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  • 特開-ヘッドレスト 図1
  • 特開-ヘッドレスト 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051749
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20240404BHJP
   A47C 7/72 20060101ALI20240404BHJP
   B60N 2/885 20180101ALI20240404BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/72
B60N2/885
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158065
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】山田 純
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JD02
3B087DC05
3B087DC10
(57)【要約】
【課題】 音場の位置を微調整可能なスピーカ内蔵型ヘッドレストの一例を開示する。
【解決手段】 スピーカ内蔵型ヘッドレスト10では、スピーカ15の向きを変位させることが可能な支持機構20を備える。これにより、利用者は、当該ヘッドレストを用いれば、音場の位置を微調整することが可能となる。なお、スピーカ15は、「バタフライ構造のヘッドレスト」の羽根部14に内蔵されていることが望ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着席者の後頭部を支持可能なシート用のヘッドレストにおいて、
ヘッドレスト本体部に内蔵されたスピーカと、
前記スピーカの向きを変位させることが可能な機構と
を備えるヘッドレスト。
【請求項2】
前記機構は、
第1軸線を中心に前記スピーカを回転可能に支持する第1支持部、
前記第1軸線と直交する第2軸線を中心に前記第1支持部を回転可能に支持する第2支持部、及び
前記第2支持部を回転可能に支持するとともに、前記ヘッドレスト本体部に対して直接的又は間接的に固定されたフレーム
を有する請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記第1支持部は、前記スピーカを囲む枠状に構成され、
前記第2支持部は、前記第1支持部を囲む枠状に構成され、
前記フレームは、前記第2支持部を囲む枠状に構成され、
前記第1支持部を前記第2支持部に対して回転可能に支持する第1支持軸と、
前記第2支持部を前記フレームに対して回転可能に支持する第2支持軸と、
前記第1支持部を前記第2支持部に対して回転させるための第1電動モータと、
前記第2支持部を前記フレームに対して回転させるための第2電動モータと
を備える請求項2に記載のヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカ内蔵型のヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドレストの本体部には、スピーカが内蔵されている。そして、当該ヘッドレストでは、内蔵されたスピーカがヘッドレスト本体部に対して固定され、予め決められた特定の領域のみに音声を放射する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-247388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘッドレストでは、予め決められた特定の領域のみに音声を放射する構成であるので、当該ヘッドレストでは、音声が放射される領域(以下、音場という。)を着席者等の利用者の体格や好みに応じた位置に微調整ができない。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、音場の位置を微調整可能なスピーカ内蔵型ヘッドレストの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
着席者の後頭部を支持可能なシート用のヘッドレストは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、ヘッドレスト本体部(11)に内蔵されたスピーカ(15)と、スピーカ(15)の向きを変位させることが可能な機構(20)とである。
【0007】
これにより、利用者は、当該ヘッドレストを用いれば、音場の位置を微調整することが可能となる。
なお、当該ヘッドレストにおいては、例えば、以下の構成であってもよい。
【0008】
すなわち、機構(20)は、第1軸線(L1)を中心にスピーカ(15)を回転可能に支持する第1支持部(21)、第1軸線(L1)と直交する第2軸線(L2)を中心に第1支持部(21)を回転可能に支持する第2支持部(22)、及び第2支持部(22)を回転可能に支持するとともに、ヘッドレスト本体部(11)に対して直接的又は間接的に固定されたフレーム(23)を有することが望ましい。
【0009】
また、第1支持部(21)は、スピーカ(15)を囲む枠状に構成され、第2支持部(22)は、第1支持部(21)を囲む枠状に構成され、フレーム(23)は、第2支持部(22)を囲む枠状に構成され、第1支持部(21)を第2支持部(22)に対して回転可能に支持する第1支持軸(21A)と、第2支持部(22)をフレーム(23)に対して回転可能に支持する第2支持軸(22A)と、第1支持部(21)を第2支持部(22)に対して回転させるための第1電動モータ(21B)と、第2支持部(22)をフレーム(23)に対して回転させるための第2電動モータ(22B)とを備えることが望ましい。
【0010】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るヘッドレストを示す図である。
図2】第1実施形態に係る支持機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るヘッドレストが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0014】
したがって、当該ヘッドレスト及び乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。本開示に示されたヘッドレストは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.ヘッドレストの概要>
本実施形態に係るヘッドレスト10は、図1に示されるように、乗物用シート1に適用される。乗物用シート1は、シートクッション(図示せず。)及びシートバック3等を少なくとも備える。
【0017】
シートクッションは着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック3は着席者の背部を支持するための部位である。ヘッドレスト10は、シートバック3の上端に装着され、着席者の後頭部を支持するための部位である。
【0018】
ヘッドレスト10は、ヘッドレスト本体部11及び少なくとも1本(本実施形態では、複数本)のステー12等を備える。ヘッドレスト本体部11は、着席者の後頭部と接触可能な部位である。
【0019】
つまり、ヘッドレスト本体部11は、着席者の頭部に大きな慣性力が作用したときに、頭部に接触して当該頭部を支える。各ステー12は、ヘッドレスト本体部11をシートバック3に連結して当該ヘッドレスト本体部11を支持する。
【0020】
なお、本実施形態に係る各ステー12は、ヘッドレスト本体部11又はシートバック3に対して変位可能に連結固定されている。このため、着席者等のヘッドレスト10の利用者は、例えば、自己の体格に応じてヘッドレスト本体部11の上下方向位置を微調整できる。
【0021】
<2.ヘッドレスト本体部の構成>
<2.1 概要>
ヘッドレスト本体部11は、支持部13及び2つの羽根部14を有する、いわゆる「バタフライ構造のヘッドレスト」である。支持部13は、着席した利用者の後頭部と対向する位置に配置された部位である。
【0022】
これにより、シート後方向きの慣性力が頭部に作用したときに、支持部13が後頭部に接触して当該頭部を支える。2つの羽根部14それぞれは、水平方向一端側及び他端側から支持部13を挟み込むように配置されている。
【0023】
つまり、第1の羽根部14は、支持部13の水平方向一端側に配置されている。第2の羽根部14は、支持部13の水平方向他端側に配置されている。そして、各羽根部14は、着席した利用者の側頭部側を覆うように構成されている。
【0024】
各羽根部14は、支持部13に対して揺動可能に当該支持部13に連結されている。つまり、各羽根部14は、図1の矢印に示されるように、各ステー12の延び方向と平行な仮想の軸線を中心に、支持部13に対して揺動可能である。
【0025】
なお、本実施形態に係るヘッドレスト10では、利用者は、ヘッドレスト本体部11の上下方向位置の微調整、及び各羽根部14の支持部13に対する角度の微調整を電動調整可能である。
【0026】
ヘッドレスト本体部11(本実施形態では、各羽根部14)には、スピーカ15が内蔵されている。各スピーカ15は、支持機構20を介して各羽根部14に支持されている。なお、本実施形態では、各羽根部14には、2つのスピーカ15が内蔵され、かつ、各支持機構20は、同一構成である。
【0027】
<2.2 支持機構の構成>
各支持機構20は、スピーカ15の向きを変位させることが可能な機構である。以下の説明は、例えば、紙面右側の支持機構20についての詳細説明である。
【0028】
支持機構20は、図2に示されるように、第1支持部21、第2支持部22、フレーム23、第1支持軸21A、第2支持軸22A、第1電動モータ21B及び第2電動モータ22B等を少なくとも有する。
【0029】
第1支持部21は、第1軸線L1を中心に2つのスピーカ15を回転可能に支持する部材である。当該第1支持部21は、2つのスピーカ15を囲む矩形枠状に構成されたフレームである。なお、本実施形態に係る第1軸線L1は、略水平方向と一致する。2つのスピーカ15、第1支持部21にボルト等の締結具(図示せず。)にて固定されている。
【0030】
第2支持部22は、第2軸線L2を中心に第1支持部21を回転可能に支持する部材である。当該第2支持部22は、第1支持部21を囲む矩形枠状に構成されたフレームである。第2軸線L2は、第1軸線L1と直交する方向に平行である。なお、図2に示される状態では、第2軸線L2は鉛直方向と略一致している。
【0031】
フレーム23は、第2支持部22を回転可能に支持するとともに、ヘッドレスト本体部11(本実施形態では、羽根部14)に対して直接的又は間接的に固定された部材である。なお、当該フレーム23は、第2支持部22を囲む矩形枠状に構成されている。
【0032】
第1支持軸21Aは、第1支持部21を第2支持部22に対して回転可能に支持する軸である。本実施形態では、第1支持軸21Aは、第1支持部21を挟んで一方側及び他方側にそれぞれに配置されている。
【0033】
そして、各第1支持軸21Aは、第2支持部22に固定され、かつ、第1支持部21に回転可能に連結されている。第1電動モータ21Bは、第1支持部21を第2支持部22に対して回転させるための電動アクチュエータである。
【0034】
具体的には、第1支持軸21Aには、ウォームが形成されている。第1電動モータ21Bは、当該ウォームと噛み合うウォームホィールを回転駆動する。これにより、第1電動モータ21Bが稼働すると、第1支持部21が第2支持部22に対して変位する。
【0035】
第2支持軸22Aは、第2支持部22をフレーム23に対して回転可能に支持する軸である。本実施形態では、第2支持軸22Aは、第2支持部22を挟んで一方側及び他方側にそれぞれに配置されている。
【0036】
そして、各第2支持軸22Aは、フレーム23に固定され、かつ、第2支持部22に回転可能に連結されている。第2電動モータ22Bは、第2支持部22をフレーム23に対して回転させるための電動アクチュエータである。
【0037】
具体的には、第2支持軸22Aには、ウォームが形成されている。第2電動モータ22Bは、当該ウォームと噛み合うウォームホィールを回転駆動する。これにより、第2電動モータ22Bが稼働すると、第2支持部22がフレーム23に対して変位する。
【0038】
なお、ウォームとウォームホィールとの噛み合い構成においては、ウォームホィールからウォームへの回転力は伝達されるが、ウォームからウォームホィールへの回転力の伝達は、ほぼ遮断される。このため、第1電動モータ21B及び第2電動モータ22Bが停止した状態では、第1支持部21及び第2支持部22は、ほぼ不動な状態となる。
【0039】
<3.本実施形態に係るヘッドレストの特徴>
本実施形態に係るスピーカ内蔵型ヘッドレスト10では、スピーカ15の向きを変位させることが可能な支持機構20を備える。これにより、利用者は、当該ヘッドレストを用いれば、音場の位置を微調整することが可能となる。
【0040】
因みに、第1電動モータ21B及び第2電動モータ22Bは、利用者が音場調整操作部(図示せず。)を操作することにより、稼働及び停止する。したがって、利用者は、自己の体格(耳の位置)や好みに合うように、音場調整操作部を操作して音場の位置を微調整できる。
【0041】
本実施形態に係る支持機構20は、2本の軸線L1、L2を中心にスピーカ15を回転させることができるので、音場の位置を利用者の体格や好みに合わせることが容易となり得る。
【0042】
支持機構20、つまりスピーカ15は羽根部14に内蔵されている。これにより、利用者は、スピーカ15の向きの微調整に加えて、ヘッドレスト本体部11の上下方向位置の微調整、及び各羽根部14の角度の微調整のうち少なくとも一方の微調整を組み合わせることにより、音場の位置をより適切に調整することが可能となり得る。
【0043】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、支持機構20とヘッドレスト本体部11の上下方向位置の微調整のための機構(以下、上下調整機構という。)、及び各羽根部14の角度の微調整のための機構(以下、角度調整機構という。)が独立して微調整可能であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0044】
すなわち、当該開示は、例えば、支持機構20、上下調整機構及び角度調整機構が連動して作動する機構であってもよい。つまり、利用者が音場調整操作部を操作したときに、当該操作に応じて、支持機構20、上下調整機構及び角度調整機構のうち少なくとも1つの機構が作動する構成であってもよい。なお、当該構成では、上下調整機構及び角度調整機構も支持機構として機能する。
【0045】
上述の実施形態では、羽根部14にスピーカ15が内蔵された構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、支持部13にスピーカ15が内蔵された構成であってもよい。
【0046】
上述の実施形態では、スピーカ15を直接的に変位させてスピーカ15の向きを変更させた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、「スピーカ15の向き」とは、音声の放射の向きである。したがって、当該開示は、例えば、音を導くホーンや音の反射板を変位させることにより、「スピーカ15の向き」を変更する機構であってもよい。
【0047】
上述の実施形態に係る支持機構20、上下調整機構及び角度調整機構は、電動モータを備える機構であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、それら機能から電動モータが廃止され、手動操作にて各機構を作動させる構成であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、乗物用シートに本開示に係るヘッドレストが適用された例であった。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0049】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1… 乗物用シート
3… シートバック
10… ヘッドレスト
11… ヘッドレスト本体部
12… ステー
13… 支持部
14… 羽根部
15… スピーカ
20… 支持機構
21… 第1支持部
21A… 第1支持軸
21B… 第1電動モータ
22… 第2支持部
22A… 第2支持軸
22B… 第2電動モータ
23… フレーム
図1
図2