(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051833
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】表示装置及びソースドライバ
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G09G3/20 623B
G09G3/20 670M
G09G3/20 611C
G09G3/20 623X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158180
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今吉 崇博
【テーマコード(参考)】
5C080
【Fターム(参考)】
5C080BB05
5C080DD12
5C080FF09
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
(57)【要約】
【課題】データ線の時分割駆動に用いるセレクト信号を出力するバッファ間での貫通電流の発生を抑える。
【解決手段】階調電圧信号を出力する複数のソースドライバと、出力された階調電圧信号を複数のデータ線に切替可能に供給するセレクタと、を含む。複数のソースドライバは、切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び第2の出力バッファを有する第2のドライバを含む。第1の出力バッファは、切替信号の出力端を介して接続され且つ相補的にオンオフする第1及び第2トランジスタを有する。第2の出力バッファは、切替信号の出力端を介して接続され且つ相補的にオンオフする第3及び第4トランジスタを有する。第1及び第2の出力バッファの出力端は電気的に接続され、第1のドライバは、第1及び第2トランジスタが同時にオフとなるハイインピーダンス期間が生じるように、各トランジスタの印加電圧を制御するバッファ制御回路を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有するディスプレイと、
各々が前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力するn個のソースドライバ(nは、2以上の整数)と、
切替信号の供給を受け、前記n個のソースドライバの各々から出力された前記階調電圧信号を前記2以上のデータ線に前記切替信号に応じて切替可能に夫々供給するセレクタと、
を含む表示装置であって、
前記n個のソースドライバは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第nのソースドライバを含み、
前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けてオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、
前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、
前記第1のソースドライバは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタが同時にオフとなるハイインピーダンス期間が生じるように、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端に印加される電圧を制御するバッファ制御回路を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記バッファ制御回路は、第1期間に亘って前記第1トランジスタがオフとなるように制御し、前記第1期間よりも遅く開始し且つ前記第1期間よりも早く終了する第2期間において前記第2トランジスタがオンとなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記nは3以上の整数であり、
前記n個のソースドライバは、1の方向に沿って順に配列され且つ隣接するソースドライバ同士がカスケード接続された第1~第nのソースドライバから構成され、
前記第1のソースドライバは、第1のカスケード信号を第2のソースドライバに供給し、当該第1のカスケード信号が前記第2のソースドライバから前記第nのソースドライバまで複数のソースドライバ間を順次供給され且つ前記第nのソースドライバで折り返されて前記複数のソースドライバ間を反対方向に前記第1のソースドライバまで順次供給されることにより生成された第2のカスケード信号を受信し、
前記バッファ制御回路は、前記第1のカスケード信号及び前記第2のカスケード信号に基づいて、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端に印加される電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記バッファ制御回路は、前記第1のカスケード信号及び前記第2のカスケード信号の否定論理積を前記第1トランジスタの制御信号として出力する否定論理積回路と、前記第1のカスケード信号及び前記第2のカスケード信号の否定論理和を前記第2トランジスタの制御信号として出力する否定論理和回路と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力するソースドライバであって、
前記ソースドライバから出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に切替信号に応じて切替可能に供給するセレクタに接続され、各々が前記階調電圧信号を出力するn個のドライバIC(nは、2以上の整数)を含み、
前記n個のドライバICは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のドライバIC及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第nのドライバICを含み、
前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けてオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、
前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、
前記第1のドライバICは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタが同時にオフとなるハイインピーダンス期間が生じるように、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端に印加される電圧を制御する制御回路を有することを特徴とするソースドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びソースドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置における表示パネルの横長化に伴い、ソースドライバを複数のドライバICによって構成する仕様が主流となっている。複数のドライバICは、ゲート線の延伸方向に沿って配置され、例えば隣接するドライバIC同士がカスケード接続されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、チップ面積の増大を抑えるため、ドライバICに設けられた出力アンプがそれぞれ複数のデータ線を駆動できるように、データ線の時分割駆動を行う表示装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-301946号公報
【特許文献2】特開2008-107655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データ線の時分割駆動を行う表示装置では、ソースドライバと表示パネルとの間に設けられたマルチプレクスセレクタが、ソースドライバから供給されたセレクト信号に基づいて、駆動対象となるデータ線の切り替えを順次行う。ソースドライバが複数のドライバICから構成されている場合、ゲート線の延伸方向に沿って配置された複数のドライバICのうちの両端に位置するドライバIC(以下、左端のドライバIC及び右端のドライバICと称する)が、セレクト信号をマルチプレクスセレクタにそれぞれ供給する。
【0006】
セレクト信号を出力するバッファは、例えば相補的に動作するように各々のドレイン同士が接続されたPチャネル型MOSトランジスタ(以下、PMOSと称する)及びNチャネル型MOSトランジスタ(以下、NMOSと称する)から構成されている。左端のドライバICのバッファの出力及び右端のドライバICのバッファの出力は、マルチプレクスセレクタを介して互いに接続され、パネル上でショートされている。
【0007】
左端のドライバIC及び右端のドライバICの各々のバッファは、互いに同じタイミングでPMOS及びNMOSが相補的にオン及びオフとなるように動作することが好ましい。しかし、各ドライバICに供給される映像信号の信号遅延等により、各々のバッファの動作タイミングに時間差が生じる場合がある。この時間差に起因して、左端のドライバICのバッファの出力と右端のドライバICのバッファの出力との間で、貫通電流が発生するおそれがある。
【0008】
例えば、左端のドライバICのバッファを構成するPMOSがオンになるタイミングと右端のドライバICのバッファを構成するPMOSがオンになるタイミングとに時間差が生じた場合、左端のドライバICではPMOSがオンであるにもかかわらず、右端のドライバICではNMOSがオンになる時間が発生し、バッファ間で貫通電流が発生する。同様に、右端のドライバICではPMOSがオンであるにもかかわらず、左端のドライバICではNMOSがオンになる時間が発生し、バッファ間で貫通電流が発生する。
【0009】
このように、両端のドライバICのバッファの動作タイミングに時間差が生じることに起因して、バッファ間で貫通電流が発生するという問題があった。また、貫通電流の発生により、EMI(Electro Magnetic Interference)ノイズが発生するおそれがあるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、複数のドライバICからなるソースドライバからのセレクト信号に基づいてデータ線を時分割で駆動する表示装置において、セレクト信号を出力するバッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表示装置は、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有するディスプレイと、各々が前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に映像データ信号に基づいて階調電圧信号を出力するn個のソースドライバ(nは、2以上の整数)と、切替信号の供給を受け、前記n個のソースドライバの各々から出力された前記階調電圧信号を前記2以上のデータ線に前記切替信号に応じて切替可能に夫々供給するセレクタと、を含む表示装置であって、前記n個のソースドライバは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のソースドライバ及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第nのソースドライバを含み、前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けてオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、前記第1のソースドライバは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタが同時にオフとなるハイインピーダンス期間が生じるように、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端に印加される電圧を制御するバッファ制御回路を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るソースドライバは、複数本のデータ線及び複数本のゲート線と、前記複数本のデータ線と前記複数本のゲート線との交差部の各々にマトリクス状に設けられた複数個の画素部と、を有する表示パネルに接続され、映像データ信号に基づいて階調電圧を出力するソースドライバであって、前記ソースドライバから出力された前記階調電圧信号を前記複数本のデータ線のうちの2以上のデータ線に切替信号に応じて切替可能に供給するセレクタに接続され、各々が前記階調電圧信号を出力するn個のドライバIC(nは、2以上の整数)を含み、前記n個のドライバICは、前記切替信号を出力する第1の出力バッファを有する第1のドライバIC及び前記切替信号を出力する第2の出力バッファを有する第nのドライバICを含み、前記第1の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第1のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けてオン及びオフとなる第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第2の出力バッファは、前記切替信号を出力する出力端である第2のノードを介して縦列に接続され且つ各々の制御端に電圧印加を受けて相補的にオン及びオフとなる第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、前記第1の出力バッファ及び前記第2の出力バッファは、各々の前記出力端同士が電気的に接続され、前記第1のドライバICは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタが同時にオフとなるハイインピーダンス期間が生じるように、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端に印加される電圧を制御する制御回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示装置によれば、データ線の時分割駆動における切り替えを制御するためのセレクト信号を出力するバッファ間における貫通電流の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】実施例1における両端のドライバICのバッファの構成を示す図である。
【
図2B】各バッファにおける入力信号の信号波形を示すタイムチャートである。
【
図3A】バッファ制御回路を有しない比較例のバッファの構成を示す図である。
【
図3B】バッファ制御回路を有しない比較例の信号波形を示すタイムチャートである。
【
図4】実施例2の表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図5A】実施例2における両端のドライバICのバッファの構成を示す図である。
【
図5B】各バッファにおける入力信号の信号波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例1に係る表示装置100の構成を示すブロック図である。表示装置100は、表示ディスプレイ11、マスターIC12、スレーブIC13-1~13-n(nは、2以上の整数)(、マルチプレクスセレクタ14、GIP15L及び15Rを含む。
【0017】
表示ディスプレイ11は、複数の画素部がマトリクス状に配置された基板から構成されている。表示ディスプレイ11は、水平走査ラインである複数本のゲート線S1~Smと、これに交差して直交するように配された複数本のデータ線D1~Dnと、を有する。画素部の各々は、ゲート線S1~Sm及びデータ線D1~Dnの交差部に設けられている。
【0018】
マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、ソースドライバを構成するドライバIC群である。マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、ゲート線S1~Smの延伸方向に沿って配列されている。
【0019】
マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの各々は、外部から供給された映像信号VDに基づいて、画素部に印加するための階調電圧信号を生成する。マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nは、生成した階調電圧信号をデータ線D1~Dnに出力する。映像信号VDは、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)によるデータ伝送によって供給される。
【0020】
マルチプレクスセレクタ14は、表示ディスプレイ11とマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nとの間に設けられ、マスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの出力アンプから出力された階調電圧信号を、複数のデータ線(本実施例では、1つの出力アンプにつき3本のデータ線)に切替可能に供給するセレクタである。マルチプレクスセレクタ14は、マスターIC12から供給されたセレクト信号S1L及びスレーブIC13-nから供給されたセレクト信号S1Rに基づいて切り替えを行う。これにより、データ線D1~Dnの時分割駆動が行われる。
【0021】
GIP15L及び15Rは、GIP(Gate In Panel)技術を用いてパネル上に搭載されたゲートドライバである。GIP15Lは、マスターIC12からゲート制御信号の供給を受け、ゲート制御信号に含まれるクロックタイミングに基づいて、ゲート線S1~Smにゲート信号を順次供給する。また、GIP15Rは、スレーブIC13-nからゲート制御信号の供給を受け、ゲート制御信号に含まれるクロックタイミングに基づいて、ゲート線S1~Smにゲート信号を順次供給する。
【0022】
ソースドライバを構成するマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nの各々は、階調電圧信号を出力するための複数の出力アンプ(図示せず)を有している。本実施例では、出力アンプ1つ毎に3本のデータ線が切替可能に接続されており、マルチプレクスセレクタ14の切り替え動作に応じてデータ線の時分割駆動を行うことが可能に構成されている。
【0023】
ゲート線S1~Smの延伸方向に配列されたマスターIC12及びスレーブIC13-1~13-nのうち、両端に位置するマスターIC12及びスレーブIC13-nは、マルチプレクスセレクタ14の切り替えタイミングを制御するセレクト信号S1L及びS1Rを、マルチプレクスセレクタ14に供給する。
【0024】
マスターIC12は、セレクト信号S1Lを出力するためのバッファBUF1を有する。また、スレーブIC13-nは、セレクト信号S1Rを出力するためのバッファBUFnを有する。
【0025】
また、マスターIC12は、バッファ制御回路21を有する。バッファ制御回路21は、バッファBUF1に印加する電圧を制御する電圧制御回路である。
【0026】
図2Aは、本実施例におけるバッファBUF1及びBUFnの構成及びバッファ制御回路21を示す図である。
【0027】
バッファBUF1は、トランジスタPM1及びNM1から構成されている。
【0028】
トランジスタPM1は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタPM1のソースは、電源電圧VDDの供給ラインに接続されている。トランジスタPM1のゲートには、入力信号INが供給される。
【0029】
トランジスタNM1は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタNM1のソースは、接地されている。トランジスタPM1及びNM1の各々のドレインは、ノードn1を介して互いに接続されている。トランジスタNM1のゲートには、入力信号INBが供給される。
【0030】
ノードn1は、バッファBUF1の信号出力端である。すなわち、ノードn1からセレクト信号S1Lが出力され、マルチプレクスセレクタ14に供給される。
【0031】
バッファ制御回路21は、バッファBUF1の動作を制御する制御回路である。バッファ制御回路21は、入力信号IN0に基づいて、トランジスタPM1のゲートに印加する入力信号IN及びトランジスタNM1のゲートに印加する入力信号INBを生成する。
【0032】
バッファBUFnは、トランジスタPM2及びNM2から構成されている。本実施例では、バッファBUF1を構成するトランジスタPM1及びNM1と、バッファBUFnを構成するトランジスタPM2及びNM2は、同じサイズ(ゲート幅、ゲート長)を有する。
【0033】
トランジスタPM2は、第1導電型であるPチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、PMOSトランジスタ)である。トランジスタPM2のソースは、電源電圧VDDの供給ラインに接続されている。
【0034】
トランジスタNM2は、第2導電型であるNチャネル型のMOSトランジスタ(すなわち、NMOSトランジスタ)である。トランジスタNM2のソースは、接地されている。トランジスタPM2及びNM2の各々のドレインは、ノードn2を介して互いに接続されている。ノードn2は、バッファBUFnの信号出力端である。すなわち、ノードn2からセレクト信号S1Rが出力され、マルチプレクスセレクタ14に供給される。
【0035】
トランジスタPM2及びNM2の各々のゲートには、インバータINV1が接続され、インバータINV1を介して共通の入力信号INnが印加される。入力信号INnの信号レベルに応じて、トランジスタPM2及びNM2は相補的にオン及びオフとなる。
【0036】
バッファBUF1の信号出力端であるノードn1及びバッファBUFnの信号出力端であるノードn2は、表示ディスプレイ11を構成するパネル上で、例えばマルチプレクスセレクタ14の配線を介してショートされている。
図2Aでは、ノードn1とノードn2とがショートされた接続部分を、模式的に接続ラインL1として示している。
【0037】
図2Bは、本実施例のバッファBUF1及びBUFnにおける各信号の信号波形の例を示すタイムチャートである。
【0038】
入力信号IN0は、期間T0に亘って論理レベル1(Hレベル)となる信号である。入力信号IN0は、本実施例のようなバッファ制御回路21を有しない場合にトランジスタPM1及びNM1のゲートに印加される信号であり、例えばマスターIC12の外部から映像信号VDとともに供給されるクロック信号に基づいて生成される。
【0039】
入力信号INBは、入力信号IN0の立ち上がりとともに立ち下がり、入力信号IN0の立ち下りよりも遅く立ち上がる信号である。入力信号INBは、期間T0よりも長い期間T1に亘って論理レベル0となる。入力信号INBは、トランジスタNM1のゲートに印加される。入力信号INBが論理レベル0(Lレベル)の間、トランジスタNM1はオフ状態となる。また、入力信号INが論理レベル1の間、トランジスタNM1はオン状態となる。
【0040】
入力信号INは、入力信号IN0の立ち上がりよりも遅く立ち下がり、入力信号IN0の立ち下りとともに立ち上がる信号である。入力信号INは、期間T1よりも短い期間T2に亘って論理レベル0となる。入力信号INは、トランジスタPM1のゲートに印加される。入力信号INが論理レベル0の間、トランジスタPM1はオン状態となる。また、入力信号INが論理レベル1の間、トランジスタPM1はオフ状態となる。
【0041】
入力信号INBは、入力信号INの立ち下がりよりも早く立ち下がり、入力信号INの立ち上がりよりも遅く立ち上がる信号となる。したがって、入力信号INの信号変化と入力信号INBの信号変化との間には時間差があり、入力信号INが論理レベル1であり且つ入力信号INBが論理レベル0となる期間が生じる。
【0042】
当該期間では、トランジスタPM1及びNM1はいずれもオフ状態となり、ハイインピーダンス状態となる。以下の説明では、当該期間をハイインピーダンス期間HIZと称する。本実施例では、入力信号INが立ち上がってから入力信号INBが立ち上がるまでの期間、及び入力信号INBが立ち下がってから入力信号INが立ち下がるまでの期間が、それぞれハイインピーダンス期間HIZとなる。
【0043】
入力信号INnは、トランジスタPM2及びNM2のゲートにインバータINV1を介して印加される信号であり、入力信号IN0と同様の信号波形を有する信号である。仮に映像信号VDの信号遅延等がない場合、入力信号INnは、理想的には入力信号IN0と同じタイミングで変化する信号となる。しかし、実際には映像信号VDの信号遅延等に起因して信号変化のタイミングに時間差が生じるため、入力信号INnは、入力信号IN0よりも遅れて変化する信号となる。
【0044】
入力信号INnが論理レベル1の間、トランジスタPM2及びNM2のゲートには、インバータINV1を介して論理レベル0の信号が印加される。これにより、トランジスタPM2はオン、トランジスタNM2はオフの状態となる。また、入力信号INnが論理レベル0の間、トランジスタPM2及びNM2のゲートには、インバータINV1を介して論理レベル1の信号が印加される。トランジスタPM2はオフ、トランジスタNM2はオンの状態となる。
【0045】
本実施例では、バッファ制御回路21が、トランジスタPM1のゲートに印加する入力信号INとトランジスタNM1のゲートに印加する入力信号INBとを別個に制御することにより、トランジスタPM1及びNM1はいずれもオフ状態となるハイインピーダンス期間HIZが設けられている。このため、バッファ間での貫通電流の発生を抑えることができる。これについて、
図3A及び
図3Bを参照して以下に説明する。
【0046】
図3Aは、本実施例のようなバッファ制御回路を有しない比較例のバッファの構成を示す図である。
【0047】
トランジスタPM1及びNM1の各々のゲートには、インバータINV0が接続され、インバータINV0を介して入力信号IN1が共通に印加される。したがって、入力信号IN1を反転した信号の信号レベルに応じて、トランジスタPM1及びNM1は相補的にオン及びオフとなる。
【0048】
図3Bは、
図3Aに示す比較例での入力信号IN1及びINnの信号波形を示す図である。
【0049】
入力信号INnは、理想的には入力信号IN1と同じタイミングで変化する信号である。しかし、実際には映像信号VD信号遅延や配線遅延等の影響により、入力信号IN1の信号変化のタイミングと入力信号INnの信号変化のタイミングとの間には、時間差TL1及びTL2が生じる。
【0050】
時間差TL1の期間では、入力信号IN1がHレベルであるため、インバータINV0を介して、バッファBUF1のトランジスタPM1及びNM1のゲートにはLレベルの信号が印加される。これにより、トランジスタPM1はオン、トランジスタNM1はオフの状態となる。一方、入力信号INnはLレベルであるため、インバータINV1を介して、バッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2のゲートにはHレベルの信号が印加される。これにより、トランジスタPM2はオフ、トランジスタNM2はオンの状態となる。したがって、電流がトランジスタPM1から接続ラインL1を介してトランジスタNM2に向かって流れる、所謂貫通電流が発生する。このような貫通電流の発生は、表示装置においてEMI(Electro Magnetic Interference)ノイズが発生する原因となる。
【0051】
また、時間差TL2の期間では、入力信号IN1がLレベルであるため、インバータINV0を介して、バッファBUF1のトランジスタPM1及びNM1のゲートにはHレベルの信号が印加される。これにより、トランジスタPM1はオフ、トランジスタNM1はオンの状態となる。一方、入力信号INnはHレベルであるため、インバータINV1を介して、バッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2のゲートにはLレベルの信号が印加される。これにより、トランジスタPM2はオン、トランジスタNM2はオフの状態となる。したがって、電流がトランジスタPM2から接続ラインL1を介してトランジスタNM1に向かって流れる、所謂貫通電流が発生する。
【0052】
再び
図2A及び
図2Bを参照すると、本実施例のバッファ制御回路21は、トランジスタPM1に印加する入力信号INとトランジスタNM1に印加する入力信号INBとを別個に制御し、トランジスタPM1及びNM1がともにオフ状態となるハイインピーダンス期間HIZが生じるようにしている。ハイインピーダンス期間HIZは、バッファBUFnの入力信号である入力信号INnが入力信号IN0よりも遅れることを考慮して、十分に長い期間となるように設定されている。したがって、入力信号INnは、ハイインピーダンス期間HIZにおいて信号変化(立ち上がり、立下り)する信号となる。
【0053】
ハイインピーダンス期間HIZでは、トランジスタPM1及びNM1がいずれもオフ状態となるため、比較例とは異なり、トランジスタPM1及びNM2が同時にオンになる期間や、トランジスタPM2及びNM1が同時にオンになる期間が発生しない。
【0054】
したがって、本実施例のバッファ制御回路21によれば、トランジスタPM1及びNM1のオン及びオフのタイミングを制御し、両者がともにオフ状態となるハイインピーダンス期間HIZを設けることにより、バッファ間における貫通電流の発生を抑えることができる。また、貫通電流の発生に起因するEMIノイズの発生を抑えることが可能となる。
マスターIC12は、第1のカスケード信号S1を隣接するソースドライバICであるスレーブIC13-1に供給する。スレーブIC13-1は、供給された第1のカスケード信号S1をスレーブIC13-2に供給する。以下同様に、スレーブIC13-2~13-(n-1)は、前段のドライバIC(すなわち、紙面左隣のドライバIC)から第1のカスケード信号S1の供給を受け、これを次段のドライバIC(すなわち、紙面右隣のドライバIC)に順次供給する。
右端に位置するスレーブIC13-nには、第1のカスケード信号S1が複数のソースドライバIC間を順次供給されることにより遅延した信号である、カスケード信号Tnが供給される。スレーブIC13-nは、カスケード信号Tnを入力信号INnとしてバッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2に供給する。また、スレーブIC13-nは、カスケード信号Tnを折り返して、スレーブIC13-(n-1)に供給する。折り返されたカスケード信号Tnは、スレーブIC13-(n-1)、13-(n-2)、・・・と順次供給され、第2のカスケード信号C1としてマスターIC12に供給される。
バッファ制御回路31は、NAND回路ND及びNOR回路NRから構成されている。NAND回路NDの第1入力端には、第1のカスケード信号S1が供給される。NAND回路NDの第2入力端には、第2のカスケード信号C1が供給される。NAND回路NDは、第1のカスケード信号S1及び第2のカスケード信号C1の否定論理積を出力端から出力し、入力信号INとしてバッファBUF1のトランジスタPM1のゲートに供給する。
NOR回路NRの第1入力端には、第2のカスケード信号C1が供給される。NOR回路NRの第2入力端には、第1のカスケード信号S1が供給される。NOR回路NRは、第1のカスケード信号S1及び第2のカスケード信号C1の否定論理和を出力端から出力し、入力信号INBとしてバッファBUF1のトランジスタNM1のゲートに供給する。
カスケード信号Tnは、マスターIC12から出力された第1のカスケード信号S1が複数のソースドライバICの間を順次シフトし、スレーブIC13-nに供給された信号である。したがって、カスケード信号Tnは、第1のカスケード信号S1を所定期間遅延させた信号であり、第1のカスケード信号S1を時間軸方向にシフトした信号波形を有する。
第2のカスケード信号C1は、カスケード信号TnがスレーブIC13-nで折り返された後、再び複数のソースドライバICの間を順次シフトして、マスターIC12に供給された信号である。すなわち、第2のカスケード信号C1は、第1のカスケード信号S1をさらに所定期間遅延させた信号であり、第1のカスケード信号S1を時間軸方向にシフトした信号波形を有する。
第1のカスケード信号S1と第2のカスケード信号C1との時間差により、バッファBUF1にはハイインピーダンス期間HIZが生じる。上記の通り、カスケード信号Tnは、第1のカスケード信号S1よりも後、且つ第2のカスケード信号C1よりも前に変化する信号である。また、カスケード信号Tnは、バッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2に供給される入力信号INnである。
したがって、入力信号INnはバッファBUF1のハイインピーダンス期間HIZで信号変化する信号となるため、バッファBUFnのトランジスタPM2及びNM2は、必ずバッファBUF1のハイインピーダンス期間HIZでオン及びオフに変化することになる。このため、トランジスタPM1及びNM2が同時にオンになる期間や、トランジスタPM2及びNM1が同時にオンになる期間が発生しない。
本実施例のバッファ制御回路31によれば、トランジスタPM1及びNM1がともにオフ状態となるハイインピーダンス期間HIZを設けることができるため、実施例1と同様、バッファ間における貫通電流の発生を抑えることができる。また、貫通電流の発生に起因するEMIノイズの発生を抑えることができる。
また、本実施例の構成では、バッファBUFnを構成するトランジスタPM2及びNM2に供給される入力信号INnは、第1のカスケード信号S1よりも遅く信号変化し、且つ第2のカスケード信号C1よりも早く信号変化する信号である。このため、バッファBUFnが動作するタイミング、すなわちトランジスタPM2及びNM2のオンオフが切り替わるタイミングが必ずバッファBUF1のハイインピーダンス期間HIZと重なることになる。したがって、本実施例の構成によれば、貫通電流の発生を確実に抑えることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例1では、マスターIC12にバッファ制御回路21又は31が設けられている場合を例として説明した。しかし、バッファ制御回路21又は31をスレーブIC13-nに設け、スレーブIC13-nにおいてバッファBUFnにハイインピーダンス期間が生じるように制御する構成であってもよい。
また、上記実施例2では、バッファ制御回路31がNAND回路ND及びNOR回路NRから構成されている場合を例として説明した。しかし、バッファ制御回路の構成はこれに限られず、第1のカスケード信号S1及び第2のカスケード信号C1を用いてバッファBUF1のハイインピーダンス期間HIZを生成することが可能に構成されていればよい。
また、上記実施例1では、スレーブICの数が2以上の場合を例として説明した。しかし、スレーブICの数は1個でもよい。この場合、スレーブIC13-1がセレクト信号S1Rの出力を担うことになるため、バッファ制御回路21はバッファBUF1とスレーブIC13-1内の出力バッファとの間の貫通電流の発生を抑えるべく、バッファBUF1の動作を制御する。