(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051733
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240404BHJP
C09J 169/00 20060101ALI20240404BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J169/00
C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158045
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】味野 恵子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 紗英
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4J004AA15
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD06
4J004DB02
4J004FA08
4J040EL021
4J040FA271
4J040GA01
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA23
4J040LA02
4J127AA03
4J127BA081
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD111
4J127BE311
4J127BE31Y
4J127BF261
4J127BF26Y
4J127BG091
4J127BG09Y
4J127EA12
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を製造原料としつつ、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れた粘着シートを提供する。
【解決手段】主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層11を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シート1A,1B、および主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂の架橋体である脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層11を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シート1A,1B。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、
ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シート。
【請求項2】
主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂の架橋体である脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、
ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シート。
【請求項3】
JIS Z0237:2009に準拠した保持力として、被着体をステンレススチールとし、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、前記粘着シートが落下するまでの時間が、8000秒以上であることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【化1】
(式(Ia)及び式(Ib)中、R
1及びR
2は水素原子又は炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R
3及びR
4は架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記架橋性官能基が、(メタ)アクリロイル基またはアリル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記R3又は前記R4が、アルキル鎖を有することを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記R3又は前記R4が、エーテル構造を有することを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記R3又は前記R4が、下記一般式(II)で示される構造を含むことを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
CH2=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
(式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
【請求項9】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、前記架橋性官能基を0.01mol%以上、10mol%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、主鎖における前記エーテル構造の単位を0.1質量%以上、99質量%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、5℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の5%重量減少温度が、200℃以上、450℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体のゲル分率が、15%以上、85%以下であることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤に脂肪族ポリカーボネート樹脂を使用した粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着剤として、アクリル系ポリマーを主剤とするアクリル系粘着剤が広く用いられている。アクリル系ポリマーは、通常、炭素数2~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主とするモノマーを重合したものである。
【0003】
上記のようなアクリル系粘着剤は、ガラスや、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の高極性表面を有する材料(高極性材料)に対しては良好な粘着力を示すが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂などの低極性表面を有する材料(低極性材料)に対しては良好な粘着力を発揮し難い。
【0004】
そのため、アクリル系粘着剤に粘着付与樹脂を添加して、低極性材料に対する粘着力を改良することが行われている。しかしながら、低極性材料に対する粘着力を向上させると、逆に高極性材料に対する粘着力が低下する傾向となり、両材料に対する粘着力を両立させることは容易ではなかった。なお、粘着剤の特性として、粘着力以外に、保持力も重要な要素となっている。
【0005】
そこで特許文献1は、炭素数2~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする単量体と粘着付与樹脂と光重合開始剤とを含有する紫外線により光重合する光重合性組成物であって、上記粘着付与樹脂を、所定量の水酸基を有する脂環式炭化水素樹脂の水素化物と、非極性の脂環式炭化水素樹脂の水素化物とから構成した光重合性組成物を提案している。
【0006】
ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、サステナビリティを有する炭素原料として、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素などのガスが注目されている。例えば、二酸化炭素とエポキシドとの共重合により、主鎖に脂肪族(非芳香族)基のみを有する脂肪族ポリカーボネートを製造できることが報告されており、二酸化炭素等のガスを原料として利用した化学品やその製造技術に関心が寄せられている。
【0007】
二酸化炭素は地球温暖化の原因とされているため、各種の材料を作る過程で工場から排出される二酸化炭素の有効利用は、環境保護に役立つものである。
【0008】
特許文献2は、不均一触媒の存在下で、エポキシド化合物、エポキシ基およびアクリレート構造を有する化合物、ならびに二酸化炭素を共重合して得られる、3種の繰り返し単位を含むポリアルキレンカーボネート樹脂を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-96116号公報
【特許文献2】特表2015-533920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載の発明は、熱的安定性を示し、より大きい分子量および改善された強度などの機械的物性を示すことのできるポリアルキレンカーボネート樹脂を提供することを課題とするものである。このポリアルキレンカーボネート樹脂を含め、従来のポリカーボネート樹脂は、そのポリカーボネート構造の剛直性から、ガラス転移温度(Tg)が高く、粘着剤としては不適なものであった。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を製造原料としつつ、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シートを提供する(発明1)。
【0013】
上記発明(発明1)に係る粘着シートは、上記の構成および物性を有することにより、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れる。
【0014】
第2に本発明は、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂の架橋体である脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上である、粘着シートを提供する(発明2)。
【0015】
上記発明(発明2)に係る粘着シートは、上記の構成および物性を有することにより、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れる。特に、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体は、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂を架橋してなるものであるため、良好な凝集力を有するものとなり、粘着力および保持力がより優れたものとなる。
【0016】
上記発明(発明2)においては、JIS Z0237:2009に準拠した保持力として、被着体をステンレススチールとし、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、前記粘着シートが落下するまでの時間が、8000秒以上であることが好ましい(発明3)。
【0017】
上記発明(発明1~3)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造を有することが好ましい(発明4)。
【化1】
(式(Ia)及び式(Ib)中、R
1及びR
2は水素原子又は炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R
3及びR
4は架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0018】
上記発明(発明1~4)においては、前記架橋性官能基が、(メタ)アクリロイル基またはアリル基であることが好ましい(発明5)。
【0019】
上記発明(発明4,5)においては、前記R3又は前記R4が、アルキル鎖を有することが好ましい(発明6)。
【0020】
上記発明(発明4~6)においては、前記R3又は前記R4が、エーテル構造を有することが好ましい(発明7)。
【0021】
上記発明(発明4~7)においては、前記R3又は前記R4が、下記一般式(II)で示される構造を含むことが好ましい(発明8)。
CH2=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
(式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
【0022】
上記発明(発明1~8)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、前記架橋性官能基を0.01mol%以上、10mol%以下含むことが好ましい(発明9)。
【0023】
上記発明(発明1~9)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂が、主鎖における前記エーテル構造の単位を0.1質量%以上、99質量%以下含むことが好ましい(発明10)。
【0024】
上記発明(発明1~10)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、5℃以下であることが好ましい(発明11)。
【0025】
上記発明(発明2)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の5%重量減少温度が、200℃以上、450℃以下であることが好ましい(発明12)。
【0026】
上記発明(発明2)においては、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体のゲル分率が、15%以上、85%以下であることが好ましい(発明13)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る粘着シートは、二酸化炭素を製造原料としつつ、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図3】実施例1で製造したポリマーの
1H-NMRの測定結果を示すチャートである。
【
図4】比較例1で製造したポリマーの
1H-NMRの測定結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る粘着シートは、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂(以下「脂肪族ポリカーボネート樹脂A」という場合がある)を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上であるものである。なお、本明細書における粘着力の具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0030】
また、本発明の第2の実施形態に係る粘着シートは、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂(脂肪族ポリカーボネート樹脂A)の架橋体である脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(以下「脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体B」という場合がある)を50質量%以上含有する粘着剤からなる粘着剤層を備えており、ポリプロピレンに対する粘着力が1.5N/25mm以上であるものである。
【0031】
第1の実施形態に係る粘着シートにおいては、粘着剤層が、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを50質量%以上含有する粘着剤からなり、かつ、上記の粘着力を有することにより、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れる。また、第2の実施形態に係る粘着シートにおいては、粘着剤層が、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bを50質量%以上含有する粘着剤からなり、かつ、上記の粘着力を有することにより、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れる。特に、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋してなるものであるため、良好な凝集力を有するものとなり、粘着力および保持力がより優れたものとなる。
【0032】
上記脂肪族ポリカーボネート樹脂Aおよび脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、後述するように、二酸化炭素を製造原料として製造することができる。したがって、第1及び第2の実施形態に係る粘着シートにおいては、その製造にあたって、二酸化炭素の有効利用を図ることができる。
【0033】
ここで、高極性材料(高極性表面を有する材料)としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、銅等の金属;ガラス;ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の樹脂などが挙げられる。また、低極性材料(低極性表面を有する材料)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられる。
【0034】
第1の実施形態に係る粘着シートは、ポリプロピレンに対する粘着力が、下限値として1.5N/25mm以上であり、3N/25mm以上であることが好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには7N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、25N/25mm以下であることが好ましく、特に20N/25mm以下であることが好ましく、さらには15N/25mm以下であることが好ましい。
【0035】
第1の実施形態に係る粘着シートは、ステンレススチール(SUS304,360番研磨)に対する粘着力が、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、特に7N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。第1の実施形態に係る粘着シートによれば、このように、高極性材料に対しても良好な粘着力を発揮することができる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、45N/25mm以下であることが好ましく、特に40N/25mm以下であることが好ましく、さらには30N/25mm以下であることが好ましい。
【0036】
第1の実施形態に係る粘着シートは、ポリカーボネートに対する粘着力が、下限値として、3N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、特に7N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。第1の実施形態に係る粘着シートによれば、このように、高極性材料に対しても良好な粘着力を発揮することができる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、40N/25mm以下であることが好ましく、特に30N/25mm以下であることが好ましく、さらには25N/25mm以下であることが好ましい。
【0037】
第1の実施形態に係る粘着シートは、JIS Z0237:2009に準拠した保持力(被着体をステンレススチール(SUS304,360番研磨)として、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒))(秒)が、1000秒以上であることが好ましく、2000秒以上であることがより好ましく、特に3000秒以上であることが好ましく、さらには4000秒以上であることが好ましい。第1の実施形態に係る粘着シートによれば、上記にように優れた保持力を発揮することができる。なお、本明細書における保持力の具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0038】
第2の実施形態に係る粘着シートは、ポリプロピレンに対する粘着力が、下限値として1.5N/25mm以上であり、3N/25mm以上であることが好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには7N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、25N/25mm以下であることが好ましく、特に20N/25mm以下であることが好ましく、さらには15N/25mm以下であることが好ましい。
【0039】
第2の実施形態に係る粘着シートは、ステンレススチール(SUS304,360番研磨)に対する粘着力が、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、3N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。第2の実施形態に係る粘着シートによれば、このように、高極性材料に対しても良好な粘着力を発揮することができる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、30N/25mm以下であることが好ましく、特に25N/25mm以下であることが好ましく、さらには20N/25mm以下であることが好ましい。
【0040】
第2の実施形態に係る粘着シートは、ポリカーボネートに対する粘着力が、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、2N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。第2の実施形態に係る粘着シートによれば、このように、高極性材料に対しても良好な粘着力を発揮することができる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、35N/25mm以下であることが好ましく、特に30N/25mm以下であることが好ましく、さらには25N/25mm以下であることが好ましい。
【0041】
第2の実施形態に係る粘着シートは、JIS Z0237:2009に準拠した保持力(被着体をステンレススチール(SUS304,360番研磨)として、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒))(秒)が、8000秒以上であることが好ましく、10000秒以上であることがより好ましく、特に30000秒以上であることが好ましく、さらには70000秒以上であることが好ましい。第2の実施形態に係る粘着シートによれば、上記にように優れた保持力を発揮することができる。
【0042】
1.粘着剤
(1)第1の実施形態における粘着剤
第1の実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層を構成する粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを50質量%以上含有する。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有するものであり、好ましくは、主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造(以下「構造SA」という場合がある。)を有するものである。
【化1】
(式(Ia)及び式(Ib)中、R
1及びR
2は水素原子又は炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R
3及びR
4は架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0043】
上記構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂を良好に構成することができる。
【0044】
式(Ia)及び式(Ib)中のR1及びR2は、上記の通り、水素原子又は炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数が1~20のものが好ましく、2~18のものがより好ましく、特に4~10のものが好ましく、さらには6~9のものが好ましい。上記構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおいて、上記炭化水素基(側鎖の炭化水素基)の炭素数が多く、当該炭化水素基が比較的長いと、ガラス転移温度(Tg)が低くなって良好な柔軟性を示し、また、良好なタック性を発現する。そして、主鎖にエーテル構造を有することと相俟って、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても、より優れた粘着力を発揮する。
【0045】
上記アルキル基は、直鎖状のものでも、分岐鎖状のものでも、環状構造を有するものであってもよいが、直鎖状または分岐鎖状のものが好ましい。直鎖状の好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられ、分岐鎖状の好ましいアルキル基としては、2-エチルヘキシル基、2-メチルペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)の低さおよびタック性の発現の観点から、n-オクチル基、n-デシル基またはn-ドデシル基が好ましく、特にn-オクチル基またはn-デシル基が好ましく、さらにはn-オクチル基が好ましい。なお、上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0046】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aには、2種以上のR1が含まれていてもよいし、2種以上のR2が含まれていてもよい。また、上記の通り、R1及びR2は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
式(Ic)及び式(Id)中のR3及びR4は、上記の通り、架橋性官能基を有する炭化水素基である。架橋性官能基としては、(メタ)アクリロイル基;アリル基、ビニル基等のアルケニル基;アルキニル基;アルコキシ基、オキシ(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。中でも、自己架橋性の観点から、(メタ)アクリロイル基またはアリル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0048】
上記R3又はR4は、アルキル鎖を有することが好ましく、特に直鎖状のアルキル鎖を有することが好ましい。これにより、架橋後にも柔軟性を確保することができ、粘着剤としてより好適なものとなる。かかる効果の観点から、アルキル鎖の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、特に3~10であることが好ましく、さらには4~8であることが好ましい。なお、上記アルキル鎖は、置換基を有していてもよい。
【0049】
上記R3又はR4は、エーテル構造を有することが好ましい。これにより、得られる脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対し、柔軟性を付与することができる。
【0050】
上記R3又はR4は、具体的には、下記式(II)または式(III)で示される構造を含むことが好ましい。これにより、側鎖のアルキル基鎖長に依らず、効率的に架橋性官能基の反応が進行する。
CH2=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
(式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
CH2=CH-CH2-Y-O- ・・・(III)
(式(III)中、Yは単結合又はアルキル鎖である。)
【0051】
また、上記R3又はR4は、具体的には、下記式(IV)または式(V)で示される構造であることが特に好ましい。
CH2=CH-C(=O)-O-X-O-CH2- ・・・(IV)
(式(IV)中、Xはアルキル鎖である。)
CH2=CH-CH2-Y-O-CH2- ・・・(V)
(式(V)中、Yは単結合又はアルキル鎖である。)
【0052】
上記式(II)および式(IV)中のアルキル鎖(X)の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、特に3~6であることが好ましく、さらには4~5であることが好ましい。また、上記式(III)および式(V)中のアルキル鎖(Y)の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、特に2~6であることが好ましく、さらには2~4であることが好ましい。
【0053】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aには、2種以上のR3が含まれていてもよいし、2種以上のR4が含まれていてもよい。また、上記の通り、R3及びR4は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記架橋性官能基(R3及びR4が有する架橋性官能基)を0.01mol%以上含むことが好ましく、0.05mol%以上含むことがより好ましく、特に0.1mol%以上含むことが好ましく、さらには0.3mol%以上含むことが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、当該架橋性官能基を10mol%以下含むことが好ましく、5mol%以下含むことがより好ましく、特に3mol%以下含むことが好ましく、さらには1mol%以下含むことが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記の量で架橋性官能基を含むことにより、良好な架橋構造を形成し、粘着剤として好適な凝集力を発揮することができる。
【0055】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、主鎖におけるエーテル構造の単位(式(Ib)で示される繰り返し単位および式(Id)で示される繰り返し単位)を0.1mol%以上含むことが好ましく、0.5mol%以上含むことがより好ましく、特に0.8mol%以上含むことが好ましく、さらには1mol%以上含むことが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、エーテル構造の単位を99mol%以下含むことが好ましく、50mol%以下含むことがより好ましく、特に20mol%以下含むことが好ましく、さらには10mol%以下含むことが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記の量でエーテル構造の単位を含むことにより、ガラス転移温度(Tg)が効果的に低くなり、また、タック性がより良好に発揮される。なお、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるエーテル構造単位の含有比率が大きくなると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)がより低下し、粘着剤のタックが増加する傾向にある。
【0056】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量は、1.5万以上であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、特に5万以上であることが好ましく、さらには8万以上であることが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量は、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには30万以下であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量が上記の範囲にあることにより、タック性がより良好なものとなり、また架橋後の凝集力も良好なものとなる。なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0057】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、5℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、特に-20℃以下であることが好ましく、さらには-25℃以下であることが好ましい。これにより、柔軟性に優れ、タック性がより良好なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上述した構造を有することにより、上記のように低いガラス転移温度(Tg)を達成することができる。
【0058】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましく、-55℃以上であることがより好ましく、特に-45℃以上であることが好ましく、さらには-40℃以上であることが好ましい。これにより、架橋後の凝集力が良好なものとなる。なお、本明細書におけるガラス転移温度(Tg)の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0059】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのゲル分率は、1~30%であることが好ましく、特に2~20%であることが好ましく、さらには4~10%であることが好ましい。これにより、架橋後のゲル分率が、後述する好ましい範囲に入り易くなる。なお、本明細書におけるゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0060】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの5%重量減少温度は、210~450℃であることが好ましく、特に220~400℃であることが好ましく、さらには230~350℃であることが好ましい。これにより、架橋後の5%重量減少温度が、後述する好ましい範囲に入り易くなる。なお、本明細書における5%重量減少温度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0061】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、二酸化炭素とエポキシドとの重合反応物であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、好ましくは、二酸化炭素(CO2)と、前述した式(Ia)及び式(Ib)中のR1・R2を有するエポキシド(以下「エポキシドE1」という場合がある。)と、前述した式(Ic)及び式(Id)中のR3・R4を有するエポキシド(以下「エポキシドE2」という場合がある。)とを、重合触媒の存在下で、必要に応じて水分含有量を所定量以下に制御して、重合反応させる工程を有する製造方法で製造することができる(例えば、「国際公開第2011/142259号」参照)。ここで適切な重合触媒を選択することにより、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの主鎖中にエーテル構造を導入することができる。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、二酸化炭素を製造原料とすることができるため、二酸化炭素の有効利用を図ることができる。
【0062】
上記エポキシドE1としては、上記の重合反応によって、前述した構造SAにおいて、式(Ia)で示される繰り返し単位および式(Ib)で示される繰り返し単位を構成できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(VI)で示される化合物または当該化合物の誘導体である。なお、本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換されている化合物を意味する。
【0063】
【0064】
式(VI)中のpは、0~15であることが好ましく、2~13であることがより好ましく、特に4~11であることが好ましく、さらには6~9であることが好ましい。
【0065】
上記エポキシドE1としては、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン等が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)の低さおよびタック性の発現の観点から、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン等が好ましく、特に1,2-エポキシオクタンまたは1,2-エポキシデカンが好ましく、さらには1,2-エポキシデカンが好ましい。なお、上記列挙したエポキシドは、置換基を有していてもよい。
【0066】
上記エポキシドE2としては、上記の重合反応によって、前述した構造SAにおいて、式(Ic)で示される繰り返し単位および式(Id)で示される繰り返し単位を構成できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(VII)または式(VIII)で示される化合物または当該化合物の誘導体である。
【0067】
【0068】
【0069】
式(VII)および式(VIII)中のCLは、架橋性官能基である。架橋性官能基としては、前述した式(Ic)及び式(Id)中のR3及びR4が有する架橋性官能基と同様である。中でも、式(VII)中のCLは、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、式(VIII)中のCLは、アリル基であることが好ましい。
【0070】
式(VII)中のXは、アルキル鎖である。当該アルキル鎖の炭素数は、前述した式(II)および式(IV)中のアルキル鎖(X)の炭素数と同様である。また、式(VIII)中のYは、単結合またはアルキル鎖である。当該アルキル鎖の炭素数は、前述した式(III)および式(V)中のアルキル鎖(Y)の炭素数と同様である。
【0071】
上記エポキシドE2としては、具体的には、4-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の4-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;アリルメチルグリシジルエーテル等のアリルアルキルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、架橋後の柔軟性、ひいては粘着剤としての適格性の観点から、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルが好ましく、特に4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが好ましい。なお、上記列挙したエポキシドは、置換基を有していてもよい。
【0072】
重合反応させる工程で用いる上記エポキシドE1およびエポキシドE2は、それぞれ1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0073】
重合反応させる工程で用いる上記エポキシドE1およびエポキシドE2の比率は、モル比で、99.99:0.01~90:10であることが好ましく、99.95:0.05~95:5であることがより好ましく、特に99.9:0.1~99:1であることが好ましく、さらには99.7:0.3~99.5:0.5であることが好ましい。
【0074】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの製造に用いる重合触媒としては、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの主鎖中にエーテル構造を導入することができるものであれば特に限定されないが、具体的には、複合金属シアン化物錯体触媒(Double Metal Cyanide Complex触媒;「DMC触媒」と称される。)が好ましい。DMC触媒における金属としては、コバルトおよび亜鉛の組み合わせ、コバルトおよびニッケル、亜鉛およびニッケルの組み合わせ等が好ましく、中でもコバルトおよび亜鉛の組み合わせが特に好ましい。DMC触媒としては、Zn3(Co[CN]6)2、Co(Ni[CN]4)、Zn(Ni(CN)4)等が好ましく、中でもZn3(Co[CN]6)2が特に好ましい。
【0075】
上述した通り、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの重合反応は、圧力容器内で行うことが好ましい。この重合反応における重合触媒の使用量、二酸化炭素の圧力、重合温度、重合時間等を変えることによって、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるエーテル構造単位の含有比率や、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量を調整することができる。
【0076】
重合触媒の使用量は、例えばDMC触媒の場合には、エポキシモノマー1gに対して、0.1~15mgであることが好ましく、特に0.1~10mgであることが好ましく、さらには0.1~2mgであることが好ましい。重合触媒の使用量を少なくすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量が大きくなる傾向がある。
【0077】
二酸化炭素の圧力は、0.1~10MPaであることが好ましく、0.3~7.5MPaであることがより好ましく、特に0.5~6MPaであることが好ましく、さらには0.7~5MPaであることが好ましい。二酸化炭素の圧力を高くすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるカーボネート構造単位の含有比率が大きくなる傾向がある。
【0078】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに導入される二酸化炭素量(CO2導入率)は、10質量%以上であることが好ましく、特に15質量%以上であることが好ましく、さらには20質量%以上であることが好ましい。なお、このCO2導入率の算出方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0079】
重合温度は、-15~95℃であることが好ましく、特に0~75℃であることが好ましく、更には25~70℃であることが好ましい。重合温度を高くすると、エーテル構造単位の含有比率を高くすることができるとともに、重合時間を短縮することができる。
【0080】
重合時間は、1~48時間であることが好ましく、特に2~30時間であることが好ましく、更には5~24時間であることが好ましい。この範囲内で重合時間を長くすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量が大きくなる傾向がある。
【0081】
重合方法は、溶液重合および塊状重合のいずれであってもよい。溶液重合を行う場合の溶剤(重合溶媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系、エチルセロソルブ等のセロソルブ系の溶剤などが用いられる。
【0082】
第1の実施形態における粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを50質量%以上含有し、好ましくは60質量%以上含有し、特に好ましくは70質量%以上含有し、さらに好ましくは80質量%以上含有する。当該含有量の上限値は特に制限されず、100質量%であってもよい。
【0083】
第1の実施形態における粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂A以外の成分を含有してもよい。かかる成分としては、例えば、粘着付与剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、酸化防止剤、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤等の、粘着剤分野で公知の各種添加剤が挙げられる。
【0084】
(2)第2の実施形態における粘着剤
第2の実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層を構成する粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bを50質量%以上含有する。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に架橋性官能基を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの架橋体であり、好ましくは、前述した構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの架橋体であり、特に好ましくは、前述した構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの自己架橋体である。
【0085】
構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの架橋体である脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aと同様に低いガラス転移温度(Tg)を維持して柔軟性やタック性を発現する一方、その架橋構造により凝集力が高くなり、粘着力および保持力がより優れたものとなる。
【0086】
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、所望の架橋剤を使用して脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋した架橋体であってもよいが、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを自己架橋した架橋体であることが好ましく、特に構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを自己架橋した架橋体であることが好ましい。具体的には、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの側鎖が有する架橋性官能基(式(Ic)及び式(Id)中のR3及びR4が有する架橋性官能基)同士を反応させ、当該架橋性官能基を介して複数の脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋したものであることが好ましい。
【0087】
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対して活性エネルギー線を照射することにより、好ましく製造することができる。当該活性エネルギー線の照射により、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの側鎖が有する架橋性官能基同士が反応し、架橋構造が形成される。
【0088】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0089】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、LEDランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、200~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0090】
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対して光重合開始剤を配合することが好ましい。このように光重合開始剤を配合することにより、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを効率良く架橋させることができ、また架橋時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0091】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
光重合開始剤の配合量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂A100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには1.3質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の上記配合量は、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。
【0093】
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのゲル分率は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。これにより、粘着剤として優れた凝集力を発揮する。また、上記ゲル分率は、85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に75%以下であることが好ましく、さらには70%以下であることが好ましい。これにより、柔軟性が確保され、良好な粘着力が維持される。
【0094】
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのガラス転移温度(Tg)は、5℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、特に-20℃以下であることが好ましく、さらには-30℃以下であることが好ましい。これにより、柔軟性に優れ、タック性がより良好なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、前述した構造SAを有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋した構造を有することにより、上記のように低いガラス転移温度(Tg)を達成することができる。
【0095】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましく、-55℃以上であることがより好ましく、特に-50℃以上であることが好ましく、さらには-45℃以上であることが好ましい。これにより、凝集力がより良好なものとなる。
【0096】
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bの5%重量減少温度は、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、特に220℃以上であることが好ましく、さらには230℃以上であることが好ましい。これにより、当該脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは耐熱性に優れ、高温下で使用される粘着剤としても好適なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bの5%重量減少温度の上限値は特に限定されないが、通常、450℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、特に350℃以下であることが好ましく、さらには300℃以下であることが好ましい。
【0097】
第2の実施形態における粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂Bを50質量%以上含有し、好ましくは60質量%以上含有し、特に好ましくは70質量%以上含有し、さらに好ましくは80質量%以上含有する。当該含有量の上限値は特に制限されず、100質量%であってもよい。
【0098】
第2の実施形態における粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂B以外の成分を含有してもよい。かかる成分としては、例えば、光重合開始剤またはその分解物の他、粘着付与剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、酸化防止剤、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤等の、粘着剤分野で公知の各種添加剤が挙げられる。
【0099】
2.粘着剤層
第1及び第2の実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、粘着力および保持力の観点から、下限値として1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。
【0100】
また、上記粘着剤層の厚さは、塗工性やハンドリング性等の観点から、上限値として80μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、特に40μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。
【0101】
3.構成例
第1及び第2の実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1および
図2に示す。
【0102】
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0103】
また、
図2に示すように、他の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0104】
3-1.各要素
(1)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層11は、前述した通りのものであり、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを50質量%以上含有する粘着剤からなるか、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bを50質量%以上含有する粘着剤からなる。
【0105】
(2)剥離シート
剥離シート12,12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1A,1B(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1A,1Bにおいて、剥離シート12,12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0106】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等のプラスチックフィルム、これらの架橋フィルムなど;上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙等の紙などが用いられる。さらに、これらの積層体であってもよい。
【0107】
上記剥離シート12,12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとしてもよい。
【0108】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0109】
(3)基材
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、ポリエステル、アクリル、レーヨン等の繊維を用いた織布または不織布;合成紙;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート(コンバウンド)等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0110】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、通常10~150μmであり、好ましくは20~100μmであり、特に好ましくは25~75μmである。
【0111】
3-2.製造方法
第1の実施形態に係る粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを含有する粘着剤の溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層することが好ましい。
【0112】
また、第1の実施形態に係る粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを含有する粘着剤の溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせることが好ましい。
【0113】
一方、第2の実施形態に係る粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを含有する粘着剤の溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行った後、その塗布層に基材13を積層し、最後に塗布層に対して活性エネルギー線を照射し、当該塗布層を架橋させて粘着剤層11とすることが好ましい。活性エネルギー線の照射は、例えば、剥離シート12越しに行うことができる。
【0114】
また、第2の実施形態に係る粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを含有する粘着剤の溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行った後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせ、最後に塗布層に対して活性エネルギー線を照射し、当該塗布層を架橋させて粘着剤層11とすることが好ましい。活性エネルギー線の照射は、所望の剥離シート(12aまたは12b)越しに行うことができる。
【0115】
上記粘着剤を希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0116】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着剤の濃度が10~40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着剤がそのまま塗布溶液となる。
【0117】
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0118】
上記塗布溶液の塗膜に対し加熱処理を行うことにより、希釈溶剤が揮発し、粘着剤層(または塗布層)が形成される。加熱条件は、例えば、30~120℃で1~10分であることが好ましく、特に100~120℃で1~5分であることが好ましい。
【0119】
4.粘着シートの用途
第1及び第2の実施形態に係る粘着シートは、例えば、各種容器、日用品、電気・電子機器、各種機械、医療器具等におけるラベル貼付、部材同士の貼合等に使用することができる。
【0120】
被着体の材料は、特に限定されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、銅等の金属;ガラス;ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の樹脂などの高極性材料;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレンなどの低極性材料のいずれであってもよい。
【0121】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0122】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例0123】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0124】
〔実施例1〕
(1)重合触媒の合成
ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム(K3[Co(CN)6];富士フイルム和光純薬株式会社製)1.33gを20mLの脱イオン水に溶解し、激しく撹拌した50℃の塩化亜鉛溶液(ZnCl211.42gを60mLの脱イオン水と30mLのt-ブチルアルコールとの混合溶液中に溶解したもの)に45分かけて滴下した。その後、混合物を60分間激しく撹拌した。得られた白色懸濁液を5000rpmで遠心分離し、白色固体を単離した。単離した白色固体を、t-ブチルアルコールおよび脱イオン水の溶液(体積比で、t-ブチルアルコール:脱イオン水=5:5)中で激しく30分間撹拌しながら再懸濁した。その後、水に対してt-ブチルアルコール量を徐々に増加させつつ(t-ブチルアルコール:脱イオン水を、体積比で6:4から7:3、8:2、9:1と変化させる)、遠心分離による単離および再懸濁を数回繰り返した。最後に、白色固体をt-ブチルアルコール中に再懸濁した後に、遠心分離によって単離した。その後、所定の質量になるまで50℃、真空下で乾燥させることによって、DMC触媒であるZn3(Cо[CN]6)2を得た。
【0125】
(2)ポリマーの合成
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシデカン(Edec;1,2-デシレンオキシド)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル株式会社製)を用意した。そして、1,2-エポキシデカンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを99:1の割合(モル比)で配合し、重合溶媒として50質量部のトルエン(脱水トルエン(関東化学株式会社製,GCで確認した純度が99.5%以上))で希釈した。
【0126】
上記(1)で得られたDMC触媒1mgに対し、上記原料モノマー(合計、溶媒は除く)1gとなる割合で、両成分を圧力容器内に加えた。また、重合禁止剤として、フェノチアジン(東京化成工業株式会社製,GCで確認した純度が99.5%以上)を200ppmとなるよう添加した。そして、アルゴン雰囲気下にて撹拌した。
【0127】
続いて、圧力容器内をCO2でパージした後、送液ポンプによりCO2を圧力容器内に導入し、圧力容器内の圧力を4MPaにした。そして、60℃で18時間撹拌し、重合反応を行った。
【0128】
反応終了後、耐圧容器内の内容物にトルエンを加えて溶液とし、1M塩酸を加えたメタノール中に上記溶液を滴下して、再沈殿精製を行った。得られた沈殿物をろ紙により回収し、クロロホルムに溶解させた後に、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製,孔径3.00μm)で不純物を取り除いた。その後、テフロン(登録商標)シャーレに溶液を流し込み、乾燥オーブンで50℃、20時間乾燥し、ポリマーを得た。
【0129】
得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、
1H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。このときのチャートを
図1に示す。なお、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂における、前述した式(Ia)~式(Id)中のR
1及びR
2は、-C
8H
17であり、R
3及びR
4は、-C-O-(CH
2)
4-O-C(=O)-CH=CH
2であった。
【0130】
上記の結果に基づいて、エーテル構造単位とカーボネート単位との比を、それぞれに対応するメチレン水素の積分比から見積もった。その結果、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率(含有量)は1.6%、カーボネート比率(含有量)は98.4%であった。なお、エーテル構造単位の比率は、チャート中のα、β、γに基づいて、以下の式から算出される。
エーテル構造単位比率[%]={γ/(α+β+γ)}×100
【0131】
上記で得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂を酢酸エチルで溶解させ、当該脂肪族ポリカーボネート樹脂100質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1.5質量部配合し、十分に撹拌して、これを粘着剤の塗布液とした。
【0132】
上記粘着剤の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、コーターで塗布した。そして、塗布層を100℃で1分間加熱し、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次いで、剥離シート上の粘着剤層と、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製,製品名「コスモシャイン A4360」,厚さ50μm)とを貼合し、これを粘着シート(UV前;第1の実施形態に係る粘着シートに該当)とした。
【0133】
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0134】
次に、上記粘着シートに対し、剥離シート越しに、下記の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を架橋させた。なお、当該架橋後の粘着剤層は、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体からなる。架橋後の粘着剤層を有する当該粘着シートを、粘着シート(UV後;第2の実施形態に係る粘着シートに該当)という。
【0135】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1800mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス株式会社製「UVPF-A1」を使用
【0136】
〔実施例2~4〕
1,2-エポキシデカンと4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルとの配合割合(モル比)を、99.5:0.5(実施例2)、99.7:0.3(実施例3)、99.9:0.1(実施例4)に変更する以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。
【0137】
得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、1H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
【0138】
〔実施例5,6〕
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシオクタン(Eoct;1,2-オクチレンオキシド)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル社製)を用意した。そして、1,2-エポキシオクタンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを99.9:0.1(実施例5)、99.7:0.3(実施例6)の割合(モル比)で配合した。
【0139】
上記原料モノマーを使用し、重合溶媒を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、1H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
【0140】
〔実施例7〕
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシオクタン(Eoct;1,2-オクチレンオキシド)、およびエポキシドE2としてのアリルグリシジルエーテル(AGE)を用意した。そして、1,2-エポキシオクタンおよびアリルグリシジルエーテルを90:10の割合(モル比)で配合した。
【0141】
上記原料モノマーを使用し、重合溶剤を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、1H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
【0142】
〔比較例1〕
(1)重合触媒の合成
(R,R)-N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-ジアミノシクロヘキサンコバルト(II)(シグマアルドリッチジャパン合同会社製,製品名「(R,R)-salcyCoII」)と、ペンタフルオロ安息香酸(東京化成工業株式会社製)とをモル比で1:1.1になるように秤量してフラスコに入れ、そこに脱水トルエンを加えた。フラスコをアルミホイルで遮光し、室温で20時間反応させた。反応終了後、減圧下で溶媒を除去し、過剰量のヘキサンで数回洗浄した。その後、室温で真空乾燥を行い、コバルトサレン錯体を得た。
【0143】
(2)ポリマーの合成
エポキシモノマーである1,2-エポキシプロパン(プロピレンオキシド;PO)と、重合触媒として上記(1)で得られたコバルトサレン錯体と、助触媒としてビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)とを、モル比で、エポキシモノマー:重合触媒:助触媒=2000:1:1になるよう秤量し、圧力容器内で撹拌した。これらの作業はすべて、圧力容器内をアルゴン雰囲気に置換して行った。なお、この重合工程では、重合溶剤を使用せず塊状重合とした。
【0144】
続いて、圧力容器内をCO2でパージした後、送液ポンプによりCO2を圧力容器内に導入し、圧力容器内の圧力を1.5MPaにした。そして、23℃で5時間撹拌し、重合反応を行った。
【0145】
反応終了後、圧力容器の内容物にクロロホルムを加えてクロロホルム溶液を調製し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮後の溶液を撹拌している1M塩酸を加えたメタノール中に滴下し、生成物を沈殿させた。その後、生成物を、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過により回収した。回収後の生成物を再びクロロホルムに溶解させ、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製,孔径3.00μm)で不純物を取り除いた。その後、テフロン(登録商標)シャーレに溶液を流し込み、乾燥オーブンで50℃、20時間乾燥し、ポリマーを得た。このポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂;側鎖炭素数1)の構造を、
1H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。得られたチャートを
図4に示す。
【0146】
上記の結果に基づいて、カーボネート単位とエーテル構造単位との比を、それぞれに対応するメチレン水素の積分比から見積もった。その結果、γのピークが見られなかったため、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率(含有量;質量基準)は、0.0%であった。
【0147】
(3)粘着シートの製造
上記で得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂を使用し、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。得られた粘着シートにおいては、粘着剤層にタック性がなく、粘着力および保持力の測定ができなかった。
【0148】
〔比較例2〕
原料モノマーとして、1,2-エポキシプロパン(プロピレンオキシド;PO)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル社製)を用意した。そして、1,2-エポキシプロパンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを90:10の割合(質量比)で配合した。
【0149】
上記原料モノマーを使用し、重合溶媒を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様のポリマー調製の操作を行った。しかしながら、ゲル化し、物性測定可能なポリマーを得ることはできなかった。
【0150】
〔試験例1〕<数平均分子量(Mn)の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)し、標準ポリスチレン換算した。結果を表1に示す。
[測定条件]
・GPC測定装置:東ソー株式会社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー株式会社製
TSK guard column SuperH-H
TSK gel SuperHM-H
TSK gel SuperHM-H
TSK gel SuperH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0151】
〔試験例2〕<ガラス転移温度(Tg)の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)ならびに実施例で製造した粘着シート(UV後)の粘着剤層を構成する脂肪族ポリカーボネート架橋体(UV後)ついて、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製,製品名「DSC Q2000」)によって測定を行い、ガラス転移温度(Tg)を求めた。具体的には、ポリマーの測定試料を4mg採り、アルミパンに入れた後に蓋をして密閉した。乾燥窒素雰囲気下、-70℃から70℃までの範囲で、昇温・降温速度10℃/分にて測定試料を加熱・冷却して測定を行った。得られたデータのうち、2nd heating時のデータを用いて、DSC曲線を作成した。得られたDSC曲線の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。結果を表1に示す。
【0152】
〔試験例3〕<ゲル分率の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)を80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0153】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、各粘着剤(脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(UV後))のゲル分率(%)を導出した。結果を表1に示す。
【0154】
〔試験例4〕<5%重量減少温度の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)、ならびに実施例で製造した粘着シート(UV後)の粘着剤層を構成する脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(UV後)について、示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製,製品名「DTG-60」)を用い、流入ガスを窒素として、ガス流入速度100ml/min、昇温速度20℃/minで、40℃から550℃まで昇温させて熱重量測定を行った(JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に準拠)。得られた熱重量曲線に基づいて、温度100℃での質量に対して質量が5%減少する温度(5%重量減少温度)を求めた。結果を表1に示す。
【0155】
〔試験例5〕<粘着力の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)を、25mm幅、300mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を下記3種の被着体に貼付した。貼付に際しては、重さ2kgのローラーを1往復させて、粘着シートを被着体に圧着した。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間放置したものを、粘着力測定用サンプルとした。
【0156】
次に、23℃、50%RHの環境下にて、引張試験機(株式会社オリエンテック製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、粘着力測定用サンプルにおける基材フィルムと粘着剤層との積層体を被着体から剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1の粘着シート(UV前)における被着体ポリプロピレン(PP)板においては、ジッピングが生じたため、粘着力に幅があった。そのため、粘着力の値としては、極大値平均および極小値平均を読み取った。
【0157】
<被着体>
・ステンレススチール(SUS)板(SUS304,360番研磨)
・ポリカーボネート(PC)板(株式会社ユーコウ商会製,製品名「PC(PC-1600)」,厚さ:2mm)
・ポリプロピレン(PP)板(株式会社ユーコウ商会製,製品名「PP(PP-N-BN)」,厚さ:2mm)
【0158】
なお、表1の「粘着力」の欄における「G」、「Cf」及び「Zip」は、それぞれ以下の意味である。
G:被着体表面に薄く跡が残った。
Cf:粘着剤層の凝集破壊が見られた。
Zip:ジッピングが生じた。
【0159】
〔試験例6〕<保持力の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)の粘着剤層を、被着体としてのステンレススチール(SUS)板(SUS304,360番研磨)に貼付した。このとき、粘着剤層のステンレススチール板への貼付領域が25mm×25mmの大きさとなるようにした。このように、粘着シートを貼付したステンレススチール板を、23℃、50%RHの環境下で15分静置した後、クリープ試験機にセットし、この状態でさらに15分間静置した。次いで、40℃の環境下で粘着シートに9.8Nの荷重を加え、JIS Z0237:2009の保持力の測定法に従って、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒)を測定し、粘着剤層の保持力(秒)とした。結果を表1に示す。
【0160】
なお、表1の「保持力」の欄における「N.C.」及び「Cf」は、それぞれ以下の意味である。
N.C.:保持力の測定時に70000秒を超えても、粘着シートが落下しなかっただけでなく、粘着シートの被着体への貼付位置にずれが生じていなかった。
Cf:粘着剤層の凝集破壊が見られた。
【0161】
〔試験例7〕<CO2導入率の算出>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(ポリマー)におけるCO2導入率(質量%)を、以下の式に基づいて算出した。このCO2導入率の値が大きいほど、二酸化炭素をより有効に利用しているということができる。結果を表1に示す。
CO2導入率[質量%]=(ポリマー中CO2量[g]/ポリマー量[g])×100
ポリマー中CO2量[g]=44×(カーボネート比率[%])
ポリマー量[g]={(ポリマー中カーボネート部位の単位分子量)×(カーボネート比率[%])}+{(ポリマー中エーテル部位の単位分子量)×(エーテル構造単位比率[%])}
カーボネート比率[%]=100-エーテル構造単位比率[%]
【0162】
【0163】
表1から分かるように、実施例の粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)は、二酸化炭素を製造原料とし、高極性材料および低極性材料のいずれに対しても良好な粘着力を発揮し、保持力にも優れていた。