(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051804
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】人通口補強金物、人通口補強構造及び人通口補強方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240404BHJP
E02D 27/08 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E02D27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158139
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510099051
【氏名又は名称】株式会社呉建築事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 耕平
(72)【発明者】
【氏名】呉 東航
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA41
(57)【要約】
【課題】長さ調整が可能な状態に構成されて、様々なサイズの人通口に対応して取り付けることができ、製造や施工のコストを抑える。
【解決手段】建物用基礎の立ち上がり部1に形成された人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡されて取り付けられる人通口補強金物10が、一方の側面3と他方の側面4のそれぞれに固定される一対の筒状部11,12と、一対の筒状部11,12間に架け渡されるとともに、一対の筒状部11,12同士を連結する棒状の連結部13と、を備えており、連結部13の長さ方向一端部13aは、一対の筒状部11,12のうち一方の筒状部11の内部に対して進退可能に挿入され、連結部13の長さ方向他端部13bは、一対の筒状部11,12のうち他方の筒状部12の内部に対して進退可能に挿入されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物用基礎の立ち上がり部に形成された人通口の一方の側面と他方の側面との間に架け渡されて取り付けられる人通口補強金物であって、
前記一方の側面と前記他方の側面のそれぞれに固定される一対の筒状部と、
前記一対の筒状部間に架け渡されるとともに、前記一対の筒状部同士を連結する棒状の連結部と、を備えており、
前記連結部の長さ方向一端部は、前記一対の筒状部のうち一方の筒状部の内部に対して進退可能に挿入され、前記連結部の長さ方向他端部は、前記一対の筒状部のうち他方の筒状部の内部に対して進退可能に挿入されていることを特徴とする人通口補強金物。
【請求項2】
請求項1に記載の人通口補強金物において、
前記連結部は、第一ボルト部材によって構成されており、
前記筒状部は、
本体筒部と、
中央に前記第一ボルト部材が通される孔が形成され、前記本体筒部のうち前記第一ボルト部材側の端部に一体に設けられた第一環状板部と、
前記第一環状板部の内側面に一体に設けられ、前記第一ボルト部材がねじ込まれる第一ナット部材と、を有していることを特徴とする人通口補強金物。
【請求項3】
請求項2に記載の人通口補強金物において、
前記一方の側面と前記他方の側面にそれぞれ設けられて、前記一対の筒状部がそれぞれ固定される一対の被固定部を更に備えており、
前記筒状部は、
中央に孔が形成され、前記本体筒部のうち前記人通口の前記側面側の端部に一体に設けられた第二環状板部と、
前記第二環状板部の内側面に一体に設けられ、先端部が、前記第二環状板部における中央の孔から前記人通口の前記側面に向かって突出する第二ボルト部材と、を有しており、
前記被固定部は、内部に雌ネジが形成された筒状のインサート部材によって構成されていることを特徴とする人通口補強金物。
【請求項4】
請求項3に記載の人通口補強金物において、
前記被固定部は、前記立ち上がり部の内部鉄筋に接続される接続部を有することを特徴とする人通口補強金物。
【請求項5】
請求項2に記載の人通口補強金物において、
前記第一ボルト部材に設けられて、当該第一ボルト部材を軸回りに回転動作させるための操作を受け付ける操作受付部を更に備えることを特徴とする人通口補強金物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の人通口補強金物が、前記人通口における前記一方の側面と前記他方の側面との間に架け渡されて取り付けられており、
前記一方の筒状部は前記一方の側面に固定され、
前記他方の筒状部は前記他方の側面に固定され、
前記連結部は、前記一対の筒状部間に架け渡されるとともに、前記一対の筒状部同士を連結しており、
前記連結部の長さ方向一端部は、前記一方の筒状部の内部に挿入され、前記連結部の長さ方向他端部は、前記他方の筒状部の内部に挿入され、前記連結部の前記長さ方向一端部と前記長さ方向他端部が、前記一対の筒状部の内部に対して交互に進退可能となっていることを特徴とする人通口補強構造。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の人通口補強金物によって前記人通口の補強を行う人通口補強方法であって、
前記連結部の前記長さ方向一端部が内部に挿入された前記一方の筒状部を、前記他方の筒状部から離間する方向に移動させながら前記一方の側面に固定する工程と、
前記連結部の前記長さ方向他端部が内部に挿入された前記他方の筒状部を、前記一方の筒状部から離間する方向に移動させながら前記他方の側面に固定する工程と、のうち少なくとも一方の工程を有することを特徴とする人通口補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人通口補強金物、人通口補強構造及び人通口補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物における鉄筋コンクリート造のべた基礎や布基礎の立ち上がり部には、床下点検用の人通口が厚み方向に貫通して形成される。これにより、立ち上がり部にはコンクリートの断面欠損が生じ、内部鉄筋も分断されてしまうため、人通口の補強が従来行われている(例えば特許文献1,2参照)。
特許文献1の開口補強ユニットは、上向きに開放するコ字状の補強用枠板における左右の側板間に、架け渡し部材を架け渡すことで人通口の補強を図るものである。
特許文献2の連結部材は、人通口の両端面に突設されたアンカーボルト間に架け渡されて、連結用ナットで連結されることで人通口の補強を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-155576号公報
【特許文献2】特開2001-348883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における開口補強ユニットの場合、人通口の開口縁に沿って補強用枠板や架け渡し部材を装着できるので人通口の補強効果が高いが、人通口の高さや幅に合わせて人通口ごとに専用の開口補強ユニットを用意しなければならない。すなわち、複数種類のサイズ設定で形成された開口補強ユニットを用意しなければならないため、製造等のコストを抑えにくい場合がある。
一方、特許文献2における連結部材の場合は、アンカーボルトを基礎に埋設できれば、あとは連結部材を連結用ナットでアンカーボルトに連繋するだけで人通口の補強ができるので、構造的にシンプルで、特許文献1の開口補強ユニットよりもコストを抑えやすい。ところが、特許文献2の場合も、連結部材は、両側のアンカーボルト間の距離と略一致する長さに設定される構成となっているため、人通口の幅(両アンカーボルト間の距離)に応じて長さを変えなければならない。すなわち、特許文献1と同様に、複数種類の長さに形成された連結部材を用意しなければならないため、結局、製造等のコストを抑えにくい場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、長さ調整が可能な状態に構成されて、様々なサイズの人通口に対応して取り付けることができ、製造や施工のコストを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、建物用基礎の立ち上がり部1に形成された人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡されて取り付けられる人通口補強金物10であって、
前記一方の側面3と前記他方の側面4のそれぞれに固定される一対の筒状部11,12と、
前記一対の筒状部11,12間に架け渡されるとともに、前記一対の筒状部11,12同士を連結する棒状の連結部13と、を備えており、
前記連結部13の長さ方向一端部13aは、前記一対の筒状部11,12のうち一方の筒状部11の内部に対して進退可能に挿入され、前記連結部13の長さ方向他端部13bは、前記一対の筒状部11,12のうち他方の筒状部12の内部に対して進退可能に挿入されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、連結部13の長さ方向一端部13aが、一方の筒状部11の内部に対して進入する長さと、連結部13の長さ方向他端部13bが、他方の筒状部12の内部に対して進入する長さを適宜調整することで、一対の筒状部11,12間の長さを容易に変更できるので、人通口補強金物10は、全体の長さ調整が可能な状態に構成されることになる。これにより、様々なサイズの人通口2に対応して取り付けることができるので、汎用性が高まり、製造や施工のコストを抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、請求項1に記載の人通口補強金物10において、
前記連結部13は、第一ボルト部材13によって構成されており、
前記筒状部11,12は、
本体筒部11a,12aと、
中央に前記第一ボルト部材13が通される孔が形成され、前記本体筒部11a,12aのうち前記第一ボルト部材13側の端部に一体に設けられた第一環状板部11b,12bと、
前記第一環状板部11b,12bの内側面に一体に設けられ、前記第一ボルト部材13がねじ込まれる第一ナット部材11c,12cと、を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、第一ボルト部材13の長さ方向一端部13aが、一方の筒状部11の内部に対して進入する長さと、第一ボルト部材13の長さ方向他端部13bが、他方の筒状部12の内部に対して進入する長さを調整する場合に、一対の筒状部11,12を回転させるだけで、容易に長さ調整を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、請求項2に記載の人通口補強金物10において、
前記一方の側面3と前記他方の側面4にそれぞれ設けられて、前記一対の筒状部11,12がそれぞれ固定される一対の被固定部15,16を更に備えており、
前記筒状部11,12は、
中央に孔が形成され、前記本体筒部11a,12aのうち前記人通口2の前記側面3,4側の端部に一体に設けられた第二環状板部11d,12dと、
前記第二環状板部11d,12dの内側面に一体に設けられ、先端部が、前記第二環状板部11d,12dにおける中央の孔から前記人通口2の前記側面3,4に向かって突出する第二ボルト部材11e,12eと、を有しており、
前記被固定部15,16は、内部に雌ネジが形成された筒状のインサート部材15,16によって構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、一対の被固定部15,16が、一方の側面3と他方の側面4にそれぞれ設けられているので、一対の筒状部11,12を、一方の側面3と他方の側面4にそれぞれ確実に固定することができる。
さらに、筒状部11,12は、人通口2の側面3,4に向かって突出する第二ボルト部材11e,12eと、を有しているので、一方の側面3と他方の側面4の、内部に雌ネジが形成された筒状のインサート部材15,16に向かって、筒状部11,12を回転させて取り付けるだけで、筒状部11,12を、人通口2の側面3,4に容易に固定することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、請求項3に記載の人通口補強金物10において、
前記被固定部15,16は、前記立ち上がり部1の内部鉄筋6に接続される接続部15a,16aを有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、被固定部15,16は、立ち上がり部1の内部鉄筋6に接続される接続部15a,16aを有するので、被固定部15,16の取り付け状態を安定的にすることができ、これにより、人通口補強金物10全体の取り付け状態を向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、請求項2に記載の人通口補強金物10において、
前記第一ボルト部材13に設けられて、当該第一ボルト部材13を軸回りに回転動作させるための操作を受け付ける操作受付部14(第二ナット部材14)を更に備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、操作受付部14によって操作を受け付けて第一ボルト部材13を軸回りに回転させることで、第一ボルト部材13を、一対の筒状部11,12に対して移動させて進退させることができる。これにより、第一ボルト部材13を、必要に応じて一対の筒状部11,12から抜くことが可能となるので、一対の筒状部11,12を人通口2の側面3,4から取り外しやすくなる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、人通口補強構造であって、例えば
図1~
図3に示すように、請求項1から5のいずれか一項に記載の人通口補強金物10が、前記人通口2における前記一方の側面3と前記他方の側面4との間に架け渡されて取り付けられており、
前記一方の筒状部11は前記一方の側面3に固定され、
前記他方の筒状部12は前記他方の側面4に固定され、
前記連結部13は、前記一対の筒状部11,12間に架け渡されるとともに、前記一対の筒状部11,12同士を連結しており、
前記連結部13の長さ方向一端部13aは、前記一方の筒状部11の内部に挿入され、前記連結部13の長さ方向他端部13bは、前記他方の筒状部12の内部に挿入され、前記連結部13の前記長さ方向一端部13aと前記長さ方向他端部13bが、前記一対の筒状部11,12の内部に対して交互に進退可能となっていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、連結部13の長さ方向一端部13aと長さ方向他端部13bが、一対の筒状部11,12の内部に対して交互に進退可能となっているので、人通口補強金物10を人通口2に取り付ける場合に、連結部13の長さ方向一端部13aが一方の筒状部11の内部に進入している長さや、連結部13の長さ方向他端部13bが他方の筒状部12の内部に進入している長さを適宜調整できる。そのため、連結部13が一方の筒状部11又は他方の筒状部12から取り外されないようにしながら、人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができる。さらに、一対の筒状部11,12に対する連結部13の進入長さを調整できるので、人通口2のサイズに関わらず、同様の取付方法で人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができ、汎用性を向上させることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば
図1~
図3に示すように、請求項1から5のいずれか一項に記載の人通口補強金物10によって前記人通口2の補強を行う人通口補強方法であって、
前記連結部13の前記長さ方向一端部13aが内部に挿入された前記一方の筒状部11を、前記他方の筒状部12から離間する方向に移動させながら前記一方の側面3に固定する工程と、
前記連結部13の前記長さ方向他端部13bが内部に挿入された前記他方の筒状部12を、前記一方の筒状部11から離間する方向に移動させながら前記他方の側面4に固定する工程と、のうち少なくとも一方の工程を有することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、一方の筒状部11を、他方の筒状部12から離間する方向に移動させながら一方の側面3に固定する工程と、他方の筒状部12を、一方の筒状部11から離間する方向に移動させながら他方の側面4に固定する工程と、のうち少なくとも一方の工程を行うことで、人通口補強金物10を人通口2に取り付けることができ、人通口2を容易に補強できる。さらに、一方又は他方の筒状部11,12を移動させて、一対の筒状部11,12間の長さを調整できるので、人通口2のサイズに関わらず、同様の取付方法で人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができ、汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、長さ調整が可能な状態に構成されて、様々なサイズの人通口に対応して取り付けることができ、製造や施工のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】人通口が人通口補強金物によって補強された状態を示す斜視図である。
【
図2】人通口が人通口補強金物によって補強された状態を示す立断面図である。
【
図3】人通口が人通口補強金物によって補強された状態を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0023】
図1~
図3において符号1は、住宅等の建物における基礎(べた基礎、布基礎)の立ち上がり部を示す。建物の基礎全体のうち、床下点検用として人や機材の通り抜けが必要とされる箇所の立ち上がり部1には、人通口2が形成されている。すなわち、建物の基礎には、複数の人通口2が形成されることが多いが、一つしか形成されない場合もある。
【0024】
なお、人通口2は、人の通り抜けを可能とする寸法に設定されており、本実施形態においては、左右方向の開口寸法が600mmに設定され、上下方向の開口寸法が350mmに設定されている。立ち上がり部1の厚み方向(正背方向)の寸法は、例えば120mm~150mm程度に設定されることが一般的である。
【0025】
人通口2は、立ち上がり部1が凹字型に形成されることで構成され、左側面3(一方の側面3)と、右側面4(他方の側面4)と、底面5と、を有する。
また、立ち上がり部1の上面には、土台等の建物躯体の一部(下端部)が載せられる。そのため、当該建物躯体の一部は、人通口2を跨いで配置される。換言すれば、人通口2を跨ぐ建物躯体の一部が、人通口2の天面を構成していることとなる。
【0026】
立ち上がり部1の上面には、土台等が跨って配置されるものの、人通口2は上方に開放されているため、人通口補強金物10によって補強される。
人通口補強金物10が取り付けられる位置は、人通口2における左側面3の上端部と右側面4の上端部との間であり、これら左右側面3,4間に架け渡されて取り付けられている。
【0027】
人通口補強金物10は、一対の筒状部11,12と、棒状の連結部13と、操作受付部14と、一対の被固定部15,16と、を備える。
一対の筒状部11,12は、左側に位置する一方の筒状部11と、右側に位置する他方の筒状部12と、からなる。
また、一対の被固定部15,16は、左側に位置する一方の被固定部15と、右側に位置する他方の被固定部16と、からなる。
【0028】
棒状の連結部13は、一対の筒状部11,12間に架け渡されるとともに、一対の筒状部11,12同士を連結するものであり、第一ボルト部材によって構成されている。
第一ボルト部材13は、本実施形態においては、頭部のない全ねじボルトが採用されており、長さ方向一端部13aから長さ方向他端部13bにかけて連続する雄ネジが形成されている。
なお、第一ボルト部材13の長さは、
図2,
図3に示す例における長さに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
一対の筒状部11,12は、人通口2における左側面3と右側面4のそれぞれに固定されるものであり、筒の向き(すなわち、後述する第一環状板部11b,12bと第二環状板部11d,12dの並び方向)が左右方向となるように配置されている。そして、左側に位置する一方の筒状部11は、左側端部が、人通口2の左側面3に固定され、右側に位置する他方の筒状部12は、右側端部が、人通口2の右側面4に固定されている。
【0030】
一方の筒状部11は、本体筒部11aと、第一環状板部11bと、第一ナット部材11cと、第二環状板部11dと、第二ボルト部材11eと、を有する。
他方の筒状部12も同様に、本体筒部12aと、第一環状板部12bと、第一ナット部材12cと、第二環状板部12dと、第二ボルト部材12eと、を有する。
なお、これら一対の筒状部11,12は左右対称に配置されるため、以下、一方の筒状部11のみ詳細な説明を行い、他方の筒状部12については詳細な説明を省略する。
【0031】
本体筒部11aは、いわゆる単管パイプによって構成されており、長さ方向両端部が開放されている。本体筒部11aとして単管パイプを用いるため、取付方向の自由度が高いというメリットがある。
【0032】
第一環状板部11bは、円環状の金属製板材である。中央には、第一ボルト部材13が通される孔が形成され、本体筒部11aのうち、第一ボルト部材13側(人通口2の中央側)の端部に溶接されて一体に設けられている。
【0033】
第一ナット部材11cは、第一環状板部11bの内側面(本体筒部11aの筒内側面)に溶接されて一体に設けられている。そして、第一環状板部11bにおける中央の孔に通された第一ボルト部材13がねじ込まれる。
【0034】
第二環状板部11dは、円環状の金属製板材であり、中央には、第二ボルト部材11eが通される孔が形成されている。また、この第二環状板部11dは、本体筒部11aのうち、人通口2の左側面3側の端部に溶接されて、本体筒部11aと一体に設けられている。
【0035】
第二ボルト部材11eは、頭部のあるボルトであり、その頭部が、第二環状板部11dの内側面(本体筒部11aの筒内側面)に溶接されて一体に設けられている。そして、先端部が、第二環状板部11dにおける中央の孔から人通口2の左側面3に向かって突出している。
【0036】
操作受付部14は、連結部13である第一ボルト部材13に設けられて、当該第一ボルト部材13を軸回りに回転動作させるための操作を受け付けるためのものである。すなわち、操作受付部14は、第一ボルト部材13を一方側又は他方側に移動させるために、第一ボルト部材13に設けられている。
なお、操作とは、作業員が第一ボルト部材13を軸回りに回転させようとする作業を指し、作業は素手又は工具を用いて行われる。
【0037】
より具体的に説明すると、操作受付部14は、本実施形態においては、第一ボルト部材13に設けられた第二ナット部材14によって構成されている。この第二ナット部材14は、第一ナット部材11cと同様のナットである。
第二ナット部材14は、第一ボルト部材13の長さ方向中央部に溶接固定されており、例えばレンチ等の工具によって回転させることで、第一ボルト部材13が同時に回転するようになっている。そして、第二ナット部材14が、一対の筒状部11,12のうちいずれか一方の筒状部11(12)における第一環状板部11b(12b)に接するまで第一ボルト部材13を回転させると、第一ボルト部材13の他方側の端部が、他方の筒状部12(11)から取り外されるようになっている。
なお、第一ボルト部材13の長さは、第二ナット部材14が、一対の筒状部11,12のうちいずれか一方の筒状部11(12)における第一環状板部11b(12b)に接したときに、第一ボルト部材13の他方側の端部を、他方の筒状部12(11)から取り外すことができる寸法に設定されているものとする。
【0038】
なお、操作受付部14は、本実施形態においてはナットが採用されるが、これに限られるものではなく、第一ボルト部材13の長さ方向中央部を、レンチ等の工具で把持できるように加工し、当該部分を操作受付部14としてもよい。つまり、第一ボルト部材13は、必ずしも全ねじボルトでなくてもよいものとする。
【0039】
一対の被固定部15,16は、人通口2における左側面3と右側面4にそれぞれ設けられて、一対の筒状部11,12がそれぞれ固定される。
より具体的に説明すると、一対の被固定部15,16は、内部に雌ネジが形成された筒状のインサート部材15,16によって構成されている。一対の被固定部15,16は、長さ方向一端部(一対の筒状部11,12側)が開口して形成され、当該開口が、人通口2における左側面3及び右側面4に露出するように配置される。そして、当該露出した開口から、一対の筒状部11,12における第二ボルト部材11e,12eがねじ込まれて固定される。
【0040】
一対の被固定部15,16は、立ち上がり部1の内部に予め埋設されている。
また、一対の被固定部15,16は、立ち上がり部1の内部鉄筋6に接続される接続部15a,16aを有する。
接続部15a,16aは、一対の被固定部15,16のうち人通口2とは反対側の端部に固定された一対の金属製の棒状部材である。そして、一対の接続部15a,16aのうち少なくとも一方が、内部鉄筋6に接するように設けられている。内部鉄筋6に対しては溶接されることが望ましい。
すなわち、立ち上がり部1を形成する場合は、内部鉄筋6を組んだときに一対の被固定部15,16も一緒に組み込んで溶接し、その後にコンクリート打設を行うようにする。立ち上がり部1がプレキャストコンクリートの場合は、工場にて内部鉄筋6に溶接されて一緒に組み込まれるものとする。
【0041】
次に、以上のように構成された人通口補強金物10を人通口2に取り付けて人通口2の補強を行う方法について説明する。
なお、一対の筒状部11,12は、各部が溶接されて組み立てられた状態になっているものとする。
【0042】
まずは、一対の被固定部15,16である一対のインサート部材15,16を、各々の接続部15a,16aを内部鉄筋6に接続させた状態で、立ち上がり部1に埋設する。そして、一対の筒状部11,12側の開口が、人通口2における左側面3及び右側面4に露出するように配置する。
【0043】
続いて、予め操作受付部14である第二ナット部材14が設けられた第一ボルト部材13の長さ方向一端部13aを、一方の筒状部11に取り付けておくとともに、一方の筒状部11の内部に進入させておく。さらに、第一ボルト部材13の長さ方向他端部13bを、他方の筒状部12に取り付けておくとともに、他方の筒状部12の内部に進入させておく。すなわち、一対の筒状部11,12と第一ボルト部材13とを一体に組み合わせておき、さらに、一対の筒状部11,12間の間隔を短い状態にしておく。すなわち、人通口補強金物10のうち被固定部15,16を除く部分の全長を、人通口2における左側面3から右側面4までの長さよりも短い状態にしておく。
そして、人通口補強金物10のうち被固定部15,16を除く部分を、人通口2における左側面3と右側面4との間に配置する。
【0044】
続いて、一方の筒状部11を、人通口2の左側面3に固定する。
一方の筒状部11における左側端部から第二ボルト部材11eの先端部が、第二環状板部11dにおける中央の孔から突出しているため、第二ボルト部材11eの先端部を、インサート部材15の筒内にねじ込み、これにより、一方の筒状部11を、人通口2の左側面3に固定する。
なお、第二ボルト部材11eは第二環状板部11dに溶接され、第二環状板部11dは本体筒部11aに溶接されている。そのため、第二ボルト部材11eの先端部をインサート部材15の筒内にねじ込む際は、一方の筒状部11全体を、第二ボルト部材11eの軸回りに回転させるようにする。
【0045】
続いて、他方の筒状部12を、人通口2の右側面4に固定する。
他方の筒状部12の右側面4への固定方法は、一方の筒状部11の左側面3への固定方法と同一である。すなわち、第二ボルト部材12eの先端部をインサート部材16の筒内にねじ込む際に、他方の筒状部12全体を、第二ボルト部材12eの軸回りに回転させるようにする。このとき、第一ボルト部材13における長さ方向一端部13aが一方の筒状部11の内部に進入している長さや、長さ方向他端部13bが他方の筒状部12の内部に進入している長さを適宜調整し、第一ボルト部材13が一方の筒状部11又は他方の筒状部12から取り外されないようにする。
【0046】
なお、一方の筒状部11を人通口2の左側面3に固定する工程と、他方の筒状部12を人通口2の右側面4に固定する工程は、順番が逆でもよい。もしくは、これらの工程を同時に行ってもよい。すなわち、人通口補強金物10によって人通口2の補強を行う際は、第一ボルト部材13の長さ方向一端部13aが内部に挿入された一方の筒状部11を、他方の筒状部12から離間する方向に移動させながら一方の側面3に固定する工程と、第一ボルト部材13の長さ方向他端部13bが内部に挿入された他方の筒状部12を、一方の筒状部11から離間する方向に移動させながら他方の側面4に固定する工程と、のうち少なくとも一方の工程を行うようにする。
【0047】
そして、第一ボルト部材13における長さ方向一端部13a及び長さ方向他端部13bが一方の筒状部11及び他方の筒状部12から抜け出ない範囲で、一方の筒状部11と他方の筒状部12とを極力離間させるようにする。すると、人通口2における左側面3と右側面4との間で、人通口補強金物10を突っ張った状態にすることができる。
【0048】
以上のようにして、人通口補強金物10を人通口2に取り付けて人通口2の補強を行うことができる。
床下の点検を行う場合は、操作受付部14である第二ナット部材14を介して第一ボルト部材13を軸回りに回転させる。そして、第一ボルト部材13を、一対の筒状部11,12のうちいずれか一方の筒状部11(12)の内部に進入させることで、第一ボルト部材13を他方の筒状部12から取り外し、一方の筒状部11と他方の筒状部12とを分離状態とする。そして、一方の筒状部11を、人通口2の左側面3から取り外し、他方の筒状部12を、人通口2の右側面4から取り外す。これにより、人通口補強金物10を人通口2から取り外すことができ、人や機材の通り抜けが可能な状態となる。
また、床下の点検が終了した後は、上記の方法によって人通口補強金物10を再び人通口2に取り付けるようにする。
【0049】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、連結部13(第一ボルト部材13)の長さ方向一端部13aは、一対の筒状部11,12のうち一方の筒状部11の内部に対して進退可能に挿入され、連結部13の長さ方向他端部13bは、一対の筒状部11,12のうち他方の筒状部12の内部に対して進退可能に挿入されているので、連結部13の長さ方向一端部13aが、一方の筒状部11の内部に対して進入する長さと、連結部13の長さ方向他端部13bが、他方の筒状部12の内部に対して進入する長さを適宜調整することで、一対の筒状部11,12間の長さを容易に変更できる。これにより、人通口補強金物10は、全体の長さ調整が可能な状態に構成されることになるので、様々なサイズの人通口2に対応して取り付けることができて汎用性が高まり、製造や施工のコストを抑えることができる。
【0050】
また、連結部13である第一ボルト部材13の長さ方向一端部13aが、一方の筒状部11の内部に対して進入する長さと、第一ボルト部材13の長さ方向他端部13bが、他方の筒状部12の内部に対して進入する長さを調整する場合に、一対の筒状部11,12を回転させるだけで、容易に長さ調整を行うことができる。
【0051】
また、一対の被固定部15,16が、一方の側面3と他方の側面4にそれぞれ設けられているので、一対の筒状部11,12を、一方の側面3と他方の側面4にそれぞれ確実に固定することができる。
【0052】
また、筒状部11,12は、人通口2の側面3,4に向かって突出する第二ボルト部材11e,12eと、を有しているので、一方の側面3と他方の側面4の、内部に雌ネジが形成された筒状のインサート部材15,16に向かって、筒状部11,12を回転させて取り付けるだけで、筒状部11,12を、人通口2の側面3,4に容易に固定することができる。
【0053】
また、一対の被固定部15,16は、立ち上がり部1の内部鉄筋6に接続される接続部15a,16aを有するので、一対の被固定部15,16の取り付け状態を安定的にすることができ、これにより、人通口補強金物10全体の取り付け状態を向上させることができる。
【0054】
また、操作受付部14である第二ナット部材14によって操作を受け付けて第一ボルト部材13を軸回りに回転させることで、第一ボルト部材13を、一対の筒状部11,12に対して移動させて進退させることができる。これにより、第一ボルト部材13を、必要に応じて一対の筒状部11,12から抜くことが可能となるので、一対の筒状部11,12を人通口2の側面3,4から取り外しやすくなる。
【0055】
また、連結部13(第一ボルト部材13)の長さ方向一端部13aと長さ方向他端部13bが、一対の筒状部11,12の内部に対して交互に進退可能となっているので、人通口補強金物10を人通口2に取り付ける場合に、連結部13の長さ方向一端部13aが一方の筒状部11の内部に進入している長さや、連結部13の長さ方向他端部13bが他方の筒状部12の内部に進入している長さを適宜調整できる。そのため、連結部13が一方の筒状部11又は他方の筒状部12から取り外されないようにしながら、人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができる。さらに、一対の筒状部11,12に対する連結部13の進入長さを調整できるので、人通口2のサイズに関わらず、同様の取付方法で人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができ、汎用性を向上させることができる。
【0056】
また、一方の筒状部11を、他方の筒状部12から離間する方向に移動させながら一方の側面3に固定する工程と、他方の筒状部12を、一方の筒状部11から離間する方向に移動させながら他方の側面4に固定する工程と、のうち少なくとも一方の工程を行うことで、人通口補強金物10を人通口2に取り付けることができ、人通口2を容易に補強できる。さらに、一方又は他方の筒状部11,12を移動させて、一対の筒状部11,12間の長さを調整できるので、人通口2のサイズに関わらず、同様の取付方法で人通口補強金物10を、人通口2の一方の側面3と他方の側面4との間に架け渡して取り付けることができ、汎用性を向上させることができる。
【0057】
また、本体筒部11a,12aは単管パイプによって構成され、その他の部位を構成する金物類も、ボルトやナット、金属板なども全て一般流通品であり、本実施形態における人通口補強金物10は、これら一般流通品の組み合わせで製造できる。そのため、専用の部品を製造する必要がなくなるので、製造に係るコストを低減できる。
【符号の説明】
【0058】
1 立ち上がり部
2 人通口
3 左側面
4 右側面
5 底面
6 内部鉄筋
10 人通口補強金物
11 筒状部
11a 本体筒部
11b 第一環状板部
11c 第一ナット部材
11d 第二環状板部
11e 第二ボルト部材
12 筒状部
12a 本体筒部
12b 第一環状板部
12c 第一ナット部材
12d 第二環状板部
12e 第二ボルト部材
13 連結部:第一ボルト部材
13a 長さ方向一端部
13b 長さ方向他端部
14 操作受付部:第二ナット部材
15 被固定部:インサート部材
15a 接続部
16 被固定部:インサート部材
16a 接続部