(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051734
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ブレード及びロータ
(51)【国際特許分類】
B64C 27/467 20060101AFI20240404BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20240404BHJP
B64C 27/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B64C27/467
B64C27/26
B64C27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158046
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴旭
(72)【発明者】
【氏名】真塩 享
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 雅彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】騒音とエネルギ効率とが考慮されて設定された後退角を有するブレード、及び、当該ブレードを有するロータを提供する。
【解決手段】航空機のロータに用いられるブレード26であって、当該ブレード26は、VTOLロータの半径方向においてロータの回転中心と翼端との間の位置である第1の位置から翼端までの領域において後退し、第1の位置から翼端に向かうにしたがって後退量が増加し、VTOLロータの半径方向において第1の位置と翼端との間の位置である第2の位置から翼端までの領域における後退量の変化率は、第1の位置から第2の位置までの領域における後退量の変化率よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のロータに用いられるブレードであって、
前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の位置である第1の位置から前記翼端までの領域において後退しており、
前記第1の位置から前記翼端に向かうにしたがって後退量が増加し、
前記ロータの半径方向において前記第1の位置と前記翼端との間の位置である第2の位置から前記翼端までの領域における前記後退量の変化率は、前記第1の位置から前記第2の位置までの領域における前記後退量の変化率よりも大きい、ブレード。
【請求項2】
請求項1に記載のブレードにおいて、
少なくとも、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の2分の1の第3の位置から前記翼端にかけて捩り角が変化しており、
前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第4の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第5の位置までの領域における前記捩り角の変化率は、前記第5の位置から前記翼端までの領域における前記捩り角の変化率よりも大きく、
前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離は、前記第4の位置と前記翼端との距離よりも長く、
前記第4の位置と前記翼端との距離は、前記第5の位置と前記翼端との距離よりも長く、
前記第5の位置は、前記第2の位置と略同じ位置である、ブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブレードにおいて、
少なくとも、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の2分の1の第3の位置から前記翼端にかけて捩り角が変化しており、
前記第3の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第4の位置までの領域における前記捩り角の変化率は、前記第4の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第5の位置までの領域における前記捩り角の変化率よりも小さく、
前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離は、前記第4の位置と前記翼端との距離よりも長く、
前記第4の位置と前記翼端との距離は、前記第5の位置と前記翼端との距離よりも長く、
前記ロータの回転中心と前記第1の位置との距離は、前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離よりも短い、ブレード。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のブレードにおいて、
前記ロータの回転中心と前記第1の位置との距離は、前記第1の位置と前記翼端との距離よりも長い、ブレード。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のブレードを有するロータにおいて、
前記ブレードを3枚以上有する、ロータ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のブレードを有するロータにおいて、
前記航空機の機体の前後方向に複数並んで設けられる、ロータ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のブレードを有するロータにおいて、
前記航空機はリフトを発生させる固定翼を有し、
前記固定翼においてリフトが発生する状態において、前記ロータの回転は停止する、ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ヘリコプタの回転翼のブレードの形状が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術では、ブレードに後退角が設けられる。後退角が設けられることにより騒音を改善できる。しかし、上記特許文献1では、ブレードのエネルギ効率について考慮されていない。そのため、騒音の改善とエネルギ効率の向上とを両立させるブレードの構造については改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、航空機のロータに用いられるブレードであって、当該ブレードは、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の位置である第1の位置から前記翼端までの領域において後退しており、前記第1の位置から前記翼端に向かうにしたがって後退量が増加し、前記ロータの半径方向において前記第1の位置と前記翼端との間の位置である第2の位置から前記翼端までの領域における前記後退量の変化率は、前記第1の位置から前記第2の位置までの領域における前記後退量の変化率よりも大きい。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様のブレードを有するロータにおいて、前記ロータは前記ブレードを3枚以上有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、騒音とエネルギ効率とが考慮されて設定された後退角を有するブレード、及び、当該ブレードを有するロータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、ブレードの長手方向の位置に対するブレードの後退量を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ブレードの長手方向の位置に対するブレードの捩り角を示すグラフである。
【
図5】
図5は、翼端部において後退角が大きくなる位置を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6は、ブレードの捩りが弱くなる位置を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7は、ブレードが後退し始める位置を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
[航空機の構成]
図1は、航空機10の模式図である。本実施形態の航空機10は、電動垂直離着陸機(eVTOL機)である。本実施形態の航空機10は、複数のVTOLロータ12と、複数のクルーズロータ14とを有する。VTOLロータ12が回転することにより、機体16を上方に移動させるリフトを発生させる。クルーズロータ14が回転することにより、機体16を前方に移動させるスラストを発生させる。
【0011】
航空機10は、機体16を有する。機体16には、コックピット、キャビン等が設けられる。コックピットには、パイロットが搭乗し、航空機10の操縦をする。キャビンには、搭乗者等が搭乗する。航空機10は、パイロットが搭乗せずに、自動で操縦されてもよい。
【0012】
航空機10は、固定翼である前翼18及び後翼20を有する。前翼18は、機体16の重心Gよりも前方に設けられる。後翼20は、機体16の重心Gよりも後方に設けられる。機体16が対気速度を有する場合、前翼18及び後翼20の迎え角が制御されることにより、前翼18及び後翼20においてリフトが発生する。
【0013】
航空機10は、8つのVTOLロータ12を有する。8つのVTOLロータ12とは、ロータ12FLa、ロータ12FLb、ロータ12RLa、ロータ12RLb、ロータ12FRa、ロータ12FRb、ロータ12RRa及びロータ12RRbである。VTOLロータ12の各々は、本発明のロータに相当する。
【0014】
ロータ12FLa、ロータ12FLb、ロータ12RLa及びロータ12RLbは、ブーム22Lに取り付けられる。ブーム22Lは、前後方向に延びる。ロータ12FLa、ロータ12FLb、ロータ12RLa及びロータ12RLbは、航空機10の機体16の前後方向において並んで設けられる。ブーム22Lは、前翼18と後翼20とに取り付けられる。ブーム22Lは、重心Gに対して左方に設けられる。すなわち、ロータ12FLa、ロータ12FLb、ロータ12RLa及びロータ12RLbは、重心Gに対して左方に配置される。
【0015】
ロータ12FLaは、前翼18よりも前方に設けられる。ロータ12FLbは、機体16の前後方向において、前翼18と重心Gとの間に設けられる。ロータ12RLbは、機体16の前後方向において、重心Gと後翼20との間に設けられる。ロータ12RLaは、後翼20よりも後方に設けられる。重心Gからロータ12FLbまでの距離は、重心Gからロータ12FLaまでの距離よりも短い。重心Gからロータ12RLbまでの距離は、重心Gからロータ12RLaまでの距離よりも短い。
【0016】
ロータ12FRa、ロータ12FRb、ロータ12RRa及びロータ12RRbは、ブーム22Rに取り付けられる。ブーム22Rは、前後方向に延びる。ロータ12FRa、ロータ12FRb、ロータ12RRa及びロータ12RRbは、航空機10の機体16の前後方向において並んで設けられる。ブーム22Rは、前翼18と後翼20とに取り付けられる。ブーム22Rは、重心Gに対して右方に設けられる。すなわち、ロータ12FRa、ロータ12FRb、ロータ12RRa及びロータ12RRbは、重心Gに対して右方に配置される。
【0017】
ロータ12FRaは、前翼18よりも前方に設けられる。ロータ12FRbは、機体16の前後方向において、前翼18と重心Gとの間に設けられる。ロータ12RRbは、機体16の前後方向において、重心Gと後翼20との間に設けられる。ロータ12RRaは、後翼20よりも後方に設けられる。重心Gからロータ12FRbまでの距離は、重心Gからロータ12FRaまでの距離よりも短い。重心Gからロータ12RRbまでの距離は、重心Gからロータ12RRaまでの距離よりも短い。
【0018】
図1において、ブーム22L及びブーム22Rは、機体16の前後方向に直線的に延びる形状である。しかし、ブーム22L及びブーム22Rは、機体16の左右方向において外側に向かって凸の円弧状に形成されてもよい。ブーム22Lが、機体16の左右方向において外側に向かって凸の円弧状に形成される場合、ロータ12FLbは、機体16の左右方向においてロータ12FLaよりも左側(外側)に位置する。ブーム22Rが、機体16の左右方向において外側に向かって凸の円弧状に形成される場合、ロータ12FRbは、機体16の左右方向においてロータ12FRaよりも右側(外側)に位置する。
【0019】
VTOLロータ12の各々は、回転シャフト24を有する。回転シャフト24は、機体16の上下方向に延びる。回転シャフト24は、機体16の上下方向に対して数度の角度(カント)が付けられていてもよい。
【0020】
VTOLロータ12の各々は、3枚のブレード26を有する。VTOLロータ12の各々は、3枚以上のブレード26を有してもよい。
【0021】
VTOLロータ12が回転シャフト24を中心として回転することにより、ブレード26においてリフトが発生する。VTOLロータ12は、回転数、及び、ブレード26のピッチが制御されることにより、VTOLロータ12が発生するリフトの大きさが制御される。主に、垂直離陸時、垂直離陸から巡航への移行時、巡航から垂直着陸への移行時、垂直着陸時、空中停止時等において、VTOLロータ12は回転し、リフトを発生させる。一方、巡航時等において前翼18及び後翼20においてリフトが発生する状態では、VTOLロータ12の回転は停止する。
【0022】
航空機10は、2つのクルーズロータ14を有する。2つのクルーズロータ14とは、ロータ14L及びロータ14Rである。
【0023】
ロータ14L及びロータ14Rは、機体16の後部に取り付けられる。ロータ14Lは、機体16の中心線Aに対して左方に配置される。ロータ14Rは、機体16の中心線Aに対して右方に配置される。
【0024】
クルーズロータ14の回転シャフト(不図示)は、機体16の前後方向に延びる。クルーズロータ14の回転シャフトは、前後方向に対して数度の角度(カント)が付けられていてもよい。クルーズロータ14の各々は、複数枚のブレード(不図示)を有する。
【0025】
クルーズロータ14は、回転シャフトを中心として回転することにより、ブレードにおいてスラストが発生する。クルーズロータ14は、回転数、及び、ブレードのピッチが制御されることにより、スラストの大きさが制御される。主に、垂直離陸から巡航への移行時、巡航時、巡航から垂直着陸への移行時等において、クルーズロータ14は回転し、スラストを発生する。
【0026】
[ブレードの形状について]
図2は、ブレード26を示す図である。本実施形態では、ブレード26の長手方向の位置を%Rで示す。%Rは、ブレード26のVTOLロータ12の回転中心から翼端までの長さのRに対する割合を示す。VTOLロータ12の回転中心の位置を0%Rとし、翼端の位置を100%Rとする。ブレード26の長手方向は、VTOLロータ12の半径方向と一致する。以下では、VTOLロータ12の回転中心を、単に回転中心と記載することがある。
【0027】
回転中心(0%R)から15%Rにかけて設けられる翼根部30は、その断面が楕円形状に形成される。本実施形態の航空機10では、巡航時等において、VTOLロータ12の回転が停止される。そのため、回転停止時には、ブレード26の空気抵抗を軽減することが求められる。また、翼根部30は、回転時におけるリフトの発生に対して他の部分よりも寄与度が低い。そこで、翼根部30の断面を楕円形状とすることにより、VTOLロータ12の回転時のエネルギ効率の低下を抑えつつ、回転停止時の空気抵抗を低減する。
【0028】
翼根部30よりも翼端(100%R)側に羽根部32が設けられる。羽根部32は、少なくとも、ブレード26の50%Rの位置から翼端(100%R)にかけて設けられる。羽根部32は、50%Rの位置よりも回転中心(0%R)側に設けられてもよい。羽根部32は、その断面形状が薄板状に形成される。翼根部30と羽根部32との間に接続部34が設けられる。接続部34は、翼根部30と羽根部32とを滑らかに接続する形状に形成される。
【0029】
ブレード26は、70%Rから翼端(100%R)にかけて後退する。ブレード26の後退が開始する70%Rの位置を、以下では、第1の位置と記載することがある。ブレード26を後退させる第1の位置は、70%Rの位置に限らず、65%Rから75%Rの間であればよい。また、ブレード26の羽根部32は、少なくとも50%Rの位置から翼端(100%R)に向かうにしたがって捩り角が変化する。ブレード26は、羽根部32の全体が、VTOLロータ12の半径方向外側に向かうにしたがって、捩り角が変化してもよい。
【0030】
図3は、ブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の後退量を示すグラフである。ブレード26は、第1の位置(70%R)から翼端(100%R)に向かうにしたがって、後退量が増加する。
【0031】
95%Rから翼端(100%R)までの領域における後退量の変化率は、第1の位置(70%R)から95%Rまでの領域における後退量の変化率よりも大きい。換言すると、95%Rから翼端(100%R)までの領域における後退角は、第1の位置(70%R)から95%Rまでの領域における後退角よりも大きい。後退量の変化率が変わる95%Rの位置を、以下では、第2の位置と記載することがある。後退量の変化率が変わる第2の位置は、95%Rに限らず、92.5%Rから97.5%Rの範囲であればよい。
【0032】
ブレード26は、第1の位置から翼端にかけて後退する。これにより、前に通過したブレード26により発生した翼端渦が、羽根部32に衝突するタイミングをずらす。その結果、後退角の変化に伴う損失を抑制しつつ、エネルギ効率に対する寄与度が高い翼端部分におけるエネルギ損失(空力損失)及び騒音を低減する。
【0033】
ブレード26は、第2の位置から翼端にかけて、さらに後退角が大きくなる。これにより、翼端渦の発生を低減させる。
【0034】
図4は、ブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の捩り角を示すグラフである。ブレード26は、35%Rから翼端(100%R)に向かうにしたがって、捩り角が小さくなる。
【0035】
少なくとも50%Rから80%Rまでの領域における捩り角の変化率は、80%Rから95%Rまでの領域における捩り角の変化率よりも小さい。35%Rから80%Rまでの領域における捩り角の変化率が、80%Rから95%Rまでの領域における捩り角の変化率よりも小さくてもよい。以下では、50%Rの位置を、第3の位置と記載することがある。ブレード26の捩り角の変化率が変わる80%Rの位置を、第4の位置と記載することがある。ブレード26の捩り角の変化率が変わる第4の位置は、80%Rの位置に限らず、75%Rから85%Rの範囲であればよい。
【0036】
第4の位置(80%R)から95%Rまでの領域における捩り角の変化率は、95%Rから翼端(100%R)までの領域における捩り角の変化率よりも大きい。以下では、ブレード26の捩り角の変化率が変わる95%Rの位置を、第5の位置と記載することがある。この第5の位置は、前述のブレード26の後退量の変化率が変わる第2の位置と同じ位置である。第5の位置と第2の位置とが若干ずれていてもよい。また、ブレード26の捩り角の変化率が変わる第5の位置は、95%Rの位置に限らず、92.5%Rから97.5%の範囲であればよい。
【0037】
ブレード26は、第4の位置から第5の位置にかけて捩りが強くなり、第5の位置から翼端にかけて捩りが弱くなる。これにより、ブレード26から発生した翼端渦が、次に通過するブレード26へ及ぼす影響を低減する。これにより、VTOLロータ12のエネルギ効率が改善される。
【0038】
図2に示すように、回転中心(0%R)と第4の位置(80%R)との距離は、第4の位置(80%R)と翼端(100%R)との距離よりも長い。また、第4の位置(80%R)と翼端(100%R)との距離は、第5の位置(95%R)と翼端(100%R)との距離よりも長い。さらに、回転中心(0%R)と第4の位置(80%R)との距離は、第4の位置(80%R)と翼端(100%R)との距離よりも長い。また、第4の位置(80%R)と翼端(100%R)との距離は、第5の位置(95%R)と翼端(100%R)との距離よりも長い。さらに、回転中心(0%R)と第1の位置(70%R)との距離は、回転中心(0%R)と第4の位置(80%R)との距離よりも短い。また、回転中心(0%R)と第1の位置(70%R)との距離は、第1の位置(70%R)と翼端(100%R)との距離よりも長い。
【0039】
[作用効果]
本実施形態のブレード26は、VTOLロータ12の半径方向において回転中心と翼端との間の位置である第1の位置(70%R)から翼端(100%R)までの領域において後退する。ブレード26は、第2の位置(95%R)から翼端(100%R)までの領域における後退角が、第1の位置(70%R)から第2の位置(95%R)までの領域における後退角よりも大きい。すなわち、本実施形態のブレード26は、翼端部において後退角が大きくなる。
【0040】
図5は、翼端部において後退角が大きくなる位置(第2の位置)を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。実線は、本実施形態と同様に95%Rにおいて後退角が大きくなる場合におけるブレード26の長手方向の位置に対する後退量を示す。点線は、翼端部において後退角が大きくならない場合におけるブレード26の長手方向の位置に対する後退量を示す。一点鎖線は、90%Rにおいて後退角が大きくなる場合におけるブレード26の長手方向の位置に対する後退量を示す。
【0041】
図5の四角の枠の中の数字は、本実施形態のブレード26を用いた場合のVTOLロータ12のエネルギ効率を「1.000」とした場合のエネルギ効率を示す。
【0042】
図5に示すように、翼端部において後退角が大きくなる場合(実線、一点鎖線)のエネルギ効率は、後退角が大きくならない場合(点線)のエネルギ効率に比べて高くなる。すなわち、ブレード26の翼端部の後退角を大きくすることにより、VTOLロータ12のエネルギ効率を向上できる。
【0043】
本実施形態のブレード26は、第4の位置(80%R)において捩りが強くなり、第5の位置(95%R)において捩りが弱くなる。この第5の位置(95%R)は、翼端部において後退角が大きくなる第2の位置(95%R)と略同じ位置である。
【0044】
図6は、ブレード26の捩りが弱くなる位置(第5の位置)を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。実線は、本実施形態と同様に、95%Rにおいてブレード26の捩りが弱くなる場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の捩り角を示す。点線は、翼端部において、ブレード26の捩りが弱くならない場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の捩り角を示す。一点鎖線は、90%Rにおいてブレード26の捩りが弱くなる場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の捩り角を示す。
【0045】
図6の四角の枠の中の数字は、本実施形態のブレード26を用いた場合のVTOLロータ12のエネルギ効率を「1.000」とした場合のエネルギ効率を示す。
【0046】
図6に示すように、95%Rにおいてブレード26の捩りが弱くなる場合(実線)のエネルギ効率は、翼端部においてブレード26の捩りが弱くならない場合(点線)のエネルギ効率に比べて高くなる。また、95%Rにおいてブレード26の捩りが弱くなる場合(実線)のエネルギ効率は、90%Rにおいてブレード26の捩りが弱くなる場合(一点鎖線)のエネルギ効率に比べて高くなる。すなわち、翼端部において後退角が大きくなる位置と略同じ位置においてブレード26の捩りが弱くなることにより、VTOLロータ12のエネルギ効率を向上できる。
【0047】
本実施形態のブレード26は、後退し始める第1の位置(70%R)は、ブレード26の捩りが強くなる第4の位置(80%R)よりも回転中心(0%)側に位置する。
【0048】
図7は、ブレード26が後退し始める位置(第1の位置)を変化させた場合におけるエネルギ効率のシミュレーション結果を示す図である。実線は、本実施形態と同様に70%Rにおいてブレード26が後退し始める場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の後退量を示す。点線は、第4の位置と同じ80%Rにおいてブレード26が後退し始める場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の後退量を示す。一点鎖線は、60%Rにおいてブレード26が後退し始める場合におけるブレード26の長手方向の位置に対するブレード26の後退量を示す。
【0049】
図7の四角の枠の中の数字は、本実施形態のブレード26を用いた場合のVTOLロータ12のエネルギ効率を「1.000」とした場合のエネルギ効率を示す。
【0050】
図7に示すように、第4の位置(80%R)よりも回転中心(0%)側においてブレード26が後退し始める場合(実線、一点鎖線)のエネルギ効率は、第4の位置と同じ位置においてブレード26が後退し始める場合(点線)のエネルギ効率に比べて高くなる。すなわち、ブレード26が後退し始める第1の位置(70%R)が、ブレード26の捩りが強くなる第4の位置(80%R)よりも回転中心(0%)側に位置することにより、VTOLロータ12のエネルギ効率を向上できる。
【0051】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0052】
航空機(10)のロータ(12)に用いられるブレード(26)であって、当該ブレードは、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の位置である第1の位置から前記翼端までの領域において後退しており、前記第1の位置から前記翼端に向かうにしたがって後退量が増加し、前記ロータの半径方向において前記第1の位置と前記翼端との間の位置である第2の位置から前記翼端までの領域における前記後退量の変化率は、前記第1の位置から前記第2の位置までの領域における前記後退量の変化率よりも大きい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0053】
上記のブレードは、少なくとも、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の2分の1の第3の位置から前記翼端にしたがって捩り角が変化しており、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第4の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第5の位置までの領域における前記捩り角の変化率は、前記第5の位置から前記翼端までの領域における前記捩り角の変化率よりも大きく、前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離は、前記第4の位置と前記翼端との距離よりも長く、前記第4の位置と前記翼端との距離は、前記第5の位置と前記翼端との距離よりも長く、前記第5の位置は、前記第2の位置と略同じ位置であってもよい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0054】
上記のブレードは、少なくとも、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と翼端との間の2分の1の第3の位置から前記翼端にしたがって捩り角が変化しており、前記第3の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第4の位置までの領域における前記捩り角の変化率は、前記第4の位置から、前記ロータの半径方向において前記ロータの回転中心と前記翼端との間の位置である第5の位置までの領域における前記捩り角の変化率よりも小さく、前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離は、前記第4の位置と前記翼端との距離よりも長く、前記第4の位置と前記翼端との距離は、前記第5の位置と前記翼端との距離よりも長く、前記ロータの回転中心と前記第1の位置との距離は、前記ロータの回転中心と前記第4の位置との距離よりも短くてもよい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0055】
上記のブレードは、前記ロータの回転中心と前記第1の位置との距離は、前記第1の位置と前記翼端との距離よりも長くてもよい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0056】
上記のブレードを有するロータは、前記ブレードを3枚以上有する。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0057】
上記のブレードを有するロータは、前記航空機の機体(16)の前後方向に複数並んで設けられてもよい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0058】
上記のブレードを有するロータにおいて、前記航空機はリフトを発生させる固定翼を有し、前記固定翼においてリフトが発生する状態において、前記ロータの回転は停止してもよい。これにより、ロータのエネルギ効率を向上できる。
【0059】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0060】
10…航空機 12…ロータ(VTOLロータ)
16…機体 26…ブレード