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  • 特開-注出キャップ 図1
  • 特開-注出キャップ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051723
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B65D47/20 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158031
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】神村 千秋
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084FC04
3E084GA08
3E084GB12
3E084LA18
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD13
3E084LD16
(57)【要約】
【課題】 スリット弁をより軽い力で開放できるようにすると共に、注出時における内容物の飛散を抑制できるようにした注出キャップを創出することを課題とする。
【解決手段】 注出孔12の周囲に注出筒13が立設された頂壁部11及び該頂壁部11の外周縁に垂下設された周壁部15を備えたキャップ本体10と、前記頂壁部11に対して開閉可能に設けられた蓋体20と、を有して構成され、前記注出孔12に、その内縁から前記注出孔12内に向かって張り出して前記注出孔12を部分的に閉塞する固定壁14と、該固定壁14及び前記注出孔12を含む前記頂壁部11の下面に薄膜部材30とを設けると共に、該薄膜部材30に前記注出孔12を開放可能に閉塞するスリット弁30Aを形成した構成とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出孔(12)の周囲に注出筒(13)が立設された頂壁部(11)及び該頂壁部(11)の外周縁に垂下設された周壁部(15)を備えたキャップ本体(10)と、前記頂壁部(11)に対して開閉可能に設けられた蓋体(20)と、を有して構成される注出キャップであって、
前記注出孔(12)に、その内縁から前記注出孔(12)内に向かって張り出して前記注出孔(12)を部分的に閉塞する固定壁(14)と、該固定壁(14)及び前記注出孔(12)を含む前記頂壁部(11)の下面に薄膜部材(30)とを設けると共に、該薄膜部材(30)に前記注出孔(12)を開放可能に閉塞するスリット弁(30A)を形成したことを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
薄膜部材(30)が、反転変形可能な軟質性の材料を用いて頂壁部(11)の下面に一体に成形されている請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
スリット弁(30A)は、薄膜部材(30)に形成した薄肉部(31)を破断させたスリット(32)を有して形成されている請求項1又は2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
スリット(32)が、固定壁(14)の内縁であるエッジ部(18)に沿って直線状又は円弧状を有して形成されている請求項3に記載の注出キャップ。
【請求項5】
薄肉部(31)が段差で形成されている請求項3記載の注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット弁を備えた注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発明に関する先行技術としては、例えば下記特許文献1に示されるように、天壁部に内容物の注出筒が形成された有頂筒状のキャップ本体と、注出孔を開放可能に閉塞するスリット弁と、を備えた注出キャップが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-95277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、スリット弁が中央で交差する二本のスリットによって十字状に分割された4枚の液止弁体を有する構成であるところ、注出時に容器本体をスクイズして加圧すると、スリット弁を構成する4枚の液止弁体は同時に開こうとし、このとき形成される開口は狭くなることから、スクイズ時の感触(加圧力)が重く感じことがあった。また液止弁体は夫々別方向に開くため、内容物が周囲に広く飛散してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、スリット弁をより軽い力で開放できるようにすると共に、注出時における内容物の飛散を抑制できるようにした注出キャップを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の手段は、
注出孔の周囲に注出筒が立設された頂壁部及び該頂壁部の外周縁に垂下設された周壁部を備えたキャップ本体と、前記頂壁部に対して開閉可能に設けられた蓋体と、を有して構成される注出キャップであって、
前記注出孔に、その内縁から前記注出孔内に向かって張り出して前記注出孔を部分的に閉塞する固定壁と、該固定壁及び前記注出孔を含む前記頂壁部の下面に反転変形可能な薄膜部材とを設けると共に、該薄膜部材に前記注出孔を開放可能に閉塞するスリット弁を形成したことを特徴とする、と云うものである。
本発明の第1の手段では、スリット弁が、固定壁と注出孔との間に跨って配置された薄膜部材に形成されており、スリット弁が注出孔側において一方向に開口することになるため、内容物の周囲への飛散を抑制し整流状態で注出させることができる。
【0007】
また本発明の第2の手段は、本発明の第1の手段に、薄膜部材が、反転変形可能な軟質性の材料を用いて頂壁部の下面に一体に成形されているとの手段を加えたものである。
上記手段では、容器本体内を減圧状態にするとスリット弁を閉塞状態に設定することができ、容器本体内を加圧状態にするとスリット弁を開放状態に設定することができる。
【0008】
また本発明の第3の手段は、上記の第1又は第2の手段に、スリット弁は、薄膜部材に形成した薄肉部を破断させたスリットを有して形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、薄膜部材にスリットを容易に形成することができるため、スリット弁として確実に機能させるこことができる。
【0009】
また本発明の第4の手段は、上記の第3の手段に、スリットが、固定壁の内縁であるエッジ部に沿って直線状又は円弧状を有して形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段のうち、特にスリットを円弧状とした構成では、直線状の構成に比較して変形し易く、スクイズ時の感触(加圧力)を軽くすることができる。
【0010】
また本発明の第5の手段は、上記の第3の手段に、薄肉部が段差で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、薄膜部材を押し上げるだけで薄肉部を破断させることが可能となるため、スリットを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、スリット弁をより軽い力で開放状態に設定することができる。
また容器本体をスクイズして加圧状態にしたときに、注出される内容物の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例としての注出キャップを示し、(a)は破断前又はスクイズ変形前の注出キャップの断面図、(b)はキャップ本体の底面図である。
図2】破断後且つスクイズ変形後の注出キャップの断面図である。
図3】薄肉部及びスリットの形状についての実施例を示し、(a)は直線状の場合を示す拡大平面図、(b)は円弧状の場合を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例としての注出キャップを示し、図1(a)は破断前又はスクイズ変形前の注出キャップの断面図、図1(b)はキャップ本体の底面図、図2は破断後且つスクイズ変形後の注出キャップの断面図、図3は薄肉部及びスリットの形状についての実施例を示し、図3(a)は直線状の場合を示す拡大平面図、図3(b)は円弧状の場合を示す拡大平面図である。尚、図1(b)及び図3(a)(b)では薄膜部材30に薄墨色を付して示している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本発明の注出キャップ1は、容器本体2側の口部3に装着されるキャップ本体10と、キャップ本体10にヒンジ24を介して一体に連結された蓋体20を有して構成され、主として合成樹脂材料を用いて一体に成形されている。
【0015】
キャップ本体10は、頂壁部11とこの頂壁部11の外縁部に垂下設された周壁部15とを有して有頂筒状に形成されている。頂壁部11には容器本体2内に収容されている内容液を注出するための注出孔12が穿設され、注出孔12の周囲には上方に向かって拡径状に形成されて成る注出筒13が立設されている。また周壁部15の外側には周壁部15から一定の間隙を隔てて連設される外周筒部16が形成されており、周壁部15の下端部と外周筒部16の下端部との間を破断可能な複数の弱化部26で連結し、ヒンジ24と反対側の周壁部15の下端部と外周筒部16の下端部との間を破断不能な連結部27で連結している。更に、周壁部15の内側には周壁部15との間に口部3を挟み込んで装着するための内周筒部17が形成されている。尚、容器本体2から注出キャップを分別廃棄する際は、蓋体20を引き上げることで弱化部26を破断し、破断不能な連結部27によってキャップ本体10と共に分離させることができる。
【0016】
頂壁部11の下面側には注出孔12の内縁部12aから注出孔12内のキャップ軸O側に向かって約1/3直径程張り出して注出孔12の一部を部分的に閉塞する固定壁14が延設されている。固定壁14は下方に向けて断面凸状(ドーム状ともいう)に湾曲しており、図3(a)(b)に示すように、その内縁には平面視直線状又は平面視円弧状に形成されてなるエッジ部18が形成されている。
【0017】
そして、固定壁14を含む頂壁部11の下面には、反転変形可能に構成されて注出孔12を開放可能に閉塞するスリット弁30Aが二色成形法などを用いて形成されている。すなわち、薄膜部材30は、一次成形においてキャビティとコア(いずれも図示せず)との間に硬質性の樹脂を射出して蓋体20を有するキャップ本体10を成形した後、二次成形においてコアをバックさせた部分に軟質性の材料を配置してキャップ本体10の頂壁部11の下面に成形することにより形成されている。薄膜部材30は、例えば天然ゴムやシリコンゴム又は熱可塑性エラストマーなど弾性を有して反転変形可能な軟質性の材料で形成されている。
【0018】
二次成形では、図1(a)に拡大して示すように、薄膜部材30には段差で規制された薄肉部31が設けられている。すなわち、薄肉部31は、固定壁14に積層された薄膜部材30と注出孔12上に弾性変形可能な状態に配置された薄膜部材30との境目に段差を形成すると共に、図3(a)(b)に示すように固定壁14のエッジ部18の平面形状に沿って直線状又は円弧状に形成されている。
【0019】
そして、スリット弁30Aは、成形後に注出孔12上に配置されている薄膜部材30を下側から上方に押し上げ、薄肉部31をエッジ部18に沿って直線状又は円弧状に破断させたスリット32を有して形成されている。尚、薄肉部31は段差で形成されているため、薄膜部材30を押し上げるだけで容易に破断することが可能である。
【0020】
蓋体20は、天壁部21とその外縁部に垂下設された外側壁22を有し、キャップ本体10側の外周筒部16との間に設けられたヒンジ24を介して開閉可能に連結されている。天壁部21の下面には嵌合筒23が突設されており、蓋体20を閉じると、嵌合筒23が注出筒13内に密嵌合可能に構成されている(図1(a)参照)。尚、外側壁22の外周面で且つヒンジ24と逆側となる位置には操作用の摘み片25が形成されている。
【0021】
次に上記構成から成る注出キャップの動作について説明する。
図1(a)に示すように、容器本体2をスクイズする前の減圧状態においては、スリット弁30Aを構成する薄膜部材30は破断前同様に下方に向かって凸状に湾曲しており、スリット弁30Aは注出孔12を閉塞する閉塞状態にある。
【0022】
次に、図2に示すように、スクイズして容器本体2内を加圧状態にすると、スリット弁30Aを構成する薄膜部材30が上方に向かって反転して凸状に湾曲して膨らみ、スリット32がキャップ軸Oに沿う縦方向(高さ方向)に開口するため、スリット弁30Aを開放状態に設定することができる。
【0023】
この際、スリット弁30Aは、薄膜部材30のうち、固定壁14に一体に成形されている側の薄膜部材30は変形せず、注出孔12側に配置された側の薄膜部材30のみが変形してスリット32が開口することでスリット弁30Aが開放状態に設定される。すなわち、スリット弁30Aは、片側の薄膜部材30のみが変形して一方向に開放されるため、内容物の飛散を抑制し整流状態で注出させることができる。
特に、スリット32を円弧状とした構成(図3(a))では、直線状の構成(図3(b))に比較して変形し易く、スクイズ時の感触(加圧力)を軽くすることができるため、より軽い力でスリット弁30Aを開放状態に設定することができる。
【0024】
そして、更にスクイズすると、内容物が開口したスリット32及び注出孔12を通じて注出筒13内に注出されるが、図2中に矢印で示すように、容器本体2内においてキャップ軸Oに沿って縦方向に移動する内容物の多くは、スリット弁30Aにおいて縦方向(高さ方向)に開口したスリット32内を横方向に移動して注出筒13の内周面に達し、注出筒13内を内周面に従って外部に注出されることになる。注出筒13は内容物を整流させた状態で注出させることが可能であるため、この点からも内容物の飛散を抑制することができる。
【0025】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では蓋体20がヒンジ24を介してキャップ本体10側に連結されたヒンジキャップを示して説明したが、蓋体20がキャップ本体10に螺合可能に設けられたネジキャップであってもよい。
【0026】
また上記実施例では、二色成形法を用いて薄膜部材30を頂壁部11の下面に一体成形した場合を示して説明したが、通常のインサート成形法を用いて一体に成形したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、注出キャップの分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 :注出キャップ
2 :容器本体
3 :口部
10 :キャップ本体
11 :頂壁部
12 :注出孔
12a :内縁部
13 :注出筒
14 :固定壁
15 :周壁部
16 :外周筒部
17 :内周筒部
18 :エッジ部
20 :蓋体
21 :天壁部
22 :外側壁
23 :嵌合筒
24 :ヒンジ
25 :摘み片
26 :弱化部
27 :連結部
30 :薄膜部材
30A :スリット弁
31 :薄肉部
32 :スリット
O :キャップ軸
図1
図2
図3