IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2024-51730作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両
<>
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図1
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図2
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図3
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図4
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図5
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図6
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図7
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図8
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図9
  • 特開-作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051730
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240404BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240404BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/24
B60R1/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158040
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢作 駿
(72)【発明者】
【氏名】田村 晃一
(72)【発明者】
【氏名】山口 康太
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CH10
5C054FD02
5C054FD03
5C054FE02
5C054FE11
5C054FE26
5C054HA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オペレータにステアリング操作に応じた作業車両の進行方向前方の状況を適切に認識させるシステム、方法及び作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両の周辺監視システム10において、モニタ制御装置13は、作業車両の前輪のステアリング角度に基づいて、カメラシステム11の第一カメラ111によるカメラ画像又は第二カメラ112によるカメラ画像のいずれか一方を選択し、選択した画像を表示装置15に表示させる信号を出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪を備えた作業車両の周辺画像を表示するためのシステムであって、
前記前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、
異なる方向を撮像するように前記車体に設けられる複数のカメラと、
表示装置と、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記前輪のステアリング角度に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択し、
選択した画像を前記表示装置に表示させる信号を出力する
システム。
【請求項2】
前記複数のカメラは、前記車体の前端部に設けられ、前記作業車両の左前方を撮像する第一カメラと、前記車体の前記前端部に設けられ、前記作業車両の右前方を撮像する第二カメラとを含み、
前記プロセッサは、検出された前記前輪のステアリング角度に基づいて、前記第一カメラが撮像した画像または前記第二カメラが撮像した画像のいずれか一方を選択する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記前輪のステアリング角度と閾値とを比較することで、前記第一カメラが撮像した画像または前記第二カメラが撮像した画像のいずれか一方を選択し、
前記閾値は、前記作業車両の直進時におけるステアリング角度と異なる
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記作業車両は、前進または後進を切り換える動力伝達装置を備え、
前記プロセッサは、前記動力伝達装置を前進に切り換える指令信号を受信した場合、前記前輪のステアリング角度に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択する
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業車両は、駐車ブレーキを備え、
前記プロセッサは、前記駐車ブレーキを解除する指令信号を受信した場合、前記前輪のステアリング角度に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択する
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業車両の前記車体は、後部車体と、前記後部車体に回動可能に連結される前部車体とを含み、
前記後部車体に対する前記前部車体のアーティキュレート角度を検出するアーティキュレート角度センサを備え、
前記プロセッサは、前記ステアリング角度と前記アーティキュレート角度の和に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択する
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
車体と、前記車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪と、前記前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、異なる方向を撮像するように前記車体に設けられる複数のカメラと、表示装置とを備える作業車両の周辺画像を表示するための方法であって、
前記ステアリング角度センサによって検出された前記前輪のステアリング角度を取得するステップと、
前記前輪の前記ステアリング角度に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択するステップと、
選択した画像を前記表示装置に表示させる信号を出力するステップと
を備える方法。
【請求項8】
車体と、
前記車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪と、
前記前輪の後方に配置されるように前記車体に支持されるキャブと、
前記前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、
異なる方向を撮像するように前記車体に設けられる複数のカメラと、
前記キャブ内に設けられた表示装置と、
プロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記前輪のステアリング角度に基づいて、前記複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択し、
選択した画像を前記表示装置に表示させる信号を出力する
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業車両の周辺監視システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-127328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される作業車両の周辺監視システムは、作業車両の周辺の画像を表示する表示部を備える。作業車両のオペレータは、表示部に表示される画像を確認することにより、作業車両の周辺の状況を認識することができる。ところで、作業車両のキャブは、前輪の後方に配置されている。そのため、オペレータが作業車両を走行させる際、ステアリング操作に応じた作業車両の進行方向前方の状況を認識することは困難である。本開示の目的は、オペレータにステアリング操作に応じた作業車両の進行方向前方の状況を適切に認識させることができる作業車両の周辺画像を表示するためのシステム、方法、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、システムは、車体と、車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪を備えた作業車両の周辺画像を表示するためのシステムであって、前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、異なる方向を撮像するように車体に設けられる複数のカメラと、表示装置と、プロセッサとを備える。プロセッサは、検出された前輪のステアリング角度に基づいて、複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択する。プロセッサは、選択した画像を表示装置に表示させる信号を出力する。
【0006】
本発明の一態様によれば、方法は、車体と、車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪と、前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、異なる方向を撮像するように前記車体に設けられる複数のカメラと、表示装置とを備える作業車両の周辺画像を表示するための方法であって、ステアリング角度センサによって検出された前輪のステアリング角度を検出するステップと、前輪のステアリング角度に基づいて、複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択するステップと、選択した画像を表示装置に表示させる信号を出力するステップとを備える。
【0007】
本発明の一態様によれば、作業車両は、車体と、車体の前端部に操舵可能に取り付けられる前輪と、前輪の後方に配置されるように車体に支持されるキャブと、前輪のステアリング角度を検出するステアリング角度センサと、異なる方向を撮像するように前記車体に設けられる複数のカメラと、表示装置と、プロセッサとを備える。プロセッサは、検出された前輪のステアリング角度に基づいて、複数のカメラが撮像した画像のいずれか一つを選択する。プロセッサは、選択した画像を表示装置に表示させる信号を出力する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、作業車両は、オペレータにステアリング操作に応じた作業車両の進行方向前方の状況を適切に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る作業車両の斜視図である。
図2】第一実施形態に係る作業車両の側面図である。
図3】第一実施形態に係る作業車両のアーティキュレート機構を模式的に示す上面図である。
図4】第一実施形態に係る作業車両の構成を示す機能ブロック図である。
図5】第一実施形態に係るカメラシステムを模式的に示す上面図である。
図6】第一実施形態に係るレーダシステムを模式的に示す上面図である。
図7】第一実施形態に係るステアリング角度と選択されるカメラ画像との関係を示す図である。
図8】第一実施形態に係る表示装置を示す図である。
図9】第一実施形態に係る画像表示方法を示すフローチャートである。
図10】第一実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態においては、作業車両1にローカル座標系を設定し、ローカル座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。ローカル座標系において、作業車両1の左右方向(車幅方向)に延伸する第一軸をX軸とし、作業車両1の前後方向に延伸する第二軸をY軸とし、作業車両1の上下方向に延伸する第三軸をZ軸とする。X軸とY軸とは直交する。Y軸とZ軸とは直交する。Z軸とX軸とは直交する。+X方向は右方向であり、-X方向は左方向である。+Y方向は前方向であり、-Y方向は後方向である。+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0011】
〈第一実施形態〉
《作業車両1》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第一実施形態に係る作業車両1の斜視図である。図2は、第一実施形態に係る作業車両1の側面図である。第一実施形態に係る作業車両1はモータグレーダである。
【0012】
図1及び図2に示すように、作業車両1は、車体2と、作業機3と、車輪4と、キャブ5とを備える。
【0013】
作業車両1は、車輪4により作業現場を走行する。作業車両1は、作業機3を用いて作業を実施する。作業車両1が実施する作業として、整地作業、路面切削作業、掘削作業、除雪作業、及び材料混合作業が例示される。
【0014】
車体2は、作業機3を支持する。車体2は、前部車体21と、後部車体22とを含む。前部車体21は、後部車体22の前方に配置される。前部車体21は、連結軸201を介して後部車体22に回動可能に連結される。前部車体21は、連結軸201を中心として後部車体22に対して左右方向に回動可能である。連結軸201は、Z軸方向に延伸する軸である。前部車体21は、後部車体22に連結される後端部21rと、後端部21rとは反対側に設けられる前端部21fとを有する。
【0015】
前部車体21の前端部21fには、カウンタウェイト28が取り付けられている。カウンタウェイト28は、前部車体21に取り付けられるアタッチメントの一種である。カウンタウェイト28は、前輪41に負荷される下向きの荷重を増加して、操舵を可能にするとともにブレード32の押付荷重を増加するために、前部車体21に装着される。
【0016】
後部車体22は、連結軸201から後方に向けて延びている。後部車体22は、前部車体21に連結される前端部22fと、前端部22fとは反対側に設けられる後端部22rとを有する。前部車体21の前端部21fは車体2の前端部である。後部車体22の後端部22rは車体2の後端部である。
【0017】
図3は、第一実施形態に係る作業車両1のアーティキュレート機構23を模式的に示す上面図である。
【0018】
図3に示すように、前部車体21と後部車体22とは、連結軸201により回動可能に連結される。前部車体21は、アーティキュレート機構23によって後部車体22に対して回動される。前部車体21は、アーティキュレート機構23によって後部車体22に対してなす角度(アーティキュレート角度)が変化するように回動する。
【0019】
アーティキュレート機構23は、前部車体21と後部車体22とに連結されたアーティキュレートシリンダ24を含む。アーティキュレートシリンダ24が伸縮することにより、前部車体21は、後部車体22に対して左右方向に回動する。後部車体22に対する前部車体21の回動は、操作装置6の操作により、前部車体21と後部車体22との間に連結されたアーティキュレートシリンダ24を伸縮させることで行なわれる。アーティキュレートシリンダ24は、例えば油圧シリンダである。後部車体22には、アーティキュレート角度センサ25が取り付けられており、後部車体22に対する前部車体21の回動角度であるアーティキュレート角度を検出する。
【0020】
作業車両1は、前部車体21を後部車体22に対して回動させる(アーティキュレートさせる)ことで、旋回時の旋回半径をより小さくすること、及び、オフセット走行による溝掘や法切作業が可能である。オフセット走行とは、後部車体22に対する前部車体21の回動方向と、前部車体21に対する前輪41の操舵方向とをそれぞれ逆方向とすることにより、作業車両1を直進走行させることをいう。
【0021】
後部車体22は、動力源27を支持する。後部車体22は、外装26を含む。外装26は、動力源27を収納する機関室を形成する。動力源27は、例えば、エンジンである。
【0022】
作業機3は、前部車体21に支持される。作業機3は、ドローバ30と、旋回サークル31と、ブレード32と、旋回モータ33と、各種のシリンダ34~38とを有する。
【0023】
ドローバ30は、前部車体21の下方に配置される。ドローバ30の前端部は、玉軸部を介して前部車体21の前端部21fに連結される。ドローバ30の前端部は、前部車体21の前端部21fに揺動可能に支持される。ドローバ30の後端部は、一対のリフトシリンダ34,35を介して前部車体21に支持される。ドローバ30は、一対のリフトシリンダ34,35を介して前部車体21に吊り下げられる。前部車体21とドローバ30の側端部とには、ドローバシフトシリンダ36が取り付けられている。ドローバシフトシリンダ36の伸縮によって、ドローバ30は、前部車体21に対して左右に移動する。
【0024】
旋回サークル31は、前部車体21の下方に配置される。旋回サークル31は、ドローバ30の下方に配置される。旋回サークル31は、ドローバ30の後端部に旋回可能に支持される。旋回サークル31は、旋回モータ33によって、ドローバ30に対し車両上方から見て時計方向または反時計方向に旋回駆動可能である。旋回サークル31の旋回駆動によって、平面視における前部車体21に対するブレード32の傾斜角度(ブレード推進角)が調整される。
【0025】
ブレード32は、前部車体21の前端部21fと後部車体22の後端部22rとの間に配置される。ブレード32は、旋回サークル31に支持される。ブレード32は、旋回サークル31を介してドローバ30に支持される。ブレード32は、ドローバ30を介して前部車体21に支持される。旋回サークル31が旋回されることにより、ブレード32の推進角が調整される。ブレード32の推進角とは、Y軸に対するブレード32の傾斜角度をいう。
【0026】
一対のリフトシリンダ34,35は、ドローバ30を支持する。一対のリフトシリンダ34,35は、ドローバ30を介してブレード32を支持する。一対のリフトシリンダ34,35の同期した伸縮により、ドローバ30の後端部が前部車体21に対して上下方向に移動する。すなわち、一対のリフトシリンダ34,35が同期して伸縮することにより、ドローバ30及びブレード32の高さが調整される。また、ドローバ30は、リフトシリンダ34,35の異なる伸縮により、Y軸を沿った軸を中心に揺動する。
【0027】
ブレードシフトシリンダ37は、旋回サークル31及びブレード32に取り付けられており、ブレード32の長手方向に沿って配置されている。ブレードシフトシリンダ37によって、ブレード32は旋回サークル31に対して左右方向に移動する。
【0028】
チルトシリンダ38は、旋回サークル31及びブレード32に取り付けられている。チルトシリンダ38を伸縮させることによって、ブレード32は旋回サークル31に対してブレード32の長手方向に延びる軸を中心に揺動する。
【0029】
以上のように、ブレード32は、ドローバ30と旋回サークル31とを介して、前部車体21に対する傾斜角度の変更、車両に対する上下の移動、Y軸に沿った軸を中心とする揺動、旋回サークル31に対する左右方向の移動、及び、ブレード32の長手方向に延びる軸を中心とする揺動を行うことが可能に構成されている。
【0030】
車輪4は、車体2を支持する。車輪4は、前輪41と、後輪42とを含む。前輪41は、後輪42よりも前方に配置される。前後方向において、ブレード32は、前輪41と後輪42との間に配置される。前輪41は、ブレード32よりも前方に配置される。後輪42は、ブレード32よりも後方に配置される。第一実施形態において、作業車両1は、片側1輪ずつの2つの前輪41と、片側2輪ずつの4つの後輪42とからなる全6輪の走行輪が示されているが、前輪41及び後輪42の数、及び配置は、これに限られない。
【0031】
前輪41は、前部車体21の前端部21fに操舵可能に取り付けられる。前輪41は、ステアリング機構43を介して前部車体21に取り付けられる。前輪41は、ステアリング機構43により前部車体21に対する方向を変化させることができる。前輪41は、前部車体21に対してなす角度(ステアリング角度)が変化するように動作する。
【0032】
後輪42は、後部車体22に回転可能に取り付けられる。後輪42は、動力源27が発生する動力に基づいて回転する。後輪42は、動力伝達装置46を介して動力源27が発生する動力によって回転する。
【0033】
ステアリング機構43は、ステアリングシリンダ44を含む。ステアリングシリンダ44が伸縮することにより、前輪41は、ステアリング角度が変化する。前輪41のステアリング角度の変更は、操作装置6の操作により、ステアリングシリンダ44を伸縮させることで行なわれる。ステアリングシリンダ44は、例えば油圧シリンダである。ステアリング機構43には、ステアリング角度センサ45が取り付けられており、前部車体21に対する前輪41のステアリング角度を検出する。ステアリング角度センサ45は、例えばステアリングシリンダ44の長さを検出するシリンダストロークセンサであってもよい。
【0034】
動力伝達装置46は、動力源27が発生した動力を、トルクや回転数、回転方向を変化させて後輪42へ伝達する。動力伝達装置46は、作業車両1の前進と後進とを切り換える。作業車両1は、動力伝達装置46により前後進が切り換えられる。動力伝達装置46は、複数のギヤと複数のクラッチを有する構成に限られない。動力伝達装置46は、油圧ポンプ及び油圧モータを有し、動力源27の発生する動力を油圧に変換して伝達する、HST(Hydraulic Static Transmission)もしくはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)を含む構成であってもよい。または動力伝達装置46は、油圧ポンプ及び油圧モータに替えて、発電機及び電動モータを有するEMT(Electric Mechanical Transmission)を含む構成であってもよい。
【0035】
キャブ5は、前部車体21によって支持される。キャブ5は、前部車体21の後端部21rに配置される。キャブ5は、オペレータが搭乗するための空間を形成する。キャブ5の内部には、操作装置6、表示装置15、ならびに各種の操作装置などが配置される。
【0036】
図4は、第一実施形態に係る作業車両1の構成を示す機能ブロック図である。図4に示すように、作業車両1は、操作装置6と、車両制御装置7と、周辺監視システム10とを備える。
【0037】
操作装置6は、作業車両1を動作させるための操作信号を生成する。操作装置6は、オペレータにより操作される。操作装置6は、車速操作装置61、前後進切換装置62、制動操作装置63、ステアリング操作装置64、作業機操作装置65、及び駐車ブレーキ操作装置66を有する。オペレータにより操作装置6が操作されると、操作装置6は、操作信号を生成する。操作装置6が生成した操作信号は、車両制御装置7及びモニタ制御装置13へ出力される。操作装置6が出力する操作信号は、作業車両1を走行させるための操作信号を含む。操作装置6は、オペレータの操作により作業車両1の進行、制動、及び操舵を行うための操作信号を出力する。進行とは、作業車両1が前進または後進することをいう。制動とは、作業車両1が減速または停止することをいう。操舵とは、作業車両1の進行方向が変更されることをいう。
【0038】
前後進切換装置62は、例えば3ポジションのオルタネイトスイッチである。前後進切換装置62は、前進位置と中立位置と後進位置とに操作可能である。オペレータが前後進切換装置62することにより、作業車両1の進行方向を前進、中立、または後進に切り換えるための操作信号が出力される。
【0039】
第一実施形態において、ステアリング操作装置64は、ステアリングハンドルである。オペレータがステアリング操作装置64を操作することにより、前輪41のステアリング角度が変更され、作業車両1の進行方向が変更される。なお、ステアリング操作装置64は、ステアリングホイールに限定されず、例えば、レバー操作により操舵を行うステアリングレバーであってもよい。または、ステアリングホイールとステアリングレバーとの両方を設ける構成とすることも可能である。
【0040】
ステアリング操作装置64には、オペレータによるステアリング操作装置64の操作量を検出するための操作量センサ640が取り付けられる。第一実施形態において、操作量センサ640は、ステアリングハンドルに取り付けられたハンドルセンサである。操作量センサ640は、オペレータによるステアリング操作装置64の操作量を検出し、操作量データを車両制御装置7に出力する。第一実施形態において、操作量センサ640は、例えば、ステアリングハンドルの回転によって発生するステアリングハンドル軸の角度変位を検出する軸変位センサである。なお、ステアリング操作装置64がステアリングレバーである場合、操作量センサ640は、ステアリングレバーの角度位置を検出する位置センサであってもよい。
【0041】
駐車ブレーキ操作装置66は、例えばトグルスイッチである。オペレータが駐車ブレーキ操作装置66を操作することにより、駐車ブレーキを係合状態または解放状態に切り換えるための操作信号が出力される。
【0042】
車両制御装置7は、操作装置6の操作信号に基づいて、作業車両1を動作させるための制御指令を出力する。
【0043】
作業車両1の進行を行うために車両制御装置7から出力される制御指令は、動力源27の出力を増加させる制御指令、及び動力伝達装置46による作業車両1の前後進を切り換える制御指令を含む。動力源27の出力を増加させる制御指令は、車速操作装置61から出力された操作信号に基づいて出力される。動力伝達装置46による作業車両1の前後進を切り換える制御指令は、前後進切換装置62から出力された操作信号に基づいて出力される。
【0044】
作業車両1の制動を行うために車両制御装置7から出力される制御指令は、サービスブレーキ(不図示)を動作させる制御指令を含む。サービスブレーキを動作させる制御指令は、制動操作装置63から出力された操作信号に基づいて出力される。
【0045】
作業車両1の操舵を行うために車両制御装置7から出力される制御指令は、ステアリングシリンダ44を動作させる制御指令を含む。ステアリングシリンダ44を動作させる制御指令は、ステアリング操作装置64から出力された操作信号に基づいて出力される。
【0046】
前部車体21を後部車体22に対して回動させるために車両制御装置7から出力される制御指令は、アーティキュレートシリンダ24を動作させる制御指令を含む。アーティキュレートシリンダ24を動作させる制御指令は、作業機操作装置65から出力された操作信号に基づいて出力される。
【0047】
駐車ブレーキ(不図示)を動作させるために車両制御装置7から出力される制御指令は、駐車ブレーキ操作装置66から出力された操作信号に基づいて出力される。
【0048】
車両制御装置7は、アーティキュレート角度センサ25が検出したアーティキュレート角度データ、ステアリング角度センサ45が検出したステアリング角度データ、及び操作量センサ640が検出した操作量データを取得する。第一実施形態において、車両制御装置7は、ステアリング角度データを後述するモニタ制御装置13を出力する。なお、車両制御装置7が出力するステアリング角度データは、ステアリング角度センサ45から取得したデータに限定されない。ステアリング角度データは、例えば、操作量センサ640が検出した操作量データに基づいて算出してもよい。
【0049】
第一実施形態に係るステアリング角度データは、前輪41が前部車体21の前後方向に対して平行となるときのステアリング角度の値をゼロとし、前輪41が前部車体21の前後方向に対して右側を向くときのステアリング角度の値を正数とし、前輪41が前部車体21の前後方向に対して左側を向くときのステアリング角度の値を負数とする。
【0050】
《周辺監視システム10》
周辺監視システム10は、作業車両1の周辺を監視する。周辺監視システム10は、カメラシステム11と、レーダシステム12と、モニタ制御装置13と、操作部14と、表示装置15とを有する。
【0051】
カメラシステム11は、複数のカメラを有する。カメラは、光学系と、イメージセンサとを有する。イメージセンサとして、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが例示される。カメラは、異なる方向を撮像するように作業車両1の車体2に設けられる。カメラは、作業車両1の周辺を撮像して、作業車両1の周辺の画像を取得する。カメラは、少なくとも車体2の周辺を撮像する。以下の説明において、カメラシステム11のカメラが取得した画像を適宜、カメラ画像と称する。
【0052】
レーダシステム12は、複数のレーダを有する。レーダは、作業車両1の車体2に設けられる。レーダは、作業車両1の周辺の障害物を非接触で検出する。
【0053】
図5は、第一実施形態に係るカメラシステム11を模式的に示す上面図である。図1図2、及び図5に示すように、カメラシステム11は、前部車体21に設けられる第一カメラ111と、前部車体21に設けられる第二カメラ112と、後部車体22に設けられる第三カメラ113と、後部車体22に設けられる第四カメラ114と、後部車体22に設けられる第五カメラ115とを有する。第一カメラ111及び第二カメラ112は、作業車両1の前方を撮像する。第三カメラ113、第四カメラ114、及び第五カメラ115は、作業車両1の後方を撮像する。
【0054】
第一カメラ111は、前部車体21の前端部21fの左部に設けられる。第一カメラ111は、作業車両1の左前方を撮像する。第一カメラ111の撮像範囲Mlは、作業車両1の左前方に規定される。
【0055】
第二カメラ112は、前部車体21の前端部21fの右部に設けられる。第二カメラ112は、作業車両1の右前方を撮像する。第二カメラ112の撮像範囲M2は、作業車両1の右前方に規定される。
【0056】
第三カメラ113は、後部車体22の左部に設けられる。第三カメラ113は、作業車両1の左方を撮像する。第三カメラ113の撮像範囲M3は、作業車両1の左方に規定される。
【0057】
第四カメラ114は、後部車体22の右部に設けられる。第四カメラ114は、作業車両1の右方を撮像する。第四カメラ114の撮像範囲M4は、作業車両1の右方に規定される。
【0058】
第五カメラ115は、後部車体22の後端部22rに設けられる。第五カメラ115は、作業車両1の後方を撮像する。第五カメラ115の撮像範囲M5は、作業車両1の後方に規定される。
【0059】
なお、カメラシステム11の取付位置は、上述の位置に限定されるものではなく、作業車両1の周辺の画像を取得できる位置であれば、特に限定されない。例えば、第一カメラ111及び第二カメラ112は、カウンタウェイト28に設けられていてもよい。例えば、第三カメラ113、第四カメラ114、及び第五カメラ115は、キャブ5に設けられていてもよい。
【0060】
撮像範囲Mlと撮像範囲M2の少なくとも一部とは、重複する。撮像範囲M3と撮像範囲M5の少なくとも一部とは、重複する。撮像範囲M4と撮像範囲M5の少なくとも一部とは、重複する。
【0061】
キャブ5の周囲の一部には、カメラシステム11で撮像されない非撮像範囲NRlが設けられる。非撮像範囲NRlは、キャブ5の左前方及びキャブ5の右前方のそれぞれに規定される。
【0062】
図6は、第一実施形態に係るレーダシステム12を模式的に示す上面図である。図1図2、及び図6に示すように、レーダシステム12は、前部車体21に設けられる第一レーダ121と、前部車体21に設けられる第二レーダ122と、後部車体22に設けられる第三レーダ123と、後部車体22に設けられる第四レーダ124と、後部車体22に設けられる第五レーダ125とを有する。
【0063】
第一レーダ121は、前部車体21の前端部21fの左部に設けられる。第一レーダ121は、作業車両1の左前方を検出する。第一レーダ121の検出範囲Dlは、作業車両1の左前方に規定される。
【0064】
第二レーダ122は、前部車体21の前端部21fの右部に設けられる。第二レーダ122は、作業車両1の右前方を検出する。第二レーダ122の検出範囲D2は、作業車両1の右前方に規定される。
【0065】
第三レーダ123は、後部車体22の左部に設けられる。第三レーダ123は、作業車両1の左方を検出する。第三レーダ123の検出範囲D3は、作業車両1の左方に規定される。
【0066】
第四レーダ124は、後部車体22の右部に設けられる。第四レーダ124は、作業車両1の右方を検出する。第四レーダ124の検出範囲D4は、作業車両1の右方に規定される。
【0067】
第五レーダ125は、後部車体22の後端部22rに設けられる。第五レーダ125は、作業車両1の後方を検出する。第五レーダ125の検出範囲D5は、作業車両1の後方に規定される。
【0068】
なお、レーダシステム12の取付位置は、上述の位置に限定されるものではなく、作業車両1の周辺の障害物を検出できる位置であれば、特に限定されない。例えば、第一レーダ121及び第二レーダ122は、カウンタウェイト28に設けられていてもよい。例えば、第三レーダ123、第四レーダ124、及び第五レーダ125は、キャブ5に設けられていてもよい。
【0069】
検出範囲Dlと検出範囲D2の少なくとも一部とは、重複する。検出範囲D3と検出範囲D5の少なくとも一部とは、重複する。検出範囲D4と検出範囲D5の少なくとも一部とは、重複する。
【0070】
キャブ5の周囲の一部には、レーダシステム12で検出されない非検出範囲NR2が設けられる。非検出範囲NR2は、キャブ5の左前方及びキャブ5の右前方のそれぞれに規定される。
【0071】
モニタ制御装置13は、コンピュータシステムを含む。モニタ制御装置13は、取得部131と、第一表示画像生成部132と、第二表示画像生成部133と、境界画像生成部134と、シンボル画像生成部135と、判定部136と、選択部137と、記憶部138と、表示制御部139とを有する。なお、モニタ制御装置13は、単独のコンピュータシステムを含んでもよいし、複数のコンピュータシステムが互いに協働することでモニタ制御装置13として機能してもよい。
【0072】
取得部131は、カメラシステム11からカメラ画像を取得する。取得部131は、第一カメラ111から前部車体21の左前方の状況を示す第一カメラ画像を取得する。取得部131は、第二カメラ112から前部車体21の右前方の状況を示す第二カメラ画像を取得する。取得部131は、第三カメラ113から後部車体22の左方の状況を示す第三カメラ画像を取得する。取得部131は、第四カメラ114から後部車体22の右方の状況を示す第四カメラ画像を取得する。取得部131は、第五カメラ115から後部車体22の後方の状況を示す第五カメラ画像を取得する。取得部131は、レーダシステム12からレーダの検出データを取得する。
【0073】
取得部131は、車両制御装置7から前輪41のステアリング角度データを取得する。取得部131は、操作装置6から操作信号を取得する。第一実施形態のおいて、取得部131は、前後進切換装置62からの操作信号と、駐車ブレーキ操作装置66からの操作信号とを取得する。
【0074】
第一表示画像生成部132は、第一カメラ111で撮像された作業車両1の周辺の第一カメラ画像と第二カメラ112で撮像された作業車両1の周辺の第二カメラ画像とに基づいて、作業車両1の周辺の第一部分を示す第一表示画像IM1を生成する。第一実施形態において、第一表示画像IM1は、作業車両1の周辺の前部分を含む。第一表示画像IM1は、前部車体21の周辺を含む。
【0075】
第一表示画像IM1は、第一カメラ111の位置及び第二カメラ112の位置とは異なる第一視点から見た第一視点画像である。第一実施形態において、第一表示画像生成部132は、第一カメラ画像と第二カメラ画像とに基づいて、前部車体21の周辺を示すパノラマ画像を生成する。
【0076】
パノラマ画像とは、複数のカメラのそれぞれで取得された複数のカメラ画像をパノラマ画像の生成に係る基準視点を視点位置とした複数の視線方向の画像を合成することにより生成される画像をいう。例えば全周のパノラマ画像は、基準視点を中心とする0゜から+180゜の範囲及び0゜から-180゜の範囲の複数の視線方向に対応した画像が連続的に接続された画像である。全周のパノラマ画像の場合、360゜の範囲の任意の視線方向の画像が得られる。なお、パノラマ画像は全周に対応しなくてもよい。例えば0゜から+90゜の範囲及び0゜から-90゜の範囲の視線方向に対応した画像(180゜のパノラマ画像)でもよい。また、パノラマ画像は、視線方向が水平方向に回転することで得られる複数の視線方向に対応する画像を連続させた画像でもよいし、視線方向が垂直方向に回転することで得られる複数の視線方向に対応する画像を連続させた画像でもよい。また、パノラマ画像は、全天球画像のように、視線方向が3次元的に変化することで得られる複数の視線方向に対応する画像を連続させた画像でもよい。第一実施形態において、パノラマ画像は、第一カメラ画像の右端部と第二カメラ画像の左端部とを繋ぐように生成される。以下の説明において、第一表示画像IM1を適宜、パノラマ画像IM1、と称する。
【0077】
第二表示画像生成部133は、第三カメラ113で撮像された作業車両1の周辺の第三カメラ画像と第四カメラ114で撮像された作業車両1の周辺の第四カメラ画像と第五カメラ115で撮像された作業車両1の周辺の第五カメラ画像とに基づいて、作業車両1の周辺の第二部分を示す第二表示画像IM2を生成する。第一実施形態において、第二表示画像IM2は、作業車両1の周辺の後部分を含む。第二表示画像IM2は、後部車体22の周辺を含む。
【0078】
第二表示画像IM2は、第三カメラ113の位置、第四カメラ114の位置、及び第五カメラ115の位置とは異なる第二視点から見た第二視点画像である。第一実施形態において、第二表示画像生成部133は、第三カメラ画像と第四カメラ画像と第五カメラ画像とに基づいて、後部車体22の周辺を示す俯諏画像を生成する。俯諏画像とは、複数のカメラのそれぞれで取得された複数のカメラ画像を俯諏画像の生成に係る上方視点に変換して合成することにより生成される画像をいう。
【0079】
第二表示画像IM2は、第一表示画像IM1と異なる表示形態の画像である。例えば、第二表示画像IM2は、第一表示画像IM1と異なる視点から見た画像である。
以下の説明において、第二表示画像IM2を適宜、俯諏画像IM2、と称する。
【0080】
境界画像生成部134は、パノラマ画像IM1と俯諏画像IM2との間に配置される境界画像BIを生成する。境界画像BIとは、パノラマ画像IM1と俯諏画像IM2との区別を明確にするために、パノラマ画像IM1と俯諏画像IM2との境界に表示される画像をいう。
【0081】
シンボル画像生成部135は、作業車両1を示すシンボル画像SIを生成する。第一実施形態において、シンボル画像生成部135は、操作装置6からの操作信号に基づいて、シンボル画像SIを変化させる。シンボル画像SIとは、上方から見た作業車両1を模擬した画像をいう。
【0082】
判定部136は、取得部131が取得した操作装置6からの操作信号に基づいて、作業車両1の走行状態を判定する。第一実施形態において、判定部136は、取得部131が取得した前後進切換装置62からの操作信号と、取得部131が取得した駐車ブレーキ操作装置66からの操作信号とに基づいて、作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したか否かを判定する。具体的には、判定部136は、取得部131が取得した前後進切換装置62からの操作信号が動力伝達装置46の前進操作または中立操作を示し、且つ、取得部131が取得した駐車ブレーキ操作装置66からの操作信号が駐車ブレーキの解放操作を示す場合、作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したと判定する。
【0083】
選択部137は、判定部136によって作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したと判定された場合、取得部131が取得した前輪41のステアリング角度データに基づいて、カメラシステム11のカメラが撮像したカメラ画像のいずれか一つを選択する。第一実施形態において、選択部137は、判定部136によって作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したと判定された場合、取得部131が取得した前輪41のステアリング角度データに基づいて、第一カメラ111のカメラ画像または第二カメラ112のカメラ画像のいずれか一方を選択する。選択部137は、取得部131が取得した前輪41のステアリング角度データと閾値とを比較することで、第一カメラ111のカメラ画像または第二カメラ112のカメラ画像のいずれか一方を選択する。
【0084】
図7は、第一実施形態に係るステアリング角度と選択されるカメラ画像との関係を示す図である。図7に示すように、選択部137は、ステアリング角度が第一閾値th1を下回ると、第一カメラ111のカメラ画像を選択する。選択部137は、ステアリング角度が第二閾値th2を上回ると、第二カメラ112のカメラ画像を選択する。第一閾値は、第二閾値より小さい。つまり、第一実施形態に係る選択部137は、ステアリング角度の閾値にヒステリシスを設けている。
【0085】
第一閾値th1及び第二閾値th2は、直進時におけるステアリング角度と異なる角度となるように設定される。これにより、選択部137は、作業車両1が直進走行する場合であっても、オペレータが前方側方の状況を適切に認識することができるように第一カメラ111のカメラ画像または第二カメラ112のカメラ画像のいずれか一方を選択する。第一実施形態に係る第一閾値th1及び第二閾値th2は、いずれも正数である。つまり、選択部137は、前輪が左側を向いているときのみならず、前輪が正面を向いているとき及びやや右側を向いているときにも、左側を撮像する第一カメラ111が選択する。例えば、作業車両1が道路の左側を走行しながら整地作業を行う場合、作業車両1は、整地作業によって発生する土砂を路肩に排出するために、道路左側の路肩に寄って走行する必要がある。そのため、選択部137は、右折する場合以外に常に第一カメラ111を選択することで、オペレータが左前方の状況を適切に認識できるようにする。なお、オペレータが右前方の状況を適切に認識したい場合は、第一閾値th1及び第二閾値th2が共に負数であってよい。また他の実施形態においては、第一閾値th1及び第二閾値th2の中央値がゼロであってもよい。また、第一閾値th1及び第二閾値th2は、オペレータの操作によって所望の値に変更可能であってもよい。
【0086】
記憶部138は、選択部137がどのカメラのカメラ画像を前回選択したかを示す選択データを記憶する。
【0087】
表示制御部139は、第一表示画像生成部132が生成したパノラマ画像IM1と、第二表示画像生成部133が生成した俯諏画像IM2と、境界画像生成部134が生成した境界画像BIと、シンボル画像生成部135が生成したシンボル画像SIとを合成した合成画像CIを生成する。表示制御部139は、表示装置15の表示部151に、生成した合成画像CIを表示させる。表示制御部139は、表示装置15の表示部151に、作業車両1の前方を写す単カメラ画像ISとを表示させる。単カメラ画像ISは、選択部137によって選択されたカメラが撮像したカメラ画像である。
【0088】
操作部14は、キャブ5に配置される複数のスイッチを有する。複数のスイッチに特定の機能が割り当てられる。スイッチがオペレータにより操作されると、特定の機能の操作信号が生成される。
【0089】
《表示装置》
図8は、第一実施形態に係る表示装置15を示す図である。表示装置15は、作業車両1の周辺を表示する。表示装置15は、少なくとも車体2の周辺を表示する。図8に示すように、表示装置15は、表示部151を有する。表示部151は、例えばタッチパネルであってもよい。この場合、表示部151は操作部14として機能し得る。また、オペレータがタッチパネルをタッチ操作することにより、第一閾値th1及び第二閾値th2を所望の値に変更可能であってもよい。
【0090】
表示部151は、第一領域151Aと第二領域151Bとを有する。表示部151の第一領域151Aは、単カメラ画像ISを表示する。表示部151の第二領域151Bは、合成画像CIを表示する。第一実施形態において、第二領域151Bは、第一領域151Aよりも左側に規定される。
【0091】
図8に示す例において、第一領域151Aに表示される単カメラ画像ISは、第一カメラ111で取得された作業車両1の左前方の状況を示す第一カメラ画像である。
【0092】
図8に示す例において、第二領域151Bに表示される合成画像CIは、パノラマ画像IM1と、俯諏画像IM2と、境界画像BIと、シンボル画像SIとを含む。合成画像CIの一部には、パノラマ画像IM1が表示される。合成画像CIの一部には、俯諏画像IM2が表示される。パノラマ画像IM1と第二表示画像IM2との境界には、境界画像BIを表示される。合成画像CIの中央領域には、シンボル画像SIを表示される。合成画像CIは、シンボル画像SIの周囲に、パノラマ画像IM1、俯諏画像IM2、及び境界画像BIが配置されるように表示される。パノラマ画像IM1は、合成画像CIの上部に配置される。俯諏画像IM2は、合成画像CIの下部に配置される。境界画像BIは、シンボル画像SIの側部に表示される。合成画像CIは、シンボル画像SIにより、作業車両1と作業車両1の周辺との位置関係が明確化される。
【0093】
第一実施形態において、境界画像BIは、シンボル画像SIのアーティキュレート機構23Sの側部に表示される。境界画像BIは、合成画像CIにおいて左右方向に延伸するように配置される。境界画像BIは、シンボル画像SIの左側及び右側のそれぞれにおいて、帯状に表示される。なお、境界画像BIは、表示部151においてシンボル画像SIの前輪とキャブの間に表示されてもよい。境界画像BIは、表示部151において合成画像CIに表示されるパノラマ画像IM1よりも下方の所定領域に表示されてもよい。境界画像BIは、表示部151において合成画像CIに表示される俯諏画像IM2よりも上方の所定領域に表示されてもよい。境界画像BIは、表示部151において合成画像CIの所定領域に表示されてもよい。なお、所定領域は、合成画像CIの左上の画素を原点とした画像座標系によって定められてもよい。
【0094】
上述のように、キャブ5の周囲の一部には、カメラシステム11で撮像されない非撮像範囲NRlが設けられる。非撮像範囲NRlについては、パノラマ画像IM1及び俯諏画像IM2が生成されない。すなわち、表示部151において非撮像範囲NRlに相当する領域は、パノラマ画像IM1及び俯諏画像IM2が表示されない非表示領域である。境界画像BIは、表示部151においてパノラマ画像IM1及び俯諏画像IM2が表示されない非表示領域を覆うように生成される。
【0095】
合成画像CIに併せて、第二領域151Bに目安線GD2が表示される。目安線GDlと同様、目安線GD2は、車体2からの距離の目安を示す。第一実施形態において、目安線GD2は、俯諏画像IM2に重ね合わせられるように表示される。目安線GD2は、俯諏画像IM2においてシンボル画像SIの周囲に配置される。なお、目安線GD2は配置されなくてもよい。
【0096】
レーダシステム12により障害物OBが検出された場合、表示制御部139は、表示部151において、俯諏画像IM2に映し出された障害物OBに重なるように、マーカMkを表示させてもよい。マーカMKは、障害物OBを表示部151において強調するシンボル画像として機能する。
【0097】
《画像表示方法》
図9は、第一実施形態に係る画像表示方法を示すフローチャートである。作業車両1がキーオンされると、周辺監視システム10が起動する。
【0098】
カメラシステム11は、モータグレーダ1の周辺を撮像する。取得部131は、カメラシステム11からカメラ画像を取得する(ステップS1)。
【0099】
第一表示画像生成部132は、第一カメラ111で撮像された作業車両1の周辺の第一カメラ画像と第二カメラ112で撮像された作業車両1の周辺の第二カメラ画像とに基づいて、作業車両1の周辺の前部分を示すパノラマ画像IM1を生成する(ステップS2)。
【0100】
第二表示画像生成部133は、第三カメラ113で撮像された作業車両1の周辺の第三カメラ画像と、第四カメラ114で撮像された作業車両1の周辺の第四カメラ画像と、第五カメラ115で撮像された作業車両1の周辺の第五カメラ画像とに基づいて、作業車両1の周辺の後部分を示す俯諏画像IM2を生成する(ステップS3)。
【0101】
境界画像生成部134は、境界画像BIを生成する(ステップS4)。
【0102】
シンボル画像生成部135は、操作装置6の操作信号に基づいてシンボル画像SIを生成する(ステップS5)。
【0103】
表示制御部139は、シンボル画像SI、パノラマ画像IM1、俯諏画像IM2及び境界画像BIを合成し、合成画像CIを生成する(ステップS6)。
【0104】
判定部136は、取得部131が取得した前後進切換装置62からの操作信号と、取得部131が取得した駐車ブレーキ操作装置66からの操作信号に基づいて、作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したか否かを判定する(ステップS7)。
【0105】
判定部136が、作業車両1が前進状態または中立状態に遷移したと判定した場合(ステップS7:YES)、取得部131は、車両制御装置7からステアリング角度データを取得する(ステップS8)。そして、選択部137は、記憶部138に記憶された選択データを参照し、前回選択したカメラ画像が第一カメラ111のカメラ画像であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0106】
他方、判定部136が、作業車両1が前進状態または中立状態に遷移していないと判定した場合(ステップS7:NO)、図9の処理を終了する。
【0107】
選択部137は、前回選択されたカメラ画像が第一カメラ111のカメラ画像であると判定した場合(ステップS9:YES)、ステップS8で取得したステアリング角度データに基づいて、ステアリング角度が第二閾値th2を上回るか否かを判定する(ステップS10)。
【0108】
選択部137は、ステアリング角度が第二閾値th2を上回ると判定した場合(ステップS10:YES)、第二カメラ112のカメラ画像を選択する(ステップS12)。
【0109】
選択部137は、ステアリング角度が第二閾値th2を上回らないと判定した場合(ステップS10:NO)、第一カメラ111のカメラ画像を選択する(ステップS13)。
【0110】
選択部137は、前回選択されたカメラ画像が第二カメラ112のカメラ画像であると判定した場合(ステップS9:NO)、ステップS8で取得したステアリング角度データに基づいて、ステアリング角度が第一閾値th1を下回るか否かを判定する(ステップS11)。
【0111】
選択部137は、ステアリング角度が第一閾値th1を下回ると判定した場合(ステップS11:YES)、第一カメラ111のカメラ画像を選択する(ステップS13)。
【0112】
選択部137は、ステアリング角度が第一閾値th1を下回らないと判定した場合(ステップS11:NO)、第二カメラ112のカメラ画像を選択する(ステップS12)。
【0113】
記憶部138は、選択部137がどのカメラのカメラ画像を選択したかを示す選択データを更新する(ステップS14)。
【0114】
表示制御部139は、ステップS6で生成した合成画像CIを表示させる表示信号と、ステップS12またはステップS13で選択したカメラによって撮像されたカメラ画像を単カメラ画像ISとして表示させる表示信号とを表示装置15に出力する(ステップS15)。
【0115】
《コンピュータシステム》
図10は、第一実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述のモニタ制御装置13及び車両制御装置7のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。例えばモニタ制御装置13の機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0116】
《作用・効果》
以上説明したように、第一実施形態によれば、モニタ制御装置13は、前輪41のステアリング角度に基づいて、単カメラ画像ISに係るカメラ画像を選択して表示する。これにより、作業車両1は、オペレータにステアリング操作に応じた作業車両1の進行方向前方の状況を適切に認識させることができる。前輪41が車体2の前端部に操舵可能に設けられ、前輪41の後方に配置されるように車体2に支持されるキャブ5を備える作業車両1において、オペレータにとって認識することが困難な前輪41近傍の状態をオペレータに知らせることができる。特に、オペレータは、作業車両1を走行させる際、ステアリング操作に応じた作業車両1の進行方向前方の状況を適切に認識することができる。
【0117】
また、第一実施形態において、第一カメラ111が撮像したカメラ画像と第二カメラ112が撮像したカメラ画像とを切り替えるステアリング角度の第一閾値th1及び第二閾値th2は、直進時におけるステアリング角度と異なる角度となるように設定される。これにより、作業車両1が直進走行する場合であっても、オペレータは、前方側方の状況を適切に認識することができる。
【0118】
〈第二実施形態〉
第一実施形態に係る周辺監視システム10は、ステアリング角度に基づいて単カメラ画像ISに係るカメラ画像を選択する。これに対し、第二実施形態に係る周辺監視システム10は、前部車体21のアーティキュレート角度をさらに参照して、カメラを選択する。
【0119】
具体的には、車両制御装置7は、ステアリング角度センサ45が検出したステアリング角度データと、アーティキュレート角度センサ25が検出したアーティキュレート角度データとから、アーティキュレート角度とステアリング角度の和を算出する。そして、選択部137は、車両制御装置7が算出したステアリング角度とアーティキュレート角度の和に基づいて、単カメラ画像ISに係るカメラ画像を選択する。具体的には、選択部137は、アーティキュレート角度とステアリング角度の和を、第一閾値th1または第二閾値th2と比較して、第一カメラ111が撮像したカメラ画像または第二カメラ112が撮像したカメラ画像のいずれか一方を選択する。例えば、アーティキュレート方向とステアリング方向が互いに逆向きである場合、アーティキュレート角度とステアリング角度とは打ち消し合うこととなる。そのため、アーティキュレート角度とステアリング角度の和を用いて単カメラ画像ISに係るカメラ画像を選択することで、より適切に旋回に応じた方向の状況をオペレータに認識させることができる。
【0120】
なお、他の実施形態において、前輪41がリーニング機能を有する場合、選択部137は、アーティキュレート角度とステアリング角度とに加え、リーニング角度に基づいて単カメラ画像ISに係るカメラ画像を選択してもよい。リーニング機能とは、前輪41の回転軸を上下方向に傾けることで、作業車両1の旋回角度を変化させる機能である。
【0121】
〈他の実施形態〉
他の実施形態に係る周辺監視システム10は、表示装置15及びレーダシステム12を備えなくてもよい。例えば、他の実施形態に係る周辺監視システム10は、モニタに表示するための信号を出力するものであればよい。また、他の実施形態に係る周辺監視システム10は、レーダシステム12に代えてカメラシステム11のカメラ画像を画像分析することで障害物を検出してもよい。また、他の実施形態に係る周辺監視システム10は、障害物を検出する機能を有さなくてもよい。また、周辺監視システム10の一部の構成要素が作業車両1の内部に搭載され、別の構成要素が作業車両1の外部に設けられてもよい。例えば、周辺監視システム10の表示装置15が、作業車両1の遠隔地に設けられた遠隔操作室に配置されてもよい。
【0122】
第一実施形態に係る表示制御部139は、合成画像CIと単カメラ画像ISとを表示装置15に表示させるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る表示制御部139は、単カメラ画像ISのみを表示装置15に表示させてもよい。
【0123】
第一実施形態に係るカメラシステム11は、前部車体21に設けられる第一カメラ111及び第二カメラ112を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るカメラシステム11は、前部車体21に3つ以上の任意の数のカメラを有してもよい。
【0124】
第一実施形態に係るカメラシステム11は、後部車体22に設けられる第三カメラ113、第四カメラ114、及び第五カメラ115を有するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るカメラシステム11は、後部車体22に設けられるカメラは、2つでもよいし、4つ以上の任意の数のカメラを有してもよい。
【0125】
他の実施形態において、撮像範囲Mlと撮像範囲M2とは、重複しなくてもよい。撮像範囲M3と撮像範囲M5とは、重複しなくてもよい。撮像範囲M4と撮像範囲M5とは、重複しなくてもよい。
【0126】
他の実施形態において、キャブ5は、後部車体22によって支持されてもよい。
【0127】
他の実施形態において、作業車両1は、アーティキュレート機構を有するアーティキュレートダンプトラックでもよい。また、作業車両1は、アーティキュレート機構及び作業機を有するホイールローダでもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…作業車両 2…車体 3…作業機 4…車輪 5…キャブ 6…操作装置 7…車両制御装置 10…周辺監視システム 11…カメラシステム 12…レーダシステム 13…モニタ制御装置 14…操作部 15…表示装置 21…前部車体 22…後部車体 23…アーティキュレート機構 24…アーティキュレートシリンダ 25…アーティキュレート角度センサ 26…外装 27…動力源 28…カウンタウェイト 30…ドローバ 31…旋回サークル 32…ブレード 34…リフトシリンダ 35…リフトシリンダ 41…前輪 42…後輪 43…ステアリング機構 44…ステアリングシリンダ 45…ステアリング角度センサ 46…動力伝達装置 61…車速操作装置 62…前後進切換装置 63…制動操作装置 64…ステアリング操作装置 65…作業機操作装置 66…駐車ブレーキ操作装置 111…第一カメラ 112…第二カメラ 113…第三カメラ 114…第四カメラ 115…第五カメラ 121…第一レーダ 122…第二レーダ 123…第三レーダ 124…第四レーダ 125…第五レーダ 131…取得部 132…第一表示画像生成部 133…第二表示画像生成部 134…境界画像生成部 135…シンボル画像生成部 136…判定部 137…選択部 138…記憶部 139…表示制御部 151…表示部 201…連結軸 640…操作量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10