(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051846
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】包装用積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20240404BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240404BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240404BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D65/40 D
B32B27/10
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158205
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】上田 和茂
(72)【発明者】
【氏名】永坂 彩芽
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB85
3E086CA01
4F100AA19D
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4F100AK41A
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4F100GB15
4F100GB16
4F100JD01D
4F100JK01
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】 環境負荷低減のために紙比率を高めた包装袋であっても、高い耐突き刺し性を有する包装用積層体を提供する。
【解決手段】 二軸延伸ポリアミドフィルム、紙基材層及び/又は不織布基材層、及びシーラントフィルムを含む積層体であって、前記紙基材層及び/又は不織布基材層の重量比率が積層体に対して50%以上であり、積層体の突き刺し強度が8.0N以上である、積層体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリアミドフィルム、紙基材層及び/又は不織布基材層、及びシーラントフィルムを含む積層体であって、前記紙基材層及び/又は不織布基材層の重量比率が積層体に対して50%以上であり、積層体の突き刺し強度が8.0N以上である、積層体。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みが8~15μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムが、コア層及びスキン層を含み、前記コア層はポリアミド6樹脂を80質量%以上、及び脂肪族ポリエステル共重合体又は芳香族脂肪族ポリエステル共重合体を1~20質量%含み、前記スキン層はポリアミド6樹脂を70質量%以上含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル樹脂又は芳香族脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、及びポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリエステル樹脂である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリアミドフィルム層と紙基材層及び/又は不織布基材層との間にバリア層を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記バリア層が無機薄膜層である、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記無機蒸着層が酸化アルミニウム又は酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記バリア層が金属箔層である、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体を用いた包装袋。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体を用いた包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙又は不織布を主たる構成成分とし、二軸延伸ポリアミドフィルムが積層された包装用積層体、及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出に伴う地球温暖化やマイクロプラスチック等の海洋汚染等の環境負荷を抑制する観点から、食品包装用フィルムをはじめとした包装袋の材質を樹脂製から紙製に変更する紙化が注目されている。特許文献1では、紙成分を含む紙層と、前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上である包装袋が開示されている。当該技術はペーパータオルやティシューペーパー等のシートが収容されたシート包装体としてのものであるが、内容物が水物であったり、冷凍食品などの硬いものの場合には、落下したときに破袋しないことや、硬い内容物の突き刺しによって穴が開かないこと、すなわち耐突き刺し性が必要となることから、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、環境負荷低減のために紙比率を高めた包装袋であっても、高い耐突き刺し性を有する包装用積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕 二軸延伸ポリアミドフィルム、紙基材層及び/又は不織布基材層、及びシーラントフィルムを含む積層体であって、前記紙基材層及び/又は不織布基材層の重量比率が積層体に対して50%以上であり、積層体の突き刺し強度が8.0N以上である、積層体。
〔2〕 前記二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みが8~15μmである、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 前記二軸延伸ポリアミドフィルムが、コア層及びスキン層を含み、前記コア層はポリアミド6樹脂を80質量%以上、及び脂肪族ポリエステル共重合体又は芳香族脂肪族ポリエステル共重合体を1~20質量%含み、前記スキン層はポリアミド6樹脂を70質量%以上含む、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 前記脂肪族ポリエステル樹脂又は芳香族脂肪族ポリエステル樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、及びポリブチレンアジペートテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のポリエステル樹脂である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層体。
〔5〕 前記二軸延伸ポリアミドフィルム層と紙基材層及び/又は不織布基材層との間にバリア層を有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層体。
〔6〕 前記バリア層が無機薄膜層である、〔5〕に記載の積層体。
〔7〕 前記無機蒸着層が酸化アルミニウム又は酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である、〔6〕に記載の積層体。
〔8〕 前記バリア層が金属薄層である。〔5〕に記載の積層体。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層体を用いた包装袋。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層体は、厚みが薄く、耐突き刺し性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムと紙基材又は不織布基材を用いることにより、紙比率又は不織布比率を高めた包装袋であっても、優れた耐突き刺し性を有する包装袋を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、二軸延伸ポリアミドフィルム、紙基材層及び/又は不織布基材層、及びシーラントフィルムを少なくとも含む積層体である。二軸延伸ポリアミドフィルム、紙基材層及び/又は不織布基材層、及びシーラントフィルムは、この順に構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の積層体の構成として、紙基材層及び/又は不織布基材層の重量比率が積層体に対して50%以上であることが好ましい。積層体に対する紙基材層の重量比が50%を超える場合、素材の識別マークとして紙マークを使用することができる。
【0009】
紙基材としては、これが紙容器を構成する基本素材となることから、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができ、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、その他等の各種の紙基材を使用することができる。また、本発明において、上記の紙基材としては、坪量約30~600g/m2のもの、好ましくは、坪量約40~450g/m2のものを使用することができる。
【0010】
不織布基材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、生分解性繊維、パルプ、コットンなどを使用してもよく、ポリプロピレンを好適に用いることができる。不織布としては短繊維不織布及び長繊維不織布のいずれを用いることもできる。
【0011】
紙基材と不織布基材は単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。石油由来プラスチックの使用削減の観点からは、積層体に紙基材を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の積層体の突刺し強度は8.0N以上であることが好ましい。より好ましくは8.5N以上であり、更に好ましくは9.0N以上である。突き刺し強度を8.0N以上とすることで、固形の内容物などを充填した際でも、内容物が包装袋に突き刺さることによって穴が開いたり、輸送時に外的因子によって包装袋に穴が開くことを抑制することができる。
【0013】
本発明に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、8μm以上、15μm以下であることが好ましい。より好ましくは、8μm以上、12μm以下の範囲である。本発明は、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みを薄くして、紙基材層及び/又は不織布基材層の重量比を上げながら、かつ必要な耐突き刺し性を有していることが特徴の一つである。
【0014】
本発明に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムは、160℃、10分での熱収縮率が流れ方向(以下MD方向と略記する)及び幅方向(以下TD方向と略記する)ともに0.6~3.0%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.6~2.5%である。熱収縮率が、3.0%を超える場合には、ラミネートや印刷など、次工程で熱がかかる場合にカールや収縮が発生する場合がある。また、シーラントフィルムとのラミネート強度が弱くなる場合がある。熱収縮率を0.6%未満とすることは可能ではあるが、力学的に脆くなる場合がある。また、生産性が悪化する場合がある。
【0015】
本発明に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムのヘイズ値は、7.0%以下であることが好ましい。より好ましくは6.5%以下であり、更に好ましくは6.0%以下である。ヘイズ値が7.0%以下であると透明性や光沢が良いので、包装袋に使用した場合、きれいな印刷ができ商品価値を高める。
【0016】
本発明に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムの静摩擦係数は、0.70以下であることが好ましい。より好ましくは0.65以下であり、更に好ましくは0.60以下である。静摩擦係数が0.70以下であることにより、積層フィルムの滑り性がよく、包装袋への加工時にシワを防止し、良好な加工特性を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムの好ましい態様の一つは、コア層とスキン層を含む二軸延伸ポリアミドフィルムである。より好ましくは、スキン層、コア層、スキン層の順に構成された二軸延伸ポリアミドフィルムである。以下、コア層及びスキン層の代表例を説明する。
【0018】
コア層は、ポリアミド6樹脂を80質量%以上含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。コア層は更に脂肪族ポリエステル樹脂又は芳香族脂肪族ポリエステル樹脂を1~20質量%を含むことができる脂肪族ポリエステル樹脂又は芳香族脂肪族ポリエステル樹脂が1質量%以上含むことにより耐屈曲ピンホール性の改善効果を得ることができる。20質量%を超えると、フィルムが柔らかくなりすぎ、突き刺し強度や衝撃強度が低下するばかりか、フィルムが伸びやすくなるために、印刷などの加工時にピッチずれなどが起きやすくなる。
【0019】
コア層に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂又は芳香族脂肪族ポリエステル樹脂としてはガラス転移温度(Tg)をマイナス30℃以下にもつものが好ましい。ガラス転移温度をマイナス30℃以下に持つポリエステル共重合体を用いることによって、冷凍環境下でも優れた耐ピンホール性を発現することができる。中でも好ましい脂肪族ポリエステル樹脂としてはポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートが、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペートテレフタレートが、柔軟な特性を有する点で好ましい。
【0020】
コア層には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0021】
スキン層は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。ポリアミド6樹脂を70質量%以上含むことで優れた衝撃強度などの機械的強度や酸素などのガスバリア性を持った二軸延伸ポリアミドフィルム得られる。ポリアミド6樹脂としては、前記のコア層で使用するポリアミド6樹脂と同様のものを使用できる。
【0022】
スキン層を包装袋の外側に用いる場合は、耐摩擦ピンホール性が必要なので、ポリアミド系エラストマーやポリオレフィン系エラストマーのような軟らかい樹脂やボイドを多量に発生させる物質を含有させることは好ましくない。
【0023】
スキン層には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤をスキン層の表面に持たせる機能に応じて含有させることができる。
【0024】
スキン層には、フィルムの滑り性を良くするために、滑剤として微粒子や有機潤滑剤などを含有させることが好ましい。滑り性を良くすることで、フィルムの取扱い性が向上するとともに、擦れによる包装袋の破袋を減少させる。
【0025】
前記の微粒子としては、シリカ、カオリン、ゼオライト等の無機微粒子、アクリル系、ポリスチレン系等の高分子系有機微粒子等の中から適宜選択して使用することができる。なお、透明性と滑り性の面から、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0026】
前記の微粒子の好ましい平均粒子径は0.5~5.0μmであり、より好ましくは1.0~3.0μmである。平均粒子径が0.5μm未満であると、良好な滑り性を得るのに多量の添加量が要求される。一方、5.0μmを超えると、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎて外観が悪くなる傾向がある。
【0027】
本発明の包装用積層体の基材層として用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムに用いるシリカ微粒子としては、一般に吸油量(mL/100g)で表されるシリカの細孔容積の異なる2種以上のシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0028】
一般に、細孔容積の大きなシリカ粒子を用いることで、フィルム延伸時の応力によって凝集したシリカが潰れることによってボイドによるヘイズの上昇を低減することができるが、二軸延伸ポリアミドフィルムの延伸後の厚みが12μm未満の厚みになると、フィルムの腰感が低下するため、上述したような細孔容積の大きなシリカ粒子だけでは、十分な滑り性を得るためには多くのシリカ粒子を添加する必要があり、結果としてフィルムのヘイズが上昇し、外観を悪化させてしまうこととなる。一方で、フィルム延伸時の応力によってつぶれにくい、すなわち細孔容積の小さなシリカ粒子の使用のみでは、表面の突起を形成しやすい分、滑り性を効率的に付与できるが、逆に延伸時応力により発生するシリカとポリアミド樹脂の界面に発生するボイドによって、フィルムのヘイズが上昇し、外観を悪化させてしまう恐れがある。そこで上記問題点を解決する手段として、細孔容積の異なる2種以上のシリカ粒子を併用することが好ましい。
【0029】
細孔容積の大きいシリカ粒子(シリカ粒子A)の吸油量(mL/100g)の範囲としては、250~400mL/100gが好ましく、270~380mL/gが更に好ましく、280~370mL/gが最も好ましい。細孔容積の小さいシリカ粒子(シリカ粒子B)の吸油量の範囲としては、90~240mL/100gの範囲が好ましく、100~230mL/gがさらに好ましく、100~220mL/100gが最も好ましい。
【0030】
スキン層に含有することができる有機潤滑剤としては、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。有機潤滑剤の含有量は、スキン層を構成する樹脂組成物を100質量%として、好ましくは0.01~0.40質量%であり、より好ましくは0.05~0.30質量%である。
【0031】
スキン層には、フィルムの滑り性を良くする目的でポリアミド6以外のポリアミド系樹脂、例えば、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド11、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などを添加することができる。特にポリアミドMXD6樹脂が好ましく、1~10質量%添加することが好ましい。1質量%以上含むことにより、滑り性改善効果を得ることができる。10質量%より多い場合は、フィルムの滑り性改善効果が飽和する場合がある。
【0032】
本発明の基材層として用いられる二軸延伸ポリアミドフィルムの各層の厚み構成は、コア層の厚みを、コア層とスキン層の合計厚みの50~93%とすることが好ましく、60~93%とすることがより好ましい。
【0033】
本発明の積層体は、二軸延伸ポリアミドフィルム層と紙基材層及び/又は不織布基材層との間にバリア層を有していてもよい。バリア層はガスバリア性を付与するために設けることができ、バリア層として、無機薄膜層又は金属箔層を用いることができる。
【0034】
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、透明性とガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、無機薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下することがある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやA12O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0035】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0036】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とA12O3の混合物、あるいはSiO2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0037】
バリア層に用いる金属箔層を構成する金属は、特に限定されず、アルミニウムやマグネシウム等から構成される金属箔を使用できる。金属箔の厚さは、3μm以上100μm以下であることが好ましく、6μm以上25μm以下であることがより好ましい。金属箔は、接着層を介して積層できる。
【0038】
本発明の積層体は、シーラントフィルムを有することが好ましい。シーラントフィルムとしては、未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0039】
本発明の積層フィルムの層構成の例としては、/で層の境界を表わすと、例えば、ONY/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/紙/接/CPP、ONY/PE/紙/接/LLDPE、PET/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、PET/接/ONY/接/紙/PE/LLDPE、PET/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、PET/接/ONY/接/紙/接/CPP、ONY/接/PET/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/PET/接着/紙/PE/LLDPE、ONY/接/PET/接/紙/接/CPP、ONY/接着/紙/PE/LLDPE、ONY/接/紙/PE/CPP、OPP/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/EVOH/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/EVOH/接/紙/接/CPP、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/紙/接着/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/紙/PE/LLDPE、ONY/PE/アルミ蒸着PET/PE/紙/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/紙/接/CPP、PET/接/アルミ蒸着PET/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、CPP/接/ONY/接/紙/接/LLDPE、ONY/接/紙/接/アルミ蒸着LLDPE、ONY/接/紙/接/アルミ蒸着CPPなどが挙げられる。
なお上記層構成に用いた各略称は以下の通りである。
紙:紙基材、ONY:本発明の二軸延伸ポリアミドフィルム、PET:延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、LLDPE:未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム、CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:延伸ポリプロピレンフィルム、PE:押出しラミネート又は未延伸の低密度ポリエチレンフィルム、EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、接:フィルム同士を接着させる接着剤層、アルミ蒸着はアルミニウムが蒸着されていることを表わす。
【実施例0040】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。特に記載しない場合は、測定は2 3℃、相対湿度65%の環境の測定室で行った。
【0041】
(1)厚み
フィルムのTD方向に10等分して(幅が狭いフィルムについては厚みを測定できる幅が確保できる幅になるよう当分する)、MD方向に100mmのフィルムを10枚重ねで切り出し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で2時間以上コンディショニングする。テスター産業社製厚み測定器で、それぞれのサンプルの中央の厚み測定し、その平均値を厚みとした。
なお、二軸延伸ポリアミドフィルムを構成する各層の厚みは、各層の樹脂の吐出量の比をもとに算出した。
【0042】
(2)ヘイズ値
東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、JIS-K-7105に準拠し測定した。
【0043】
(3)静摩擦係数
JIS-C2151に準拠し、基材層表面同士の静摩擦係数を評価した。なお、試験片の大きさは、幅130mm、長さ250mm、試験速度は150mm/分で行った。
【0044】
(4)熱収縮率
試験温度160℃、加熱時間10分間とした以外は、JIS C2318に記載の寸法変化試験法に準じて下記式によって熱収縮率を測定した。
熱収縮率=[(処理前の長さ-処理後の長さ)/処理前の長さ]×100(%)
【0045】
(5)面配向度
フィルムサンプルについてJIS K 7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルムMD方向の屈折率(nx)、TD方向の屈折率(ny)を測定し、下記式により面配向係数を算出した。
面配向係数(ΔP)=(nx+ny)/2-nz
【0046】
(8)フィルム及び積層体の突刺し強度
二軸延伸ポリアミドフィルム及び積層体を5cm角にサンプリングし、イマダ社製デジタルフォースゲージ「ZTS-500N」、電動計測スタンド「MX2-500N」及び突き刺し治具「TKS-250N」を用いて、JIS Z1707に準じてフィルムの突き刺し強度を測定した。単位はNで示した。
【0047】
(9)シーラントフィルムの密度及び坪量
シーラントフィルムの密度は、JIS K7112:1999 年のD法(密度こうばい管)に準じて密度を評価した。単位はg/cm3である。シーラントフィルムの坪量は、上記で求めた密度とフィルムの厚みから算出した。坪量の単位はg/m2である。
【0048】
(10)紙基材の坪量
紙基材の坪量をJIS P8124:2011の規定に準拠して測定した。坪量の単位は、g/m2である。
【0049】
(11)紙基材の重量比率
積層体に対する紙基材層の重量比率(%)を 下記式により算出した。
重量比率(%)=100×紙成分の坪量[g/m2]/積層体の坪量[g/m2]
【0050】
(製造例)
(基材1)
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、フィードブロック法でスキン層/コア層/スキン層の構成で積層してTダイから下記樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み130μmの未延伸フィルムを得た。
【0051】
コア層とスキン層の樹脂組成物は以下のとおりである。
コア層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)100質量部。
スキン層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)95質量部、及びポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、相対粘度2.1、融点237℃)5.0質量部、シリカ粒子A(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径3.9μm、、吸油量320ml/100g)0.54質量部、シリカ粒子B(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.7μm、吸油量170ml/100g)0.075質量部、及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
【0052】
なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、合計厚みが10μm、コア層の厚みが8μm、スキン層の厚みが表裏それぞれ1μmずつになるように、フィードブロックの構成と押出機の吐出量を調整した。
【0053】
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムを連続的にテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、218℃で熱固定処理した後、218℃で7%緩和処理を行い、ついで線状低密度ポリエチレンフィルムとドライラミネートする側の表面をコロナ放電処理して二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表1に示した。
【0054】
(基材2)
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、フィードブロック法でスキン層/コア層/スキン層の構成で積層してTダイから下記樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み130μmの未延伸フィルムを得た。
【0055】
コア層とスキン層の樹脂組成物は以下のとおりである。
コア層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)89.5質量部、及びポリブチレンテレフタレートアジペート(BASF社製 商品名「エコフレックス」)、ガラス転移温度-31.3℃、融点120℃)10.5質量部からなるポリアミド樹脂組成物。
スキン層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)95質量部、及びポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、相対粘度2.1、融点237℃)5.0質量部、シリカ粒子A(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径3.9μm、、吸油量320ml/100g)0.54質量部、シリカ粒子B(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.7μm、吸油量170ml/100g)0.075質量部、及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
【0056】
なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、合計厚みが10μm、コア層の厚みが8μm、スキン層の厚みが表裏それぞれ1μmずつになるように、フィードブロックの構成と押出機の吐出量を調整した。
【0057】
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムを連続的にテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、218℃で熱固定処理した後、218℃で7%緩和処理を行い、ついで線状低密度ポリエチレンフィルムとドライラミネートする側の表面をコロナ放電処理して二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表1に示した。
【0058】
(基材3~7及び基材9~10)
コア層とスキン層の原料組成及びコア層とスキン層の厚みを表1のように変更した以外は、基材1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表1に示した。
【0059】
(基材8)
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、フィードブロック法でスキン層/コア層/スキン層の構成で積層してTダイから下記樹脂組成物の溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み130μmの未延伸フィルムを得た。
【0060】
コア層とスキン層の樹脂組成物は以下のとおりである。
コア層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)89.5質量部、及びポリブチレンテレフタレートアジペート(BASF社製 商品名「エコフレックス」)、ガラス転移温度-31.3℃、融点120℃)10.5質量部からなるポリアミド樹脂組成物。
スキン層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)95質量部、及びポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、相対粘度2.1、融点237℃)5.0質量部、シリカ粒子A(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径3.9μm、、吸油量320ml/100g)0.54質量部、シリカ粒子B(多孔質シリカ微粒子、富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.7μm、吸油量170ml/100g)0.075質量部、及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
【0061】
次に、未延伸フィルムを同時二軸延伸機に導き、210℃、2秒の予熱処理を行った後、MD延伸倍率3.2倍、TD延伸倍率3.3倍で195℃、2秒の同時二軸延伸を施した。続いて温度220℃、5秒の熱固定処理を行った後、5%のリラックス処理を行い、厚み10μmのポリアミドフィルムを得た。
【0062】
【0063】
【0064】
(無機薄膜層の形成)
基材2のコロナ処理を行った面に二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物の無機薄膜層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに蒸着源として、3mm~5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)とを用いた。得られた無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(質量比)=60/40であった。
【0065】
[積層体の作製]
(実施例1)
上記基材1と坪量54g/m2の両更クラフト紙を、ドライラミネーション用接着剤(三井化学社製タケラック(登録商標)A-950)を用いて乾燥後の接着剤層が1.5μmとなるように積層した。上記基材層1/紙積層体の紙側にさらにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡株式会社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行い実施例1の積層体を得た。得られた積層体の評価結果を表2に示す。
【0066】
(実施例2~9、比較例1~2)
実施例1の積層体作製方法に対して、使用した基材を表2に示した基材に変更した以外は、実施例1に記載の方法にて実施例2~9及び比較例1,2の積層体を得た。
得られた積層体の評価結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
表2に示したとおり、実施例の積層体は紙比率を高めた構成であっても、高い耐突き刺し性を有する包装用積層体が得られていた。
比較例1の積層体は、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みが薄すぎるため積層体としての突き刺し強度が悪化していた。
比較例2の積層体は、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みが厚く、紙の重量比率が50%未満となっており、環境負荷低減の観点で不足していた。
【0069】
(実施例10)
実施例2で作製した二軸延伸ポリアミドフィルムを使用して三方シールタイプ及びピロータイプの包装袋を作製した。外観が良好で落下衝撃テストで破れにくい包装袋を作製できた。