IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電源開発株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社セイアの特許一覧

特開2024-51724コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法
<>
  • 特開-コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法 図1
  • 特開-コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法 図2
  • 特開-コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法 図3
  • 特開-コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051724
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240404BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240404BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240404BHJP
   B28B 1/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 Z
C04B18/08 Z
B28B1/14 E
B28B1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158032
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592002695
【氏名又は名称】株式会社セイア
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 広之
(72)【発明者】
【氏名】石川 学
(72)【発明者】
【氏名】野中 陽介
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA27
4G112PA29
(57)【要約】
【課題】コンクリート組成物の単位容積重量の増加(グレーインフラ機能の増加)および藻場造成効果に優れる(グリーンインフラ機能の増加)コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物からなるコンクリート構造物であって、前記硬化材と前記混和材とを含む結合材における前記混和材の含有量が65質量%以上、前記コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、前記コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下、であり、前記硬化物の表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有する、コンクリート構造物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物からなるコンクリート構造物であって、
前記硬化材と前記混和材とを含む結合材における前記混和材の含有量が65質量%以上、
前記コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、
前記コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下、であり、
前記硬化物の表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有する、コンクリート構造物。
【請求項2】
密度が1.8×10kg/m以上である、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート構造物の製造方法であって、
前記コンクリート組成物を調製する工程と、
前記コンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固める工程と、を有する、コンクリート構造物の製造方法。
【請求項4】
前記締固める工程において、前記型枠内に前記コンクリート組成物を流し込む前に、前記型枠の内表面に発泡材を付着させる、請求項3に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項5】
前記締固める工程において、前記型枠として、内表面に凹凸を形成したものを用いる、請求項3に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海岸、海洋構造物の外周には、波圧、越波量、反射波等を低減させるために、消波ブロックが配置される。消波ブロックは、設計波、ブロックの種類、被害率を条件としたハドソン式を用いて、その所要規模(または形式)や設置勾配が決定される。消波ブロックの製造には、主にレディーミクストコンクリートが用いられる。容積を変えずに、消波ブロックの安定性を高めるために、銅スラグ等の単位質量が大きい細骨材を用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の土木構造物は構造機能の実現に重きを置いて構築されてきたが、近年、構造機能(グレーインフラ機能)の実現のみならず、藻場造成効果に優れた構築物(グリーンインフラ機能)とすることもできる、いわゆるグリーン・グレーハイブリッドインフラを実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-70439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンクリート組成物は、「構造機能の実現」に重きを置くのみで「藻場造成」等、自然由来の力の利用、環境の観点に配慮が足りなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、コンクリート組成物の単位容積重量の増加(グレーインフラ機能の増加)および藻場造成効果に優れる(グリーンインフラ機能の増加)コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物からなるコンクリート構造物であって、
前記硬化材と前記混和材とを含む結合材における前記混和材の含有量が65質量%以上、
前記コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、
前記コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下、であり、
前記硬化物の表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有する、コンクリート構造物。
[2]密度が1.8×10kg/m以上である、[1]に記載のコンクリート構造物。
[3][1]または[2]に記載のコンクリート構造物の製造方法であって、
前記コンクリート組成物を調製する工程と、
前記コンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固める工程と、を有する、コンクリート構造物の製造方法。
[4]前記締固める工程において、前記型枠内に前記コンクリート組成物を流し込む前に、前記型枠の内表面に発泡材を付着させる、[3]に記載のコンクリート構造物の製造方法。
[5]前記締固める工程において、前記型枠として、内表面に凹凸を形成したものを用いる、[3]に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリート組成物の単位容積重量の増加(グレーインフラ機能の増加)および藻場造成効果に優れる(グリーンインフラ機能の増加)コンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法で用いられる型枠の内表面に形成した凹凸を示す写真である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法で用いられる型枠の内表面に発泡材を散布した状態を示す写真である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法によりコンクリート構造物の表層に形成した多数の凹凸を示す写真である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法によりコンクリート構造物の表層に形成した多数の細孔を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコンクリート構造物、コンクリート構造物の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
[コンクリート構造物]
本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物は、硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物からなる。本実施形態のコンクリート構造物の形態は、特に限定されないが、例えば、海岸、海洋構造物であれば、消波ブロック、根固めブロック、ケーソン、防波堤等が挙げられる。
【0012】
硬化材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント等のセメントが挙げられる。
混和材としては、例えば、フライアッシュ(フライアッシュ原粉、フライアッシュII種、フライアッシュI種)、高炉スラグ微粉末、石灰微粉末、シラス、火山灰、炭酸カルシウム等の混和材料が挙げられる。
【0013】
硬化材と混和材とを含む結合材における混和材の含有量、すなわち、結合材の総質量に対する混和材の含有量は、65質量%以上であり、30質量%以上であってもよい。混和材の含有量が前記下限値から増加するにつれて、コンクリート構造物の性能の悪化(ブリーディング量の増加等)を抑制するために化学混和剤を用いる必要がない。その結果、コンクリート構造物の製造コストを低減することができる。
【0014】
硬化材の含有量等を削減することができるため、コンクリート構造物の材料由来の二酸化炭素の発生量を削減することができる。具体的には、一般のコンクリートと比較して、コンクリート構造物の製造に伴う二酸化炭素の発生量を60%以下に低減することができる。
また、粗骨材を添加することでモルタル(すなわちペースト)の低減が図れることから、材料由来の二酸化炭素の発生量を更に低減することができる。
【0015】
水は、従来コンクリートの製造に用いられている水であれば特に限定されず、例えば、水道水、地下水、河川水、海水またはスラッジ水が用いられる。
水は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、消波ブロックや根固めブロックのような鉄筋を用いない構造物に対しては、初期強度の発現促進のため海水を用いるのが望ましい。
【0016】
細骨材としては、コンクリート組成物の硬化物からなるコンクリート構造物の重量を重くする場合には、例えば、銅スラグ、ニッケルスラグ、製鋼スラグ等が用いられる。また、細骨材としては、コンクリート構造物の重量を重くする必要がない場合には、高炉水砕スラグ、石炭灰溶融スラグ(IGCCスラグ)、天然砂等が用いられる。
コンクリート構造物の重量を重くする場合には、例えば、銅スラグを用いることが好ましい。銅スラグとしては、特に限定されないが、例えば、JIS A5011-3:2016「コンクリート用スラグ骨材-第3部:銅スラグ骨材」に規定されるものが挙げられる。また、JIS規格を外れるものを用いてもよい。
【0017】
コンクリート組成物における細骨材の含有量は、51体積%以上58体積%以下であることが好ましく、53体積%以上56体積%以下であることがより好ましい。細骨材の含有量が前記範囲内であれば、コンクリート組成物の製造時に細骨材の含有量が目標値からずれても、コンクリート組成物は所定のスランプ値を保持することができる。
【0018】
コンクリート組成物は、必要に応じて、減水剤、AE剤等の化学混和剤を含んでもよい。化学混和剤としては、コンクリート構造物の製造において使用されている、一般的な化学混和剤を使用することができる。
化学混和剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上40.5質量%以下であることが好ましい。
コンクリート組成物における水結合材比は、混和材の種類に応じて適宜選択することができる。混和材として、例えば、フライアッシュ原粉、フライアッシュII種、フライアッシュI種、高炉スラグ微粉末、炭酸カルシウムを用いる場合について、以下に前記水結合材比の好ましい範囲を示す。
混和材としてフライアッシュ原粉を用いる場合、コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上38.0質量%以下とすることができる。
混和材としてフライアッシュII種を用いる場合、コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上33.5質量%以下とすることができる。
混和材としてフライアッシュI種を用いる場合、コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上40.5質量%以下とすることができる。
混和材として高炉スラグ微粉末を用いる場合、コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上38.5質量%以下とすることができる。
混和材として炭酸カルシウムを用いる場合、コンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上30.5質量%以下とすることができる。
また、本実施形態のコンクリート組成物における水結合材比は、25.0質量%以上であるが、混和材の種類やその品質によってはペーストが固すぎたり、ペースト状にならずバサバサの土状になる場合があるため、混練り装置やアジテータ車から排出できなくなったり、コンクリート組成物が製造できなくなる場合がある。
また、特にフライアッシュ原粉は品質変動が大きいため、フライアッシュ原粉を用いる場合の水結合比は上記数値範囲から前後することがある。
【0020】
本実施形態のコンクリート組成物における水硬化材比は、110質量%以上127質量%以下であることが好ましい。水硬化材比が前記下限値未満では、圧縮強度は増加するものの、コンクリート組成物の材料由来の二酸化炭素発生量が多くなる。水硬化材比が前記上限値を超えると、コンクリート組成物の材料由来の二酸化炭素発生量は少なくなるが、圧縮強度が小さくなるため、コンクリート構造物の製造サイクルとのバランス等を考慮する必要がある。
【0021】
本実施形態のコンクリート構造物は、硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物であり、前記硬化物の表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有する。すなわち、本実施形態のコンクリート構造物は、前記硬化物の表層に多数の凹凸のみを有していてもよく、前記硬化物の表層に多数の細孔のみを有していてもよく、前記硬化物の表層に多数の凹凸および細孔を有していてもよい。
本実施形態のコンクリート構造物において、凹凸とは、前記硬化物の表層に形成されたある程度大きな穴のことであり、細孔とは、前記硬化物の表層に形成された微細な穴のことである。
【0022】
本実施形態のコンクリート構造物において、細孔が存在するコンクリート組成物の硬化物の表層の厚さは、例えば、2mm程度であることが好ましい。また、本実施形態のコンクリート構造物において、凹凸が存在するコンクリート組成物の硬化物の表層の厚さは、例えば、20mm程度であることが好ましい。本実施形態のコンクリート構造物において、表層とは、例えば、コンクリート構造物(コンクリート組成物の硬化物)の最表面から、コンクリート構造物の深さ方向の厚さが所定値以下の範囲の領域のことである。
【0023】
本実施形態のコンクリート構造物は、凹凸および細孔の少なくとも一方が存在するコンクリート組成物の硬化物の表層の空隙率が、例えば、50面積%以上であることが好ましく、80面積%以上であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態のコンクリート構造物は、密度が1.8×10kg/m以上であることが好ましく、2.2×10kg/m以上であることがより好ましく、2.6×10kg/m以上であることが特に好ましい。密度が前記下限値に近いと、コンクリート構造物の単位質量が小さくなり、また、密度が前記上限値に近いと、コンクリート構造物の単位質量が大きくなり、目的に応じたコンクリート構造物のグレーインフラ機能を付与することができる。
【0025】
コンクリート組成物は、必要に応じて、減水剤、AE剤等の化学混和剤を含んでもよい。化学混和剤としては、コンクリート構造物の製造において使用されている、一般的な化学混和剤を使用することができる。
化学混和剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本実施形態のコンクリート構造物によれば、硬化材と混和材と水とからなるペーストと、細骨材と、を含むコンクリート組成物の硬化物からなり、硬化材と混和材とを含む結合材における混和材の含有量が65質量%以上、コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下であり、硬化物の表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有するため、グレーインフラ機能の増加および藻場造成効果に優れる。
【0027】
[コンクリート構造物の製造方法]
本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート組成物を調製する工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、コンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固める工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、を有する。
【0028】
「第1の工程」
第1の工程では、細骨材と結合材と水とを配合し、結合材における混和材の含有量が65質量%以上、コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下、コンクリート組成物における細骨材の含有量が51体積%以上58体積%以下であるコンクリート組成物を調製する。
細骨材、結合材、水とともに他の成分を配合してもよい。
【0029】
第1の工程では、結合材における混和材の含有量が65質量%以上、コンクリート組成物における水結合材比が25.0質量%以上40.5質量%以下、コンクリート組成物における水硬化材比が110質量%以上127質量%以下、コンクリート組成物における細骨材の含有量が51体積%以上58体積%以下となるように、細骨材と結合材と水とをミキサーに投入し、これらを撹拌、混合する。必要に応じて、化学混和剤を混合してもよい。
【0030】
「第2の工程」
第2の工程では、第1の工程で得られたコンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固める。
第2の工程では、従来のコンクリートの締固め時間より長めの10秒以上15秒以下にて型枠によりコンクリート組成物を締固める操作を2回以上行うことが好ましい。締固める操作を2回以上行うことにより、コンクリート組成物に含まれる空気を、コンクリート組成物の外部に押し出すことができる。また、上記の粘度が高いコンクリート組成物を用いるため、締固める時間を長くしても、コンクリート組成物において、細骨材と結合材が分離することを抑制できる。なお、一般的に、締固める時間を長くすると、材料の比重の差により、細骨材と結合材が分離することがある。
【0031】
第2の工程では、型枠として、内表面に凹凸を形成したものを用いることが好ましい(図1参照)。凹凸を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、発泡ウレタン等を型枠に直接吹き付け、その発泡ウレタン等を硬化させて、表面に凹凸を形成した簡易型枠を得る方法、発泡ウレタン等で凹凸に加工した接着剤付きシートを表面が平滑な標準型枠の表面に貼付ける方法、若しくは表面に凹凸処理を施した特殊型枠を用いる等が挙げられる。
【0032】
第2の工程では、型枠内にコンクリート組成物を流し込む前に、型枠の内表面に発泡材を付着させることが好ましい。これにより、コンクリート組成物における型枠の内表面と接する面に気泡を生成させることができる。このような発泡材が付着したコンクリート組成物を締固めることにより、発泡材が発泡して、コンクリート構造物の表層に多数の細孔を形成することができる。
【0033】
発泡材としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛等の両性金属の粒子が挙げられる。両性金属は、アルカリ環境下で発泡する。
【0034】
内表面に凹凸を形成した型枠内にコンクリート組成物を流し込み、コンクリート組成物を締固めることにより、コンクリート組成物が硬化してコンクリート構造物を成形することができるとともに、コンクリート構造物の表層に、型枠の内表面の凹凸に由来する多数の凹凸や、発泡材の発泡による多数の細孔を形成することができる(図3図4参照)。なお、図1に示す内表面に凹凸を形成した型枠を用いることにより、図3に示す表層に多数の凹凸が形成されたコンクリート構造物が得られる。図2に示す発泡材を散布した型枠を用いることにより、図4に示す表層に多数の細孔が形成されたコンクリート構造物が得られる。
【0035】
第2の工程では、型枠内に流し込んだコンクリート組成物における、型枠から離間した位置に棒状のバイブレータを挿入し、その棒状のバイブレータによりコンクリート組成物を振動させることが好ましい。これにより、コンクリート組成物の内部(コンクリート構造物の表層となる部分以外の部分)に含まれる空気を、型枠側に移動させ、コンクリート組成物におけるコンクリート構造物の表層となる部分にのみ空気を残留させることができる。コンクリート組成物におけるコンクリート構造物の表層となる部分に残留した空気により、コンクリート構造物の表層に多数の細孔が形成される。
【0036】
バイブレータによりコンクリート組成物を振動させる方法を具体的に説明する。まず、コンクリート組成物における型枠の中央部に位置する部分にバイブレータを挿入する。その状態でバイブレータを10秒以上15秒以下振動させる。次いで、型枠の長手方向に沿う中心線に対して垂直方向に、バイブレータを移動させる。バイブレータを移動させる量は、前回のバイブレータの振動が伝わった領域(前記中心線に対して垂直方向の領域)と、今回のバイブレータの振動が伝わる領域(前記中心線に対して垂直方向の領域)とが重なる程度とする。次いで、バイブレータを10秒以上15秒以下振動させる。このような操作を順次繰り返して、バイブレータの振動が伝わる領域が型枠の内表面に接するまで、バイブレータの移動と振動を繰り返す。なお、バイブレータが型枠の内表面に直接、接しないようにする。
【0037】
本実施形態のコンクリート構造物の製造方法によれば、上記の第1の工程と、第2の工程とを有するため、表層に多数の凹凸および細孔の少なくとも一方を有し、海藻付着効果に優れるコンクリート構造物が得られる。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
細骨材としての銅スラグと、フライアッシュ原粉灰と、セメントと、水とを含むコンクリート組成物(銅スラグモルタル)を、結合材に対するフライアッシュ原粉灰の含有量が66質量%の条件で調製した。
銅スラグの標準の配合量を1650kg/mとして、コンクリート組成物(銅スラグモルタル)を調製した。
得られたコンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固めて硬化させて、コンクリート構造物を得た。
型枠として、図1に示すように内表面に凹凸を形成したものを用いた。
その結果、図3に示すような表層に多数の凹凸が形成されたコンクリート構造物が得られた。
【0040】
[実施例2]
細骨材としての銅スラグと、フライアッシュ原粉灰と、セメントと、水とを含むコンクリート組成物(銅スラグモルタル)を、結合材に対するフライアッシュ原粉灰の含有量が66質量%の条件で調製した。
銅スラグの標準の配合量を1650kg/mとして、コンクリート組成物(銅スラグモルタル)を調製した。
得られたコンクリート組成物を型枠内に流し込んで締固めて硬化させて、コンクリート構造物を得た。
型枠として、図2に示すように内表面に発泡材を散布したものを用いた。
その結果、図4に示すような表層に多数の細孔が形成されたコンクリート構造物が得られた。
図1
図2
図3
図4