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特開2024-51763医療用具、および該医療用具の使用方法
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  • 特開-医療用具、および該医療用具の使用方法 図1
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  • 特開-医療用具、および該医療用具の使用方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051763
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】医療用具、および該医療用具の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61N5/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158080
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE05
4C082AG02
4C082AG32
4C082AR02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バルーンを備えた医療用具であって、バルーンを収縮させて折畳むことができ、しかも体内へ搬送しやすい医療用具を提供する。
【解決手段】近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔1aを有するシャフト1と、前記シャフトの遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔2aを有するバルーン2と、前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されている内挿部材3と、を有する医療用具101であって、前記バルーンは、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域4Aと前記外周面に固定されていない非固定領域4Bとを有し、前記内挿部材は、前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能であり、前記バルーンは、収縮時において前記内挿部材に巻き付けられて畳まれている医療用具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、
前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されている内挿部材と、
を有する医療用具であって、
前記バルーンは、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、
前記内挿部材は、前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能であり、
前記バルーンは、収縮時において前記内挿部材に巻き付けられて畳まれている医療用具。
【請求項2】
前記シャフトは、該シャフトの内側面に係止部Pを有しており、
前記内挿部材は、該内挿部材の外側面に係止部Qを有しており、
前記係止部Pと前記係止部Qは、接触可能に構成されており、
前記係止部Pと前記係止部Qの接触状態において、前記係止部Pは前記係止部Qよりも遠位側に配されている請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
収縮時の前記バルーンは、複数の羽根形状部を有しており、該羽根形状部は、前記内挿部材の外周に沿って巻かれている請求項1に記載の医療用具。
【請求項4】
拡張時の前記バルーンは、拡張領域と非拡張領域を有しており、前記シャフトの遠位端は、前記非拡張領域に位置している請求項1に記載の医療用具。
【請求項5】
拡張時の前記バルーンの最大幅Rと、拡張時の前記バルーンの最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.5~20である請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
前記バルーンは、前記第2内腔に放射線遮断物質が充填されている請求項1に記載の医療用具。
【請求項7】
近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位部に配されており、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、
前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されており、且つ前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能である内挿部材と、
を有する医療用具の使用方法であって、
前記シャフトの近位側に接続されている与圧器が前記バルーン内に放射線遮断物質を送給する送給ステップと、
放射線発生装置が、前記バルーンに対して放射線を放射する放射ステップと、
を有している使用方法。
【請求項8】
前記バルーンから前記内挿部材を抜去する抜去ステップ、を更に有する請求項7に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具、および該医療用具の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患部に放射線を照射して治療する放射線治療では、放射線が患部以外の周辺組織にも照射されてしまうことがあり周辺組織への放射線の影響が問題になっている。こうした放射線治療に関し、例えば、特許文献1には、アプリケータから放出される放射線量を減衰させ、放射線量から患者の近接皮膚組織を遮蔽するように構成された遮蔽システムが記載されている。この近接照射療法遮蔽システムは、バルーン部分およびカテーテル部分を有する近接照射療法アプリケータ、バルーン部分内に配置されるように構成された磁気吸引性粒子、および磁気吸引性粒子を引きつけるためにバルーンに近接する患者の皮膚外表面近くに配置されるように構成された磁石、を含んでいる。
【0003】
患部以外の周辺組織への影響を低減するため、近年では、放射線を局所に照射させる技術が開発されている。しかし、放射線を局所に照射させる技術開発が進んでも、照射箇所に近い周辺組織への影響は避けられないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010-512962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患部に放射線を照射したときの患部以外の周辺組織への放射線の影響を低減するには、患部とその周辺組織との物理的距離を大きくすることが考えられる。患部とその周辺組織との物理的距離を大きくするには、患部とその周辺組織との間に、例えば、放射線遮断性の部材を介在させることが考えられる。こうした部材としては、例えば、バルーンを用いることが考えられる。しかし、バルーンの多くは、遠位端と近位端の両端がシャフトの外周面に固定されているため、バルーンを患部とその周辺組織との間に介在させるには、シャフトも介在させる必要があり、介在させる場所に制限がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、バルーンを備えた医療用具であって、バルーンを収縮させて折畳むことができ、しかも体内へ搬送しやすい医療用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明は、以下の通りである。
[1] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、前記シャフトの遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されている内挿部材と、を有する医療用具であって、前記バルーンは、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、前記内挿部材は、前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能であり、前記バルーンは、収縮時において前記内挿部材に巻き付けられて畳まれている医療用具。
[2] 前記シャフトは、該シャフトの内側面に係止部Pを有しており、前記内挿部材は、該内挿部材の外側面に係止部Qを有しており、前記係止部Pと前記係止部Qは、接触可能に構成されており、前記係止部Pと前記係止部Qの接触状態において、前記係止部Pは前記係止部Qよりも遠位側に配されている[1]に記載の医療用具。
[3] 収縮時の前記バルーンは、複数の羽根形状部を有しており、該羽根形状部は、前記内挿部材の外周に沿って巻かれている[1]または[2]に記載の医療用具。
[4] 拡張時の前記バルーンは、拡張領域と非拡張領域を有しており、前記シャフトの遠位端は、前記非拡張領域に位置している[1]~[3]のいずれかに記載の医療用具。
[5] 拡張時の前記バルーンの最大幅Rと、拡張時の前記バルーンの最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.5~20である[1]~[4]のいずれかに記載の医療用具。
[6] 前記バルーンは、前記第2内腔に放射線遮断物質が充填されている[1]~[5]のいずれかに記載の医療用具。
[7] 近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、前記シャフトの遠位部に配されており、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されており、且つ前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能である内挿部材と、を有する医療用具の使用方法であって、前記シャフトの近位側に接続されている与圧器が前記バルーン内に放射線遮断物質を送給する送給ステップと、放射線発生装置が、前記バルーンに対して放射線を放射する放射ステップと、を有している使用方法。
[8] 前記バルーンから前記内挿部材を抜去する抜去ステップ、を更に有する[7]に記載の使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療用具は、バルーンを備えており、該バルーンは、シャフトの遠位部における外周面に固定されていない非固定領域を有している。バルーンの一部がシャフトに固定されていないことにより、バルーンの形状を自由に変化させることができるため、治療箇所とその周辺組織との空間にバルーンを配することができる。また、シャフトの第1内腔およびバルーンの第2内腔に、該シャフトの長手方向に移動可能な内挿部材を配しているため、バルーンを収縮させて内挿部材に巻き付けて折畳むことができる。その結果、バルーンの径を小さくすることができ、バルーンを挿入するための挿入口を小さくすることができるため、患者への負担を軽減できる。また、バルーンの内腔に内挿部材が配されていることにより、体内へ搬送しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る医療用具の実施形態について、バルーンを拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図である。
図2図2は、バルーンの第2内腔に内挿部材を配した状態において、該内挿部材の長手方向に垂直な方向の断面図を示しており、(a)はバルーンの収縮状態を示しており、(b)はバルーンを収縮させて複数の羽根形状部が内挿部材に巻き付けられて畳まれている状態を示している。
図3図3は、本発明に係る医療用具の他の実施形態について、バルーンを拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る医療用具について、実施形態に基づいてより具体的に説明するが、本発明は下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。以下では、近位側とは使用者(術者)の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側(すなわち処置対象側)を指す。また、長手方向とは近位側から遠位側への方向を指す。
【0011】
本発明に係る医療用具は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、前記シャフトの遠位部に配されており、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されている内挿部材と、を有する医療用具であって、前記バルーンは、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、前記内挿部材は、前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能であり、前記バルーンは、収縮時において前記内挿部材に巻き付けられて畳まれている医療用具である。
【0012】
本発明に係る医療用具は、シャフトの遠位部における外周面に固定されている領域と、固定されていない領域とを有するバルーンを備えており、該シャフトおよびバルーンの内腔に、該シャフトの長手方向に移動可能である内挿部材を配しているため、該内挿部材に、収縮させたバルーンを折畳んで巻き付けることができる。また、バルーンの第2内腔に内挿部材を配しているため、体内へ搬送しやすくなる。しかも、この内挿部材は、シャフトの長手方向に移動可能であるため、内挿部材に巻き付けて畳んだ状態のバルーンを体内へ搬送した後、内挿部材を抜去することにより、シャフトの内腔を通してバルーンの内腔へ流体を供給できる。バルーンの内腔へ、例えば、放射線遮断物質を充填し、該バルーンに対して放射線発生装置から放射線を放射することにより、放射線を放射した側とは反対側における生体組織の被曝を防止できる。
【0013】
以下、本発明に係る医療用具の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る医療用具の実施形態を示しており、バルーンを拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図を示している。図1において、xはシャフトの長手方向、yは医療用具を平置きした平面に平行な面におけるシャフトの長手方向に対して垂直な方向、をそれぞれ示している。なお、医療用具を平置きした平面に垂直な方向をz方向とする(図示せず)。
【0014】
本発明に係る医療用具101は、シャフト1を有しており、該シャフト1は、近位側から遠位側へ長手方向xに延在している第1内腔1aを有している。シャフト1の遠位部には、バルーン2が配されている。バルーン2は、第2内腔2aを有しており、該第2内腔2aは、シャフト1の第1内腔1aと連通している。また、シャフト1の第1内腔1aおよびバルーン2の第2内腔2aに内挿部材3が配されている。内挿部材3は、シャフト1に対して該シャフト1の長手方向に移動可能である。移動可能とは、シャフト1に対して内挿部材3を抜き差しできることを指す。
【0015】
内挿部材3を構成する素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、内挿部材3を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂であることが好ましい。これにより、内挿部材3の柔軟性を高めることができる。
【0016】
バルーン2は、シャフト1の遠位部における外周面に固定されている固定領域4Aと、外周面に固定されていない非固定領域4Bとを有する。バルーン2がシャフト1に固定されていない非固定領域4Bを有することにより、バルーン2の形を自由に変形させることができるため、生体内の所望の位置にバルーン2を留置させることができる。固定領域4Aの遠位端は、非固定領域4Bの近位端よりも近位側に位置していることが好ましい。
【0017】
バルーン2は、収縮時において内挿部材3に巻き付けられて畳まれている。これにより生体内にバルーン2を挿入するための挿入口を小さくすることができ、患者への負担を軽減できる。
【0018】
バルーン2は、収縮時に羽根形状部を有していることが好ましい。羽根形状部は、バルーン2が収縮している状態において、バルーン2の内側表面同士が接している部分を指す。羽根形状部の数は、1つであってもよく、複数であってもよいが、中でも、少なくとも2つまたは3つであることが好ましい。羽根形状部がこのように構成されていることにより、バルーン2の収縮時にバルーン2が折畳まれやすくなる。
【0019】
収縮時のバルーン2は、複数の羽根形状部を有しており、該羽根形状部は、内挿部材3の外周に沿って巻かれていることが好ましい。こうした構成例について図2を用いて説明する。図2は、バルーン2の第2内腔2aに内挿部材3を配した状態において、該内挿部材3の長手方向に垂直な方向の断面図を示している。図2において、21はバルーン2の羽根形状部を示している。図2の(a)は、バルーン2の収縮状態を示しており、図2の(b)は、バルーン2を収縮させて複数の羽根形状部21が内挿部材3に巻き付けられて畳まれている状態を示している。
【0020】
図2の(a)に示すように、収縮時のバルーン2は、複数の羽根形状部21を有していることが好ましい。バルーン2の複数の羽根形状部21の巻き方向は、内挿部材3の外周に沿って異なる方向でもよいが、図2の(b)に示すように、同じ方向であることが好ましい。これにより羽根形状部21を折畳んだときに、羽根形状部21の重なり厚さを内挿部材3の外周に亘って均一にできる。
【0021】
バルーン2は、該バルーン2の第2内腔2aに流体等を供給して拡張させたとき、膨れて拡張する拡張領域5Aと、流体等を供給してもほとんど膨れず、拡張しない非拡張領域5Bを有しており、シャフト1の遠位端は、バルーン2の非拡張領域5Bに位置していることが好ましい。これによりバルーン2の拡張領域5Aにシャフト1の遠位端が存在しなくなるため、バルーン2を小さく折畳むことができる。その結果、生体内にバルーン2を挿入するための挿入口を小さくすることができ、患者への負担を軽減できる。
【0022】
バルーン2は、シャフト1の遠位端を含む遠位部における外周面に固定されており、シャフト1の遠位端は、固定領域4Aに位置していてもよいが、図1に示すように、シャフト1の遠位端を含まない遠位部における外周面に固定されており、シャフト1の遠位端は、非固定領域4Bに位置していることが好ましい。シャフト1の遠位端が、非固定領域4Bに位置していることにより、バルーン2がシャフト1から脱落しにくくなる。
【0023】
バルーン2がシャフト1の遠位端を含まない遠位部における外周面に固定されている場合、該バルーン2は、第2内腔2aにシャフト1が配されていない非存在領域6を有することが好ましい。
【0024】
バルーン2を拡張させたときの外観形状は特に限定されず、例えば、球状や筒状であってもよいが、平面状が好ましい。平面状であることによりバルーン2を生体内で拡張させたときに、治療箇所の周辺の広範囲に亘って配することができる。
【0025】
バルーン2の拡張時におけるxy平面における最大幅Rは、例えば、4.5mm以上が好ましい。これによりバルーン2を生体内で拡張させたときに、治療箇所の周辺の広範囲に亘って配することができる。バルーン2の拡張時における最大幅Rは、7.5mm以上がより好ましく、更に好ましくは12mm以上である。一方、バルーン2の拡張時における最大幅Rは、例えば、400mm以下が好ましく、より好ましくは360mm以下、更に好ましくは300mm以下である。
【0026】
バルーン2の拡張時におけるxz平面における最大厚みTは、例えば、3mm以上が好ましい。これによりバルーン2を生体内で拡張させたときに、治療箇所とその周辺組織との距離を離すことができる。バルーン2の拡張時における最大厚みTは、5mm以上がより好ましく、更に好ましくは8mm以上である。一方、バルーン2の拡張時における最大厚みTは、例えば、20mm以下が好ましく、より好ましくは18mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
【0027】
バルーン2の拡張時におけるxy平面における最大幅Rと、拡張時におけるxz平面における最大厚みTとの比(最大幅R/最大厚みT)の値は、例えば、1.5~20が好ましい。これによりバルーン2を生体内で拡張させたときに、治療箇所の周辺の広範囲に亘って配することができる。前記比(最大幅R/最大厚みT)の値は、1.8以上がより好ましく、更に好ましくは2以上である。前記比(最大幅R/最大厚みT)の値は、15以下がより好ましく、更に好ましくは10以下である。
【0028】
バルーン2を拡張させ、平面に平置きしたとき、バルーン2のxy平面における平面視面積Sは、例えば、10~200cmが好ましい。これによりバルーン2を生体内で拡張させたときの面積が広いため、治療箇所の周辺の広範囲に亘って配することができる。バルーン2の拡張時における平面視面積Sは、20cm以上がより好ましく、更に好ましくは30cm以上である。一方、バルーン2の拡張時における平面視面積Sは、180cm以下がより好ましく、更に好ましくは150cm以下である。
【0029】
バルーン2の厚みは、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。バルーン2の厚みの下限値をこのように設定することにより、バルーン2の強度を十分なものとすることができる。バルーン2の厚みは、45μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは35μm以下である。
【0030】
バルーン2を構成する材料は、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】
バルーン2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム、等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、バルーン2を構成する材料は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂が好適に用いられ、特にポリアミド系樹脂であることが好ましい。
【0032】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン12、ナイロン11等のポリアミドが好適に用いられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が特に好適に用いられる。バルーン2の薄膜化や柔軟性を高める点では、エラストマーを用いることが好ましい。中でも、ポリアミドエラストマーを用いることがより好ましく、ポリアミドエラストマーとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等が挙げられる。中でも、降伏強度を高め、バルーンの寸法安定性を良好にする点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
【0033】
バルーン2を構成する材料は、生分解性材料であることが好ましい。
【0034】
バルーン2は、第2内腔2aに放射線遮断物質が充填されるために用いられることが好ましい。放射線遮断物質としては、例えば、鉛、銅、鉄などを含む液体を用いることができる。
【0035】
シャフト1を構成する素材としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト1を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂であることが好ましい。これにより、シャフト1の柔軟性を高めることができる。
【0036】
シャフト1は、該シャフト1の内側面に係止部Pを有しており、内挿部材3は、該内挿部材3の外側面に係止部Qを有しており、前記係止部Pと前記係止部Qは、接触可能に構成されており、前記係止部Pと前記係止部Qの接触状態において、前記係止部Pは前記係止部Qよりも遠位側に配されていることが好ましい。係止部Pと係止部Qを設け、シャフト1の第1内腔1aを通して内挿部材3をバルーン2の第2内腔2aへ挿入したときに、内挿部材3の遠位端が、バルーン2の内側面に接触しないように構成することが好ましい。
【0037】
シャフト1の内側面に係止部Pを設け、内挿部材3の外側面に係止部Qを設けた実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る医療用具の他の実施形態を示しており、バルーン2を拡張させ、平面に平置きした状態における平面に平行な面の断面図を示している。図3において、他の図面と同じ部分には同じ符号を付すことによって重複説明を避ける。
【0038】
図3に示すように、シャフト1の第1内腔1aを通して内挿部材3をバルーン2の第2内腔2aへ挿入したときに、係止部Pと係止部Qを設けることによって、内挿部材3の遠位端がバルーン2を貫通してバルーン2を破損することを防止できる。
【0039】
係止部Pおよび係止部Qの形状は特に限定されず、係止部Pは、シャフト1の内側面から内側に向かって凸状であることが好ましく、係止部Qは、内挿部材3の外側面から外側に向かって凸状であることが好ましい。
【0040】
次に、本発明に係る医療用具を使用する方法について説明する。本発明に係る医療用具は、近位側から遠位側へ長手方向に延在している第1内腔を有するシャフトと、前記シャフトの遠位部に配されており、前記シャフトの遠位部における外周面に固定されている固定領域と前記外周面に固定されていない非固定領域とを有し、且つ前記第1内腔と連通する第2内腔を有するバルーンと、前記シャフトの前記第1内腔および前記バルーンの前記第2内腔に配されており、且つ前記シャフトに対して該シャフトの長手方向に移動可能である内挿部材と、を有するものであり、この医療用具を使用するにあたっては、前記シャフトの近位側に接続されている与圧器が前記バルーン内に放射線遮断物質を送給する送給ステップと、放射線発生装置が、前記バルーンに対して放射線を放射する放射ステップと、を有していることが好ましい。また、上記医療用具を使用するにあたっては、前記送給ステップより前に、前記バルーンから前記内挿部材を抜去する抜去ステップ、を更に有することが好ましい。
【0041】
まず、バルーン2を折畳んで縮径させた状態で、該バルーン2を生体内へ挿入する。バルーン2は、例えば、内視鏡のルーメンを通して生体内へ挿入し、所望の位置に配置する。所望の位置とは、例えば、放射線を放射して治療する箇所の周辺などを指す。バルーン2を所望の位置に配置した後、上記抜去ステップを行う。抜去ステップは、バルーン2から内挿部材3を抜去する工程である。バルーン2から内挿部材3を抜去した後、上記送給ステップを行う。送給ステップは、シャフト1の近位側に接続されている与圧器がバルーン2内に放射線遮断物質を送給する工程である。放射線遮断物質が、シャフト1の第1内腔1aを通してバルーン2の第2内腔2aへ供給されることにより、バルーン2は生体内で拡張する。放射線遮断物質を送給してバルーン2を拡張させた後、上記放射ステップを行う。放射ステップは、放射線発生装置が、バルーン2に対して放射線を放射する工程である。
【符号の説明】
【0042】
101 医療用具
1 シャフト
1a 第1内腔
2 バルーン
2a 第2内腔
3 内挿部材
4A 固定領域
4B 非固定領域
5A 拡張領域
5B 非拡張領域
x シャフトの長手方向
y 医療用具を平置きした平面に平行な面におけるシャフトの長手方向に対して垂直な方向
z 医療用具を平置きした平面に垂直な方向
P 係止部
Q 係止部
R バルーンの拡張時におけるxy平面における最大幅
図1
図2
図3