(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051753
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】モータ駆動用回路基板、モータおよびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240404BHJP
H02K 11/02 20160101ALI20240404BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240404BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240404BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240404BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H02K11/02
H02K11/33
H02M7/48 Z
F04B39/00 106C
H05K3/46 Q
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158069
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】谷邑 敏
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 敏行
【テーマコード(参考)】
3H003
5E316
5E338
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA06
3H003CF01
3H003CF04
5E316AA35
5E316BB03
5E316BB04
5E316BB06
5E316CC32
5E316FF01
5E316HH04
5E316JJ03
5E338AA03
5E338BB75
5E338CC04
5E338CC05
5E338CD40
5E338EE13
5H611AA03
5H611BB01
5H611TT01
5H611TT06
5H611UA04
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA21
5H770QA24
5H770QA31
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】モータ駆動回路からのノイズ放射を抑制してEMC性能の向上を図り、コストアップを抑制する。
【解決手段】モータ駆動回路150が設けられた多層基板110において、第2層112には、共通グランドパターン100cである第2導電層G2が基板全域に形成される。第3層113には、パワー系回路170の外周を全周で囲むように共通グランドパターン100cである第3導電層G3が形成される。第4層114には、パワー系回路170の外周を全周で囲むように共通グランドパターン100cである第4導電層G4が形成される。第3導電層G3は、パワー系回路170の外周に沿って基板外縁に延びるノイズガード部G32を備える。ノイズガード部G32は、パワー系回路170を囲むように基板外縁に配列された複数のスルーホールH1により第2導電層G2および第4導電層G4に接続される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流を出力するスイッチング素子を備えるパワー系回路と、前記スイッチング素子に信号を供給する制御素子を備える信号系回路を含むモータ駆動回路が多層基板に設けられたモータ駆動用回路基板において、
前記多層基板では、前記パワー系回路に対するグランドパターン、および前記信号系回路に対するグランドパターンが一体の共通グランドパターンとして構成され、
前記多層基板は、第1層、第2層、第3層、および第4層の順で重なる4層を含み、
前記共通グランドパターンは、前記第2層に設けられた第2導電層、前記第3層に設けられた第3導電層、および前記第4層に設けられた第4導電層を含み、
前記第1層には、少なくとも前記制御素子が実装され、
前記第2層には、前記第2導電層が基板全域に形成され、
前記第3層には、前記パワー系回路を含む第3層回路が形成され、且つ、前記第3導電層が前記第3層回路の外周を全周で囲むように形成され、
前記第4層には、前記パワー系回路を含む第4層回路が形成され、且つ、前記第4導電層が前記第4層回路の外周を全周で囲むように形成され、
前記第3導電層は、前記パワー系回路の外周に沿って延びるノイズガード部を備え、
前記ノイズガード部は、前記パワー系回路を囲むように配列された複数のスルーホールにより前記第2導電層および前記第4導電層に接続されることを特徴とするモータ駆動用回路基板。
【請求項2】
前記多層基板の中心に対して一方側の第1領域には、外部接続用の端子が嵌まる複数の端子穴が基板外縁に沿って配列され、
前記第3層回路における前記パワー系回路は、前記多層基板の中心に対して前記第1領域とは反対側の第2領域に配置され、
前記ノイズガード部は、前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、且つ、前記ノイズガード部の両端は、前記第1領域に形成される前記第3導電層の部分に接続され、
前記複数のスルーホールは、前記第2領域の基板外縁に沿って配列されることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項3】
前記多層基板は、前記第1層、前記第2層、前記第3層、前記第4層、第5層、および第6層の順で重なる6層を含み、
前記共通グランドパターンは、前記第5層に設けられた第5導電層、および前記第6層に設けられた第6導電層を含み、
前記第5層には、前記第5導電層が基板全域に形成され、
前記第6層には、前記パワー系回路を含む第6層回路が形成され、且つ、前記第6導電層が前記第6層回路の外周を全周で囲むように形成され、
前記第5導電層および前記第6導電層は、前記スルーホールにより前記第2導電層、前記第3導電層、および前記第4導電層に接続されることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項4】
前記多層基板の中心に対して一方側の第1領域には、外部接続用の端子が嵌まる複数の端子穴が基板外縁に沿って配列され、
前記第3層回路、前記第4層回路、および前記第6層回路のそれぞれにおける前記パワー系回路は、前記多層基板の中心に対して前記第1領域とは反対側の第2領域に配置され、
前記第3層では、前記ノイズガード部が前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、且つ、前記ノイズガード部の両端は、前記第1領域に形成される前記第3導電層の部分に接続され、
前記第4層では、前記ノイズガード部と重なる前記第4導電層の部分が前記第2領域の
基板外縁に沿って延びており、
前記第6層では、前記ノイズガード部と重なる前記第6導電層の部分が前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、
前記複数のスルーホールは、前記第2領域の基板外縁に沿って配列されることを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項5】
前記モータ駆動回路は、ノイズ対策用電子素子を備え、
前記ノイズ対策用電子素子は、インダクタを含み、
前記共通グランドパターンは、前記多層基板の各層において前記インダクタと重なる領域を除いた領域に形成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項6】
前記ノイズ対策用電子素子は、第1コンデンサおよび第2コンデンサを含み、
前記第1コンデンサおよび第2コンデンサは、前記インダクタが直列に接続される駆動電圧線を前記インダクタに対して電源側および前記スイッチング素子側の2箇所で前記共通グランドパターンに接続することを特徴とする請求項5に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項7】
前記ノイズ対策用電子素子は、前記第1コンデンサよりも容量が小さい第3コンデンサを含み、
前記第1コンデンサは、前記インダクタに対して前記電源側に配置され、
前記第3コンデンサは、前記第1コンデンサに対して前記電源側で前記駆動電圧線を前記共通グランドパターンに接続することを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項8】
前記ノイズ対策用電子素子は、前記第2コンデンサよりも容量が小さい第4コンデンサを含み、
前記第2コンデンサは、前記インダクタに対して前記スイッチング素子側に配置され、
前記第4コンデンサは、前記第2コンデンサに対して前記スイッチング素子側で前記駆動電圧線を前記共通グランドパターンに接続することを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項9】
前記多層基板の外縁には、前記多層基板を固定するための固定部材が配置される固定部、および、外部接続用の端子が半田付けされる端子半田付け部が設けられ、
前記多層基板の外縁において前記固定部と前記端子半田付け部との間には、コネクタピンが挿抜されるコネクタ用スルーホールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動用回路基板。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のモータ駆動用回路基板と、
前記モータ駆動用回路基板から出力される駆動電流が供給されるコイルと、を有することを特徴とするモータ。
【請求項11】
請求項10に記載のモータを備えるポンプ装置であって、
前記モータによって回転駆動されるインペラを有することを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動用回路基板、モータおよびポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動回路は、制御素子を含む信号系回路と、駆動電流を出力するスイッチング素子を含むパワー系回路とを備えている。モータの駆動回路を実装する基板において、信号系回路とパワー系回路とを1枚の基板に搭載する場合は、基板上において高密度に回路を実装することが求められる。そのため、回路を構成する配線パターンおよびグランドパターンが設けられた複数の層を絶縁層を介して積層した多層基板が用いられる。特許文献1には、この種の多層基板が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モータの駆動回路を実装する基板に対しては、EMC(Electromagnetic Compatibility;電磁両立性)が求められる。EMCとは、EMI(Electromagnetic Interference;エミッション、電磁エネルギーが放出する現象)とEMS(Electromagnetic Susceptibility;イミュニティ、外部からの電磁エネルギーによって性能低下や誤動作を起こさずに動作できる能力)との両立のことである。
【0005】
モータ駆動用回路基板のEMC対策、特に、EMI(エミッション)対策として、モータの駆動回路にコモンモードコイルを追加することが提案されている。しかしながら、新たな部品の追加によりコストアップとなってしまう。
【0006】
特許文献1では、EMI対策として、多層基板の基板端部から外部へのノイズ放射を低減させるため、基板端部を覆う導電性のシールドを形成する。シールドは、信号層、電源層、絶縁層を挟み込むように配置されたグランド層の端部を接続する。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、回路のパターンが形成される層とグランド層を完全に別の層に分けてグランド層の端部を接続するようにシールドを形成するため、多層基板の層数が増大する上、従来の製造工程にはない工程が必要となる。従って、従来の多層基板に対してコストアップとなってしまう。さらに、駆動回路には信号系回路とパワー系回路とが含まれており、ノイズ放射は大きな電流が流れるパワー系回路から多く放射されるが、特許文献1では多層基板内の信号系回路とパワー系回路の配置を考慮していない。従って、シールドの配置が効率的とはいえず、この点もコストアップ要因となっている。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、信号系回路とパワー系回路とを1枚の基板に搭載したモータ駆動用回路基板において、EMC性能の向上を図り、且つ、コストアップを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動電流を出力するスイッチング素子を備えるパワー系回路と、前記スイッチング素子に信号を供給する制御素子を備える信号系回路を
含むモータ駆動回路が多層基板に設けられたモータ駆動用回路基板において、前記多層基板では、前記パワー系回路に対するグランドパターン、および前記信号系回路に対するグランドパターンが一体の共通グランドパターンとして構成され、前記多層基板は、第1層、第2層、第3層、および第4層の順で重なる4層を含み、前記共通グランドパターンは、前記第2層に設けられた第2導電層、前記第3層に設けられた第3導電層、および前記第4層に設けられた第4導電層を含み、前記第1層には、少なくとも前記制御素子が実装され、前記第2層には、前記第2導電層が基板全域に形成され、前記第3層には、前記パワー系回路を含む第3層回路が形成され、且つ、前記第3導電層が前記第3層回路の外周を全周で囲むように形成され、前記第4層には、前記パワー系回路を含む第4層回路が形成され、且つ、前記第4導電層が前記第4層回路の外周を全周で囲むように形成され、前記第3導電層は、前記パワー系回路の外周に沿って延びるノイズガード部を備え、前記ノイズガード部は、前記パワー系回路を囲むように配列された複数のスルーホールにより前記第2導電層および前記第4導電層に接続されることを特徴とする。
【0010】
本発明では、多層基板に高密度にモータ駆動回路を実装できる。また、信号系回路およびパワー系回路に対するグランドパターンが一体化された共通グランドパターンを形成するので、広い範囲に連続して一体に共通グランドパターンを設けることができる。共通グランドパターンは、多層基板の第2層では基板全域に設けられ、第3層では第3層回路を全周で囲んでおり、第4層でも第4層回路を全周で囲む広い範囲に設けられている。従って、各層に設けた回路から外部へのノイズ放射を遮蔽できる。特に、第3層では、パワー系回路の外周を共通グランドパターン(ノイズガード部)により周方向の隙間ができないように囲んだ上、パワー系回路を囲むように配置したスルーホールによって上下の層(第2層、第4層)の共通グランドパターンに接続したので、パワー系回路からのノイズ放射を効果的に抑制できる。従って、EMC性能に優れている。また、部品を追加せずに基板上のパターンおよびスルーホールのレイアウトによりノイズ放射の抑制効果を高めているので、コストアップを抑制できる。
【0011】
本発明において、前記多層基板の中心に対して一方側の第1領域には、外部接続用の端子が嵌まる複数の端子穴が基板外縁に沿って配列され、前記第3層回路における前記パワー系回路は、前記多層基板の中心に対して前記第1領域とは反対側の第2領域に配置され、前記ノイズガード部は、前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、且つ、前記ノイズガード部の両端は、前記第1領域に形成される前記第3導電層の部分に接続され、前記複数のスルーホールは、前記第2領域の基板外縁に沿って配列されることが好ましい。このようにすると、第1領域には広い範囲に共通グランドパターンを設けることができる。また、第2領域ではパワー系回路の外周側のスペースは狭いため、幅広の共通グランドパターンを設けることはできないものの、パワー系回路を囲うように共通グランドパターンを形成でき、且つ、スルーホールにより上下の層の共通グランドパターンと接続できる。従って、外部へのノイズ放射を効果的に抑制できる。
【0012】
本発明において、前記多層基板は、前記第1層、前記第2層、前記第3層、前記第4層、第5層、および第6層の順で重なる6層を含み、前記共通グランドパターンは、前記第5層に設けられた第5導電層、および前記第6層に設けられた第6導電層を含み、前記第5層には、前記第5導電層が基板全域に形成され、前記第6層には、前記パワー系回路を含む第6層回路が形成され、且つ、前記第6導電層が前記第6層回路の外周を全周で囲むように形成され、前記第5導電層および前記第6導電層は、前記スルーホールにより前記第2導電層、前記第3導電層、および前記第4導電層に接続されることが好ましい。このようにすると、第6層に回路の配置スペースを確保できるので、パワー系回路を広い領域に設けることができる。従って、大きな駆動電流を供給できる。また、共通グランドパターンは、第5層では基板全域に設けられ、第6層では第6層回路を全周で囲んでいるので、パワー系回路から外部へのノイズ放射をグランドパターンにより効果的に遮蔽できる。
従って、EMC性能を向上させながら、コストアップを抑制できる。
【0013】
本発明において、前記多層基板の中心に対して一方側の第1領域には、外部接続用の端子が嵌まる複数の端子穴が基板外縁に沿って配列され、前記第3層回路、前記第4層回路、および前記第6層回路のそれぞれにおける前記パワー系回路は、前記多層基板の中心に対して前記第1領域とは反対側の第2領域に配置され、前記第3層では、前記ノイズガード部が前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、且つ、前記ノイズガード部の両端は、前記第1領域に形成される前記第3導電層の部分に接続され、前記第4層では、前記ノイズガード部と重なる前記第4導電層の部分が前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、前記第6層では、前記ノイズガード部と重なる前記第6導電層の部分が前記第2領域の基板外縁に沿って延びており、前記複数のスルーホールは、前記第2領域の基板外縁に沿って配列されることが好ましい。このようにすると、回路が形成される各層において、第1領域には広い範囲に共通グランドパターンを設けることができる。また、第2領域ではパワー系回路の外周側のスペースは狭いため、幅広の共通グランドパターンを設けることはできないものの、パワー系回路を囲うように共通グランドパターンを形成でき、且つ、スルーホールにより上下の層の共通グランドパターンと接続できる。従って、外部へのノイズ放射を効果的に抑制できる。
【0014】
本発明において、前記モータ駆動回路は、ノイズ対策用電子素子を備え、前記ノイズ対策用電子素子は、インダクタを含み、前記共通グランドパターンは、前記多層基板の各層において前記インダクタと重なる領域を除いた領域に形成されることが好ましい。このようにすると、インダクタと共通グランドパターンとの間に浮遊容量が発生することを抑制できる。従って、インダクタに電流が流れることによる磁力線の発生を抑制できるので、磁力線がモータ駆動回路を構成する導体を通過することによる渦電流を抑制でき、渦電流による回路動作の不具合やノイズを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記ノイズ対策用電子素子は、第1コンデンサおよび第2コンデンサを含み、前記第1コンデンサおよび第2コンデンサは、前記インダクタが直列に接続される駆動電圧線を前記インダクタに対して電源側および前記スイッチング素子側の2箇所で前記共通グランドパターンに接続することが好ましい。このようにすると、インダクタおよびその前後に配置した2個のコンデンサがπ型のローパスフィルタとして機能するので、電源側からの高周波ノイズをカットすることができる。
【0016】
本発明において、前記ノイズ対策用電子素子は、前記第1コンデンサよりも容量が小さい第3コンデンサを含み、前記第1コンデンサは、前記インダクタに対して前記電源側に配置され、前記第3コンデンサは、前記第1コンデンサに対して前記電源側で前記駆動電圧線を前記共通グランドパターンに接続することが好ましい。このようにすると、第1コンデンサよりも電源側において、第1コンデンサで低減できるノイズ(例えば、KHz級のノイズ)よりも高周波のノイズ(例えば、MHz級のノイズ)を第3コンデンサによって先に低減させることができる。一般的に、高周波ノイズを先に低減させた方がノイズ全体を低減させることができるので、このような配置により、電源側からノイズが出た場合のノイズ低減効果を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記ノイズ対策用電子素子は、前記第2コンデンサよりも容量が小さい第4コンデンサを含み、前記第2コンデンサは、前記インダクタに対して前記スイッチング素子側に配置され、前記第4コンデンサは、前記第2コンデンサに対して前記スイッチング素子側で前記駆動電圧線を前記共通グランドパターンに接続することが好ましい。このようにすると、第2コンデンサよりもスイッチング素子側において、第2コンデンサで低減できるノイズ(例えば、KHz級のノイズ)よりも高周波のノイズ(例えば、MHz級のノイズ)を第4コンデンサによって先に低減させることができる。一般的に、高周
波ノイズを先に低減させた方がノイズ全体を低減させることができるので、このような配置により、スイッチング素子側からノイズが出た場合のノイズ低減効果を高めることができる。
【0018】
本発明において、前記多層基板の外縁には、前記多層基板を固定するための固定部材が配置される固定部、および、外部接続用の端子が半田付けされる端子半田付け部が設けられ、前記多層基板の外縁において前記固定部と前記端子半田付け部との間には、コネクタピンが挿抜されるコネクタ用スルーホールが設けられていることが好ましい。このように、スルーホールをコネクタピン挿抜用の孔として使用すれば、基板の表側および裏側のどちらの面からでもコネクタを接続することができる。従って、多層基板をモータのハウジングに固定した状態で、基板にコネクタを接続してプログラムの書き込みなどを行うことができる。また、端子に半田付けされる箇所とハウジングにねじ止めされる箇所(すなわち、基板が固定される箇所)の間にコネクタ用スルーホールを設けることにより、コネクタ挿抜時に基板の変形を抑制できる。したがって、半田に加わる応力を緩和できるので、半田クラックの発生を抑制でき、導通不良を抑制できる。
【0019】
次に、本発明を適用したモータ駆動用回路基板をモータに用いる場合、モータは、上記のモータ駆動用回路基板と、前記モータ駆動用回路基板から出力される駆動電流が供給されるコイルと、を有することを特徴とする。
【0020】
次に、本発明を適用したモータをポンプ装置に用いる場合、ポンプ装置は、上記のモータによって回転駆動されるインペラを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、多層基板に高密度にモータ駆動回路を実装できる。また、信号系回路およびパワー系回路に対するグランドパターンが一体化された共通グランドパターンを形成するので、広い範囲に連続して一体に共通グランドパターンを設けることができる。共通グランドパターンは、多層基板の第2層では基板全域に設けられ、第3層では第3層回路を全周で囲んでおり、第4層でも第4層回路を全周で囲む広い範囲に設けられている。従って、各層に設けた回路から外部へのノイズ放射を遮蔽できる。特に、第3層では、パワー系回路の外周を共通グランドパターン(ノイズガード部)により周方向の隙間ができないように囲んだ上、パワー系回路を囲むように配置したスルーホールによって上下の層(第2層、第4層)の共通グランドパターンに接続したので、パワー系回路からのノイズ放射を効果的に抑制できる。従って、EMC性能に優れている。また、部品を追加せずに基板上のパターンおよびスルーホールのレイアウトによりノイズ放射の抑制効果を高めているので、コストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を適用したモータを備えるポンプ装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示すポンプ装置からカバーを外した状態を示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態1のモータ駆動用回路基板に実装されるモータ駆動回路の説明図である。
【
図5】実施形態1のモータ駆動用回路基板の平面図である。
【
図6】実施形態1のモータ駆動用回路基板に形成される共通グランドパターンの説明図である。
【
図7】実施形態2のモータ駆動用回路基板の第1面および第2面の平面図である。
【
図8】実施形態2のモータ駆動用回路基板に実装されるモータ駆動回路の説明図である。
【
図9】実施形態2のモータ駆動用回路基板に形成される共通グランドパターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明を適用したモータ駆動用回路基板、モータおよびポンプ装置の実施形態を説明する。以下の説明において、軸線方向とは、モータの回転軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転軸線Lを中心とする回転方向を意味する。また、回転軸線Lに沿う方向を軸線方向とするとき、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0024】
[実施形態1]
(ポンプ装置の全体構成)
図1は、本発明を適用したモータ10を備えるポンプ装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示すポンプ装置1の断面図である。
図1および
図2において、ポンプ装置1は、吸入管21および吐出管22を備えるケース2と、ケース2に対して軸線方向の一方側L1に配置されるモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されるインペラ25を有する。インペラ25は、モータ10によって回転軸線L周りに回転駆動される。
【0025】
図2に示すように、ポンプ室20は、ケース2とハウジング6との間に設けられている。ケース2は、ポンプ室20の軸線方向の他方側L2の壁面23、および周方向に延在する側壁29を備える。モータ10は、円筒状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されるロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する支軸5を備える。
【0026】
モータ10において、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に保持されるインシュレータ32、33と、ステータコア31にインシュレータ32、33を介して巻回されるコイル35とを有する。ステータコア31は、回転軸線Lを中心とする円環部311と、円環部311から径方向の内側へ突出する複数の突極312を備える。インシュレータ32、33は各々、ステータコア31に対して軸線方向の両側から重なり、複数の突極312の各々に被さっている。コイル35は、インシュレータ32、33を介して突極312に巻回される。モータ10は3相モータである。
【0027】
ロータ4は、軸線方向に延在する円筒部40を備えており、円筒部40の外周面には、ステータ3に径方向の内側で対向するように円筒状の磁石47が保持される。円筒部40の軸線方向の他方側L2の端部には、円板状のフランジ部45が形成され、フランジ部45には、軸線方向の他方側L2から円板26が連結される。円板26のフランジ部45と対向する面には、複数の羽根部261が等角度間隔に形成されており、円板26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。従って、フランジ部45と円板26とによって、ロータ4の円筒部40に接続されたインペラ25が構成される。
【0028】
ロータ4において、円筒部40の径方向の内側には円筒状のラジアル軸受11が保持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は、ハウジング6の底壁63に回転不能に保持される。ケース2は、ポンプ室20の径方向の中央に配置される筒部28と、筒部28を支持する支持部27とを備えており、支軸5の軸線方向の他方側L2の端部は、ケース2の筒部28にスラスト軸受12を介して支持される。
【0029】
ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側(すなわち、内周側および外周側)、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。従って、ハウジング6は、ポンプ室20の壁面の一部を構成する第1隔壁部61と、ステータ3と磁石47との間に介在する
第2隔壁部62と、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66とを備える。
【0030】
(モータ駆動用回路基板)
図3は、
図1に示すポンプ装置1からカバー18を外した状態を示す分解斜視図である。なお、
図3は、
図1および
図2に対して軸線方向を上下反転してあり、軸線方向の一方側L1を図面の上側とする。
【0031】
図2および
図3に示すように、ハウジング6の軸線方向の一方側L1の端部64には、軸線方向の一方側L1からカバー18が固定される。カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路等が設けられたモータ駆動用回路基板19が配置される。モータ駆動用回路基板19の外周縁には、直線状に切り欠いた直線部196が設けられており、直線部196の周方向の両側には、ハウジング6に対して固定される固定部となる2箇所の切り欠き197が設けられている。モータ駆動用回路基板19は、2箇所の切り欠き197(固定部)を貫通するタッピングねじからなるねじ91によってハウジング6に固定される。また、モータ駆動用回路基板19は、直線部196に対して径方向で反対側に設けられた3箇所の切り欠き199にハウジング6の突部645を嵌合させることにより周方向で位置決めされる。
【0032】
モータ駆動用回路基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の一方側L1に突出した金属製の巻線端子71が嵌った状態でハンダ付けされた複数の端子穴190が設けられている。端子穴190は、モータ駆動用回路基板19の外周縁において直線部196に対して径方向で反対側の領域に設けられている。実施形態1では、計4つの巻線端子71が4つの端子穴190から突出している。4つの巻線端子71のうち、3つの巻線端子71の各々には、直列に接続された3つのコイル35を構成する巻線の一方の端部が接続されている。残りの1つの巻線端子71は、コモン(C)の端子であり、巻線の他方の端部が電気的に接続されている。
【0033】
モータ駆動用回路基板19には、ハウジング6に保持された金属製のコネクタ端子75が嵌った状態でハンダ付けされた複数の端子穴195が設けられている。端子穴195は、モータ駆動用回路基板19の直線部196に沿って一列に並ぶ。モータ駆動用回路基板19には、モータ駆動回路150(
図4参照)を巻線端子71およびコネクタ端子75と電気的に接続する配線等が形成される。
【0034】
ハウジング6には、外周側へ突出する筒状のコネクタハウジング69が形成されており、コネクタハウジング69の内側にコネクタ端子75の端部が位置する。従って、コネクタハウジング69にコネクタを連結して信号等を供給すると、かかる信号がコネクタ端子75を介してモータ駆動回路150に入力され、モータ駆動回路150で生成された駆動電流が巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4が回転軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0035】
(モータ駆動回路)
図4は、実施形態1のモータ駆動用回路基板19に実装されるモータ駆動回路150の説明図である。
図4には、モータ駆動回路150の概略構成を示す。上記のように、モータ10は3相モータである。以下の説明において、3相のコイル35には、各相を示すU、V、Wを付して説明することがあるが、相を特定する必要がない場合、各相を示すU、V、Wを付さずに、コイル35として説明する。
【0036】
モータ駆動用回路基板19は、
図4に示すモータ駆動回路150を多層基板110(図
5、
図6参照)に実装したものである。
図4に示すように、モータ駆動回路150は、モータ10の回転をPWM信号により制御するモータ制御部161を含む信号系回路160と、モータ制御部161からの出力信号に基づいて3相のコイル35に駆動電流を供給するインバータを含むパワー系回路170と、駆動電圧をパワー系回路170に供給する駆動電圧線135と、3相のコイル35U、35V、35Wの中性点165に接続されるコモン線140とを備える。駆動電圧線135は、モータ制御部161およびパワー系回路170に定格12Vの電圧を供給する。
【0037】
また、モータ駆動回路150は、外部機器からのPWM信号をモータ制御部161に入力するための制御信号線133と、モータ10の回転数に応じた回転数信号を外部機器に伝達するためのFG出力線134とを備える。
【0038】
モータ駆動用回路基板19は、以下に説明する定電圧用端子751、第1信号端子752、第2信号端子753、およびグランド端子754からなる4つのコネクタ端子75を備える。定電圧用端子751は駆動電圧線135に電気的に接続され、第1信号端子752は制御信号線133に電気的に接続され、第2信号端子753はFG出力線134に電気的に接続される。グランド端子754は、モータ駆動用回路基板19のグランドパターン100に電気的に接続される。
【0039】
駆動電圧線135は、第1線136と第2線137に分岐し、第1線136および第2線137を介してモータ制御部161に電力を供給する。第2線137は、抵抗R32を介してモータ制御部161と電気的に接続する。駆動電圧線135とグランドパターン100との間では、コンデンサ122、123が直列に電気的に接続する。コンデンサ122、123の間には、コモン線140が電気的に接続する。コンデンサ123とグランドパターン100との間には、グランド電位が印加されるグランド端子754が電気的に接続する。
【0040】
モータ駆動回路150は、コンデンサ122、123の後段において駆動電圧線135に電気的に接続されるノイズ対策用電子素子180を複数備える。実施形態1のノイズ対策用電子素子180は、駆動電圧線135に直列に接続されるインダクタ181と、インダクタ181の前段において駆動電圧線135とグランドパターン100との間に電気的に接続されるダイオード182と、インダクタ181の前段および後段において駆動電圧線135とグランドパターン100との間に電気的に接続される複数のコンデンサを含む。実施形態1では、電解コンデンサである第1コンデンサC1および第2コンデンサC2と、第3コンデンサC3および第4コンデンサC4の4つのコンデンサを含む。ダイオード182は、サージ電圧からモータ駆動回路150内の素子を保護する。
【0041】
なお、ノイズ対策用電子素子180は、これらの素子に限定されるものではなく、他の素子を用いてもよい。例えば、フェライトビーズを用いることもできる。また、コンデンサの数および配置を変更することもできる。
【0042】
インダクタ181は、例えば、チョークコイルである。第1コンデンサC1は、インダクタ181の直前に配置される。第2コンデンサC2はインダクタ181の直後に配置される。インダクタ181、第1コンデンサC1、および第2コンデンサC2の3つの素子は、π型のローパスフィルタとして機能する。第1コンデンサC1の前段にはダイオード182が配置され、ダイオード182の前段に第3コンデンサC3が配置される。第3コンデンサC3は、第1コンデンサC1よりも容量が小さい。第4コンデンサC4は、第2コンデンサC2の後段に配置される。第4コンデンサC4は、第2コンデンサC2よりも容量が小さい。さらに、第4コンデンサC4の後段では、第1線136とグランドパターン100との間に電解コンデンサであるコンデンサ128が電気的に接続される。
【0043】
制御信号線133は、外部機器からのPWM信号をモータ制御部161に伝達する。制御信号線133には、抵抗R3が直列に電気的に接続される。制御信号線133のうち、抵抗R3とモータ制御部161との間はコンデンサ124を介してグランドパターン100に電気的に接続される。制御信号線133のうち、第1信号端子752と抵抗R3との間をコンデンサ126を介してグランドパターン100に電気的に接続する場合があり、この場合、コンデンサ126の接続位置と抵抗R3との間は、第3線138を介して第1線136に電気的に接続される。第3線138には抵抗R2が直列に電気的に接続される。
【0044】
FG出力線134は、モータ制御部161から出力されたモータ10の回転数信号を外部機器に伝達する。FG出力線134には、コンデンサ125、抵抗R1、およびNOTゲートQ7が接続されている。コンデンサ125は、FG出力線134とグランドパターン100との間に電気的に接続される。抵抗R1は、コンデンサ125の接続位置とモータ制御部161との間において、FG出力線134に直列に電気的に接続される。NOTゲートQ7は、抵抗R1とモータ制御部161との間において、FG出力線134に直列に電気的に接続される。
【0045】
モータ制御部161は、モータ駆動用回路基板19に実装されたICチップ等の制御素子からなる。モータ制御部161は、外部機器から入力されるPWM信号に基づいて、パワー系回路170を制御するための出力信号を出力する。また、モータ制御部161は、ロータ4の回転数に応じた回転数信号を外部機器に出力する。外部機器は、回転数信号に基づいて、モータ10を所望の回転数にするために、PWM信号をモータ制御部161に出力する。
【0046】
パワー系回路170は、U相のコイル用のスイッチング素子Q1、Q2と、V相のコイル用のスイッチング素子Q3、Q4と、W相のコイル用のスイッチング素子Q5、Q6とを備える。スイッチング素子Q1~Q6には、例えば、MOS型FETが使用される。スイッチング素子Q1、Q3、Q5のドレインは、駆動電圧線135と接続し、スイッチング素子Q2、Q4、Q6のソースは、シャント抵抗Rsを介してグランドパターン100と接続する。シャント抵抗Rsの両端は、出力線131、132を介してモータ制御部161に接続される。出力線131、132には、抵抗R33、R34が直列に電気的に接続される。
【0047】
スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとにはコンデンサ151が接続され、スイッチング素子Q3のソースとスイッチング素子Q4のドレインとにはコンデンサ152が接続され、スイッチング素子Q5のソースとスイッチング素子Q6のドレインとにはコンデンサ153が接続される。コンデンサ151~153は、ブートストラップ回路の充放電用コンデンサとなる。コンデンサ151~153とモータ制御部161との間には、ブートストラップ用のダイオードD31~D33がそれぞれ接続される。ダイオードD31~D33は、抵抗R31を介して、モータ制御部161と接続する。
【0048】
各スイッチング素子Q1~Q6のゲートとソースとの間には、抵抗R11~R16がそれぞれ接続されている。各スイッチング素子Q1~Q6のゲートとモータ制御部161との間には、抵抗R21~R26がそれぞれ接続されている。各スイッチング素子Q1~Q6のドレインとソースとの間には、フィルタ141~146がそれぞれ接続されている。フィルタ141~146は、直列接続された抵抗とコンデンサとから構成される。
【0049】
かかるパワー系回路170において、スイッチング素子Q1~Q6は、モータ制御部1
61が出力した出力信号に基づいてスイッチングし、3相交流の駆動電流をコイル35に供給する。
【0050】
(多層基板)
図5は、実施形態1のモータ駆動用回路基板19の平面図である。
図6は、実施形態1のモータ駆動用回路基板19に形成される共通グランドパターン100cの説明図である。モータ駆動用回路基板19は、複数の層を有する多層基板110である。多層基板110では、基板本体に積層された複数の絶縁層によって、配線や電極等の導電層が配置される複数の層が構成され、異なる層に形成された導電層は、絶縁層を貫通するコンタクトホールによって電気的に接続される。配線や電極等の導電層は銅層からなる。
【0051】
図5に示すように、多層基板110の中心Oに対して一方側の第1領域101には、コネクタ端子75が嵌る複数の端子穴195が設けられている。複数の端子穴195は、基板外縁の直線部196に沿って一列に配列される。複数の端子穴195は、コネクタ端子75のうち、
図4に示す定電圧用端子751、第1信号端子752、第2信号端子753、およびグランド端子754が各々嵌る第1端子穴191、第2端子穴192、第3端子穴193、および第4端子穴194を含む。従って、複数の端子穴195のうち、両端に位置する2つ(第1端子穴191および第4端子穴194)は定電圧に対応する。定電圧に対応する第1端子穴191および第4端子穴194から延在する配線は、シールド配線として利用することができる。
【0052】
図5に示すように、多層基板110の中心Oに対して第1領域101とは反対側の第2領域102には、スイッチング素子Q1~Q6が実装される。第1領域101、中心O、および第2領域102を通って直線的に延在する仮想線Pに対して交差する方向の両側に位置する2つの領域を第3領域103および第4領域104とするとき、中心Oに対して第3領域103の側の位置には、モータ制御部161が配置される。また、第4領域104にはインダクタ181が配置される。インダクタ181は、定電圧に対応する端子穴195(第1端子穴191、または第4端子穴194)の近くに配置することによって、EMC性能を特に向上することができる。
【0053】
ここで、
図4に示すように、モータ制御部161を含む回路を比較的低電圧の信号系回路160とし、駆動電流を出力するスイッチング素子Q1~Q6を含む回路を比較的高電圧のパワー系回路170としたとき、
図6に示すように、グランドパターン100には、信号系回路160およびパワー系回路170の双方に電気的に接続する共通グランドパターン100cが含まれている。共通グランドパターン100cは、信号系回路160のグランドパターン100としての機能と、パワー系回路170に対するグランドパターン100としての機能の双方を担っている。
【0054】
多層基板110は、
図6に示す第1層111、第2層112、第3層113、第4層114の4つの層を備える。多層基板110の4つの層のうち、最も上層側の第1層111には、
図4に示すモータ駆動回路150を構成する電気素子が実装されるランド等(図示せず)が形成される。第1層111、第2層112、第3層113、第4層114には、それぞれ、共通グランドパターン100cとして機能する導電層が形成される。共通グランドパターン100cは、第1層111に形成される第1導電層G1、第2層112に形成される第2導電層G2、第3層113に形成される第3導電層G3、第4層114に形成される第4導電層G4を含む。
図6では、これらの導電層が形成される領域をハッチングを付した領域として表示する。
【0055】
図4に示すモータ駆動回路150は、
図6に示すように、第1層111に設けられた第1層回路111C、第3層に設けられた第3層回路113C、および第4層に設けられた
第4層回路114Cを含む。ここで、
図6に示す各層の回路および導電層の形状は、回路を構成する電気素子や配線、導電層などのおおよその配置領域を示すものであって、細かな配線やコンタクトホールなどは図示を省略している。例えば、第1層回路111Cから基板外縁の端子穴195まで延びる配線の配置領域は図示を省略している。導電層はコンタクトホールの周りや配線の周りには形成されない。
【0056】
第1層回路111C、第3層回路113C、および第4層回路114Cは、それぞれ、信号系回路160の一部、および、パワー系回路170の一部を含む。
図6に示すように、第1層回路111Cは、基板中央領域を中心に配置される信号系回路160、および、第2領域102を中心として第3領域103および第4領域104まで拡がる領域に配置されるパワー系回路170を含む。第1導電層G1は第1領域101を中心に形成され、第3領域103および第4領域104の一部に拡がる。
【0057】
第2層112では、第2導電層G2が基板全域に形成されており、基板外縁まで第2導電層G2が広がる。第3層113では、第3層回路113Cの外周を全周で囲むように第3導電層G3が形成される。また、第4層114においても、第4層回路114Cの外周を全周で囲むように第4導電層G4が形成される。
【0058】
図6に示すように、第3層回路113Cは、基板中央領域に配置される信号系回路160、および、第2領域102を中心として第3領域103および第4領域104まで拡がる領域に配置されるパワー系回路170を含む。パワー系回路170は基板外縁の近くまで拡がっており、巻線端子71が半田付けされる4箇所の端子穴190の位置まで拡がる。第3導電層G3は、第1領域101、第3領域103、および第4領域104の側から第3層回路113Cを囲むように形成される第3導電層本体G31と、第2領域102の基板外縁に沿ってパワー系回路170の外周を囲むように延びるノイズガード部G32を備える。ノイズガード部G32は円弧状に延びており、周方向の両端は、第3領域103および第4領域104まで延びて第3導電層本体G31に繋がる。
【0059】
第4層回路114Cは、基板中央領域に配置される信号系回路160、および、第2領域102に配置されるパワー系回路170を含む。第4層回路114Cの配置領域は、全体として第3層回路113Cの配置領域よりも狭い。第4導電層G4は、第2領域102の基板外縁に沿って延びて第3導電層G3のノイズガード部G32と重なる部分を含む。
【0060】
なお、第3層回路113Cおよび第4層回路114Cの一方もしくは両方は、信号系回路160を含まず、パワー系回路170を含む構成することもできる。
【0061】
共通グランドパターン100cは、多層基板110の各層において、第1層111に実装されたインダクタ181と重なる部分には形成されない。
図6に示すように、第2導電層G2、第3導電層G3、および第4導電層G4の各層は、インダクタ181と重なる部分をくりぬいた形状をしている。
【0062】
図5、
図6に示すように、多層基板110には、第2領域102の基板外縁に沿って配列される複数のスルーホールH1が設けられている。また、多層基板110には、第3領域103に配置される切り欠き197(ハウジング6に対する固定部)と端子穴195との間において基板外縁に沿って配列される複数のコネクタ用スルーホールH2が設けられている。第2領域102の基板外縁に設けられたスルーホールH1は、第3層回路113Cのパワー系回路170の外周を囲むように配置される。スルーホールH1は、第3導電層G3のノイズガード部G32の領域内に形成されている。ノイズガード部G32と第2導電層G2および第4導電層G4は、スルーホールH1によって電気的に接続されている。
【0063】
実施形態1では、パワー系回路170の多くを、広範囲に共通グランドパターン100cが設けられた2層(第2層112および第4層114)の間の層(第3層113)に集約させている。そのため、第3層回路113Cではパワー系回路170の配置領域を基板外縁の近くまで拡げることにより、パワー系回路170の配置面積を確保している。その結果、ノイズガード部G32を形成するスペースが狭くなっている。ノイズガード部G32は、最も細い部分のパターン幅が0.5mm程度である。ノイズガード部G32に配置されるスルーホールH1の内径は、0.3mm程度であるから、ノイズガード部G32のパターン幅は、スルーホールH1の内径よりも大きい。ノイズガード部G32が細くても、第3層113のパワー系回路170の外周を連続して囲い、且つ、スルーホールH1によって上下の層の共通グランドパターン100c(第2導電層G2、第4導電層G4)と繋げたことにより、第3層113に集約したパワー系回路170から基板外部へのノイズ放射を低減させることができる。
【0064】
(実施形態1の主な効果)
以上説明したように、実施形態1のポンプ装置1は、モータ10と、モータ10によって回転駆動されるインペラ25を備える。モータ10は、駆動電流を出力するスイッチング素子Q1~Q6を備えるパワー系回路170と、スイッチング素子Q1~Q6に制御信号を供給するモータ制御部161(制御素子)を備える信号系回路160を含むモータ駆動回路150が多層基板110に設けられたモータ駆動用回路基板19を備える。多層基板110では、パワー系回路170に対するグランドパターン100、および信号系回路160に対するグランドパターン100が一体の共通グランドパターン100cとして構成される。多層基板110は、第1層111、第2層112、第3層113、および第4層114の順で重なる4層を含む。共通グランドパターン100cは、第2層112に設けられた第2導電層G2、第3層113に設けられた第3導電層G3、および第4層114に設けられた第4導電層G4を含む。第1層111には、モータ制御部161およびスイッチング素子Q1~Q6が実装される。第2層112には、第2導電層G2が基板全域に形成される。第3層113には、パワー系回路170を含む第3層回路113Cが形成され、且つ、第3導電層G3が第3層回路113Cの外周を全周で囲むように形成される。第4層114には、パワー系回路170を含む第4層回路114Cが形成され、且つ、第4導電層G4が第4層回路114Cの外周を全周で囲むように形成される。第3導電層G3は、パワー系回路170の外周に沿って延びるノイズガード部G32を備える。ノイズガード部G32は、パワー系回路170を囲むように配列された複数のスルーホールH1により第2導電層G2および第4導電層G4に接続される。
【0065】
実施形態1では、モータ駆動用回路基板19として多層基板110を用いるので、高密度にモータ駆動回路150を実装できる。また、広い範囲に連続して一体に共通グランドパターン100cを設けることができる。共通グランドパターン100cは、多層基板110の第2層112では基板全域に設けられ、第3層113では第3層回路113Cを全周で囲んでおり、第4層114でも第4層回路114Cを全周で囲む広い範囲に設けられている。従って、各層に設けたパワー系回路170から外部へのノイズ放射を遮蔽できる。特に、第3層113では、パワー系回路170の外周をノイズガード部G32により周方向の隙間ができないように囲んだ上、パワー系回路170を囲むように配置したスルーホールH1によって上下の層(第2層112、第4層114)の共通グランドパターン100cに接続するため、パワー系回路170からのノイズ放射を効果的に抑制できる。従って、EMC性能に優れている。また、部品を追加せずに基板上のパターンおよびスルーホールH1のレイアウトによりノイズ放射の抑制効果を高めているので、コストアップを抑制することができる。
【0066】
実施形態1では、多層基板110の中心に対して一方側の第1領域101には、複数の
端子穴195が基板外縁に沿って配列される。第3層113のパワー系回路170は、多層基板110の中心に対して第1領域101とは反対側の第2領域102に配置される。ノイズガード部G32は、第2領域102において基板外縁に沿って延びており、ノイズガード部G32の両端は、第1領域101に形成される第3導電層G3の部分(第3導電層本体G31)に接続される。複数のスルーホールH1は、第2領域102の基板外縁に沿って配列される。
【0067】
このようなパターン配置により、実施形態1では、第3層113の第1領域101には広い範囲に共通グランドパターン100c(第3導電層本体G31)を設けることができ、第2領域102には広い範囲にパワー系回路170を設けることができる。第2領域102において広い範囲にパワー系回路170を設ける場合(例えば、第3層113にパワー系回路170を集約する場合)には、パワー系回路170の外周側のスペースは狭くなるため、ノイズガード部G32を幅広にはできないものの、実施形態1では、パワー系回路170を全周で囲うようにノイズガード部G32を形成し、且つ、スルーホールH1により上下の層の共通グランドパターン100cと接続するので、外部へのノイズ放射を抑制することができる。
【0068】
実施形態1では、モータ駆動回路150は、共通グランドパターン100cに加えて、ノイズ対策用電子素子180を備えているため、EMC性能に優れている。ノイズ対策用電子素子180はインダクタ181を含み、共通グランドパターン100cは、多層基板110の各層においてインダクタ181と重なる領域を除いた領域に形成される。このように、インダクタ181と共通グランドパターン100cとが対向しないパターン配置とすることにより、インダクタ181と共通グランドパターン100cとの間に浮遊容量が発生することを抑制できる。従って、インダクタ181に電流が流れることによる磁力線の発生を抑制できるので、磁力線がモータ駆動回路150を構成する導体を通過することによる渦電流を抑制でき、渦電流による回路動作の不具合やノイズを抑制できる。
【0069】
実施形態1では、ノイズ対策用電子素子180は、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2を含む。第1コンデンサC1および第2コンデンサC2は、インダクタ181が直列に接続される駆動電圧線135をインダクタ181に対して電源側およびスイッチング素子Q1~Q6側の2箇所で共通グランドパターン100cに接続する。これにより、インダクタ181およびその前後に配置した2個のコンデンサは、π型のローパスフィルタとして機能するので、電源側からの高周波ノイズをカットすることができる。
【0070】
実施形態1では、ノイズ対策用電子素子180は、第1コンデンサC1よりも容量が小さい第3コンデンサC3を含む。第1コンデンサC1は、インダクタ181に対して電源側に配置され、第3コンデンサC3は、第1コンデンサC1に対して電源側で駆動電圧線135を共通グランドパターン100cに接続する。言い換えると、駆動電圧線135に接続するコンデンサの容量を、電源側からインダクタ181の側に向かって容量が大きくなる並び順としている。これにより、第1コンデンサC1よりも電源側において、第1コンデンサC1で低減できるノイズ(例えば、KHz級のノイズ)よりも高周波のノイズ(例えば、MHz級のノイズ)を第3コンデンサC3によって先に低減させることができる。一般的に、高周波ノイズを先に低減させた方がノイズ全体を低減させることができるので、このような並び順により、電源側からノイズが出る場合のノイズ低減効果を高めることができる。
【0071】
実施形態1では、ノイズ対策用電子素子180は、第2コンデンサC2よりも容量が小さい第4コンデンサC4を含む。第2コンデンサC2は、インダクタ181に対してスイッチング素子Q1~Q6側に配置され、第4コンデンサC4は、第2コンデンサC2に対してスイッチング素子Q1~Q6側で駆動電圧線135を共通グランドパターン100cに接続する。言い換えると、駆動電圧線135に接続するコンデンサの容量を、スイッチ
ング素子側からインダクタ181の側に向かって容量が大きくなる並び順としている。これにより、第2コンデンサC2よりもスイッチング素子Q1~Q6側において、第2コンデンサC2で低減できるノイズ(例えば、KHz級のノイズ)よりも高周波のノイズ(例えば、MHz級のノイズ)を第4コンデンサC4によって先に低減させることができる。一般的に、高周波ノイズを先に低減させた方がノイズ全体を低減させることができるので、このような配置により、スイッチング素子Q1~Q6側からノイズが出た場合のノイズ低減効果を高めることができる。
【0072】
実施形態1では、多層基板110の外縁には、多層基板110を固定するための固定部材(例えば、ねじ)が配置される固定部である切り欠き197、および、外部接続用の端子が半田付けされる端子半田付け部である端子穴195が設けられている。多層基板110の外縁においてねじ固定部である切り欠き197と端子半田付け部(端子穴195)との間には、コネクタピンが挿抜されるコネクタ用スルーホールH2が設けられている。このように、スルーホールH1をコネクタピン挿抜用の孔として使用すれば、多層基板110の表側および裏側のどちらの面からでもコネクタを接続することができる。従って、モータ駆動用回路基板19(多層基板110)を
図3に示すようにモータ10のハウジング6に固定した状態で、ハウジング6からモータ駆動用回路基板19を取り外すことなく、コネクタ用スルーホールH2にコネクタを接続してプログラムの書き込みなどを行うことができる。また、モータ駆動用回路基板19の端子半田付け部(端子穴195)とねじ固定部(切り欠き197)との間にコネクタ用スルーホールH2を設けることにより、コネクタ挿抜時にモータ駆動用回路基板19に加わる応力を緩和できる。したがって、応力による半田クラックの発生を抑制でき、導通不良を抑制できる。なお、モータ駆動用回路基板19をハウジング6に固定する固定部は、切り欠き形状でなく貫通穴であってもよい。また、固定部材は、ねじ以外の部材でもよい。例えば、ハウジングに一体に形成したフックやかしめ部であってもよい。
【0073】
[実施形態2]
図7は、実施形態2のモータ駆動用回路基板19Aの第1面S1および第2面S2の平面図である。
図8は、実施形態2のモータ駆動用回路基板19Aに実装されるモータ駆動回路150の説明図である。
図9は、実施形態2のモータ駆動用回路基板19Aに形成される共通グランドパターン100cの説明図である。なお、実施形態2の基本的な構成は、実施形態1と同様であるため、共通する部分には、同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0074】
実施形態1のモータ駆動用回路基板19は、多層の片面基板であったが、実施形態2のモータ駆動用回路基板19Aは、両面実装基板である。
図7(a)に示すように、モータ駆動用回路基板19Aの第1面S1には、第3領域103の側にインダクタ181が実装され、中心Oに対して第1領域101の側で且つ第4領域104の側の位置にモータ制御部161が実装される。
図7(b)に示すように、モータ駆動用回路基板19Aにおいて第1面S1とは反対側の第2面S2には、第2領域102にスイッチング素子Q1~Q6が実装される。
【0075】
図8に示すように、実施形態2のモータ駆動回路150Aは、ノイズ対策用電子素子180として、第1コンデンサC1~第4コンデンサC4に加えて、電解コンデンサである第5コンデンサC5を備えている点が実施形態1と異なる。第5コンデンサC5は、第2コンデンサC2と第4コンデンサC4との間に配置される。第2コンデンサC2、第5コンデンサC5、第4コンデンサC4は、スイッチング素子側からインダクタ181の側に向かって容量が大きくなる並び順である。
【0076】
図9に示すように、モータ駆動用回路基板19Aは多層基板110Aであり、第1層1
11、第2層112、第3層113、第4層114、第5層115、第6層116の順で重なる6層を備える。各層には、共通グランドパターン100cとして機能する導電層が形成される。共通グランドパターン100cは、第1層111に形成される第1導電層G1、第2層112に形成される第2導電層G2、第3層113に形成される第3導電層G3、第4層114に形成される第4導電層G4、第5層115に形成される第5導電層G5、および第6層116に形成される第6導電層G6を含む。
図9では、これらの導電層が形成される領域をハッチングを付した領域として表示する。
【0077】
モータ駆動回路150Aは、第1層111に設けられた第1層回路111C、第3層に設けられた第3層回路113C、第4層に設けられた第4層回路114C、および第6層に形成された第6層回路116Cを含む。
【0078】
実施形態2では、第1層回路111Cおよび第6層回路116Cは、それぞれ、信号系回路160の一部、および、パワー系回路170の一部を含む。一方、第3層回路113Cおよび第4層回路114Cは、信号系回路160を含まず、パワー系回路170の一部を含む。パワー系回路170は、各層において、主に第2領域102に配置される。
【0079】
共通グランドパターン100cは、実施形態1と同様に、第1層111に実装されたインダクタ181と重なる部分には形成されない。
図9に示すように、第2導電層G2、第3導電層G3、第4導電層G4、第5導電層G5、および第6導電層G6の各層は、インダクタ181と重なる部分をくりぬいた形状をしている。
【0080】
図9に示すように、第1導電層G1は、第1領域101、第4領域104、および第2領域102の基板外縁に沿って形成されている。第2領域102の基板外縁に沿って延びる部分は、パワー系回路170の外周を囲むノイズガード部G12である。第2層112および第5層115では、第2導電層G2および第5導電層G5がそれぞれ基板全域に形成される。
【0081】
第3層113および第4層114では、それぞれ、第3層回路113Cおよび第4層回路114Cを構成するパワー系回路170の外周を全周で囲むように第3導電層G3および第4導電層G4が形成される。第3導電層G3は、パワー系回路170に対して第1領域101の側、第3領域103の側、および第4領域104の側に配置される第3導電層本体G31と、第2領域102の基板外縁に沿ってパワー系回路170の外周を囲むように延びるノイズガード部G32を備える。第4導電層G4は、第3導電層G3のノイズガード部G32と重なるノイズガード部G42を備える。ノイズガード部G42は、第4層114における第2領域102の基板外縁に沿ってパワー系回路170の外周を囲むように延びている。
【0082】
実施形態2の多層基板110Aには、第2領域102の基板外縁に沿って配列される複数のスルーホールH1が設けられている。第3層113のノイズガード部G32および第4層114のノイズガード部G42は、スルーホールH1によって電気的に接続される。また、ノイズガード部G32はスルーホールH1によって第2導電層G2に電気的に接続されるとともに、ノイズガード部G42は第5導電層G5と電気的に接続される。実施形態2の多層基板110Aでは、スルーホールH1は、第1層111、第2層112、第3層113、第4層114、第5層115、第6層116の各層において共通グランドパターン100cが形成された領域を貫通する。
【0083】
(実施形態2の主な作用効果)
以上説明したように、実施形態2では、多層基板110Aは、第1層111、第2層112、第3層113、第4層114、第5層115、および第6層116の順で重なる6
層を含む。共通グランドパターン100cは、実施形態1と同様に第1導電層G1、第2導電層G2、第3導電層G3、第4導電層を含み、さらに、第5層115に設けられた第5導電層G5、および第6層116に設けられた第6導電層G6を含む。第5層115には、第5導電層G5が基板全域に形成される。第6層116には、パワー系回路170を含む第6層回路116Cが形成され、且つ、第6導電層G6が第6層回路116Cの外周を囲むように形成される。第5導電層G5および第6導電層G6は、スルーホールH1により第2導電層G2、第3導電層G3、および第4導電層G4に接続される。
【0084】
このように、実施形態2の多層基板110Aは、実施形態1よりも層数が多く、第6層116に回路の配置スペースを確保できる。従って、高密度にモータ駆動回路150Aを実装でき、パワー系回路170を広い領域に設けることができるので、大きな駆動電流を供給できる。また、共通グランドパターン100cは、第5層115では基板全域に設けられ、第4層114および第6層116ではパワー系回路170を全周で囲んでいるので、パワー系回路170から外部へのノイズ放射を効果的に遮蔽できる。従って、EMC性能を向上させながら、コストアップを抑制できる。
【0085】
実施形態2では、第3層回路113C、第4層回路114C、および第6層回路116Cのそれぞれに含まれるパワー系回路170は、多層基板110の第2領域102に配置される。第3層113では、実施形態1と同様に、第2領域102の基板外縁に沿ってノイズガード部G32が延びており、且つ、ノイズガード部G32の両端は、第1領域101に形成される第3導電層G3の部分(第3導電層本体G31)に接続されている。第4層114および第6層116では、ノイズガード部G32と重なる位置において第4導電層G4のノイズガード部G42、および第6導電層G6のノイズガード部G62が第2領域102の基板外縁に沿って延びている。また、第2領域102の基板外縁に沿って配列される複数のスルーホールH1が設けられている。
【0086】
このようなパターン配置により、モータ駆動回路150Aが形成される各層(第1層111、第3層113、第4層114、第6層116)において、第1領域101には広い範囲に共通グランドパターン100cを設けることができる。また、第2領域102ではパワー系回路170の外周側のスペースは狭いため、幅広の共通グランドパターン100cを設けることはできないものの、パワー系回路170を全周で囲うように共通グランドパターン100cを形成し、且つ、スルーホールH1により上下の層の共通グランドパターン100cと接続している。従って、外部へのノイズ放射を効果的に抑制できる。
【0087】
[他の実施形態]
上記各実施形態では、ポンプ装置1に用いるモータ10を例示したが、他の機器に搭載されるモータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19、19A…モータ駆動用回路基板、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…壁面、25…インペラ、26…円板、27…支持部、28…筒部、29…側壁、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…円筒部、45…フランジ部、47…磁石、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…端部、66…胴部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、75…コネクタ端子、100…グランドパターン、100c…共通グランドパターン、101…第1領域、102…第2領域、103…第3領域、104…第4領域、110、110A…多層基板、111…第1層、111C…第1層回路、112…第2層、113…第3層、113C…第3層回路、114…第4層、114C…第4層回路、115…第5層、116…第
6層、116C…第6層回路、122~126、128…コンデンサ、131、132…出力線、133…制御信号線、134…FG出力線、135…駆動電圧線、136…第1線、137…第2線、138…第3線、140…コモン線、141~146…フィルタ、150、150A…モータ駆動回路、151~153…コンデンサ、160…信号系回路、161…モータ制御部、165…中性点、170…パワー系回路、180…ノイズ対策用電子素子、181…インダクタ、182…ダイオード、190…端子穴、191…第1端子穴、192…第2端子穴、193…第3端子穴、194…第4端子穴、195…端子穴、196…直線部、197…切り欠き(ねじ固定部)、199…切り欠き、261…羽根部、311…円環部、312…突極、645…突部、751…定電圧用端子、752…第1信号端子、753…第2信号端子、754…グランド端子、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ、C3…第3コンデンサ、C4…第4コンデンサ、C5…第5コンデンサ、D31~D33…ダイオード、G1…第1導電層、G12…ノイズガード部、G2…第2導電層、G3…第3導電層、G31…第3導電層本体、G32…ノイズガード部、G4…第4導電層、G42…ノイズガード部、G5…第5導電層、G6…第6導電層、G62…ノイズガード部、H1…スルーホール、H2…コネクタ用スルーホール、L…回転軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、O…多層基板の中心、P…仮想線、Q1~Q6…スイッチング素子、Q7…NOTゲート、R1、R2、R3…抵抗、R11~R16、R21~R26、R31~R34…抵抗、Rs…シャント抵抗、S1…第1面、S2…第2面