IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ポンプ装置 図1
  • 特開-ポンプ装置 図2
  • 特開-ポンプ装置 図3
  • 特開-ポンプ装置 図4
  • 特開-ポンプ装置 図5
  • 特開-ポンプ装置 図6
  • 特開-ポンプ装置 図7
  • 特開-ポンプ装置 図8
  • 特開-ポンプ装置 図9
  • 特開-ポンプ装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051754
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20240404BHJP
   F04D 29/30 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F04D13/06 D
F04D29/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158070
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 道明
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA22C
3H130CB01
3H130CB11
3H130DD04Z
3H130EA02C
3H130EB01C
3H130ED01C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】ポンプ装置のインペラを構成するフランジ部と羽根車の溶着強度を確保する。
【解決手段】ポンプ装置1のインペラ25は、ロータ部材40のフランジ部45に固定される羽根車24を備える。羽根車24は、フランジ部45に軸線方向で対向する円板部26から突出する複数の羽根部261を備える。複数の羽根部261のそれぞれの先端には、フランジ部45に設けられた固定溝44に挿入されるリブ263が設けられている。リブ263は、径方向の内側の端部を含む内周部分266の先端と固定溝44の底面との間に軸線方向の隙間が設けられ、径方向の外側の端部を含む外周部分267の軸線方向の他方側L2の先端には、固定溝44に溶着された溶着部Wが設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを備えるモータと、
前記ロータの回転軸線に沿う方向を軸線方向とするとき、前記ステータに対して前記軸線方向の一方側に設けられたポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、
前記ロータは、筒状のマグネット保持部を備えるロータ部材と、前記マグネット保持部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、
前記インペラは、前記ロータ部材の前記軸線方向の一方側の端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部に前記軸線方向の一方側から固定される羽根車と、を備え、
前記羽根車は、前記フランジ部に前記軸線方向で対向する円板部と、前記円板部から前記軸線方向の他方側へ突出する複数の羽根部と、を備え、
前記複数の羽根部は、前記回転軸線を中心とする周方向の複数位置において径方向の外側へ延びており、
前記複数の羽根部のそれぞれにおける前記軸線方向の他方側の先端には、前記フランジ部に設けられた固定溝に挿入されるリブが設けられ、
前記リブは、前記径方向の内側の端部を含む内周部分と、前記径方向の外側の端部を含む外周部分と、を備え、
前記内周部分の前記軸線方向の他方側の先端と前記固定溝の底面との間に前記軸線方向の隙間が設けられ、
前記外周部分の前記軸線方向の他方側の先端には、前記固定溝に溶着された溶着部が設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記溶着部は、前記外周部分の先端面から突出する溶着用凸部が潰された潰し部であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記複数の羽根部のそれぞれは、前記円板部から前記軸線方向の他方側へ突出する羽根部本体を備え、前記羽根部本体の板厚は、前記固定溝の幅よりも大きく、
前記羽根部本体の先端面から突出する前記リブの幅は、前記固定溝の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記リブは、前記内周部分と前記外周部分とを接続する中間部分を備え、
前記中間部分は、前記固定溝の底面に当接する基準面を備えることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記内周部分の先端面は、前記基準面に対して前記軸線方向の一方側に凹んだ段差面であることを特徴とする請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記リブは、前記内周部分と前記外周部分とを接続する中間部分を備え、
前記複数の羽根部のうちの少なくとも一部において、
前記中間部分は、前記軸線方向の他方側に突出する位置決め凸部を備え、
前記位置決め凸部は、前記固定溝の底面に設けられた位置決め凹部に嵌合することを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラをモータによって回転させるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させるポンプ装置が記載される。モータは、インペラと一体に回転するロータを備える。ロータは、固定軸が通された軸受(ラジアル軸受)を保持する樹脂製の保持部材を備える。保持部材は、鍔付きの円筒状であり、軸受は、保持部材の内側に圧入される。
【0003】
特許文献1のポンプ装置では、保持部材の上端に設けられた鍔部(フランジ部)に羽根車を固定することにより、ロータと一体に回転するインペラが構成される。羽根車は、鍔部と軸線方向で対向する円板部と、円板部から鍔部の側に突出する羽根部を備えており、羽根部の先端が鍔部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-159206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジアル軸受を保持する保持部材に設けられたフランジ部に羽根車を固定してインペラを形成する構造において、フランジ部に溝を形成しておき、羽根部の先端を溝に挿入して溶着により固定する固定構造が提案されている。
【0006】
しかしながら、樹脂によりロータの保持部材を成形する場合には、成形後のフランジ部が傘状に反ってしまう。傘状に変形したフランジ部の溝に羽根部の先端を挿入して固定しようとすると、インペラの内周部分ではフランジ部と羽根部とが過干渉となってしまう一方、インペラの外周部分ではフランジ部と羽根部との間に隙間ができてしまったり、溶着量が不足してしまう。インペラの外周部は高い流体圧を受けるため、溶着量が不足すると強度不足となり、駆動中に溶着部が剥がれるおそれがある。
【0007】
以上に鑑みて、本発明の課題は、樹脂製のフランジ部に羽根車を固定したインペラを備えるポンプ装置において、インペラの外周部においてフランジ部と羽根車との溶着強度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のポンプ装置は、ロータおよびステータを備えるモータと、前記ロータの回転軸線に沿う方向を軸線方向とするとき、前記ステータに対して前記軸線方向の一方側に設けられたポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、前記ロータは、筒状のマグネット保持部を備えるロータ部材と、前記マグネット保持部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、前記インペラは、前記ロータ部材の前記軸線方向の一方側の端部に設けられたフランジ部と、前記フランジ部に前記軸線方向の一方側から固定される羽根車と、を備え、前記羽根車は、前記フランジ部に前記軸線方向で対向する円板部と、前記円板部から前記軸線方向の他方側へ突出する複数の羽根部と、を備え、前記複数の羽根部は、前記回転軸線を中心とする周方向の複数位置において径方向の外側へ延びており、前記複数の羽根部のそれぞれにおける前記軸線方向の他方側の先端には、前記フランジ部に設けられた固定溝に挿入されるリブが設けら
れ、前記リブは、前記径方向の内側の端部を含む内周部分と、前記径方向の外側の端部を含む外周部分と、を備え、前記内周部分の前記軸線方向の他方側の先端と前記固定溝の底面との間に前記軸線方向の隙間が設けられ、前記外周部分の前記軸線方向の他方側の先端には、前記固定溝に溶着された溶着部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ロータ部材の端部に設けられたフランジ部に固定されてインペラを形成する羽根車は、円板部から突出する羽根部を備えており、羽根部の先端には、フランジ部に設けられた固定溝に挿入されるリブが設けられている。このように、固定溝にリブを挿入することで、水圧による羽根部の変形を抑制できる。また、羽根部の先端とフランジ部との間を流体が通過することにより効率が落ちることを抑制できる。さらに、固定溝に挿入されるリブは、外周部分が固定溝に溶着される一方、内周部分は固定溝の底面との間に隙間ができる形状である。このようにすると、フランジ部が設計どおりの形状にならずに傘状に反った場合でも、リブの内周部分が固定溝の底面に過剰に干渉するおそれが少ないので、過干渉になった箇所で多くの溶着バリが発生して固定溝からはみ出すおそれが少ない。また、リブの内周部分が過干渉になった結果、リブの外周部分の固定溝への挿入量が不足して未溶着になったり溶着強度が不足するおそれが少ない。インペラの外周部分は高い流体圧を受けるため、溶着強度が不足すると羽根部がフランジ部から剥がれる恐れがあるが、本形態では、羽根部の外周部分の溶着強度を確保できるので、高い水圧を受けても溶着箇所が剥がれるおそれが少ない。
【0010】
本発明において、前記溶着部は、前記外周部分の先端面から突出する溶着用凸部が潰された潰し部であることが好ましい。このように、外周部分に溶着用凸部を設けることにより、外周部分の溶着量が不足することを回避できる。また、内周部分には溶着用凸部を設けないことにより、内周部分が過干渉になることを回避できる。
【0011】
本発明において、前記複数の羽根部のそれぞれは、前記円板部から前記軸線方向の他方側へ突出する羽根部本体を備え、前記羽根部本体の板厚は、前記固定溝の幅よりも大きく、前記羽根部本体の先端面から突出する前記リブの幅は、前記固定溝の幅よりも小さいことが好ましい。このようにすると、水圧を受ける部分(羽根部本体)の剛性を高めることができる。また、固定溝とリブの間に溶着バリを収容する隙間を確保できる。
【0012】
本発明において、前記リブは、前記内周部分と前記外周部分とを接続する中間部分を備え、前記中間部分は、前記固定溝の底面に当接する基準面を備えることが好ましい。このように、径方向の中間部分に軸線方向の位置決めの基準面を設ければ、フランジ部が設計どおりの形状にならずに傘状に反ってしまった場合でも、内周部分が過干渉になりにくく、外周部分の溶着量が不足しにくい。
【0013】
本発明において、前記内周部分の先端面は、前記基準面に対して前記軸線方向の一方側に凹んだ段差面であることが好ましい。このようにすると、基準面が固定溝の底面に当接したとき、内周部分が過干渉になることを回避できる。
【0014】
本発明において、前記複数の羽根部のうちの少なくとも一部において、前記リブは、前記内周部分と前記外周部分とを接続する中間部分を備え、前記中間部分は、前記軸線方向の他方側に突出する位置決め凸部を備え、前記位置決め凸部は、前記固定溝の底面に設けられた位置決め凹部に嵌合することが好ましい。このようにすると、固定溝とリブとの間に隙間を設けて溶着バリを収容できるようにした場合でも、位置決め凸部と位置決め凹部を嵌合させることにより、羽根車を軸線方向と交差する方向で位置決めできる。例えば、羽根車を周方向に位置決めできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロータ部材の端部に設けられたフランジ部に固定されてインペラを形成する羽根車は、円板部から突出する羽根部を備えており、羽根部の先端には、フランジ部に設けられた固定溝に挿入されるリブが設けられている。このように、固定溝にリブを挿入することで、水圧による羽根部の変形を抑制できる。また、羽根部の先端とフランジ部との間を流体が通過することにより効率が低下することを抑制できる。さらに、固定溝に挿入されるリブは、外周部分が固定溝に溶着される一方、内周部分は固定溝の底面との間に隙間ができる形状である。このようにすると、フランジ部が設計どおりの形状にならずに傘状に反った場合でも、リブの内周部分が固定溝の底面に過剰に干渉するおそれが少ないので、過干渉になった箇所で多くの溶着バリが発生して固定溝からはみ出すおそれが少ない。また、リブの内周部分が過干渉になった結果、リブの外周部分の固定溝への挿入量が不足して未溶着になったり溶着強度が不足するおそれが少ない。インペラの外周部分は高い流体圧を受けるため、溶着強度が不足すると羽根部がフランジ部から剥がれる恐れがあるが、本形態では、羽根部の外周部分の溶着強度を確保できるので、高い水圧を受けても溶着箇所が剥がれるおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したポンプ装置の外観斜視図である。
図2図1に示すポンプ装置を回転軸線を含む平面で切断した断面図である。
図3】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図4】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の他方側から見た分解斜視図である。
図5】ロータ部材を軸線方向の一方側から見た斜視図である。
図6】ロータ、羽根車、およびラジアル軸受を回転軸線を含む平面(図7のB-B位置)で切断した断面図である。
図7】ロータ、ラジアル軸受、および支軸を回転軸線に対して垂直な平面で切断した断面図(図6のA-A位置で切断した断面図)である。
図8】ロータ、羽根車、およびラジアル軸受を軸線方向の他方側から見た斜視図である。
図9】羽根車を軸線方向の一方側から見た平面図である。
図10】羽根車を軸線方向の一方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るポンプ装置1を説明する。以下の説明において、軸線方向とは、モータ10の回転軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転軸線Lを中心とする回転方向を意味する。また、回転軸線Lが延在する方向と軸線方向とし、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の外観斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図1図2に示すように、ポンプ装置1は、軸線方向の一方側L1へ延びる吸入管21および吐出管22を備えたケース2と、ケース2に対して軸線方向の他方側L2に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたインペラ25とを有する。インペラ25は、モータ10によって回転軸線L周りに回転駆動される。本形態のポンプ装置1において、ポンプ室20を流れる流体は液体である。ポンプ装置1は、例えば、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0019】
モータ10は、円環状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する支軸5を備える
。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。インペラ25は、ロータ4と一体に回転する。図2に示すように、ポンプ装置1では、ステータ3に対して軸線方向の一方側L1にインペラ25およびポンプ室20が設けられている。
【0020】
図2に示すように、ポンプ室20は、ケース2とハウジング6との間に設けられている。ケース2は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成する。図1に示すように、吸入管21はケース2の径方向の中心において軸線方向に延びており、吸入管21は、側壁29からモータ10の回転軸線Lに対して直交する方向に延びている。
【0021】
図2に示すように、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に対して軸線方向の一方側L1から重なるインシュレータ32と、ステータコア31に対して軸線方向の他方側L2から重なるインシュレータ33と、ステータコア31に設けられた複数の突極にインシュレータ32、33を介して巻回された複数のコイル35とを有する。モータ10は3相モータである。従って、複数のコイル35は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルによって構成される。
【0022】
ロータ4は、樹脂製のロータ部材40を備える。ロータ部材40は、軸線方向に延在する円筒部41と、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部に形成されたフランジ部45を備える。円筒部41は、ステータ3の径方向の内側からポンプ室20に向けて延在し、ポンプ室20で開口している。円筒部41の外周面には、円筒状の駆動マグネット8が保持される。駆動マグネット8は、ステータ3に径方向の内側で対向する。駆動マグネット8は、例えば、ネオジムボンド磁石からなる。
【0023】
ロータ部材40のフランジ部45には、軸線方向の一方側L1から羽根車24が連結される。本形態では、フランジ部45と羽根車24とによって、ロータ部材40の円筒部41に接続されたインペラ25が構成される。羽根車24は、フランジ部45に軸線方向で対向する円板部26と、円板部26から軸線方向の他方側L2に突出する複数の羽根部261を備える。円板部26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。円板部26の中央には中央穴260が形成されている。円板部26は、径方向の外側に向かうにしたがってフランジ部45の側に向かう方向に傾いている。複数の羽根部261は、等角度間隔に配置される。各羽根部261は、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延びる。羽根部261の詳細な形状については後述する。
【0024】
ロータ部材40において、円筒部41の径方向の内側には筒状のラジアル軸受11が保持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の他方側L2の端部は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持される。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備える。支持部27の端部には、支軸5が内側に位置する筒部28が形成されており、支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は筒部28に保持される。
【0025】
支軸5の軸線方向の一方側L1の端部には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に配置される。ここで、支軸5の他方側L2の端部および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状である。また、支軸5の一方側L1の端部およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状である。従って、ハウジング6に対する支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止される。
【0026】
ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。樹脂封止部材60は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)からなる。ステータ3は、インサート成形により
樹脂封止部材60と一体化される。ハウジング6は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と駆動マグネット8との間に介在する第2隔壁部62と、第2隔壁部62の他方側L2の端に設けられた底壁63とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を備える。
【0027】
図1図2に示すように、ハウジング6の軸線方向の他方側L2の端部64には、軸線方向の他方側L2からカバー18が固定される。図2に示すように、カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路が設けられた基板19が配置される。基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の他方側L2に突出した金属製の巻線端子71が半田により接続される。ハウジング6は、底壁63から軸線方向の他方側L2に突出する柱状部を備える。基板19は、ねじ91によって柱状部に固定される。
【0028】
図1に示すように、ハウジング6は、ステータ3の外周側を囲む胴部66から径方向外側へ延びる筒状のコネクタハウジング69を備える。コネクタハウジング69の内側には、一端が基板19に接続されたコネクタ端子が配置される。コネクタハウジング69にコネクタを連結すると、基板19に実装される回路で生成された駆動電流が巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ10の回転軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0029】
(駆動マグネットおよびラジアル軸受の保持構造)
図3は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の一方側L1から見た分解斜視図である。図4は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の他方側L2から見た分解斜視図である。図5は、ロータ部材40を軸線方向の一方側L1から見た斜視図である。図6は、ロータ4、羽根車24、およびラジアル軸受11を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図7は、ロータ4、ラジアル軸受11、および支軸5を回転軸線Lに対して垂直な平面で切断した断面図(図6のA-A位置で切断した断面図)である。図8は、ロータ4、羽根車24、およびラジアル軸受11を軸線方向の他方側L2から見た斜視図である。
【0030】
本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。X方向の一方側をX1とし、X方向の他方側をX2とし、Y方向の一方側をY1とし、Y方向の他方側をY2とし、Z方向の一方側をZ1とし、Z方向の他方側をZ2とする。Z方向は軸線方向と一致し、Z1方向は軸線方向の一方側L1と一致し、Z2方向は軸線方向の他方側L2と一致する。
【0031】
図2図4に示すように、ロータ部材40は、フランジ部45から他方側L2に離間した位置で円筒部41から径方向外側へ突出した円環状の座部42を備える。円筒部41は、座部42から他方側L2へ延びるマグネット保持部410を備える。マグネット保持部410は、駆動マグネット8の内側に嵌って駆動マグネット8を保持する。その際、座部42は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する。マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の端部には、駆動マグネット8に軸線方向で重なるカシメ部43が形成される。
【0032】
図5図6に示すように、円筒部41の内周面には、径方向内側へ突出する円環状の第1凸部441および第2凸部442が形成されている。第1凸部441は、ラジアル軸受11の軸線方向の一方側L1の段部116に配置される。第2凸部442は、ラジアル軸
受11の軸線方向の他方側L2の段部117に配置される。ロータ部材40を製造する際、ラジアル軸受11をインサート成形した樹脂成形品とする。これにより、ラジアル軸受11を第1凸部441と第2凸部442の間に保持することができる。
【0033】
図4図6に示すように、マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の端部は、第2凸部442に対して他方側L2へ延びる突出部411を備えており、突出部411の先端にカシメ部43が形成される。図4に示すように、突出部411は、径方向で反対側の2箇所を軸線方向の一方側L1に切り欠いた切欠き部412を備える。一方の切欠き部412は回転軸線Lに対してX1方向の角度位置に設けられ、他方の切欠き部412は回転軸線Lに対してX2方向の角度位置に設けられている。本形態では、カシメ部43は切欠き部412が形成された部分を除いて円弧状に延びている。
【0034】
図4に示すように、ロータ部材40の座部42は、軸線方向の一方側L1に凹む凹部421と、各凹部421の底面から軸線方向の他方側L2に突出する周り止め突起422を備える。凹部421は、等角度間隔で複数位置(本形態では、120度間隔で3箇所)に設けられている。周方向で隣り合う凹部421の間の部分は、軸線方向に対して垂直な平坦部423となっている。
【0035】
凹部421は、座部42の内縁から外縁まで拡がる。周り止め突起422は、凹部421の周方向の中央に配置され、座部42の内縁から座部42の径方向の途中位置まで延びている。従って、周り止め突起422は、周方向の両側および径方向外側が凹部421に囲まれている。周り止め突起422の軸線方向の高さは、凹部421の軸線方向の深さよりも大きい。そのため、周り止め突起422は、平坦部423に対して軸線方向の他方側L2の位置まで突出している。
【0036】
駆動マグネット8をマグネット保持部410に固定する際、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を座部42の平坦部423に対して軸線方向の他方側L2から当接させる。その際、周り止め突起422は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面に形成された周り止め凹部81(図3参照)に嵌合する。これにより、駆動マグネット8の周方向の角度位置が規定され、ロータ部材40に対する駆動マグネット8の回転が阻止される。
【0037】
(駆動マグネットおよびラジアル軸受を冷却するための流路)
図3図4に示すように、ロータ部材40は、円筒部41におけるマグネット保持部410の外周面に形成された第1流路溝46を備える。第1流路溝46は、径方向内側に一定深さで凹む凹部である。駆動マグネット8の内側にマグネット保持部410を嵌め込むと、駆動マグネット8の内周面とマグネット保持部410との間には第1流路溝46によって規定される形状の流路F1(図7参照)が形成される。この流路F1は、駆動マグネット8とハウジング6の第2隔壁部62との隙間G1(図2参照)と連通する。そのため、隙間G1を経由してポンプ室20の流体が流路F1を流れるので、駆動マグネット8およびマグネット保持部410が冷却される。すなわち、流路F1は、マグネット冷却流路として機能する。
【0038】
図5に示すように、ロータ部材40は、円筒部41の内周面に形成された第2流路溝47を備える。第2流路溝47は、軸線方向に延びる矩形断面の溝部である。第2流路溝47は、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部まで延びてフランジ部45の内周縁に開口し、ポンプ室20に連通する。円筒部41の内側には、第2流路溝47と同一の角度位置において第1凸部441および第2凸部442を貫通する矩形の開口部471、472が形成されている。
【0039】
図4図5に示すように、第2流路溝47は、円筒部41の内周面において径方向で反対側の2箇所に形成されている。本形態では、X方向で対向する2箇所に第2流路溝47が配置される。2箇所の第2流路溝47の角度位置は、円筒部41の他方側L2の端部を切り欠いた2箇所の切欠き部412の角度位置と一致する。従って、図4図8に示すように、円筒部41の軸線方向の他方側L2の端部では、2箇所の切欠き部412のそれぞれの径方向内側に第2凸部442を貫通する開口部472が配置され、開口部472の径方向外側はカシメ部43によって塞がれていない。
【0040】
図3図4図7に示すように、ラジアル軸受11の外周面には、軸線方向に延びる平面部111が周方向の複数位置に設けられている。ラジアル軸受11を軸線方向から見たときの平面形状は、周方向に延びる円弧面110と平面部111とが周方向に交互に配置される形状である。平面部111は、90度の角度間隔で4箇所に形成されており、ラジアル軸受11の軸線方向の両端まで延びている。4箇所の平面部111は、X方向で対向する2箇所においてY方向に延びる第1平面部111Aと、Y方向で対向する2箇所においてX方向に延びる第2平面部111Bを含む。第1平面部111Aと第2平面部111Bの周方向の幅は同一である。
【0041】
2箇所の第1平面部111Aは、第2流路溝47と同一角度位置に配置される。円筒部41の内側にラジアル軸受11が保持されると、図7に示すように、円筒部41の内周面とラジアル軸受11の外周面との間には、第2流路溝47および平面部111によって軸線方向に延びる流路F2(図7参照)が形成される。流路F2の軸線方向の一方側L1の端部は、フランジ部45まで延びてポンプ室20に連通する。流路F2の軸線方向の他方側L2の端部は、第2凸部442に設けられた開口部472および突出部411に設けられた切欠き部412によって円筒部41の他方側L2の端部に開口する(図8参照)。従って、流路F2は、開口部472および切欠き部412を経由して、駆動マグネット8とハウジング6の底壁63との隙間G2(図2参照)に連通する。よって、ポンプ室20の流体が流路F2を流れるので、ラジアル軸受11および円筒部41が冷却される。すなわち、流路F2は軸受冷却流路として機能する。
【0042】
図7に示すように、円筒部41の内周面においてY方向で対向する2箇所には、軸線方向に延びる周り止め用平面部413が設けられている。円筒部41の内側にラジアル軸受11を保持すると、各周り止め用平面部413が第2平面部111Bに当接する。従って、ロータ4に対するラジアル軸受11の回転が阻止される。上記のように、本形態では、ロータ部材40を製造する際、ラジアル軸受11をインサート成形した樹脂成形品とする。このとき、ラジアル軸受11の第1平面部111Aに当接するように第2流路溝47の断面形状と一致する金型ピンをセットし、第2平面部111Bは金型内に露出した状態としてラジアル軸受11の周りに樹脂を充填する。これにより、ロータ部材40の円筒部41に第2流路溝47、開口部471、472、および周り止め用平面部413が形成される。
【0043】
第2流路溝47は、Y方向の溝幅がX方向の溝深さよりも大きい長方形断面の溝である。第1平面部111Aの周方向の幅は、第2流路溝47の溝幅と同一である。第2流路溝47を形成するために使用される金型ピンは、ロータ部材40の周方向を長辺方向とする長方形断面の金型ピンである。
【0044】
(ロータ部材における流路溝の詳細な構成)
図3図4図7に示すR1方向は、ロータ4の回転方向の前方側であり、R2方向はロータ4の回転方向の後方側である。図4に示すように、第1流路溝46は、軸線方向に延びる第1溝部461と、第1溝部461に対してロータ4の回転方向の後方側R2において軸線方向に延びる第2溝部462と、周方向に延びて第1溝部461と第2溝部46
2の軸線方向の他方側L2の端部を接続する第3溝部463を備える。すなわち、第1流路溝46は、軸線方向に1回折り返した形状の溝であり、略U字状の溝である。
【0045】
図4に示すように、ロータ部材40の座部42には凹部421が形成されている。図8に示すように、ロータ部材40のマグネット保持部410に駆動マグネット8を固定すると、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面と凹部421の底面との間には径方向外側に開口する流入口48が形成される。図4に示すように、凹部421は第1溝部461と周方向の位置が一致するため、流入口48を介して第1溝部461と駆動マグネット8の外周側の隙間G1(図2参照)とが連通する。
【0046】
図7に示すように、駆動マグネット8に形成された周り止め凹部81は、径方向の寸法が周り止め突起422よりも長い。そのため、周り止め突起422の径方向外側の側面と、周り止め凹部81向の内側面との間には、流路となる隙間G3が形成される。図6に示すように、周り止め凹部81の軸線方向の深さは、周り止め突起422との間に軸線方向の隙間G4が形成される寸法である。従って、流入口48から流入した流体は、周り止め突起422の周方向の両側を流れるだけでなく、隙間G3、G4を経由して第1溝部461に流入する。
【0047】
図4に示すように、第1流路溝46では、第3溝部463および第2溝部462は、流入口48に連通する第1溝部461に対して回転方向の後方側R2に設けられている。従って、ロータ4がR1方向に回転する際、慣性力によって第1溝部461の流体がR2方向に移動して第3溝部463および第2溝部462を流れ、図4に示すD方向の流れが発生する。これにより、第1溝部461内が負圧となってさらに流体が流入する。つまり、ロータ4が回転する間は、第1流路溝46を図4に示すD方向に流体が流れ続ける。
【0048】
図3図4図7に示すように、マグネット保持部410の外周面において、周方向で隣り合う第1溝部461と第2溝部462の間の部分は、座部42から第3溝部463まで軸線方向に延びる第1リブ51となっている。座部42における第2溝部462の径方向外側の部分は、駆動マグネット8を支持する平坦部423であるため、第2溝部462の径方向外側には、流入口48のような広い開口部が形成されない(図8参照)。このため、第1流路溝46は、流入側と流出側で差圧が発生するので、第1流路溝46に流体が流入しやすい。
【0049】
図7に示すように、マグネット保持部410の外周面には、第1流路溝46が周方向に並んで2箇所に形成されている。さらに、マグネット保持部410の外周面において第1流路溝46が形成されていない領域(X2方向の領域)には、第1溝部461および第2溝部462と同一幅で軸線方向に延びる第3流路溝49が2本並んで形成されている。第3流路溝49は、円筒部41の軸線方向の他方側L2の端部まで延びている。
【0050】
図7に示すように、座部42に形成された3箇所の凹部421のうちの2箇所は、第1流路溝46の第1溝部461に対応する角度位置に設けられている。一方、残りの1箇所の凹部421は、2箇所の第3流路溝49の一方に対応する角度位置に設けられている。従って、2箇所の第3流路溝49のうちの一方には、凹部421と駆動マグネット8との間に形成される流入口48を経由して流体が流入する。
【0051】
図3図4に示すように、マグネット保持部410の外周面には、座部42からカシメ部43までの範囲を軸線方向に延びる第2リブ52が設けられている。第2リブ52は、周方向で隣り合う第1溝部461の間、周方向で隣り合う第3流路溝49の間、および、周方向で隣り合う第1溝部461と第3流路溝49の間に設けられている。従って、マグネット保持部410の外周面には、4本の第2リブ52が形成されている。
【0052】
4本の第2リブ52のうちの2本は、回転軸線Lに対してX方向で反対側の角度位置に設けられており、円筒部41の内周面に設けられている第2流路溝47と周方向の位置が一致する。第1リブ51および第2リブ52は、第1流路溝46および第3流路溝49の底面よりも径方向外側に突出した突出部である。従って、第2流路溝47の角度位置と第2リブ52の角度位置が一致することにより、第2流路溝47を形成した部分におけるマグネット保持部410の肉厚を確保することができる。
【0053】
(羽根車の固定構造)
図9は、羽根車24を軸線方向の一方側L1から見た平面図である。図10は、羽根車24を軸線方向の一方側L1から見た斜視図である。図2図6に示すように、本形態では、ロータ部材40のフランジ部45に羽根車24を連結することにより、ロータ4と一体に回転するインペラ25が構成される。図5図6に示すように、フランジ部45には、軸線方向の他方側L2に凹む複数の固定溝44が設けられている。複数の固定溝44は、回転軸線Lを中心として、周方向で等角度間隔の位置に設けられている。本形態では、同一形状の10本の固定溝44がフランジ部45に設けられている。各固定溝44は、円弧状に湾曲しながら径方向の外側へ延びる。各固定溝44は、フランジ部45の内周縁の近傍から外周縁の近傍まで延びている。
【0054】
図6に示すように、固定溝44には、円板部26から軸線方向の他方側L2に突出する羽根部261の先端が挿入される。羽根車24は、羽根部261の先端を固定溝44に溶着することによりフランジ部45に固定される。本形態では、羽根部261の径方向外側の部分(後述する外周部分267)に、固定溝44に溶着された溶着部Wが形成される。
【0055】
羽根車24には、10本の羽根部261が固定溝44と軸線方向で対向する位置に設けられている。図9図10に示すように、各羽根部261は、円板部26から突出する羽根部本体262と、羽根部本体262の先端面から突出するリブ263と、リブ263の先端面から突出する溶着用凸部264を備える。溶着用凸部264は、断面形状が略三角形であり、先端に向かうに従って厚さが薄くなる形状である。図6に示す溶着部Wは、溶着用凸部264が固定溝44の底面によって潰された潰し部である。羽根部本体262の厚さは、固定溝44の幅よりも大きいが、リブ263の厚さは固定溝44の幅よりも小さい。また、溶着用凸部264の厚さは、リブ263の厚さよりもさらに小さい。従って、固定溝44に挿入されたリブ263および溶着用凸部264の周囲には、溶着バリを収容可能な隙間が確保される。
【0056】
図9図10に示すように、各羽根部261は、各羽根部261の径方向の中央位置Pを含む中間部分265と、中間部分265から径方向内側へ延びる内周部分266と、中間部分265から径方向外側へ延びる外周部分267を備える。内周部分266は、中間部分265から羽根部261の径方向内側の端部まで延びる。外周部分267は、中間部分265から羽根部261の径方向外側の端部まで延びる。溶着用凸部264は、外周部分267に形成されており、中間部分265および内周部分266には形成されない。
【0057】
各羽根部261は、内周部分266の軸線方向の高さが中間部分265および外周部分267の軸線方向の高さよりも低い形状である。各羽根部261において、リブ263の先端面は、中間部分265から外周部分267までの範囲では軸線方向の高さが一定の同一面となっているが、内周部分266におけるリブ263の先端面は、中間部分265から外周部分267におけるリブ263の先端面よりも凹んだ段差面268となっている。
【0058】
各羽根部261において、中間部分265におけるリブ263の先端面は、溶着用凸部264が形成されておらず、平坦面になっている。中間部分265におけるリブ263の
先端面は、フランジ部45に対して軸線方向に当接する基準面269である。本形態では、羽根車24をフランジ部45に組み付ける際、中間部分265におけるリブ263の先端面(基準面269)を固定溝44の底面に当接させる。これにより、羽根車24の軸線方向の位置決めがなされる。
【0059】
羽根車24に設けられた10本の羽根部261の一部には、基準面269から軸線方向の他方側L2に突出する位置決め凸部270が設けられている。本形態では、10本のうちの3本の羽根部261が位置決め凸部270を備える。3箇所の位置決め凸部270は、周方向に分散配置される。図5に示すように、フランジ部45においては、10本の固定溝44の全てに位置決め凹部271が設けられている。フランジ部45に羽根車24を連結する際、3箇所の位置決め凸部270を対向する固定溝44の位置決め凹部271に嵌合させる。
【0060】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のポンプ装置1は、ロータ4およびステータ3を備えるモータ10と、ロータ4の回転軸線Lに沿う方向を軸線方向とするとき、ステータ3に対して軸線方向の一方側L1に設けられたポンプ室20に配置されてロータ4と一体に回転するインペラ25を有する。ロータ4は、筒状のマグネット保持部410を備えるロータ部材40と、マグネット保持部410の外周面に固定される駆動マグネット8を備える。インペラ25は、ロータ部材40の軸線方向の一方側L1の端部に設けられたフランジ部45と、フランジ部45に軸線方向の一方側L1から固定される羽根車24を備える。羽根車24は、フランジ部45に軸線方向で対向する円板部26と、円板部26から軸線方向の他方側L2へ突出する複数の羽根部261を備える。複数の羽根部261は、回転軸線Lを中心とする周方向の複数位置において径方向の外側へ延びており、複数の羽根部261のそれぞれにおける軸線方向の他方側L2の先端には、フランジ部45に設けられた固定溝44に挿入されるリブ263が設けられている。リブ263は、径方向の内側の端部を含む内周部分266と、径方向の外側の端部を含む外周部分267を備えており、内周部分266の軸線方向の他方側L2の先端と固定溝44の底面との間に軸線方向の隙間が設けられ、外周部分267の軸線方向の他方側L2の先端には、固定溝44に溶着された溶着部Wが設けられている。
【0061】
本形態によれば、フランジ部45に設けられた固定溝44に羽根部261の先端に設けられたリブ263を挿入することで、水圧による羽根部261の変形を抑制できる。また、羽根部261の先端とフランジ部45との間を流体が通過して効率が落ちることを抑制できる。さらに、固定溝44に挿入されるリブ263は、外周部分267が固定溝44に溶着される一方、内周部分266は固定溝44の底面との間に隙間ができる形状である。従って、フランジ部45が設計どおりの形状にならずに傘状に反ってしまった場合でも、リブ263の内周部分266が固定溝44の底面に過剰に干渉するおそれが少ないので、過干渉になった箇所で多くの溶着バリが発生して固定溝44からはみ出すおそれが少ない。また、リブ263の内周部分266が過干渉になった結果、リブ263の外周部分267の固定溝44への挿入量が不足して未溶着になったり溶着強度が不足するおそれが少ない。インペラ25の外周部分267は高い流体圧を受けるため、溶着強度が不足すると羽根部261がフランジ部45から剥がれる恐れがあるが、本形態では、羽根部261の外周部分267の溶着強度を確保できるので、高い水圧を受けても溶着箇所が剥がれるおそれが少ない。
【0062】
本形態では、フランジ45の固定溝44に溶着された溶着部Wは、リブ263の外周部分267の先端面から突出する溶着用凸部264が潰された潰し部である。このように、外周部分267に溶着用凸部264を設けることにより、外周部分267の溶着量が不足することを回避できる。また、内周部分266には溶着用凸部264を設けないことによ
り、内周部分266が過干渉になることを回避できる。
【0063】
本形態では、10本の羽根部261のそれぞれは、円板部26から軸線方向の他方側L2へ突出する羽根部本体262を備える。羽根部本体262の板厚は、固定溝44の幅よりも大きく、羽根部本体262の先端面から突出するリブ263の幅は、固定溝44の幅よりも小さい。従って、水圧を受ける部分(羽根部本体262)の剛性が高い。また、固定溝44とリブ263の間に溶着バリを収容する隙間を確保できる。
【0064】
本形態では、固定溝44に挿入されるリブ263は、内周部分266と外周部分267とを接続する中間部分265を備え、中間部分265は、固定溝44の底面に当接する基準面269を備える。径方向の中間部分265に軸線方向の位置決めの基準面269を設ければ、フランジ部45が設計どおりの形状にならずに傘状に反ってしまった場合でも、内周部分266が過干渉になりにくく、外周部分267の溶着量が不足しにくい。なお、本形態では、基準面269は全てのリブ263に設けられているが、複数の羽根部261のうちの一部にのみ基準面269を設ける構成を採用してもよい。
【0065】
本形態では、リブ263の内周部分266の先端面は、基準面269に対して軸線方向の一方側L1に凹んだ段差面268である。リブ263の先端面に段差を設けることにより、基準面269が固定溝44の底面に当接したとき、内周部分266が過干渉になることを回避できる。
【0066】
本形態では、固定溝44に挿入されるリブ263は、内周部分266と外周部分267とを接続する中間部分265を備え、複数の羽根部261のうちの3箇所において、中間部分265は、軸線方向の他方側L2に突出する位置決め凸部270を備え、位置決め凸部270は、固定溝44の底面に設けられた位置決め凸部270に嵌合する。このようにすると、固定溝44とリブ263との間に隙間を設けて溶着バリを収容できるようにした場合でも、位置決め凸部270と位置決め凸部270を嵌合させることにより、羽根車24を軸線方向と交差する方向で位置決めできる。例えば、羽根車24を周方向に位置決めできる。なお、位置決め凸部270が設けられた羽根部261の数は、4箇所以上でもよいし、2箇所でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、8…駆動マグネット、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19…基板、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…壁面、24…羽根車、25…インペラ、26…円板部、27…支持部、28…筒部、29…側壁、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…ロータ部材、41…円筒部、42…座部、43…カシメ部、44…固定溝、45…フランジ部、46…第1流路溝、47…第2流路溝、48…流入口、49…第3流路溝、51…第1リブ、52…第2リブ、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…ハウジングの軸線方向の他方側の端部、65…軸穴、66…胴部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、81…周り止め凹部、110…円弧面、111…平面部、111A…第1平面部、111B…第2平面部、116、117…段部、260…中央穴、261…羽根部、262…羽根部本体、263…リブ、264…溶着用凸部、265…中間部分、266…内周部分、267…外周部分、268…段差面、269…基準面、270…位置決め凸部、271…位置決め凹部、410…マグネット保持部、411…突出部、412…切欠き部、413…周り止め用平面部、421…凹部、422…突起、423…平坦部、441…第1凸部、442…第2凸部、461…第1溝部、462…第2溝部、463…第3溝部、471、472…開口部、F1…流路(マグネット冷却り流路)、F2…流路(軸受冷却流路)、G1、G2、G3、G4…隙間、L…回転軸線、L1…
軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、P…中央位置、R1…回転方向の前方側、R2…回転方向の後方側、W…溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10