(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051720
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】呼吸器
(51)【国際特許分類】
A62B 7/02 20060101AFI20240404BHJP
A62B 9/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A62B7/02
A62B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158028
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000145507
【氏名又は名称】株式会社重松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】重松 宣雄
(72)【発明者】
【氏名】小野 研一
(72)【発明者】
【氏名】井出 弘之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 直芳
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA07
2E185CA03
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】吸気ラインの耐圧性および耐閉塞性を確保しつつ、使用性を向上することができる呼吸器を提供する。
【解決手段】
使用者に供給される吸気ガスが貯留されたボンベによって構成され、使用者の身体に装着される呼吸器本体と、使用者の顔面を覆うように装着される面体と、呼吸器本体との面体と間に設けられて吸気ガスを面体の内側に供給可能とする吸気ライン3と、を備え、吸気ライン3は、可撓性を有する材料によって形成されたインナーチューブ30と、インナーチューブ30の外周面においてインナーチューブ30の長さ方向に互いに間隔をあけて設けられ、各々がインナーチューブ30よりも硬質な材料によって、軸線Oを中心とした環状に形成された複数のチューブカバー31と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に供給される吸気ガスが貯留されたボンベによって構成され、前記使用者の身体に装着される呼吸器本体と、
使用者の顔面を覆うように装着される面体と、
前記呼吸器本体との前記面体と間に設けられて前記吸気ガスを面体の内側に供給可能とする吸気ラインと、
を備え、
前記吸気ラインは、
可撓性を有する材料によって形成されたインナーチューブと、
前記インナーチューブの外周面において該インナーチューブの長さ方向に互いに間隔をあけて設けられ、各々が該インナーチューブよりも硬質な材料によって、軸線を中心とした環状に形成された複数のチューブカバーと、
を有する呼吸器。
【請求項2】
前記インナーチューブに複数の前記チューブカバーが設けられている領域における前記吸気ラインの長さ寸法は、150〔mm〕以上である請求項1に記載の呼吸器。
【請求項3】
前記吸気ラインを流通する前記吸気ガスのゲージ圧は、3〔kPa〕以下である請求項1または2に記載の呼吸器。
【請求項4】
前記インナーチューブは、
前記長さ方向に間隔をあけて配置された複数の小径部と、
前記長さ方向に隣接する前記小径部の間に配置されて、該小径部よりも内径および外径が大径に形成された大径部と、
を有し、
前記チューブカバーは、一つずつ前記小径部に配置されている請求項1または2に記載の呼吸器。
【請求項5】
前記チューブカバーの最大外径は、前記大径部の外径の1.2倍以下である請求項4に記載の呼吸器。
【請求項6】
前記呼吸器本体は、前記吸気ラインに接続されて前記ボンベから前記面体内へ供給される前記吸気ガスの圧力を調整する圧力調整器を有し、
前記面体は、前記吸気ラインが接続される接続部を有し、
前記圧力調整器と前記接続部との間に設けられて、前記面体内の圧力変動を前記圧力調整器に伝達し、前記面体内の圧力を該面体外の圧力よりも高圧に保つように前記圧力調整器を動作させる検圧ラインと、
前記圧力調整器と前記接続部との間の位置で、前記吸気ラインと前記検圧ラインとを固定する固定部材と、
を備える請求項1または2に記載の呼吸器。
【請求項7】
前記固定部材は、前記吸気ラインおよび前記検圧ラインをともに外側から覆う耐火カバーである請求項6に記載の呼吸器。
【請求項8】
前記圧力調整器は、前記使用者の背面に配置されている請求項6に記載の呼吸器。
【請求項9】
前記面体は、前記吸気ラインが接続される接続部を有し、
前記吸気ラインは、
前記接続部に接続される接続領域と、
前記接続領域よりも前記呼吸器本体部に近い側に配置されて、前記接続領域よりも最大外径が大きい本体側領域と、
を有する請求項1または2に記載の呼吸器。
【請求項10】
前記接続領域に配置された前記チューブカバーは、前記本体側領域に配置された前記チューブカバーより硬質な材料によって形成されている請求項9に記載の呼吸器。
【請求項11】
複数の前記チューブカバーの各々は、それぞれが前記インナーチューブの外周面の一部に沿って延び、該インナーチューブの周方向に互いに並んで配置された複数のカバー片を有し、
複数の前記カバー片の各々における前記周方向の少なくとも一方の端には、該周方向に隣接する前記カバー片同士の相対移動を規制する係合部が設けられている請求項1または2に記載の呼吸器。
【請求項12】
前記本体側領域に配置された複数の前記チューブカバーの各々は、それぞれが前記インナーチューブの外周面の一部に沿って延び、該インナーチューブの周方向に互いに並んで配置された複数のカバー片を有し、
複数の前記カバー片の各々における前記周方向の少なくとも一方の端には、該周方向に隣接する前記カバー片同士の相対移動を規制する係合部が設けられ、
前記接続領域に配置された複数の前記チューブカバーの各々は、環状をなす一体の部材である請求項9に記載の呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災現場や工場、その他の場所において酸素欠乏の可能性があったり、人体に有害な物質を吸入してしまうおそれがあったりするような場面で使用される自給式呼吸器が知られている。
【0003】
特許文献1には自給式呼吸器の一例が示されている。この種の呼吸器では使用者が装着したボンベからの吸気ガスを、吸気ライン(吸気管)を介して使用者の顔面を覆う面体へ供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように自給式呼吸器においては吸気ラインが面体に接続されているため、使用者の顔の動作にともなって吸気ラインも動作・変形することになり、吸気ラインには動作・変形し易い柔軟な構造が採用されることが好ましい。特に火災現場で救助活動を行う消防士等にとっては活動の妨げとならないよう、吸気ラインにおける顔の動作への追従性の向上を図り、呼吸器の使用性を向上することが望まれている。
一方で、吸気ラインの追従性を向上させるべく吸気ラインに柔軟な構造を採用すると、外力によって吸気ラインが閉塞し易くなってしまう。さらにはボンベからの吸気ガスを面体に確実に到達させるためには吸気ラインには比較的高い圧力の吸気ガスを流通させなければならならない。そこで吸気ラインの耐閉塞性、耐圧性を向上させようとした場合、吸気ラインにはむしろ変形し難い構造(剛な構造)を採用することが好ましい。しかしながらこのように変形し難い構造を吸気ラインに採用する場合、吸気ラインの顔の動作への追従性を確保するためには吸気ラインを必要以上に長くする必要があり、結果として吸気ラインが使用者の活動の妨げになり、呼吸器の使用性が低下してしまうといった問題がある。
【0006】
そこで本発明は、吸気ラインの耐圧性および耐閉塞性を確保しつつも、使用性を向上することができる呼吸器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る呼吸器は、使用者に供給される吸気ガスが貯留されたボンベによって構成され、前記使用者の身体に装着される呼吸器本体と、使用者の顔面を覆うように装着される面体と、前記呼吸器本体との前記面体と間に設けられて前記吸気ガスを面体の内側に供給可能とする吸気ラインと、を備え、前記吸気ラインは、可撓性を有する材料によって形成されたインナーチューブと、前記インナーチューブの外周面において該インナーチューブの長さ方向に互いに間隔をあけて設けられ、各々が該インナーチューブよりも硬質な材料によって、軸線を中心とした環状に形成された複数のチューブカバーと、を有している。
【0008】
上記呼吸器では、前記インナーチューブに複数の前記チューブカバーが設けられている領域における前記吸気ラインの長さ寸法は、150〔mm〕以上であってもよい。
【0009】
上記呼吸器では、前記吸気ラインを流通する前記吸気ガスのゲージ圧は、3〔kPa〕以下であってもよい。
【0010】
上記呼吸器では、前記インナーチューブは、前記長さ方向に間隔をあけて配置された複数の小径部と、前記長さ方向に隣接する前記小径部の間に配置されて、該小径部よりも内径および外径が大径に形成された大径部と、を有し、前記チューブカバーは、一つずつ前記小径部に配置されていてもよい。
【0011】
上記呼吸器では、前記チューブカバーの最大外径は、前記大径部の外径の1.2倍以下であってもよい。
【0012】
上記呼吸器では、前記呼吸器本体は、前記吸気ラインに接続されて前記ボンベから前記面体内へ供給される前記吸気ガスの圧力を調整する圧力調整器を有し、前記面体は、前記吸気ラインが接続される接続部を有し、上記呼吸器がさらに、前記圧力調整器と前記接続部との間に設けられて、前記面体内の圧力変動を前記圧力調整器に伝達し、前記面体内の圧力を該面体外の圧力よりも高圧に保つように前記圧力調整器を動作させる検圧ラインと、前記圧力調整器と前記接続部との間の位置で、前記吸気ラインと前記検圧ラインとを固定する固定部材と、を備えていてもよい。
【0013】
上記呼吸器では、前記固定部材は、前記吸気ラインおよび前記検圧ラインをともに外側から覆う耐火カバーであってもよい。
【0014】
上記呼吸器では、前記圧力調整器は、前記使用者の背面に配置されていてもよい。
【0015】
上記呼吸器では、前記面体は、前記吸気ラインが接続される接続部を有し、前記吸気ラインは、前記接続部に接続される接続領域と、前記接続領域よりも前記呼吸器本体部に近い側に配置されて、前記接続領域よりも最大外径が大きい本体側領域と、を有していてもよい。
【0016】
上記呼吸器では、前記接続領域に配置された前記チューブカバーは、前記本体側領域に配置された前記チューブカバーより硬質な材料によって形成されていてもよい。
【0017】
上記呼吸器では、複数の前記チューブカバーの各々は、それぞれが前記インナーチューブの外周面の一部に沿って延び、該インナーチューブの周方向に互いに並んで配置された複数のカバー片を有し、複数の前記カバー片の各々における前記周方向の少なくとも一方の端には、該周方向に隣接する前記カバー片同士の相対移動を規制する係合部が設けられていてもよい。
【0018】
上記呼吸器では、前記本体側領域に配置された複数の前記チューブカバーの各々は、それぞれが前記インナーチューブの外周面の一部に沿って延び、該インナーチューブの周方向に互いに並んで配置された複数のカバー片を有し、複数の前記カバー片の各々における前記周方向の少なくとも一方の端には、該周方向に隣接する前記カバー片同士の相対移動を規制する係合部が設けられ、前記接続領域に配置された複数の前記チューブカバーの各々は、環状をなす一体の部材であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記の呼吸器によれば、吸気ラインの耐圧性を確保しつつ、使用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る呼吸器を使用者が装着した状態を示す斜視図であって、(a)は使用者を斜め前方から見た図であり、(b)は使用者を斜め後方から見た図である。
【
図2】上記呼吸器における面体を示す斜視図であって、(a)は面体を斜め前方から見た図であり、(b)は面体を斜め後方から見た図である。
【
図3】上記呼吸器における背負い具を使用者の背面側から見た平面図であって、便宜上、背負い具のカバー等を取り除いて示す概略図である。
【
図4】上記呼吸器における吸気ラインおよび検圧ラインを示す平面図である。
【
図5】上記呼吸器における吸気ラインにおけるインナーチューブの全体図であって、軸線を挟んで一方を断面で示した図である。
【
図6】上記吸気ラインのチューブカバーを軸線の方向から見た側面図である。
【
図7】上記チューブカバーの第一のカバー片および第二のカバー片を示す斜視図である。
【
図8】上記チューブカバーの第一のカバー片を示す斜視図である。
【
図9】上記チューブカバーの第二のカバー片を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る呼吸器100について説明する。
(全体構成)
図1(a)および
図1(b)に示すように呼吸器100は、例えば使用者U(消防士等)によって装着された状態で、吸気ガスGを使用者Uに供給する自給式呼吸器となっている。具体的に呼吸器100は、使用者Uの顔面を覆うように装着される面体1と、使用者Uの背面に装着される呼吸器本体2と、面体1と呼吸器本体2との間に設けられた吸気ライン3および検圧ライン4とを備えている。
【0022】
(面体)
図2(a)に示すように面体1は、光透過性を有する材料(透明樹脂等)によって顔面形状に沿うように形成された面体本体10と、面体本体10に設けられて面体本体10を使用者Uの頭部に固定するための締め紐11と、面体本体10の内側(使用者Uの顔面に対向する側)に設けられた隔障12と、面体本体10の外側に設けられた接続部13とを有している。
【0023】
隔障12はゴム等によって形成され、使用者Uが面体1を装着した状態で使用者Uの顔面に弾性的に接触し、使用者Uの口および鼻を覆うようになっている。隔障12と使用者Uの口、鼻との間には呼吸室Sが形成され、呼吸室Sへは、詳しく後述する吸気ライン3を通じてガスボンベB(
図1(b)参照)から吸気ガスGが供給される。
【0024】
図2(b)に示すように接続部13は面体本体10から突出するように設けられている。接続部13には、一対の接続口13aが設けられ、詳しく後述する吸気ライン3および検圧ライン4が対応する接続口13aに外嵌されることで、吸気ライン3および検圧ライン4の内側の流路が面体1内(面体本体10の内側)に連通している。なお
図2(b)では説明の便宜上、隔障12等の面体1を構成する部品を面体本体10から取り外した状態を示している。
【0025】
(呼吸器本体)
図1(a)および
図1(b)に戻って呼吸器本体2は、使用者Uに供給される吸気ガスGが貯留されたガスボンベBと、ガスボンベBを支持するとともに使用者Uの背面に装着可能となるようにショルダーベルト20等が設けられたフレーム状の背負い具21と、背負い具21に設けられてガスボンベBから流出した吸気ガスGの圧力を調整する圧力調整器22とを有している。ガスボンベBには、吸気ガスGとして大気圧よりも高圧の圧縮空気が貯留されている。
【0026】
圧力調整器22は、詳細な図示および説明は省略するが、減圧弁やプレッシャデマンド弁等によって構成されている。圧力調整器22は、ガスボンベBからの吸気ガスGを減圧してゲージ圧で0〔kPa〕以上3〔kPa〕以下の中圧の状態とし、詳しく後述する吸気ライン3に流入させる。また圧力調整器22は、詳しく後述する検圧ライン4を通じて使用者Uの呼吸による面体1内(呼吸室Sを含む面体本体10の内側)の圧力変動を検知して吸気ガスGの圧力を調整し、面体1内の圧力を、面体1外(面体本体10の外側)の圧力(大気圧)よりも常に高い陽圧の状態に保つ。本実施形態では圧力調整器22は、背負い具21に設けられていることで使用者Uの背面に配置されている。
【0027】
(吸気ライン)
吸気ライン3は、圧力調整器22と接続部13とを接続する管状部材である。本実施形態において吸気ライン3には0〔kPa〕以上3〔kPa〕以下のゲージ圧で吸気ガスGが流通する。ここで
図3に示すように吸気ライン3は、呼吸器本体2の背負い具21内に配置され、かつ圧力調整器22に接続された本体内領域Xと、本体内領域Xに接続されて少なくとも一部が背負い具21から外部に突出して面体1における接続部13に接続された突出領域Yとを有している。ここで突出領域Yの一端は、本体内領域Xの一端に対して外側若しくは内側から嵌め込まれ、例えば結束バンドKによって固定されている。このため突出領域Yと本体内領域Xとは一部がオーバーラップしているが、以下では説明の便宜上、結束バンドKの位置を本体内領域Xと突出領域Yとの境界とする。
【0028】
本体固定領域Xは、例えばゴム等の可撓性を有する材料によって形成されたインナーチューブ300と、インナーチューブ300を覆うアウターケース301とを有している。本実施形態においてアウターケース301は、曲げ変形可能な金属製フレキシブルチューブとなっている。本体固定領域Xは、背負い具21の幅方向の一端側の位置で背負い具21の上下に延びるように配置されている。
【0029】
図4に示すように突出領域Yは、面体1の接続部13に接続された接続領域A2と、接続領域A2よりも呼吸器本体2に近い側に配置されて接続領域A2よりも最大外径が大きい本体側領域A1とを含んでいる。接続領域A2は接続部13の接続口13aにクランプされて固定されている。本体側領域A1は上述のように本体内領域Xに結束バンドKによって固定されている。そして突出領域Yは、本体側領域A1と接続領域A2との間にわたって延びて内側に流路を形成する円筒状のインナーチューブ30と、インナーチューブ30の外周面に設けられた複数のチューブカバー31とを有している。
【0030】
本実施形態においてインナーチューブ30にこれら複数のチューブカバー31が設けられた領域Zにおける吸気ライン3の長さ寸法は、150〔mm〕以上なっている。なお「インナーチューブ30に複数のチューブカバー31が設けられた領域Z」とは、インナーチューブ30が複数のチューブカバー31によって覆われる領域であって、吸気ライン3の一端側に設けられたチューブカバー31および他端側に設けられたチューブカバー31によってインナーチューブ30が覆われる領域を含むとともに、当該一端側に設けられたチューブカバー31から他端側に設けられたチューブカバー31までのインナーチューブ30の延在領域を示す。
【0031】
(インナーチューブ)
インナーチューブ30は、例えばゴム等の可撓性を有する材料によって形成されている。インナーチューブ30は弾性変形によって湾曲、および長さ方向への伸縮が可能となっている。また
図5に示すようにインナーチューブ30は、長さ方向に間隔をあけて配置された複数の小径部35と、長さ方向に隣接する小径部35同士の間に配置されて、小径部35よりも内径および外径が大径に形成された大径部36とを有している。すなわちインナーチューブ30は蛇腹形状をなしている。
【0032】
また本体側領域A1におけるインナーチューブ30の最大外径は、接続領域A2におけるインナーチューブ30の最大外径よりも大きくなっている。より具体的に本実施形態では、本体側領域A1における大径部36Xの外径が、接続領域A2における大径部36Yの外径よりも大きくなっている。また本体側領域A1における大径部36Xの内径も、接続領域A2における大径部36Yの内径よりも大きくなっている。そして本体側領域A1における大径部36X同士の間隔は、接続領域A2における大径部36Y同士の間隔よりも広くなっている。なお、本体側領域A1における小径部35Xの外径と、接続領域A2における小径部35Yの外径とは同じになっており、本体側領域A1における小径部35Xの内径と接続領域A2の小径部35Yの内径とも同じになっている。
【0033】
(チューブカバー)
図4に戻ってチューブカバー31は、インナーチューブ30よりも硬質な材料によって、インナーチューブ30の長さ方向に沿う軸線Oを中心とした円環状に形成されている。チューブカバー31は、インナーチューブ30における周方向(以下、単に「周方向」とする)に、インナーチューブ30に対して相対回転可能に設けられている。
【0034】
チューブカバー31は、本体側領域A1と接続領域A2とで異なっている。接続領域A2に配置されたチューブカバー31Yの各々は、円環状をなす一体の部材であって、例えば金属リングが採用される。また本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々は、例えば樹脂製の円環状部材である。本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々にくらべて、接続領域A2に配置されたチューブカバー31Yの各々の方が硬質な材料によって形成されている。また本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々は、接続領域A2に配置されたチューブカバー31Yの各々よりも、軸線Oの方向の幅寸法が大きくなっている。さらに本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々は、接続領域A2に配置されたチューブカバー31Yの各々よりも、外径が大きくなっている。
【0035】
本体側領域A1および接続領域A2のそれぞれにおいて、チューブカバー31の最大外径は、インナーチューブ30の大径部36の外径の1.2倍以下であるとよく、本実施形態では1.0倍以下となっている。またチューブカバー31の軸線Oの方向の幅寸法は、大径部36同士の間隔、すなわち小径部35における軸線Oの方向の幅寸法に一致するか、若干小さい寸法になっている。
【0036】
(カバー片)
図6に示すように、本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々は、インナーチューブ30の外周面の一部に沿って延びて周方向に互いに並んで配置された複数のカバー片40を有している。本実施形態では、各々のカバー片40として部分円弧状をなす第一のカバー片41、および第二のカバー片42が設けられている。各々のカバー片41、42には、周方向の両端において周方向に隣接する第一のカバー片41と第二のカバー片42との相対移動を規制する係合部45が設けられている。
【0037】
(係合部)
より具体的には、
図7に示すように係合部45として、第一のカバー片41における周方向の一方の端に設けられた第一係合部45X、および、第一のカバー片41における周方向の他方の端に設けられた第二係合部45Yが設けられている。
第一係合部45Xは、第一収容凸部50、第一横凸部51、および第一後方凸部57を有している。
第二係合部45Yは、第二リブ内凹部62、第二横凹部63、および第二係合凸部68を有している。
【0038】
同様に係合部45として、第二のカバー片41における周方向の一方の端に設けられた第三係合部45V、および、第二のカバー片41における周方向の他方の端に設けられた第四係合部45Wが設けられている。
第三係合部45Vは、第二収容凸部60、第二横凸部61、および第二後方凸部67を有している。
第四係合部45Wは、第一リブ内凹部52、第一横凹部53、および第一係合凸部58を有している。
【0039】
ここで本実施形態において、第一のカバー片41と第二のカバー片42とは同一形状をなしており、第一係合部45Xと第三係合部45Vとが同一形状をなし、第二係合部45Yと第四係合部45Wとが同一形状をなしている。そして第一のカバー片41における周方向の一方の端の第一係合部45Xと、第二のカバー片42における周方向の他方の端の第四係合部45Wとが係合することでカバー片41、42同士の相対移動が規制されるとともに、第一のカバー片41における周方向の他方の端の第二係合部45Yと、第二のカバー片42における周方向の一方の端の第三係合部45Vとが係合することでカバー片41、42同士の相対移動が規制される。
【0040】
より具体的には、カバー片41、42同士が係合すると、第一収容凸部50が第一リブ内凹部52に収容され、第一横凸部51が第一横凹部53に収容され、第一後方凸部57と第一係合凸部58とが係合する。また第二収容凸部60が第二リブ内凹部62に収容され、第二横凸部61が第二横凹部63に収容され、第二後方凸部67と第二係合凸部68とが係合する。第一収容凸部50と第二収容凸部60とは同一形状をなし、第一横凸部51と第二横凸部61とは同一形状をなし、第一リブ内凹部52と第二リブ内凹部62とは同一形状をなし、第一横凹部53と第二横凹部63とは同一形状をなし、第一後方凸部57と第二後方凸部67とは同一形状をなし、第一係合凸部58と第二係合凸部68とは同一形状をなしている。この結果、第一のカバー片41と第二のカバー片42とは完全同一形状をなしている。
【0041】
(第一収容凸部)
図8に示すように、第一収容凸部50は、軸線Oの方向の全域にわたって第一のカバー片41における外周面41aから突出している。第一収容凸部50には、周方向の一方側となる第二のカバー片42の側を向く第一周方向端面71、および第一周方向端面71に対して軸線Oの方向に併設されて周方向の一方側を向く第二周方向端面72が外面として設けられている。本実施形態において第一周方向端面71および第二周方向端面72は滑らかに連続する一つの平面を形成している。
【0042】
(第一横凸部)
また第一横凸部51は、第一周方向端面71および第二周方向端面72の一部領域において、これらの端面71、72から周方向の一方側に突出している。より具体的には第一横凸部51は、軸線Oの方向に間隔をあけて一対設けられ、一方の第一横凸部51は第一周方向端面71から、他方の第一横凸部51は第二周方向端面72から突出している。また各々の第一横凸部51は、第一収容凸部50における軸線Oの方向の端において、第一周方向端面71および第二周方向端面72における径方向(軸線Oに直交する方向)の外側の端で、かつ、第一のカバー片41の外周面41aよりも径方向の外側の位置に配置されており、周方向にくらべて軸線Oの方向の寸法が大きい直方体形状の爪状をなしている。
【0043】
一方の第一横凸部51を構成する外面のうち、軸線Oの方向の一方側を向く面は第一軸方向移動規制面73であり、他方の第一横凸部51を構成する外面のうち、軸線Oの方向の他方側を向く面は第二軸方向移動規制面74となっている。第一軸方向移動規制面73は第一周方向端面71から周方向の一方側に延び、第二軸方向移動規制面74は、第一軸方向移動規制面73に対して軸線Oの方向に間隔をあけて配置され、第二周方向端面72から周方向の一方側に延びている。よって第一収容凸部50および第一横凸部51を径方向の外側から見た際には、第一のカバー片41における周方向の一方側の端は、一対の第一横凸部51によって、軸線Oの方向の中央の領域において周方向に凹む凹状(段状)に形成されている。
【0044】
また、各々の第一横凸部51における径方向の内側を向く外面は第一径方向移動規制面75となっている。各々の第一横凸部51における径方向の外側を向く外面は第一収容凸部50における径方向の外側を向く面に滑らかに連続して一つの平面を構成し、第二径方向移動規制面76となっている。
【0045】
また、各々の第一横凸部51における周方向の一方側を向く外面は第一周方向移動規制面77となっている。ここで、第一収容凸部50における周方向の他方側を向く面、すなわち、第一周方向移動規制面77に対して周方向に反対側に配置された第一収容凸部50における外面が、第二周方向移動規制面78となっている。
【0046】
(第一後方凸部)
第一後方凸部57は、第二周方向移動規制面78における径方向の外側の端において、軸線Oの方向の全域にわたって周方向の他方側に突出するように第一収容凸部50に設けられている。第一後方凸部57は、径方向の内側を向く内側面79と、径方向の外側を向く外側面80とを外面に有している。外側面80は、周方向の他方側に向かうにしたがって径方向の内側に向かって傾斜する傾斜面となっている。
【0047】
(第一リブ内凹部)
図9に示すように、第一リブ内凹部52は、軸線Oの方向の全域にわたって第二のカバー片42における内周面42bから、第二のカバー片42における外周面42aよりも径方向の外側まで、径方向に凹んで内側に第一収容凸部50(
図8参照)を収容するようになっている。第一リブ内凹部52に対応する位置で、第二のカバー片42における外周面42aからは、軸線Oの方向の全域にわたって径方向の外側に突出する第一リブ状凸部55が設けられている。換言すると、第一リブ状凸部55の径方向の内側に第一リブ内凹部52が配置されている。
【0048】
第一リブ内凹部52には、周方向の他方側となる第一のカバー片41の側を向く第一周方向対向端面81、および第一周方向対向端面81に対して軸線Oの方向に併設されて周方向の他方側を向く第二周方向対向端面82が内面として設けられている。本実施形態において第一周方向対向端面81および第二周方向対向端面82は滑らかに連続する一つの平面を形成している。第一周方向対向端面81は第一のカバー片41の第一周方向端面71に対して周方向に対向し、第二周方向対向端面82は第一のカバー片41の第二周方向端面72に対して周方向に対向し、第一のカバー片41と第二のカバー片42との間での周方向への相対移動が規制される。
【0049】
(第一横凹部)
第一横凹部53は、第一周方向対向端面81および第二周方向対向端面82の一部領域において、これら対向端面81、82から周方向の一方側に窪んでいる。第一横凹部53は軸線Oの方向に間隔をあけて一対が設けられ、一方の第一横凹部53は第一周方向対向端面81から、他方の第一横凹部53は第二周方向対向端面82から窪んでいる。また各々の第一横凹部53は、第一リブ内凹部52における軸線Oの方向の端において、第一周方向対向端面81および第二周方向対向端面82における径方向の外側の端で、かつ、第二のカバー片42の外周面42aよりも径方向の外側の位置に、第一横凸部51(
図8参照)に対応する位置に配置されている。
【0050】
一方の第一横凹部53を構成する内面のうち、軸線Oの方向の他方側を向く面は第一軸方向対向面83であり、他方の第一横凹部53を構成する内面のうち、軸線Oの方向の一方側を向く面は第二軸方向対向面84となっている。第一軸方向対向面83は、第一周方向対向端面81から周方向の一方側に延び、第二軸方向対向面84は、第一軸方向対向面83に対して軸線Oの方向に間隔をあけて配置され、第二周方向対向端面82から周方向の一方側に延びている。そして第一軸方向対向面83は第一のカバー片41における第一軸方向移動規制面73に対して軸線Oの方向に対向し、第二軸方向対向面84は第一のカバー片41における第二軸方向移動規制面74に対して軸線Oの方向に対向し、第一のカバー片41と第二のカバー片42との間での軸線Oの方向への相対移動が規制される。
【0051】
また、各々の第一横凹部53における径方向の外側を向く内面は第一径方向対向面85となっている。各々の第一横凹部53における径方向の内側を向く内面は第一リブ内凹部52における径方向の内側を向く面に滑らかに連続して一つの平面を構成し、第二径方向対向面86となっている。そして第一径方向対向面85は第一のカバー片41における第一径方向移動規制面75に対して径方向に対向し、第二径方向対向面86は第一のカバー片41における第二径方向移動規制面76に対して径方向に対向している。
【0052】
また、各々の第一横凹部53における周方向の他方側を向く内面は第一周方向対向面87となっている。ここで、第一リブ内凹部52における周方向の一方側を向く面、すなわち、第一周方向対向面87に対して第一収容凸部50(
図8参照)を挟んで周方向に反対側に配置された第一リブ内凹部52の内面が、第二周方向対向面88となっている。また第二周方向対向面88は、第一周方向対向端面81に対して周方向に離れた位置に配置され、第一リブ内凹部52を軸線Oの方向から見た際には、第二周方向対向面88と第二径方向対向面86とがL形状をなすように接続されている。
【0053】
そして第一周方向対向面87は、第一のカバー片41における第一周方向移動規制面77に対して周方向に対向し、第二周方向対向面88は第一のカバー片41における第二周方向移動規制面78に対して周方向に対向し、カバー片41、42同士の周方向への相対移動が規制される。
【0054】
(第一係合凸部)
第一係合凸部58は、第二周方向対向面88における径方向の内側の端において、軸線Oの方向の全域にわたって周方向の一方側に突出するように設けられている。第一係合凸部58は、径方向の外側を向く外側面89と、径方向の内側を向く内側面90とを外面に有している。内側面90は、周方向の一方側に向かうにしたがって径方向の外側に向かって傾斜する傾斜面となっている。第一係合凸部58は、第一収容凸部50に設けられた後方凸部57(
図8参照)に対して径方向の内側から係合し、第一係合凸部58の外側面89と、第一後方凸部58の内側面79とが径方向に対向することにより、カバー片41、42同士の径方向への相対移動が規制される。
【0055】
(第二収容凸部)
第二収容凸部60は、第二のカバー片42における周方向の他方の端で、軸線Oの方向の全域にわたって第二のカバー片42における外周面42aから突出している。第二収容凸部60は第一収容凸部50(
図8参照)と同一寸法で同一形状をなしていることで、第二収容凸部60には第一周方向端面71、第二周方向端面72、第二径方向移動規制面76、および第二周方向移動規制面78が設けられている。チューブカバー31において、第二収容凸部60は第一収容凸部50に対して周方向に180度ずれた位置に配置されている。
【0056】
(第二横凸部)
第二横凸部61は、第二のカバー片42における周方向の他方の端で、第一周方向端面71および第二周方向端面72から周方向の一方側に突出している。第二横凸部61は第一横凸部51(
図8参照)と同一寸法で同一形状をなしていることで、第二横凸部61には第一軸方向移動規制面73、第二軸方向移動規制面74、第一径方向移動規制面75、第二径方向移動規制面76、および第一周方向移動規制面77が設けられている。チューブカバー31において、第二横凸部61は第一横凸部51に対して周方向に180度ずれた位置に配置されている。
【0057】
(第二後方凸部)
第二後方凸部67は、第二のカバー片42における周方向の他方の端で、第二周方向移動規制面78における径方向の外側の端において、軸線Oの方向の全域にわたって周方向の他方側に突出するように第二収容凸部60に設けられている。第二後方凸部67は第一後方凸部57(
図8参照)と同一寸法で同一形状をなしていることで、第二後方凸部67には内側面79および外側面80が設けられている。
【0058】
(第二リブ内凹部)
図8に戻って、第二リブ内凹部62は、第一のカバー片41における周方向の他方の端で、第一のカバー片41における内周面41bから径方向の外側に凹んで内側に第二収容凸部60(
図9参照)を収容するようになっている。第二リブ内凹部62は第一リブ内凹部52(
図9参照)と同一寸法で同一形状をなしている。また第二リブ内凹部62に対応する位置で、第一のカバー片41の外周面41aからは、第一リブ状凸部55(
図9参照)と同一寸法で同一形状をなす第二リブ状凸部65が設けられている。よって第二リブ内凹部62には、第一周方向対向端面81、第二周方向対向端面82、第二径方向対向面86、および第二周方向対向面88が設けられている。チューブカバー31において、第二リブ内凹部62は第一リブ内凹部52に対して周方向に180度ずれた位置に配置され、第二リブ状凸部65は第一リブ状凸部55に対して周方向に180度ずれた位置に配置されている。
【0059】
(第二横凹部)
第二横凹部63は、第一のカバー片41における周方向の他方の端で、第一周方向対向端面81および第二周方向対向端面82から周方向の一方側に窪んでいる。第二横凹部63は第一横凹部53(
図9参照)と同一寸法で同一形状をなしていることで、第二横凹部63には第一軸方向対向面83、第二軸方向対向面84、第一径方向対向面85、第二径方向対向面86、および第一周方向対向面87が設けられている。チューブカバー31において、第二横凹部63は第一横凹部53に対して周方向に180度ずれた位置に配置されている。
【0060】
(第二係合凸部)
第二係合凸部68は、第一のカバー片41における周方向の他方の端で、第二周方向対向面88における径方向の内側の端において、軸線Oの方向の全域にわたって周方向の一方側に突出するように設けられている。第二係合凸部68は第一係合凸部58(
図9参照)と同一寸法で同一形状をなしていることで、第二係合凸部68には外側面89および内側面90が設けられている。
【0061】
(検圧ライン)
図4に戻って検圧ライン4は、吸気ライン3と並んで設けられ、圧力調整器22と面体1の接続部13とを接続している。また検圧ライン4は吸気ライン3と同様に一部が背負い具21内に配置されて背負い具21の幅方向の他端側の位置で背負い具21の上下に延びるように配置されている(
図3参照)。検圧ライン4は、面体1内の圧力変動を圧力調整器22に伝達する。
【0062】
検圧ライン4によって圧力調整器22に伝達された圧力変動に基づき、上述したように圧力調整器22が面体1内の圧力を面体1外の圧力よりも常時高圧(陽圧)とするように動作する。本実施形態では、検圧ライン4は吸気ライン3と同一構造を有しているが、特に本実施形態の構造に限定されるものではなく、吸気ライン3にくらべて耐圧性の低い材料によって形成することもでき、例えばチューブカバー31を有しない可撓性を有するチューブを検圧ライン4に用いてもよい。
【0063】
(固定部材)
図2(a)に戻って、呼吸器100はさらに、吸気ライン3および検圧ライン4を固定する固定部材5を備えている。固定部材5は、圧力調整器22と接続部13との間の位置であって吸気ライン3の突出領域Yに対応する位置に配置され、吸気ライン3と検圧ライン4とを固定している。本実施形態の固定部材5は、吸気ライン3および検圧ライン4をともに外側から覆う耐火カバーであって、耐火性を有する繊維等の材料によって形成されている。
【0064】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の呼吸器100によれば、吸気ガスGを使用者Uに供給するための吸気ライン3において、インナーチューブ30の外周面に互いに間隔をあけて複数のチューブカバー31を設けたことで、チューブカバー31によって吸気ライン3の耐圧性を確保しつつ、かつ、吸気ライン3の耐閉塞性を確保しつつ、インナーチューブ30においてチューブカバー31が設けられない位置(チューブカバー31同士の間の位置)ではインナーチューブ30が変形し易くなり、変形量(伸縮量、湾曲量)を十分に確保できる。したがって使用者Uが呼吸器100を装着した状態で顔を大きく動作させた場合であっても、顔および面体1の動作に対して吸気ライン3が追従でき、顔および面体1が吸気ライン3に引っ張られたり押されたりするようなことがなくなる。この結果、吸気ライン3が使用者Uの活動の妨げとなってしまうことを回避でき、呼吸器100の使用性を向上することができる。
【0065】
また本実施形態では圧力調整器22が使用者Uの背面に配置されていることにより、圧力調整器22が使用者Uの前面に配置された場合と比較すると圧力調整器22から面体1までの距離が遠くなり、吸気ライン3の長さ寸法が大きくなる。特に本実施形態では領域Zにおける吸気ラインの長さ寸法は150〔mm〕以上となっており、吸気ライン3においてはある程度の圧力損失が発生し得る。このため吸気ライン3には、比較的高い圧力となる中圧(本実施形態では0〔kPa〕以上3〔kPa〕以下)で吸気ガスGを流通させなければならない。この点、本実施形態の吸気ライン3を用いることで吸気ライン3の耐圧性を確保できるため、比較的高い圧力でも吸気ガスGを吸気ライン3に流通させることができ、安定して使用者Uに吸気ガスGを供給することが可能となる。
【0066】
またインナーチューブ30には大径部36と、チューブカバー31が配置された小径部35とが設けられ、インナーチューブ30が蛇腹形状をなしている。このためインナーチューブ30の変形量を大きくすることができるだけでなく、大径部36によって小径部35に配置されたチューブカバー31を挟み込むようにして、チューブカバー31をインナーチューブ30の外周面に支持することができる。したがってインナーチューブ30からのチューブカバー31の脱落を回避することができる。
【0067】
さらにチューブカバー31の最大外径(リブ状凸部55、65の外径)が、インナーチューブ30の大径部36の外径の1.2倍以下となっていることで、インナーチューブ30の大径部36からのチューブカバー31の突出量を抑えることができる。特に本実施形態のようにチューブカバー31の最大外径が、インナーチューブ30の大径部36の外径の1.0倍以下となっていることで、大径部36からチューブカバー31が突出せず、吸気ライン3の外径をインナーチューブ30の最大外径以内に抑えることができる。よって吸気ライン3の小径化が可能となり、この結果、接続部13の小型化も可能となり、接続部13が使用者の活動の妨げとならないようにすることができる。
【0068】
また、例えば吸気ガスGの流量が急激に変化した際など、吸気ライン3が暴れるように動作することがあり得るが、吸気ガスが流通せず暴れることのない検圧ライン4に吸気ライン3を固定部材5によって固定することで、検圧ライン4によって吸気ライン3の動きを規制することができ、吸気ライン3が使用者Uの活動の妨げとならないようにすることができる。特に固定部材5を耐火カバーとしたことで、吸気ライン3の動きを規制しつつ吸気ライン3および検圧ライン4を火や熱から保護することができ、呼吸器100の耐久性、信頼性を向上できる。
【0069】
また吸気ライン3における接続領域A2の最大外径は、本体側領域A1にくらべて小さくなっている。すなわち吸気ライン3において面体1の接続部13に接続される接続領域A2が小径になっている。このため、接続部13の接続口13aを小径にでき、接続部13を小型化でき、接続部13の面体1からの突出量を小さくすることができる。よって接続部13が使用者Uの活動の妨げとならないようにすることができる。
【0070】
また接続領域A2に配置されたチューブカバー31Yは、本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xより硬質な材料によって形成されており、かつ、円環状をなす一体の部材であるため、本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xにくらべて強度を高めることができ、外力によるチューブカバー31の変形、破損をさらに抑えることができる。
【0071】
また本体側領域A1に配置されたチューブカバー31Xの各々は、周方向に並ぶ複数のカバー片40によって構成され、周方向に隣接するカバー片40同士が係合部45によって係合して固定され、カバー片40同士の相対移動が規制される。
【0072】
具体的には、インナーチューブ30の外周面に第一のカバー片41および第二のカバー片42を周方向に並べて配置し、例えば第一リブ状凸部55と第二リブ状凸部65との間の位置で、第一のカバー片41の外周面41aと第二のカバー片42の外周面42aとを指で挟み込むようにして外周面41a、42aを
図7に矢印で示すように径方向の内側に押圧することで、第一収容凸部50を第一リブ内凹部52に押し込み、第二収容凸部60を第二リブ内凹部62に押し込んで、第二周方向移動規制面78と第二周方向対向面88とを対向させ、第一周方向端面71と第一周方向対向端面81とを対向させ、第二周方向端面72と第二周方向対向端面82とを対向させ、第二径方向移動規制面76と第二径方向対向面86とを対向させることができる。
【0073】
またこの際、第一後方凸部57の外側面80が、第一係合凸部58の内側面90に沿って案内されて、第一後方凸部57が第一係合凸部58に対して径方向の外側に位置し、第一後方凸部57と第一係合凸部58とが係合して第一のカバー片41と第二のカバー片42との間の径方向への移動が規制される。第二後方凸部67および第二係合凸部68についても同様である。
【0074】
さらには、第一収容凸部50を第一リブ内凹部52に押し込み、第二収容凸部60を第二リブ内凹部62に押し込むことで、自動的に第一横凸部51が第一横凹部53に押し込まれ、第二横凸部61が第二横凹部63に押し込まれる。この結果、第一周方向移動規制面77と第一周方向対向面87とを対向させ、第一径方向移動規制面75と第一径方向対向面85とを対向させ、第一軸方向移動規制面73と第一軸方向対向面83とを対向させ、第二軸方向移動規制面74と第二軸方向対向面84とを対向させることができる。
【0075】
このようにしてワンタッチでカバー片41、42同士を係合させることができ、チューブカバー31Xをインナーチューブ30の外周面に容易に設けることができる。したがって吸気ライン3を製造する際には、チューブカバー31Xをインナーチューブ30の外周面上で外周側から次々にワンタッチで係合させていけばよいため、インナーチューブ30の略全域を覆うように円筒状のチューブカバーを設ける場合にくらべて、仮に吸気ライン3が長くとも、吸気ライン3の製造を容易化できる。
【0076】
さらには、第一リブ状凸部55および第二リブ状凸部65が設けられているため、カバー片41、42同士を係合させてチューブカバー31Xを完成させると、各々のチューブカバー31Xには周方向180度ずれた位置において一対のリブが形成されることになり、チューブカバー31Xの強度を向上することができる。
【0077】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、吸気ライン3に設けられるすべてのチューブカバー31が、接続領域A2のチューブカバー31Yのように環状をなす一体の部材であってもよいし、本体側領域A1のチューブカバー31Xのように複数のカバー片40によって構成されるものであってもよい。
【0078】
また各々のチューブカバー31Xを構成するカバー片40の数量は特に限定されるものではなく、各々のチューブカバー31Xが三つ以上のカバー片40を有していてもよい。
【0079】
また係合部45は上述の構造に限定されず、少なくとも周方向に隣接するカバー片40同士の間での軸線Oの方向、周方向、径方向への相対移動を規制する面が、各々のカバー片40に設けられていればよい。例えば、係合部45が第一のカバー片41の一方の端および第二のカバー片42の他方の端のみに設けられて、第一のカバー片41の他方の端および第二のカバー片42の一方の端には係合部45が設けられなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の呼吸器によれば、吸気ラインの耐圧性および耐閉塞性を確保しつつ、使用性を向上することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 面体
2 呼吸器本体
3 吸気ライン
4 検圧ライン
5 固定部材
10 面体本体
11 紐
12 隔障
13 接続部
13a 接続口
20 ショルダーベルト
22 圧力調整器
30 インナーチューブ
31(31X、31Y) チューブカバー
35(35X、35Y) 小径部
36(36X、36Y) 大径部
40 カバー片
41 第一のカバー片
42 第二のカバー片
45(45X、45Y、45V、45W) 係合部
50 第一収容凸部
51 第一横凸部
52 第一リブ内凹部
53 第一横凹部
55 第一リブ状凸部
57 第一後方凸部
58 第一係合凸部
60 第二収容凸部
61 第二横凸部
62 第二リブ内凹部
63 第二横凹部
65 第二リブ状凸部
67 第二後方凸部
68 第二係合凸部
71 第一周方向端面
72 第二周方向端面
73 第一軸方向移動規制面
74 第二軸方向移動規制面
75 第一径方向移動規制面
76 第二径方向移動規制面
77 第一周方向移動規制面
78 第二周方向移動規制面
80 外側面
81 第一周方向対向端面
82 第二周方向対向端面
83 第一軸方向対向面
84 第二軸方向対向面
85 第一径方向対向面
86 第二径方向対向面
87 第一周方向対向面
88 第二周方向対向面
90 内側面
100 呼吸器
300 ホース
A1 本体側領域
A2 接続領域
B ガスボンベ
G 吸気ガス
O 軸線
S 呼吸室
U 使用者