(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005181
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空気制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20240110BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240110BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240110BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20240110BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240110BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F7/007 B
F24F7/06 101B
F24F7/08 A
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105256
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L058BK09
3L260AB02
3L260AB15
3L260AB16
3L260BA12
3L260CA32
3L260CB22
3L260CB53
3L260CB63
3L260EA07
3L260EA08
3L260FA04
3L260JA23
(57)【要約】
【課題】空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供する。
【解決手段】屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置10と、屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有する空調機器20と、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、換気装置の排気量と空調機器の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量に基づき空調機器が吹き出す空気の温度を決定し、空調機器に対して決定した吹き出す空気の温度を指示する制御部30と、を備える空気制御システム100を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、
屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有する空調機器と、
前記空調機器における冷房機能または暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、前記換気装置の排気量と前記空調機器の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量に基づき前記空調機器が吹き出す空気の温度を決定し、前記空調機器に対して決定した吹き出す空気の温度を指示する制御部と、
を備える空気制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記空調機器における冷房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、前記空調機器における給気機能と前記換気装置における排気機能が稼働していない場合の前記空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、前記空調機器が吹き出す空気の温度を低く決定し、
前記空調機器における暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、前記空調機器における給気機能と前記換気装置における排気機能が稼働していない場合の前記空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、前記空調機器が吹き出す空気の温度を高く決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、取得した排気量と給気量の差に応じて前記空調機器が吹き出す空気の温度を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の空気制御システム。
【請求項4】
屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、
屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有し、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節する空調機器と、
前記空調機器における冷房機能または暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、屋外の空気の温度と前記設定温度とを取得し、前記空調機器が吹き出す空気の温度を決定し、前記空調機器に対して吹き出す空気の温度を指示する制御部と、
を備える空気制御システム。
【請求項5】
屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、
屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有する空調機器と、
前記空調機器における冷房機能または暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、前記換気装置の排気量と前記空調機器の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量の差が小さくなるように前記換気装置の排気量および/または前記空調機器の給気量を決定し、前記換気装置に対して決定した排気量および/または前記空調機器に対して決定した給気量を指示する制御部と、
を備える空気制御システム。
【請求項6】
前記空調機器は、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節し、
前記制御部は、
前記空調機器における冷房機能または暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、屋外の空気の温度、前記設定温度、前記換気装置の排気量、および前記空調機器の給気量を取得し、
取得した給気量が前記空調機器が備える最大の給気量と等しく、取得した排気量が取得した給気量を上回っている場合、取得した屋外の空気の温度と前記設定温度に基づき前記空調機器が吹き出す空気の温度を決定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の空気制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記空調機器における冷房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度が前記設定温度より所定値以上高い場合、前記空調機器における給気機能と前記換気装置における排気機能が稼働していない場合の前記空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、前記空調機器が吹き出す空気の温度を低く決定し、
前記空調機器における暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度が前記設定温度より所定値以上低い場合、前記空調機器における給気機能と前記換気装置における排気機能が稼働していない場合の前記空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、前記空調機器が吹き出す空気の温度を高く決定する、
ことを特徴とする請求項4または6に記載の空気制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記空調機器における冷房機能または暖房機能、前記空調機器における給気機能、および、前記換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度と前記設定温度の差に応じて前記空調機器が吹き出す空気の温度を決定する、
ことを特徴とする請求項4または6に記載の空気制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置と空調機器から構成される空気制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内において空調機器の冷暖房運転中に換気装置で換気すると、屋外の空気が屋内に浸入し、屋内の快適性が損なわれる恐れがある。これを解決するために、例えば特許文献1のように、レンジフードの排気により暖房時に屋内温度が低下しないように、空気調和機の熱交換器を通して屋外の空気を加温させてから導入することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、空気調和機の運転中に換気装置による排気運転が行われる場合には、建物の自然給気口や隙間等から屋外の空気が屋内に入ってくることがある。このような場合、空調機器によって屋外空気を温度調節してから屋内に導入しても他の箇所から入ってくる屋外空気によって室内の空気の温度が影響を受け、快適性が損なわれてしまう。たとえば、暖房時に屋外空気を加温して屋内に導入しても建物の隙間などから入ってくる屋外空気によって冷やされてしまい、屋内にいる人が寒さを感じるだけでなく、なかなか屋内温度が上がらず不快に感じてしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有する空調機器と、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、換気装置の排気量と空調機器の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量に基づき空調機器が吹き出す空気の温度を決定し、空調機器に対して決定した吹き出す空気の温度を指示する制御部と、を備える空気制御システムが提供される。
これによれば、換気装置の排気量と空調機器の給気量に基づき空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから侵入する屋外の空気に即して温度を決定でき、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0007】
さらに、制御部は、空調機器における冷房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、空調機器における給気機能と換気装置における排気機能が稼働していない場合の空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、空調機器が吹き出す空気の温度を低く決定し、空調機器における暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、空調機器における給気機能と換気装置における排気機能が稼働していない場合の空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、空調機器が吹き出す空気の温度を高く決定することを特徴としてもよい。
これによれば、換気装置の排気量が空調機器の給気量より所定値以上大きい場合すなわち屋内が負圧になり建物の隙間などから相当量の屋外空気が侵入する場合、通常の冷暖運転時に比べ、冷房時には低く、暖房時には高く、空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0008】
さらに、制御部は、取得した排気量と給気量の差に応じて空調機器が吹き出す空気の温度を決定することを特徴としてもよい。
これによれば、換気装置の排気量と空調機器の給気量の差に応じて空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有し、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節する空調機器と、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、屋外の空気の温度と設定温度とを取得し、空調機器が吹き出す空気の温度を決定し、空調機器に対して吹き出す空気の温度を指示する制御部と、を備える空気制御システムが提供される。
これによれば、屋外温度および空調機器の設定温度に基づき空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから侵入する場合であっても屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0010】
上記課題を解決するために、屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する換気装置と、屋外の空気を屋内に給気する給気機能と、冷房機能および暖房機能のうち少なくとも1つの機能を有する空調機器と、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、換気装置の排気量と空調機器の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量の差が小さくなるように換気装置の排気量および/または空調機器の給気量を決定し、換気装置に対して決定した排気量および/または空調機器に対して決定した給気量を指示する制御部と、を備える空気制御システムが提供される。
これによれば、換気装置の排気量と空調機器の給気量が等しくなるように排気量と給気量を決定することで、建物の隙間などから屋外の空気が侵入することを最小化し、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0011】
さらに、空調機器は、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節し、制御部は、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、屋外の空気の温度、設定温度、換気装置の排気量、および空調機器の給気量を取得し、取得した給気量が空調機器が備える最大の給気量と等しく、取得した排気量が取得した給気量を上回っている場合、取得した屋外の空気の温度と設定温度に基づき空調機器が吹き出す空気の温度を決定することを特徴としてもよい。
これによれば、換気装置の排気量が空調機器の給気量を上回っている場合屋外温度と空調機器の設定温度に基づき空調機器が吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから侵入する屋外の空気が増加した場合であっても、屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0012】
さらに、制御部は、空調機器における冷房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度が設定温度より所定値以上高い場合、空調機器における給気機能と換気装置における排気機能が稼働していない場合の空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、空調機器が吹き出す空気の温度を低く決定し、空調機器における暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度が設定温度より所定値以上低い場合、空調機器における給気機能と換気装置における排気機能が稼働していない場合の空調機器が吹き出す空気の温度に比べ、空調機器が吹き出す空気の温度を高く決定することを特徴としてもよい。
これによれば、屋外温度が設定温度より所定値以上高いまたは低い場合すなわち屋外温度が快適な温度とされる設定温度と乖離している場合、通常の冷暖運転時に比べ、冷房時には低く、暖房時には高く、空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行い建物の隙間などから侵入する屋外の空気が増加した場合であっても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【0013】
さらに、制御部は、空調機器における冷房機能または暖房機能、空調機器における給気機能、および、換気装置における排気機能が稼働中において、取得した屋外の空気の温度と設定温度の差に応じて空調機器が吹き出す空気の温度を決定することを特徴としてもよい。
これによれば、屋外温度および空調機器の設定温度の差に応じて空調機器が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから侵入する屋外の空気が増加した場合であっても屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、空調機器の運転中に換気装置の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る第一実施例の空気制御システムの構成要素を示す図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の空気制御システムの構成要素を家屋に設置した模式図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の空気制御システムのブロック構成図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート。
【
図5】本発明に係る第一実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(変形例1)。
【
図6】本発明に係る第二実施例の空気制御システムのブロック構成図。
【
図7】本発明に係る第二実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート。
【
図8】本発明に係る第二実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(変形例1)。
【
図9】本発明に係る第三実施例の空気制御システムのブロック構成図。
【
図10】本発明に係る第三実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(その1)。
【
図11】本発明に係る第三実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(その2)。
【
図12】本発明に係る第三実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(変形例1、その1)。
【
図13】本発明に係る第三実施例の空気制御システムの処理フローを示すフローチャート(変形例1、その2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至
図5を参照し、本実施例における空気制御システム100を説明する。空気制御システム100は、
図1~
図3に示すように、換気装置10と、空調機器20と、制御部30と、を備える。制御部30は、換気装置10および空調機器20と通信可能に接続されている。通信は、有線・無線のいずれでもよく公知の方式(たとえば、WiFiなど)により行われる。制御部30は、本実施例では換気装置10および空調機器20とは別体で構成されているが、換気装置10または空調機器20のいずれかに含まれるように構成されてもよい。
【0017】
換気装置10は、屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する。本明細書において換気装置10は、当該排気機能を有し、住宅のキッチンに配置されるレンジフードとして記載するが、これに限定されず、住宅の居室やオフィスなどに配置される換気扇であってもよい。換気装置10は、実際に屋内の空気を屋外に排気するための換気送風機11と、換気送風機11が排気する空気の排気量を測定する排気量測定部12と、使用者が排気風量の大きさを選択するための排気風量選択ボタン13とを備える。なお、換気装置10は、図示しないが、排気量測定部12が測定した排気量や排気風量選択ボタン13の選択値を制御部30に伝達するために通信を行う通信部を備える。
【0018】
換気送風機11は、静圧の高いシロッコファンが好ましいが、特に限定されない。排気量測定部12は、通常換気装置10と屋外を繋ぐダクトに風速計(図示せず)を設け、風速計が測定した風速とダクトの断面積に基づき排気風量を求めるが、その測定方法は特に限定されない。排気風量選択ボタン13は、たとえば、強、中、弱、24時間換気風量(弱よりさらに少ない換気風量)などように、換気送風機11の回転数を変更し、換気量を変化させるためのボタンである。レンジフードは、高い静圧で大きな排気量を有するため、近傍で行われる調理から発生する油煙等を捕捉し屋外に排出するだけでなく、住宅のキッチン以外の空間から空気を吸引して引き動かす能力を有する。
【0019】
空調機器20は、屋内の空気の温度を冷やす冷房機能のみ、または屋内の空気の温度を暖める暖房機能のみ、または冷房機能と暖房機能の両方の機能を有する所謂エアコンである。空調機器20は、吹き出し口から冷房機能により冷やされた空気または暖房機能により暖められた空気を吹き出して、屋内の空気の温度を調節する。空調機器20は、さらに、屋外の空気を屋内に給気する給気機能を有する。なお、空調機器20は、図示しないが、給気量測定部223が測定した給気量や給気風量選択ボタン234の選択値を制御部30に伝達するために通信を行う通信部を備える。
【0020】
空調機器20は、屋内機21と、屋外機22と、操作端末23から構成される。屋内機21は、吹き出し口から空気を吹き出すための屋内送風機211と、屋内の空気と熱交換を行うための屋内熱交換器212を備える。屋外機22は、屋外の空気と熱交換を行うための屋外熱交換器225と、給気部221とを備える。空調機器20は、冷房機能を稼働させる場合には屋内熱交換器212と屋外熱交換器225の間で冷媒を循環させ、暖房機能を稼働させる場合には屋内熱交換器212と屋外熱交換器225の間で熱媒を循環させる。
【0021】
給気部221は、実際に屋外の空気を屋内に給気するための給気送風機222と、給気送風機222が給気する空気の給気量を測定する給気量測定部223と、給気機能を稼働させる場合に開口する給気弁224とを備える。給気送風機222は、静圧の高いシロッコファンが好ましいが、特に限定されない。給気量測定部223は、排気量測定部12同様の公知の方法で給気量を求める。操作端末23は、冷房機能を稼働させる冷房機能ボタン231、暖房機能を稼働させる暖房機能ボタン232、給気機能を稼働させ、給気送風機222の回転数を変更し、給気量を変化させる給気風量選択ボタン234、冷房機能・暖房機能・給気機能を停止させる停止ボタン233を備える。
【0022】
制御部30は、換気装置10と空調機器20のそれぞれの通信部と通信を行う通信部(図示せず)と、換気装置10の排気量と空調機器20の給気量に基づき空調機器20が吹き出し口から吹き出す空気の温度を演算するマイクロコンピュータとを備える。このマイクロコンピュータで実行される制御部30の制御方法を、
図4および
図5のフローチャートを参照して説明する。なお、フローチャートにおけるSはステップを示す。
【0023】
図4では、制御部30は、S100において、空調機器20における暖房機能、空調機器20における給気機能、および、換気装置10における排気機能を稼働させる。なお、暖房機能の代わりに冷房機能であってもよい。制御部30は、S102において、これらの3つの機能が稼働中に、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20の給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。なお、ここで制御部30が取得する排気量は、換気装置10の排気風量選択ボタン13で選択された理論値としての排気量であってもよい。また、ここで制御部30が取得する給気量は、空調機器20の操作端末23の給気風量選択ボタン234で選択された理論値としての給気量であってもよい。この場合、排気量測定部12と給気量測定部223は無くてもよい。
【0024】
制御部30は、S104において、取得した排気量と給気量の差に応じて空調機器20が吹き出し口から吹き出す空気の温度を演算し、決定する。たとえば、制御部30は、暖房時の排気量>給気量の場合に吹き出す空気の温度Td0とすると、排気量と給気量の差がより大きくなり排気量>>給気量の場合に吹き出す空気の温度Td1は、温度Td0より高くなるように決定する(Td1>Td0)。排気量と給気量の差が大きくなればなるほど屋内が負圧となるため、建物の自然給気口や隙間等から屋外の冷たい空気が屋内に侵入する量が多くなる。そのため、暖房時には、制御部30は、排気量と給気量の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を高くする。逆に、冷房時には温かい空気が屋内に侵入する量が多くなるため、制御部30は、排気量と給気量の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を低くする。
【0025】
また、たとえば、制御部30は、暖房時の排気量<給気量の場合に吹き出す空気の温度Td0とすると、排気量と給気量の差がより大きくなり排気量<<給気量の場合に吹き出す空気の温度Td1は、温度Td0より高くなるように決定する(Td1>Td0)。排気量と給気量の差が大きくなればなるほど屋内が正圧となるため、建物の自然給気口や隙間等から屋内の温かい空気が屋外へ漏出する量が多くなる。そのため、暖房時には、制御部30は、排気量と給気量の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を高くする。逆に、冷房時には冷たい空気が屋外に漏出する量が多くなるため、制御部30は、排気量と給気量の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を低くする。制御部30は、吹き出す空気の温度を決定したら、空調機器20に対して吹き出す空気の温度を指示する。
【0026】
制御部30は、空調機器20におけると暖房機能と給気機能、および、換気装置10における排気機能のすべて稼働している時にS102とS104を実行するため、S106において、使用者から暖房機能、給気機能、換気機能のいずれかの終了指示があったか否かを確認する。制御部30は、指示がない場合はS102とS104を繰り返し、指示があった場合はS108おいて終了指示があった機能を終了するように、空調機器20や換気装置10に指示を出す。このように、換気装置10の排気量と空調機器20の給気量の差に応じて空調機器20が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器20の運転中に換気装置10の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100を提供することができる。
【0027】
図5を参照し、制御部30の変形例1を説明する。制御部30は、S200において、空調機器20における暖房機能、空調機器20における給気機能、および、換気装置10における排気機能を稼働させる。制御部30は、S202において、これらの3つの機能が稼働中に、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20の給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。
【0028】
制御部30は、S204において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きいか否かを確認する。取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、制御部30は、S206において、空調機器20における給気機能と換気装置10における排気機能が稼働していない場合の空調機器20が吹き出す空気の温度t1(この温度を通常冷暖運転時吹出温度と言う)に比べ、空調機器20が吹き出す空気の温度を高く決定する。通常冷暖運転時吹出温度は、換言すれば、給気機能や換気機能が存在しない環境下での通常の空調機器20が吹き出す空気の温度である。
【0029】
空調機器20は、通常、冷房運転時は屋内温度と冷房運転の設定温度とを比較して、屋内温度>設定温度の場合は設定温度よりも低い温度の空気を吹き出し、暖房運転時は、屋内温度と暖房運転の設定温度を比較して、屋内温度<設定温度の場合は設定温度よりも高い温度の空気を吹き出す。なお、所定値は、使用者によりまたは出荷時に適宜定められる値である。制御部30は、所定値を小さい値に設定すれば排気量と給気量の差が小さくても次ステップ(S206)を実行し、大きな値に設定すれば排気量と給気量の小さな差は許容し通常冷暖運転時吹出温度を維持し、大きな差になった時に次ステップを実行することになる。
【0030】
取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、制御部30は、S206において、通常冷暖運転時吹出温度t1に比べ、空調機器20が吹き出す空気の温度を高くするように決定し、空調機器20にその温度で空気を吹き出すように指示する。逆に、冷房時には、通常冷暖運転時吹出温度t1に比べ、空調機器20が吹き出す空気の温度を低くするように決定する。取得した排気量が給気量より所定値以上大きくない場合、制御部30は、S212において、空調機器20に通常冷暖運転時吹出温度t1で空気を吹き出すように決定し、指示する。
【0031】
制御部30は、S208において、使用者から暖房機能、給気機能、換気機能のいずれかの終了指示があったか否かを確認する。制御部30は、指示がない場合はS202~S206またはS212を繰り返し、指示があった場合はS210おいて終了指示があった機能を終了するように、空調機器20や換気装置10に指示を出す。このように、換気装置10の排気量が空調機器20の給気量より所定値以上大きい場合すなわち屋内が負圧になり建物の隙間などから相当量の屋外空気が侵入する場合、通常の冷暖運転時に比べ、冷房時には低く、暖房時には高く、空調機器20が屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器20の運転中に換気装置10の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100を提供することができる。
【0032】
このように、空気制御システム100の制御部30は、空調機器20における冷房機能または暖房機能、空調機器20における給気機能、および、換気装置10における排気機能が稼働中において、換気装置10の排気量と空調機器20の給気量とを取得し、取得した排気量と給気量に基づき空調機器20が吹き出す空気の温度を決定し、空調機器20に対して決定した吹き出す空気の温度を指示する。これによれば、建物の隙間などから侵入する屋外の空気に即して温度を決定でき、空調機器20の運転中に換気装置10の排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100を提供することができる。
【0033】
<第二実施例>
図6乃至
図8を参照し、本実施例における空気制御システム100Aを説明する。なお、重複記載を避けるため、上記実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を簡略する。空気制御システム100Aは、
図6に示すように、換気装置10Aと、空調機器20Aと、制御部30Aと、を備える。制御部30Aは、換気装置10Aおよび空調機器20Aと通信可能に接続されている。通信は、有線・無線のいずれでもよく公知の方式により行われる。
【0034】
換気装置10Aは、屋内の空気を屋外に排気する排気機能を有する。換気装置10Aは、実際に屋内の空気を屋外に排気するための換気送風機11と、使用者が排気風量の大きさを選択するための排気風量選択ボタン13とを備える。
【0035】
空調機器20Aは、屋内の空気の温度を冷やす冷房機能のみ、または屋内の空気の温度を暖める暖房機能のみ、または冷房機能と暖房機能の両方の機能を有し、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節する所謂エアコンである。空調機器20Aは、吹き出し口から冷房機能により冷やされた空気または暖房機能により暖められた空気を吹き出して、通常使用者により設定された好ましい温度に適合するように屋内の空気の温度を調節する。空調機器20Aは、予め設定された温度をメモリに記憶している。空調機器20Aは、さらに、屋外の空気を屋内に給気する給気機能を有する。
【0036】
空調機器20Aは、屋内機21Aと、屋外機22Aと、操作端末23から構成される。屋内機21Aは、吹き出し口から空気を吹き出すための屋内送風機211と、屋内の空気と熱交換を行うための屋内熱交換器212と、屋内の温度情報を取得する屋内温度情報取得部213を備える。屋外機22Aは、屋外の空気と熱交換を行うための屋外熱交換器225と、屋外の温度情報を取得する屋外温度情報取得部226と、給気部221Aとを備える。給気部221Aは、実際に屋外の空気を屋内に給気するための給気送風機222と、給気機能を稼働させる場合に開口する給気弁224とを備える。
【0037】
屋内温度情報取得部213は、空調機器20Aが設置された部屋の空気の温度を測定する温度センサからその温度を取得する。温度センサは、空調機器20Aに取り付けられたものであってもよいし、別途部屋に設置されたものであってもよい。屋外温度情報取得部226は、空気制御システム100Aが設置された家屋HSの屋外の空気の温度を測定する温度センサからその温度を取得する。なお、屋外温度情報取得部226は、インターネットに接続し、屋外温度情報として当該地域の気温情報を取得してもよい。
【0038】
制御部30Aは、換気装置10Aと空調機器20Aと通信を行う通信部(図示せず)を備えると共に、空調機器20Aの屋外温度情報取得部226から屋外の空気の温度と、空調機器20Aのメモリに記憶された設定温度とを取得し、空調機器20Aが吹き出し口から吹き出す空気の温度を演算するマイクロコンピュータとを備える。このマイクロコンピュータで実行される制御部30Aの制御方法を、
図7および
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
図7では、制御部30Aは、S400において、空調機器20Aにおける暖房機能、空調機器20Aにおける給気機能、および、換気装置10Aにおける排気機能を稼働させる。制御部30Aは、S402において、これらの3つの機能が稼働中に、屋外温度情報取得部226から屋外の空気の温度情報と、空調機器20Aに記憶された設定温度とを通信を介して取得し、両者を比較する。
【0040】
制御部30Aは、S404において、取得した屋外の空気の温度と設定温度の差に応じて空調機器20Aが吹き出す空気の温度を演算し、決定する。たとえば、制御部30Aは、暖房時に屋外空気温度<設定温度の場合に吹き出す空気の温度Td0とすると、屋外空気温度と設定温度の差がより大きくなり屋外空気温度<<設定温度の場合の吹き出す空気の温度Td1は、温度Td0より高くなるように決定する(Td1>Td0)。屋外空気温度と設定温度の差が大きくなればなるほど、建物の自然給気口や隙間等を通じて屋内の空気との温度差も大きくなる。そのため、暖房時には、制御部30Aは、屋外空気温度と設定温度の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を高くする。逆に、冷房時には温かい空気により屋内の空気との温度差も大きくなるため、制御部30Aは、屋外空気温度と設定温度の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を低くする。制御部30Aは、吹き出す空気の温度を決定したら、空調機器20Aに対して吹き出す空気の温度を指示する。なお、屋内温度情報取得部213が測定した屋内の温度が設定温度になったら、暖房機能(または冷房機能)を停止してもよい。
【0041】
制御部30Aは、空調機器20Aにおけると暖房機能と給気機能、および、換気装置10Aにおける排気機能のすべて稼働している時にS402とS404を実行するため、S406において、使用者から暖房機能、給気機能、換気機能のいずれかの終了指示があったか否かを確認する。制御部30Aは、指示がない場合はS402とS404を繰り返し、指示があった場合はS408おいて終了指示があった機能を終了するように、空調機器20Aや換気装置10Aに指示を出す。このように、屋外温度および空調機器20Aの設定温度の差に応じて空調機器20Aが屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから外気が侵入したり、窓など断熱効果の小さい部分から屋外と熱伝導が大きい場合であっても屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、空調機器20Aの運転中に換気装置10Aの排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Aを提供することができる。
【0042】
図8を参照し、制御部30Aの変形例1を説明する。制御部30Aは、S500において、空調機器20Aにおける暖房機能、空調機器20Aにおける給気機能、および、換気装置10Aにおける排気機能を稼働させる。制御部30Aは、S502において、これらの3つの機能が稼働中に、屋外温度情報取得部226から屋外の空気の温度情報と、空調機器20Aに記憶された設定温度とを通信を介して取得し、両者を比較する。
【0043】
制御部30Aは、S504において、取得した屋外の空気の温度が設定温度より所定値以上低いか否か確認する。取得した屋外温度が空調機器20Aの設定温度より所定値以上低い場合、制御部30Aは、S506において、換気装置10Aの排気風量選択ボタン13の選択値から想定される排気量と、空調機器20Aの給気風量選択ボタン234の選択値から想定される給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。
【0044】
制御部30Aは、S508において、取得した排気量が給気量より所定値以上大きいか否かを確認する。取得した排気量が給気量より所定値以上大きくない場合、制御部30Aは、S518において、空調機器20Aにおける給気機能と換気装置10Aにおける排気機能が稼働していない場合の空調機器20Aが吹き出す空気の温度、すなわち通常冷暖運転時吹出温度t1より高い温度t2に決定する。取得した排気量が給気量より所定値以上大きい場合、制御部30Aは、S510において、空調機器20Aが吹き出す空気の温度をその高い温度t2よりさらに高い温度t3に決定する。また、取得した屋外温度が空調機器20Aの設定温度より所定値以上低くない場合、制御部30Aは、S516において、空調機器20Aが吹き出す空気の温度を通常冷暖運転時吹出温度t1に決定する(t1<t2<t3)。なお、空調機器20Aにおける冷房機能が稼働している場合は、逆に、t1>t2>t3となるように温度を決定する。なお、屋内温度情報取得部213が測定した屋内の温度が設定温度になったら、暖房機能(または冷房機能)を停止してもよい。
【0045】
このように、制御部30Aは、屋外温度と室内設定温度の乖離度と、排気量と給気量の乖離度という2つの指標に基づき、いずれの指標においても乖離度が大きくない場合通常冷暖運転時吹出温度t1に、いずれかの指標で乖離度が大きい場合暖房時には通常冷暖運転時吹出温度t1より高い温度t2または冷房時には通常冷暖運転時吹出温度t1より低い温度t2に、両方の指標で乖離度が大きい場合暖房時にはさらに高い温度t3または冷房時にはさらに低い温度t3に、空調機器20Aが吹き出す空気の温度を決定する。
【0046】
これによれば、屋外温度が設定温度より所定値以上高いまたは低い場合すなわち屋外温度が快適な温度とされる設定温度と乖離している場合、または、排気量と給気量が乖離している場合、通常の冷暖運転時に比べ、冷房時には低く、暖房時には高く、空調機器20Aが屋内に吹き出す空気の温度を決定し、屋外温度と設定温度が乖離している場合、および、排気量と給気量が乖離している場合、冷房時にはさらに低く、暖房時にはさらに高く、空調機器20Aが屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器20Aの運転中に換気装置10Aの排気運転を行い建物の隙間などから侵入する屋外の空気が増加したり、屋外温度が設定温度と乖離した場合であっても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Aを提供することができる。なお、S512とS514は、S406とS408とそれぞれ同じなので説明を省略する。
【0047】
また、空調機器20Aにおける冷房機能または暖房機能、空調機器20Aにおける給気機能、および、換気装置10Aにおける排気機能が稼働中において、屋外の空気の温度と設定温度とを取得し、空調機器20Aが吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから外気が侵入したり、窓など断熱効果の小さい部分から屋外と熱伝導が大きい場合であっても屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、空調機器20Aの運転中に換気装置10Aの排気運転を行っても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Aを提供することができる。
【0048】
<第三実施例>
図9乃至
図13を参照し、本実施例における空気制御システム100Bを説明する。なお、重複記載を避けるため、上記実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を簡略する。空気制御システム100Bは、
図9に示すように、レンジフードである換気装置10と、空調機器20Bと、制御部30Bと、を備える。制御部30Bは、換気装置10および空調機器20Bと通信可能に接続されている。通信は、有線・無線のいずれでもよく公知の方式により行われる。
【0049】
空調機器20Bは、屋内の空気の温度を冷やす冷房機能のみ、または屋内の空気の温度を暖める暖房機能のみ、または冷房機能と暖房機能の両方の機能を有し、予め設定された設定温度に基づき室内の空気の温度を調節する所謂エアコンである。空調機器20Bは、吹き出し口から冷房機能により冷やされた空気または暖房機能により暖められた空気を吹き出して、通常使用者により設定された好ましい温度に適合するように屋内の空気の温度を調節する。空調機器20Bは、予め設定された温度をメモリに記憶している。空調機器20Bは、さらに、屋外の空気を屋内に給気する給気機能を有する。
【0050】
空調機器20Bは、屋内機21Bと、屋外機22Bと、操作端末23から構成される。屋内機21Bは、吹き出し口から空気を吹き出すための屋内送風機211と、屋内の空気と熱交換を行うための屋内熱交換器212と、屋内の温度情報を取得する屋内温度情報取得部213を備える。屋外機22Bは、屋外の空気と熱交換を行うための屋外熱交換器225と、屋外の温度情報を取得する屋外温度情報取得部226と、給気部221とを備える。
【0051】
制御部30Bは、換気装置10と空調機器20Bと通信を行う通信部(図示せず)を備えると共に、換気装置10の排気量測定部12から排気量と空調機器20Bの給気量測定部223から給気量とを取得し、取得した排気量と給気量の差が小さくなるように換気装置10の排気量および/または空調機器20Bの給気量を決定するマイクロコンピュータとを備える。このマイクロコンピュータで実行される制御部30Bの制御方法を、
図10~
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
図10では、制御部30Bは、S600において、空調機器20Bにおける暖房機能、空調機器20Bにおける給気機能、および、換気装置10における排気機能を稼働させる。制御部30Bは、S602において、換気装置10の近傍で調理中か否かを確認する。調理中か否かは、コンロから熱源を使用した状態である旨の信号を受信することにより調理を行っていると判定してもよいし、赤外線センサ、油煙センサ、コンロ上面を撮像するカメラなどによりコンロで調理を行っていると判定してもよい。調理中でない場合は、
図11を参照して後述する。
【0053】
調理中である場合、制御部30Bは、S604において、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20Bの給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。制御部30Bは、S606において、取得した排気量が給気量より大きいか否かを確認する。取得した排気量が給気量より大きい場合、制御部30Bは、S608において、空調機器20Bの給気量と換気装置10の排気量の差が小さくなるように給気送風機222の回転数を上げ、給気量を増加させる。
【0054】
次いで、制御部30Bは、S610において、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20Bの給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。制御部30Bは、S612において、取得した給気量が空調機器20Bが備える給気能力の最大給気量とほぼ等しい、かつ、排気量が給気量より大きいか否かを確認する。すなわち、空調機器20Bの最大給気量まで給気量を増加させたがまだ排気量が給気量を上回る場合、制御部30Bは、S614において、屋外温度情報取得部226から屋外の空気の温度情報と、空調機器20Bに記憶された設定温度とを通信を介して取得し、両者を比較する。
【0055】
制御部30Bは、S616において、取得した屋外の空気の温度が設定温度より所定値以上低いか否か確認する。取得した屋外温度が空調機器20Bの設定温度より所定値以上低い場合、制御部30Bは、S618において、空調機器20Bが吹き出す空気の温度を通常冷暖運転時吹出温度t1より高い温度t2に決定する。取得した屋外温度が空調機器20Bの設定温度より所定値以上低くない場合、制御部30Bは、S626において、空調機器20Bが吹き出す空気の温度を通常冷暖運転時吹出温度t1に決定する。
【0056】
なお、S606において取得した排気量が給気量より大きくない場合、制御部30Bは、S624において、空調機器20Bの給気量と換気装置10の排気量の差が小さくなるように給気送風機222の回転数を下げ、給気量を減少させ、S608~S618またはS626をスキップする。また、制御部30Bは、S612で給気量が最大給気量でない場合または排気量が給気量を上回っていない場合S620までスキップし、温度の比較・決定は行わない。すなわち、本実施例では、空調機器20Bの最大給気量まで給気を増加させたがまだ排気量が給気量を上回る場合のみ、制御部30Bは、空調機器20Bが吹き出す空気の温度を決定する。
【0057】
調理中でない場合、
図11に示すフローが実行される。調理中である場合に比べて、異なる点は、S654とS666である。調理中である場合には、給気量と排気量の差が小さくなるように給気量を変化させたが(S608、S624)、調理中でない場合は、給気量と排気量の差が小さくなるように排気量を変化させる。すなわち、制御部30Bは、S652で取得した排気量が給気量より大きいか否かを確認し、排気量が給気量より大きい場合、S654において、空調機器20Bの給気量と換気装置10の排気量の差が小さくなるように換気送風機11の回転数を下げ、排気量を減少させる。また、制御部30Bは、排気量が給気量より大きくない場合、S666において、給気量と排気量の差が小さくなるように換気送風機11の回転数を上げ、排気量を増加させる。
【0058】
これは、調理中である場合は、調理に合わせた風量で運転されていることが多く(たとえば、強火で油炒めをしている場合はレンジフードの排気風量を「強」とするなど)、油煙等を捕捉するレンジフードである換気装置10の排気機能を優先させるためであり、調理中でない場合は、そのような制約がなく、また通常空調機器20Bの最大の給気風量より換気装置10の最大の排気風量の方が大きいため、給気量と排気量の差が小さくなるようにするためには対応し易いからである。なお、S650~S668において、上述したS654とS666以外は、S604~S618、S624、S626と同じであるため、説明を省略する。また、S620とS622は、S406とS408とそれぞれ同じなので説明を省略する。
【0059】
上述したように、制御部30Bが換気装置10の排気量と空調機器20Bの給気量が等しくなるように排気量と給気量を決定することで、建物の隙間などから屋外の空気が侵入または屋内の空気の漏出することを最小化し、屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Bを提供することができる。
【0060】
また、制御部30Bが換気装置10の排気量が空調機器20Bの給気量を上回っている場合屋外温度と空調機器20Bの設定温度に基づき空調機器20Bが吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから侵入する屋外の空気が増加したり、窓など断熱効果の小さい部分から屋外と熱伝導が大きい場合であっても屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Bを提供することができる。
【0061】
また、制御部30Bが、屋外温度が設定温度より所定値以上高いまたは低い場合すなわち屋外温度が快適な温度とされる設定温度と乖離している場合、通常の冷暖運転時に比べ、冷房時には低く、暖房時には高く、空調機器20Bが屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、空調機器20Bの運転中に換気装置10の排気運転を行い建物の隙間などから侵入したり、窓など断熱効果の小さい部分から屋外と熱伝導が大きい場合であっても屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Bを提供することができる。
【0062】
図12および
図13を参照し、制御部30Bの変形例1を説明する。制御部30Bは、S700において、空調機器20Bにおける暖房機能、空調機器20Bにおける給気機能、および、換気装置10における排気機能を稼働させる。制御部30Bは、S702において、換気装置10の近傍で調理中か否かを確認する。
【0063】
調理中である場合、制御部30Bは、S704において、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20Bの給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。制御部30Bは、S706において、取得した排気量が給気量より大きいか否かを確認する。取得した排気量が給気量より大きい場合、制御部30Bは、S708において、空調機器20Bの給気量と換気装置10の排気量の差が小さくなるように、給気送風機222の回転数を上げて給気量を増加させる、または、換気送風機11の回転数を下げ排気量を減少させる、またはこれらの両方を行う。
【0064】
次いで、制御部30Bは、S710において、換気装置10の排気量測定部12が測定した排気量と、空調機器20Bの給気量測定部223が測定した給気量を、通信を介して取得し、両者を比較する。制御部30Bは、S712において、取得した給気量が空調機器20Bが備える給気能力の最大給気量とほぼ等しい、かつ、排気量が給気量より大きいか否かを確認する。すなわち、空調機器20Bの最大給気量まで給気量を増加させたがまだ排気量が給気量を上回る場合、制御部30Bは、S714において、屋外温度情報取得部226から屋外の空気の温度情報と、空調機器20Bに記憶された設定温度とを通信を介して取得し、両者を比較する。
【0065】
制御部30Bは、S716において、取得した屋外の空気の温度と設定温度の差に応じて空調機器20Bが吹き出す空気の温度を演算し、決定する。たとえば、制御部30Bは、暖房時に屋外空気温度<設定温度の場合に吹き出す空気の温度Td0とすると、屋外空気温度と設定温度の差がより大きくなり屋外空気温度<<設定温度の場合の吹き出す空気の温度Td1は、温度Td0より高くなるように決定する(Td1>Td0)。屋外空気温度と設定温度の差が大きくなればなるほど、建物の自然給気口や隙間等を通じて屋内の空気との温度差も大きくなる。そのため、暖房時には、制御部30Bは、屋外空気温度と設定温度の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を高くする。逆に、冷房時には温かい空気により屋内の空気との温度差も大きくなるため、制御部30Bは、屋外空気温度と設定温度の差が小さいときに比べ、吹き出す空気の温度Td1を低くする。制御部30Bは、吹き出す空気の温度を決定したら、空調機器20Bに対して吹き出す空気の温度を指示する。なお、屋内温度情報取得部213が測定した屋内の温度が設定温度になったら、暖房機能(または冷房機能)を停止してもよい。
【0066】
調理中でない場合、
図13に示すフローが実行される。S750~S764は、S704~S716、S722と同じなので説明を省略する。また、S718とS720は、S406とS408とそれぞれ同じなので説明を省略する。
【0067】
上述したように、制御部30Bが換気装置10の排気量と空調機器20Bの給気量が等しくなるように排気量と給気量を決定することで、建物の隙間などから屋外の空気が侵入または屋内の空気の漏出することを最小化し、屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Bを提供することができる。
【0068】
また、制御部30Bが屋外温度および空調機器20Bの設定温度の差に応じて空調機器20Bが屋内に吹き出す空気の温度を決定することで、建物の隙間などから外気が侵入し屋外の空気が増加したり、窓など断熱効果の小さい部分から屋外と熱伝導が大きい場合であっても、屋外温度と設定温度に即して温度を決定でき、屋内にいる人の快適性を損なわない空気制御システム100Bを提供することができる。
【0069】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0070】
100 空気制御システム
10 換気装置
11 換気送風機(排気機能)
12 排気量測定部
13 排気風量選択ボタン
20 空調機器
21 屋内機
211 屋内送風機
212 屋内熱交換器(冷房機能、暖房機能)
213 屋内温度情報取得部
22 屋外機
221 給気部
222 給気送風機(給気機能)
223 給気量測定部
224 給気弁
225 屋外熱交換器(冷房機能、暖房機能)
226 屋外温度情報取得部
23 操作端末
231 冷房機能ボタン
232 暖房機能ボタン
233 停止ボタン
234 給気風量選択ボタン
30 制御部
HS 家屋