(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051814
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両用リンフォース
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158153
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】横山 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬人
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB62
3D203CA53
3D203CA58
(57)【要約】
【課題】二段溝構造の車両用リンフォースを、一段溝構造の車両用リンフォースに比べて嵩張りを抑えつつ強度を高くする技術を開示する。
【解決手段】本開示の車両用リンフォース10は、第1の角溝部11の底辺部12から第2の角溝部21が陥没する断面形状をなして延びるリンフォース本体30と、第1の角溝部11の1対の側辺部13の拡がりを規制する拡がり規制部材40とを有する。そして、リンフォース本体30の板厚をtとし、第1の角溝部11の底辺部12の幅をW1とし、第2の角溝部21の底辺部22の幅をW2とし、第1と第2の角溝部11,21を合わせた溝部の深さをH1とし、第2の角溝部21の深さをH2とすると、t/W1=Rt,W2/W1=Rw,H2/H1=Rh,0.008≦Rt,0.33≦Rw≦0.9,0.1≦Rh≦0.5、になっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の角溝部の底辺部から第2の角溝部が陥没する断面形状をなして延びるリンフォース本体と、前記第1の角溝部の1対の側辺部の拡がりを規制する拡がり規制部材と、を有する車両用リンフォースであって、
前記リンフォース本体の板厚をtとし、前記第1の角溝部の底辺部の幅をW1とし、前記第2の角溝部の底辺部の幅をW2とし、前記第1と第2の角溝部を合わせた溝部の深さをH1とし、前記第2の角溝部の深さをH2とすると、
t/W1=Rt
W2/W1=Rw
H2/H1=Rh
0.008≦Rt
0.33≦Rw≦0.9
0.1≦Rh≦0.5
になっている車両用リンフォース。
【請求項2】
0.2≦Rh≦0.4
になっている請求項1に記載の車両用リンフォース。
【請求項3】
0.013≦Rt
0.15≦Rh≦0.4
になっている請求項1に記載の車両用リンフォース。
【請求項4】
0.4≦Rw≦0.8である請求項1に記載の車両用リンフォース。
【請求項5】
前記第1の角溝部の1対の側辺部から外側又は内側に屈曲して張り出す1対の鍔部が備えられ、
前記拡がり規制部材は、前記1対の鍔部に重ねて溶接又は締結される板状をなしている請求項1から4の何れか1の請求項に記載の車両用リンフォース。
【請求項6】
前記リンフォース本体の長手方向の両端部に、車両の1対のルーフサイドレールに対する固定部を備える請求項1から4の何れか1の請求項に記載の車両用リンフォース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用リンフォースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、角溝構造の車両用リンフォースの底面に、強度アップのために追加の角溝部を備えて二段溝構造としたものが知られている。また、そのような二段溝構造の車両用リンフォースにおいて、1対の溝側壁の間の拡がりを規制する部材を備えたものも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-294174号公報(
図2、[段落0014])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一段溝構造の車両用リンフォースに、単に追加の角溝部を設けて二段溝構造にした場合には、追加の角溝部分が嵩張ることになる。そこで、本願では、二段溝構造の車両用リンフォースを、一段溝構造の車両用リンフォースに比べて嵩張りを抑えつつ強度を高くすることが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の車両用リンフォースは、第1の角溝部の底辺部から第2の角溝部が陥没する断面形状をなして延びるリンフォース本体と、前記第1の角溝部の1対の側辺部の拡がりを規制する拡がり規制部材と、を有する車両用リンフォースであって、前記リンフォース本体の板厚をtとし、前記第1の角溝部の底辺部の幅をW1とし、前記第2の角溝部の底辺部の幅をW2とし、前記第1と第2の角溝部を合わせた溝部の深さをH1とし、前記第2の角溝部の深さをH2とすると、
t/W1=Rt
W2/W1=Rw
H2/H1=Rh
0.008≦Rt
0.33≦Rw≦0.9
0.1≦Rh≦0.5
になっている車両用リンフォースである。
【発明の効果】
【0006】
上記条件式は、後述するCAE解析による実験結果から得られるものであって、二段溝構造の車両用リンフォースを、一段溝構造の車両用リンフォースより嵩を減らしながらも座屈強度を高くするための条件式である。そして、本開示の車両用リンフォースでは、上記条件式を満たすので、一段溝構造の車両用リンフォースに比べて嵩張りを抑えつつ強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】CAE解析よるシミュレーション実験の概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
以下、
図1~
図3を参照して本開示の一実施形態に係る車両用リンフォース10について説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用リンフォース10は、車両90の例えば1対のルーフサイドレール91の間に差し渡されている。
【0009】
図2に示すように、車両用リンフォース10には、リンフォース本体30と拡がり規制部材40とが含まれている。リンフォース本体30は、例えば、板金のプレス加工品であって、
図3に示すように、第1の角溝部11と、第1の角溝部11の底辺部12から陥没する第2の角溝部21と、第1の角溝部11の1対の側辺部13から外側に張り出す1対の鍔部14とを有する断面形状をなして車両90の車幅方向に延びている。また、リンフォース本体30は、長手方向の両端部より中央部が僅かに上方に位置するように、全体的に僅かに湾曲している。
【0010】
そして、リンフォース本体30は、
図3に示すように板厚をtとし、第1の角溝部11の底辺部12の幅をW1とし、第2の角溝部21の底辺部22の幅をW2とし、第1と第2の角溝部11,21を合わせた溝部の深さをH1とし、第2の角溝部21の深さをH2とした場合に、下記条件式を満たす構造を有している。
【0011】
t/W1=Rt
W2/W1=Rw
H2/H1=Rh
0.008≦Rt
0.33≦Rw≦0.9
0.1≦Rh≦0.5
【0012】
また、リンフォース本体30の両端部は、1対のルーフサイドレール91から互いに接近する側に張り出す図示しない1対の連結板に上方から重ねられて固定される。これにより、リンフォース本体30は、両端部を実質的に1対のルーフサイドレール91に回転可能に支持された状態になっている。
【0013】
拡がり規制部材40は、例えば、板金のプレス加工品であって、リンフォース本体30と略同じ幅でリンフォース本体30より短くかつ薄い帯板状をなしている。また、拡がり規制部材40の長手方向の複数箇所には、幅方向の中央に重量軽減用の貫通孔40Aが形成されている。そして、拡がり規制部材40は、その長手方向の途中部分において、1対の鍔部14に重ねて溶接又は締結され、第1の角溝部11の溝開口に差し渡されている。
【0014】
なお、
図3に示すように、第1と第2の角溝部11,21の各角部は、円弧状に面取りされていて、それら角部の内側の円弧面の半径r(以下、「面取半径r」という)は、例えば、6~10[mm]程度になっている。また、第1の角溝部11の1対の側辺部13及び第2の角溝部21の1対の側辺部23は、それぞれ互いに平行な姿勢から互いに離れる側に開いていて、それらの開き角である開脚角θは、例えば、4~13[°]程度になっている。さらに、車両用リンフォース10を構成する材料の引張強さは、980[MPa]~2[GPa]が好ましい。
【0015】
本実施形態の車両用リンフォース10の構造に関する説明は以上である。次に、この車両用リンフォース10の作用効果について説明する。上述したように本実施形態の車両用リンフォース10は、第1の角溝部11の底辺部12から第2の角溝部21が陥没する断面形状をなして延びるリンフォース本体30を有する。即ち、本実施形態の車両用リンフォース10は、二段溝構造になっている。これに加え、第1の角溝部11の溝開口に差し渡されて第1の角溝部11の1対の側辺部13の拡がりを規制する拡がり規制部材40を備える。
【0016】
ここで、車両用リンフォース10は、1対のルーフサイドレール91が互いに接近する方向に負荷を受けることがある。そのような負荷は、車両用リンフォース10を長手方向で押圧する座屈荷重として作用する。これに対し、本実施形態の車両用リンフォース10は、上記条件式を満たす構造としたことで強度を高くすることができる。
【0017】
即ち、上述の条件式は、後述するCAE解析によるシミュレーション実験で得られたものである。その実験では、一段溝構造の車両用リンフォースが、深さ方向及び幅方向で二段に分割されて第1と第2の角溝部11,21を有する二段溝構造の複数のモデルのCADデータが作成される。そして、それら複数のモデルのうちから、それらの元となる一段溝構造の車両用リンフォースより座屈強度より大きくなるモデルとなる条件として、上記条件式が特定されている。即ち、上記条件式は、一段溝構造の車両用リンフォースより嵩を減らしながらも座屈強度を高くするための条件式である。そして、本開示の二段溝構造の車両用リンフォースは、上記条件式を満たすので、一段溝構造の車両用リンフォースに比べて嵩張りを抑えつつ強度を高くすることができる。
【0018】
<実施例>
二段溝構造の車両用リンフォースを、一段溝構造の車両用リンフォースより嵩を減らしながらも座屈強度を高くするための条件式を求めるために、CAE解析によるシミュレーション実験を行った。
【0019】
(1)実験方法
[CADデータの作成]
(a1)長手方向全体で均一な断面形状をなし、その全長Lが1000[mm]である69種類の車両用リンフォースのモデル1~69のCADデータが作成される。これらモデル1~69は、前記第1実施形態で説明したRt、Rw、Rhの値が、表1に示された値をなしている。また、開脚角θは、7[°]で、面取半径rは、6[mm]、鍔部14の幅L1は、27[mm]で統一されている。さらに、モデル1~69を構成する材料の引張強さは、1470[MPa]で統一されている。
【0020】
【0021】
以下の説明では、モデル1~69の各部位は、前記第1実施形態で説明した車両用リンフォース10における各部位と同じ名称、同じ符号で説明する。
【0022】
Rh=Rw=0であるモデル1,26,47は一段溝構造であり、それ以外のモデル2~25,27~46,48~69は、一段構造のモデル1,26,47が、深さ方向及び幅方向で二段に分割されることで第1と第2の角溝部11,21を有する二段溝構造とされたモデルである。
【0023】
詳細には、モデル1~25は、H1が30[mm]、W1が75[mm]でそれぞれ一定で、H2,W2の値のみが変更されたものであり、モデル1は一段溝構造をなし、モデル2~25は、モデル1を深さ方向及び幅方向で二段に分割してなる二段溝構造のモデルになっている。これと同様に、モデル26~46は、H1が30[mm]、W1が110[mm]でそれぞれ一定で、H2,W2の値のみが変更されたものであり、モデル26は一段溝構造をなし、モデル27~46は、モデル26に基づく二段溝構造のモデルをなし、モデル47~69は、H1が30[mm]、W1が125[mm]でそれぞれ一定で、H2,W2の値のみが変更されたものであり、モデル47は一段溝構造をなし、モデル48~69は、モデル47に基づく二段溝構造のモデルになっている。
【0024】
また、拡がり規制部材40単体での座屈強度は、車両用リンフォース10全体の座屈強度に対して無視可能な大きさに設定されている。
【0025】
(a2)Rtの下限値を詳細に調べるために、Rtが0.008であること以外はモデル62と同じモデル62-1のCADデータが作成される。
【0026】
(a3)Rwの上限値を詳細に調べるために、Rwが0.4であること以外は、モデル45と同じモデル45-1と、Rwが0.7であること以外は、モデル45と同じモデル45-2と、Rwが0.8であること以外は、モデル45と同じモデル45-3と、Rwが0.9であること以外は、モデル45と同じモデル45-4のCADデータがそれぞれ作成される。
【0027】
(a4)鍔部14の相違による影響を調べるために、モデル39の1対の鍔部14の幅L1を変更したモデル39-1,39-2のCADデータが作成される。具体的には、モデル39の鍔部14の幅L1は27[mm]であり、モデル39-1の鍔部14の幅L1は54[mm]であり、モデル39-2の鍔部14の幅L1は81[mm]である。
【0028】
(a5)面取半径rの相違による影響を調べるために、モデル39の面取半径rを変更したモデル39-3,39-4のCADデータが作成される。具体的には、モデル39の面取半径rは6[mm]であり、モデル39-3の面取半径rは8[mm]であり、モデル39-4の面取半径rは10[mm]である。
【0029】
(a6)1対の側辺部13及び1対の側辺部23の開脚角θの相違による影響を調べるために、モデル39の開脚角θを変更したモデル39-5,39-6,39-7のCADデータが作成される。具体的には、モデル39の開脚角θは7[°]であり、モデル39-5の開脚角θは4[°]であり、モデル39-6の開脚角θは10[°]であり、モデル39-7の開脚角θは13[°]である。
【0030】
[CAE解析]
(b1)CAE解析により、上述した各モデルに座屈荷重Fが付与されて座屈する直前の座屈荷重が、限界荷重Fmax[kN]として求められる。具体的には、
図4に示すように、各モデルの一端部が治具50にて固定される一方、他端部が幅方向に延びる回転軸を中心に回動可能な状態に別の治具50にて保持され、それら両治具50が近づけられる方向に座屈荷重Fが付与された場合における上記限界荷重Fmaxが求められる。そして、各モデルの元の一段溝構造のモデル1,26,47の限界荷重Fmaxに対する各モデルの限界荷重Fmaxの比である限界荷重比Rfが求められて表1に纏められる。より具体的には、モデル1~25のRfは、それらの限界荷重Fmaxをモデル1の限界荷重Fmaxでそれぞれ除した値として求められ、モデル26~46のRfは、それらの限界荷重Fmaxをモデル26の限界荷重Fmaxでそれぞれ除した値として求められ、モデル47~69のRfは、それらの限界荷重Fmaxをモデル47の限界荷重Fmaxでそれぞれ除した値として求められる。モデル39-1~7,45-1~4、モデル62-1に関しても同様である。つまり、Rfが「1」より大きなモデルは、一段溝構造のモデルに対して第2の角溝部21を設けたことによる補強効果を得られた二段溝構造のモデルであるということができる。
【0031】
(b2)モデル1~69は、Rtが共通する第1~第3のグループに分けられ、第1~第3の各グループ内でRwが共通するグループ毎に、Rhの変化に対する限界荷重Fmaxの変化を示す
図5グラフ1と
図6のグラフ2と
図7のグラフ3とが作成される。
【0032】
(b3)Rw以外の値が共通するモデル30,35,40,45,45-1~4のRwの変化に対する限界荷重Fmaxの変化を示す
図8のグラフ4が作成される。
【0033】
(b4)モデル39,39-1,39-2の鍔部14の幅L1の変化に対する限界荷重Fmaxの変化を示す
図9のグラフ5が作成される。
【0034】
(b5)モデル39,39-3,39-4の面取半径rの変化に対する限界荷重Fmaxの変化を示す
図9のグラフ6が作成される。
【0035】
(b6)モデル39,39-5,39-6,39-7の開脚角θの変化に対する限界荷重Fmaxの変化を示す
図9のグラフ7が作成される。
(2)実験結果
グラフ1~3を比べると、Rtが小さくなるに従って第2の角溝部21を設けることによる補強効果が小さくなることが分かる。この傾向は、薄形になるほど、第1及び第2の角溝部11,21の底辺部12,22及び側辺部13,23の壁体そのものが変形し易くなるためであると推測される。しかしながら、第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得るためのRtの下限値は、グラフ1~3だけでは不明である。これに対し、Rtの下限値を詳細に調べるために作成したRt=0.008のモデル62-1でも、第2の角溝部21を設けることによる補強効果は得られるので、下限値は不明である。しかしながら、第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得るためのRtの条件は、少なくとも、0.008≦Rt、であるということができる。
【0036】
また、グラフ1~3から、Rhが、0.1≦Rh≦0.5の範囲から外れると、第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得ることができないことが分かる。このことから、第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得るためのRhの条件は、0.1≦Rh≦0.5、であるといえる。
【0037】
また、Rwが下限値を超えて小さくなると、それに従って第2の角溝部21を設けることによる補強効果が小さくなるか又は強度が一段溝構造のモデルより低下することがグラフ1~3から分かる。そして、それらグラフ1~3から第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得るためのRwの条件は、少なくとも0.33≦Rwであるということができる。
【0038】
また、Rw=1では、Rw=0と同じ断面形状になることから、Rwが上限値を超えて大きくなるとそれに従って第2の角溝部21を設けることによる補強効果が小さくなるか又は一段溝構造のモデルより強度が低下することが推測される。そのRwの上限値はグラフ1~3からは得られないが、Rwの上限値を詳細に調べるために作成したグラフ4によれば、Rwが0.9でも第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得られることが分かる。よって、グラフ1~4から第2の角溝部21を設けることによる補強効果を得るためのRwの条件は、0.33≦Rw≦0.9であるということができる。
【0039】
また、グラフ5,6,7から、鍔部14の幅L1の相違、面取半径rの相違、及び、開脚角θの相違による限界強度の相違は、Rh,Rw,Rtの相違による限界強度の相違に比べて十分小さいことが分かる。
【0040】
以上のことから、車両用リンフォースは、下記{第1の条件式群}を満たす二段溝構造とすることで、一段溝構造の車両用リンフォースに対して、断面形状の全体を縦横に大きくしないで(即ち、嵩を増やさずに)、強度をアップする図ることができるということができる。
【0041】
{第1の条件式群}
0.008≦Rt
0.33≦Rw≦0.9
0.1≦Rh≦0.5
【0042】
また、グラフ1~3によれば、一段溝構造の車両用リンフォースに対して断面形状の全体を縦横に大きくしないで、強度をアップするためには、下記{第2の条件式群}がより好ましということができる。
【0043】
{第2の条件式群}
0.012≦Rt
0.33≦Rw≦0.62
0.2≦Rh≦0.35
【0044】
また、前記{第1の条件式群}におけるRhを、さらに下記条件式の範囲に絞ることにより、第2の角溝部21を設けたことにより補強効果が大きくなるといえる。
0.2≦Rh≦0.4
【0045】
また、グラフ1,2,3の形状の相違から、Rtは、0.012より大きいことが好ましく、Rtが0.013以上であればより好ましいといえる。さらには、グラフ1,2からRtが0.013以上で、第2の角溝部21による補強効果が得られるRhの範囲は、0.15≦Rh≦0.4であると推定することができる。即ち、{第1の条件式群}におけるRh、Rtを、さらに下記条件式の範囲に絞ることにより、第2の角溝部21を設けたことにより補強効果が大きくなるといえる。
【0046】
0.013≦Rt
0.15≦Rh≦0.4
【0047】
また、グラフ4によれば、{第1の条件式群}におけるRwを、さらに下記条件式の範囲に絞ることにより、第2の角溝部21を設けたことにより補強効果が大きくなるといえる。
【0048】
0.4≦Rw≦0.8
【0049】
<変形例>
(1)前記実施形態の車両用リンフォース10の拡がり規制部材40は、板状をなして第1の角溝部11に溝開口に差し渡されていたが、板状でなくてもよく、例えば、棒状、ワイヤ状等であってもよい。また、前記実施形態の拡がり規制部材40はリンフォース本体30より薄い板状をなしていたが、リンフォース本体30と同じ厚さか、リンフォース本体30より厚い板状をなしていてもよい。さらには、拡がり規制部材40は、第1の角溝部11の溝開口に差し渡されていなくてもよく、例えば、第1の角溝部11内に受容されて、1対の側辺部13と底辺部12とに溶接されるリブであってもよい。また、車体90の一部を拡がり規制部材40に利用してもよい。
【0050】
(2)前記実施形態の車両用リンフォース10では、1対の鍔部14が1対の側辺部13から外側に張り出していたが、1対の鍔部14が、1対の側辺部13から互いに接近する内側に張り出し、それらの上に拡がり規制部材40が重ねられてもよい。
【0051】
(3)前記実施形態の車両用リンフォース10は、車両90の天井部に配置されて1対のルーフサイドレール91の間に配置されていたが、天井部以外に配置されていてもよい。具体的には、車両用リンフォース10が、例えば、車両90のフロアクロスメンバーやドアのリンフォースとして使用されてもよい。
【0052】
(4)前記車両用リンフォース10は、片端部を回動可能に支持された状態になっていたが、例えば、両端部が回転不能に固定されていてもよい。
【0053】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成の符号を括弧書きで示すが、これら特徴群は、この括弧書きで示した符号の構成に限定されるものではない。
【0054】
[特徴1]
第1の角溝部(11)の底辺部(12)から第2の角溝部(21)が陥没する断面形状をなして延びるリンフォース本体(30)と、前記第1の角溝部(11)の1対の側辺部(13)の拡がりを規制する拡がり規制部材(40)と、を有する車両用リンフォース(10)であって、前記リンフォース本体(30)の板厚をtとし、前記第1の角溝部(11)の底辺部(12)の幅をW1とし、前記第2の角溝部(21)の底辺部(22)の幅をW2とし、前記第1と第2の角溝部(11,21)を合わせた溝部の深さをH1とし、前記第2の角溝部(21)の深さをH2とすると、
t/W1=Rt
W2/W1=Rw
H2/H1=Rh
0.008≦Rt
0.33≦Rw≦0.9
0.1≦Rh≦0.5
になっている車両用リンフォース(10)。
【0055】
[特徴2]
0.2≦Rh≦0.4になっている特徴1に記載の車両用リンフォース(10)。
【0056】
[特徴3]
0.013≦Rt
0.15≦Rh≦0.4
になっている特徴1に記載の車両用リンフォース(10)。
【0057】
[特徴4]
0.4≦Rw≦0.8である特徴1に記載の車両用リンフォース(10)。
【0058】
[特徴5]
前記第1の角溝部(11)の1対の側辺部(13)から外側又は内側に屈曲して張り出す1対の鍔部(14)が備えられ、前記拡がり規制部材(40)は、前記1対の鍔部(14)に重ねて溶接又は締結される板状をなしている特徴1から4の何れか1の特徴に記載の車両用リンフォース(10)。
【0059】
[特徴6]
前記リンフォース本体(30)の長手方向の両端部に、車両(90)の1対のルーフサイドレール(91)に対する固定部(19)を備える特徴1から5の何れか1の特徴に記載の車両用リンフォース(10)。
【0060】
[特徴7]
特徴1~6の何れか1の特徴に記載の車両用リンフォース(10)を有する車両(90)。
【0061】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用リンフォース
11 第1の角溝部
21 第2の角溝部
12,22 底辺部
13,23 側辺部
14 鍔部
19 固定部
30 リンフォース本体
40 拡がり規制部材
90 車体