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特開2024-51825全芳香族ポリアミド溶液、及び全芳香族ポリアミド溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051825
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】全芳香族ポリアミド溶液、及び全芳香族ポリアミド溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20240404BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20240404BHJP
   D01F 6/80 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08J3/02 Z CFG
D01F6/60 371
D01F6/80 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158167
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 悟
(72)【発明者】
【氏名】周 宗揚
【テーマコード(参考)】
4F070
4L035
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AB09
4F070AC12
4F070AC16
4F070AC36
4F070AC40
4F070AC45
4F070AC47
4F070AC50
4F070AC66
4F070AE28
4F070CA12
4F070CB05
4F070CB11
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB11
4L035BB12
4L035BB13
4L035BB15
4L035MG02
4L035MG08
(57)【要約】
【課題】非プロトン性有機極性溶媒に無機塩、有機塩などを併用することなく、全芳香族ポリアミド溶液を提供する。
【解決手段】全芳香族ポリアミドと、下記(a)~(c)のいずれかに記載の溶媒の少なくとも1種とを含有する全芳香族ポリアミド溶液であって、該全芳香族ポリアミド溶液中に含まれる、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10,000PPM以下である。
(a)10質量%以上の有機強塩基と非プロトン性有機溶媒とを含有する共溶媒
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全芳香族ポリアミドと、下記(a)~(c)のいずれかに記載の溶媒の少なくとも1種とを含有する全芳香族ポリアミド溶液であって、該全芳香族ポリアミド溶液中に含まれる、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10,000PPM以下であることを特徴とする全芳香族ポリアミド溶液。
(a)10質量%以上の有機強塩基と非プロトン性有機溶媒とを含有する共溶媒
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体
【請求項2】
請求項1に記載の
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体
に、さらに非プロトン性有機溶媒が含まれている請求項1記載の全芳香族ポリアミド溶液。
【請求項3】
全芳香族ポリアミド溶液中に、共晶混合物が含まれている請求項1記載の全芳香族ポリアミド溶液。
【請求項4】
全芳香族ポリアミド貧溶媒である水、アルコール、カルボン酸などのプロトン性溶媒を含有する全芳香族ポリアミド凝固液に有機強塩基、又は有機強塩基と二酸化炭素を添加し、有機強塩基とプロトン性溶媒を含有する塩及びイオン液体、又は、有機強塩基とプロトン性溶媒と二酸化炭素を含有する塩及びイオン液体に変化させることを特徴とする全芳香族ポリアミド溶液の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の全芳香族ポリアミド溶液を湿式紡糸用ドープとして用いることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリアミドと、有機強塩基、又は有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩、又は有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体を含む溶媒と、を含む全芳香族ポリアミド溶液、及び全芳香族ポリアミド溶液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリアミド(アラミド)は芳香族構造を含むポリアミドであり、パラアラミドとメタアラミドとがある。パラアラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(デュポン製「Kevlar」(登録商標)、帝人製「Twaron」(登録商標))、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人製「Technora」(登録商標))などがある。このようなパラアラミドは溶解性が低く、決められた溶媒(濃硫酸)のみにしか溶解しなかった。しかしながら硫酸は有害物であり、作業者に危険を及ぼすことがある。また金属腐食性が高く、プロセスの配管腐食などの原因にもなりうる。
【0003】
特許文献1~3には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)などの非プロトン性極性有機溶媒中に塩化リチウム、塩化カルシウムなどの無機塩を溶解させた溶剤に溶解させる方法が開示されている。
【0004】
一般的に、ポリマー溶液からポリマーを凝固させるためには、水などの貧溶媒を使用する必要があるが、非プロトン性有機極性溶媒と無機塩、又は第4級アンモニウム塩などの有機塩を用いた溶媒系では、非プロトン性有機極性溶媒と、無機塩又は第4級アンモニウム塩などの有機塩と、水などの貧溶媒、の3成分以上の分離・回収が必要となる。
【0005】
そこで、特許文献4には、非プロトン性有機極性溶媒と無機塩、有機塩からなる水溶液から非プロトン性有機極性溶媒を回収する方法が開示されているが、該方法においては、ハロゲン系溶媒で抽出する工程、該ハロゲン系溶媒を蒸留する工程などが含まれており、回収工程が複雑化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52-46982号公報
【特許文献2】特開平4-226533号公報
【特許文献3】特開2006-241624号公報
【特許文献4】特開2002-1008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、非プロトン性有機極性溶媒に無機塩、有機塩などを併用することなく、従って、ハロゲン系溶媒で抽出する工程、該ハロゲン系溶媒を蒸留する工程などの回収工程が簡素化できる全芳香族ポリアミド溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、有機強塩基と非プロトン性有機溶媒とを含有する共溶媒、又は有機強塩基とプロトン性溶媒からなる塩、又は有機強塩基とプロトン性溶媒からなるイオン性液体を含む溶媒を使用するとき、無機塩、有機塩を使用しないで全芳香族ポリアミド溶液が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、
1.全芳香族ポリアミドと、下記(a)~(c)のいずれかに記載の溶媒の少なくとも1種とを含有する全芳香族ポリアミド溶液であって、該全芳香族ポリアミド溶液中に含まれる、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10000PPM以下であることを特徴とする全芳香族ポリアミド溶液、
(a)10質量%以上の有機強塩基と、非プロトン性有機溶媒とを含有する共溶媒
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体、
2.上記1に記載の
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体
に、さらに非プロトン性有機溶媒が含まれている上記1記載の全芳香族ポリアミド溶液、
3.全芳香族ポリアミド溶液中に、共晶混合物が含まれている上記1記載の全芳香族ポリアミド溶液、
4.全芳香族ポリアミド貧溶媒である水、アルコール、カルボン酸などのプロトン性溶媒を含有する全芳香族ポリアミド凝固液に有機強塩基、又は有機強塩基と二酸化炭素を添加し、有機強塩基とプロトン性溶媒を含有する塩及びイオン液体、又は、有機強塩基とプロトン性溶媒と二酸化炭素を含有する塩及びイオン液体に変化させることを特徴とする全芳香族ポリアミド溶液の製造方法、
及び、
5.上記1に記載の全芳香族ポリアミド溶液を湿式紡糸用ドープとして用いることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非プロトン性有機極性溶媒に無機塩、有機塩などを併用しない全芳香族ポリアミド溶液が提供できるので、ハロゲン系溶媒で抽出する工程、該ハロゲン系溶媒を蒸留する工程などの回収工程が簡素化できる全芳香族ポリマー溶液が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明で使用する溶媒とは、有機強塩基、非プロトン性有機溶媒、プロトン性溶媒、塩、イオン性液体、共晶混合物などポリマー溶液中でポリマー以外を構成している成分である。また本発明における溶媒比率とはポリマー溶液中の、全溶媒に対する各溶媒(有機強塩基、非プロトン性有機溶媒、プロトン性溶媒、塩、イオン性液体、共晶混合物)の質量%である。
【0012】
<有機強塩基>
本発明における有機強塩基とは有機化合物からなる塩基であり、アミン系、ピリジン系、複素環アミン系、リン系などが挙げられる。本発明における有機強塩基は、強塩基性を示す有機塩基であり、例えば、グアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(DMP)、ファスファゼン塩基、プロアザフォスフォトラン塩基などが挙げられる。
【0013】
本発明の有機強塩基の共役酸の酸解離定数pKaは、10以上のものが好ましい。本発明における有機強塩基は本求核性が低く、塩基性が高いことが好ましく、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(DMP)がより好ましい。更に好ましくはジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)である。最も好ましくはジアザビシクロウンデセン(DBU)である。
【0014】
<非プロトン性有機溶媒>
本発明における非プロトン性有機溶媒とは有機化合物からなる水酸基などのプロトン供与性の基を持たない溶媒であり、例えば、炭酸エチル、炭酸プロピル、フロロ炭酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、1,2-炭酸ブチレン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、スルホラン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジイソプロピルスルフィド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロベンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジヒドロレボグルコセノン、α-アンゲリカラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-オクタノラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-テトラデカノラクトン、ε-カプロラクトン、ε-デカノラクトン、ジメチルイソソルビド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tertブチル、酢酸ラウリル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tertブチル、アセト酢酸ラウリル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、レブリン酸イソプロピル、レブリン酸ブチル、レブリン酸イソブチル、レブリン酸tertブチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アセトニトリル、スクシノニトリル、クメン、リモネン、メチルシクロヘキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアセトアミド、3-メトキシーN,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシーN,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、N、N-ジメチルデカンアミド、N、N-ジエチルヘキサンアミド、N、N-ジエチルベンズアミド、N、N-ジエチル-3-メチルベンズアミド、マロンアミド、ピロリジン、N-アセチル-2-ピロリジン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-プロピルピロリジン-2-オン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、1-ブチルピロリジン-2-オン、N-イソブチル-2-ピロリドン、N-tertブチル-2-ピロリドン、1-シクロヒキシル-2-ピロリドン、1-n-オクチル-2-ピロリドンなどのN-アルキル-2-ピロリドン、N-ビニルピロリドン、3-ブロモ-N-メチルピロリドン、3-ヒドロキシ-n-メチルピロリドン、5-ヒドロキシ-N-メチルピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、1、5-ジメチル-2-ピロリドン、5-メチル-N-エチルピロリドン、5-メチル-N-ヒドロキシエチルピロリドン、5-メチル-N-プロピルピロリドン、5-メチル-N-イソプロピルピロリドン、5-メチル-N-ブチルピロリドン、5-メチル-N-イソブチルピロリドン、5-メチル-N-シクロヘキチルピロリドン、5-メチル-N-フェニルピロリドン、5-エチル-2-ピロリドン、5-プロピル-2-ピロリドン、ピペリジン、2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ピペリドン、4-ピペリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-メチル-4-ピペリドン、N-エチル-4-ピペリドン、1、3-ジメチル-2-ピペリドン、1、5-ジメチル-2-ピペリドン、1、3-ジメチル-4-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-ビニル-ε-カプロラクタム、1-メチルイミダゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、モルホリン、4-メチルモルホリン、4-エチルモルホリン、4-プロピルホルホリン、4-ホルミルモルホリン、4-アセチルモルホリン、1、4-ジアセチルピペラジン、N、N-ジメチルグリシン、N、N-ジアセチルグリシン、ピリジン、2-ヒドロキシピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、3、4-ジメチルピリジン、2、6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、1-メチル-2-ピリドン、キノリン、1-メチル-2-キノリン、ヘキサメチルりん酸トリアミド、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などが挙げられる。
【0015】
本発明で使用する、少なくとも1種の溶媒である(a)10質量%以上の有機強塩基と、非プロトン性有機溶媒とを含有する共溶媒について、全溶媒に対する有機強塩基の溶媒比率は10質量%以上が必要であり、99.9質量%以下であることが好ましい。より好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以上~80質量%以下である。該含有比率が10質量%未満又は99.9質量%を超える場合、溶剤のポリマー溶解性が低くなる為好ましくない。
【0016】
<プロトン性溶媒>
本発明におけるプロトン性溶媒とは、水酸基を持ち、プロトン供与体となる事ができる溶媒であり、水、アルコール、アミノ酸、カルボン酸、スルホン酸、糖などが挙げられる。
【0017】
特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、2-メトキシエタノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、ブタン酸、3-ヒドロキシブタン酸、乳酸、コハク酸、レブリン酸、グリコール酸、シュウ酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸=2-エチルヘキシル、グルコースなどの糖、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、シトシン、グルタミン、セリン、トレオニン、セリンなどのアミノ酸、マレイミド、N-ヒドトキシコハク酸イミドなどが挙げられる。
【0018】
より好ましくは、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、2-メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸などが挙げられる。
【0019】
また、本発明では動植物由来のプロトン性溶媒、非プロトン性有機溶媒、有機強塩基も使用することができる。動植物由来のプロトン性溶媒、非プロトン性有機溶媒とは、植物由来の原料(糖/デンプン系バイオマス、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等を含むリグノセルロース系バイオマス)から合成される有機化合物や、動植物や微生物が産生する天然物のことである。動植物由来の溶媒と化石由来の溶媒は、分子量、熱物性(融点、沸点)などの物性に差を生じない。そこで、これらを区別するためには、一般的にバイオマス度が用いられている。
【0020】
バイオマス度とは、放射性炭素(14C、半減期5730年)測定によりバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。上層大気中で高エネルギー宇宙線によって14Nが14Cに変化され、大気中の二酸化炭素には14Cが一定量含まれている。光合成により二酸化炭素が炭水化物として植物中に固定化されるので、植物中には14Cが同程度含まれている。一方、化石由来の石油には14Cが実質的に存在しないことから植物由来の炭素と化石由来の炭素の区別ができる。バイオマス度の測定方法は一般的にASTM D6866などが知られている。したがって、本発明の動植物由来の有機溶媒もポリマー溶液中の有機溶媒を抽出した後、バイオマス度を測定することで区別できる。
【0021】
また特に限定されるものではないが、本発明における具体的な動植物由来の溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ギ酸、酢酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、ブタン酸、3-ヒドロキシブタン酸、乳酸、コハク酸、レブリン酸、グリコール酸、アクリル酸、シュウ酸、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、ジヒドロレボグルコセノン、ジホルミルキシロース、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-デカノラクトン、ε-カプロラクトン、ジメチルイソソルビド、アセトン、シクロペンタノン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸=2-エチルヘキシル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、炭酸プロピル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニルエチレン、1,2-炭酸ブチレン、グリセロール1,2-カルボナート、アセトニトリル、スクシノニトリル、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-プロピルピロリジン-2-オン、1-イソプロピルピロリジン-2-オン、1-ブチルピロリジン-2-オン、1-イソブチルピロリジン-2-オン、1-ペンチルピロリジン-2-オン、1-イソペンチルピロリジン-2-オン、1-n-オクチル-2-ピロリドンなどのN-アルキル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、1、5-ジメチル-2-ピロリドン、5-メチル-N-エチルピロリドン、5-メチル-N-ヒドロキシエチルピロリドン、5-メチル-N-プロピルピロリドン、5-メチル-N-イソプロピルピロリドン、5-メチル-N-ブチルピロリドン、5-メチル-N-イソブチルピロリドン、5-メチル-N-シクロヒキシルピロリドン、5-メチル-N-フェニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2,6-ルチジン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、シトシン、グルタミン、セリン、トレオニン、セリンなどのアミノ酸など、が例示できる。
【0022】
<塩、イオン性液体(イオン液体)>
本発明においては、
(b)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩
(c)有機強塩基とプロトン性溶媒から合成されるイオン性液体
を溶媒として少なくとも一つを使用することができる。
【0023】
塩は一般に酸と塩基との中和反応によって生じる化合物であり、酸由来のアニオンと塩基由来のカチオンとがイオン結合した化合物である。無機塩は無機酸由来のアニオンと無機塩基由来のカチオン結合したものである。例えば、無機塩としては塩化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0024】
一方、有機塩は酸もしくは塩基のどちらかが有機化合物由来のものである。例えば、酢酸リチウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸カリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、コリンクロリドなどが挙げられる。
【0025】
また塩化カルシウムのような無機塩は、アミド系有機溶媒中に3.2~10.5質量%の無機塩を添加することで、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維が溶解できることが知られているが、前述の通り、この方法においては、無機塩をハロゲン系溶媒で抽出する工程、該ハロゲン系溶媒を蒸留する工程などが含まれることとなり、回収工程が複雑化するという問題がある。
【0026】
そこで、本発明においては、上記(a)~(c)の溶媒を使用することにより、無機化合物由来のイオンを含有する塩を使用しなくても全芳香族ポリアミド溶液を得ることができるのである。ここで、無機化合物由来のイオンを含有する塩を使用しないとは、本発明で使用する溶媒に対する無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10000PPM以下となる状態を言い、より好ましくは無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量は溶媒に対し、1000PPM以下であり、更に好ましくは100PPM以下である。無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10000PPMを超えると本発明の効果が得られなくなる。
【0027】
本発明におけるイオン液体とは100℃以下の融点を持つ塩である。イオン液体としては非プロトン性イオン液体、プロトン性イオン液体、キレートイオン液体、無機イオン液体が挙げられる。
【0028】
非プロトン性イオン液体は活性プロトンを有さないイオン液体で、カチオンはイミダゾリウム、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、三級ホスホニウムなどであり、アニオンは嵩高くその電荷が非局在化したイオンの組合せなどである。
また、プロトン性イオン液体は活性プトロンを有するイオン液体で、ブレンステッド酸とブレンステッド塩基の中和反応で得られる。
【0029】
本発明においては、上述の(b)又は(c)の溶媒を使用することができるが、中でも有機強塩基と水、アルコール、カルボン酸から合成される塩及びイオン性液体が好ましい。より好ましくは、有機強塩基と、水又はアルコールから選ばれるどちらか一つ以上と、二酸化炭素、二硫化炭素、二酸化硫黄、硫化水素の群から選ばれる少なくともどれか一つ以上とを含有する塩及びイオン液体、又は有機強塩基とカルボン酸を含有する塩及びイオン液体、が好ましい。特に好ましくは、有機強塩基であるジアザビシクロウンデセン(DBU)と水と二酸化炭素から得られる塩、DBUとメタノールと二酸化炭素から得られる塩、DBUとエタノールと二酸化炭素から得られる塩、DBUと1-プロパノールと二酸化炭素から得られる塩、DBUと2-プロパノールと二酸化炭素から得られる塩、DBUとギ酸から得られる塩、DBUと酢酸から得られるイオン性液体、DBUとプロピオン酸から得られるイオン性液体などが挙げられる。
【0030】
本発明における有機強塩基とプロトン性溶媒から合成される塩、またはイオン性液体の全溶媒に対する溶媒比率は0.01~100質量%以下であることが好ましい。より好ましく0.1~100質量%である。更に好ましくは1.0~100質量%である。該溶媒比率が0.01質量%を下回る場合、ポリマー溶液の溶解性が低くなる為好ましくない。
尚、本発明においては、上述の(b)又は(c)の溶媒に、さらに非プロトン性有機溶媒が含まれていても良い。
【0031】
<共晶混合物>
本発明における共晶混合物とは、1種類以上の水素結合供与体及び1種類以上の水素結合受容体を混合させることで共晶融点降下して、個々の物質よりも融点が減少した混合物である。
【0032】
例えば、4-アミノ安息香酸とコリンクロリド、リンゴ酸とアラニン、リンゴ酸とグリシン、リンゴ酸とプロリン、シュウ酸とヒスチジン、シュウ酸とプロリン、尿素とアセトアミド、ε-カプロラクタムとアセトアミド、尿素とε-カプロラクタム、尿素とコリンクロリド、尿素とコリンブロミド、尿素とベタイン塩酸塩、グリセリンとコリンクロリド、チオ尿素とコリンクロリド、TMGとチオ尿素、DBNとチオ尿素、DBUとチオ尿素、DBUとメチルチオ尿素、DBUとジメチルチオ尿素、DBUとトリメチルチオ尿素、DBUと硝酸リチウム、DBUとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、DBUとジメチル尿素とエチレングリコール、グリセリンとDBUとコリンクロリド、グリセリンとDBNとコリンクロリド、DBUとイミダゾールのイオン液体とエチレングリコール、DBUとインドールのイオン液体とエチレングリコール、DBUと1,2,4-トリアゾールのイオン液体とエチレングリコールなどの組合せなどが報告されている。
本発明のポリマー溶液は共晶混合物を含有しても差し支えない。
【0033】
<深共晶溶媒>
本発明における深共晶溶媒は、1種類以上の水素結合供与体及び水素結合受容体をある混合比で混合することで共晶融点降下して室温で液体となる混合物である。
【0034】
例えば、リンゴ酸とアラニン(モル比1:1)、リンゴ酸とグリシン(モル比1:1)、リンゴ酸とプロリン(モル比1:2)、シュウ酸とヒスチジン(モル比9:1)、シュウ酸とプロリン(モル比1:1)、尿素とアセトアミド(モル比1:2)、ε-カプロラクタムとアセトアミド(モル比1:1)、尿素とε-カプロラクタム(モル比1:3)、尿素とコリンクロリド(モル比2:1)、尿素とコリンブロミド(モル比2:1)、尿素とベタイン塩酸塩(モル比4:1)、グリセリンとコリンクロリド(モル比2:1)、チオ尿素とコリンクロリド(モル比2:1)、TMGとチオ尿素(モル比2:1)、DBNとチオ尿素(モル比2:1)、DBUとチオ尿素(モル比2:1)、DBUとメチルチオ尿素(モル比2:1)、DBUとジメチルチオ尿素(モル比2:1)、DBUとトリメチルチオ尿素(モル比2:1)、DBUと硝酸リチウム(モル比3:1)、DBUとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(モル比4:1)、グリセリンとDBUとコリンクロリド(モル比1:2:6)、グリセリンとDBNとコリンクロリド(モル比1:2:6)、DBUとイミダゾールのイオン液体とエチレングリコール(モル比7:3)、DBUとインドールのイオン液体とエチレングリコール(モル比7:3)、DBUと1,2,4-トリアゾールのイオン液体とエチレングリコール(モル比7:3)などの組合せが報告されている。
本発明のポリマー溶液は深共晶溶媒を含有していても差し支えない。
【0035】
<全芳香族ポリアミド>
本発明のポリマー溶液は、特に全芳香族ポリアミドを再生する場合などに好適に使用できる。
全芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価以上の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。また、芳香族基にはベンゼン環がパラ位またはメタ位で結合し、これらの2価以上の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基、シアノ基等が含まれていてもよい。
【0036】
また全芳香族ポリアミドはパラ型、メタ型と分類されるが、パラ型全芳香族ポリアミドは、パラ型の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と、パラ型の芳香族ジアミン成分とからなるパラ型全芳香族ポリアミドを主成分とする全芳香族ポリアミドであり、主成分とは全繰り返し単位が50モル%以上を指す。メタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型の芳香族ジカルボン酸クロライド成分と、メタ型の芳香族ジアミン成分とからなるメタ型全芳香族ポリアミドを主成分とする全芳香族ポリアミドであり、主成分とは全繰り返し単位が50モル%以上を指す。
【0037】
[全芳香族ポリアミドの原料]
(芳香族カルボン酸クロライド成分)
上記全芳香族ポリアミドに使用される芳香族カルボン酸クロライド成分としては、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,5-フランジカルボン酸クロライド、3,4-フランジカルボン酸クロライド、ピリジン-2,6-ジカルボン酸クロライド、1,3,5-ベンゼンジカルボン酸ジクロライド、2,2’-ビス(5-クロロホルミル 2-フリル)プロパン、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸ジクロライド、などが挙げられる。またこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロロイソフタル酸クロリド、3-メトキシイソフタル酸クロリドなどを用いても構わない。
【0038】
(芳香族アミン成分)
上記全芳香族ポリアミドに使用される芳香族アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,5-ビス(アミノメチル)フラン、1,3,5-ベンゼントリアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,5-ジアミノ安息香酸、メチルジバニリルアミン、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。またこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、2,6-ジアミノクロロベンゼンなどを用いても構わない。
【0039】
<全芳香族ポリアミドの製造方法>
上記全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、非プロトン性極性アミド系有機溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライド(以下「酸クロライド」ともいう)成分と芳香族ジアミン成分とを溶液重合、または界面重合などにより反応せしめることにより得ることができる。
【0040】
(重合溶媒)
全芳香族ポリアミドの製造において使用される重合溶媒としては、上記の非プロトン性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独もしくは2種以上の混合溶媒でも使用できる。また重合溶媒は動植物由来の有機溶媒も使用できる。
【0041】
溶液重縮合の場合は重合後の全芳香族ポリアミドの溶解性の観点から、非プロトン性有機極性溶媒が好ましく、反応性の観点から、アミド系有機溶媒がより好ましい。例えば、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシーN,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、N、N-ジメチルデカンアミド、N、N-ジエチルヘキサンアミド、N、N-ジエチルベンズアミド、N、N-ジエチル-3-メチルベンズアミド、マロンアミド、ピロリジン、N-アセチル-2-ピロリジン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-プロピルピロリジン-2-オン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、1-ブチルピロリジン-2-オン、N-イソブチル-2-ピロリドン、N-tertブチル-2-ピロリドン、1-シクロヒキシル-2-ピロリドン、1-n-オクチル-2-ピロリドンなどのN-アルキル-2-ピロリドン、N-ビニルピロリドン、3-ブロモ-N-メチルピロリドン、3-ヒドロキシ-n-メチルピロリドン、5-ヒドロキシ-N-メチルピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、1、5-ジメチル-2-ピロリドン、5-メチル-N-エチルピロリドン、5-メチル-N-ヒドロキシエチルピロリドン、5-メチル-N-プロピルピロリドン、5-メチル-N-イソプロピルピロリドン、5-メチル-N-ブチルピロリドン、5-メチル-N-イソブチルピロリドン、5-メチル-N-シクロヘキチルピロリドン、5-メチル-N-フェニルピロリドン、5-エチル-2-ピロリドン、5-プロピル-2-ピロリドン、ピペリジン、2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ピペリドン、4-ピペリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-メチル-4-ピペリドン、N-エチル-4-ピペリドン、1、3-ジメチル-2-ピペリドン、1、5-ジメチル-2-ピペリドン、1、3-ジメチル-4-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-ビニル-ε-カプロラクタム、1-メチルイミダゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。またDBU、DBNなどの有機強塩基、またはテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの非プロトン性有機溶媒との混合溶媒を使用しても良い。
【0042】
[その他重合条件等]
生成する全芳香族ポリアミドの末端は、封止することもできる。末端封止剤を用いて末端を封止する場合には、例えば、フタル酸クロライドおよびその置換体、アニリンおよびその置換体等を末端封止剤として用いることができる。また、生成する塩化水素のごとき酸を捕捉するために、脂肪族や芳香族のアミン等を併用することもできる。
【0043】
上記の全芳香族ポリアミドの製造方法により得られたポリマー溶液を、水などの貧溶媒中に浸漬し、凝固させること(湿式凝固)、又は乾燥させ溶媒を飛ばしてポリマーを凝固させること(乾式凝固)で全芳香族ポリアミドが得られる。湿式凝固、乾式凝固させて粉状、フィブリド状、糸状、フィルム状のポリマー組成物にすることも可能である。また上記の全芳香族ポリアミドの製造方法により得られたポリマー溶液そのまま使用することもできる。
【0044】
なお、本発明で使用されるポリマーの分子量は、糸、フィルム、シート、塗工膜、多孔質膜、粒子等のポリマー成型物を形成し得る程度であれば特に限定されるものではないが、1万~100万程度が好ましい。1万未満の場合はポリマー成型物の強度が低くなる為好ましくない。100万以上の場合は、ポリマー溶液の取扱性が低い為好ましくない。
【0045】
また、本発明のポリマー溶液はポリアミド、全芳香族ポリアミドの他に、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリイミド等をブレンドしたポリマーを使用しても良い。
【0046】
[ポリマー溶液の製造方法]
本発明においては、上記全芳香族ポリアミドを、前述の(a)~(c)に記載の溶媒の少なくとも1種に溶解させることにより、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量が10000PPM以下の全芳香族ポリアミド溶液を得ることができる。
本発明のポリマー溶液には、性能向上の為、難燃剤、着色剤、艶消剤、耐光剤、導電剤などの添加剤が含有されていても良い。
【0047】
本発明のポリマー溶液におけるポリマー濃度は特に制限されるものではないが、0.1~30質量%が好ましい。更に好ましくは1~15質量%である。該ポリマー濃度が0.1質量%未満の場合には、糸状、フィルム状に成型がしにくくなる為好ましくない。また該ポリマー濃度が30質量%を超える場合、ポリマー溶液の取り扱い性が低くなったり、ポリマーが溶解しきれずに析出するため好ましくない。
【0048】
[ポリマー溶液からなる無機粒子含有バインダー液の調整方法]
本発明のポリマー溶液に無機粒子を混ぜ合わせて、無機粒子含有のポリマー溶液(バインダー液)としても使用できる。無機粒子としては湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム及びフッ化カルシウムなどが挙げられる。
【0049】
該無機粒子の含有量は、重合体100部に対して150~1900部が好ましい。無機粒子の含有量が150部より少ないと、オレフィン膜が収縮する際の収縮応力に抵抗する粒子間の衝突が起こりにくく好ましくない。一方、無機粒子の含有量が1900部を越える場合には無機粒子に対する重合体の量が少なすぎるため、粒子が担持されずに脱落する、所謂粉落ちが発生するため、好ましくない。
【0050】
バインダー液のポリマー濃度は0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。ポリマー濃度が0.5質量%未満の場合にはポリマー量が少なく、粉落ちが発生する恐れがあり好ましくない。一方、ポリマー濃度が10質量%以上の場合にはポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて、適切な厚みに塗工することが困難となる為好ましくない。
【0051】
上記ポリマー溶液に疎水系添加剤を加えても良い。疎水系添加剤は公知のフッ素系、有機シリコーン系、オレフィン系の添加剤を使用することができる。これらの内、撥水効果の高いフッ素系の添加剤が好ましい。その添加量は塗工液の溶媒量に対して0.5~10重量パーセントが好ましい。添加量が10重量パーセントを超えると、凝固速度が著しく低下し、生産性が悪化するため好ましくない。一方、添加量が0.5重量パーセントより小さい場合には撥水効果が少なく、塗工層に水が侵入し、塗工層の密度を低下させるため、好ましくない。好ましい添加量は1~9重量パーセント、さらに好ましくは2~8重量パーセントである。
【0052】
[ポリマー溶液からなる繊維防糸方法、フィルム成型方法]
本発明のポリマー溶液を用いて繊維紡糸、フィルム成型することもできる。紡糸、フィルム成型方法は、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、乾式凝固または湿式凝固が挙げられる。乾式凝固の場合、乾燥温度は80℃~250℃が好ましい。更に好ましくは150~250℃である。80℃未満の場合、乾燥速度が遅いので、好ましくない。250℃以上の場合、有機溶媒の取扱上好ましくない。
【0053】
また湿式凝固の場合、凝固液の液組成としてはポリマー溶液の貧溶媒であることが必要である。凝固液の組成は必ずしも単一である必要はない。特に限定されるものではないが、本発明における具体的な凝固液の組成としては、例えば水、アルコール、水と本発明の溶剤の混合溶液、又はアルコールと本発明の溶剤の混合溶液などが挙げられる。溶媒回収の効率性の観点から、水と本発明の溶剤の混合溶液、又はアルコールと本発明の溶剤の混合溶液が好ましい。
【0054】
凝固して形成した繊維状ポリマー、フィルム状ポリマーは水洗して残留溶媒を除去してもよい。また特に限定されるものではないが、水、アルコール、水と本発明の溶剤の混合溶液、又はアルコールと本発明の溶剤の混合溶液などが挙げられる。溶媒回収の効率性の観点から、水と本発明の溶剤の混合溶液、又はアルコールと本発明の溶剤の混合溶液などが挙げられる。溶媒回収の効率性の観点から、水と本発明の溶剤の混合溶液、又はアルコールと本発明の溶剤の混合溶液が好ましい。水洗浴の温度は10~100℃が好ましい。10℃以下の場合、水洗速度が下がる為、好ましくない。100℃以上は水蒸発を抑える必要がある為好ましくない。
【0055】
水洗後は80℃以上の温度で乾燥する。乾燥温度は80~200℃が好ましい。乾燥後の繊維状ポリマーもしくはフィルム状ポリマーはカットしてもよいし、そのまま使用してもよい。
凝固後の繊維状ポリマー、フィルム状ポリマー、もしくは水洗・乾燥後の繊維状ポリマー、フィルム状ポリマーは延伸、熱処理しても良い。
【実施例0056】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。また、実施例中の各物性は以下の方法により測定した。
【0057】
(1)重量平均分子量(Mw)
分子量分布(重量平均分子量(Mw)および分子量多分散度(Mw/Mn)など)測定を、以下の測定条件によりゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
装置名 :高速液体クロマトグラフ LC-20Aシリーズ(株式会社島津製作所)
カラムオーブン :CTO-20A
移動相 :NMP
オートサンプラ :SIL-20AHT
LCワークステーション:LC solution
流量 :0.3ml/分
示差屈折計検出器 :RID-10A
オーブン温度 :60℃
分子量標準試料 :ポリスチレン
【0058】
(2)溶媒への繊維の溶解性
繊維を溶媒中に投入し、マグネットスターラーを用いて120℃で約3時間攪拌した後の溶液の透明性や均一性について目視で判断した。
【0059】
(3)全芳香族ポリアミド溶液中の、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量
全芳香族ポリアミド溶液を精密測りで1.000gに計量し、るつぼに入れた。るつぼに入れた全芳香族ポリアミド溶液を100℃の真空乾燥機で5h加熱した後、電気炉にて750℃で3時間加熱した。るつぼ内の残渣量を測定して、これを無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量とした。
【0060】
<比較例1>
[全芳香族ポリアミド(コポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド)の重合]
水分率が100ppm以下のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)94.0g、パラフェニレンジアミン1.081g、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル2.002gを、常温下で反応容器に入れ、窒素雰囲気中で溶解混合した後、攪拌しながらテレフタル酸クロライド4.060gを添加した。引き続き、60℃で重合反応せしめることにより、透明で粘稠なポリマー溶液を得た。次いで、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を6.586g添加し、中和反応を行うことにより重合を終了させ、コポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド(重量平均分子量59万)溶液を得た。
【0061】
[全芳香族ポリアミド(コポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド)繊維の製造]
重合で得られたコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド(重量平均分子量59万)溶液を1000ホールの繊維紡糸用ノズルから吐出させ、エアーギャップ約4mmを介してNMP濃度30wt%の水溶液中に紡出させ凝固させた後(半乾半湿式紡糸法)、水洗、乾燥し、次いで、温度500℃下で10倍に延伸された後、巻き取ることにより、単糸繊度が1.67dtex、フィラメント数1000のコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を得た。
【0062】
[コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維の溶解]
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)10.0g(0.101mol)に、ギロチンカッターで長さ3mmにカットしたコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を0.210g投入した。マグネットスターラーを用いて120℃で約3時間攪拌した。混合液は不透明でコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維が溶解しなかった。
【0063】
<比較例2>
比較例1において溶媒をジメチルスルホキシド(DMSO)10.0g(0.128mol)に変更した以外は、比較例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を投入、攪拌した。混合液は不透明でコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維は溶解しなかった。
【0064】
<比較例3>
比較例1において溶媒をジアザビシクロウンデセン(DBU)10.0g(0.066mol)に変更した以外は、比較例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を投入、攪拌した。混合液は不透明でコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維は溶解しなかった。
【0065】
<実施例1>
比較例1において、溶媒をジメチルスルホキシド(DMSO)3.4g(0.044mol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)6.6g(0.043mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入し、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0066】
また得られたコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液を1.000gに計量し、るつぼに入れ、電気炉にて750℃、3hで加熱した。るつぼ内の残渣を計量すると、0.002g(2000PPM)であり、無機化合物由来のイオンを含有する塩の含有量は10000PPM以下であることを確認した。
【0067】
<実施例2>
実施例1において、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維の量を0.420gに変更した以外実施例1と同様に実施した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0068】
<実施例3>
実施例1において、溶媒をジメチルスルホキシド(DMSO)1.0g(0.013mol)ジアザビシクロウンデセン(DBU)9.0g(0.059mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様にコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維を投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0069】
<実施例4>
実施例1において、溶媒をジメチルスルホキシド(DMSO)5.0g(0.064mol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)5.0g(0.033mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0070】
<実施例5>
実施例1において、溶剤をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)4.0g(0.040molとにジアザビシクロウンデセン(DBU)6.0g(0.039mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0071】
<実施例6>
実施例1において、溶剤をN、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)3.7g(0.042mol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)6.3g(0.041mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は半透明になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0072】
<実施例7>
実施例1において、溶媒をジメチルスルホキシド(DMSO)3.9g(0.050mol)とジアザビシクロノネン(DBN)6.1g(0.049mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.630gを投入、攪拌した。混合溶液は透明になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0073】
<比較例4>
実施例1において、溶媒を水(HO)1.1g(0.061mol)とジアザビシクロウンデセン(DBU)8.9g(0.058mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。繊維は変色したが溶解しなかった。
【0074】
<実施例8>
高圧反応装置オートクレーブに水(HO)とジアザビシクロウンデセン(DBU)をモル当量づつ投入して攪拌翼で攪拌して得られた共溶媒を、25℃でオートクレーブ内に0.5MPaの二酸化炭素を封入して30分放置した。水とDBUと二酸化炭素が反応して塩が生成した。生成した塩を2.4g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)7.6g(0.050mol)を混合して実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0075】
<実施例9>
実施例8において生成した塩を2.4g、ジメチルスルホキシド(DMSO)7.6g(0.098mol)を混合して実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0076】
<比較例5>
実施例1において、溶剤をメタノール(MeOH)0.4g(0.012mol)にジアザビシクロノネン(DBN)1.5g(0.012mol)を混合して得られた共溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維は溶解しなかった。
【0077】
<実施例10>
比較例5において、溶剤をメタノール(MeOH)0.4g(0.012mol)にジアザビシクロウンデセン(DBN)1.5g(0.012mol)を混合して得られた共溶媒に二酸化炭素ボンベを用いて1分間バブリングした。得られた溶剤を実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0078】
<実施例11>
実施例1において、溶剤を酢酸(AcOH)2.8g(0.047mol)にジアザビシクロウンデセン(DBU)7.2g(0.047mol)を混合して得られたイオン液体に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.600gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0079】
<実施例12>
実施例1において、溶剤を酢酸(AcOH)0.7g(0.012mol)にジアザビシクロウンデセン(DBU)9.3g(0.061mol)を混合して得られた溶剤に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.600gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0080】
<実施例13>
実施例1において、溶剤を酢酸(AcOH)1.2g(0.020mol)、ジアザビシクロウンデセン(DBN)2.5g(0.020mol)を混合して得られた溶剤に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維0.210gを投入、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
【0081】
<実施例14>
[全芳香族ポリアミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド)の製造]
メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドを公知の方法(界面重合、特公昭47-10863号公報)で重合させて、ポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末(重量平均分子量70万)を得た。
【0082】
[ポリメタフェニレンイソフタルアミドの溶解]
実施例1において、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維をポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末に変更した以外は、実施例1と同様に実施してポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末1.100gを添加し、攪拌した。混合溶液は透明均一になり、ポリメタフェニレンイソフタルアミド溶液が得られた。
【0083】
<実施例15>
[全芳香族ポリアミド(コポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド)の製造]
水分率が100ppm以下のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)94.0g、パラフェニレンジアミン1.081g、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル2.002gを、常温下で反応容器に入れ、窒素雰囲気中で溶解混合した後、攪拌しながらテレフタル酸クロライド4.060gを添加した。引き続き、60℃で重合反応せしめることにより、透明で粘稠なポリマー溶液を得た。次いで、22.5%の水酸化カルシウムのNMPスラリー溶液を6.586g添加し、中和反応を行うことにより重合を終了させ、コポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド(重量平均分子量23万)溶液を得た。得られたコポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液をNMP濃度30wt%の水溶液中にて粒状に凝固した。凝固後の水で3回洗浄し、コポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉末を得た。
【0084】
[全芳香族ポリアミド(コポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド)の溶解]
実施例1において、コポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維をコポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉末に変更した以外は、実施例1と同様に実施してコポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド粉末0.210gを添加し攪拌した。混合溶液は透明均一になり、コポリパラフェニレン・4,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド溶液が得られた。
上記の結果をまとめて表1に示す。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、非プロトン性有機極性溶媒に無機塩、有機塩などを併用することなく全芳香族ポリアミド溶液が提供できるので、ハロゲン系溶媒で抽出する工程、該ハロゲン系溶媒を蒸留する工程などの回収工程が簡素化できる。