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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051755
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20240404BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20240404BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20240404BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F04D13/06 C
F04D29/58 E
F04D29/046 D
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158071
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 直哉
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA33E
3H130BA33G
3H130CB07
3H130DB01X
3H130DB15X
3H130DD04X
3H130DE02X
3H130DG01X
3H130EA02E
3H130EA02G
3H130EA07E
3H130EA07G
3H130EB03E
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607DD03
5H607FF06
5H607GG01
5H607GG09
(57)【要約】
【課題】ポンプ装置のロータと固定軸との間に配置されるラジアル軸受の部品コスト削減を図り、ラジアル軸受の冷却機能を向上させる。
【解決手段】ポンプ装置1は、ロータ4およびステータ3を備えるモータ10と、ポンプ室20に配置されてロータ4と一体に回転するインペラ25を有する。ロータ4は、円筒部41を備えるロータ部材40と、円筒部41の外周面に固定される駆動マグネット8を備える。円筒部41の内側に保持されるラジアル軸受11の外周面には、周方向の複数個所に軸線方向に延びる複数の平面部111が設けられている。複数の平面部111は、円筒部41の内周面との間にポンプ室20に連通する流路F2(軸受冷却流路)を形成する第1平面部111Aと、円筒部41の内周面に設けられた周り止め用平面部413に当接する第2平面部111Bを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを備えるモータと、
前記ロータの回転軸線に沿う方向を軸線方向とするとき、前記ステータに対して前記軸線方向の一方側に設けられたポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、
前記ロータは、前記軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、
前記円筒部の内側に保持されるラジアル軸受の外周面には、周方向の複数個所に前記軸線方向に延びる複数の平面部が設けられ、
前記複数の平面部は、
前記円筒部の内周面との間に前記ポンプ室に連通する軸受冷却流路を形成する第1平面部と、
前記円筒部の内周面に設けられた周り止め用平面部に当接する第2平面部と、を備えることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記第1平面部は、径方向で反対側の2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記ラジアル軸受の外周面には、周方向に延びる円弧面と前記平面部とが周方向に交互に並んでいることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記平面部は、前記軸線方向と直交する第1方向で対向する2箇所、および、前記軸線方向と直交し且つ前記第1方向と直交する第2方向で対向する2箇所に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記円筒部の内周面には、前記第1平面部と周方向の位置が一致する溝部が設けられ、
前記溝部の断面形状は、周方向の幅が径方向の深さよりも大きい矩形状であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記円筒部の外周面には、前記駆動マグネットの内周面との間に前記ポンプ室に連通するマグネット冷却流路を形成する流路溝が周方向の複数箇所に設けられ、
周方向で隣り合う前記流路溝の間には、前記流路溝の底面よりも径方向外側に突出するリブが設けられ、
前記溝部は、前記リブと周方向の位置が一致することを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラをモータによって回転させるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させるポンプ装置が記載される。モータは、インペラと一体に回転するロータを備える。ロータは、固定軸が内側に通された軸受(ラジアル軸受)を保持する樹脂製の保持部材を備える。保持部材は、鍔付きの円筒状であり、軸受は、保持部材の内側に圧入される。駆動用磁石(駆動マグネット)は、保持部材の外周面に固定される。軸受は、Dカット形状の大径部を備えているため、保持部材に対する軸受の相対回転が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータがラジアル軸受を介して固定軸に回転可能に支持される構造では、ロータが回転する際、摩擦等によりラジアル軸受が高温となり、その熱により駆動マグネットも高温となるため、部品の寿命低下や駆動マグネットの磁気特性低下が問題となる。そこで、駆動マグネットおよびラジアル軸受の温度上昇を抑制するため、ラジアル軸受と保持部材との間に冷却用の流路を形成し、ポンプ室の流体が流路を通過するように構成してラジアル軸受の温度上昇を抑制することが提案されている。
【0005】
保持部材との間に冷却用の流路を形成するとともに、保持部材に対する周り止め形状を持つラジアル軸受の形状としては、外周面にDカットや流路となる溝が形成された形状が提案される。ここで、ラジアル軸受の形状を決定するにあたって、部品コストを削減できる形状であることが望ましい。また、冷却機能を高めるため、流路を拡大できる形状であることが望ましい。
【0006】
以上に鑑みて、本発明の課題は、ポンプ装置のロータがラジアル軸受を介して固定軸に回転可能に支持されるポンプ装置において、ラジアル軸受の部品コスト削減を図るとともに、ラジアル軸受の冷却機能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のポンプ装置は、ロータおよびステータを備えるモータと、前記ロータの回転軸線に沿う方向を軸線方向とするとき、前記ステータに対して前記軸線方向の一方側に設けられたポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、前記ロータは、前記軸線方向に延びる円筒部を備えるロータ部材と、前記円筒部の外周面に固定される駆動マグネットと、を備え、前記円筒部の内側に保持されるラジアル軸受の外周面には、周方向の複数個所に前記軸線方向に延びる複数の平面部が設けられ、前記複数の平面部は、前記円筒部の内周面との間に前記ポンプ室に連通する軸受冷却流路を形成する第1平面部と、前記円筒部の内周面に設けられた周り止め用平面部に当接する第2平面部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ラジアル軸受の外周面に複数の平面部を設けて、その一部により、ロータ部材の円筒部の間にポンプ室に連通する軸受冷却流路を形成する。これにより、ラジ
アル軸受および円筒部を冷却でき、円筒部を介して駆動マグネットを冷却できる。また、複数の平面部の一部は、ロータ部材に対する周り止め部として機能させることができる。このように、外周面の複数個所を平面で切り欠いた形状にすることで、従来のようにR状の断面形状の溝を形成するよりも、切り欠く部分の体積が多くなり、ラジアル軸受の体積が減少する。従って、ラジアル軸受を製造するための材料コストを下げることができる。また、切り欠く部分の体積が大きければ、流路の断面積が大きくなるので、多くの流体を流すことができ、冷却効果を高めることができる。さらに、平面で切り欠くことにより、軸線方向から見たラジアル軸受の外形(平面形状)が小さくなり、ラジアル軸受の製造時にトレイに乗る数量が多くなる。これにより、1回の工程で処理できる製品数が多くなるので、製造コストを下げることができる。よって、ラジアル軸受の部品コスト削減を図るとともに、ラジアル軸受の冷却機能を向上させることができる。
【0009】
本発明において、前記第1平面部は、径方向で反対側の2箇所に設けられていることが好ましい。このようにすると、ラジアル軸受の中心に対して対称な位置に流路を設けることができるので、周方向に均等に冷却できる。
【0010】
本発明において、前記ラジアル軸受の外周面には、周方向に延びる円弧面と前記平面部とが周方向に交互に並んでいることが好ましい。このように、円弧面を残した形状にすると、円弧面の部分は平面よりも表面積が広くなる。従って、軸受冷却流路以外の部分からの放熱効果を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記平面部は、前記軸線方向と直交する第1方向で対向する2箇所、および、前記軸線方向と直交し且つ前記第1方向と直交する第2方向で対向する2箇所に設けられていることが好ましい。このようにすると、ラジアル軸受の平面形状の第1方向の幅、および、第2方向の幅をいずれも小さくできるので、製造時にトレイに並べる際に多く並べることができる。従って、製造コストを下げることができる。
【0012】
本発明において、前記円筒部の内周面には、前記第1平面部と周方向の位置が一致する溝部が設けられ、前記溝部の断面形状は、周方向の幅が径方向の深さよりも大きい矩形状であることが好ましい。このようにすると、軸受冷却流路の流路面積を大きくすることができるので、冷却効果を高めることができる。また、溝部の断面形状が幅広の矩形状であるため、ロータ部材を成形する際に、溝部を形成するための金型ピンの断面形状を幅広の矩形状にすることができる。これにより、金型ピンの剛性を高めることができ、耐久性を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記円筒部の外周面には、前記駆動マグネットの内周面との間に前記ポンプ室に連通するマグネット冷却流路を形成する流路溝が周方向の複数箇所に設けられ、周方向で隣り合う前記流路溝の間には、前記流路溝の底面よりも径方向外側に突出するリブが設けられ、前記溝部は、前記リブと周方向の位置が一致することが好ましい。このようにすると、円筒部の肉厚が薄くなることを回避できるので、円筒部の強度を確保できる。また、駆動マグネットおよび円筒部を冷却でき、円筒部を介してラジアル軸受を冷却できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ラジアル軸受の外周面に複数の平面部を設けて、その一部により、ロータ部材の円筒部との間にポンプ室に連通する軸受冷却流路を形成する。これにより、ラジアル軸受および円筒部を冷却でき、円筒部を介して駆動マグネットを冷却できる。また、複数の平面部の一部は、ロータ部材に対する周り止め部として機能させることができる。このように、外周面の複数個所を平面で切り欠いた形状にすることで、従来のようにR状の断面形状の溝を形成するよりも、切り欠く部分の体積が多くなり、ラジアル軸受の体積が
減少する。従って、ラジアル軸受を製造するための材料コストを下げることができる。また、切り欠く部分の体積が大きければ、流路の断面積が大きくなるので、多くの流体を流すことができ、冷却効果を高めることができる。さらに、平面で切り欠くことにより、軸線方向から見たラジアル軸受の外形(平面形状)が小さくなり、ラジアル軸受の製造時にトレイに乗る数量が多くなる。これにより、1回の工程で処理できる製品数が多くなるので、製造コストを下げることができる。よって、ラジアル軸受の部品コスト削減を図るとともに、ラジアル軸受の冷却機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用したポンプ装置の外観斜視図である。
図2図1に示すポンプ装置を回転軸線を含む平面で切断した断面図である。
図3】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図4】ロータおよびラジアル軸受を軸線方向の他方側から見た分解斜視図である。
図5】ロータ部材を軸線方向の一方側から見た斜視図である。
図6】ロータ、羽根車、およびラジアル軸受を回転軸線を含む平面(図7のB-B位置)で切断した断面図である。
図7】ロータ、ラジアル軸受、および支軸を回転軸線に対して垂直な平面で切断した断面図(図6のA-A位置で切断した断面図)である。
図8】ロータ、羽根車、およびラジアル軸受を軸線方向の他方側から見た斜視図である。
図9】羽根車を軸線方向の一方側から見た平面図である。
図10】羽根車を軸線方向の一方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るポンプ装置1を説明する。以下の説明において、軸線方向とは、モータ10の回転軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転軸線Lを中心とする回転方向を意味する。また、回転軸線Lが延在する方向と軸線方向とし、軸線方向の一方側をL1とし、軸線方向の他方側をL2とする。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の外観斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図1図2に示すように、ポンプ装置1は、軸線方向の一方側L1へ延びる吸入管21および吐出管22を備えたケース2と、ケース2に対して軸線方向の他方側L2に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたインペラ25とを有する。インペラ25は、モータ10によって回転軸線L周りに回転駆動される。本形態のポンプ装置1において、ポンプ室20を流れる流体は液体である。ポンプ装置1は、例えば、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0018】
モータ10は、円環状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する支軸5を備える。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。インペラ25は、ロータ4と一体に回転する。図2に示すように、ポンプ装置1では、ステータ3に対して軸線方向の一方側L1にインペラ25およびポンプ室20が設けられている。
【0019】
図2に示すように、ポンプ室20は、ケース2とハウジング6との間に設けられている。ケース2は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成する。図1に示すように、吸入管21はケース2の径方向の中心におい
て軸線方向に延びており、吸入管21は、側壁29からモータ10の回転軸線Lに対して直交する方向に延びている。
【0020】
図2に示すように、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に対して軸線方向の一方側L1から重なるインシュレータ32と、ステータコア31に対して軸線方向の他方側L2から重なるインシュレータ33と、ステータコア31に設けられた複数の突極にインシュレータ32、33を介して巻回された複数のコイル35とを有する。モータ10は3相モータである。従って、複数のコイル35は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルによって構成される。
【0021】
ロータ4は、樹脂製のロータ部材40を備える。ロータ部材40は、軸線方向に延在する円筒部41と、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部に形成されたフランジ部45を備える。円筒部41は、ステータ3の径方向の内側からポンプ室20に向けて延在し、ポンプ室20で開口している。円筒部41の外周面には、円筒状の駆動マグネット8が保持される。駆動マグネット8は、ステータ3に径方向の内側で対向する。駆動マグネット8は、例えば、ネオジムボンド磁石からなる。
【0022】
ロータ部材40のフランジ部45には、軸線方向の一方側L1から羽根車24が連結される。本形態では、フランジ部45と羽根車24とによって、ロータ部材40の円筒部41に接続されたインペラ25が構成される。羽根車24は、フランジ部45に軸線方向で対向する円板部26と、円板部26から軸線方向の他方側L2に突出する複数の羽根部261を備える。円板部26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。円板部26の中央には中央穴260が形成されている。円板部26は、径方向の外側に向かうにしたがってフランジ部45の側に向かう方向に傾いている。複数の羽根部261は、等角度間隔に配置される。各羽根部261は、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延びる。羽根部261の詳細な形状については後述する。
【0023】
ロータ部材40において、円筒部41の径方向の内側には筒状のラジアル軸受11が保持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の他方側L2の端部は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持される。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備える。支持部27の端部には、支軸5が内側に位置する筒部28が形成されており、支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は筒部28に保持される。
【0024】
支軸5の軸線方向の一方側L1の端部には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に配置される。ここで、支軸5の他方側L2の端部および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状である。また、支軸5の一方側L1の端部およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状である。従って、ハウジング6に対する支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止される。
【0025】
ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。樹脂封止部材60は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)からなる。ステータ3は、インサート成形により樹脂封止部材60と一体化される。ハウジング6は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と駆動マグネット8との間に介在する第2隔壁部62と、第2隔壁部62の他方側L2の端に設けられた底壁63とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を備える。
【0026】
図1図2に示すように、ハウジング6の軸線方向の他方側L2の端部64には、軸線
方向の他方側L2からカバー18が固定される。図2に示すように、カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路が設けられた基板19が配置される。基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の他方側L2に突出した金属製の巻線端子71が半田により接続される。ハウジング6は、底壁63から軸線方向の他方側L2に突出する柱状部を備える。基板19は、ねじ91によって柱状部に固定される。
【0027】
図1に示すように、ハウジング6は、ステータ3の外周側を囲む胴部66から径方向外側へ延びる筒状のコネクタハウジング69を備える。コネクタハウジング69の内側には、一端が基板19に接続されたコネクタ端子が配置される。コネクタハウジング69にコネクタを連結すると、基板19に実装される回路で生成された駆動電流が巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ10の回転軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0028】
(駆動マグネットおよびラジアル軸受の保持構造)
図3は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の一方側L1から見た分解斜視図である。図4は、ロータ4およびラジアル軸受11を軸線方向の他方側L2から見た分解斜視図である。図5は、ロータ部材40を軸線方向の一方側L1から見た斜視図である。図6は、ロータ4、羽根車24、およびラジアル軸受11を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図7は、ロータ4、ラジアル軸受11、および支軸5を回転軸線Lに対して垂直な平面で切断した断面図(図6のA-A位置で切断した断面図)である。図8は、ロータ4、羽根車24、およびラジアル軸受11を軸線方向の他方側L2から見た斜視図である。
【0029】
本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。X方向の一方側をX1とし、X方向の他方側をX2とし、Y方向の一方側をY1とし、Y方向の他方側をY2とし、Z方向の一方側をZ1とし、Z方向の他方側をZ2とする。Z方向は軸線方向と一致し、Z1方向は軸線方向の一方側L1と一致し、Z2方向は軸線方向の他方側L2と一致する。
【0030】
図2図4に示すように、ロータ部材40は、フランジ部45から他方側L2に離間した位置で円筒部41から径方向外側へ突出した円環状の座部42を備える。円筒部41は、座部42から他方側L2へ延びるマグネット保持部410を備える。マグネット保持部410は、駆動マグネット8の内側に嵌って駆動マグネット8を保持する。その際、座部42は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する。マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の端部には、駆動マグネット8に軸線方向で重なるカシメ部43が形成される。
【0031】
図5図6に示すように、円筒部41の内周面には、径方向内側へ突出する円環状の第1凸部441および第2凸部442が形成されている。第1凸部441は、ラジアル軸受11の軸線方向の一方側L1の段部116に配置される。第2凸部442は、ラジアル軸受11の軸線方向の他方側L2の段部117に配置される。ロータ部材40を製造する際、ラジアル軸受11をインサート成形した樹脂成形品とする。これにより、ラジアル軸受11を第1凸部441と第2凸部442の間に保持することができる。
【0032】
図4図6に示すように、マグネット保持部410の軸線方向の他方側L2の端部は、第2凸部442に対して他方側L2へ延びる突出部411を備えており、突出部411の先端にカシメ部43が形成される。図4に示すように、突出部411は、径方向で反対側
の2箇所を軸線方向の一方側L1に切り欠いた切欠き部412を備える。一方の切欠き部412は回転軸線Lに対してX1方向の角度位置に設けられ、他方の切欠き部412は回転軸線Lに対してX2方向の角度位置に設けられている。本形態では、カシメ部43は切欠き部412が形成された部分を除いて円弧状に延びている。
【0033】
図4に示すように、ロータ部材40の座部42は、軸線方向の一方側L1に凹む凹部421と、各凹部421の底面から軸線方向の他方側L2に突出する周り止め突起422を備える。凹部421は、等角度間隔で複数位置(本形態では、120度間隔で3箇所)に設けられている。周方向で隣り合う凹部421の間の部分は、軸線方向に対して垂直な平坦部423となっている。
【0034】
凹部421は、座部42の内縁から外縁まで拡がる。周り止め突起422は、凹部421の周方向の中央に配置され、座部42の内縁から座部42の径方向の途中位置まで延びている。従って、周り止め突起422は、周方向の両側および径方向外側が凹部421に囲まれている。周り止め突起422の軸線方向の高さは、凹部421の軸線方向の深さよりも大きい。そのため、周り止め突起422は、平坦部423に対して軸線方向の他方側L2の位置まで突出している。
【0035】
駆動マグネット8をマグネット保持部410に固定する際、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を座部42の平坦部423に対して軸線方向の他方側L2から当接させる。その際、周り止め突起422は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面に形成された周り止め凹部81(図3参照)に嵌合する。これにより、駆動マグネット8の周方向の角度位置が規定され、ロータ部材40に対する駆動マグネット8の回転が阻止される。
【0036】
(駆動マグネットおよびラジアル軸受を冷却するための流路)
図3図4に示すように、ロータ部材40は、円筒部41におけるマグネット保持部410の外周面に形成された第1流路溝46を備える。第1流路溝46は、径方向内側に一定深さで凹む凹部である。駆動マグネット8の内側にマグネット保持部410を嵌め込むと、駆動マグネット8の内周面とマグネット保持部410との間には第1流路溝46によって規定される形状の流路F1(図7参照)が形成される。この流路F1は、駆動マグネット8とハウジング6の第2隔壁部62との隙間G1(図2参照)と連通する。そのため、隙間G1を経由してポンプ室20の流体が流路F1を流れるので、駆動マグネット8およびマグネット保持部410が冷却される。すなわち、流路F1は、マグネット冷却流路として機能する。
【0037】
図5に示すように、ロータ部材40は、円筒部41の内周面に形成された第2流路溝47を備える。第2流路溝47は、軸線方向に延びる矩形断面の溝部である。第2流路溝47は、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部まで延びてフランジ部45の内周縁に開口し、ポンプ室20に連通する。円筒部41の内側には、第2流路溝47と同一の角度位置において第1凸部441および第2凸部442を貫通する矩形の開口部471、472が形成されている。
【0038】
図4図5に示すように、第2流路溝47は、円筒部41の内周面において径方向で反対側の2箇所に形成されている。本形態では、X方向で対向する2箇所に第2流路溝47が配置される。2箇所の第2流路溝47の角度位置は、円筒部41の他方側L2の端部を切り欠いた2箇所の切欠き部412の角度位置と一致する。従って、図4図8に示すように、円筒部41の軸線方向の他方側L2の端部では、2箇所の切欠き部412のそれぞれの径方向内側に第2凸部442を貫通する開口部472が配置され、開口部472の径方向外側はカシメ部43によって塞がれていない。
【0039】
図3図4図7に示すように、ラジアル軸受11の外周面には、軸線方向に延びる平面部111が周方向の複数位置に設けられている。ラジアル軸受11を軸線方向から見たときの平面形状は、周方向に延びる円弧面110と平面部111とが周方向に交互に配置される形状である。平面部111は、90度の角度間隔で4箇所に形成されており、ラジアル軸受11の軸線方向の両端まで延びている。4箇所の平面部111は、X方向で対向する2箇所においてY方向に延びる第1平面部111Aと、Y方向で対向する2箇所においてX方向に延びる第2平面部111Bを含む。第1平面部111Aと第2平面部111Bの周方向の幅は同一である。
【0040】
2箇所の第1平面部111Aは、第2流路溝47と同一角度位置に配置される。円筒部41の内側にラジアル軸受11が保持されると、図7に示すように、円筒部41の内周面とラジアル軸受11の外周面との間には、第2流路溝47および平面部111によって軸線方向に延びる流路F2(図7参照)が形成される。流路F2の軸線方向の一方側L1の端部は、フランジ部45まで延びてポンプ室20に連通する。流路F2の軸線方向の他方側L2の端部は、第2凸部442に設けられた開口部472および突出部411に設けられた切欠き部412によって円筒部41の他方側L2の端部に開口する(図8参照)。従って、流路F2は、開口部472および切欠き部412を経由して、駆動マグネット8とハウジング6の底壁63との隙間G2(図2参照)に連通する。よって、ポンプ室20の流体が流路F2を流れるので、ラジアル軸受11および円筒部41が冷却される。すなわち、流路F2は軸受冷却流路として機能する。
【0041】
図7に示すように、円筒部41の内周面においてY方向で対向する2箇所には、軸線方向に延びる周り止め用平面部413が設けられている。円筒部41の内側にラジアル軸受11を保持すると、各周り止め用平面部413が第2平面部111Bに当接する。従って、ロータ4に対するラジアル軸受11の回転が阻止される。上記のように、本形態では、ロータ部材40を製造する際、ラジアル軸受11をインサート成形した樹脂成形品とする。このとき、ラジアル軸受11の第1平面部111Aに当接するように第2流路溝47の断面形状と一致する金型ピンをセットし、第2平面部111Bは金型内に露出した状態としてラジアル軸受11の周りに樹脂を充填する。これにより、ロータ部材40の円筒部41に第2流路溝47、開口部471、472、および周り止め用平面部413が形成される。
【0042】
第2流路溝47は、Y方向の溝幅がX方向の溝深さよりも大きい長方形断面の溝である。第1平面部111Aの周方向の幅は、第2流路溝47の溝幅と同一である。第2流路溝47を形成するために使用される金型ピンは、ロータ部材40の周方向を長辺方向とする長方形断面の金型ピンである。
【0043】
(ロータ部材における流路溝の詳細な構成)
図3図4図7に示すR1方向は、ロータ4の回転方向の前方側であり、R2方向はロータ4の回転方向の後方側である。図4に示すように、第1流路溝46は、軸線方向に延びる第1溝部461と、第1溝部461に対してロータ4の回転方向の後方側R2において軸線方向に延びる第2溝部462と、周方向に延びて第1溝部461と第2溝部462の軸線方向の他方側L2の端部を接続する第3溝部463を備える。すなわち、第1流路溝46は、軸線方向に1回折り返した形状の溝であり、略U字状の溝である。
【0044】
図4に示すように、ロータ部材40の座部42には凹部421が形成されている。図8に示すように、ロータ部材40のマグネット保持部410に駆動マグネット8を固定すると、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端面と凹部421の底面との間には径方向外側に開口する流入口48が形成される。図4に示すように、凹部421は第1溝部4
61と周方向の位置が一致するため、流入口48を介して第1溝部461と駆動マグネット8の外周側の隙間G1(図2参照)とが連通する。
【0045】
図7に示すように、駆動マグネット8に形成された周り止め凹部81は、径方向の寸法が周り止め突起422よりも長い。そのため、周り止め突起422の径方向外側の側面と、周り止め凹部81向の内側面との間には、流路となる隙間G3が形成される。図6に示すように、周り止め凹部81の軸線方向の深さは、周り止め突起422との間に軸線方向の隙間G4が形成される寸法である。従って、流入口48から流入した流体は、周り止め突起422の周方向の両側を流れるだけでなく、隙間G3、G4を経由して第1溝部461に流入する。
【0046】
図4に示すように、第1流路溝46では、第3溝部463および第2溝部462は、流入口48に連通する第1溝部461に対して回転方向の後方側R2に設けられている。従って、ロータ4がR1方向に回転する際、慣性力によって第1溝部461の流体がR2方向に移動して第3溝部463および第2溝部462を流れ、図4に示すD方向の流れが発生する。これにより、第1溝部461内が負圧となってさらに流体が流入する。つまり、ロータ4が回転する間は、第1流路溝46を図4に示すD方向に流体が流れ続ける。
【0047】
図3図4図7に示すように、マグネット保持部410の外周面において、周方向で隣り合う第1溝部461と第2溝部462の間の部分は、座部42から第3溝部463まで軸線方向に延びる第1リブ51となっている。座部42における第2溝部462の径方向外側の部分は、駆動マグネット8を支持する平坦部423であるため、第2溝部462の径方向外側には、流入口48のような広い開口部が形成されない(図8参照)。このため、第1流路溝46は、流入側と流出側で差圧が発生するので、第1流路溝46に流体が流入しやすい。
【0048】
図7に示すように、マグネット保持部410の外周面には、第1流路溝46が周方向に並んで2箇所に形成されている。さらに、マグネット保持部410の外周面において第1流路溝46が形成されていない領域(X2方向の領域)には、第1溝部461および第2溝部462と同一幅で軸線方向に延びる第3流路溝49が2本並んで形成されている。第3流路溝49は、円筒部41の軸線方向の他方側L2の端部まで延びている。
【0049】
図7に示すように、座部42に形成された3箇所の凹部421のうちの2箇所は、第1流路溝46の第1溝部461に対応する角度位置に設けられている。一方、残りの1箇所の凹部421は、2箇所の第3流路溝49の一方に対応する角度位置に設けられている。従って、2箇所の第3流路溝49のうちの一方には、凹部421と駆動マグネット8との間に形成される流入口48を経由して流体が流入する。
【0050】
図3図4に示すように、マグネット保持部410の外周面には、座部42からカシメ部43までの範囲を軸線方向に延びる第2リブ52が設けられている。第2リブ52は、周方向で隣り合う第1溝部461の間、周方向で隣り合う第3流路溝49の間、および、周方向で隣り合う第1溝部461と第3流路溝49の間に設けられている。従って、マグネット保持部410の外周面には、4本の第2リブ52が形成されている。
【0051】
4本の第2リブ52のうちの2本は、回転軸線Lに対してX方向で反対側の角度位置に設けられており、円筒部41の内周面に設けられている第2流路溝47と周方向の位置が一致する。第1リブ51および第2リブ52は、第1流路溝46および第3流路溝49の底面よりも径方向外側に突出した突出部である。従って、第2流路溝47の角度位置と第2リブ52の角度位置が一致することにより、第2流路溝47を形成した部分におけるマグネット保持部410の肉厚を確保することができる。
【0052】
(羽根車の固定構造)
図9は、羽根車24を軸線方向の一方側L1から見た平面図である。図10は、羽根車24を軸線方向の一方側L1から見た斜視図である。図2図6に示すように、本形態では、ロータ部材40のフランジ部45に羽根車24を連結することにより、ロータ4と一体に回転するインペラ25が構成される。図5図6に示すように、フランジ部45には、軸線方向の他方側L2に凹む複数の固定溝44が設けられている。複数の固定溝44は、回転軸線Lを中心として、周方向で等角度間隔の位置に設けられている。本形態では、同一形状の10本の固定溝44がフランジ部45に設けられている。各固定溝44は、円弧状に湾曲しながら径方向の外側へ延びる。各固定溝44は、フランジ部45の内周縁の近傍から外周縁の近傍まで延びている。
【0053】
図6に示すように、固定溝44には、円板部26から軸線方向の他方側L2に突出する羽根部261の先端が挿入される。羽根車24は、羽根部261の先端を固定溝44に溶着することによりフランジ部45に固定される。本形態では、羽根部261の径方向外側の部分(後述する外周部分267)に、固定溝44に溶着された溶着部Wが形成される。
【0054】
羽根車24には、10本の羽根部261が固定溝44と軸線方向で対向する位置に設けられている。図9図10に示すように、各羽根部261は、円板部26から突出する羽根部本体262と、羽根部本体262の先端面から突出するリブ263と、リブ263の先端面から突出する溶着用凸部264を備える。溶着用凸部264は、断面形状が略三角形であり、先端に向かうに従って厚さが薄くなる形状である。図6に示す溶着部Wは、溶着用凸部264が固定溝44の底面によって潰された潰し部である。羽根部本体262の厚さは、固定溝44の幅よりも大きいが、リブ263の厚さは固定溝44の幅よりも小さい。また、溶着用凸部264の厚さは、リブ263の厚さよりもさらに小さい。従って、固定溝44に挿入されたリブ263および溶着用凸部264の周囲には、溶着バリを収容可能な隙間が確保される。
【0055】
図9図10に示すように、各羽根部261は、各羽根部261の径方向の中央位置Pを含む中間部分265と、中間部分265から径方向内側へ延びる内周部分266と、中間部分265から径方向外側へ延びる外周部分267を備える。内周部分266は、中間部分265から羽根部261の径方向内側の端部まで延びる。外周部分267は、中間部分265から羽根部261の径方向外側の端部まで延びる。溶着用凸部264は、外周部分267に形成されており、中間部分265および内周部分266には形成されない。
【0056】
各羽根部261は、内周部分266の軸線方向の高さが中間部分265および外周部分267の軸線方向の高さよりも低い形状である。各羽根部261において、リブ263の先端面は、中間部分265から外周部分267までの範囲では軸線方向の高さが一定の同一面となっているが、内周部分266におけるリブ263の先端面は、中間部分265から外周部分267におけるリブ263の先端面よりも凹んだ段差面268となっている。
【0057】
各羽根部261において、中間部分265におけるリブ263の先端面は、溶着用凸部264が形成されておらず、平坦面になっている。中間部分265におけるリブ263の先端面は、フランジ部45に対して軸線方向に当接する基準面269である。本形態では、羽根車24をフランジ部45に組み付ける際、中間部分265におけるリブ263の先端面(基準面269)を固定溝44の底面に当接させる。これにより、羽根車24の軸線方向の位置決めがなされる。
【0058】
羽根車24に設けられた10本の羽根部261の一部には、基準面269から軸線方向の他方側L2に突出する位置決め凸部270が設けられている。本形態では、10本のう
ちの3本の羽根部261が位置決め凸部270を備える。3箇所の位置決め凸部270は、周方向に分散配置される。図5に示すように、フランジ部45においては、10本の固定溝44の全てに位置決め凹部271が設けられている。フランジ部45に羽根車24を連結する際、3箇所の位置決め凸部270を対向する固定溝44の位置決め凹部271に嵌合させる。
【0059】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のポンプ装置1は、ロータ4およびステータ3を備えるモータ10と、ステータ3に対して軸線方向の一方側L1に設けられたポンプ室20に配置されてロータ4と一体に回転するインペラ25を有する。ロータ4は、軸線方向に延びる円筒部41を備えるロータ部材40と、円筒部41の外周面に固定される駆動マグネット8を備える。円筒部41の内側に保持されるラジアル軸受11の外周面には、周方向の複数個所に軸線方向に延びる複数の平面部111が設けられている。複数の平面部111は、円筒部41の内周面との間にポンプ室20に連通する流路F2(軸受冷却流路)を形成する第1平面部111Aと、円筒部41の内周面に設けられた周り止め用平面部413に当接する第2平面部111Bと、を備える。
【0060】
本形態によれば、ラジアル軸受11の外周面に複数の平面部111を設けて、その一部により、ロータ部材40の円筒部41の間にポンプ室20に連通する流路F2(軸受冷却流路)を形成する。これにより、ラジアル軸受11および円筒部41を冷却でき、円筒部41を介して駆動マグネット8を冷却できる。また、複数の平面部111の一部は、ロータ部材40に対する周り止め用平面部413として機能させることができる。このように、ラジアル軸受11の外周面の複数個所を平面で切り欠いた形状にすることで、従来のようにR状の断面形状の溝を形成するよりも、切り欠く部分の体積が大きくなり、ラジアル軸受11の体積が減少する。従って、ラジアル軸受11を製造するための材料コストを下げることができる。また、切り欠く部分の体積が大きければ、流路の断面積が大きくなるので、多くの流体を流すことができ、冷却効果を高めることができる。さらに、平面で切り欠くことにより、軸線方向から見たラジアル軸受11の外形(平面形状)が小さくなり、ラジアル軸受11の製造時にトレイに乗る数量が多くなる。これにより、1回の工程で処理できる製品数が多くなるので、製造コストを下げることができる。よって、ラジアル軸受11の部品コスト削減を図るとともに、ラジアル軸受11の冷却機能を向上させることができる。
【0061】
本形態では、ラジアル軸受11の第1平面部111Aは、径方向で反対側の2箇所に設けられているため、ラジアル軸受11の中心に対して対称な位置に流路を設けることができる。従って、ラジアル軸受11を周方向に均等に冷却できる。
【0062】
本形態では、ラジアル軸受11の外周面には、周方向に延びる円弧面110と平面部111とが周方向に交互に並んでいる。このように、円弧面110を残した形状にすると、円弧面110の部分は平面よりも表面積が広い。従って、流路F2(軸受冷却流路)以外の部分からの放熱効果を高めることができる。
【0063】
本形態では、平面部111は、軸線方向と直交するX方向(第1方向)で対向する2箇所、および、軸線方向と直交し且つX方向と直交するY方向(第2方向)で対向する2箇所に設けられている。従って、ラジアル軸受11の平面形状のX方向の幅、および、Y方向の幅をいずれも小さくできるので、製造時に中間製品をトレイに並べる際に多く並べることができる。従って、製造コストを下げることができる。
【0064】
本形態では、円筒部41の内周面には、第1平面部111Aと周方向の位置が一致する溝部である第2流路溝47が設けられている。第2流路溝47の断面形状は、周方向の幅
が径方向の深さよりも大きい矩形状である。このように、矩形状の溝を形成することにより、R状の溝を形成する場合よりも流路F2(軸受冷却流路)の流路面積を大きくすることができ、冷却効果を高めることができる。また、第2流路溝47の断面形状が幅広の矩形状であるため、ロータ部材40を成形する際に、第2流路溝47を形成するための金型ピンの断面形状を幅広の矩形状にすることができる。これにより、金型ピンの剛性を高めることができ、耐久性を高めることができる。
【0065】
本形態では、円筒部41の外周面には、駆動マグネット8の内周面との間にポンプ室20に連通する流路F1(マグネット冷却流路)を形成する第1流路溝46が周方向の複数箇所に設けられ、周方向で隣り合う第1流路溝46の間には、第1流路溝46の底面よりも径方向外側に突出する第2リブ52が設けられ、第2流路溝47(溝部)は、第2リブ52と周方向の位置が一致する。このようにすると、円筒部41の肉厚が薄くなることを回避できるので、円筒部41の強度を確保できる。また、ポンプ室20の流体が流路F1を流れることにより、駆動マグネット8および円筒部41を冷却でき、円筒部41を介してラジアル軸受11を冷却できる。従って、部品の寿命低下や駆動マグネット8の磁気特性低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、8…駆動マグネット、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19…基板、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…壁面、24…羽根車、25…インペラ、26…円板部、27…支持部、28…筒部、29…側壁、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…ロータ部材、41…円筒部、42…座部、43…カシメ部、44…固定溝、45…フランジ部、46…第1流路溝、47…第2流路溝、48…流入口、49…第3流路溝、51…第1リブ、52…第2リブ、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…ハウジングの軸線方向の他方側の端部、65…軸穴、66…胴部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、81…周り止め凹部、110…円弧面、111…平面部、111A…第1平面部、111B…第2平面部、116、117…段部、260…中央穴、261…羽根部、262…羽根部本体、263…リブ、264…溶着用凸部、265…中間部分、266…内周部分、267…外周部分、268…段差面、269…基準面、270…位置決め凸部、271…位置決め凹部、410…マグネット保持部、411…突出部、412…切欠き部、413…周り止め用平面部、421…凹部、422…突起、423…平坦部、441…第1凸部、442…第2凸部、461…第1溝部、462…第2溝部、463…第3溝部、471、472…開口部、F1…流路(マグネット冷却り流路)、F2…流路(軸受冷却流路)、G1、G2、G3、G4…隙間、L…回転軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、P…中央位置、R1…回転方向の前方側、R2…回転方向の後方側、W…溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10