(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051782
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】海苔製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240404BHJP
【FI】
A23L17/60 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158111
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 祐次
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LE01
4B019LP12
4B019LT21
4B019LT73
4B019LT79
(57)【要約】
【課題】加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置を提供する。
【解決手段】海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置13は、構成部材として透明マス20を含んでいる。透明マス20は、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、第1透明マス構成部材20a(下端開口サイズ190mm×210mm)と、第2透明マス構成部材20b(下端開口サイズ150mm×200mm)と、第3透明マス構成部材20c(下端開口サイズ100mm×100mm)と、第4透明マス構成部材20d(下端開口サイズ50mm×25mm)と、を備えている。そして、内側の第2~第4透明マス構成部材20b~20dは、最も外側の第1透明マス構成部材20aを基準としてそれぞれ上下動可能に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔ミスを、その上下に設けられた、透明マスと可撓性を有する保水袋とで挟み込み、前記保水袋を圧縮することで、前記海苔ミスの上面を前記保水袋の内部に保水されていた水で満たした後、前記海苔ミス上に所定量の海苔生地液を流下し、その後、前記保水袋を膨張させることで、前記海苔ミスの上面を満たしていた前記水を前記保水袋の内部に戻して、前記海苔ミスで海苔生地を抄くように構成された海苔抄き装置を備えた海苔製造装置であって、
前記透明マスは、当該透明マス自体を取り換えることなく、その下端開口サイズを複数のサイズに変更可能であることを特徴とする海苔製造装置。
【請求項2】
前記透明マスは、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、下端開口サイズの異なる複数の透明マス構成部材を備え、
内側の前記各透明マス構成部材は、最も外側の前記透明マス構成部材を基準としてそれぞれ上下動可能に設けられている、請求項1に記載の海苔製造装置。
【請求項3】
内側の前記各透明マス構成部材のいずれかを下動させることにより、当該透明マス構成部材よりも内側に配置された前記透明マス構成部材も一緒に下動するように構成されている、請求項2に記載の海苔製造装置。
【請求項4】
最も内側の前記透明マス構成部材を上動させることにより、内側の前記各透明マス構成部材がそれぞれの最上位置に保持された状態となるように構成されている、請求項2又は3に記載の海苔製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の乾燥海苔(板海苔)を製造するために用いられる海苔製造装置に関する。さらに詳細には、本発明は、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食用に供されるシート状の乾燥海苔は、予め細かくミンチされた生海苔と水との混合液(以下、単に「海苔生地液」という)を抄箱内に連続的に供給し、スノコ状の海苔ミスによって矩形平板状に抄製(海苔抄き)した後、脱水し、乾燥し、海苔ミスから剥離する工程を経て製品化されるのが一般的である。
このシート状の乾燥海苔は、通常、全自動式の海苔製造装置によって機械的に大量生産されている。
また、海苔抄き装置としては、海苔ミスを、その上下に設けられた、透明マスと可撓性を有する保水袋とで挟み込み、保水袋を圧縮することで、海苔ミスの上面を保水袋の内部に保水されていた水で満たした後、海苔ミス上に所定量の海苔生地液を流下し、その後、保水袋を膨張させることで、海苔ミスの上面を満たしていた水を保水袋の内部に戻して、海苔ミスで海苔生地を抄くように構成されたものが用いられている。
【0003】
ところで、現在、全自動式の海苔製造装置によって製造される乾燥海苔は、190mm×210mmのサイズに全メーカーで統一されている。
そして、加工業者によっては、そのサイズの乾燥海苔を、例えば、おにぎり用や手巻き用の所定のサイズに裁断する二次加工が必要となっている。この場合の海苔の裁断(カット)装置としては、例えば、特許文献1等に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、サイズ190mm×210mmの乾燥海苔を、例えば、おにぎり用や手巻き用の所定のサイズに裁断すると、当該サイズ190mm×210mmの乾燥海苔から端材が出ることとなり、この端材は廃棄処理され、食品ロスを生じさせてしまう。
【0006】
そこで、本発明者らは、食品ロスの発生を最小限に抑えるべく鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、海苔抄き装置の構成を工夫することにより、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能になることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔製造装置の構成は、
(1)海苔ミスを、その上下に設けられた、透明マスと可撓性を有する保水袋とで挟み込み、前記保水袋を圧縮することで、前記海苔ミスの上面を前記保水袋の内部に保水されていた水で満たした後、前記海苔ミス上に所定量の海苔生地液を流下し、その後、前記保水袋を膨張させることで、前記海苔ミスの上面を満たしていた前記水を前記保水袋の内部に戻して、前記海苔ミスで海苔生地を抄くように構成された海苔抄き装置を備えた海苔製造装置であって、
前記透明マスは、当該透明マス自体を取り換えることなく、その下端開口サイズを複数のサイズに変更可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の海苔製造装置の上記(1)の構成によれば、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置を提供することができる。
また、透明マス自体を取り換える必要がないため、取換作業や取換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0010】
本発明の海苔製造装置の上記(1)の構成においては、以下の(2)~(4)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記透明マスは、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、下端開口サイズの異なる複数の透明マス構成部材を備え、
内側の前記各透明マス構成部材は、最も外側の前記透明マス構成部材を基準としてそれぞれ上下動可能に設けられている。
上記(2)の好ましい構成によれば、例えば、内側の各透明マス構成部材がそれぞれの最上位置に保持された状態(基準状態)の透明マスを用いることにより、最も外側の透明マス構成部材の下端開口サイズと同じサイズの乾燥海苔を製造することができる。
また、例えば、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、内側の各透明マス構成部材を、それぞれ、最も外側の透明マス構成部材と下端位置が同じになるまで下動させた状態の透明マスを用いることにより、内側の各透明マス構成部材の下端開口サイズと同じサイズの乾燥海苔を製造することができる。
このように上記(2)の好ましい構成によれば、例えば、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作のみで、海苔製造装置を、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能となる。
また、上記(2)の好ましい構成によれば、いずれのサイズの乾燥海苔を製造する場合であっても、海苔ミスの上面の、当該サイズと同じ下端開口サイズを有する透明マス構成部材の外側は、常に、透明マスの最も外側の透明マス構成部材で押さえられることとなるため、保水袋の内部に保水されていた水が透明マスの外側に漏れ出すことはない。したがって、いずれのサイズの乾燥海苔を製造する場合であっても、下マス及び保水袋はそのまま使用することができる。
すなわち、下マス及び保水袋の交換は不要であり、これにより、交換作業や交換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0012】
(3)上記(2)の構成において、前記海苔製造装置は、内側の前記各透明マス構成部材のいずれかを下動させることにより、当該透明マス構成部材よりも内側に配置された前記透明マス構成部材も一緒に下動するように構成されている。
上記(3)の好ましい構成によれば、次の透明マス構成部材を下動させる距離が短くて済むこととなるため、透明マスの切り替え動作の効率化を図ることができる。
【0013】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記海苔製造装置は、最も内側の前記透明マス構成部材を上動させることにより、内側の前記各透明マス構成部材がそれぞれの最上位置に保持された状態(基準状態)となるように構成されている。
上記(4)の好ましい構成によれば、最も内側の前記透明マス構成部材を上動させるという1回の操作のみで、透明マスを、内側の各透明マス構成部材がそれぞれの最上位置に保持された基準状態に持って行くことができるため、透明マスの切り替え動作の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実態形態における海苔製造装置の全体構成を示す模式図
【
図2】本発明の一実態形態における海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置の構成を示す一部破断側面図
【
図3】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)
【
図4】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の圧送→供給(自然排出)→溢出→海苔ミスの移動搬送→透明マスの降下/下マスの上昇)を説明するための一部破断側面図
【
図5】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(透明マスと下マスとによる海苔ミスの挟み込み→捨水台の上昇)を説明するための一部破断側面図
【
図6】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(保水袋の圧縮→海苔ミスの上面が水で満たされた状態にする)を説明するための一部破断側面図
【
図7】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ190mm×210mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図
【
図8】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(抄製された海苔ミスの脱水部(脱水工程)への搬送→新たな海苔ミスの移動搬送)を説明するための一部破断側面図
【
図9】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)
【
図10】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ150mm×200mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)
【
図11】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)
【
図12】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ100mm×100mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)
【
図13】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)
【
図14】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ50mm×25mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)
【
図15】本発明の一実態形態における海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置の他の構成を示す一部破断側面図
【
図16】本発明の一実態形態における海苔抄き装置の他の構成の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
[海苔製造装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態における海苔製造装置の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本実態形態における海苔製造装置の全体構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示す本実施形態の海苔製造装置1は、海苔ミス18(
図2を参照)に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾燥海苔を製造する機能を有するものである。
図1に示すように、海苔製造装置1は、アタッチメントチェーンをエンドレスに連結した無端チェーン2によって海苔ミスホルダ(図示せず)を循環搬送する構成の搬送用コンベア3の搬送径路に沿って、抄き部4、脱水部5、剥ぎ部6、ホルダ洗浄部7を配設し、乾燥室8と組み合わせた構成となっている。
【0020】
無端チェーン2は、1つの駆動スプロケット9と3つの従動スプロケット10~12に横長長方形状に掛け回され(上下2段構成 上段側の搬送用コンベア3U、下段側の搬送用コンベア3L)、海苔ミスホルダを両持ちで保持するために、
図1の紙面垂直方向の同じ高さ位置に一対対向配置されている。そして、駆動スプロケット9を、例えば、駆動モータ(図示せず)によって回転駆動させることにより(
図1の矢印Aを参照)、無端チェーン2を
図1の時計回りに所定のタイミングで断続的に回転させることができるようにされている。
【0021】
上下2段構成の無端チェーン2からなる搬送用コンベア3の搬送径路のうち、高い位置にある上段側の搬送用コンベア3Uの搬送経路には、搬送方向の上流側から下流側(
図1の左側から右側)に順に抄き部4、脱水部5が配設されている。また、搬送用コンベア3の搬送径路のうち、低い位置にある下段側の搬送用コンベア3Lの搬送経路には、搬送方向の上流側から下流側(
図1の右側から左側)に順に剥ぎ部6、ホルダ洗浄部7が配設されている。そして、海苔ミスホルダを、抄き部4、脱水部5、乾燥室8、剥ぎ部6、ホルダ洗浄部7に順次搬送するようにされている。
【0022】
脱水後の海苔ミスホルダは、搬送用コンベア3の搬送径路のうち高い位置にある上段側の搬送用コンベア3Uの搬送経路から乾燥室8内に搬入される。乾燥室8は、例えば、上段コンベアと下段コンベアとからなる2段の乾燥用コンベア(図示せず)を備えており、海苔ミスホルダに保持された海苔ミス18上の生海苔は、当該乾燥用コンベアによって乾燥室8内を移動する間に乾燥して乾燥海苔となる。乾燥後の海苔ミスホルダは、搬送用コンベア3の搬送径路のうち低い位置にある下段側の搬送用コンベア3Lの搬送経路に受け渡される。
【0023】
抄き部(海苔抄き装置)4は、海苔ミスホルダに保持された海苔ミス18上に生海苔を抄き上げる処理を行う。
脱水部5は、抄き部4によって抄き上げられた海苔ミス18上の生海苔を脱水する。海苔製造装置1において、脱水部5は、搬送方向の上流側から下流側に順に配設された、海苔ミス18の上面に抄製した海苔生地から水分を吸引して脱水を行う吸引脱水部(エアー吸引部)5aと、海苔生地にスポンジ状のパッドを押圧して脱水を行うプレス脱水部(スポンジプレス部)5bと、により構成されている。
剥ぎ部6は、海苔ミスホルダに保持された海苔ミス18から乾燥海苔を剥ぎ取る。海苔製造装置1において、剥ぎ部6は、搬送方向の上流側から下流側に順に配設された、乾燥海苔の端部(耳)のみを海苔ミス18から剥離する予備剥ぎ部(耳剥ぎ部)6aと、乾燥海苔を海苔ミス18から全面剥離する本剥ぎ部6bと、により構成されている。
ホルダ洗浄部7は、乾燥海苔が剥ぎ取られた海苔ミスホルダを水によって洗浄する。洗浄後の海苔ミスホルダは、再び抄き部4に搬送される。
【0024】
[海苔抄き装置(抄き部)の構成]
次に、本発明の一実施形態における海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置の構成について、
図2,
図3を参照しながら説明する。
【0025】
図2は本実態形態における海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置の構成を示す一部破断側面図、
図3は当該海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の海苔抄き装置13は、抄箱14と、海苔生地液供給機構15と、を有している。海苔生地液供給機構15は、抄箱14の上方背面側に設けられた、海苔生地液Lを貯留する分流タンク(混合液タンク)16と、当該分流タンク16から抄箱14内に海苔生地液Lを供給する分流器(供給パイプ)17と、を備えている。そして、海苔抄き装置13は、抄箱14の下方に設けられた、上段側の搬送用コンベア3U(
図1を参照)によって水平方向に搬送される海苔ミス18を、その上下に設けられた、透明マス20と保水機構19とで挟むように構成されている。
ここで、抄箱14及び分流器17は、
図2の紙面に垂直な方向に複数並設されている。
【0027】
海苔生地液供給機構15の分流器17は、その上端が分流タンク16の底部に連通されていると共に、下端部が漏斗状に先細りに形成された供給口17aを有する屈曲した中空管からなっている。そして、分流器17は、下端部が抄箱14の肩部から挿入され、供給口17aから抄箱14内に海苔生地液Lを供給できるようにされている。また、抄箱14には、分流器17が挿入される肩部から下方に向かって延出して、当該抄箱14からオーバーフローした海苔生地液Lを排出する溢出口14aが形成されている。
【0028】
抄箱14には、その底板14bに複数の海苔生地液流出孔14cが形成されており、これら海苔生地液流出孔14cは、抄弁14dに垂設された複数の抄バルブ14eによって開閉できるようにされている。抄弁14dは、抄箱14の内部の上端部に設けられた抄バルブハンガープレート14fから垂下される複数の弁棒14gによって支承されており、抄バルブ14eの開閉動作は、抄バルブハンガープレート14fの昇降移動に追随して行われる。
【0029】
抄バルブハンガープレート14fは、抄箱14の上方に配設された抄アーム24を上下駆動させることにより、抄箱14頂部の弁枠14hとの間にスプリング25を介して当該抄バルブハンガープレート14fに連結保持された主弁棒26が押圧されることで、弾発的に昇降移動するようにされている。
【0030】
すなわち、抄アーム24の上下駆動によって抄弁14dを昇降させることで、海苔生地液流出孔14cを開閉できるようにされている。さらに、抄箱14の下部には、上下端が開口した筒状の上記透明マス20が配置されている。この透明マス20は、上下に昇降動作して海苔ミス18に対し接離できるようにされている(
図4の矢印ホ、
図7の矢印ヌを参照)。
【0031】
上記した保水機構19は、矩形板状でスノコ状に形成された下マス21の下部に、可撓性を有する保水袋22を圧縮及び膨張可能に取り付けると共に、その下方に昇降動作する捨水台23を配置することにより構成されている。下マス21は、上下に昇降動作して海苔ミス18に対し接離できるようにされている(
図4の矢印ヘ、
図7の矢印ルを参照)。そして、下マス21には、上下に貫通する複数の通水孔(図示せず)が穿設されており、保水袋22は、捨水台23を昇降させることで圧縮又は膨張され、その内部に保水された水の水面位置を上下に変動できるようにされている。
【0032】
(透明マスの具体的構成)
図2,
図3に示すように、透明マス20は、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、第1透明マス構成部材20aと、第2透明マス構成部材20bと、第3透明マス構成部材20cと、第4透明マス構成部材20dと、を備えている。
すなわち、第1~第4透明マス構成部材20a~20dは、マトリョーシカ(ロシア人形)のように互いに入れ子構造となっている。
【0033】
第1透明マス構成部材20aは、上下端が開口した矩形筒状に形成され、下端開口サイズが190mm×210mmに設定されている。第2透明マス構成部材20bは、上下端が開口した矩形筒状に形成され、下端開口サイズが150mm×200mmに設定されている。第3透明マス構成部材20cは、上下端が開口した矩形筒状に形成され、下端開口サイズが100mm×100mmに設定されている。
第4透明マス構成部材20dは、水平断面が矩形の漏斗状に形成され、下端開口サイズが50mm×25mmに設定されている。
【0034】
そして、内側の第2~第4透明マス構成部材20b~20dは、最も外側の第1透明マス構成部材20aを基準としてそれぞれ上下動可能に設けられている。より具体的には、内側の第2~第4透明マス構成部材20b~20dは、それぞれ、最も外側の第1透明マス構成部材20aと下端位置が同じになるまで下動できるようにされている(
図9,
図11,
図13を参照)。
すなわち、透明マス20は、当該透明マス20自体を取り換えることなく、その下端開口サイズを4つのサイズ(190mm×210mm、150mm×200mm、100mm×100mm及び50mm×25mm)に変更可能である。
【0035】
以上説明した透明マス20を備えた海苔製造装置1の構成によれば、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能な海苔製造装置を提供することができる。
また、透明マス20自体を取り換える必要がないため、取換作業や取換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0036】
以下、さらに詳細に説明する。
第1透明マス構成部材20aには、その上端近くに内側矩形フランジ27が設けられている。また、第2透明マス構成部材20bには、その上端よりも下方に位置して外側矩形フランジ28が設けられている。そして、第2透明マス構成部材20bの外側矩形フランジ28の上面が第1透明マス構成部材20aの内側矩形フランジ27の下面に当接することにより、第1透明マス構成部材20aの下端と第2透明マス構成部材20bの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第2透明マス構成部材20bの外側矩形フランジ28の上面が第1透明マス構成部材20aの内側矩形フランジ27の下面に当接している位置が、「第2透明マス構成部材20bの最上位置」である。
【0037】
第2透明マス構成部材20bには、その上端近くに内側矩形フランジ29が設けられている。また、第3透明マス構成部材20cには、その上端よりも下方に位置して外側矩形フランジ30が設けられている。そして、第3透明マス構成部材20cの外側矩形フランジ30の上面が第2透明マス構成部材20bの内側矩形フランジ29の下面に当接することにより、第2透明マス構成部材20bの下端と第3透明マス構成部材20cの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第3透明マス構成部材20cの外側矩形フランジ30の上面が第2透明マス構成部材20bの内側矩形フランジ29の下面に当接している位置が、「第3透明マス構成部材20cの最上位置」である。
【0038】
第3透明マス構成部材20cには、その上端近くに内側矩形フランジ31が設けられている。また、第4透明マス構成部材20dには、その中央部よりも下方に位置して外側矩形フランジ32が設けられている。そして、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接することにより、第3透明マス構成部材20cの下端と第4透明マス構成部材20dの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接している位置が、「第4透明マス構成部材20dの最上位置」である。
【0039】
本実施形態において、第2~第4透明マス構成部材20b~20dがそれぞれの最上位置に保持された
図3の状態を、「基準状態」とする。そして、この基準状態の透明マス20を用いることにより、サイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造することができる。
【0040】
透明マス20の全体は、上記したように、従来の海苔抄き装置の場合と同様にして降下及び上昇ができるようにされている(
図4の矢印ホ、
図7の矢印ヌを参照)。
また、内側の第2~第4透明マス構成部材20b~20dは、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作で上下動させることができるようにされている。
そして、
図3の基準状態から第2透明マス構成部材20bを、第1透明マス構成部材20aと下端位置が同じになるまで下動させることにより(
図3の矢印カを参照)、サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造するために用いられる透明マス20(
図9を参照)とすることができる。
この場合、第3透明マス構成部材20cの外側矩形フランジ30の上面が第2透明マス構成部材20bの内側矩形フランジ29の下面に当接し、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接しているため、第3及び第4透明マス構成部材20c,20dも第2透明マス構成部材20bと一緒に下動する。
かかる構成によれば、次の第3透明マス構成部材20cを下動させる距離が短くて済むこととなるため(
図9→
図11を参照)、透明マス20の切り替え動作の効率化を図ることができる。
【0041】
また、
図9の状態から第3透明マス構成部材20cを、第1及び第2透明マス構成部材20a,20bと下端位置が同じになるまで下動させることにより(
図9の矢印ソを参照)、サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造するために用いられる透明マス20(
図11を参照)とすることができる。
この場合、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接しているため、第4透明マス構成部材20dも第3透明マス構成部材20cと一緒に下動する。
かかる構成によれば、次の第4透明マス構成部材20dを下動させる距離が短くて済むこととなるため(
図11→
図13を参照)、透明マス20の切り替え動作の効率化を図ることができる。
【0042】
また、
図11の状態から第4透明マス構成部材20dを、第1~第3透明マス構成部材20a,20b,20cと下端位置が同じになるまで下動させることにより(
図11の矢印ラを参照)、サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造するために用いられる透明マス20(
図13を参照)とすることができる。
【0043】
また、
図13の状態から、最も内側の第4透明マス構成部材20dを上動させることにより(
図13の矢印ノを参照)、まず、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接し、次いで、第3透明マス構成部材20cの外側矩形フランジ30の上面が第2透明マス構成部材20bの内側矩形フランジ29の下面に当接し、最後に、第2透明マス構成部材20bの外側矩形フランジ28の上面が第1透明マス構成部材20aの内側矩形フランジ27の下面に当接して、透明マス20を
図3の基準状態に持っていくことができる。
かかる構成によれば、最も内側の第4透明マス構成部材20dを上動させるという1回の操作のみで、透明マス20を
図3の基準状態に持っていくことができるため、透明マス20の切り替え動作の効率化を図ることができる。
【0044】
[海苔抄き装置の動作]
次に、本発明の一実施形態における海苔製造装置の構成要素である海苔抄き装置の動作について、
図4~
図14を参照しながら説明する。
【0045】
図4は本実態形態における海苔抄き装置の動作(海苔生地液の圧送→供給(自然排出)→溢出→海苔ミスの移動搬送→透明マスの降下/下マスの上昇)を説明するための一部破断側面図、
図5は当該海苔抄き装置の動作(透明マスと下マスとによる海苔ミスの挟み込み→捨水台の上昇)を説明するための一部破断側面図、
図6は当該海苔抄き装置の動作(保水袋の圧縮→海苔ミスの上面が水で満たされた状態にする)を説明するための一部破断側面図、
図7は当該海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ190mm×210mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図、
図8は当該海苔抄き装置の動作(抄製された海苔ミスの脱水部(脱水工程)への搬送→新たな海苔ミスの移動搬送)を説明するための一部破断側面図、
図9は当該海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)、
図10は当該海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ150mm×200mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)、
図11は当該海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)、
図12は当該海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ100mm×100mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)、
図13は当該海苔抄き装置の構成部材である透明マスを拡大して示した側面断面図(サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造する場合の状態)、
図14は当該海苔抄き装置の動作(海苔生地液の流下→保水袋の膨張→海苔ミスの上面を満たしていた水が保水袋の内部に戻る→下端開口サイズ50mm×25mmの透明マスを用いた抄製→透明マスの上昇/下マスの降下)を説明するための一部破断側面図(透明マスよりも上方に位置する構成部材については省略)である。
【0046】
(サイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合)
図4に示すように、まず、海苔抄き装置13が始動すると、海苔生地液供給機構15の分流タンク16に、常時、ポンプで圧送して(
図4の矢印イを参照)貯留されている海苔生地液Lが、抄箱14内に分流器17によって分流して供給(自然排出)される(
図4の矢印ロを参照)。抄箱14内に供給された海苔生地液Lは、抄箱14内を満たし、充満した場合は、オーバーフローして溢出口14aから溢出される(
図4の矢印ハを参照)。
海苔ミス18は、所定のサイクルで上段側の搬送用コンベア3Uの搬送経路(
図1を参照)に沿って間欠的に所定距離ごと移動搬送される(
図4の矢印ニを参照)。
なお、
図4の状態において、透明マス20自体は、最上位置に保持されており、内側の第2~第4透明マス構成部材20b~20dは、それぞれの最上位置に保持された状態となっている(基準状態)。
【0047】
次いで、
図4,
図5に示すように、海苔ミス18が透明マス20と下マス21との間の停止位置まで移動してきたら、透明マス20が降下し(
図4の矢印ホを参照)、下マス21が上昇する(
図4の矢印ヘを参照)。これにより、海苔ミス18が、透明マス20の最も外側の第1透明マス構成部材20a(下端開口サイズ190mm×210mm)と下マス21とで挟み込まれた状態となる(
図5の状態)。
【0048】
次いで、
図5,
図6に示すように、海苔ミス18が、第1透明マス構成部材20aと下マス21とで挟み込まれたら、捨水台23が上昇し(
図5の矢印トを参照)、保水袋22の下部中央が上方に押し上げられることで、保水袋22が圧縮される(
図6の状態)。これにより、保水袋22の内部に保水されていた水が下マス21の通水孔から海苔ミス18を透過して第1透明マス構成部材20aの内部に流出され、海苔ミス18の上面が水で満たされた状態となる。海苔ミス18の上面を満たす水の高さは、約5mm程度である。
【0049】
次いで、
図7に示すように、抄バルブ14eが一旦降下した後、上昇して(
図7の両矢印チを参照)、抄箱14の底板14bの海苔生地液流出孔14cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、抄箱14から海苔ミス18上に所定量の海苔生地液Lが流下される。海苔ミス18上に流下される海苔生地液Lの量は、第1透明マス構成部材20a内において海苔生地液Lの高さが約25mm程度となる量(約2.5cm×19cm×21cm=約997.5cc=約1リットル)で調整されている。
この場合、上記したように、海苔ミス18の上面が水で満たされた状態となっているため、海苔ミス18上に流下された海苔生地液Lは海苔ミス18上で均等に分散される。
なお、第1透明マス構成部材20aの内部の水の高さと海苔生地液Lの高さを合算すると約30mm程度(約5mm程度+約25mm程度)になるが、上述したように、第1透明マス構成部材20aの下端と第2透明マス構成部材20bの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされているため、海苔ミス18上に流下された海苔生地液Lが第2透明マス構成部材20bの下端に接触することはない。その結果、第2透明マス構成部材20bの下端部に付着した海苔生地が、最終的に抄き終わった海苔の上に落下することで、乾燥海苔製品の形状が歪(いびつ)になったり、未乾燥の状態で乾燥室8(
図1を参照)から搬出され、後処理機械などでトラブルが発生したりすることを防止することができる。
【0050】
次いで、
図7に示すように、捨水台23が降下し(
図7の矢印リを参照)、保水袋22が膨張する(
図8の状態)。これにより、海苔ミス18の上面を満たしていた水が当該海苔ミス18及び下マス21を透過して保水袋22の内部に戻される。
【0051】
以上により、海苔ミス18で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。この海苔抄き工程においては、上記したように、海苔ミス18上に流下された海苔生地液Lが海苔ミス18上で均等に分散されることとなるため、抄製された海苔が均一化し、乾燥海苔における抄きムラの発生を最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
抄製後、
図7,
図8に示すように、透明マス20が上昇し(
図7の矢印ヌを参照)、下マス21が降下する(
図7の矢印ルを参照)。
次いで、
図8に示すように、抄製された海苔ミス18が脱水部5(
図1を参照)に搬送される(
図8の矢印ヲを参照)と同時に新たな海苔ミス18が透明マス20と下マス21の間の停止位置まで移動してきて停止し(
図8の矢印ワを参照)、上記と同様の動作が反復継続される。
抄製された海苔ミス18は、脱水部5で脱水され、乾燥室8(
図1を参照)で乾燥された後、剥ぎ部6(
図1を参照)で剥離されて、サイズ190mm×210mmの乾燥海苔として製品化される。
【0053】
(サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造する場合)
サイズ190mm×210mmの乾燥海苔の製造が終了したら、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、透明マス20を、
図9に示すような、サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていく。
より具体的には、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、
図3の基準状態から第2透明マス構成部材20bを、第1透明マス構成部材20aと下端位置が同じになるまで下動させる(
図3の矢印カを参照)。この場合、第3透明マス構成部材20cの外側矩形フランジ30の上面が第2透明マス構成部材20bの内側矩形フランジ29の下面に当接し、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接しているため、第3及び第4透明マス構成部材20c,20dも第2透明マス構成部材20bと一緒に下動する。
このように本実施形態の透明マス20を用いれば、例えば、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作のみで、海苔製造装置1を、サイズ150mm×200mmの乾燥海苔の製造に対応させることが可能となる。
また、透明マス自体を取り換える必要がないため、取換作業や取換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0054】
海苔生地液Lの圧送から、保水袋22を圧縮して海苔ミス18の上面が水で満たされた状態にするまでの工程は、上記したサイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合と同じである(
図4~
図6を参照)。
この場合、海苔ミス18の上面の、第2透明マス構成部材20bの外側は、常に、透明マス20の最も外側の第1透明マス構成部材20aで押さえられることとなるため、保水袋22の内部に保水されていた水が透明マス20の外側に漏れ出すことはない。したがって、透明マス20を、サイズ150mm×200mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていっても、下マス21及び保水袋22はそのまま使用することができる。
すなわち、下マス及び保水袋の交換は不要であり、これにより、交換作業や交換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0055】
次いで、
図7の場合と同じように、抄バルブ14eが一旦降下した後、上昇して(
図7の両矢印チを参照)、抄箱14の底板14bの海苔生地液流出孔14cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、
図10に示すように、抄箱14(
図7を参照)から海苔ミス18上に所定量の海苔生地液Lが流下される。海苔ミス18上に流下される海苔生地液Lの量は、第2透明マス構成部材20b内において海苔生地液Lの高さが約25mm程度となる量(約2.5cm×15cm×20cm=約750cc=約0.75リットル)で調整されている。
この場合、第1透明マス構成部材20aと第2透明マス構成部材20bとの間の空間には、保水袋22の内部に保水されていた水のみが存在している。
なお、第2透明マス構成部材20bの内部の水の高さと海苔生地液Lの高さを合算すると約30mm程度(約5mm程度+約25mm程度)になるが、上述したように、第2透明マス構成部材20bの下端と第3透明マス構成部材20cの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされているため、海苔ミス18上に流下された海苔生地液Lが第3透明マス構成部材20cの下端に接触することはない。その結果、第3透明マス構成部材20cの下端部に付着した海苔生地が、最終的に抄き終わった海苔の上に落下することで、乾燥海苔製品の形状が歪(いびつ)になったり、未乾燥の状態で乾燥室8(
図1を参照)から搬出され、後処理機械などでトラブルが発生したりすることを防止することができる。
【0056】
次いで、
図10に示すように、捨水台23が降下し(
図10の矢印ヨを参照)、保水袋22が膨張する。これにより、海苔ミス18の上面を満たしていた水が当該海苔ミス18及び下マス21を透過して保水袋22の内部に戻される。
【0057】
以上により、海苔ミス18で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。
【0058】
抄製後、
図10に示すように、透明マス20が上昇し(
図10の矢印タを参照)、下マス21が降下する(
図10の矢印レを参照)。
次いで、抄製された海苔ミス18が脱水部5(
図1を参照)に搬送されると同時に新たな海苔ミス18が透明マス20と下マス21の間の停止位置まで移動してきて停止し、上記と同様の動作が反復継続される。
抄製された海苔ミス18は、脱水部5で脱水され、乾燥室8(
図1を参照)で乾燥された後、剥ぎ部6(
図1を参照)で剥離されて、サイズ150mm×200mmの乾燥海苔として製品化される。
【0059】
(サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造する場合)
サイズ150mm×200mmの乾燥海苔の製造が終了したら、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、透明マス20を、
図11に示すような、サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていく。
より具体的には、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、
図9の状態から第3透明マス構成部材20cを、第1及び第2透明マス構成部材20a,20bと下端位置が同じになるまで下動させる(
図9の矢印ソを参照)。この場合、第4透明マス構成部材20dの外側矩形フランジ32の上面が第3透明マス構成部材20cの内側矩形フランジ31の下面に当接しているため、第4透明マス構成部材20dも第3透明マス構成部材20cと一緒に下動する。
このように本実施形態の透明マス20を用いれば、例えば、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作のみで、海苔製造装置1を、サイズ100mm×100mmの乾燥海苔の製造に対応させることが可能となる。
また、透明マス自体を取り換える必要がないため、取換作業や取換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0060】
海苔生地液Lの圧送から、保水袋22を圧縮して海苔ミス18の上面が水で満たされた状態にするまでの工程は、上記したサイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合と同じである(
図4~
図6を参照)。
この場合、海苔ミス18の上面の、第3透明マス構成部材20cの外側は、常に、透明マス20の最も外側の第1透明マス構成部材20a、及び、第2透明マス構成部材20bで押さえられることとなるため、保水袋22の内部に保水されていた水が透明マス20の外側に漏れ出すことはない。したがって、透明マス20を、サイズ100mm×100mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていっても、下マス21及び保水袋22はそのまま使用することができる。
すなわち、下マス及び保水袋の交換は不要であり、これにより、交換作業や交換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0061】
次いで、
図7の場合と同じように、抄バルブ14eが一旦降下した後、上昇して(
図7の両矢印チを参照)、抄箱14の底板14bの海苔生地液流出孔14cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、
図12に示すように、抄箱14(
図7を参照)から海苔ミス18上に所定量の海苔生地液Lが流下される。海苔ミス18上に流下される海苔生地液Lの量は、第3透明マス構成部材20c内において海苔生地液Lの高さが約25mm程度となる量(約2.5cm×10cm×10cm=約250cc=約0.25リットル)で調整されている。
この場合、第1透明マス構成部材20aと第2透明マス構成部材20bとの間の空間、及び、第2透明マス構成部材20bと第3透明マス構成部材20cとの間の空間には、保水袋22の内部に保水されていた水のみが存在している。
なお、第3透明マス構成部材20cの内部の水の高さと海苔生地液Lの高さを合算すると約30mm程度(約5mm程度+約25mm程度)になるが、上述したように、第3透明マス構成部材20cの下端と第4透明マス構成部材20dの下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされているため、海苔ミス18上に流下された海苔生地液Lが第4透明マス構成部材20dの下端に接触することはない。その結果、第4透明マス構成部材20dの下端部に付着した海苔生地が、最終的に抄き終わった海苔の上に落下することで、乾燥海苔製品の形状が歪(いびつ)になったり、未乾燥の状態で乾燥室8(
図1を参照)から搬出され、後処理機械などでトラブルが発生したりすることを防止することができる。
【0062】
次いで、
図12に示すように、捨水台23が降下し(
図12の矢印ツを参照)、保水袋22が膨張する。これにより、海苔ミス18の上面を満たしていた水が当該海苔ミス18及び下マス21を透過して保水袋22の内部に戻される。
【0063】
以上により、海苔ミス18で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。
【0064】
抄製後、
図12に示すように、透明マス20が上昇し(
図12の矢印ネを参照)、下マス21が降下する(
図12の矢印ナを参照)。
次いで、抄製された海苔ミス18が脱水部5(
図1を参照)に搬送されると同時に新たな海苔ミス18が透明マス20と下マス21の間の停止位置まで移動してきて停止し、上記と同様の動作が反復継続される。
抄製された海苔ミス18は、脱水部5で脱水され、乾燥室8(
図1を参照)で乾燥された後、剥ぎ部6(
図1を参照)で剥離されて、サイズ100mm×100mmの乾燥海苔として製品化される。
【0065】
(サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造する場合)
サイズ100mm×100mmの乾燥海苔の製造が終了したら、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、透明マス20を、
図13に示すような、サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていく。
より具体的には、切り替えスイッチや切り替えレバー等を操作して、
図11の状態から第4透明マス構成部材20dを、第1~第3透明マス構成部材20a~20cと下端位置が同じになるまで下動させる(
図11の矢印ラを参照)。
このように本実施形態の透明マス20を用いれば、例えば、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作のみで、海苔製造装置1を、サイズ50mm×25mmの乾燥海苔の製造に対応させることが可能となる。
また、透明マス自体を取り換える必要がないため、取換作業や取換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0066】
海苔生地液Lの圧送から、保水袋22を圧縮して海苔ミス18の上面が水で満たされた状態にするまでの工程は、上記したサイズ190mm×210mmの乾燥海苔を製造する場合と同じである(
図4~
図6を参照)。
この場合、海苔ミス18の上面の、第4透明マス構成部材20dの外側は、常に、透明マス20の最も外側の第1透明マス構成部材20aと、第2及び第3透明マス構成部材20b,20cとで押さえられることとなるため、保水袋22の内部に保水されていた水が透明マス20の外側に漏れ出すことはない。したがって、透明マス20を、サイズ50mm×25mmの乾燥海苔を製造する場合の状態に持っていっても、下マス21及び保水袋22はそのまま使用することができる。
すなわち、下マス及び保水袋の交換は不要であり、これにより、交換作業や交換後の調整作業に要するコストの削減ひいては海苔の生産コストの削減を図ることが可能となる。
【0067】
次いで、
図7の場合と同じように、抄バルブ14eが一旦降下した後、上昇して(
図7の両矢印チを参照)、抄箱14の底板14bの海苔生地液流出孔14cが一旦開放された後、閉塞状態となる。これにより、
図14に示すように、抄箱14(
図7を参照)から海苔ミス18上に所定量の海苔生地液Lが流下される。海苔ミス18上に流下される海苔生地液Lの量は、第4透明マス構成部材20d内において海苔生地液Lの高さが約25mm程度となる量(約2.5cm×5cm×2.5cm=約31.25cc=約0.03125リットル)で調整されている。
この場合、第1透明マス構成部材20aと第2透明マス構成部材20bとの間の空間、第2透明マス構成部材20bと第3透明マス構成部材20cとの間の空間、及び、第3透明マス構成部材20cと第4透明マス構成部材20dとの間の空間には、保水袋22の内部に保水されていた水のみが存在している。
【0068】
次いで、
図14に示すように、捨水台23が降下し(
図14の矢印ムを参照)、保水袋22が膨張する。これにより、海苔ミス18の上面を満たしていた水が当該海苔ミス18及び下マス21を透過して保水袋22の内部に戻される。
【0069】
以上により、海苔ミス18で海苔生地が抄かれ、海苔抄き工程(抄製)が完了する。
【0070】
抄製後、
図14に示すように、透明マス20が上昇し(
図14の矢印ウを参照)、下マス21が降下する(
図14の矢印ヰを参照)。
次いで、抄製された海苔ミス18が脱水部5(
図1を参照)に搬送されると同時に新たな海苔ミス18が透明マス20と下マス21の間の停止位置まで移動してきて停止し、上記と同様の動作が反復継続される。
抄製された海苔ミス18は、脱水部5で脱水され、乾燥室8(
図1を参照)で乾燥された後、剥ぎ部6(
図1を参照)で剥離されて、サイズ50mm×25mmの乾燥海苔として製品化される。
【0071】
以上説明してきたように、本実施形態の海苔製造装置1の構成によれば、切り替えスイッチや切り替えレバー等の簡単な操作のみで、加工業者が必要とする様々なサイズの乾燥海苔の製造に対応させることが可能となる。
【0072】
なお、本実施形態においては、
図3に示すように構成された透明マス20を含む海苔抄き装置13(
図2を参照)を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、
図16に示すように構成された透明マス34を含む海苔抄き装置33(
図15を参照)であってもよい。
【0073】
以下、透明マス34の構成について説明する。
図15,
図16に示すように、透明マス34は、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、第1透明マス構成部材35と、第2透明マス構成部材36と、第3透明マス構成部材37と、第4透明マス構成部材38と、を備えている。
すなわち、第1~第4透明マス構成部材35~38は、マトリョーシカ(ロシア人形)のように互いに入れ子構造となっている。
【0074】
第1透明マス構成部材35は、上下端が開口した、矩形筒状の本体部35aと、矩形錐台状の上端部35bと、からなり、下端開口サイズが190mm×210mmに設定されている。第2透明マス構成部材36は、上下端が開口した、矩形筒状の本体部36aと、矩形錐台状の上端部36bと、からなり、下端開口サイズが150mm×200mmに設定されている。第3透明マス構成部材37は、上下端が開口した、矩形筒状の本体部37aと、矩形錐台状の上端部37bと、からなり、下端開口サイズが100mm×100mmに設定されている。
第4透明マス構成部材38は、水平断面が矩形の漏斗状に形成され、下端開口サイズが50mm×25mmに設定されている。また、第4透明マス構成部材38には、その中央部よりも下方に位置して矩形錐台状の支持部38bが設けられている。
【0075】
そして、内側の第2~第4透明マス構成部材36~38は、最も外側の第1透明マス構成部材35を基準としてそれぞれ上下動可能に設けられている。より具体的には、内側の第2~第4透明マス構成部材36~38は、それぞれ、最も外側の第1透明マス構成部材35と下端位置が同じになるまで下動できるようにされている。
このように、透明マス34は、当該透明マス34自体を取り換えることなく、その下端開口サイズを4つのサイズ(190mm×210mm、150mm×200mm、100mm×100mm及び50mm×25mm)に変更可能である。
【0076】
図16に示す構成の透明マス34においては、第2透明マス構成部材36の上端部36bの上面が第1透明マス構成部材35の上端部35bの下面に当接することにより、第1透明マス構成部材35の下端と第2透明マス構成部材36の下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第2透明マス構成部材36の上端部36bの上面が第1透明マス構成部材35の上端部35bの下面に当接している位置が、「第2透明マス構成部材36の最上位置」である。
【0077】
また、第3透明マス構成部材37の上端部37bの上面が第2透明マス構成部材36の上端部36bの下面に当接することにより、第2透明マス構成部材36の下端と第3透明マス構成部材37の下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第3透明マス構成部材37の上端部37bの上面が第2透明マス構成部材36の上端部36bの下面に当接している位置が、「第3透明マス構成部材37の最上位置」である。
【0078】
また、第4透明マス構成部材38の支持部38bの上面が第3透明マス構成部材37の上端部37bの下面に当接することにより、第3透明マス構成部材37の下端と第4透明マス構成部材38の下端との間の距離が約30mm程度以上となるようにされている。
第4透明マス構成部材38の支持部38bの上面が第3透明マス構成部材37の上端部37bの下面に当接している位置が、「第4透明マス構成部材38の最上位置」である。
【0079】
図15に示す海苔抄き装置33の動作及び作用効果は、
図4~
図14を参照しながら説明したものと同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0080】
また、本実施形態においては、下端開口サイズが190mm×210mm、150mm×200mm、100mm×100mm、50mm×25mmの4つのサイズに変更可能な透明マス20,34を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。透明マスの下端開口サイズは、複数のサイズに変更可能であればよく、例えば、2つや3つのサイズに変更可能であっても、5つ以上のサイズに変更可能であってもよい。
特に、
図16に示すような構成の透明マスを採用すれば、下端開口サイズの異なる透明マス構成部材の数を増やしやすくなる。
【0081】
また、本実施形態においては、外側から順番に、かつ、互いに同心状に配置された、下端開口サイズの異なる複数の透明マス構成部材を備え、内側の各透明マス構成部材が、最も外側の透明マス構成部材を基準としてそれぞれ上下動可能に設けられた透明マスを例に挙げて説明した(
図3,
図16を参照)。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。透明マスは、当該透明マス自体を取り換えることなく、その下端開口サイズを複数のサイズに変更可能であればよい。例えば、カメラの物理的シャッター(メカニカルシャッター)機構に類似した機構を用いて、透明マスの下端開口サイズを複数のサイズに変更するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態においては、下マス21の下部に保水袋22が取り付けられている場合を例に挙げて説明した。この場合は、下マス21と保水袋22の全体を「保水袋」とみなして本発明が適用される。
【符号の説明】
【0083】
1 海苔製造装置
13,33 海苔抄き装置
19 保水機構
18 海苔ミス
20,34 透明マス
20a,35 第1透明マス構成部材
20b,36 第2透明マス構成部材
20c,37 第3透明マス構成部材
20d,38 第4透明マス構成部材
21 下マス
22 保水袋
23 捨水台
27,29,31 内側矩形フランジ
28,30,32 外側矩形フランジ
35a,36a,37a 本体部
35b,36b,37b 上端部
38b 支持部
L 海苔生地液