(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051762
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】医療用具、および該医療用具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240404BHJP
【FI】
A61M25/10 540
A61M25/10 500
A61M25/10 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158079
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB27
4C267BB33
4C267CC07
4C267EE03
4C267GG43
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できるバルーンを備えた医療用具を提供する。
【解決手段】近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフト部と、前記シャフト部の遠位端に配されている逆止弁部と、前記シャフト部の遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通している第2内腔を有するバルーンとを有する医療用具であって、前記バルーンは、前記シャフト部の遠位部における外周面に固定されている固定領域と、前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、前記逆止弁部は、第1膜体と第2膜体とを有し、且つ前記第1内腔および前記第2内腔と連通している第3内腔を有しており、前記第1膜体と前記第2膜体は、前記第3内腔を挟んで対向して配置されている医療用具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフト部と、
前記シャフト部の遠位端に配されている逆止弁部と、
前記シャフト部の遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通している第2内腔を有するバルーンとを有する医療用具であって、
前記バルーンは、前記シャフト部の遠位部における外周面に固定されている固定領域と、前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、
前記逆止弁部は、第1膜体と第2膜体とを有し、且つ前記第1内腔および前記第2内腔と連通している第3内腔を有しており、
前記第1膜体と前記第2膜体は、前記第3内腔を挟んで対向して配置されている医療用具。
【請求項2】
前記逆止弁部の最大幅Wは、前記第1膜体の厚みと前記第2膜体の厚みとの合計厚みに対して3倍以上である請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記逆止弁部の最大幅Wは、前記シャフト部の外径Lに対して1.3倍以上である請求項1に記載の医療用具。
【請求項4】
前記逆止弁部は、近位側から遠位側に向けて幅が増大している区間を有する請求項1に記載の医療用具。
【請求項5】
前記シャフト部と前記逆止弁部は、同じ素材で構成されている請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
拡張時の前記バルーンは、拡張領域と非拡張領域を有しており、前記逆止弁部は、前記バルーンの前記非拡張領域に位置している請求項1に記載の医療用具。
【請求項7】
拡張時の前記バルーンの最大幅Rと、拡張時の前記バルーンの最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.5~20である請求項1に記載の医療用具。
【請求項8】
前記バルーンを構成する材料は、生分解性材料である請求項1に記載の医療用具。
【請求項9】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトを準備する工程、
前記シャフトの遠位端に逆止弁部を配する工程、
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、遠位端および近位端にそれぞれ開口を有するバルーンを準備する工程、
前記シャフトを該シャフトの近位端から前記バルーンの遠位端側の開口に挿入する工程、
前記バルーンの近位端部を前記シャフトに固定する工程、
前記バルーンの遠位端を封止する工程、
を含む医療用具の製造方法。
【請求項10】
前記シャフトの遠位端に逆止弁部を配する工程では、前記シャフトの遠位端部を該シャフトの径方向に圧縮する請求項9に記載の医療用具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具、および該医療用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科治療では、手術が成功しても、術後経過の中で治療箇所とその周辺組織とが癒着することがある。癒着が生じると、重篤な合併症を引き起こすことがある。こうした癒着箇所を剥離するには、多くの時間がかかることがあり、剥離操作の過程で臓器に損傷を与えることもある。
【0003】
近年では、癒着を防止するための癒着防止材が開発されており、手術後、治療箇所の周辺にスプレー状の癒着防止材を吹き付けたり、シート状の癒着防止材が留置されている。こうした癒着防止材は、生体分解性を有する材料で構成されているものが多く、生体内に吹き付けたり、留置しても時間が経過するに連れて生体内で分解するため、癒着防止材を摘出する手術は不要となる。しかし、スプレー状やシート状の癒着防止材では、癒着防止効果が充分に得られないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
治療箇所とその周辺組織との癒着を防止するには、治療箇所とその周辺組織との物理的距離を大きくすることが考えられる。血管、気管、消化管などの生体腔の狭窄部の拡張や組織の剥離を行うためのバルーンカテーテルが知られており、特許文献1には、膨張した状態のバルーンをカテーテル本体から切り離して生体腔内に留置し、この切り離したバルーンによって、生体腔の狭窄部の拡張状態や生体腔の閉塞状態を長期間に亘って維持することが記載されている。特許文献1に記載のバルーンカテーテルを用いれば、生体腔の狭窄部の拡張状態や生体腔の閉塞状態を長期に亘って維持できるが、治療箇所とその周辺組織との癒着を防止する用途として用いることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できるバルーンを備えた医療用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明は、以下の通りである。
[1] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフト部と、前記シャフト部の遠位端に配されている逆止弁部と、前記シャフト部の遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通している第2内腔を有するバルーンとを有する医療用具であって、前記バルーンは、前記シャフト部の遠位部における外周面に固定されている固定領域と、前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、前記逆止弁部は、第1膜体と第2膜体とを有し、且つ前記第1内腔および前記第2内腔と連通している第3内腔を有しており、前記第1膜体と前記第2膜体は、前記第3内腔を挟んで対向して配置されている医療用具。
[2] 前記逆止弁部の最大幅Wは、前記第1膜体の厚みと前記第2膜体の厚みとの合計厚みに対して3倍以上である[1]に記載の医療用具。
[3] 前記逆止弁部の最大幅Wは、前記シャフト部の外径Lに対して1.3倍以上である[1]または[2]に記載の医療用具。
[4] 前記逆止弁部は、近位側から遠位側に向けて幅が増大している区間を有する[1]~[3]のいずれかに記載の医療用具。
[5] 前記シャフト部と前記逆止弁部は、同じ素材で構成されている[1]~[4]のいずれかに記載の医療用具。
[6] 拡張時の前記バルーンは、拡張領域と非拡張領域を有しており、前記逆止弁部は、前記バルーンの前記非拡張領域に位置している[1]~[5]のいずれかに記載の医療用具。
[7] 拡張時の前記バルーンの最大幅Rと、拡張時の前記バルーンの最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.5~20である[1]~[6]のいずれかに記載の医療用具。
[8] 前記バルーンを構成する材料は、生分解性材料である[1]~[7]のいずれかに記載の医療用具。
[9] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトを準備する工程、前記シャフトの遠位端に逆止弁部を配する工程、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、遠位端および近位端にそれぞれ開口を有するバルーンを準備する工程、前記シャフトを該シャフトの近位端から前記バルーンの遠位端側の開口に挿入する工程、前記バルーンの近位端部を前記シャフトに固定する工程、前記バルーンの遠位端を封止する工程、を含む医療用具の製造方法。
[10] 前記シャフトの遠位端に逆止弁部を配する工程では、前記シャフトの遠位端部を該シャフトの径方向に圧縮する[9]に記載の医療用具の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療用具は、治療箇所とその周辺組織との癒着を防止するためのバルーンを備えており、該バルーンは、シャフト部の遠位部における外周面に固定されていない非固定領域を有しており、シャフト部の遠位端には逆止弁部が配されている。バルーンの一部がシャフト部に固定されていないことにより、バルーンの形状を自由に変化させることができるため、治療箇所とその周辺組織との空間に配することができる。また、逆止弁部を配することにより、バルーンを生体内に長期間に亘って留置することができる。その結果、治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に係る医療用具の実施形態について、バルーンを拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した医療用具について、平面に垂直な面の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した逆止弁部におけるI-I断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る医療用具の製造方法の一部を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る医療用具について、実施形態に基づいてより具体的に説明するが、本発明は下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。以下では、近位側とは使用者(術者)の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側(すなわち処置対象側)を指す。また、長手方向とは近位側から遠位側への方向を指す。
【0011】
本発明に係る医療用具は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフト部と、前記シャフト部の遠位端に配されている逆止弁部と、前記シャフト部の遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通している第2内腔を有するバルーンとを有する医療用具であって、前記バルーンは、前記シャフト部の遠位部における外周面に固定されている固定領域と、前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、前記逆止弁部は、第1膜体と第2膜体とを有し、且つ前記第1内腔および前記第2内腔と連通している第3内腔を有しており、前記第1膜体と前記第2膜体は、前記第3内腔を挟んで対向して配置されている医療用具である。本発明の医療用具は、バルーンを生体内の治療箇所の周辺に配し、シャフト部の第1内腔を通して流体をバルーンへ供給し、バルーンを拡張させて使用する。本発明の医療用具は、逆止弁部を有しているため、バルーンの第2内腔へ流体を供給した後も、バルーンの拡張状態を長期間に亘って維持できる。そのため、バルーンを生体内に留置することにより、生体内の治療箇所と、その周辺組織との距離を長期間に亘って離すことができるため、癒着を防止できる。また、バルーンに接続されているシャフト部を生体の外へ突出させておくことにより、シャフト部の第1内腔を通して流体を追加して生体内に留置したバルーンを拡張させたり、バルーンの第2内腔に供給した流体をシャフト部の第1内腔を通して除去し、バルーンを収縮させることが容易にできる。
【0012】
以下、本発明に係る医療用具の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1および
図2は、本発明に係る医療用具の実施形態を示しており、
図1は、バルーンを拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図を示しており、
図2は、
図1に示した医療用具について、平面に垂直な面の断面図を示している。
【0014】
図1および
図2において、xはシャフト部の長手方向、yは医療用具を平置きした平面に平行な面におけるシャフト部の長手方向に対して垂直な方向、zは医療用具を平置きした平面に垂直な方向、をそれぞれ示している。
【0015】
本発明に係る医療用具101は、シャフトを有しており、該シャフトは、近位側から遠位側へ長手方向xに延在している第1内腔1aを有するシャフト部1と、該シャフト部1の遠位端に配されている逆止弁部3を有している。逆止弁部3は、例えば、シャフト部1と一体であり、シャフト部1の遠位端部を圧縮する等して形成されたものであってもよいし、シャフト部1とは別体であり、シャフト部1とは別部材の逆止弁を準備し、該逆止弁がシャフト部1の遠位端に配されていてもよい。シャフト部1と逆止弁部3との境界は、シャフト部1の長手方向に対して垂直な面における第1内腔1aの形状と該シャフト部1の長手方向に対して垂直な面に平行な面における逆止弁部3の第3内腔3aの形状を比較したとき、内腔の形状が変化する位置とする。
【0016】
シャフト部1の遠位部には、バルーン2が配されている。バルーン2は、第2内腔2aを有しており、該第2内腔2aは、シャフト部1の第1内腔1aと連通している。
【0017】
バルーン2は、シャフト部1の遠位部における外周面に固定されている固定領域4Aと、外周面に固定されていない非固定領域4Bとを有している。バルーン2がシャフト部1に固定されていない非固定領域4Bを有することにより、バルーン2の形を自由に変形させることができるため、生体内の所望の位置にバルーン2を留置させることができる。
【0018】
バルーン2とシャフト部1の遠位部との固定領域4Aは、シャフト部1の遠位端に配されている逆止弁部3の近位端よりも近位側に、配されていることが好ましい。
【0019】
逆止弁部3は、第1膜体と第2膜体とを有しており、該逆止弁部3は、前記第1内腔1aおよび前記第2内腔2aと連通している第3内腔3aを有している。即ち、シャフト部1の第1内腔1aと、バルーン2の第2内腔2aは、逆止弁部3の第3内腔3aを介して連通しているため、シャフト部1の第1内腔1aを通してバルーン2へ流体等を供給したり、バルーン2の第2内腔2aに貯留していた流体等をシャフト部1の第1内腔1aを通して排出できる。
【0020】
逆止弁部3について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3は、
図2に示した逆止弁部3におけるI-I断面図である。
【0021】
逆止弁部3は、第1膜体31と第2膜体32とを有しており、第1膜体31と第2膜体32は、第3内腔3aを挟んで対向して配置されている。
【0022】
第1膜体のxz平面における厚み31dは、例えば、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.075mm以上である。第1膜体の厚み31dは、例えば、0.1mm以下が好ましく、より好ましくは0.095mm以下、更に好ましくは0.09mm以下である。
【0023】
第2膜体のxz平面における厚み32d、例えば、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.075mm以上である。第2膜体の厚み32dは、例えば、0.1mm以下が好ましく、より好ましくは0.095mm以下、更に好ましくは0.09mm以下である。
【0024】
第1膜体のxz平面における厚み31dと第2膜体のxz平面における厚み32dとの合計厚み(31d+32d)は、例えば、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.12mm以上、更に好ましくは0.15mm以上である。第1膜体の厚み31dと第2膜体の厚み32dとの合計厚み(31d+32d)は、例えば、0.2mm以下が好ましく、より好ましくは0.18mm以下、更に好ましくは0.16mm以下である。
【0025】
逆止弁部3のxy平面における最大幅Wは、例えば、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.75mm以上である。逆止弁部3の最大幅Wは、例えば、1.1mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.9mm以下である。
【0026】
第1膜体の厚み31dと第2膜体の厚み32dは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0027】
逆止弁部3の最大幅Wは、第1膜体の厚み31dと第2膜体の厚み32dとの合計厚み(31d+32d)に対して大きいことが好ましい。逆止弁部3の最大幅Wは、前記合計厚み(31d+32d)に対して、例えば、3倍以上であることが好ましい。逆止弁部3の最大幅Wは、前記合計厚み(31d+32d)に対して、4倍以上がより好ましく、更に好ましくは5倍以上である。逆止弁部3の最大幅Wの上限は特に限定されないが、前記合計厚み(31d+32d)に対して、例えば、10倍以下が好ましい。逆止弁部3の最大幅Wの上限は、前記合計厚み(31d+32d)に対して、9倍以下がより好ましく、更に好ましくは8倍以下である。
【0028】
逆止弁部3の最大幅Wは、シャフト部1の外径Lよりも小さくてもよいし、シャフト部1の外径Lと同じ大きさであってもよいが、シャフト部1の外径Lよりも大きいことが好ましい。逆止弁部3の最大幅Wは、シャフト部1の外径Lに対して、例えば、1.3倍以上が好ましい。これによりシャフト部1からバルーン2へ流体等を供給したり、バルーン2の第2内腔2aに貯留していた流体等をシャフト部1から排出しやすくなる。逆止弁部3の最大幅Wは、シャフト部1の外径Lに対して、1.4倍以上がより好ましく、更に好ましくは1.5倍以上である。逆止弁部3の最大幅Wは、シャフト部1の外径Lに対して、2倍以下が好ましく、より好ましくは1.9倍以下、更に好ましくは1.8倍以下である。
【0029】
逆止弁部3は、近位側の幅よりも遠位側の幅が小さくなっていてもよいし、近位側の幅と遠位側の幅が同じであってもよいが、近位側の幅よりも遠位側の幅が大きくなっており、近位側から遠位側に向けて幅が増大している区間を有することが好ましい。これによりシャフト部1からバルーン2へ流体等を供給したり、バルーン2の第2内腔2aに貯留していた流体等をシャフト部1から排出しやすくなる。
【0030】
シャフト部1を構成する素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト部1を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂であることが好ましい。これにより、シャフト部1の柔軟性を高めることができる。
【0031】
逆止弁部3を構成する素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、逆止弁部3を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂であることが好ましい。これにより、逆止弁部3の柔軟性を高めることができる。
【0032】
シャフト部1を構成する素材と、逆止弁部3を構成する素材は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。これにより逆止弁部3を形成しやすくなる。
【0033】
バルーン2の第2内腔2aに流体等を供給して拡張させたとき、該バルーン2は、膨れて拡張する拡張領域5Aと、流体等を供給してもほとんど膨れず、拡張しない非拡張領域5Bを有しており、逆止弁部3は、バルーン2の非拡張領域5Bに位置していることが好ましい。これによりバルーン2の拡張領域5Aに逆止弁部3が存在しなくなるため、バルーン2を小さく折畳むことができる。その結果、生体内にバルーン2を挿入するための挿入口を小さくすることができ、患者への負担を軽減できる。
【0034】
逆止弁部3は、バルーン2の非拡張領域5B内に位置していればよく、逆止弁部3の最大幅Wが、バルーン2の非拡張領域5Bの幅よりも大きい場合は、逆弁部3を湾曲させたり、折畳めばよい。
【0035】
バルーン2を拡張させたときの外観形状は特に限定されず、例えば、球状や筒状であってもよいが、平面状であることが好ましい。これによりバルーン2を生体内の治療箇所の周辺に配し、拡張させたときに、広範囲に亘って治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できる。
【0036】
バルーン2の拡張時におけるxy平面における最大幅Rは、例えば、4.5mm以上であることが好ましい。これによりバルーン2を生体内の治療箇所の周辺に配し、拡張させたときに、広範囲に亘って治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できる。バルーン2の拡張時における最大幅Rは、7.5mm以上がより好ましく、更に好ましくは12mm以上である。バルーン2の拡張時における最大幅Rは、例えば、400mm以下が好ましく、より好ましくは360mm以下、更に好ましくは300mm以下である。
【0037】
バルーン2の拡張時におけるxz平面における最大厚みTは、例えば、3mm以上であることが好ましい。これによりバルーン2を生体内の治療箇所の周辺に配し、拡張させたときに、治療箇所とその周辺組織との距離を離すことができるため、癒着を防止できる。バルーン2の拡張時における最大厚みTは、5mm以上がより好ましく、更に好ましくは8mm以上である。バルーン2の拡張時における最大厚みTは、例えば、20mm以下が好ましく、より好ましくは18mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
【0038】
バルーン2の拡張時におけるxy平面における最大幅Rと、拡張時におけるxz平面における最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、例えば、1.5~20が好ましい。これによりバルーン2を生体内の治療箇所の周辺に配し、拡張させたときに、広範囲に亘って治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できる。前記比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.8以上がより好ましく、更に好ましくは2以上である。前記比(最大幅R/最大厚みT)の値は、15以下がより好ましく、更に好ましくは10以下である。
【0039】
バルーン2を拡張させ、平面に平置きしたとき、バルーン2のxy平面における平面視面積Sは、例えば、10~200cm2であることが好ましい。これによりバルーン2を生体内の治療箇所の周辺に配し、拡張させたときの面積が広いため、広範囲に亘って治療箇所とその周辺組織との癒着を防止できる。バルーン2の拡張時における平面視面積Sは、20cm2以上がより好ましく、更に好ましくは30cm2以上である。バルーン2の拡張時における平面視面積Sは、180cm2以下がより好ましく、更に好ましくは150cm2以下である。
【0040】
バルーン2を構成する材料は、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0041】
バルーン2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム、等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、バルーン2を構成する材料は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂が好適に用いられ、特にポリアミド系樹脂であることが好ましい。
【0042】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン12、ナイロン11等のポリアミドが好適に用いられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が特に好適に用いられる。バルーン2の薄膜化や柔軟性を高める点では、エラストマーを用いることが好ましい。中でも、ポリアミドエラストマーを用いることがより好ましく、ポリアミドエラストマーとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等が挙げられる。中でも、降伏強度を高め、バルーンの寸法安定性を良好にする点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
【0043】
バルーン2を構成する材料は、生分解性材料であることが好ましい。
【0044】
バルーン2は、表面に癒着防止処理が施されていてもよい。癒着防止処理としては、例えば、バルーン2の表面に癒着防止剤を塗布する方法が挙げられる。
【0045】
次に、本発明に係る医療用具を製造できる方法について説明する。本発明に係る医療用具は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトを準備する工程(以下、シャフト準備工程ということがある)、前記シャフトの遠位端に逆止弁部を配する工程(以下、逆止弁部形成工程ということがある)、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔を有し、遠位端および近位端にそれぞれ開口を有するバルーンを準備する工程(以下、バルーン準備工程ということがある)、前記シャフトを該シャフトの近位端から前記バルーンの遠位端側の開口に挿入する工程(以下、シャフト挿入工程ということがある)、前記バルーンの近位端部を前記シャフトに固定する工程(以下、バルーン固定工程ということがある)、前記バルーンの遠位端を封止する工程(以下、バルーン封止工程ということがある)、を含むことにより製造できる。以下、順に説明する。
【0046】
[シャフト準備工程]
シャフト準備工程では、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトを準備する。
【0047】
[逆止弁部形成工程]
逆止弁部形成工程では、シャフト準備工程で準備したシャフトの遠位端に逆止弁部を配する。逆止弁部3は、シャフトとは別部材として準備した逆止弁をシャフトの遠位端に接続してもよいし、シャフトの遠位端部を加工して逆止弁部3を形成してもよい。シャフトとは別部材として準備する逆止弁としては、例えば、第1膜体と第2膜体を準備し、これらを重ね合せ、側部を溶着等により封止したものを用いることができる。また、逆止弁部3は、例えば、シャフトの遠位端部を加熱し、シャフトの径方向に圧縮してシャフトの遠位端部を潰して形成できる。
【0048】
[バルーン準備工程]
バルーン準備工程では、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第2内腔2aを有し、遠位端および近位端にそれぞれ開口を有するバルーン(以下、封止前バルーンということがある)を準備する。封止前バルーンは、両端が封止されておらず、筒状を呈している。
【0049】
[シャフト挿入工程]
シャフト挿入工程では、
図4に示すように、シャフト11を、該シャフト11の近位端1eから封止前バルーン2bの遠位端2f側の開口に挿入する。
【0050】
[バルーン固定工程]
バルーン固定工程では、封止前バルーン2bの近位端部をシャフト部1に固定する。封止前バルーン2bの近位端部をシャフト部1に固定する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いて封止する方法や、熱溶着により封止する方法が挙げられる。
【0051】
[バルーン封止工程]
バルーン封止工程では、封止前バルーン2bの遠位端2fを封止し、袋状のバルーンを形成する。封止前バルーン2bの遠位端2fを封止する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いて封止する方法や、熱溶着により封止する方法が挙げられる。
【0052】
封止前バルーン2bの遠位端2fを封止した後は、常法に従ってバルーン2を折畳むことが好ましい。これによりバルーン2を収縮状態にできるため、皮膚切開を小さくすることができ、より低侵襲な治療ができる。
【0053】
次に、本発明に係る医療用具を使用する方法について説明する。
【0054】
本発明に係る医療用具は、バルーン2を折畳んで縮径させた状態で、例えば、内視鏡のルーメンを通して生体内へ挿入し、治療箇所の周辺など所望の位置に配置してから、シャフト部1の第1内腔1aを通して流体をバルーン2の第2内腔2aへ供給してバルーン2を拡張させて使用できる。第2内腔2aへ供給する流体としては、気体または液体を用いることができる。気体としては、空気や酸素、或いは窒素などの不活性ガスを用いることができる。液体としては、生理食塩水を用いることができる。
【0055】
第2内腔2aへ流体を供給してバルーン2を拡張させた後は、シャフト部1の近位端側の一部が生体の外に出ている状態となるようにシャフト部1を途中で切断することが好ましい。シャフト部1の一部を生体の外へ出しておくことにより、必要に応じて容易に、バルーン2を拡張させたり、収縮させることができる。
【0056】
本発明に係る医療用具は、生体内に所定の期間留置させることができ、長期留置用として用いることができる。留置させる期間は、例えば、1週間以上であってもよいし、1ヶ月以上であってもよい。留置させる期間の上限は特に限定されないが、例えば、3ヶ月以下が好ましく、より好ましくは2ヶ月以下である。
【0057】
所定の期間留置させた後は、バルーン2を生体内から抜去することができる。バルーン2を生体内から抜去するには、シャフト部1の第1内腔1aから、例えば、カテーテルを挿入し、第2内腔2a内に供給した流体を吸引して排出し、バルーン2を収縮させることが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
101 医療用具
1 シャフト部
1a 第1内腔
2 バルーン
2a 第2内腔
3 逆止弁部
3a 第3内腔
31 第1膜体
32 第2膜体
4A 固定領域
4B 非固定領域
5A 拡張領域
5B 非拡張領域
11 シャフト
x シャフト部の長手方向
y 医療用具を平置きした平面に平行な面におけるシャフト部の長手方向に対して垂直な方向
z 医療用具を平置きした平面に垂直な方向