(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051842
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水中航走体
(51)【国際特許分類】
B63C 11/48 20060101AFI20240404BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240404BHJP
B63H 5/15 20060101ALI20240404BHJP
B63H 25/38 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B63C11/48 D
B63C11/00 B
B63H5/15
B63H25/38 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158198
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】細野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(57)【要約】 (修正有)
【課題】推進効率の向上を図ることが可能な水中航走体を提供する。
【解決手段】水中航走体1は、軸線Оを中心とした円筒面状をなすとともに軸線方向に連続的に延びる外周面2aを有する機体2であって、外周面の軸線方向の一部で全周にわたって開口する入口部11及び機体の後端に開口する出口部12を有し、入口部から出口部に至る少なくとも一部において漸次縮径する環状流路10が形成された機体と、環状流路に設けられて軸線回りに回転可能なプロペラ3と、プロペラを回転駆動する駆動部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とした円筒面状をなすとともに軸線方向に連続的に延びる外周面を有する機体であって、前記外周面の軸線方向の一部で全周にわたって開口する入口部及び前記機体の後端に開口する出口部を有し、前記入口部から前記出口部に至る少なくとも一部において漸次縮径する環状流路が形成された機体と、
前記環状流路に設けられて前記軸線回りに回転可能なプロペラと、
前記プロペラを回転駆動する駆動部と、
を備える水中航走体。
【請求項2】
前記駆動部が、前記機体における前記環状流路の外周側の部分である機体外周部に設けられている請求項1に記載の水中航走体。
【請求項3】
前記外周面における前記入口部の後方に設けられた水平舵を備える請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項4】
前記環状流路における前記プロペラの後方に設けられた方向舵を備える請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項5】
前記出口部が開口する前記機体の後端部に設けられた可変ノズルを備える請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項6】
前記機体における前記環状流路の外周側の面及び内周側の面のうち、前記プロペラが配置されたプロペラ配置領域は、前記軸線を含む断面で直線状に延びている請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項7】
前記プロペラ配置領域は、前記軸線を含む断面で前記軸線に沿う直線状に延び、
前記機体における前記環状流路の外周側の面及び内周側の面のうち前記プロペラ配置領域の後端から前記出口部に至る後端部領域も、前記軸線を含む断面で前記軸線に沿う直線状に延びている請求項6に記載の水中航走体。
【請求項8】
前記機体における前記環状流路の内周側の部分である機体内周部の径寸法は、前記プロペラよりも後方において、前記出口部に近づくにしたがって小さくなり、前記出口部においてゼロとなる請求項1又は請求項2記載の水中航走体。
【請求項9】
前記機体内周部からなる前記環状流路の内周側の面のうち、前記プロペラよりも後方側の領域に設けられ、前記内周側の面上の水に前記内周側の面に沿って後方に向かう運動量を付与する運動量付与装置を備える請求項8に記載の水中航走体。
【請求項10】
前記環状流路の内面に設けられる吸音材及び/又は防振材を備える請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項11】
前記プロペラは、前記軸線方向に2つ設けられ、
2つの前記プロペラの回転方向は互いに反対とされている請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【請求項12】
前記駆動部のうち一方の前記プロペラを回転駆動する第一駆動部が、前記機体における前記環状流路の外周側の部分である機体外周部に設けられ、
前記駆動部のうち他方の前記プロペラを回転駆動する第二駆動部が、前記機体における前記環状流路の内周側の部分である機体内周部に設けられている請求項11に記載の水中航走体。
【請求項13】
前記機体が、前記環状流路、前記プロペラ及び前記駆動部を含む推進装置部と、少なくとも前記駆動部に駆動力を供給する駆動源を含み、前記推進装置部に結合されることで前記駆動部と前記駆動源とが接続されるメイン装置部と、に分割されている請求項1又は請求項2に記載の水中航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機体(外殻)の後端部に推進装置を設けた潜水水中航走体が開示されている。当該水中航走体の推進装置は、機体の後端部が挿入された筒状のシュラウドと、シュラウドの内側と機体の後端部の外側との間に配置されてシュラウドの軸線を中心に回転するプロペラと、を有している。プロペラが回転することで、水がシュラウドの内側において機体の後方に圧送され、水中航走体が水中を航走する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中航走体が水中を航走する際には、水が機体の表面に沿って機体の前から後に流れるが、機体の表面においては水の粘性による境界層が発生する。境界層の発生は、水中航走体の推進の抵抗となるため、好ましくない。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、推進効率の向上を図ることが可能な水中航走体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る水中航走体は、軸線を中心とした円筒面状をなすとともに軸線方向に連続的に延びる外周面を有する機体であって、前記外周面の軸線方向の一部で全周にわたって開口する入口部及び前記機体の後端に開口する出口部を有し、前記入口部から前記出口部に至る少なくとも一部において漸次縮径する環状流路が形成された機体と、前記環状流路に設けられて前記軸線回りに回転可能なプロペラと、前記プロペラを回転駆動する駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、水中航走体の推進効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る水中航走体の断面図である。
【
図2】
図1の水中航走体において機体の外周面に発生した境界層の吸込みについて説明する図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係る水中航走体の断面図である。
【
図4】本開示の第三実施形態に係る水中航走体の断面図である。
【
図5】
図4の水中航走体に備える後部ストラットを環状流路の径方向から見た図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係る水中航走体の変形例を示す断面図である。
【
図7】本開示の第四実施形態に係る水中航走体の断面図である。
【
図8】本開示の第五実施形態に係る水中航走体の要部を示す拡大断面図である。
【
図9】本開示の第六実施形態に係る水中航走体の要部を示す断面図である。
【
図10】本開示の第七実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【
図11】本開示の第八実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【
図12】本開示の第九実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【
図13】本開示の第十実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【
図14】本開示の第十一実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【
図15】本開示の第十二実施形態に係る水中航走体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
[水中航走体の全体構成]
以下、
図1、
図2を参照して、本開示の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、水中航走体1は、機体2と、プロペラ3と、駆動部4と、を備える。
【0010】
[機体]
機体2は、軸線Oを中心とした円筒面状をなすとともに軸線O方向に連続的に延びる外周面2aを有する。機体2の外周面2aが軸線O方向に連続的に延びることは、外周面2aが流線型を保つように機体2の前端から後端まで軸線O方向に延びていることを意味する。流線型とは、水中航走体1が概ね軸線O方向に進行する際に外周面2aにおいて流れの剥離や渦といった乱れが生じにくい形状である。流線型を保つ範囲であれば、機体2の外周面2aの径寸法は機体2の軸線O方向において漸次変位してよい。本実施形態においては、軸線O方向における機体2の前部(機体前部)における外周面2aの径寸法が、概ね一定である。軸線O方向において後述する環状流路10の入口部11よりも後側における外周面2aの径寸法は、機体2の後方に向けて漸次小さくなっている。
【0011】
[環状流路]
機体2には、環状流路10が形成されている。環状流路10は、軸線Oを中心とした環状、具体的には円環状に形成されている。環状流路10は、軸線O方向における機体2の後部(機体後部)に位置する。環状流路10は、入口部11及び出口部12を有する。入口部11は、外周面2aの軸線O方向の一部において全周にわたって開口する。出口部12は、軸線O方向における機体2の後端に開口する。
図1において、入口部11は、外周面2aのうち外周面2aの径寸法が一定である領域に開口しているが、これに限ることはない。入口部11は、例えば外周面2aのうち外周面2aの径寸法が機体2の後方に向けて漸次小さくなる領域に開口してもよい。
【0012】
機体2の外周面2aのうち軸線O方向における入口部11の後側の領域は、少なくとも軸線O方向における入口部11の前側の領域に対して機体2の径方向外側に張り出さないように形成されていればよい。また、入口部11の後端11Bにおける外周面2aの径寸法は、例えば入口部11の前端11Aにおける外周面2aの径寸法以下であってよい。入口部11の前端11Aにおける外周面2aの径寸法と入口部11の後端11Bにおける外周面2aの径寸法との差分は、小さいことが好ましい。
【0013】
図1において、環状流路10は、入口部11から出口部12にわたって漸次縮径しているが、これに限ることはない。環状流路10は、入口部11から出口部12に至る少なくとも一部において漸次縮径していればよい。このように環状流路10が形成されていることで、出口部12は機体2の径方向において入口部11よりも内側に位置する。
また、本実施形態の環状流路10は、出口部12においても環状に形成されている。このため、出口部12に対応する機体2の後端には、環状流路10の径方向内側に位置して軸線Oに直交する平坦な後端面2bが形成されている。
【0014】
機体2に環状流路10が形成されていることで、機体2における環状流路10の外周側の部分である機体外周部22は、機体2における環状流路10の内周側の部分である機体内周部21に対して分離している。
【0015】
[ストラット]
機体2は、機体外周部22と機体内周部21とを連結するストラットを有する。本実施形態におけるストラットは、軸線O方向における機体外周部22の前端部と機体内周部21の前端部を連結する前部ストラット23である。
前部ストラット23は、環状流路10の入口部11において、軸線Oを中心とする機体2の周方向に間隔をあけて複数並んでいる。複数の前部ストラット23は周方向に等間隔で並んでいることが好ましい。各前部ストラット23は、軸線O方向から見て、機体2の径方向に直交する方向を板厚方向とする板状に形成されている。これにより、前部ストラット23による入口部11の開口面積の減少を抑えている。
図1に例示する前部ストラット23は、機体2の外周面2aの流線型が保たれるように形成されている。すなわち、前部ストラット23は、機体2の外周面2aの径方向外側に突出せず、入口部11の前端11Aから後端11Bまで外周面2aを滑らかにつなぐように形成されている。なお、前部ストラット23は、例えば機体2の外周面2aの径方向内側に窪むように形成されてもよい。
【0016】
[プロペラ]
プロペラ3は、環状流路10に設けられて軸線O回りに回転可能とされている。具体的に、プロペラ3は、機体内周部21に対して回転可能に取り付けられている。プロペラ3は、環状流路10において軸線Oを中心とする周方向に間隔をあけて並ぶ複数の羽根31を有する。各羽根31は、環状流路10の内周側の面13から環状流路10の外周側の面14まで環状流路10の径方向に延びている。ここで、「環状流路10の内周側の面13」は、機体内周部21の外周面13に相当する。また、「環状流路10の外周側の面14」は、機体外周部22の内周面14に相当する。
プロペラ3が回転すると、環状流路10に位置するプロペラ3の羽根31によって、水が環状流路10の入口部11から出口部12に向けて(すなわち機体2の後方に向けて)圧送される。
【0017】
[駆動部]
駆動部4は、プロペラ3を回転駆動する。駆動部4は、機体外周部22に設けられている。本実施形態の駆動部4は、電力が供給されることでプロペラ3を回転駆動するモータである。
【0018】
[駆動源]
水中航走体1は、上記した駆動部4に駆動力を供給する駆動源5を有する。駆動源5は、機体2のうち機体内周部21を含む機体本体20の内部に設けられている。駆動源5は、機体本体20のうち機体内周部21の前側に配置されることが好ましい。これにより、機体内周部21の径寸法を小さく抑えることができる。
本実施形態の駆動源5は、駆動部4に電力を供給する給電装置である。給電装置は、バッテリや発電装置などであってよい。駆動部4と駆動源5とは電気配線61によって接続されている。電気配線61は、駆動源5から前部ストラット23を介して機体外周部22に設けられた駆動部4まで延びる。
【0019】
[作用効果]
水中航走体1は、プロペラ3を回転駆動することで水中を航行することができる。すなわち、プロペラ3が軸線O回りに回転すると、環状流路10に位置するプロペラ3の羽根31が、環状流路10内の水を後方に向けて圧送する。そして、プロペラ3には水を圧送する反力として、前方に向かう推進力が発生する。この推進力が、機体2に伝達されることで、水中航走体1が推進する。
【0020】
第一実施形態の水中航走体1では、軸線O方向に連続的に延びる機体2の外周面2aに環状流路10の入口部11が開口している。これにより、水中航走体1が水中を航走する際には、
図2に示すように、機体2の外周面2aのうち入口部11よりも前側(
図2では左側)において発生した境界層BLが入口部11から環状流路10に吸い込まれる。これにより、機体2の外周面2aのうち入口部11の後側における境界層BLの発達を抑制することができる。また、機体2の外周面2aは、軸線O方向に対応する入口部11の前後において連続的に延びているため、入口部11の後側においては、水を機体2の外周面2aに沿って大きい速度で滑らかに流すことができる。したがって、水中航走体1の推進効率の向上を図ることができる。
【0021】
また、第一実施形態の水中航走体1では、プロペラ3が機体2の内側に形成された環状流路10に設けられている。これにより、プロペラ3において発生した音(騒音)が機体2の外側に放出される方向が制限される。具体的に、プロペラ3の音は、環状流路10の入口部11及び出口部12に限られる。これにより、水中航走体1の静音化を図ることができる。
【0022】
また、第一実施形態の水中航走体1では、駆動部4が機体外周部22に設けられている。これにより、駆動部4が機体内周部21に設けられる場合と比較して、機体2の径寸法が大きくなることを抑制しながら、環状流路10を機体外周部22と機体内周部21との間に形成することができる。以下、この点について説明する。
【0023】
駆動部4が機体内周部21に設けられる場合、機体2に環状流路10を形成しつつ、機体内周部21に駆動部4を設置するスペースを確保する必要があるため、機体内周部21の径寸法が大きくなってしまう。これに対し、駆動部4が機体外周部22に設けられる場合には、機体2に環状流路10を形成しても機体内周部21の径寸法をより小さく設定することが可能となる。これにより、機体2の径寸法が大きくなることを抑制できる。
また、環状流路10が漸次縮径するように形成されていることで、径方向における機体外周部22の寸法が大きくなりやすいため、駆動部4を容易に機体外周部22に設けることができる。
【0024】
<第二実施形態>
次に、
図3を参照して本開示の第二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
[水平舵]
図3に示すように、第二実施形態の水中航走体1Cは、第一実施形態の水中航走体1と比較して、水平舵7をさらに備える。水平舵7は、機体2の外周面2aにおける入口部11の後方に設けられている。水平舵7は、機体外周部22に固定されている。水平舵7は、軸線O方向から見て、外周面2aの径方向に直交する方向を板厚方向とする板状に形成されている。水平舵7は、外周面2aの周方向に間隔をあけて複数並んでいる。複数の水平舵7は周方向に等間隔で並んでいることが好ましい。
図3において、水平舵7は、環状流路10の入口部11の後端11Bにおける外周面2aから径方向外側に突出していない。これにより、水中航走体1Cの推進時における水の抵抗を小さく抑えることができる。なお、水平舵7は、例えば環状流路10の入口部11の後端11Bにおける外周面2aから径方向外側に微小に突出してもよい。
【0026】
第二実施形態の水中航走体1Cによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の水中航走体1Cにおいて、外周面2aのうち水平舵7が設けられる入口部11の後側では、第一実施形態でも述べたように、水中航走体1Cが水中を航走する際の水の流速が大きい。すなわち、水平舵7は流速が大きい機体2の部位に設けられている。これにより、水中航走体1Cが水中を航走する際の安定性向上を図ることができる。
【0027】
<第三実施形態>
次に、
図4、
図5を参照して本開示の第三実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
[後部ストラット]
図4に示すように、第三実施形態の水中航走体1Dは、第一実施形態の水中航走体1と比較して、後部ストラット24をさらに備える。
図4においては、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。後部ストラット24は、環状流路10におけるプロペラ3の後方に設けられ、前部ストラット23と共に機体外周部22と機体内周部21とを連結するストラットを構成する。すなわち、後部ストラット24は、環状流路10をなす機体内周部21の外周面13から機体外周部22の内周面14まで延びている。
図5に示すように、後部ストラット24は、環状流路10の径方向に直交する断面で、環状流路10の入口部11側が前縁、環状流路10の出口部12側が後縁となる翼形状に形成されている。
図4に示す水中航走体1Dでは、後部ストラット24が軸線Oを中心とする機体2の周方向に間隔をあけて複数並んでいる。複数の前部ストラット23は周方向に等間隔で並んでいることが好ましい。
【0029】
[方向舵]
図4、
図5に示すように、出口部12側に位置する後部ストラット24の後側部分24Bは、方向舵8(フラップ)となっている。方向舵8は、環状流路10の長手方向及び周方向に直交する方向を軸として、機体2及び入口部11側に位置する前部ストラット23の前側部分24Aに対して回転可能に取り付けられている。方向舵8は、機体2に対して回転することで、プロペラ3から環状流路10の出口部12に向かう水の流れ方向を変更あるいは調整する。
後部ストラット24の前側部分24Aは、機体2に対して固定される。
【0030】
[舵駆動部]
図4に示すように、方向舵8は、舵駆動部80によって回転駆動される。舵駆動部80は、機体内周部21に設けられている。舵駆動部80は、電力が供給されることで回転駆動するモータであり、電気配線62を介して駆動源5に接続されている。
【0031】
第三実施形態の水中航走体1Dによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第三実施形態の水中航走体1Dでは、後部ストラット24がプロペラ3の後方に設けられている。このため、プロペラ3で生じた旋回流を後部ストラット24において回収することができる。これにより、後部ストラット24の後側での旋回流損失を低減させることができる。したがって、水中航走体1Dの推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0032】
また、第三実施形態の水中航走体1Dでは、方向舵8がプロペラ3の後方に設けられている。このため、方向舵8は、環状流路10においてプロペラ3によって加速された水流(すなわち流速が大きい水流)の向きを変える。これにより、より大きな偏向力を有する水中航走体1Dを提供することができる。
【0033】
第三実施形態においては、例えば
図6に示すように、後部ストラット24全体が方向舵8として構成されてもよい。
【0034】
第三実施形態においては、例えば後部ストラット24が方向舵8を含まず、後部ストラット24全体が機体2に対して固定されてもよい。
【0035】
第三実施形態の後部ストラット24は、第二実施形態に適用されてもよい。
【0036】
<第四実施形態>
次に、
図7を参照して本開示の第四実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
[可変ノズル]
図7に示すように、第四実施形態の水中航走体1Eは、第一実施形態の水中航走体1と比較して、可変ノズル9をさらに備える。
図7においては、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。可変ノズル9は、環状流路10の出口部12が開口する機体2の後端部に設けられている。具体的に、可変ノズル9は機体外周部22の後端部に設けられる。
【0038】
可変ノズル9は、機体外周部22の周方向に並ぶ複数のパネル91によって構成されている。各パネル91は、機体外周部22の後端部に対して、機体2の周方向に相当する方向を軸として、回転可能に取り付けられ、機体外周部22の後端部から概ね後方に延びる。各パネル91が機体外周部22の後端部に対して回転すると、各パネル91の先端部が、機体外周部22の径方向に動く。そして、機体外周部22の周方向に並ぶ複数のパネル91が機体外周部22の後端部に対して適宜回転することで、出口部12の向きを変えたり、出口部12の開口面積を変化させたりすることができる。出口部12の向きを変えることで、水中航走体1Eの進行方向を変化させることができる。また、出口部12の開口面積を変えることで、水中航走体1Eを急加速させたり、急減速させたりすることができる。
【0039】
[ノズル駆動部]
可変ノズル9の複数のパネル91は、ノズル駆動部90によって個別に回転駆動される。ノズル駆動部90は、機体内周部21に設けられている。ノズル駆動部90は、電力が供給されることで回転駆動するモータであり、電気配線63を介して駆動源5に接続されている。ノズル駆動部90は、駆動軸92を介して機体外周部22に設けられた複数のパネル91に接続されている。
【0040】
第四実施形態の水中航走体1Eによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第四実施形態の水中航走体1Eでは、可変ノズル9によって大きな偏向力を得ることができる、また、水中航走体1Eの急激な加減速も行うことができる。
【0041】
第四実施形態の可変ノズル9は、第二、第三実施形態に適用されてもよい。
【0042】
<第五実施形態>
次に、
図8を参照して本開示の第五実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図8に示す第五実施形態の水中航走体1Fは、第一実施形態の水中航走体1と同じ構成要素を備える。
図8においては、駆動源5、及び、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。第五実施形態においては、
図8に示すように軸線Oを含む断面で、機体2における環状流路10の外周側の面14及び内周側の面13のうちプロペラ3が配置された2つのプロペラ配置領域14A,13Aが、直線状に延びており湾曲していない。外周側の面14における第一プロペラ配置領域14Aは、軸線Oを含む断面で、プロペラ3の羽根31が外周側の面14に接触している領域である。同様に、内周側の面13における第二プロペラ配置領域13Aは、軸線Oを含む断面で、プロペラ3の羽根31が内周側の面13に接触している領域である。
2つのプロペラ配置領域14A,13Aは、軸線Oに対して傾斜している。具体的に、プロペラ配置領域14A,13Aは、出口部12側に向かうにしたがって軸線Oに近づくように傾斜している。
図8において、2つのプロペラ配置領域14A,13Aは、平行しているが、例えば互いに傾斜していてもよい。
【0044】
軸線Oを含む断面で、外周側の面14のうち第一プロペラ配置領域14Aに対して環状流路10の入口部11側に隣接する隣接領域14B(第一隣接領域14B)は、第一プロペラ配置領域14Aから直線状に延長している。第一隣接領域14Bは、第一プロペラ配置領域14Aに対して傾斜していない。軸線Oを含む断面で、第一隣接領域14Bの長さは、任意であってよいが、例えば第一プロペラ配置領域14Aの長さの半分以上であることが好ましい。
同様に、軸線Oを含む断面で、内周側の面13のうち第二プロペラ配置領域13Aに対して環状流路10の入口部11側に隣接する隣接領域13B(第二隣接領域13B)は、第二プロペラ配置領域13Aから直線状に延長している。第二隣接領域13Bは、第二プロペラ配置領域13Aに対して傾斜していない。軸線Oを含む断面で、第二隣接領域13Bの長さは、任意であってよいが、例えば第二プロペラ配置領域13Aの長さの半分以上であることが好ましい。
【0045】
第五実施形態の水中航走体1Fによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第五実施形態の水中航走体1Fでは、環状流路10のうち第一、第二プロペラ配置領域14A,13Aが、軸線Oを含む断面で直線状に延びている。すなわち、プロペラ3が環状流路10のうち直線状に延びる部分に設けられている。このため、プロペラ3によって環状流路10を通る水を高い効率で加速することができる。したがって、水中航走体1Fの推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0046】
さらに、第五実施形態の水中航走体1Fでは、軸線Oを含む断面で、2つのプロペラ配置領域14A,13Aの前方にそれぞれ隣接する2つの隣接領域14B,13Bが、各々のプロペラ配置領域14A,13Aに対して傾斜せずに直線状に延びている。すなわち、第五実施形態の水中航走体1Fでは、環状流路10のうちプロペラ3の前方(上流側)に隣接する部分も直線状に延びている。これにより、プロペラ3によって環状流路10を通る水をさらに高い効率で加速することができる。
軸線Oを含む断面における2つの隣接領域14B,13Bの長さが、各々のプロペラ配置領域14A,13Aの長さの半分以上となっている場合には、プロペラ3による水の加速効率をさらに高めることができる。
【0047】
第五実施形態において、プロペラ配置領域14A,13Aは、軸線Oを含む断面で、例えば軸線Oに沿う直線状に延びていてもよい。
【0048】
第五実施形態において、隣接領域14B,13Bは、軸線Oを含む断面で、例えば湾曲してもよい。
【0049】
<第六実施形態>
次に、
図9を参照して本開示の第六実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0050】
図9に示すように、第六実施形態の水中航走体1Gでは、第五実施形態の水中航走体1Fと同様に、環状流路10のうちプロペラ配置領域14A,13Aが、軸線Oを含む断面で直線状に延びている。
第六実施形態では、プロペラ配置領域14A,13Aが、軸線Oを含む断面で軸線Oに沿う直線状に延びている。さらに、機体2における環状流路10の外周側の面14及び内周側の面13のうちプロペラ配置領域14A,13Aの後端から出口部12に至る後端部領域14G,13G(第一後端部領域14G、第二後端部領域13G)も、プロペラ配置領域14A,13Aと同様に、軸線Oを含む断面で前記軸線Oに沿う直線状に延びている。
【0051】
第六実施形態の水中航走体1Gによれば、第五実施形態と同様の効果を奏する。
また、第六実施形態の水中航走体1Gでは、環状流路10のうちプロペラ3から出口部12に至る部分が軸線Oに沿って直線状に延びている。このため、プロペラ3によって後方に圧送された水は環状流路10の出口部12から軸線Oに平行して後方に流出する。これにより、水を圧送する反力として得られる前方への推進力も軸線Oに平行する。したがって、水が環状流路10の出口部12から機体2の軸線Oに対して傾斜して後方に流出する場合と比較して、水中航走体1Gの推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0052】
第五、第六実施形態の水中航走体1F,1Gの構造は、第二~第四実施形態に適用されてもよい。
【0053】
<第七実施形態>
次に、
図10を参照して本開示の第七実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
図10に示すように、第七実施形態の水中航走体1Hは、第一実施形態の水中航走体1と同じ構成要素を備える。
図10においては、駆動源5、及び、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。
第七実施形態の水中航走体1Hでは、機体内周部21の径寸法が、プロペラ3よりも後方において出口部12に近づくにしたがって小さくなっている。また、機体内周部21の径寸法は、出口部12においてゼロとなっている。すなわち、機体内周部21は、出口部12を頂点とする先細り状に形成されている。これにより。環状流路10の出口部12は、軸線O方向から見て環状ではなく円形状に形成される。
【0055】
第七実施形態の水中航走体1Hによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第七実施形態の水中航走体1Hでは、環状流路10の出口部12が、軸線O方向から見て環状ではなく円形状に形成される。これにより、環状流路10の出口部12から後方に流出する水の流速分布がドーナツ状となることを抑制又は防止して、流体混合損失の低減を図ることができる。以下、この点について説明する。
【0056】
環状流路10の出口部12が環状になっていると(すなわち機体内周部21が出口部12に対応する後端面2b(
図1参照)を有すると)、出口部12から後方に流出する水の流速分布がドーナツ状となる。出口部12の後方における水の流速分布がドーナツ状であることは、出口部12から後方に流出する水の流速が大きい領域がドーナツ状に分布していることを意味する。この場合、出口部12の後方において流速の大きな領域と小さな領域とが混じり合うことで流体混合損失が大きくなる。
【0057】
これに対し、環状流路10の出口部12が円形状となっていると(すなわち機体内周部21が出口部12に対応する後端面2bを有さないと)、出口部12から後方に流出する水の流速分布がドーナツ状とはならず、円形状になりやすい。これにより、出口部12の後方において流速の大きな領域と小さな領域とが混じり合うことが減少する又は無くなるため、流体混合損失を低減することができる。
【0058】
<第八実施形態>
次に、
図11を参照して本開示の第八実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0059】
[運動量付与装置]
図11に示すように、第八実施形態の水中航走体1Iでは、第七実施形態の水中航走体1Hと同様に、機体内周部21が、出口部12を頂点とする先細り状に形成され、環状流路10の出口部12が軸線O方向から見て円形状に形成されている。第八実施形態の水中航走体1Iは、運動量付与装置100をさらに備える。
運動量付与装置100は、機体内周部21からなる環状流路10の内周側の面13のうち、プロペラ3よりも後方側の領域に設けられている。運動量付与装置100は、内周側の面13上の水に当該内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与する。
【0060】
運動量付与装置100は、ローラ101によって構成されている。ローラ101は、円柱状に形成されている。ローラ101は、その外周面の周方向の一部が環状流路10の内周側の面13に露出するように、また、ローラ101の軸が機体内周部21の軸線O方向及び径方向に直交するように配置される。ローラ101の外周面のうち環状流路10の内周側の面13に露出する領域は、環状流路10の内周側の面13の一部を構成する。ローラ101は、内周側の面13に露出する外周面の領域が環状流路10の出口部12側に向けて動くように、機体内周部21に対して回転可能とされている。
図11において、ローラは矢印で示す方向に回転する。当該ローラ101は、機体内周部21の周方向に複数並んでいる。
【0061】
ローラ101は、図示しないローラ駆動部によって回転駆動される。ローラ駆動部は、例えば
図1に例示した駆動源5から電力が供給されることで回転駆動するモータであってよい。
【0062】
運動量付与装置100では、内周側の面13に露出するローラ101の外周面の領域が環状流路10の出口部12側に動くように、ローラ101が回転する。これにより、内周側の面13上の水に対し、内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与することができる。
【0063】
第八実施形態の水中航走体1Iによれば、第七実施形態と同様の効果を奏する。
また、第八実施形態の水中航走体1Iでは、運動量付与装置100がプロペラ3の後方において環状流路10の内周側の面13に沿って流れる水に、内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与する。これにより、内周側の面13に沿って後方に向かう水の流れが内周側の面13から剥離することを抑制することができる。以下、この点について説明する。
【0064】
第八実施形態の水中航走体1Iでは、プロペラ3の後方において機体内周部21の径寸法が出口部12に近づくにしたがって小さくなっている。このため、プロペラ3の後方において環状流路10の内周側の面13に沿って後方に向かう水の流れは、当該内周側の面13から剥離しやすくなる。これに対し、運動量付与装置100がプロペラ3の後方において内周側の面13上の水に後方に向かう運動量が付与されることで、当該剥離を抑制することができる。
環状流路10においてプロペラ3から後方に向かう水の流れの剥離が抑制されることで、流体混合損失の低減を図ることができる。
【0065】
第八実施形態において、運動量付与装置100は、ローラ101に限らずその他の運動量付与装置を用いて、内周側の面13上の水に内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与することができる。
【0066】
第七、第八実施形態の水中航走体1H,1Iの構成は、第二~第五実施形態に適用されてもよい。
【0067】
<第九実施形態>
次に、
図12を参照して本開示の第九実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0068】
[吸音材、防振材]
図12に示すように、第九実施形態の水中航走体1Jは、第一実施形態の水中航走体1と比較して、環状流路10の内面に設けられる吸音材111及び/又は防振材112をさらに備える。
図12においては、駆動源5、及び、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。環状流路10の内面には、吸音材111及び防振材112の一方あるいは両方が設けられる。吸音材111、防振材112は、プロペラ3において発生した音を吸収する。
図12において、吸音材111及び/又は防振材112が設けられる環状流路10の内面は、環状流路10の外周側の面14であるが、例えば内周側の面13であってもよい。
吸音材111は、例えばウレタンフォーム、グラスウール、フェルト等の多孔質型吸音材であってもよいし、例えば空洞に開口を形成した共鳴器を含む共鳴器型吸音材であってもよい。防振材112は、例えばゴムであってよい。
【0069】
第九実施形態の水中航走体1Jによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第九実施形態の水中航走体1Jでは、吸音材111、防振材112がプロペラ3において発生した音を吸収する。これにより、プロペラ3において発生した音が環状流路10の入口部11及び出口部12から機体2の外側に放出されることを抑制することができる。したがって、水中航走体1Jの静音化をさらに図ることができる。
【0070】
<第十実施形態>
次に、
図13を参照して本開示の第十実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0071】
[第一プロペラ、第二プロペラ]
図13に示すように、第十実施形態の水中航走体1Kは、第一実施形態の水中航走体1と同じ構成要素を備える。
図13においては、駆動源5、及び、駆動部4と駆動源5とを接続する電気配線61(
図1参照)が省略されている。
第十実施形態の水中航走体1Kでは、プロペラ3が、軸線O方向に2つ設けられている。すなわち、プロペラ3には、環状流路10の入口部11側から出口部12側に向けて順番に並ぶ第一プロペラ3Aと第二プロペラ3Bとがある。第一プロペラ3A及び第二プロペラ3Bの回転方向は互いに反対とされている。すなわち、第一プロペラ3A及び第二プロペラ3Bは、回転方向を反転させた二重反転プロペラを構成している。
【0072】
[駆動部]
これら2つのプロペラ3A,3Bをそれぞれ回転駆動する2つの駆動部4は、第一実施形態と同様に、機体外周部22に設けられている。これら2つの駆動部4は、第一実施形態と同様に、駆動源5(
図1参照)から電力が供給されることで回転駆動するモータである。
【0073】
第十実施形態の水中航走体1Kによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第十実施形態の水中航走体1Kでは、第一プロペラ3A及び第二プロペラ3Bの回転方向が互いに反対とされている。このため、第一プロペラ3Aで生じた旋回流を第二プロペラ3Bで回収することができる。これにより、第二プロペラ3Bの後側での旋回流損失を低減させることができる。したがって、水中航走体1Kの推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0074】
<第十一実施形態>
次に、
図14を参照して本開示の第十一実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0075】
図14に示すように、第十一実施形態の水中航走体1Lは、第十実施形態の水中航走体1Kと同様に、回転方向が互いに反対とされた第一プロペラ3A及び第二プロペラ3Bを有する。また、第十一実施形態の水中航走体1Lは、第十実施形態と同様に、これら2つのプロペラ3A,3Bをそれぞれ回転駆動する2つの駆動部4(4A,4B)を有する。これら2つの駆動部4A,4Bは、第一実施形態と同様に、駆動源5(
図1参照)から電力が供給されることで回転駆動するモータであってよい。
【0076】
[第一駆動部、第二駆動部]
第十一実施形態では、2つの駆動部4A,4Bのうち第一プロペラ3Aを回転駆動する第一駆動部4Aが、機体外周部22に設けられている。一方、2つの駆動部4A,4Bのうち第二プロペラ3Bを回転駆動する第二駆動部4Bは、機体内周部21に設けられている。第二駆動部4Bは、当該第二駆動部4Bから後方に延びる駆動軸42を介して第二プロペラ3Bに接続されている。第二駆動部4Bは、例えば機体2のうち機体内周部21よりも前側に配置されてもよい。
【0077】
第十一実施形態の水中航走体1Lによれば、第十実施形態と同様の効果を奏する。
また、第十一実施形態の水中航走体1Lでは、第一駆動部4Aが機体外周部22に設けられ、第二駆動部4Bが機体内周部21に設けられている。このため、2つのプロペラ3A,3Bを駆動する第一、第二駆動部4A,4Bの両方が機体外周部22に設けられる場合と比較して、機体外周部22における駆動部4A(第一駆動部4A)の設置スペースに余裕を持たせることができる。すなわち、第一、第二駆動部4A,4Bを簡単に機体2に設けることができる。
また、機体外周部22に設けられる駆動部は、機体内周部21に設けられる駆動部と比較して高価であるため、第二駆動部4Bを機体内周部21に設けることで、水中航走体1Lの製造コスト削減を図ることができる。
【0078】
第十一実施形態においては、例えば機体外周部22に設けられた第一駆動部4Aが、第二プロペラ3Bを回転駆動し、機体内周部21に設けられた第二駆動部4Bが、第一プロペラ3Aを回転駆動してもよい。
【0079】
第十、第十一実施形態の水中航走体1K,1Lの構成は、第二~第九実施形態に適用されてもよい。
【0080】
<第十二実施形態>
次に、
図15を参照して本開示の第十二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0081】
[推進装置部、メイン装置部]
図15に示すように、第十二実施形態の水中航走体1Mは、第十一実施形態と同じ構成要素を備える。
ただし、第十二実施形態では、機体2が推進装置部27とメイン装置部28とに分割されている。推進装置部27は、環状流路10、プロペラ3(3A,3B)及び駆動部4(4A,4B)を含む。推進装置部27は、機体2の後側の部分(機体後部)を構成する、すなわち機体外周部22及び機体内周部21を含む。
一方、メイン装置部28は、駆動源5を含む。メイン装置部28は、機体2の前側の部分(機体前部)を構成する。
【0082】
これら推進装置部27とメイン装置部28とが結合されることで、駆動部4と駆動源5とが接続される。具体的に、推進装置部27の前端には、推進装置部27の駆動部4に接続された接続端子271(前端接続端子271)が設けられている。駆動部4と前端接続端子271とは、電気配線61,64を介して接続されている。一方、推進装置部27の前端に対向するメイン装置部28の後端には、電気配線65を介してメイン装置部28の駆動源5に接続された接続端子281(後端接続端子281)が設けられている。なお、駆動源5と後端接続端子281とは、例えば直接接続されてもよい。推進装置部27とメイン装置部28とを結合すると、前端接続端子271と後端接続端子281とがつながり、駆動部4と駆動源5とが接続される。
【0083】
第十二実施形態の水中航走体1Mによれば、第十一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第十二実施形態の水中航走体1Mでは、同一種類のメイン装置部28に対して、様々な特性を有する複数種類の推進装置部27を結合するだけで、様々な種類の水中航走体を簡単に製造することができる。なお、推進装置部27の種類には、例えば速度性能を重視したもの、旋回性能を重視したもの、静音性を重視したもの、などが挙げられる。
【0084】
第十二実施形態の水中航走体1Mは、例えば2つのプロペラ3A,3Bをそれぞれ駆動する2つの駆動部4を機体外周部22に設けた第十実施形態に適用されてもよい。
【0085】
第十二実施形態の水中航走体1Mは、例えば1つのプロペラ3を有する水中航走体にも適用可能である、すなわち、第一~第九実施形態にも適用可能である。
【0086】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0087】
<付記>
上述の実施形態に記載の水中航走体1,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1Mは、例えば以下のように把握される。
【0088】
(1)第1の態様に係る水中航走体1,1C~1Mは、軸線Oを中心とした円筒面状をなすとともに軸線O方向に連続的に延びる外周面2aを有する機体2であって、前記外周面2aの軸線O方向の一部で全周にわたって開口する入口部11及び前記機体2の後端に開口する出口部12を有し、前記入口部11から前記出口部12に至る少なくとも一部において漸次縮径する環状流路10が形成された機体2と、前記環状流路10に設けられて前記軸線O回りに回転可能なプロペラ3と、前記プロペラ3を回転駆動する駆動部4と、を備える水中航走体1,1C~1Mである。
【0089】
上記構成の水中航走体1,1C~1Mでは、軸線O方向に連続的に延びる機体2の外周面2aに環状流路10の入口部11が開口している。これにより、水中航走体が水中を航走する際には、機体2の外周面2aのうち入口部11よりも前側において発生した境界層BLが入口部11から環状流路10に吸い込まれる。これにより、機体2の外周面2aのうち入口部11の後側における境界層BLの発達を抑制することができる。また、機体2の外周面2aは、軸線O方向に対応する入口部11の前後において連続的に延びているため、入口部11の後側においては、水を機体2の外周面2aに沿って大きい速度で滑らかに流すことができる。したがって、水中航走体の推進効率の向上を図ることができる。
【0090】
また、上記構成の水中航走体1,1C~1Mでは、プロペラ3が機体2の内側に形成された環状流路10に設けられている。これにより、プロペラ3において発生した音(騒音)が機体2の外側に放出される方向が制限される。具体的に、プロペラ3の音は、環状流路10の入口部11及び出口部12に限られる。これにより、水中航走体1の静音化を図ることができる。
【0091】
(2)第2の態様に係る水中航走体1,1C~1Mは、前記駆動部4が、前記機体2における前記環状流路10の外周側の部分である機体外周部22に設けられている(1)に記載の水中航走体1,1C~1Mである。
【0092】
上記構成の水中航走体1,1C~1Mでは、プロペラ3を回転駆動する駆動部4が環状流路10の外周側に位置する機体外周部22に設けられている。これにより、駆動部4が環状流路10の内周側に位置する機体内周部21に設けられる場合と比較して、機体2の径寸法が大きくなることを抑制しながら、環状流路10を機体外周部22と機体内周部21との間に形成することができる。
【0093】
(3)第3の態様に係る水中航走体1Cは、前記外周面2aにおける前記入口部11の後方に設けられた水平舵7を備える(1)又は(2)に記載の水中航走体1Cである。
【0094】
上記構成の水中航走体1Cにおいて、前述したように、外周面2aのうち水平舵7が設けられる入口部11の後側では、水中航走体1Cが水中を航走する際の水の流速が大きい。すなわち、水平舵7は流速が大きくなる機体2の部位に設けられている。これにより、水中航走体1Cが水中を航走する際の安定性向上を図ることができる。
【0095】
(4)第4の態様に係る水中航走体1Dは、前記環状流路10における前記プロペラ3の後方に設けられた方向舵8を備える(1)から(3)のいずれか一項に記載の水中航走体1Dである。
【0096】
上記構成の水中航走体1Dでは、方向舵8がプロペラ3の後方に設けられている。このため、方向舵8は、環状流路10においてプロペラ3によって加速された水流(すなわち流速が大きい水流)の向きを変える。これにより、より大きな偏向力を有する水中航走体1Dを提供することができる。
【0097】
(5)第5の態様に係る水中航走体1Eは、前記出口部12が開口する前記機体2の後端部に設けられた可変ノズル9を備える(1)から(4)のいずれか一項に記載の水中航走体1Eである。
【0098】
上記構成の水中航走体1Eでは、可変ノズル9によって大きな偏向力を得ることができる、また、水中航走体1Eの急激な加減速も行うことができる。
【0099】
(6)第6の態様に係る水中航走体1F,1Gは、前記機体2における前記環状流路10の外周側の面14及び内周側の面13のうち、前記プロペラ3が配置されたプロペラ配置領域14A,13Aが、前記軸線Oを含む断面で直線状に延びている(1)から(5)のいずれか一項に記載の水中航走体1F,1Gである。
【0100】
上記構成の水中航走体1F,1Gでは、プロペラ3が環状流路10のうち直線状に延びる部分に設けられている。このため、プロペラ3によって環状流路10を通る水を高い効率で加速することができる。したがって、水中航走体1F,1Gの推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0101】
(7)第7の態様に係る水中航走体1Gは、前記プロペラ配置領域14A,13Aが、前記軸線Oを含む断面で前記軸線Oに沿う直線状に延び、前記機体2における前記環状流路10の外周側の面14及び内周側の面13のうち前記プロペラ配置領域14A,13Aの後端から前記出口部12に至る後端部領域14G,13Gも、前記軸線Oを含む断面で前記軸線Oに沿う直線状に延びている(6)に記載の水中航走体1Gである。
【0102】
上記構成の水中航走体1Gでは、プロペラ3によって後方に圧送された水が環状流路10の出口部12から機体2の軸線Oに平行して後方に流出する。これにより、プロペラ3によって水を圧送する反力として得られる前方への推進力も軸線Oに平行する。したがって、水が環状流路10の出口部12から機体2の軸線Oに対して傾斜して後方に流出する場合と比較して、水中航走体の推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0103】
(8)第8の態様に係る水中航走体1H,1Iは、前記機体2における前記環状流路10の内周側の部分である機体内周部21の径寸法は、前記プロペラ3よりも後方において、前記出口部12に近づくにしたがって小さくなり、前記出口部12においてゼロとなる(1)から(6)のいずれか一項に記載の水中航走体1H,1Iである。
【0104】
上記構成の水中航走体1H,1Iにおいて、環状流路10の出口部12は、軸線O方向から見て環状ではなく円形状に形成される。これにより、環状流路10の出口部12から後方に流出する水の流速分布がドーナツ状となることを抑制又は防止して、流体混合損失の低減を図ることができる。
【0105】
(9)第9の態様に係る水中航走体1Iは、前記機体内周部21からなる前記環状流路10の内周側の面13のうち、前記プロペラ3よりも後方側の領域に設けられ、前記内周側の面13上の水に前記内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与する運動量付与装置100を備える(8)に記載の水中航走体1Iである。
【0106】
上記構成の水中航走体1Iでは、運動量付与装置100がプロペラ3の後方において環状流路10の内周側の面13に沿って流れる水に、内周側の面13に沿って後方に向かう運動量を付与する。これにより、内周側の面13に沿って後方に向かう水の流れが内周側の面13から剥離することを抑制することができる。したがって、流体混合損失の低減を図ることができる。
【0107】
(10)第10の態様に係る水中航走体1Jは、前記環状流路10の内面に設けられる吸音材111及び/又は防振材112を備える(1)から(9)のいずれか一項に記載の水中航走体1Jである。
【0108】
上記構成の水中航走体1Jでは、プロペラ3において発生した音(騒音)が吸音材111、防振材112において吸収される。これにより、水中航走体の静音化をさらに図ることができる。
【0109】
(11)第11の態様に係る水中航走体1K~1Mは、前記プロペラ3(3A,3B)が、前記軸線O方向に2つ設けられ、2つの前記プロペラ3A,3Bの回転方向は互いに反対とされている(1)から(10)のいずれか一項に記載の水中航走体1K~1Mである。
【0110】
上記構成の水中航走体1K~1Mでは、2つのプロペラ3A,3Bの回転方向を反転させた二重反転プロペラが構成される。このため、上流側のプロペラ3Aで生じた旋回流を下流側のプロペラ3Bで回収することができる。これにより、下流側のプロペラ3Bの後側での旋回流損失を低減させることができる。したがって、水中航走体の推進効率の向上をさらに図ることができる。
【0111】
(12)第12の態様に係る水中航走体1L,1Mは、前記駆動部4のうち一方の前記プロペラ3Aを回転駆動する第一駆動部4Aが、前記機体2における前記環状流路10の外周側の部分である機体外周部22に設けられ、前記駆動部4のうち他方の前記プロペラ3Bを回転駆動する第二駆動部4Bが、前記機体2における前記環状流路10の内周側の部分である機体内周部21に設けられている(11)に記載の水中航走体1L,1Mである。
【0112】
上記構成の水中航走体1L,1Mでは、2つのプロペラ3A,3Bを駆動する第一、第二駆動部4A,4Bの両方が機体外周部22に設けられる場合と比較して、機体外周部22における駆動部4A(第一駆動部4A)の設置スペースに余裕を持たせることができる。すなわち、第一、第二駆動部4A,4Bを簡単に機体2に設けることができる。
また、機体外周部22に設けられる駆動部は、機体内周部21に設けられる駆動部と比較して高価であるため、第二駆動部4Bを機体内周部21に設けることで、水中航走体の製造コスト削減を図ることができる。
【0113】
(13)第13の態様に係る水中航走体1Mは、前記機体2が、前記環状流路10、前記プロペラ3及び前記駆動部4を含む推進装置部27と、少なくとも前記駆動部4に駆動力を供給する駆動源5を含み、前記推進装置部27に結合されることで前記駆動部4と前記駆動源5とが接続されるメイン装置部28と、に分割されている(1)から(12)のいずれか一項に記載の水中航走体1Mである。
【0114】
上記構成の水中航走体1Mでは、同一種類のメイン装置部28に対して、様々な特性を有する複数種類の推進装置部27を結合するだけで、様々な種類の水中航走体を簡単に製造することができる。
【符号の説明】
【0115】
1,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1M…水中航走体、2…機体、2a…外周面、2b…後端面、3…プロペラ、3A…第一プロペラ、3B…第二プロペラ、4…駆動部、4A…第一駆動部、4B…第二駆動部、5…駆動源、7…水平舵、8…方向舵、9…可変ノズル、10…環状流路、11…入口部、11A…前端、11B…後端、12…出口部、13…内周側の面、13A…第二プロペラ配置領域(プロペラ配置領域)、13B…第二隣接領域(隣接領域)、13G…第二後端部領域(後端部領域)、14…外周側の面、14A…第一プロペラ配置領域(プロペラ配置領域)、14B…第一隣接領域(隣接領域)、14G…第一後端部領域(後端部領域)、20…機体本体、21…機体内周部、22…機体外周部、23…前部ストラット、24…後部ストラット、24A…前側部分、24B…後側部分、27…推進装置部、28…メイン装置部、31…羽根、42…駆動軸、61,62,63,64,65…電気配線、80…舵駆動部、90…ノズル駆動部、91…パネル、92…駆動軸、100…運動量付与装置、101…ローラ、111…吸音材、112…防振材、271…前端接続端子、281…後端接続端子、BL…境界層、O…軸線