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特開2024-51818内燃機関の排気装置、内燃機関及び鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051818
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】内燃機関の排気装置、内燃機関及び鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/16 20160101AFI20240404BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240404BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20240404BHJP
【FI】
F02M26/16
F01N3/24 K
F01N3/24 S
F02M26/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158158
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】引地 賢太郎
【テーマコード(参考)】
3G062
3G091
【Fターム(参考)】
3G062ED08
3G062ED10
3G091BA02
3G091HB05
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両へのEGRシステムの搭載に寄与し得る構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る内燃機関20の排気装置50は、燃焼室から排出された排気ガスが流れる排気通路部分66aと、EGR通路部分68aとを有する排気管51cを備える。前記排気管51cは、前記排気通路部分66aと前記EGR通路部分68aとを隔てる隔壁71を有する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(20a)から排出された排気ガスが流れる排気通路部分(66a、129、154)と、
EGR通路部分(68a、130、156)と
を有する排気管(51c、120、150)を備え、
前記排気管(51c、120、150)は、前記排気通路部分(66a、129、154)と前記EGR通路部分(68a、130、156)とを隔てる隔壁(71、128、158)を有する、
ことを特徴とする内燃機関(20、111)の排気装置(50、116)。
【請求項2】
前記隔壁(71、128、150)は、前記排気通路部分(66a、129、154)の外側に前記EGR通路部分(68a、130、156)を区画形成するように前記排気管(51c、120、150)に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関(20、111)の排気装置(50、116)。
【請求項3】
前記排気管(51c、120、150)は、前記排気通路部分(66a、129)に触媒(53、131、152)を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関(20、111)の排気装置(50、116)。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の排気装置を備えた内燃機関(20、111)であって、
前記排気管(51c、120)の前記EGR通路部分(68a、130)につながる第2EGR通路部分(78a、132a)を区画形成するとともに機関本体(B)に向けて延びるEGR管部(78、132)を更に備えている、
ことを特徴とする内燃機関(20、111)。
【請求項5】
前記EGR管部(78、132)は、前記機関本体(B)に接続する、
ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関(20、111)。
【請求項6】
前記EGR管部(78、132)は、前記機関本体(B)の周囲を通り、前記吸気管(31)に接続する、
ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記EGR管部(78、132)は、放熱部(80、133)を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関(20、111)。
【請求項8】
前記内燃機関(20、111)は、クランク軸(21)の一端側に設けられた空冷ファン(56)と、空冷ファン(56)の風を前記機関本体(B)の排気ポート(24b)側に導く導風部材(70)とを備え、
前記EGR管部(78、132)は、前記導風部材(70)から排出される風を受けることができるように、前記機関本体(B)の前記排気ポート(24b)に並んで配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関(20)。
【請求項9】
請求項4に記載の内燃機関(20、111)を備えた鞍乗型車両(1、101)において、
前記排気管(51c、120)は、前記車両(1)の上下方向において機関本体(B)の下方又は前記車両(101)の前後方向において機関本体(B)の前方に配置され、
前記EGR通路部分(68a、130)の少なくとも一部は、前記排気通路部分(66a、129)を挟んで前記機関本体(B)の反対側に位置する、
ことを特徴とする鞍乗型車両(1、101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR通路部分を備えた内燃機関の排気装置、これを備えた内燃機関、及び、その内燃機関を備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より気候変動の緩和または影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けてエミッション改善に関する研究開発が行われている。具体的には、内燃機関において、排気ガスの一部を再度燃焼室に戻すEGR(Exhaust Gas Recirculation)を実行することで、窒素酸化物(NOx)等の有害物質の排出の抑制、燃費効率の向上を図れることが知られ、広く実用化されている。EGRには、排気通路を流れる排気ガスの一部をEGR通路を介して吸気通路に還流させ、燃焼室に送る所謂外部EGRがある。外部EGRは、例えば四輪自動車において実用化されていて、一般に、排気通路と吸気通路とをつなぐEGR通路と、EGR通路に設けられたEGR弁と、EGR通路に設けられたEGRクーラとを備える。
【0003】
例えば、特許文献1は、気筒列方向に直交する方向の一側から吸気し他側から排気するクロスフロー多気筒エンジンの排気通路の排気マニホールド下流の触媒コンバータの下流から取り出した還流排気を水冷還流排気クーラ及び排気還流制御弁を介し吸気通路に供給する排気還流装置を開示する。そして、このエンジンは、特許文献1の記載によれば、車両前部のエンジンルーム内で気筒列方向が略車幅方向となる横置きタイプのエンジンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-98171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のEGR装置は、四輪自動車に搭載されるものであり、自動二輪車などの鞍乗型車両への適用に向けられていない。鞍乗型車両のエミッション改善においても、EGRは有効であるが、例えば外部EGRを実行するためのEGRシステムの搭載スペースの点で、上記特許文献1のEGRシステムを鞍乗型車両にそのまま適用することは困難である。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、鞍乗型車両へのEGRシステムの搭載に寄与し得る構成を提供することを目的とする。そして、延いては気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
燃焼室から排出された排気ガスが流れる排気通路部分と、
EGR通路部分と
を有する排気管を備え、
前記排気管は、前記排気通路部分と前記EGR通路部分とを隔てる隔壁を有する、
ことを特徴とする内燃機関の排気装置
を提供する。
【0008】
上記構成によれば、排気管は排気通路部分とEGR通路部分とを隔てる隔壁を有するので、排気管において、EGR通路部分を排気通路部分と隣り合わせて配置することができ、よって排気管に排気通路部分とEGR通路部分とを統合することができ、これによりデッドスペースを減らしてEGRシステムのコンパクト化に貢献することができる。したがって、鞍乗型車両へのEGRシステムの搭載に寄与することができる。加えて、排気管は排気通路部分とEGR通路部分とを隔てる隔壁を有して構成されるので、例えば前述の排気通路部分を形成する排気管と前述のEGR通路部分を形成するEGR管とを設ける場合に比べて、その排気管の外観を、従来の排気管の外観に近づける又は概ね同じにすることができる。
【0009】
好ましくは、前記隔壁は、前記排気通路部分の外側に前記EGR通路部分を区画形成するように前記排気管に設けられている。この構成によれば、排気管を例えば二重管構造にすることができ、排気通路部分の断面積を十分に確保しつつ、それに隣り合うEGR通路部分を有効に形成することができる。また、二重管構造の排気管は、比較的低コストで製作が可能であり、当該構成はコスト面でも優れる。
【0010】
好ましくは、前記排気管は、前記排気通路部分に触媒を備える。この構成によれば、EGR通路部分を流れる排気ガスで触媒を暖機することができる。また、この構成において、EGR通路部分が触媒の下流側からの排気ガスを流通させるとき、触媒で浄化された排気ガスを内燃機関の吸気系に流すことができる。
【0011】
本発明は、上記内燃機関の排気装置を備えた内燃機関にも存する。好ましくは、この内燃機関は、前記排気管の前記EGR通路部分につながる第2EGR通路部分を区画形成するとともに機関本体に向けて延びるEGR管部を更に備える。この構成によれば、EGR管部を機関本体周囲にコンパクトに配置することが可能になり、例えばEGRシステムのコンパクト化に寄与することができる。
【0012】
好ましくは、前記EGR管部は、前記機関本体に接続する。この構成によれば、EGR通路の一部を機関本体内部に区画形成することができ、EGRシステムの更なるコンパクト化を可能にする。あるいは、前記EGR管部は、前記機関本体の周囲を通り、前記吸気管に接続してもよい。これにより、EGR管部を機関本体の周囲にコンパクトに配置することが可能になり、EGRシステムのコンパクトな設計が可能になる。
【0013】
好ましくは、前記EGR管部は、放熱部を備える。この構成によれば、EGR管部を流れる排気ガスつまりEGRガスをより効果的に冷却することができる。
【0014】
好ましくは、前記内燃機関は、クランク軸の一端側に設けられた空冷ファンと、空冷ファンの風を前記機関本体の排気ポート側に導く導風部材とを備え、前記EGR管部は、前記導風部材から排出される風を受けることができるように、前記機関本体の前記排気ポートに並んで配置されている。この構成によれば、EGR管部を、特にその内部を流れる排気ガスをより効果的に冷却することができる。
【0015】
本発明は、上記内燃機関を備えた鞍乗型車両にも存する。好ましくは、この鞍乗型車両においては、前記排気管は、前記車両の上下方向において機関本体の下方又は前記車両の前後方向において機関本体の前方に配置され、前記EGR通路部分の少なくとも一部は、前記排気通路部分を挟んで前記機関本体の反対側に位置するとよい。この構成によれば、前述の排気管のEGR通路部分に走行風をより積極的に当てることが可能になり、よってEGR通路部分を流れる排気ガスつまりEGRガスの冷却を促進することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、EGRシステムのコンパクト化に貢献することができ、よって、鞍乗型車両へのEGRシステムの搭載に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動二輪車の全体右側面図である。
図2図1の車両の一部の拡大右側面図である。
図3図1の自動二輪車のパワーユニット、吸気構装置及び排気装置の側面図である。
図4図3の一部の平面図である。
図5】自動二輪車の一部の下面図である。
図6】パワーユニットの内燃機関のクランク軸に沿って切断した一部断面図である。
図7図1の自動二輪車の全体左側面図である。
図8図1の自動二輪車の内燃機関の機関本体及び排気系の一部の斜視図である。
図9図1の自動二輪車の内燃機関の機関本体及び排気系の一部の別の角度からの斜視図である。
図10図1の自動二輪車の内燃機関のシリンダヘッドへの排気装置の接続部の拡大図である。
図11】排気管の一部の断面図である。
図12】排気管の一部の断面図である。
図13】排気管の一部の断面図である。
図14】(a)は図1の自動二輪車の内燃機関におけるEGRシステムの模式図であり、(b)はその変形例を示し、(c)は更に別の変形例を示す。
図15】本発明の第2実施形態に係る自動二輪車の全体左側面図である。
図16図15の自動二輪車の一部の正面図である。
図17図15の自動二輪車の内燃機関の一部の斜視図である。
図18】変形例の内燃機関の一部の斜視図である。
図19】変形例の排気管の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る第1実施形態について説明する。本実施形態に係るスクータ型の自動二輪車1の側面図を図1に示す。
なお、本明細書の説明において、前後左右及び上下の向きは、本実施の形態に係る自動二輪車1の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を,REは後方を、LHは左方を,RHは右方を、UPは上方を、DWは下方を示すものとする。
【0019】
図1に示されるように、車体前部1Fと車体後部1Rとが、低いフロア部1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームFは、概ねダウンチューブ3とメインパイプ4とからなる。
すなわち車体前部1Fのヘッドパイプ2からダウンチューブ3が下方へ延出し、同ダウンチューブ3は下端で水平に屈曲してフロア部1Cの下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインパイプ4が連結され、メインパイプ4は該連結部から後方斜め上に延びた傾斜部4aを形成し、傾斜部4aの上部がさらに屈曲して後方に略水平に延びた水平部4bを形成している。
【0020】
車体前部1Fでは、ヘッドパイプ2及びダウンチューブ3の上下指向部がフロントカバー1aとレッグシールド1bにより前後から覆われ、フロア部1Cは、ダウンチューブ3の前後指向部がロアサイドカバー1cにより覆われ、車体後部1Rは、メインパイプ4がボデイカバー1dにより左右及び後方が覆われる。車両の下方を覆うロアサイドカバー1cは、図2及び図7に示されるように、フロントカバー1aの下部から車両後方に延伸して、パワーユニットPの右側の一部を覆っている。
【0021】
一対のメインパイプ4の間には前後に収納ボックス5と燃料タンク(不図示)が支持され、収納ボックス5と燃料タンクの上方はシート7が覆って配置されている。
一方車体前部1Fにおいては、ヘッドパイプ2に軸支されて上方にハンドル8が設けられ、下方にフロントフォーク9が延びてその下端に前輪10が軸支されている。
【0022】
図1に示されるように、メインパイプ4の傾斜部4aの長手方向における略半分に位置して、支持ブラケット11が後方に向けて突設されている。図2に示されるように、パワーユニットPの上部には、ハンガー22hが、斜め上方に向かって突設されている。メインパイプ4の支持ブラケット11とハンガー22hはリンク部材12を介して連結されており、これらのリンク機構により、パワーユニットPはメインパイプ4に揺動可能に連結支持される。
【0023】
図3を参照して、パワーユニットPには、その前部に単気筒4ストローク空冷式の内燃機関20が、クランク軸21を車幅方向に指向させて軸支するクランクケース22から順次重ね合わされたシリンダブロック23,シリンダヘッド24,ヘッドカバー25を略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で前方に突出させて設けられている。なお、ここでは、クランクケース22、シリンダブロック23,シリンダヘッド24,ヘッドカバー25の部分を含む部分を機関本体Bと称する。
【0024】
図6を参照して、クランクケース22は、左右割りで、左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rからなり、車幅方向に指向したクランク軸21を左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rがそれぞれ主軸受21b,21bを介して回転自在に軸支している。
【0025】
クランク軸21の右側軸部にACジュエネレータ55が設けられ、ACジュエネレータ55のアウタローター55rに遠心冷却ファン56が一体に取り付けられている。
右クランクケース部22Rを右側から覆うファンカバー57が、遠心冷却ファン56を内部に収容する。図2も参照して、ファンカバー57には、遠心冷却ファン56に対向して外気導入口であるグリル57gが形成されている。このように、遠心冷却ファン56は空冷ファンである。
【0026】
図6に示されるように、左クランクケース部22Lは、後方に延出して伝動ケース部を兼ね、同伝動ケース部(左クランクケース部)22Lを左側から伝動ケースカバー65が覆い、内部にはベルト式無段変速機60が配設される。クランク軸21の左側軸部には、主軸受21bに隣接して駆動チェーンスプロケット58が設けられ、左側軸端部には、ベルト式無段変速機60の駆動プーリ61が設けられている。
【0027】
駆動チェーンスプロケット58に巻き掛けられるカムチェーン59によりシリンダヘッド24側の動弁機構に動力が伝達される。
図1及び図3を参照して、ベルト式無段変速機60の後部に設けられた減速機構64の減速機出力軸が後車軸28aであり、後車軸28aに後輪28が設けられている。
伝動ケース部22Lの減速機構64を収容する後部の上端と前記メインパイプ4の上部屈曲部間にリヤクッション(不図示)が介装されている。
【0028】
図3に示されるように、減速機構64の減速機入力軸64aに、ベルト式無段変速機60の被動プーリ63が軸支されており、クランク軸21に設けられる駆動プーリ61と減速機入力軸64aに設けられる被動プーリ63とにベルト62が巻き掛けられて、内燃機関20の動力がベルト62を介して被動プーリ63に伝達され、被動プーリ63の回転は遠心クラッチ(不図示)を介して減速機構64の減速機入力軸64aに伝達され、減速機構64で減速されて後輪28に動力伝達される。図6に示されるように、駆動プーリ61の左側のプーリ半体には外気吸入ファン61Fが形成されている。
【0029】
シリンダブロック23及びシリンダヘッド24の周囲を、図6に示されるような導風部材であるシュラウド70が囲繞し、シュラウド70は右側においてファンカバー57に連結される。したがって、シュラウド70内を通してシリンダブロック23及びシリンダヘッド24の各部に、例えば内燃機関20シリンダヘッド24の排気ポート24bの出口周囲に送風することができる。
【0030】
図3を参照して、パワーユニットPの前部の内燃機関20のシリンダヘッド24の上面側に吸気ポート24aが形成され、該吸気ポート24aから吸気管としてのインレットパイプ31が上方に延出している。シリンダヘッド24の下面側に排気ポート24bが形成され、該排気ポート24bから排気管51が下方に延出する。
また、シリンダヘッド24には、点火プラグ26が中央のヘッドカバー25寄りに嵌挿されるとともに、排気通路Eが延出する箇所に酸素濃度センサー27が嵌挿されている。
【0031】
内燃機関20の吸気ポート24aには、外気を吸入して内燃機関20に送る吸気装置30が接続されている。吸気装置30内は、内燃機関20の燃焼室20aに吸気を導入する内燃機関20に送られる吸気が通過する吸気通路となっている。
吸気装置30は、外気を取入れて浄化するエアクリーナ装置40と、エアクリーナ装置40に連結されるコネクティングチューブ36と、コネクティングチューブ36の下流側に連結されるスロットルボディ33と、スロットルボディ33の上流側に接続されるインレットパイプ31と、を備えており、これらにより吸気系が構成される。
【0032】
図4に示されるように、吸気装置30のエアクリーナ装置40は、左右の未浄化室ケース42と浄化室ケース43が合体したエアクリーナケース41が、未浄化室ケース42と浄化室ケース43の間に配設されエアクリーナエレメント44が配設されている仕切部により、未浄化室ケース42側の未浄化室Caと浄化室ケース43側の浄化室Cbとに仕切られている。
図3に示されるように未浄化室ケース42には、走行風などが取り込まれる空気導入管47が、その開口部47aが前方を向くように配設されている。開口部47aから導入された吸気は、未浄化室Ca内からエアクリーナエレメント44を通過して浄化され、浄化室Cbに送られる。エアクリーナ装置40の浄化室Cbは、ゴム製の弾性変形可能なコネクティングチューブ36により、スロットルボディ33と連通されている。燃料噴射弁37が、スロットルボディ33及びインレットパイプ31のそれぞれの上面から取り付けられ、吸気通路内に燃料が噴射される。
【0033】
図5に示されるように、シリンダヘッド24の排気ポート24bには、排気装置50が接続されている。排気装置50は、排気ポート24bに接続される排気管51と、排気管51の後端に接続され大気開放口52aを車両後向に向けたマフラー52と、排気管51の途中に内蔵される触媒装置53を備えている。
内燃機関20から排出される排気ガスは、排気ポート24bから排気管51に流入し、排気管51の途中に設けられた触媒装置53で浄化され、マフラー52を通過し、大気開放口52aより大気中に排出される。
【0034】
排気管51は、排気ポート24bに連通してシリンダヘッド24の下面から下方に延出し、左側斜前方に屈曲し、さらに後方から右方へに屈曲して、クランクケース22の下部の左側から右側へ屈曲し、後方へ延びて後輪28の右側に配設されるマフラー52に連結されている。
【0035】
排気管51は、途中に触媒装置53が内蔵される触媒装置収容排気管51cと、触媒装置収容排気管51cの上流側に接続される上流側排気管51aと、触媒装置収容排気管51cの下流側に接続される下流側排気管51bとから構成されている。
【0036】
上流側排気管51aは、排気ポート24bに連通してシリンダヘッド24の下面から下方に延出し(図3も参照)、その後左側斜前方に屈曲してさらに後方から右方へと屈曲して触媒装置収容排気管51cに接続される。
【0037】
触媒装置収容排気管51cは、内燃機関20の下方に位置し、車幅方向に指向して車両の左側から右側に向かって排気が流れるように配設されている。
触媒装置収容排気管51cは、上流端が車幅方向における左側に位置し、下流端が車幅方向における右側に位置するように配設されている。上流端には上流側排気管51aが接続され、下流端には下流側排気管51bが接続されている。
【0038】
触媒装置収容排気管51cの内部には、その軸線方向が車幅方向に向かうように触媒装置53が収容されている。触媒装置53は、その軸線方向に向かって伸びる多数の細孔を有するハニカム状の多孔構造体であり、その多孔構造体に排気ガスを分解する成分として、例えば、白金、ロジウム及びパラジウム等の触媒が担持されている。ここでは、触媒装置53を単に触媒と称し得る。
【0039】
下流側排気管51bは、図5に示されるように、触媒装置収容排気管51cの下流側に接続し、車幅方向に延びたのち、後方に向かって湾曲している。下流側排気管51bは、車両下面視において、ユニットケースPcを構成するクランクケース22より車幅方向における外側を車両前後方向に沿って後方に向かって延伸されている。さらに、下流側排気管51bは、図2及び図7に示されるように、車体右側面視において、パワーユニットPの下部の右側から後方へ延びて、その後斜め上方に向かって屈曲されて延び、後輪28の右側に配設されるマフラー52に連結されている。
【0040】
図2は、ファンカバー57の前側の一部を切り欠いた状態の、パワーユニットP近傍の右側面図である。下流側排気管51bは、この側面視において、上流側と下流側との2つの湾曲部51dを有している。この湾曲部51dのうち触媒装置収容排気管51cに最も近い上流側湾曲部51d1が、車両側面視において、冷却ファンの回転中心C1より車両前後方向において前方に位置するように、下流側排気管51bは、形成されている。
本実施の形態の鞍乗型車両では、2つの湾曲部51dを有しているが、少なくとも1つの湾曲部51dを有していればよく、2つ以上の複数の湾曲部51dを有していてもよい。
【0041】
下流側排気管51bには排気ガスセンサー54が取り付けられており、触媒装置53を通過した排気ガス中の酸素濃度を検出する。排気ガスセンサー54は、LAFセンサーやOセンサーのいずれであってもよい。
【0042】
図2及び図6に示されるように、下流側排気管51b及び排気ガスセンサー54の近傍に位置して、遠心冷却ファン56の右側方を覆うように、ユニットケースPcの一部を構成するファンカバー57が配設されている。ファンカバー57は、内燃機関20の一部の周囲を覆うシュラウド70と一体に連結され、内燃機関20の右側方を覆っている。ファンカバー57の庇部57dは、下流側排気管51bの右側面を覆うように形成されている。ファンカバー57の庇部57dの端縁には、車両前後方向において前方に開口した切欠き部57eが形成されている。切欠き部57eは、下流側排気管51bに取り付けられた排気ガスセンサー54を避けるように形成されており、図2に示されるように、車両側面視において、切欠き部57eと排気ガスセンサー54とは重なる。
【0043】
自動二輪車1は、不図示のECU(電子制御ユニット)を備える。ECUは、内燃機関20等の制御を行う。ECUは、コンピュータとしての構成を備え、プロセッサ(例えばCPU)及びメモリ(例えばROM、RAM)を備え、各種センサーからの出力信号が入力される。例えば、エンジン回転速度センサー、スロットル開度センサーなどのエンジン負荷センサー、酸素濃度センサー27及び排気ガスセンサー54がECUに接続されている。そして、ECUは、これらのセンサーからの入力に基づき運転状態を解析し、解析した運転状態に基づいて、例えば、点火プラグ26、燃料噴射弁37、スロットルボディ33のスロットル弁及び後述するEGR弁Vなどの各作動を制御する。
【0044】
さて、内燃機関20の排気装置50について更に説明する。機関本体Bの一部と、排気通路Eを区画形成する触媒装置収容排気管51cまでの部分の斜視図を図8及び図9に示す。図8は、機関本体Bのシリンダヘッド24側を車両斜め右前方側から見た斜視図であり、図9は、機関本体Bのシリンダヘッド24側を車両斜め左後方側から見た斜視図である。図10は、シリンダヘッド24の排気ポート24bへの排気装置50の接続部の拡大図である。図11から図13に、排気管51のうちの上流側排気管51aと、触媒装置収容排気管51cとの部分を示す。図11は、触媒装置収容排気管51cの排気流れ方向に沿った断面斜視図であり、図12は、触媒装置収容排気管51cの排気流れ方向に沿った断面図であり排気流れ方向つまり触媒装置収容排気管51cの軸線51caを紙面に平行に配置した断面図である。図13は、触媒装置収容排気管51cの排気流れ方向に直交する面である図12のXIII―XIII線に沿った断面図であり、排気流れ方向つまり触媒装置収容排気管51cの軸線51caを紙面に直交するように配置した断面図である。
【0045】
内燃機関20は、排気系の排気ガスを吸気系に環流させるEGR、特に外部EGRを実行するため、EGRシステムSを備える。EGRシステムSは、EGR通路Epを備える。更に、EGRシステムSはEGR弁Vを備える。EGR弁Vは、ここでは、吸気ポート24aに還流される排気ガスつまりEGRガスを導くようにシリンダヘッド24に直接取り付けられているが、インレットパイプ31等の吸気管に排気ガスを導くようにEGR通路Epの任意の箇所に設けられ得る。なお、EGR弁Vはここではポペット式弁であるが、その他の形式の弁であってもよい。
【0046】
EGR通路Epの一部であるEGR通路部分68aは、触媒装置収容排気管51cに形成されている。触媒装置収容排気管51cは、図11から図13に示すように二重管構造を有している。触媒装置収容排気管51cは、触媒装置収容排気管51cの軸線51caが内部にその軸線として延びる内管部66と、その内管部66の外側の外管部68とを有する。内管部66は、略円柱状の通路を有し、排気ポート24bから排気通路Eに排出された排気ガスがマフラー52に向けて流れる排気通路部分66aを区画形成する。外管部68は、内管部66の周囲に接触して隣り合って延び、触媒装置収容排気管51cの軸線51caを軸線として軸線51caに沿って延び、円筒状の空間を区画形成する。この外管部68の円筒状の空間は、還流される排気ガスつまりEGRガスが流れるEGR通路部分68aとなる。そして、内管部66と外管部68とは円管状の隔壁71によって一体となる。つまり、触媒装置収容排気管51cはその内部を排気通路部分66aとEGR通路部分68aとに分ける隔壁71を有し、触媒装置収容排気管51c内において隔壁71を介してEGR通路部分68aは排気通路部分66aと隣り合う。そして、特に、触媒装置収容排気管51cは二重管構造を有するので、触媒装置収容排気管51c内において隔壁71により排気通路部分66aの外側にEGR通路部分68aが区画形成される。隔壁71は触媒装置収容排気管51cの軸線51caを軸線とする円筒状管部であり、それにより排気通路部分66aとEGR通路部分68aとはそれらの長手方向が概ね一致し、かつ、略平行の関係を有する。
【0047】
触媒装置収容排気管51cの排気通路部分66aには、触媒を備える前述の触媒装置53つまり触媒が配置される。排気通路部分66aの触媒装置53の下流側において、排気通路部分66aとEGR通路部分68aとをつなぐ連通路72が区画形成される。連通路72は、触媒装置収容排気管51cの下流側端部に形成され、隔壁71の下流側端部に形成された切り欠き部74により区画形成される。連通路72は、触媒装置収容排気管51cの軸線51caを中心にして径方向に延びた孔であり、吸気系の負圧により排気通路部分66aの排気ガスの一部をEGR通路部分68aに引き込むことを可能にする。
【0048】
触媒装置収容排気管51cの上流側端部には、ガス排出部76が形成されている。ガス排出部76はEGR通路部分68aの排気ガスをEGR通路部分68aから排出することを可能にする。ガス排出部76はEGR通路部分68aに連通するガス排出路76aを区画形成する。したがって、触媒装置収容排気管51cにおいて、排気通路部分66aにおける排気ガスの下流側に向けた流れ方向と逆向きに、EGR通路部分68aにおいて還流される排気ガスつまりEGRガスは流れるようになる。
【0049】
ガス排出部76には、EGR管78が接続される。EGR管78はEGR管部の一例であり、触媒装置収容排気管51cのEGR通路部分68aにつながるEGR通路部分(以下、第2EGR通路部分)78aを区画形成する。EGR管78は、機関本体Bに向かって延びるように配置される。ここでは、EGR管78は、図5図8及び図10に示すように、機関本体Bのシリンダヘッド24に直接接続され、機関本体B内に区画形成されたEGR通路部分24eにEGRガスを導くことを可能にする。EGR管78は、図2図5図8図10及び図12に示すように、上流側排気管51aと触媒装置収容排気管51cとに囲まれた領域内に概ね延びるように配置され、触媒装置収容排気管51cの接続部から下方に延び、その後上側に向き、シリンダヘッド24の下面に接続する。したがって、EGR管78は、略U字状の管である。なお、EGR通路部分24eは、機関本体Bにおいてシリンダヘッド24以外の箇所に形成されてもよい。
【0050】
図14(a)に、EGRシステムSの模式図を示す。図14(a)は本実施形態のEGRシステムSを示す。EGRシステムSでは、機関本体Bから排出された排気ガスは、排気ポート24b、上流側排気管51aを順に流れ、触媒装置収容排気管51cの排気通路部分66aにて触媒装置53を通過し、不図示の前述のECUによりEGR弁Vが開弁制御されているとき、連通路72を介してEGR通路部分68aに流れてガス排出部76から触媒装置収容排気管51cの外側に流れ出て、EGR管78の第2EGR通路部分78aを介して機関本体BのEGR通路部分24eに流れ、EGR弁Vを介して、吸気通路、ここでは吸気ポート24aに還流される。これにより、還流された排気ガスつまりEGRガスは燃焼室20aに吸入される。
【0051】
このように排気ガスが還流されるとき、そのEGR通路Epの途中には、冷却手段が備えられている。まず、EGR管部であるEGR管78には、放熱部80が備えられている。放熱部80はEGR管78の外気に曝される表面積を増やす構成を有し、ひだ状つまり蛇腹状の管部となっている。EGR管78は、走行風が流れる車体下方の外部に露出していて放熱部80を備えるので、高い冷却効果を発揮し得る。
【0052】
更に、前述のように、シリンダブロック23及びシリンダヘッド24の周囲を囲むように設けられる導風部材であるシュラウド70は、内燃機関のクランク軸21の一端側に設けられた空冷ファンつまり遠心冷却ファン56のファンカバー57に連結される。シュラウド70の一縁部70aは、図10に示すように内燃機関20のシリンダヘッド24の排気ポート24bの出口周囲に開き、排気ポート24bつまりそれに連通する上流側排気管51a側に遠心冷却ファン56の風を送ることを可能にする。ここで、図5図8及び図10に示すように、シリンダヘッド24の排気ポート24b側において接続位置に関して、上流側排気管51aつまりそれが連通する排気ポート24bに、EGR管78は並んで配置されている。そして、その位置は、EGR管78のシリンダヘッド24への接続位置は、シュラウド70から流れ出る遠心冷却ファン56の風の通り道に位置する。したがって、シュラウド70の一縁部70aから排出される遠心冷却ファン56の風を、EGR管78は受けることができる。図10にEGR管78側に流れる遠心冷却ファン56の風を矢印A1で模式的に示す。
【0053】
上記構成の鞍乗型車両である自動二輪車1における、内燃機関20の排気装置50等の特徴的な構成と、それらによる作用効果を以下説明する。
【0054】
自動二輪車1に搭載された内燃機関20の排気装置50において、触媒装置収容排気管51cは、燃焼室20aから排出された排気ガスが流れる排気通路部分66aと、EGR通路部分68aとを備える。そして、触媒装置収容排気管51cは、排気通路部分66aとEGR通路部分68aとを隔てる隔壁71を有する。したがって、EGR通路部分68aを排気通路部分66aと隣り合わせて配置することができ、これにより1つの排気管51cに排気通路部分66aとEGR通路部分68aとを統合することができ、よって排気通路部分66aとEGR通路部分68aとの間のデッドスペースを減らしてEGRシステムSのコンパクト化に貢献することができる。したがって、排気装置50は鞍乗型車両である自動二輪車1へのEGRシステムSの搭載に寄与することができる。加えて、触媒装置収容排気管51cは、排気通路部分66aとEGR通路部分68aとを隔てる隔壁71を有し、これにより触媒装置収容排気管51cにおいてEGR通路部分68aを排気通路部分66aと隣り合わせて配置することができるので、例えば排気通路部分66aを形成する触媒装置収容排気管とEGR通路部分68aを形成するEGR管とを設ける場合に比べて、触媒装置収容排気管51cの外観を、従来の円管状の排気管の外観に近づける又はそれと概ね同じにすることができる。特に、ここでは、排気通路部分66aとEGR通路部分68aとは略平行の関係を有して排気管51cに形成されるので、排気管51cにEGR通路部分68aをより一体的に融合させることができる。更に、排気管51cにおいて連通部である上記連通路72を備えるので、排気管51cにおいてEGR通路部分68aをより一体的に融合させることができる。このように、排気装置50は、通常の排気通路部分66aを備えることに加えて、EGR通路部分68aを融合させた構成を有する排気管51cを備える点で、排気管とEGR管とを別々に用意して結合させる従来の排気装置とは大きく異なる。
【0055】
そして、隔壁71は、排気通路部分66aの外側にEGR通路部分68aを区画形成するように触媒装置収容排気管51cに設けられている。ここでは特に排気管51cが二重管構造を有するようにその内部に隔壁71が設けられている。したがって、排気通路部分66aの断面積を十分に確保しつつ、換言すると損なうことなく、その外側に隣り合うEGR通路部分68aを有効に形成することができる。また、二重管構造の排気管51cは、比較的低コストで製作が可能であるので、当該構成はコスト面でも優れる。更に、排気管51cを二重管構造にし、そこにEGR通路部分68aを形成したので、EGR通路部分68aは外側から視認できず、EGR通路部分68aの追加形成により排気管51cの外観性を損なうことをより一層防ぐことができる。
【0056】
更に、触媒装置収容排気管51cは、排気通路部分66aに触媒つまり触媒装置53を備える。よって、EGR通路部分68aを流れる排気ガスで触媒を暖機することができる。また、触媒装置収容排気管51cは、触媒装置53の下流側の排気ガスをEGR通路部分68aに流通させるように上記連通路72を備えるので、触媒装置53で浄化された排気ガスを内燃機関の吸気系に流すことができる。更に、触媒装置収容排気管51cは上記連通路72を備えて構成されるので、EGR通路Epの構成を簡素化でき、EGRシステムSの更なるコンパクト化も可能になる。
【0057】
また、第2EGR通路部分78aを区画形成するEGR管78は、機関本体Bに向むけて延びる。これにより、自動二輪車1及び内燃機関20の各々において第2EGR通路部分78aつまりEGR管78を機関本体B周囲にコンパクトに配置することが可能になり、延いてはEGRシステムSのコンパクト化に寄与することができる。
【0058】
また、EGR管78は、機関本体Bのシリンダヘッド24に直接接続され、EGR通路Epの一部であるEGR通路部分24eを機関本体B内部に区画形成している。したがって、EGRシステムSの更なるコンパクト化が可能になる。
【0059】
更に、EGR管78は、放熱部80を備える。よって、EGR管78を流れる排気ガスつまりEGRガスをより効果的に冷却することができる。ただし、これは本願はEGR管78の前後又はその途中に、EGRクーラが更に設けられることを排除するものではなく、EGRクーラが更に設けられてもよい。
【0060】
また、内燃機関20は、クランク軸21の一端側に設けられた遠心冷却ファン56と、遠心冷却ファン56の風を機関本体Bの排気ポート24b側に導く導風部材であるシュラウド70とを備える。そしてEGR管78は、シュラウド70から排出される風を受けることができるように、機関本体Bの排気ポート24bに並んで配置されている。よって、遠心冷却ファン56からの風で、EGR管78つまりその内部を流れる排気ガスをより効果的に冷却することができる。
【0061】
また、触媒装置収容排気管51cは、自動二輪車1の上下方向において機関本体Bの下方に配置されている。これにより、触媒装置収容排気管51cは自動二輪車1の下方において露出することになる。更に、触媒装置収容排気管51cが二重管構造を有することから明らかなように、EGR通路部分68aの少なくとも一部は、排気通路部分66aを挟んで機関本体Bの反対側に位置する。したがって、EGR通路部分68aを含む触媒装置収容排気管51cに走行風をより積極的に当てることが可能になり、よってEGR通路部分68aを流れる排気ガスつまりEGRガスの冷却を促進することができる。
【0062】
なお、上記自動二輪車1の内燃機関20では、EGR管78の第2EGR通路部分78aにつながるEGR通路部分24eは機関本体Bに形成した。しかし、機関本体Bに形成されるEGR通路部分24eは設けられずに、EGR管78は、吸気管例えばインレットパイプ31に接続されてもよい。図14(b)に、EGR管78が、EGR弁Vに直接接続されるEGRシステムSaを示す。このEGRシステムSaの構成では、EGR管78は、機関本体Eの周囲を通り、EGR弁Vを介して吸気管であるインレットパイプ31に接続する。これにより、EGR通路Epのコンパクトな配置を可能にしてもよい。なお、図14(b)では、EGR弁Vは機関本体Bに取り付けられているが、機関本体Bから離して、インレットパイプ31等の吸気管とEGR管78とをつなぐように設けられてもよい。
【0063】
あるいは、図14(c)に示すEGRシステムSbのように、上流側排気管51aにEGR通路部分82を区画形成してもよい。この場合、EGR管78は上流側排気管51aに接続され、EGR管78の第2EGR通路部分78aは上流側排気管51aのEGR通路部分82につなげられるとよい。このとき、EGR通路部分82は、図14(c)に示すように更なるEGR管84のEGR通路部分84aを介して、機関本体BのEGR通路部分24eにつなげられても、図14(b)に示すように機関本体BのEGR通路部分24eを介さずにEGR弁Vを介して吸気管に接続されてもよい。
【0064】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る自動二輪車101の左側面図を図15に、自動二輪車101の一部の正面図を図16に示す。
【0065】
自動二輪車101は、パワーユニットP、電装品を搭載する車体フレーム102を備えている。車体フレーム102のメインチューブは、前端部に位置するヘッドパイプ103から後方に延出されている。車体フレーム102のダウンチューブ104は、ヘッドパイプ103から後斜め下方に延出されるように設けられている。ヘッドパイプ103の後方には、内部に燃料の収容される燃料タンク105が配置されている。この燃料タンク105の後方には、運転者が着座するシート106が搭載されている。シート106の下方には、運転中において運転者の足置きとなるフットレスト107が設けられている。
【0066】
図15に示す車体右側のフットレスト107の近傍には、駆動輪である後輪WR用のブレーキペダル108が設けられている。ブレーキペダル108は、フットレスト107より後方に位置する後端部108rが軸支され、フットレスト107より前方に位置する前端部108fが上下に揺動可能に設けられる。ブレーキペダル108は、図15の自動二輪車101の側面視において、後端部108rから前端部108fに向かうに従い、はじめは前下方に向けてわずかに傾斜し、その後、おおむね水平になり、更にその後、前上方に向けてわずかに傾斜するように形作られていて、略U字形状を有する。つまり、ブレーキペダル108は、自動二輪車101の側面視においておおむね上下方向に傾かずに前後方向に延びている。ブレーキペダル108の前端部108fは、ペダル部として機能し、後述するクランクケース109の前端側部分の右側方に位置し、また、フットレスト107と概ね同じ高さに位置し、フットレスト107に置かれた運転者の足によって踏み込み操作可能である。
【0067】
更に図15に示す車体右側のフットレスト107の近傍には、特にフットレスト107の上側にはキックペダル110が設けられている。キックペダル110は、フットレスト107の斜め後上側に位置付けられた後端部110rと、パワーユニットPの内燃機関111の機関本体Bのシリンダヘッド112の後部付近に位置する前端部110fとを有する。キックペダル110は、後端部110rから前端部110fに向かうに従い、まず上側に延び、前方に向けて湾曲する。キックペダル110は使用時に車幅方向外側に延びるように展開される。キックペダル110の前端部110fは、ペダル部として機能し、運転者の足によって踏み込まれる。この踏み込みにより、キックペダル110は後端部110rを中心に所定範囲で回動し、よって内燃機関111を始動させることができる。
【0068】
車体フレーム102におけるメインチューブ及びダウンチューブ104には、内燃機関111の機関本体Bが懸架されている。機関本体Bは、ダウンチューブ104にブラケットを介して支持されるクランクケース109と、このクランクケース109の上方に順に設けられたシリンダブロック113、シリンダヘッド112及びヘッドカバー114とを備えている。クランクケース109の上方にシリンダブロック113が前傾した状態で連結されている。したがって、図15に示すように、機関本体Bの気筒のシリンダー軸線111cは、クランクケース109のクランク軸側からシリンダヘッド112側に向けて斜め前方に傾く。なお、クランク軸は車幅方向に延び、上下方向かつ前後方向に概ね直交する。図15では、クランク軸の回転軸線115を示す。
【0069】
機関本体Bのシリンダヘッド112には、排気装置116のうちの上流側排気管117の上端(上流端)側が接続されている。燃焼室(不図示)から排出される排気ガスは、シリンダヘッド112の排気ポートを介して、上流側排気管117を流れて、後輪WRの右側方に位置するつまり車体右側後方に位置するマフラー118から排出される。なお、シリンダヘッド112の排気ポート、上流側排気管117、触媒装置収容排気管120、下流側排気管121及びマフラー118はこの順で排気流れ方向につながり、それぞれ排気通路122の一部を区画形成する。
【0070】
なお、メインチューブの前端部には、ヘッドパイプ103に設けられたステアリングシャフトを介してフロントフォーク123が回動可能に支持されている。ステアリングシャフトの上端部にはハンドルバー124が設けられており、ハンドルバー124の両端部にはグリップ125が装着されている。フロントフォーク123の下部には、前輪WFが回転可能に支持されている。前輪WFの上方は、フロントフェンダ126で部分的に覆われている。
【0071】
また、機関本体Bの後方には、スイングアームを介して、内燃機関111の動力が伝達される後輪WRが回転可能に支持されている。スイングアームと車体フレーム102との間には、路面からの衝撃を緩和させるサスペンション126が配置されている。後輪WRの後上側であってシート106の後方には、リヤフェンダ127が配置されている。
【0072】
さて、前述のように、機関本体Bのシリンダヘッド112の前壁には、排気装置116のうちの上流側排気管117が接続され、その下流に、排気浄化装置である触媒装置収容排気管120、下流側排気管121及びマフラー118が上流側から順に配置されている。触媒装置収容排気管120は、前述の触媒装置収容排気管51cと同じ構成を備えるのでここでの詳細な説明は特に行わないが、二重管構造を有し、図17に示すように、隔壁128を備えて、その内部にその隔壁128により隔てられた排気通路部分129とその外側のEGR通路部分130とを備え、排気通路部分129に触媒装置131を備える。なお、図17では、触媒装置収容排気管120の一部が透視されて示されている。
【0073】
図15及び図16に示すように、機関本体Bのシリンダヘッド112の排気ポートから続く排気通路122は、機関本体Bの前側に延びつまり延出し、その後下側に延びて、さらに機関本体Bの下方を通って後方に延びる。つまり、排気装置116は、内燃機関111の機関本体Bの前側からその下方に延び、機関本体Bの下方を通って後方に延びる。触媒装置収容排気管120は車両前後方向において機関本体Bの前側に位置付けられていて、特にクランクケース109の前側に位置付けられている。したがって、この触媒装置収容排気管120は、ブレーキペダル108の前端部108fよりも車両前方に位置している。ここでは、排気通路122が前述のように機関本体Bの周囲において延びるので、触媒装置収容排気管120は、自動二輪車101の側面視においてシリンダー軸線111cと同様に斜めに延び、上流側から下流側に向けて斜め後下方に延びるように配置されている。図16の自動二輪車101の一部の前面視に示すように、触媒装置収容排気管120は自動二輪車101の前方から後方に延びる中央仮想面IS(前輪WFにおいて上下方向に延びる線)を定めるとき、その右側に位置し、ここでは前輪WFの右側に延在し、その上流側部分よりも下流側部分がわずかに車幅方向内側に入るように自動二輪車101に設けられている。なお、その中央仮想面ISは、車幅方向に直交するとともに前輪WF及び後輪WRを実質的に二等分するように定められることができる。
【0074】
自動二輪車101の内燃機関111の排気装置116でも、触媒装置収容排気管120は、前述の触媒装置収容排気管51cと同じ構成を備えるので、触媒装置収容排気管120のEGR通路部分130を流れる排気ガスをその外部に導くように、EGR管部であるEGR管132が触媒装置収容排気管120に接続される。また、第1実施形態と同様に、EGR管132は機関本体Bに直接接続し、よってEGR管132の第2EGR通路部分132aは機関本体Bの不図示のEGR通路部分につながる。このように、自動二輪車101の内燃機関111に搭載されたEGRシステムScは、上記EGRシステムS(図14(a)参照)と同じ構成を備える。EGRシステムScにおけるEGR弁の図示は省略する。なお、EGR管132は放熱部80と同じ放熱部133(図17参照)を備える。
【0075】
したがって、自動二輪車101、そこに搭載された内燃機関111及びその排気装置116は、第1実施形態のそれらと同様に、第1実施形態の上記説明で述べた構成を同様に備え、上記効果を同様に奏する。
【0076】
加えて、本実施形態の自動二輪車101では、触媒装置収容排気管120は、自動二輪車101の前後方向において機関本体Bの前方に配置されている。そして、触媒装置収容排気管120は二重管構造であるので、触媒装置収容排気管120のEGR通路部分130の一部は、排気通路部分129を挟んで機関本体Bの反対側に位置する。つまり、EGR通路部分130の一部は、機関本体Bの前方に位置し、触媒装置収容排気管120の中で最も車両前方に位置する。したがって、EGR通路部分130を含む触媒装置収容排気管120に走行風をより積極的に当てることが可能になり、よってEGR通路部分130を流れる排気ガスつまりEGRガスの冷却を促進することができる。
【0077】
更に、自動二輪車101では、EGR管132の一部は、図16に示すように、前輪WFの角度によっては前輪WF等に隠れることなく右前方側に露出する。したがって、EGR管132を流れる排気ガスの冷却を更に促すことができる。よって、EGRシステムScはEGRクーラを省くことができる。なお、EGRシステムScはEGRクーラを備えてもよい。
【0078】
なお、自動二輪車101、内燃機関111及び排気装置116は、それぞれ、第1実施形態の変形例として説明した種々の構成、具体的には図14(b)の構成、図14(c)の構成を備えるように変更されることができる。例えば、図18に示すように、上流側排気管117aは二重管構造とされて、EGR通路部分134を備えてもよい。この場合、触媒装置収容排気管120のEGR通路部分130と上流側排気管117aのEGR通路部分134とはEGR管135で接続され、上流側排気管117aのEGR通路部分134と機関本体Bの不図示のEGR通路部分とはEGR管136で接続される。EGR管136は放熱部137を有する。EGR管135も放熱部を有することができる。
【0079】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0080】
例えば、上記触媒装置収容排気管51c、120は、二重管構造を有し、EGR通路部分68a、130は円管状の隔壁71、128により排気通路部分66a、129と隔てられ、排気通路部分66a、129の外側に筒状に延びた。しかし、触媒装置収容排気管はこの構成に限定されず、円管状以外の形状の隔壁を備えてもよい。例えば触媒装置収容排気管はその内部に平板状の隔壁を備え、平板状の隔壁によりその内部空間は2つの空間に仕切られ、その一方が排気通路部分とされ、他方がEGR通路部分とされてもよい。なお、EGR通路部分と排気通路部分とを備える排気管は、その排気通路部分に触媒装置を備える排気管に限定されず、その排気通路部分に触媒装置を備えない排気管も含み得る。
【0081】
図19に、触媒装置収容排気管51c、120の変形例の触媒装置収容排気管150を示す。図19は、触媒装置収容排気管150の断面模式図であり、触媒装置53、131に相当する触媒装置152つまり触媒よりも下流側で切断し、その切断面から上流側を見た図である。触媒装置収容排気管150は、その内部に、排気通路部分154と、EGR通路部分156とを区画形成するように、隔壁158を備える。隔壁158は、平板状であり、排気管150の軸線150Aに沿って延びる。隔壁158は軸線150Aからずれた位置にあり、排気通路部分154はEGR通路部分156よりも広い。よって、排気通路部分154の外側にEGR通路部分156が実質的に区画形成される。隔壁158には、排気通路部分154と、EGR通路部分156とをつなぐ連通部160が形成されている。このように、隔壁158を形成することでも、排気管150に排気通路部分154とEGR通路部分156とを統合することができる。そして、これによっても、排気管150の外観を従来の円管状の排気管と同様の外観とすることができる。なお、図19では、EGR通路部分156に連通するガス排出路を区画形成するガス排出部、つまり、上記ガス排出部76に相当する部分の図示は省略する。
【0082】
なお、上記実施形態では、排気管51c、120、150における隔壁71、128、158は1枚の壁部材から構成されたが、2枚以上の壁部材から構成されてもよい。例えば、排気通路部分を区画形成する管部材と、EGR通路部分を区画形成する管部材とを、それらの長手方向を揃えて互いに隣り合うように並べて、互いに押し潰すようにして密着させて略管状にすることで、あるいは例えば更に溶接等により接合することで、実質的に単一の排気管51c、120、150が構成されてもよい。この場合、隔壁71、128、158は、排気通路部分を区画形成する管部材の一部と、それにEGR通路部分を区画形成する管部材の一部とにより構成される。
【符号の説明】
【0083】
1、101…自動二輪車
20、111…内燃機関
50、116…排気装置
51a、117、117a…上流側排気管
51c、120、150…触媒装置収容排気管
53、131、152…触媒
66a、129、154…排気通路部分
68a、130、156…EGR通路部分
71、128、158…隔壁
80、133…放熱部
図1
図2
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