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特開2024-51815直流回路用スイッチ及びスイッチシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051815
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】直流回路用スイッチ及びスイッチシステム
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/08 20060101AFI20240404BHJP
   H01H 9/36 20060101ALI20240404BHJP
   H01H 1/16 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01H71/08
H01H9/36
H01H1/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158154
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】507155133
【氏名又は名称】学校法人東北文化学園大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 広幸
【テーマコード(参考)】
5G027
5G030
5G051
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G030AA04
5G030AA08
5G051CA07
5G051CA12
5G051CA15
(57)【要約】
【課題】アーク放電の発生を抑制可能であって直流回路に適用可能な直流回路用スイッチを提供する。
【解決手段】直流回路を導通又は遮断する直流回路用スイッチは、第1の端子と、当該第1の端子と電気的に接続し、回転可能に保持される第1の球体とを有する第1の電極部と、第2の端子と、当該第2の端子と電気的に接続し、転動可能に配置される第2の球体とを有する第2の電極部と、第1の電極部と第2の電極部間を導通させるために、第2の球体を転動させて第1の球体と接触させ、または第1の電極部と第2の電極部間を遮断するために第2の球体を転動させて第1の球体との接触から離間させるように動作する駆動機構部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路を導通又は遮断する直流回路用スイッチであって、
第1の端子と、当該第1の端子と電気的に接続し、回転可能に保持される第1の球体とを有する第1の電極部と、
第2の端子と、当該第2の端子と電気的に接続し、転動可能に配置される第2の球体とを有する第2の電極部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部間を導通させるために、前記第2の球体を転動させて前記第1の球体と接触させ、または前記第1の電極部と前記第2の電極部間を遮断するために前記第2の球体を転動させて前記第1の球体との接触から離間させるように動作する駆動機構部とを備えることを特徴とする直流回路用スイッチ。
【請求項2】
前記第1の球体は、2枚の金属板に挟まれて回転可能に保持されることを特徴とする請求項1に記載の直流回路用スイッチ。
【請求項3】
前記第2の球体は、金属製管状部材の中に転動可能に配置されることを特徴とする請求項1に記載の直流回路用スイッチ。
【請求項4】
複数の前記第2の球体が前記金属製管状部材の中に配置されることを特徴とする請求項3に記載の直流回路用スイッチ。
【請求項5】
前記第1の球体及び前記第2の球体は、表面皮膜を有さない鉄球であることを特徴とする請求項4に記載の直流回路用スイッチ。
【請求項6】
前記駆動機構部は、前記第2の球体が転動するように、前記第2の電極部を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の直流回路用スイッチ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の直流回路用スイッチと、
当該直流回路用スイッチと並列に接続される交流回路用スイッチとを備えることを特徴とするスイッチシステム。
【請求項8】
前記交流回路用スイッチを導通させた後に、前記直流回路用スイッチを導通させることを特徴とする請求項7に記載のスイッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流回路を導通又は遮断するための直流回路用スイッチ及びそれを含むスイッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回路遮断器の発明に関し、ブレード29を投入動作させると、ボール28が押されてボールを移動させ、ブレード29とコンタクトピース26とを接触させることで回路を閉じ、回路を開く場合は、ブレード29を引き戻し動作させると、バネ31によりボール28が押し戻され、ブレード29とコンタクトピース26間にギャップ35が保たれて回路が開かれる回路遮断器について開示する(図4、5、6)。
【0003】
特許文献2は、転倒スイッチの発明に関し、可動球Cが傾斜や転倒に応じて転動して2つの電極A、Bと接触して導通させるスイッチの構成について開示する(図1)。
【0004】
特許文献3は、落球式スイッチの球体保持具の発明に関し、ケース内の球体2が振動受けて転動することにより作動軸5押し下げられ、連接するスイッチ7を閉成する落球式スイッチの構成について開示する(第1図、第2図)。
【0005】
特許文献4は、圧力スイッチの発明に関し、固定接点28と、スプリング24の終端に球体25が回転可能に当接した可動接点25とを有する圧力スイッチの構成について開示する(第1図)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭54-045972号
【特許文献2】実開昭55-075039号
【特許文献3】実開昭55-027811号
【特許文献4】特開平4-149923号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hiroyuki Ishida “Non-Arching Circuit Breaking Phenomena in Electrical Contacts due to Dark Bridge” IEICE Transactions on Electronics, Vol.E102-C, No.5, pp.238-245 (March 2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の各特許文献に開示されるスイッチ又は回路遮断器は、交流回路用又は直流回路用への適用については特段言及されていないが、直流回路用の回路遮断器又はスイッチについては、アーク放電による火花発生のおそれがあることから、適用は困難と考えられる。
【0009】
アーク放電による火花は、通電中に2つの電極が離れるときに発生し、例えば電圧10V、電流1Aのような低電圧、少電流でも発生する。なお、交流回路では、ゼロ電圧あるいはゼロ電流を繰り返しよぎるので、アークが切れやすく、アーク放電は発生しにくい。一方、直流回路では、2つの電極間のギャップが長くなり、アーク抵抗が大きくなることによって電流が小さくなるまでアークが切れない。そのため、直流回路遮断時は、電極の接触部分の損傷が大きくなり、スイッチの寿命や信頼性を向上させるのが困難である。
【0010】
本願発明者は、直流回路に適用可能なスイッチについて鋭意研究・開発を行い、今般、アーク放電の発生を抑制可能な新規な直流回路用スイッチを開発するに至った。
【0011】
そこで、本発明の目的は、アーク放電の発生を抑制可能であって直流回路に適用可能な直流回路用スイッチ及びそれを含むスイッチシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の直流回路用スイッチは、直流回路を導通又は遮断する直流回路用スイッチであって、第1の端子と、当該第1の端子と電気的に接続し、回転可能に保持される第1の球体とを有する第1の電極部と、第2の端子と、当該第2の端子と電気的に接続し、転動可能に配置される第2の球体とを有する第2の電極部と、前記第1の電極部と前記第2の電極部間を導通させるために、前記第2の球体を転動させて前記第1の球体と接触させ、または前記第1の電極部と前記第2の電極部間を遮断するために前記第2の球体を転動させて前記第1の球体との接触から離間させるように動作する駆動機構部とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のスイッチシステムは、前記直流回路用スイッチと、当該直流回路用スイッチと並列に接続される交流回路用スイッチとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮断時のアーク継続時間が短くアーク放電の発生を抑制可能な直流回路用スイッチ、及びこの直流回路用スイッチとそれに並列に接続される交流回路用スイッチとを備えるスイッチシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における直流回路用スイッチの構成例を示す図である。
図2】本実施の形態における直流回路用スイッチの動作例を示す図である。
図3】本実施の形態における直流回路用スイッチを組み込んだスイッチシステムの構成例を示す図である。
図4】特性測定実験のための回路(特性測定回路)の構成を示す図である。
図5】測定された電流波形を示す図である。
図6】t4のタイミングにおける電圧波形を示す図である。
図7】交流回路用スイッチ2のアーク継続時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の実施の形態について、具体的な図に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態における直流回路用スイッチの構成例を示す図である。直流回路用スイッチ1は、陰極側10及び陽極部20、さらに、陰極部10と陽極部20と導通又は遮断するように陰極部10と陽極部20の少なくとも一方を傾斜駆動させる駆動機構部30を備えて構成される。陰極部10と陽極部20は、平板40上に固定されて載置され、後述するように、駆動機構部30は、平板板40の端部を昇降させ、陰極部10及び陽極部20を傾斜させるように駆動する。なお、平板40は、例えばアクリル板のような絶縁性板である。
【0018】
陰極部10は、陰極端子11と、当該陰極端子11と電気的に接続し且つ回転可能に保持される第1の球体12と、第1の球体12を支持する第1の保持体13とを有する。
【0019】
第1の球体12は、導電性の金属球(好ましくは鉄球)であり、第1の保持体13は、第1の球体12を2枚の導電性の金属板(例えばアルミニウム板)13aで挟み込んでネジ止めする構造体であり、金属板13aの間隔を形成するために、第1の球体12と同径の球状スペーサ14が第1の球体12と並列に配置される。なお、球状スペーサ14は球体形状でなくともよく、金属板13aが第1の球体12の直径と同一間隔を保持形成可能な部材であればよく、さらに、金属体のような導通可能部材でなくともよい。
【0020】
導電性の金属製ボルト15が、第1の球体12を上下2枚の金属板13aに挟み込んだ状態で、第1の球体12が回転可能となるようにナット16で締められる。具体的には、2枚の金属板13aの4隅にあけられた孔に金属製ボルト15が通される。好ましくは、第1の球体12が接する金属板13aの領域には、窪みが設けられて、金属板13aは第1の球体12を回転可能に保持する。または、金属板13aの窪みに代わって、例えば、第1の球体12の中心軸に貫通孔が形成され、第1の球体12を金属板13aに挟み込んで金属製ボルト15をその貫通孔に貫通させることで、第1の球体12を回転可能に金属板13aに保持させる構成であってもよい。そして、金属製ボルト15の先端部分が陰極端子11として機能する。
【0021】
図1の構成例では、球状スペーサ14も、第1の球体12の保持構成と同様に、金属製ボルト15が球状スペーサ14を金属板13aに挟み込んだ状態で取り付ける。球状スペーサ14aは回転可能に金属板13aに取り付けられなくともよく、2枚の金属板13aの間隔を維持するように配置される。
【0022】
陽極部20は、陽極端子21と、当該陽極端子21と電気的に接続し且つ転動可能に配置される第2の球体22と、第2の球体22を保持する第2の保持体23とを有する。第2の球体22は、導電性の金属球(好ましくは鉄球)であり、第2の保持体23は、第2の球体22を転動可能に内部に保持する導電性の金属製管状部材(例えばアルミパイプ)で構成される。
【0023】
第2の球体22は、好ましくは、第2の保持体23内部に複数個が互いに接触して並列に配列される。第2の球体22と第2の保持体23との接点をより多く設け、接触をより確実にするためである。第2の保持体23の内径は、第2の球体22の直径よりも大きく、第2の紐帯は、第2の保持体23の内部で転動可能であり、また、複数の第2の球体22それぞれの大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。図1の構成例では、4つの第2の球体22が第2の保持体23内に配置され、その両側の2つの第2の球体22は直径15mmであり、内側の2つの第2の球体22は直径10mmである例を示すが、第2の球体22の径は適宜選択することができる。
【0024】
第2の保持体23の一端側開口部23aは、第1の球体12に対向して配置され、第2の球体22は、その一部が一端側開口部23aから突出するように転動することで、第1の球体12と接触する。
【0025】
陰極部10と陽極部20とは、平板40上において、第1の球体12と第2の球体22が対向するように配置され、さらに、第2の球体22が転動した際に第2の保持体23からこぼれ落ちない間隔、具体的には、第2の球体22が接触する第1の球体12の接点部分と第2の保持体23の一端側開口部23aとの間隔が、第2の球体22の直径よりも小さい間隔となるように位置決めされる。これにより、第1の球体12が第2の球体22の転動を制限するストッパとして機能する。好ましくは、第2の球体22が一端側開口部23aからわずかに突出する(はみ出す)程度で第1の球体12と接触する間隔で十分である。
【0026】
第2の保持体23の他端側開口部23b付近の周面において、内周面側に突出するように導電性の金属製ボルト25が外周面から内周面に貫通して穿設され、金属製ボルト25の外周面側突出部分25aは陽極端子21として機能し、また、内周面側突出部分25bは、第2の球体22の転動を制限するストッパ25bとして機能し、第2の球体22が転動により他端側開口部23からこぼれ出ることを防止する。また、ストッパ25bを設けずとも、第2の保持体23の他端側は閉じられた構成であってもよい。
【0027】
駆動機構部30は、平板40の端部を昇降させることで、陽極部20を傾斜させる。陰極部10と陽極部20間を導通させるために、第2の球体22を転動させて第1の球体12と接触させ、または陰極部10と陽極部20間を遮断するために第2の球体22を転動させて第1の球体12との接触から離間させるように動作し、具体的には第2の球体22が転動するように陽極部20を傾斜させるよう駆動する。
【0028】
なお、陰極部10と陽極部20の構成は互い逆であってもよく、すなわち、陰極部10の第1の球体12が転動可能に配置される構成であり且つ陽極部20の第2の球体22が回転可能に保持される構成であってもよく、その場合、駆動機構部30は、第1の球体12が転動するように陰極部10を傾斜させるよう駆動する。
【0029】
駆動機構部30は、例えばモータ駆動の電動シリンダなどのリニアアクチュエータを利用して構成される。
【0030】
図2は、本実施の形態における直流回路用スイッチの動作例を示す図であり、図2(a)はスイッチON(導通)状態、図2(b)はスイッチOFF(非導通/遮断)状態を示す。図2(a)に示すように、駆動機構部30は、陽極部20を傾斜させて、具体的には、第2の保持体23の他端側が陰極部10より高くなるように上昇させて、第2の球体22を第1の球体12に接近する方向に転動させ、第2の球体22を第1の球体12と接触させることで導通状態となる。
【0031】
また、図2(b)に示すように、駆動機構部30は、図2(a)の状態と反対に陽極部20を傾斜させて、具体的には、第2の保持体23の他端側が陰極部10より低くなるように下降させて、第1の球体12と接触している第2の球体22を第1の球体12から遠ざかる方向に転動させ、第2の球体を第1の球体から離間させることで、非導通状態(遮断状態)となる。
【0032】
図2の例では、陽極部20の端部を昇降させる動作例を示したが、陰極部10の端部を昇降させて陰極部10と陽極部20との間に相対的な高低差を作り、第2の球体22を転動させる傾斜を形成するようにしてもよい。
【0033】
図3は、本実施の形態における直流回路用スイッチを組み込んだスイッチシステムの構成例を示す図である。スイッチシステム100は、本実施の形態における直流回路用スイッチ1と既存の市販されている交流回路用スイッチ2とを並列に接続したスイッチシステムであり、さらに、直流回路用スイッチ1と交流回路用スイッチ2の両方が遮断不能となった場合に回路遮断する非常用スイッチ3も接続する。
【0034】
直流回路用スイッチ1を交流回路用スイッチ2と並列に接続する構成は、現在利用されている交流用スイッチ2をそのまま使うことができる状態で、直流回路用スイッチ1を組み込むことができることによるものであり、現在使用されている交流用スイッチ2に大きな変更を加えることなく、直流回路用スイッチ1を導入することができる。
【0035】
次に、本実施の形態における直流回路用スイッチの特性を測定する特性測定実験について説明する。
【0036】
図4は、特性測定実験のための回路(特性測定回路)の構成を示す図である。特性測定回路は、図3に示したスイッチシステム100、すなわち、本実施の形態における直流回路用スイッチ1と交流回路用スイッチ2を並列に接続し、さらに、それに対して非常用スイッチ3を直列に接続したスイッチシステム100、負荷抵抗200、電流計300、電流測定用抵抗400、直流電源500により回路を形成する。
【0037】
交流回路用スイッチ2はAC300[V]・15[A]まで通電・遮断できる市販のスイッチ装置であり、直流電源500(高砂製GP060-20R)はDC60[V}・20[A]まで出力可能な電源装置であり、電流測定用抵抗400はメタルクラッド抵抗器(0.1[Ω]・50[W])であり、負荷抵抗200はセメント抵抗器(1[kΩ]・10[W])、具体的には、1枚の基板に1つ50[kΩ]の抵抗器を20個並列に接続したものである。この抵抗器を使用して通電電流を変化させて特性測定を行った。
【0038】
図示されるように、電流測定用抵抗400の両端にデジタルオシロスコープを接続して電流を測定し、並列に接続された直流回路用スイッチ1と交流回路用スイッチ2の両端にデジタルオシロスコープを接続して電圧を測定する。
【0039】
図5は、測定された電流波形を示す図である。t1は、交流回路用スイッチ2をON(導通)にしたタイミングである。
【0040】
t2は,直流回路用スイッチ1をON(導通)にしたタイミングである。このタイミングで鉄球(第1の球体12及び第2の球体22)が点で接触して、導通する(図5では、t2での電流変化が小さいため、区間で示される)。なお、市販されている一般的な鉄球を用いる場合は、鉄球同士の接触時において、機械的なバウンスにより火花が発生して、鉄球の表面皮膜が破壊され導通する。このときに溶着(接触点が溶けて固まり接着する状態)が起こる可能性がある。ただし、本発明の実施の形態例では,交流回路用スイッチ2がONになっているので直流回路用スイッチ1にかかる電圧が低い。そのため、溶着は発生しない。このように、直流回路用スイッチ1と交流回路用スイッチ2とを並列接続し、交流回路用スイッチ1を先にONとすることで、溶着の発生を防止することができる。なお,鉄球(第1の球体12及び第2の球体22)の表面は、例えば#600の研磨紙で研磨され、精製水中で超音波洗浄された。そのため、表面被膜が取り除かれるので導通がある。すなわち、第1の球体12及び第2の球体22は、表面皮膜を有さない鉄球であることが好ましい。
【0041】
t3は、交流回路用スイッチ2をOFF(非導通/遮断)したタイミングである。わずかな電流変化が確認できる。、また、t4は、直流回路用スイッチ1をOFFしたタイミングである。第1の球体12及び第2の球体22の鉄球対は、傾斜による重力で離れた。
【0042】
図6は、t4のタイミングにおける電圧波形を示す図である。DC50[V]の電圧で14[A]の電流が流れている直流回路を遮断した。このとき、アーク放電が発生している時間、すなわちアーク継続時間は約7[ms]であった。
【0043】
なお、通電電流を14[A]までにした理由は、直流用回路1の電流許容値による。また、電圧をDC50[V]にした理由は、使用した直流電源の発生可能電圧による。
【0044】
図7は、交流回路用スイッチ2のアーク継続時間を示す図である。図4の特性測定回路で用いた交流回路用スイッチ2を単独で(直流回路用スイッチ1を並列接続せずに)使用した回路構成でのアーク継続時間を測定した。電圧はDC50[V]であった。図7に示すように、交流回路用スイッチ2を回路遮断したとき、遮断電流5.8[A]で約100[ms]のアーク継続時間であった。一方、図4の特性測定回路(スイッチシステム100)では、上述のように、遮断電流が2倍以上の14[A]にてアーク継続時間は約7[ms]であり、アーク継続時間が顕著に短くなり、遮断性能が飛躍的に向上していることが明らかとなった。
【0045】
本実施の形態における直流回路用スイッチ1では、転動可能な第2の球体22が転動して、回転可能な第1の球体12に接触する。そのため、第1の球体12及び第2の球体22の少なくとも一方の接触点は毎回異なるので、接触表面は新鮮である。接触表面が新鮮であれば、遮断性能は維持されると考えられる。
【0046】
以上に説明したように、本発明によれば、遮断時のアーク継続時間を大幅に短くしてアーク放電の発生を抑制可能とし、遮断性能が飛躍的に向上した直流回路に適用可能な直流回路用スイッチが提供される。
【0047】
日本では、一般的な給電として交流100[V]が採用されているが、例えば、近年急速に拡大している太陽光発電は直流発電である。現状では、発電した直流電力をインバータで交流電力に変換して使用しているが、インバータでエネルギーロスが生じるので、直流電力のままの直流給電についても研究されつつあり、本発明は、直流給電に寄与するものである。
【0048】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1:直流回路用スイッチ、2:交流回路用スイッチ、3:非常用スイッチ、10:陰極部、11:陰極端子、12:第1の球体、13:第1の保持体、13a:金属板、14:スペーサ、15:金属製ボルト、16:ナット、20:陽極部、21:陽極端子、22:第2の球体、23:第2の保持体(金属製管状部材)、23a:一端側開口部、23b:他端側開口部、25:金属製ボルト、25a:外周面側突出部分、25b:内周面側突出部分、30:駆動機構部、40:平板、100:スイッチシステム、200:負荷抵抗、300:電流計、400:電流測定用抵抗、500:直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7