に示す通知音SOは、上述した通知音SA、SDと異なり、連続的な音の構成を一定(所定範囲内)にさせたものである。通知音SOにおける周波数Fokは、
図4に示すように線形である。なお、周波数Fokの値や、通知音SOの出力時間△T、繰り返し周期△C等については、周辺状況(シーン種別)等によって変更可能であり、これらの情報は、例えば、シーン別通知音情報182に格納される。また、
図4の例では、OK通知音として繰り返し出力される通知音SOは同一であるが、所定範囲内で周波数Fokや、出力時間△T、繰り返し周期△C、音量等を変化させてよい。
【0057】
図5に示すように加速誘導や減速誘導を行わない場合には、加速誘導時、減速誘導時と異ならせた通知音をスピーカ60に出力させる。例えば、OK通知時には、周波数の変化の少ない安定した音を出力させることで、運転者に加速や減速が不要であること(現状の速度の維持すること)を連想させ易くなる。このように、車両Mの状態に応じて通知音を使い分けることで、車両Mの速度調整に関して、より適切な運転支援を行うことができる。
【0058】
なお、上述の
図3~
図5において、縦軸の「周波数」を「音の高さ」に読み替えてもよい。この場合、例えば周波数の増加傾向や減少傾向は音程の変化傾向と読み替えられ、周波数変化量は音程差と読み替えられる。つまり、通知制御部140は、加速誘導時または減速誘導時において、音の周波数または音程を連続的に大きくまたは小さく変化させた構成の通知音をスピーカ60に出力させる。このように、車両Mの状態や走行状況に応じて通知音を使い分けることで、車両Mの速度調整に関して、より適切な運転支援を行うことができる。
【0059】
また、通知制御部140は、スピーカ60が車室内に複数設けられた子スピーカで構成される場合に、車両Mを加速させる場合と減速させる場合とで、通知音の音像が運転者(運転席)の後方から前方、または、運転者の前方から後方に流れる(移動する)ように、複数の子スピーカによる音の出力を制御してもよい。音像の移動は、例えば、複数の子スピーカの設置位置に応じた音量の調整等によって実現できる。例えば、通知制御部140は、加速誘導通知音を出力させる場合には、音像を運転者の後方から前方に流れるように出力させ、減速誘導通知音を出力させる場合には、音像を運転者の前方から後方に流れるように出力させる。なお、流れる方向(移動方向)は、上述と逆でもよい。また、通知制御部140は、OK通知音を出力させる場合には、音像を流さずに(移動させずに)、前方または後方の一方または両方から出力させる。このように、速度調整の内容に応じて音像の出力態様を異ならせることで、運転者に、より確実に速度調整を促すことができる。
【0060】
次に、通知制御部140によってスピーカ60により出力される通知音の具体的な出力態様について具体的に説明する。なお、以下では、二つの走行シーン別に分けて説明する。
【0061】
<第1のシーン:合流時>
図6は、第1のシーンにおける通知内容について説明するための図である。第1のシーンでは、車両Mが合流区間において、合流車線から本線に合流するシーンを示している。
図6の例では、合流車線L11と本線L12、L13とを有する合流区間の道路を示している。また、
図6の例では、時刻T11が最も早く、時刻T12、T13、T14の順に遅くなっているものとする。
図6の例において、時刻T*における自車両Mの位置および速度をM(T*)およびV(T*)と表すものとする。後述する
図7についても同様とする。時刻T11において、車両M(T11)は、合流車線L11を速度V(T11)で本線L2に向かって走行しているものとする。
【0062】
認識部110は、車両の周辺状況を認識し、車両Mが合流区間を走行していることを認識する。また、認識部110は、車両Mの位置情報に基づいて地図情報を参照して、本線側の法定速度を取得し、取得した法定速度を車両Mの目標速度V#として認識する。また、認識部110は、物体検知装置30から検知される本線L12、L13の制限速度を示す道路標識MK1の数値を車両Mの目標速度として認識してもよい。なお、目標速度V#は、例えば、法定速度または制限速度との差が所定速度未満になるように設定されてよい。また、認識部110は、本線を走行する周辺の他車両(図では、車線L13を走行する他車両m1)の速度Vm1に基づいて目標速度V#を認識してもよい。更に、認識部110は、周辺車両の状況(例えば、渋滞状況)等に基づいて、合流に適した(他車両に接触せずに本線に合流できる)速度を目標速度V#として認識してもよい。
【0063】
通知制御部140は、車両センサ10から得られる車両Mの速度Vと、目標速度V#との差が閾値以上である場合に、車両Mの加速または減速を運転者に促す通知音をスピーカ60に出力させる。時刻T11において、車両Mの速度Vは、目標速度V#よりも閾値以上小さいものとする。この場合、通知制御部140は、シーン別通知音情報182を参照し、シーン種別「合流時」において運転者に加速を促すための通知音情報(加速誘導通知音)を取得し、取得した通知音をスピーカ60に出力させる。
【0064】
図6の例では、時刻T11において、加速誘導通知音として時間経過に伴い連続的に周波数を増加させた一以上の通知音SAがスピーカ60から繰り返し出力されていることを示している。なお、通知音SAにおける最小周波数Fminや最大周波数Fmax、周波数変化量△F、通知音SAの出力時間△T、繰り返し周期△C、周波数の増加傾向(線形、非線形)等については、車両Mの速度Vと目標速度V#との差(乖離度合)や、加速度の度合、混雑度合、合流を完了させるべき地点(以下、「合流完了地点」と称する)P1までの残距離、車両Mの速度V等の各種条件に応じて変更されてよい。
【0065】
このような通知音SAを出力させることで、運転者に音による加速を促すことができる。また、例えば「加速してください」といった音声による直接的な要求の通知ではないため、時刻T11のように合流完了地点P1からは、まだ距離がある状態(所定距離以上離れている状態)で、運転者に加速運転を過剰に意識させることがなく、より適切な運転支援を行うことができる。
【0066】
なお、通知制御部140は、加速誘導通知音を出力させてから所定時間が経過しても車両Mの速度変化量が所定量未満である場合、または、合流完了地点P1までの距離が所定距離未満である場合に、周波数の増加率を大きくしたり、繰り返し周期を早くしたり、使用する周波数を大きくして、より高い音で構成された通知音SAを通知させてもよい。また、通知制御部140は、通知音の音量を大きくしてもよい。更に、通知制御部140は、「加速してください」といった音声をスピーカ60に出力させてもよく、加速を促す画像を表示装置70に出力させてよい。これにより、加速が必要である状態であることをより明確に運転者に通知することができる。
【0067】
時刻T12において、車両Mの速度Vは、目標速度V#よりも閾値以上小さい状態であるが、速度差(乖離度合)は、時刻T11の時点に比べて小さくなっている。この場合、通知制御部140は、加速誘導通知音を時刻T11の時点での加速誘導通知音に比べて変化させる。例えば、
図6に示すように、周波数の変化量が小さく、通知音SAにおける最大周波数Fmaxが時刻T11の通知音SAよりも小さい通知音をスピーカ60から出力させる。通知制御部140は、時刻T11に比べて一つの通知音の繰り返し周期(間隔)を長くして出力させてもよい。これにより、車両Mの速度Vが目標速度V#に近づいていることを、通知音SAのみで運転者に把握させることができる。また、例えば「車両の速度が目標速度まで近づいています」といった音声が出力される場合に比べて、運転者が車両Mの速度を過剰に意識することがないため、より適切な運転支援を行うことができる。
【0068】
時刻T13において、車両Mの速Vと目標速度V#との差は、閾値未満の状態であるものとする。この場合、通知制御部140は、シーン別通知音情報182を参照して、速度が閾値未満であることを示す通知音SO(OK通知音)をスピーカ60に出力させる。これにより、現在の速度が合流に適した速度であることを、運転者に通知することができる。
【0069】
なお、合流時において、通知制御部140は、合流が完了するまで(例えば、時刻T14のように、車両Mが合流完了地点P1を通過するまで)、OK通知音を継続して出力させる。これにより、現在の速度Vが合流に適切な速度であることを運転者に把握させることができる。また、合流時の他車両の挙動の変化等により目標速度V#が急に変化した場合であっても、継続して出力されている通知音の変化によって、運転者に容易に状況を把握させることができ、より適切な運転を行わせることができる。
【0070】
<第2のシーン:合流区間でない道路走行時>
図7は、第2のシーンにおける通知内容について説明するための図である。第2のシーンでは、車両Mが合流区間ではない道路区間において、車両Mの加減速を促す通知音を出力するシーンを示している。ここでの「合流区間ではない道路区間」とは、特定道路区間以外の道路区間(例えば、直線道路区間)を示している。
図7の例では、同一方向(図中X軸方向)に進行可能な車線L21、L22を示し、車両Mは、車線L21を速度Vで走行しているものとする。
図7の例において、時刻T*における自車両Mの位置および速度をM(T*)およびV(T*)と表すものとする。また、
図7の例では、時刻T21が最も早く、時刻T22、T23、T24の順に遅くなっているものとする。
【0071】
時刻T21において、車両M(T21)は車線L21を速度V(T21)で走行しているものとする。認識部110は、車両の周辺状況を認識し、車両Mが合流区間を走行していない(直線道路区間を走行している)ことを認識する。また、認識部110は、車両Mの位置情報に基づいて地図情報を参照して、本線側の法定速度を取得し、取得した法定速度を車両Mの目標速度V#として認識する。また、認識部110は、物体検知装置30から検知される本線L21、L22の制限速度を示す道路標識MK2の数値を車両Mの目標速度として認識してもよい。なお、目標速度V#は、例えば、法定速度または制限速度との差が所定速度未満になるように設定される。また、認識部110は、車線L21またはL22を走行する他車両(図では、車線L22を走行する他車両m2)の速度Vm2に基づいて目標速度V#を認識してもよい。
【0072】
通知制御部140は、車両センサ10から得られる車両Mの速度Vと、目標速度V#との差が閾値以上である場合に、車両Mの加速または減速を運転者に促す通知音をスピーカ60に出力させる。時刻T21において、車両Mの速度Vは、目標速度V#よりも閾値以上大きいものとする。この場合、通知制御部140は、シーン別通知音情報182を参照し、直線道路区間走行時において運転者に減速を促すための減速誘導通知音を取得し、取得した減速誘導通知音を出力させる。
【0073】
図7の例では、時刻T21において、減速誘導通知音として時間経過に伴い連続的に周波数を減少させた一以上の通知音SDがスピーカ60から繰り返し出力されていることを示している。なお、通知音SDにおける最小周波数Fminや最大周波数Fmax、周波数変化量△F、通知音SAの出力時間△T、繰り返し周期△C、周波数の減少傾向(線形、非線形)等については、車両Mの速度Vと目標速度V#との差(乖離度合)や、減速度の度合、混雑度合、車両Mの速度V等の各種条件に応じて変更されてよい。
【0074】
このような通知音SDを出力させることで、運転者に音による減速を促すことができる。また、例えば「減速してください」といった音声による直接的な要求の通知ではないため、運転者に減速運転を過剰に意識させることなく、より適切な運転支援を行うことができる。
【0075】
なお、通知制御部140は、減速誘導通知音を出力させてから所定時間が経過、または、所定距離走行しても車両Mの速度変化量が所定量未満である場合に、周波数の減少率を大きくしたり、通知音の繰り返し周期を早くしたり、使用する周波数を大きくしてより高い音で構成された通知音を通知させてもよい。また、通知制御部140は、通知音SDの音量を大きくしてもよい。更に、通知制御部140は、「減速してください」といった音声をスピーカ60に出力させてもよく、減速を促す画像を表示装置70に出力させてよい。これにより、減速が必要である状態であることをより明確に運転者に通知することができる。
【0076】
時刻T22において、車両Mの速度Vは、目標速度V#よりも閾値以上大きい状態であるが、速度差(乖離度合)は、時刻T21の時点に比べて小さくなっている。この場合、通知制御部140は、減速誘導通知音を時刻T21の時点での減速誘導通知音に比べて変化させる。例えば、
図7に示すように、周波数の変化量が小さく、一つの通知音における最大周波数が時刻T21の通知音での最大周波数よりも小さい通知音をスピーカ60から出力させる。通知制御部140は、時刻T21に比べて一つの通知音の繰り返し周期(間隔)を長くして出力させてもよい。これにより、車両Mの速度Vが目標速度V#に近づいていることを、通知音SDのみで運転者に把握させることができる。また、例えば「車両の速度が目標速度まで近づいています」といった音声が出力される場合に比べて、運転者が速度を過剰に意識することがないため、より適切な運転支援を行うことができる。
【0077】
時刻T23において、車両Mの速Vと目標速度V#との差は、閾値未満の状態であるものとする。この場合、通知制御部140は、シーン別通知音情報182を参照し、取得したOK通知音をスピーカ60に出力させる。なお、OK通知音SOは、合流時のOK通知音と同一でもよく、異なっていてもよい。なお、直線道路区間の場合(合流区間ではない場合)において、通知制御部140は、OK通知音を所定時間出力した後、出力を終了する。つまり、時刻T24のように車両Mが直線道路区間を通過していなくてもOK通知音の出力を終了する。これは、走行区間の法定速度や交通流に適応した速度で走行できていると共に、直線道路等においては、大きな速度変化が発生する可能性が低いためである。これにより、運転者への過剰な通知を抑制することができる。
【0078】
なお、上述の例では、周波数を連続的に増加させた一以上の通知音で加速誘導通知音を構成し、周波数を連続的に減少させた一以上の通知音で減速誘導通知音を構成したが、これに限定されるものではない。また、通知音は、単音でもよく、和音でもよい。通知制御部140は、速度差の乖離度合や、通知音の繰り返し回数に応じて単音と和音とを切り替えてもよい。
【0079】
また、通知制御部140は、通知音の出力を終了する場合に、通知の出力を伝える音(通知終了音)を出力させてもよい。これにより、速度調整に関する通知が終了することを運転者に把握させ易くすることができる。なお、通知終了音は、加速誘導通知後、減速誘導通知後、およびOK通知後において同じ音でもよい。これにより、通知終了音であることを運転者に認識させ易くすることができる。
【0080】
[処理フロー]
図8は、実施形態の運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図8の例では、運転支援装置100により実行される処理のうち、主に車両Mの状態と周辺状況に応じた通知音の通知に関する処理を中心として説明する。以下に示す処理は、例えば運転者による車両Mの運転中において、所定タイミングまたは所定周期で繰り返し実行されてよい。
【0081】
図8の例において、認識部110は、車両Mの周辺状況を認識する(ステップS100)。次に、加減速誘導決定部130は、車両Mの速度Vと目標速度V#とを取得し(ステップS102)、車両Mの速度Vと目標速度V#との差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。閾値以上であると判定された場合、通知制御部140は、運転者に加速または減速を促すため、通知する内容(通知種別)と、認識部110で認識された車両Mの周辺状況とに応じて、通知音を決定する(ステップS106)。次に、通知制御部140は、車両Mの速度Vを目標速度V#に近づけるための速度制御を実行させるために、運転者に加速または減速を促す通知音(加速誘導通知音または減速誘導通知音)をスピーカ60に出力させる(ステップS108)。
【0082】
また、ステップS104の処理において、車両の速度Vと目標速度V#との差が閾値以上ではない(閾値未満である)と判定された場合、通知制御部140は、現状の速度Vが適切であることを示す通知音(OK通知音)をスピーカ60に出力させる(ステップS110)。ステップS110の処理では、通知制御部140は、認識部110により認識された周辺状況に基づいて、OK通知音を継続して出力させるか否かを制御してもよい。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0083】
[変形例]
通知制御部140は、運転者からの指示により、上述した通知音による通知を行うか否かを切り替えてもよい。また、加減速誘導決定部130は、過去の走行履歴を記憶部180に記憶させ、走行履歴に含まれる走行回数等から通知音の出力が不要と判断された場合に、車両の速度Vと目標速度V#との差が閾値以上であっても、加減速誘導を行わないと決定してもよい。これにより、走り慣れた合流区間を走行する場合に、通知音が通知されるのを抑制することができる。
【0084】
また、実施形態における通知音は、車両Mの状態や周辺状況に応じてメロディや楽器が変更されてもよく、減速誘導通知音としてブレーキ音を用いたり、加速誘導通知音としてエンジン音を用いてもよい。また、通知制御部140は、運転者の年齢に応じて、より聞き取り易い通知音となるように周波数や音量、リズム、抑揚等を調整してもよい。
【0085】
以上説明した第1実施形態によれば、運転支援装置100において、車両(移動体の一例)Mの周辺状況を認識する認識部110と、周辺状況に基づいて、車両Mの運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定する加減速誘導決定部(決定部の一例)130と、決定の結果に基づいて、移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させる通知制御部140と、を備え、通知音は、連続的に音の構成を変化させたものであることにより、周辺状況に応じた音の通知によって、より適切な運転支援を行うことができる。したがって、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0086】
例えば、第1実施形態によれば、周辺状況等に応じて車両Mの加減速が必要な場合に、運転者が加速したくなる音や減速したくなる音を出力することで、運転者により適切に加速や減速の指示を出すことができる。したがって、第1実施形態によれば、サウンドベースの加減速誘導によって、より適切な運転支援を実現できる。
【0087】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の運転支援装置は、自動運転車両に搭載されるものである。自動運転とは、例えば、自動的に車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。自動運転車両は、車両の利用者(例えば、運転者)の手動操作による運転制御(いわゆる手動運転)が実行されてもよい。
図9は、第2実施形態に係る運転支援装置100Aを中心とした車両Mに搭載される機器を示す図である。運転支援装置100Aは、自動運転制御装置160と共に車両MAに搭載される。車両センサ10、ナビゲーション装置20、物体検知装置30の出力データは、自動運転制御装置160にも入力される。これらに加えて、ナビゲーション装置やMPU(Micro Processing Unit)の出力データも自動運転制御装置160に入力されてよい。自動運転制御装置160は、車両MAの周辺状況を認識し、障害物との接触を回避しつつ走行可能な領域を認識して車両MAの目標軌道(速度要素が付随している)を生成し、目標軌道に沿って車両MAが走行できるように走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、ステアリング装置220等を制御する。走行駆動力出力装置200とは、エンジンや走行用モータ等を含む。自動運転技術の詳細については種々の文献が公知となっているため、更なる説明を省略する。
【0088】
自動運転制御装置160は、更に、ステアリング把持センサ170および車室内カメラ175と接続されている。ステアリング把持センサ170は運転者が操舵操作子であるステアリングホイールを把持しているか否かを検出するためのものであり、車室内カメラ175は運転車の頭部を正面から撮像するものである。自動運転制御装置160は、ステアリング把持センサ170の出力を参照して運転者がステアリングホイールを把持している(ハンズオン)か否かを判定し、車室内カメラ175の撮像画像を解析して運転者が車両MAの進行方向を視認している(アイズオン)か否かを判定する。自動運転制御装置160は、車両MAの周辺環境(走行している道路の種別)や車両MAの速度等に基づいて、ステアリングホイールを離すこと(ハンズオフ)、車両MAの進行方向以外に視線を向けること(アイズオフ)のうち一方または双方を許容する。この許容状態は、自動運転レベルと称されることがある。自動運転制御装置160は、許容されていない状態が発生した場合(例えば、ハンズオンの状態で運転者がステアリングホイールから手を離した場合)、その状態を解消するように運転者に通知した上で、解消されなければ手動運転に切り替える等の処理を行う。自動運転制御装置160は、自動運転レベルに関する情報(自動運転レベル情報)を運転支援装置100Aに出力する。
【0089】
運転支援装置100Aは、自動運転レベル情報を参照し、ハンズオフとアイズオフの双方が許容されている場合、自動的に動作を停止する。この状態において、運転者が車両MAの周辺を監視する義務が一時的に無くなり、自動運転制御装置160の方でリスク物体との接触を回避するための制御が行われるからである。その他の機能に関しては第1実施形態と同様である。つまり、運転支援装置100Aは、自動運転レベル情報により自動運転車両(車両MA)で手動運転が実行されると判定した場合に、第1実施形態の運転支援装置100と同様に、車両MAの状態や周辺状況に基づいて、通知音の通知制御が実行される。
【0090】
以上説明した第2実施形態によれば、実施形態の運転支援装置100Aを自動運転車両にも適用することができる。したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、自動運転との親和性の高い制御を行うことができる。
【0091】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態の運転支援装置は、運転者がヘルメットを被った状態で乗車する二輪車に搭載される。
図10は、第3実施形態に係る運転支援装置100Bを中心とした二輪車MBに搭載される機器を示す図である。運転支援装置100Bは、第1実施形態の運転支援装置100と比較して、スピーカ60を制御するのに代えて、無線通信装置80を有する点で相違する。運転支援装置100Bは、無線通信装置80に指示して通知音に関する指示情報を送信させる。無線通信装置80は、Bluetooth(登録商標)等の通信規格に基づいて通信を行う。
【0092】
運転者が被るヘルメット300には、受信機310と、左耳用スピーカ320-Lと、右耳用スピーカ320-Rが取り付けられている。ヘルメット300には、少なくとも頭部の前方と後方にそれぞれ一以上の子スピーカが設けられていてもよい。また、子スピーカは、サラウンドスピーカとして、ヘルメット300内にサラウンド音声が提供できるように、頭部の周囲を囲むように複数設けられてもよい。
【0093】
運転支援装置100Bは、第1実施形態で説明した処理と同様の処理を行って二輪車MBの状態および周辺状況に応じた通知音を決定し、その通りに左耳用スピーカ320-Lおよび/または右耳用スピーカ320-Rに通知音を出力させるための指示情報を無線通信装置80に送信させる。受信機310は、無線通信装置80から受信した指示情報に基づいて左耳用スピーカ320-Lと、右耳用スピーカ320-Rと、上述の子スピーカのうち一方または双方に通知音を出力させる。第3実施形態において、ヘルメット内に設けられたスピーカに代えて、無線機能付きのイヤホン等が用いられてもよい。
【0094】
以上説明した第3実施形態によれば、音像定位の自由度がある程度低下するものの、それ以外の点については第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0095】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
移動体の周辺状況を認識し、
認識した前記周辺状況に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促すか否かを決定し、
決定した結果に基づいて、前記移動体の運転者に加減速の何れかを促す通知音をスピーカに出力させ、
前記通知音は、連続的に音の構成を変化させたものである、
運転支援装置。
【0096】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0097】
10 車両センサ
20 ナビゲーション装置
30 物体検知装置
60 スピーカ
80 無線通信装置
100、100A、100B 運転支援装置
110 認識部
120 目標速度設定部
130 加減速誘導決定部
140 通知制御部
150 学習部
160 自動運転制御装置
170 ステアリング把持センサ
175 車室内カメラ
300 ヘルメット