(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051852
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電力調達装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240404BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240404BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158219
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北川 友葵
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】國政 秀太郎
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC08
5G064CB06
5G064DA01
5G066AA01
5G066AA03
5G066AE09
5G066HA15
5G066HA17
5G066HB07
5G066JA05
5G066KB07
(57)【要約】
【課題】インバランスの発生を抑制できる電力調達装置を提供する。
【解決手段】電力供給者から電力系統に電力を供給させることで電力の調達を行う電力調達装置であって、電力供給者は、燃料電池装置及び電力消費装置を備え、燃料電池装置の出力電力から電力消費装置の消費電力が減算された余剰電力を逆潮流電力として電力系統に供給でき、燃料電池装置の出力電力を所定の最大変化速度で変化させることができる場合に、所定の対象時間帯の終了時点での燃料電池装置の出力電力を所定の終了時出力電力にするという前提で、対象時間帯において電力供給者が電力系統に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給者から電力系統に電力を供給させることで電力の調達を行う電力調達装置であって、
前記電力供給者は、燃料電池装置及び電力消費装置を備え、前記燃料電池装置の出力電力から前記電力消費装置の消費電力が減算された余剰電力を逆潮流電力として前記電力系統に供給でき、
前記燃料電池装置の出力電力を所定の最大変化速度で変化させることができる場合に、所定の対象時間帯の終了時点での前記燃料電池装置の出力電力を所定の終了時出力電力にするという前提で、前記対象時間帯において前記電力供給者が前記電力系統に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かを判定する電力調達装置。
【請求項2】
前記目標逆潮流電力量は、前記対象時間帯に前記電力供給者が前記電力系統に供給可能な前記逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から、当該最大逆潮流電力量を超えない範囲内で電力取引市場から調達できる電力量が減算された値に設定される請求項1に記載の電力調達装置。
【請求項3】
前記対象時間帯の開始時点から当該対象時間帯の途中の過渡時点までの間、前記出力電力を一定の仮定値にして前記燃料電池装置を動作させ、且つ、前記過渡時点から前記終了時点までの間、前記仮定値から前記終了時出力電力まで前記最大変化速度で前記出力電力を変化させながら前記燃料電池装置を動作させるという前提で、
前記対象時間帯の各時点での前記燃料電池装置の前記出力電力から、前記対象時間帯での前記電力消費装置の予測消費電力の平均値が減算された予測余剰電力を前記対象時間帯で積算して得られる値を前記逆潮流電力量として決定する請求項1又は2に記載の電力調達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給者から電力系統に電力を供給させることで電力の調達を行う電力調達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統には、従来から有る大規模な発電所だけでなく、住宅や事業所などの施設に設置された発電装置や充放電装置等の電源装置も接続されている。また、施設に設置された電力消費装置も電力系統に接続されている。近年では、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念の下で、発電事業者が、需要家の施設に設置された上述のような電源装置及び電力消費装置などの需要家側エネルギーリソースの動作を制御することが試みられている。
【0003】
例えば、発電事業者が、電源装置を保有する電力供給者から電力を調達する場合、電力供給者の電源装置の出力電力から電力消費装置の消費電力を減算した値である余剰電力が、その電力供給者からの調達電力になる。例えば、
図8に示すように、時刻12時から時刻14時までの4つの30分コマを考えた場合、発電事業者は、電力供給者の電源装置を所定の出力電力(0.7kW)で動作させるように遠隔制御することで、各30分コマにおいて図示するような余剰電力を発生させ、電力系統へ逆潮流させることができる。
【0004】
尚、発電事業者は例えば電力取引市場などの別の電力調達先からも電力を調達できるため、特定の30分コマにおいて、別の電力調達先から電力を調達する場合の電力調達単価が、電力供給者から余剰電力を買い取る場合の電力調達単価よりも安い時間帯には、別の電力調達先から電力を調達する方が好ましい。
図9は、発電事業者が、時刻12:30から時刻13時の間の対象時間帯の30分コマにおいて、電力取引市場から電力を調達する場合の例である。この場合、発電事業者は、時刻12時30分までの間は電力供給者の電源装置を所定の出力電力(0.7kW)で動作させるように遠隔制御し、時刻12時30分から時刻13時の間の対象時間帯は電力供給者の電源装置を出力電力xで動作させるように遠隔制御する。その結果、時刻12時30分から時刻13時の間の対象時間帯は、図示する逆潮流電力量が電力系統へ供給される。
【0005】
このように、発電事業者は、例えば特定の電力調達先の電力調達単価が安くなった場合には、その特定の電力調達先から電力を調達するような変更を行うことで、より経済的な電力調達が可能となる。
【0006】
尚、発電事業者が調達する電力については、発電所及び電力取引市場などの電力調達先や、上述したような電源装置を備える電力供給者などを含む発電バランシンググループの枠組みの中で30分コマごとに調達する電力の計画値と実績値を一致させる必要がある。そして、一致しなかった差分については、発電事業者にはインバランスとしての精算が課される。
【0007】
特許文献1(特開2019-215693号公報)には、インバランスペナルティを低減することを目的とした電力取引支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
尚、電力供給者の電源装置が燃料電池装置である場合、出力電力の変化速度には上限がある。そのため、
図10に示すように、時刻13時になってから燃料電池装置の出力電力の上昇を開始させたとしても、実際に燃料電池装置の出力電力が0.7kWになるまでにはある程度の時間が必要になり、その時間の分だけ不足電力が発生する。つまり、本来ならば時刻13時の時点、即ち、時刻12時30分から時刻13時の間の対象時間帯の終了時点で燃料電池装置の出力電力が0.7kWでなければならないにも関わらず、そうなっていない。その結果、次の時刻13時から時刻13時30分の間の時間帯に、発電実績値が事前に立案した発電計画値と一致しないというインバランスが発生する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インバランスの発生を抑制できる電力調達装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る電力調達装置の特徴構成は、電力供給者から電力系統に電力を供給させることで電力の調達を行う電力調達装置であって、
前記電力供給者は、燃料電池装置及び電力消費装置を備え、前記燃料電池装置の出力電力から前記電力消費装置の消費電力が減算された余剰電力を逆潮流電力として前記電力系統に供給でき、
前記燃料電池装置の出力電力を所定の最大変化速度で変化させることができる場合に、所定の対象時間帯の終了時点での前記燃料電池装置の出力電力を所定の終了時出力電力にするという前提で、前記対象時間帯において前記電力供給者が前記電力系統に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かを判定する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、対象時間帯の終了時点での燃料電池装置の出力電力を所定の終了時出力電力(例えば、対象時間帯の次の時間帯の開始時点で燃料電池装置が出力すべき電力など)にすることで、対象時間帯の次の時間帯ではインバランスが発生しないようにできる。
【0013】
尚、対象時間帯の終了時点での燃料電池装置の出力電力を所定の終了時出力電力にするということは、必要とされていない逆潮流電力を発生させることにもつながる。そのため、対象時間帯での逆潮流電力量が増加して、対象時間帯でインバランスが発生する可能性がある。ところが本特徴構成では、対象時間帯において電力供給者が電力系統に供給する逆潮流電力量を、その逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差がその目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かの判定を行う。つまり、特定の対象時間帯の次の時間帯ではインバランスが発生しないようにした場合に、その特定の対象時間帯でインバランスが発生し得るか否かを事前に検証できる。
従って、インバランスの発生を抑制できる電力調達装置を提供できる。
【0014】
本発明に係る電力調達装置の別の特徴構成は、前記目標逆潮流電力量は、前記対象時間帯に前記電力供給者が前記電力系統に供給可能な前記逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から、当該最大逆潮流電力量を超えない範囲内で電力取引市場から調達できる電力量が減算された値に設定される点にある。
【0015】
対象時間帯において、電力取引市場から電力を調達する場合の電力調達単価が、電力供給者の逆潮流電力を買い取る場合の電力調達単価よりも安い場合には、対象時間帯に電力供給者が電力系統に供給する予定であった逆潮流電力量の一部を電力取引市場から調達する計画を立ててもよい。
その場合、本特徴構成では、目標逆潮流電力量を、対象時間帯に電力供給者が電力系統に供給可能な逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から、最大逆潮流電力量を超えない範囲内で電力取引市場から調達できる電力量が減算された値に設定する。そして、対象時間帯において電力供給者が電力系統に供給する逆潮流電力量を、その逆潮流電力量と目標逆潮流電力量との差がその目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かの判定を行うことができる。
【0016】
本発明に係る電力調達装置の更に別の特徴構成は、前記対象時間帯の開始時点から当該対象時間帯の途中の過渡時点までの間、前記出力電力を一定の仮定値にして前記燃料電池装置を動作させ、且つ、前記過渡時点から前記終了時点までの間、前記仮定値から前記終了時出力電力まで前記最大変化速度で前記出力電力を変化させながら前記燃料電池装置を動作させるという前提で、
前記対象時間帯の各時点での前記燃料電池装置の前記出力電力から、前記対象時間帯での前記電力消費装置の予測消費電力の平均値が減算された予測余剰電力を前記対象時間帯で積算して得られる値を前記逆潮流電力量として決定する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、対象時間帯の開始時点からその対象時間帯の途中の過渡時点までの間、出力電力を一定の仮定値にして燃料電池装置を動作させ、且つ、対象時間帯の過渡時点から終了時点までの間、仮定値から終了時出力電力まで最大変化速度で出力電力を変化させながら燃料電池装置を動作させた場合での逆潮流電力量を導出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電力調達装置が設けられるシステムの構成を示す図である。
【
図2】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図3】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図4】目標逆潮流電力量を決定する処理を説明するフローチャート
【
図5】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図6】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図7】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図8】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図9】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【
図10】出力電力、消費電力及び余剰電力の推移例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る電力調達装置4について説明する。
図1は、電力調達装置4が設けられるシステムの構成を示す図である。図示するように、電力系統1に接続されている電力供給者10及び電源設備2がバランシンググループGとして設定されている。電力調達装置4は、電力供給者10、電源設備2、電力取引市場3などと、情報通信回線を介して情報通信可能に構成されている。
図1では、3つの電力供給者10を描いているが、電力供給者10の数は適宜変更可能である。各電力供給者10は、燃料電池装置11及び電力消費装置12を備える。電源設備2は、例えば火力発電設備、風力発電設備、太陽光発電設備などの設備である。電力供給者10は、燃料電池装置11の出力電力から電力消費装置12の消費電力が減算された余剰電力を逆潮流電力として電力系統1に供給できる。
【0020】
電力供給者10及び電源設備2が供給する電力は電力調達装置4が決定する。つまり、電力調達装置4は、電力供給者10及び電源設備2を含むバランシンググループGから電力系統1に電力を供給させることで電力の調達を行う。
【0021】
例えば、発電事業者の電力調達装置4は、
図8に示すように、電力供給者10から電力系統1に供給させる余剰電力(即ち、逆潮流電力)を決定して、電力供給者10に伝達する。尚、発電事業者は例えば電力取引市場3などの別の電力調達先からも電力を調達できるため、特定の30分コマ(即ち、30分の対象時間帯)において、別の電力調達先から電力を調達する場合の電力調達単価が、電力供給者10から余剰電力を買い取る場合の電力調達単価よりも安い時間帯には、別の電力調達先から電力を調達する方が好ましい。
【0022】
図2は、発電事業者が、時刻12:30から時刻13時の間の対象時間帯において、別の電力調達先としての電力取引市場3から電力を調達する場合の例である。尚、
図2などに描いているのは、バランシンググループGに含まれる複数の電力供給者10の平均値である。つまり、バランシンググループGに含まれる複数の電力供給者10が有する複数の燃料電池装置11の平均の定格出力電力が0.7kWである場合の事例である。また、入札単位の電力量として模式的に描いているのは、実際の入札単位の電力量を、バランシンググループGに含まれる電力供給者10の数で割った値に対応する。このように、本実施形態では、複数の電力供給者10を含むバランシンググループGの全体での数値を用いて説明するのに代えて、平均値で説明を行っている箇所もある。
【0023】
発電事業者は、時刻12時30分までの間、及び、時刻13時から時刻13時30分の間は電力供給者10の燃料電池装置11を例えば定格出力電力の0.7kWで動作させるように遠隔地から指令を与え、時刻12時30分から時刻13時の間は電力供給者10の燃料電池装置11を所定の出力電力x1で動作させるように遠隔地から指令を与える。加えて、発電事業者は、時刻12時30分から時刻13時の間、別の電力調達先としての電力取引市場3から電力を調達する。
【0024】
電力取引市場3では、電力を調達するための入札単位が定まっているため、時刻12時30分から時刻13時の間に電力供給者10が供給する予定であった電力量のうち、その入札単位の整数倍の電力量が、電力取引市場3から調達する電力量になり、余りの電力量は、電力供給者10からの逆潮流電力量で賄う必要がある。
【0025】
尚、
図3に示すように、電力供給者10では、燃料電池装置11の出力電力を所定の最大変化速度で変化させ、所定の対象時間帯の終了時点での燃料電池装置11の出力電力を所定の終了時出力電力にする必要がある。そうしなければ、
図10に示したように、時刻13時から時刻13時30分の間での電力供給者10から電力系統1への逆潮流電力量が、図示する不足電力量の分だけ減少して、発電計画値と発電実績値とに差が生じてしまう。
【0026】
但し、対象時間帯の終了時点での燃料電池装置11の出力電力を所定の終了時出力電力にするということは、必要とされていない逆潮流電力を発生させることにもつながる。つまり、対象時間帯での逆潮流電力量が増加して、対象時間帯でインバランスが発生する可能性がある。
【0027】
そのため、電力調達装置4は、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、その逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差がその目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かの判定を行う。つまり、特定の対象時間帯の次の時間帯でインバランスが発生しないようにした場合に、その特定の対象時間帯でインバランスが発生し得るか否かを事前に検証する。
【0028】
具体的には、電力調達装置4は、燃料電池装置11の出力電力を所定の最大変化速度で変化させることができる場合に、所定の対象時間帯の終了時点での燃料電池装置11の出力電力を所定の終了時出力電力にするという前提で、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かを判定する。
【0029】
次に、対象時間帯での目標逆潮流電力量を決定する手順について説明する。
図4は、目標逆潮流電力量を決定する処理を説明するフローチャートである。電力調達装置4は、対象時間帯において、電力供給者10から調達する逆潮流電力量の単価が、他の電力調達先から調達する調達電力量の単価よりも高い場合、このフローチャートを対象時間帯の前に実行する。
【0030】
工程#10において、電力調達装置4は、目標逆潮流電力量を仮決定する。この場合、
図2に示すように、目標逆潮流電力量は、対象時間帯に電力供給者10が電力系統1に供給可能な逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から、当該最大逆潮流電力量を超えない範囲内で電力取引市場3から調達できる電力量が減算された値に設定される。ここで、「最大余剰電力=定格出力電力-予測消費電力」であるので、対象時間帯の間、最大余剰電力が電力系統1に供給された場合に、その最大余剰電力量が実現される。
【0031】
具体的に説明すると、電力取引市場3では、入札できる電力量の単位が決まっているため、電力取引市場3から調達できる電力量は、その単位電力量の整数倍の電力量になる。そのため、電力調達装置4は、最大逆潮流電力量を超えない範囲で電力取引市場3から調達できる電力量の最大値(但し、単位電力量の整数倍)である最大調達電力量を決定できる。そして、電力調達装置4は、最大逆潮流電力量から最大調達電力量が減算された値を、目標逆潮流電力量として仮決定する。
【0032】
次に、工程#11において電力調達装置4は、燃料電池装置11の出力電力を所定の最大変化速度で変化させることができる場合に、所定の対象時間帯の終了時点での燃料電池装置11の出力電力を所定の終了時出力電力にするという前提で、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かを判定する。
【0033】
バランシンググループGに含まれる電力供給者10の数がNである場合、バランシンググループGに含まれる燃料電池装置11の数はNになる。
図2に示すように、時刻12時30分から時刻13時の間の対象時間帯において、N台の燃料電池装置11の平均出力電力x1[kW/台]、平均消費電力a1[kW/台]、対象時間帯の目標逆潮流電力xt(=x1-a1)[kW/台]とし、それらN台の燃料電池装置11の出力電力を制御するとする。この時、N台の燃料電池装置11(複数の電力供給者10)による目標逆潮流電力量は30×xt×N[kWm]になる。尚、実際は時刻13時での燃料電池装置11の出力電力を終了時出力電力にするために、
図3に示すように燃料電池装置11の出力電力を対象時間帯の途中で変化させる必要がある。
【0034】
つまり、
図3に示すように、対象時間帯の開始時点から当該対象時間帯の途中の過渡時点t1までの間、出力電力を一定の仮定値x2にして燃料電池装置11を動作させ、且つ、過渡時点t1から終了時点(時刻13時)までの出力上昇期間b1の間、仮定値x2から終了時出力電力(本実施形態では0.7kW)まで最大変化速度で出力電力を変化させながら燃料電池装置11を動作させると仮定する。この場合の仮定値x2及び出力上昇期間b1(0<b1<30)は以下のように算出できる。
【0035】
図2の目標逆潮流電力量30×xt×N[kWm]は、
図3の逆潮流電力量と等しいため、以下の式(1)が成立する。
【0036】
【0037】
燃料電池装置11の出力電力の最大変化速度R[kW/m]は、出力を上げる際の傾きのため、以下の式(2)で示される。
【数2】
【0038】
従って、式(1)及び式(2)と、x2>0とから、以下の式(3)及び式(4)が成立する。
【数3】
【0039】
x2≧a1であれば、インバランスは発生しない。即ち、電力調達装置4は、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、その逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできると判定する。
【0040】
尚、x2<a1の場合、
図5及び
図6に示すような状態になっていると言える。但し、x2<a1であっても、発生するインバランスが目標逆潮流電力量から所定範囲内にあればよい。ここで、
図2及び
図5においてx2=a1のときの逆潮流電力量は、以下の式(5)で示される。
【数4】
【0041】
上記式(2)でx2=a1のとき、R=(0.7-a1)/b1となるため、逆潮流電力量は、以下の式(6)となる。
【数5】
【0042】
よって、
図1に示した目標逆潮流電力量(30×x1×N[kWm])と、x2=a1のときの逆潮流電力量(式(6))との差分が、以下の式(7)に示すインバランスとなる。
【数6】
【0043】
そして、目標逆潮流電力量(30×x1×N[kWm])に対するインバランス許容率をα[%]とすると、式(7)は、目標逆潮流電力量から所定範囲に相当する30×xt×N×α[kWm]以下であれば良い。つまり、以下の式(8)が成立すればよい。
【0044】
【0045】
このように、x2≧a1である場合、又は、x2<a1であったとしても式(8)が成立する場合には、工程#11において電力調達装置4は、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内になると判定する。そして、工程#12において電力調達装置4は、その目標逆潮流電力量を最終決定する。
【0046】
そして、電力調達装置4は、その目標逆潮流電力量を電力供給者10に指令する。例えば、バランシンググループGに複数の電力供給者10が含まれる場合には、それぞれの電力供給者10に目標逆潮流電力量を分配して指令する。また、電力調達装置4は、その対象時間帯での電力取引市場3からの調達電力量を、対象時間帯に電力供給者10が電力系統1に供給可能な逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から上記目標逆潮流電力量を減算した値に設定し、電力取引市場3でその電力量を調達する。
【0047】
それに対して、電力調達装置4は、工程#11において対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、当該逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差が当該目標逆潮流電力量から所定範囲内にならないと判定した場合、工程#13に移行する。
【0048】
工程#13において電力調達装置4は、目標逆潮流電力量を増加させる。具体的には、電力調達装置4は、
図7に示すように、目標逆潮流電力量を電力取引市場3への入札単位分だけ増加させて、その値を仮の目標逆潮流電力量とする。そして、電力調達装置4は、再度、工程#11の判定を行う。
【0049】
以上のように、対象時間帯の終了時点での燃料電池装置11の出力電力を所定の終了時出力電力(例えば、対象時間帯の次の時間帯の開始時点で燃料電池装置11が出力すべき電力など)にすることで、対象時間帯の次の時間帯ではインバランスが発生しないようにできる。
【0050】
更に、電力調達装置4は、対象時間帯において電力供給者10が電力系統1に供給する逆潮流電力量を、その逆潮流電力量と所定の目標逆潮流電力量との差がその目標逆潮流電力量から所定範囲内になる値にできるか否かの判定を行う。つまり、特定の対象時間帯の次の時間帯ではインバランスが発生しないようにした場合に、その特定の対象時間帯でインバランスが発生し得るか否かを事前に検証できる。そして、インバランスが発生しない目標逆潮流電力量を決定できる。
【0051】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、電力調達装置4が設けられたシステムの構成について例示したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態において、電力調達装置4が、目標逆潮流電力量に対応する指令値を電力供給者10に指令する例を記載したが、電力調達装置4とは別のシステムが、その目標逆潮流電力量に対応する指令値を電力供給者10に送信するような構成にしてもよい。
【0052】
<2>
上記実施形態では、電力調達装置4が、工程#11において「No」と判定した場合、工程#13において目標逆潮流電力量を増加させる例を説明したが、電力調達装置4は、別の処理を行ってもよい。例えば、
図10に示すように、対象時間帯としての時刻12時30分から時刻13時の間において燃料電池装置11の出力電力を一定値xにして動作させ、次の時間帯(時刻13時から時刻13時30分の間)において燃料電池装置11の出力電力を、一定値xから目標とする出力電力(0.7kW)へと変化させてもよい。
【0053】
つまり、電力調達装置4は、特定の対象時間帯において、電力供給者10から余剰電力を買い取る場合の電力調達単価が、例えば電力取引市場3等の別の電力調達先から電力を調達する場合の電力調達単価よりも高い場合には、その対象時間帯での電力供給者10の目標逆潮流電力量を、その対象時間帯に電力供給者10が電力系統1に供給可能な逆潮流電力量の最大値である最大逆潮流電力量から、その最大逆潮流電力量を超えない範囲内で電力取引市場3から調達できる電力量(即ち、最大調達電力量)が減算された値に設定し、その目標逆潮流電力量を電力供給者10に指令する。また、電力調達装置4は、その対象時間帯での電力取引市場3からの調達電力量を上記最大調達電力量に設定し、電力取引市場3でその電力量を調達する。
【0054】
<3>
上記実施形態では、燃料電池装置11の終了時出力電力の数値例などを挙げて本発明の説明を行ったが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0055】
<4>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、インバランスの発生を抑制できる電力調達装置に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 電力系統
2 電源設備
3 電力取引市場
4 電力調達装置
10 電力供給者
11 燃料電池装置
12 電力消費装置