(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005177
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】自走式ハンドパレット装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B66F9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105250
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
(72)【発明者】
【氏名】郡山 純
(72)【発明者】
【氏名】八幡 真純
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA03
3F333AB07
3F333AE02
3F333BA02
3F333BD02
3F333CA01
(57)【要約】
【課題】スロープ(傾斜面)を有しているフロアであっても、荷物の揚げおろし作業に支障をきたすことのない自走式ハンドパレット装置を提供する。
【解決手段】走行用駆動輪13を備えたドライブユニット5と、前記ドライブユニット5を備えた本体部1と、前記本体部1から水平方向H1に延設された爪部7と、を含み、前記本体部1には、前記爪部7の非水平状態を検出した際に、前記本体部を上下移動させることにより、前記爪部7の水平状態を保持する移動機構17を備えた。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動輪を備えたドライブユニットと、前記ドライブユニットを備えた本体部と、前記本体部から水平方向に延設された爪部と、を含み、
前記本体部には、前記爪部の非水平状態を検出した際に、前記本体部を上下移動させることにより、前記爪部の水平状態を保持する移動機構を備えたことを特徴とする自走式ハンドパレット装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記本体部に備えられた上下昇降機構と、
前記ドライブユニットを一体に備え、前記上下昇降機構に連結した上下移動部と、
前記上下移動部に備えたガイドローラーと、
前記本体部に備えられ、前記ガイドローラーを転動可能に組み込むガイドレールと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の自走式ハンドパレット装置。
【請求項3】
前記上下昇降機構は油圧シリンダーで、
前記上下移動部は、前記油圧シリンダーのシリンダー本体又はシリンダーロッドのいずれかに固定されたドライブフレームであって、
前記ドライブフレームは、前記シリンダー本体又はシリンダーロッドのいずれかに固定されて上下移動可能な第一部材と、前記第一部材の上端から水平方向に延設され、前記ドライブユニットの上端領域に一体に固定される第二部材と、で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自走式ハンドパレット装置。
【請求項4】
前記爪部の水平状態を検出する角度センサーを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自走式ハンドパレット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の駆動輪を備えた自走式ハンドパレット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自走式のハンドパレット装置が、工場、倉庫などにおいて、資材などの荷物の運搬作業に用いられている(特許文献1参照。)。
このような自走式のハンドパレット装置は、フォークリフトなどと比して、次のような利点を有している。
・狭い場所での作業に適している。
・法定点検などの制限もなく簡単な始業点検だけでよい。
・運転技能講習などの資格が不要であるとともに、熟練作業員でなくても安全かつ的確に操作ができる。
【0003】
この種の自走式のハンドパレット装置は、駆動輪を含むドライブユニットを備えた本体部と、本体部の後方から水平方向に延設された爪部(フォーク)と、で構成されており、遠隔操作によって移動する場合と、作業者がハンドルを操作して移動する場合とがある。なお、本明細書では、本体部を前、爪部を後ろにして移動する場合の前方を前、後方を後ろと称する。
【0004】
ところで、工場や倉庫などのフロアには、段差や傾斜(スロープ含む)を有していることもある。
例えば、エレベータを介して荷物を上層階と下層階との間を移動させることがあるが、エレベータ前のフロア面にスロープ(傾斜面)を有していることがある。
ここで、従来のハンドパレット装置を用いてエレベータ内に荷物を搬入する場合と、エレベータ内から荷物を搬出する場合について説明する。
【0005】
(エレベータ内への荷物搬入時)
パレット上に載せた荷物を、差込部に差し込んだ爪部で持ち上げてエレベータの室内に持ち込む。このとき、装備されているエレベータが、ハンドパレット装置ごと室内に入り込めるほど大型のものであればよいが、ハンドパレット装置ごとは入れないエレベータである場合、エレベータの入口手前でハンドパレット装置を一旦停止させ、その状態で荷物のみをエレベータ内に入れる作業をする。
しかし、エレベータ直前のフロア面にスロープ(傾斜面)を有しているような状況である場合、エレベータの室内に荷物を降ろし、ハンドパレット装置を後退させてパレットの差込部から爪部を抜き外そうとしても、スロープによって装置全体が傾斜し、爪部が上向き傾斜状態になっているため、差込部の上壁内面に爪部が突き当たってしまい、うまく抜き外すことができないといった不都合が生じ得る。
なお、パレット装置ごと入り込める大型のエレベータであっても、奥から順に荷物を積み込んでいき、エレベータの入口側近くに荷物を積み込んで爪部を抜き外そうとしたときには、本体部はスロープに位置し、爪部が傾斜状態となってしまうため、上述したのと同様の問題が生じ得るものである。
【0006】
(エレベータ内からの荷物搬出時)
また、エレベータ内から荷物を搬出しようとする際には、爪部側を前にしてハンドパレット装置をエレベータ室内方向に移動させるが、エレベータ直前のスロープを移動し、パレットの差込部に近づいたとき、スロープによって装置全体が傾斜し、爪部が上向き傾斜状態になっているため、爪部が差込部の上壁内面に突き当たって挿入できず、荷物を搬出し得ないといった不都合が生じ得る。
【0007】
なお、このようなエレベータ内への荷物の搬入又はエレベータ内からの荷物の搬出時に起こる上記現象と同様の現象は、スロープを有するフロア面に荷物を置いたりする場合にも当然に生じ得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スロープ(傾斜面)を有しているフロアであっても、荷物の揚げおろし作業に支障をきたすことのない自走式ハンドパレット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、第1の本発明が成した技術的手段は、走行用駆動輪を備えたドライブユニットと、前記ドライブユニットを備えた本体部と、前記本体部から水平方向に延設された爪部と、を含み、
前記本体部には、前記爪部の非水平状態を検出した際に、前記本体部を上下移動させることにより、前記爪部の水平状態を保持する移動機構を備えたことを特徴とする自走式ハンドパレット装置としたことである。
【0011】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記移動機構は、
前記本体部に備えられた上下昇降機構と、
前記ドライブユニットを一体に備え、前記上下昇降機構に連結した上下移動部と、
前記上下移動部に備えたガイドローラーと、
前記本体部に備えられ、前記ガイドローラーを転動可能に組み込むガイドレールと、
を含むことを特徴とする自走式ハンドパレット装置としたことである。
【0012】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記上下昇降機構は油圧シリンダーで、
前記上下移動部は、前記油圧シリンダーのシリンダー本体又はシリンダーロッドのいずれかに固定されたドライブフレームであって、
前記ドライブフレームは、前記シリンダー本体又はシリンダーロッドのいずれかに固定されて上下移動可能な第一部材と、前記第一部材の上端から水平方向に延設され、前記ドライブユニットの上端領域に一体に固定される第二部材と、で構成されていることを特徴とする自走式ハンドパレット装置としたことである。
【0013】
第4の本発明は、第1の本発明乃至第3の本発明のいずれかにおいて、前記爪部の水平状態を検出する角度センサーを備えたことを特徴とする自走式ハンドパレット装置としたことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スロープ(傾斜面)を有しているフロアであっても、荷物の揚げおろし作業に支障をきたすことのない自走式ハンドパレット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明ハンドパレット装置の一実施形態を示す概略全体側面図である。
【
図2】本発明ハンドパレット装置の一実施形態を示す概略全体斜視図である。
【
図3】本発明ハンドパレット装置の一実施形態を示す概略全体平面図である。
【
図4】本発明ハンドパレット装置の一実施形態を一部省略して示す概略斜視図である。
【
図7A】本発明ハンドパレット装置の動作概略状態を示し、(a)は爪部の傾斜状態で、パレットの差込部の上壁内面に爪部が突き当たって抜き外せない状態、(b)は移動機構を作動させて爪部の水平状態を保持させた状態である。
【
図7B】本発明ハンドパレット装置の動作概略状態を示し、(a)は爪部の傾斜状態で、パレットの差込部の上壁内面に爪部が突き当たって差し込めない状態、(b)は移動機構を作動させて爪部の水平状態を保持させた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るハンドパレット装置について、添付図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、何等これらに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計可能である。
なお、本実施形態では、本体部側を前方、爪部(フォーク)側を後方として便宜上説明する。
【0017】
本実施形態のハンドパレット装置は、本体部(車体部ともいう。)1のケーシング3内に、走行用駆動輪13を備えたドライブユニット5を上下移動可能に配設し、前記本体部1の後方側には、水平方向(図中矢印H1で示す方向)に延設された左右一対の爪部7,7を含んで構成されている(
図1乃至
図4参照。)。
本体部3には、爪部7の非水平状態(傾斜状態)を検出した際に、ドライブユニット5を鉛直方向(図中矢印V1で示す方向)で上下移動させて走行用駆動輪13を上下移動させることにより、爪部7の水平状態を保持する移動機構17を備えている(
図4乃至
図6参照。)。図中、符号29は、爪部7の先端領域に配設されている従動輪である。
また、本実施形態では、ハンドル部を備えていない形態を採用している。すなわち、本実施形態のハンドパレット装置は遠隔自動操縦可能に構成されることを想定している。遠隔自動操縦機構について特に説明はしないが、周知の遠隔自動操縦機構が本発明の範囲内で設計変更可能である。なお、ハンドル部を備えることを何ら妨げるものではない。
【0018】
爪部7の水平状態は、例えば本実施形態では、上述の通り、自動操縦可能な形態を想定しているため、本体部1の任意位置に配設される角度センサー(不図示)によって検出することを想定している。角度センサーは特に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜最適な周知センサーが選択される。
【0019】
ドライブユニット5は、本体部1のケーシング3内に設けられたドライブユニット空間(配設領域)A1に、後述する移動機構17を介して吊設されており、ドライブユニット空間A1の床面を構成するベース部(床面部)9と、ベース部9に備えられる駆動源(モーター)11及びバッテリー(不図示)と、ベース部9に軸支されるとともに駆動源13の動力が伝達されて回転駆動する走行用駆動輪13と、を含んで構成されている(
図4参照。)。
走行用駆動輪13は、本実施形態では単一構成を採用しており、遠隔操作によって、駆動及び停止操作され、かつ前進・後進及び旋回可能に構成されている。また、走行用駆動輪13を複数配設する構成を採用することも可能で本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0020】
ベース部9には、走行用駆動輪13を挟んで左右に一つずつ転倒防止用の補助輪(従動輪)15,15が、回転可能に軸支して備えられている。
左右の補助輪15,15は、走行用駆動輪13よりも径の小さな車輪を採用しているが、走行用駆動輪13とともにドライブユニット5を構成するベース部9に備えられ、走行用駆動輪13と車輪のフロア設置位置を同じくなるように、ベース部9に対して軸支して配設しているため、本体部1が上昇しても走行用駆動輪13と同じく常にフロア面に接している。なお、走行用駆動輪13を複数配設する構成を採用する場合、この補助輪15を省略することも可能である。
【0021】
移動機構17は、本体部1のケーシング3の内面、本実施形態では、ケーシング3に設けられたドライブユニット空間A1の後方の領域A2に備えられた上下昇降機構19と、ドライブユニット5を一体に備え、上下昇降機構19に連結した上下移動部21と、上下移動部21に備えたガイドローラー23と、本体部1に備えられ、ガイドローラー23を転動可能に組み込むガイドレール25と、を含んで構成されている(
図4乃至
図6参照。)。
【0022】
上下昇降機構19は、本実施形態ではその一例として油圧シリンダーを採用している。
油圧シリンダー19は、鉛直方向V1にシリンダーロッド19aが伸縮するように、ドライブユニット空間A1の後方において隣接する本体部1の領域A2の略中央位置に取付固定されている。本実施形態では、油圧シリンダー19(シリンダー本体)がドライブフレーム21に固定されると共に、本体部1の領域A2の天板部内面から垂設された係止片部1aにシリンダーロッド19aが固定されている形態を想定している(
図4及び
図6参照)。油圧シリンダー19は、例えば、本体部1に配設される駆動源(不図示)に連携されており、駆動源は、本体部1に備えられる制御部(不図示)によって動作制御されている。制御部は、角度センサーが検出した爪部7の非水平状態又は水平状態信号を受け、駆動源に対して動作信号を送る。
なお、本実施形態とは逆に、油圧シリンダー19(シリンダー本体)が本体部1の天板部側(例えば係止片部1a)に固定されると共に、シリンダーロッド19aがドライブフレーム21に固定される形態であってもよく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0023】
ガイドレール25は、油圧シリンダー19を取付固定する領域A2にて、油圧シリンダー19を挟むように所定の間隔をあけて鉛直方向V1に立設された左ガイドレール25aと右ガイドレール25bとで構成されている。
本実施形態の左ガイドレール25aと右ガイドレール25bは、それぞれ平面視で略コ字状に形成された長尺板状に形成され、開放領域25c,25c同士が対向するようにして配設されている。すなわち、左ガイドレール25aと右ガイドレール25bとは、第一の板部25a1,25b1と、第一の板部25a1,25b1のそれぞれの長辺部から前方に向けて一体に延設された第二の板部(側板部)25a2.25a2,25b2.25b2とで構成され、第一の板部25a1,25b1と対向するそれぞれの領域は開放領域25c,25cとしており、それぞれの開放領域25c,25cが相対向するようにして立設されている(
図4及び
図5参照。)。
【0024】
上下移動部21は、油圧シリンダー19のシリンダーロッド19aに固定されたドライブフレームであって、ドライブフレーム21は、シリンダーロッド19aに固定されて上下移動可能な第一部材21aと、第一部材21aの上端から水平方向で一体に延設され、ドライブユニット5の上端領域に配設されているベアリング部27の外周を挟み込むようにして一体に固定された第二部材21bと、で構成されている(
図4乃至
図6参照。)。
【0025】
第一部材21aは、長尺板状に形成された第一の縦部材21a1及び第二の縦部材21a2で、第一の縦部材21a1と第二の縦部材21a2は、それぞれ所定の間隔をあけて鉛直方向V1に備えられ、それぞれの側面部21a11,21a22の外面側には、それぞれ同一の水平位置にガイドローラー23.23,23.23を回転可能に軸支して備えている。また、ガイドローラー23は、ガイドレール25の第二の板部(側板部)25a2.25a2,25b2.25b2の内面に摺接して転がり案内可能な径に形成されている。なお、ガイドローラー23は、本実施形態では、第一の縦部材21a1と第二の縦部材21a2のそれぞれに、鉛直方向V1で所定間隔をあけて一つずつ計2つ配設している。
【0026】
第二部材21bは、第一の縦部材21a1と第二の縦部材21a2のそれぞれの上端から一体に水平方向H1に所定長さをもって延設された第一の横部材21b1及び第二の横部材21b2と、第一の横部材21b1と第二の横部材21b2との間にわたって架設された水平間隔部21cと、を有し、第一の横部材21b1と第二の横部材21b2のそれぞれの先端領域には水平間隔部21cは設けられておらず、ドライブユニット5の上端のベアリング部27を挟み込むようにして保持する二股状の上端固定領域A3を構成している。このように上端固定領域A3にてドライブユニット5の上端(本実施形態ではベアリング部27)を一体に保持しているため、ドライブユニット5は、本体部1側に配設されている上下移動部21によって吊り下げ状態に一体に配設される。
【0027】
ここで、本実施形態のハンドパレット装置におけるエレベータ内への荷物の搬入時とエレベータ内からの荷物の搬出時における動作状態について説明する。
【0028】
(エレベータ内への荷物搬入時)
例えば、荷物を載せたパレット31の差込部31aに爪部7を差し込んでエレベータ41方向に向けて搬送移動する。そして、エレベータ41の前方まで移動し、エレベータ41手前のスロープF1を移動し(昇り)、エレベータ41内に荷物を搬入する。
このとき、スロープF1によって爪部7が上向き傾斜状態(非水平状態)となっているため、この状態のままで爪部7をパレット31の差込部31aから抜き外そうとしても、差込部31aの上壁内面に爪部7が突き当たってしまい、うまく抜き外すことができない(
図7A(a)参照。)。
【0029】
ここで、角度センサー(不図示)が爪部7の傾斜状態(非水平状態)を検出すると、その検出信号を受けた制御部(不図示)が、油圧シリンダー19に動作信号を送り、油圧シリンダー19を作動(シリンダーロッド19aを伸ばす)させる。
油圧シリンダー19が作動(シリンダーロッド19aを伸ばす)すると、走行用駆動輪13を含むドライブユニット5を押し下げようと作動する(ドライブフレーム21を下降させようと作動する。)。
このとき、ドライブフレーム21に吊設されているドライブユニット5の走行用駆動輪13はフロア(床面)に接しているため、左右のガイドローラー23・23,23・23が、左右のガイドレール25a,25bに沿って案内され、本体部1が上昇作動する。
そして、角度センサー(不図示)が水平状態を検出すると、上昇作動が停止し、爪部7の水平状態を保持する(
図7A(b)参照。)。
これにより、パレット31の差込部31aから爪部7を容易に抜き外すことができる。
【0030】
そして、パレット31の差込部31aから爪部7を抜き外し、スロープF1からフラットなフロア面に戻ってくると、爪部7の傾斜状態(非水平状態)を角度センサー(不図示)が再び検出し、その検出信号を受けた制御部(不図示)が、油圧シリンダー19に動作信号を送り、油圧シリンダー19を作動(シリンダーロッド19aを縮める)させると、走行用駆動輪13を含むドライブユニット5を引き寄せようと作動する(ドライブフレーム21を上昇させようと作動する。)。
このとき、ドライブフレーム21に吊設されているドライブユニット5の走行用駆動輪13はフロア(床面)に接しているため、左右のガイドローラー23・23,23・23が、左右のガイドレール25a,25bに沿って案内され、本体部1が下降作動する。
そして、角度センサー(不図示)が水平状態を検出すると、下降作動が停止し、爪部7の水平状態を保持する(
図1状態。)。
【0031】
(エレベータからの荷物の搬出)
エレベータ41内から荷物を搬出しようとする際には、爪部7側を前にしてハンドパレット装置をエレベータ41の室内方向に移動させるが、エレベータ41前のスロープF1を移動し、パレット31の差込部31aに近づいたとき、スロープF1によって装置全体が傾斜し、爪部7が上向き傾斜状態になっている。
従って、この状態のままパレット31の差込部31aに爪部7を差し込もうとしても、爪部7が差込部31aの上壁内面に突き当たってしまい挿入できず、荷物を搬出し得ないといった不都合が生じ得る(
図7B(a))。
【0032】
ここで、角度センサー(不図示)が爪部7の傾斜状態を検出すると、その検出信号を受けた制御部(不図示)が、油圧シリンダー19に動作信号を送り、油圧シリンダー19を作動(シリンダーロッド19aを伸ばす)させる。
油圧シリンダー19が作動(シリンダーロッド19aを伸ばす)すると、走行用駆動輪13を含むドライブユニット5を押し下げようと作動する(ドライブフレーム21を下降させようと作動する。)。
このとき、ドライブフレーム21に吊設されているドライブユニット5の走行用駆動輪13はフロア(床面)に接しているため、左右のガイドローラー23・23,23・23が、左右のガイドレール25a,25bに沿って案内され、本体部1が上昇作動する。
そして、角度センサー(不図示)が水平状態を検出すると、上昇作動が停止し、爪部7の水平状態を保持する(
図7B(b)参照。)。
これにより、パレット31の差込部31aに爪部7を容易に差し込むことができる。
【0033】
そして、パレット31を爪部7で持ち上げ、スロープF1からフラットなフロア面に戻ってくると、爪部7の傾斜状態(非水平状態)を角度センサー(不図示)が再び検出し、その検出信号を受けた制御部(不図示)が、油圧シリンダー19に動作信号を送り、油圧シリンダー19を作動(シリンダーロッド19aを縮める)させると、走行用駆動輪13を含むドライブユニット5を引き寄せようと作動する(ドライブフレーム21を上昇させようと作動する。)。
このとき、ドライブフレーム21に吊設されているドライブユニット5の走行用駆動輪13はフロア(床面)に接しているため、左右のガイドローラー23・23,23・23が、左右のガイドレール25a,25bに沿って案内され、本体部1が下降作動する。
そして、角度センサー(不図示)が水平状態を検出すると、下降作動が停止し、爪部7の水平状態を保持する(
図1状態。)。
【0034】
従って、本実施形態によれば、このようにエレベータ41への荷物の搬入搬出時において、エレベータ41の入口直前にスロープF1などの傾斜面を有していたとしても、支障なくパレット31の差込部31aからの爪部7の抜き外し、差込部31aへの爪部7の差込作業が行えるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0035】
なお、このようなエレベータ41内への荷物の搬入又はエレベータ41内からの荷物の搬出時に起こる上記現象と同様の現象は、スロープF1を有するフロア面に荷物を置いたりする場合にも同様に生じ得るが、本実施形態のハンドパレット装置によれば爪部7の水平を保持することができるため、支障なく揚げおろし作業を行うことができる。
【0036】
本実施形態では、爪部7の先端領域に接触防止用センサー(例えば赤外線センサー等)S1を備えている。また、本体部1の爪部7の延設側の面部(後面部)1aには、パレット31を認識(検出)するパレット認識センサー(例えばデプスカメラ等)S2を備えている。さらに、本体部1の所定位置、例えば本体部1の天井面1bには、本装置の位置情報を検出する側域センサー(例えばSLAM用側域センサー等)S3を備えている。
また、前面部1cや左右側面部1dなどにも接触防止用センサー(例えば接触防止用側域センサー等)S4を備えている(
図3参照。)。
これら各種センサーは本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0037】
例えば、爪部7の先端領域に接触防止用センサーS1を設けた場合、スロープF1を移動し、爪部7が上向き傾斜状態となると、その先端に取り付けた接触防止用センサーS1が斜め上方を照射して、パレット31上の荷物を検出し、これを障害物として認識してハンドパレット装置の移動が停止される。
ここで、角度センサー(不図示)が爪部7の傾斜状態を検出すると、油圧シリンダー19を作動させ、シリンダーロッドに固定しているドライブフレーム21の第一の縦部21a1と第二の縦部21a2にそれぞれ連結して備えられた左右のガイドローラー23・23,23・23が、本体部1領域A2に固定して備えられた左右のガイドレール25a,25bに沿って上昇する。このとき、ドライブフレーム21に吊設されているドライブユニット5の走行用駆動輪13がフロア(床面)に接しているため、本体部1が上昇する。
そして、角度センサー(不図示)が水平状態を検出すると、上昇作動が停止し、爪部7の水平状態を保持する。
【0038】
また、本実施形態の自走式ハンドパレット装置によれば次のような作用効果をも発揮し得る。
例えば、本体部1を前にして工場や倉庫内などのフロア面を移動しているときに、前方に段差があり、そのまま前進移動すると、前輪となる走行用駆動輪13を備えた本体部1の下部分が段差につかえてしまい、移動できない、といった問題も生じ得る。そのような状況が発生したとしても、移動機構17を作動させて本体部1を上昇させれば、段差によるつかえも解消され、そのまま段差を乗り越えて前進移動可能となる。
このようなことは、フロアとエレベータ室内との間で段差が生じている場合でも同様に解消し得る。
【0039】
上述した実施の形態では、自動操縦の形態を想定して説明したが、例えば、ハンドル部(不図示)を備え、操縦者が手動で操縦する形態であっても本発明の範囲内である。
手動で操縦する形態にあっては、操縦者が爪部7の非水平状態(又は水平状態)を目視で検出することも可能であるため、必ずしも角度センサーを備えていなくてもよく本発明の範囲内である。このように、操縦者が手動で操縦する形態の場合、油圧シリンダー19を手動で作動させるため、油圧シリンダー19を作動させる駆動源(不図示)と連携した操作スイッチなどの操作部(不図示)を本体部1に備えるものとする。
これにより、操縦者が爪部7の非水平状態(又は水平状態)を目視で検出した際に、操作スイッチを操作することにより、油圧シリンダー19を動作させてドライブユニット5を押し下げ、本体部1を上昇(又は下降)させて爪部7の水平状態を保持させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ハンドパレット装置全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 本体部
3 ケーシング
5 ドライブユニット
7 爪部(フォーク)
13 走行用駆動輪
17 移動機構
19 上下昇降機構(油圧シリンダー)
21 上下移動部(ドライブフレーム)
23 ガイドローラー
25 ガイドレール
31 パレット
31a 差込口
41 エレベータ
A1 ドライブユニット空間(配設領域)
F1 スロープ
H1 水平方向
V1 鉛直方向