(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051854
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】光触媒活性が低い粒子およびその製造方法、並びに粒子の分散液、塗布液、膜付基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20240404BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20240404BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20240404BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20240404BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240404BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240404BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C01G23/00 C
C09C1/36
C09C3/06
C09C1/00
C09D17/00
C09D201/00
C09D5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158222
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 夕子
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G047
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G047CA05
4G047CA08
4G047CB05
4G047CB09
4G047CC03
4G047CD03
4J037AA08
4J037AA22
4J037DD05
4J037DD09
4J037DD23
4J037DD27
4J037FF02
4J038EA001
4J038KA06
4J038KA20
4J038MA10
4J038NA05
4J038PA17
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】酸化チタンの含有率が高く、光触媒活性が低い粒子を提供することにある。
【解決手段】本発明の粒子は、酸化チタンを含むコアが酸化チタンと添加元素を含むシェルで覆われており、添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素である。シェルに含まれる添加元素(M)とチタン(Ti)の重量比(M/Ti)は0.001~0.5である。粒子は酸化チタンをTiO
2換算で80重量%以上含む。シェルに含まれるスズとチタンの比(Sn/Ti)を0.005以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含むコアが酸化チタンと添加元素を含むシェルで覆われている粒子であり、
前記添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素であり、
前記コアには前記添加元素の酸化物が0.01重量%未満しか含まれておらず、
前記シェルに含まれる前記添加元素とチタンの比(M/Ti)が0.001~0.5であり、
酸化チタンをTiO2換算で80重量%以上含む粒子。
【請求項2】
酸化スズと酸化チタンを含むコアが酸化チタンと添加元素を含むシェルで覆われている粒子であり、
前記添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素であり、
前記コアと前記シェルの結晶構造がルチル型であり、
前記コアに含まれるスズ(Sn)とチタン(Ti)の比(Sn/Ti)が0.01~0.2であり、
前記シェルに含まれるスズ(Sn)とチタン(Ti)の比(Sn/Ti)が0.005以下であり、
前記シェルに含まれる前記添加元素(M)とチタン(Ti)の比(M/Ti)が0.001~0.5であり、
酸化チタンをTiO2換算で80重量%以上含む粒子。
【請求項3】
前記添加元素として、鉄またはニッケルの少なくとも一方と、ジルコニウムまたはマグネシウムの少なくとも一方と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記シェルの厚さが1~5nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子。
【請求項5】
X線構造解析により測定した結晶子径が7nm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子。
【請求項6】
請求項1または2に記載の粒子と、溶媒と、を含む分散液。
【請求項7】
チタンとスズを除く添加元素とチタンとを含む添加元素含有化合物の第一分散液を準備する工程と、
酸化チタンを含むコアの第一ゾルを準備する工程と、
前記第一分散液と、前記第一ゾルと、を混合することにより、第一混合液を調製する工程と、
前記第一混合液を80℃以上にする工程と、を備え、
前記添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素であることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1と2に記載の粒子と、請求項7に記載の製造方法により得られた粒子のうち少なくとも一つと、表面処理剤と、バインダと、溶媒と、を含む塗布液。
【請求項9】
請求項8に記載の塗布液を用いて基材上に膜を形成することを特徴とする膜付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性が低い粒子とその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屈折率の高い酸化物粒子は高屈折率膜等に利用されている。粒子や膜の屈折率は、粒子中に存在する元素やその含有率に依る。例えば、酸化チタン粒子を含む膜は屈折率が高いことが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
酸化チタン粒子は光触媒活性が高い。酸化チタン粒子を含む膜に光が当たると、光触媒活性により膜が損傷し易い(すなわち、膜の耐光性が低くなる)。そのため、光触媒活性の低い粒子が求められている。鉄等の元素を酸化チタン粒子に添加することにより、粒子の光触媒活性が低くなることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-42947号公報
【特許文献2】国際公開第2018/181241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、酸化チタン粒子を用いて膜を形成しているが、酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素が酸化チタン粒子に含まれていない。粒子表面に光触媒活性の低い酸化物を被複することにより、酸化チタン粒子の光触媒活性を低くしているものの、被複した酸化物の分だけ粒子の屈折率が低くなってしまう。
【0006】
特許文献2では、鉄や珪素等を含む酸化チタン粒子を調製しているので、酸化チタン粒子の光触媒活性は低い。しかし、チタン以外の元素の含有率が高いため、酸化チタン粒子の屈折率が低くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、酸化チタンの含有率が高く、光触媒活性が低い粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粒子は、酸化チタンを含むコアが酸化チタンと添加元素を含むシェルで覆われており、添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低下させる元素である。シェルに含まれる添加元素(M)とチタン(Ti)の重量比(M/Ti)は0.001~0.5である。粒子は酸化チタンをTiO2換算で80重量%以上含む。シェルに含まれるスズとチタンの比(Sn/Ti)を0.005以下である。
【0009】
本発明の粒子の製造方法は、添加元素とチタンとを含む添加元素含有化合物の水分散液を準備する工程と、酸化チタンを含むコアの水分散液を準備する工程と、これらの水分散液を混合することにより、第一混合液を調製する工程と、第一混合液を80℃以上にする工程と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】コア1とシェル2の間に中間層3がある粒子の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粒子は酸化チタンを含むコアが酸化チタンと添加元素を含むシェルで覆われている。添加元素は酸化チタンの光触媒活性を低くすることができる元素である。粒子に当たる光の大部分はシェルに当たるので、このようなシェルを有する粒子の光触媒活性は低くなる。このように、光触媒活性はシェル層への依存が高いため、コアには添加元素が含まれていなくてもよい。すなわち、コアの添加元素含有率を低くすることができる。コアの添加元素含有率が低いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くできる。酸化チタンを多く含む粒子の屈折率は高い。
【0012】
シェルに含まれる添加元素(M)とチタン(Ti)の重量比(M/Ti)は0.001~0.5である。この比が0.001未満であると、粒子の光触媒活性が低くなり難い。この重量比が0.5より大きいと、酸化チタン含有率が低くなってしまう。この重量比(M/Ti)は0.1以下が好ましい。
【0013】
粒子の酸化チタン含有率が高いほど、粒子の屈折率が高くなる。粒子の酸化チタン含有率は80重量%以上である。粒子の酸化チタン含有率は85重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、93重量%以上がさらに好ましい。
【0014】
コアに含まれるスズとチタンの重量比(Sn/Ti)が0.01以上であることにより、コアの結晶構造がルチル型を維持できる。ルチル型のコア表面に形成されたシェルもルチル型の結晶構造を維持できる。このとき、シェルはスズを含まなくても、ルチル型の結晶構造を維持できる。コアやシェルの結晶構造がルチル型であると、粒子の屈折率が高くなり、また、粒子の光触媒活性が低くなる。この重量比(Sn/Ti)が高いほど、粒子の結晶構造がルチル型になり易い。そのため、この重量比は0.015以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい。なお、シェルに添加元素が含まれているため、シェルの結晶構造はルチル型になり難いが、コアに含まれるスズとチタンの重量比(Sn/Ti)が0.01以上であることにより、シェルはルチル型の結晶構造を維持できる。
【0015】
一方、この重量比(Sn/Ti)が高いほど、コアが小さくなる。それに伴い、粒子も小さくなってしまう。小さい粒子の屈折率は低い。コアに含まれるスズとチタンの重量比(Sn/Ti)は0.2以下であることにより、粒子を大きくできる。また、この重量比が低いと、酸化チタンの含有率を高くすることができる。この比は、0.15以下が好ましく、0.1以下がより好ましい。
【0016】
シェルに含まれるスズとチタンの重量比(Sn/Ti)が0.005以下であることにより、粒子の酸化チタン含有率が高くなる。
【0017】
シェルとコアの間に中間層が形成されていてもよい。中間層は複数層形成されていてもよい。中間層が存在する場合、中間層の最表面にシェルが形成される。コアの結晶構造がルチル型であるため、中間層の結晶構造をルチル型にできる。その表面に形成されるシェルもルチル型の結晶構造を維持できる。中間層が存在する場合、中間層もコアとシェルと同じ結晶子内に存在することが好ましい。これらが同じ結晶子内に存在すると、それぞれの層の間に隙間がなくなるので、粒子の密度が高くなる。そのため、屈折率が高くなる。異なる種類の中間層が存在してもよい。
【0018】
図1は、粒子のコアシェル構造の模式図である。
図1では、コア1の表面にシェル2が形成されている。そのため、コア1の周りがシェル2で覆われている構造になる。
図2は粒子のコア1とシェル2の間に中間層3がある形態の模式図である。
図2では、コア1の表面に中間層3が形成されていて、中間層3の表面にシェル2が形成されている。このように、
図2では、コア1の表面に直接シェル2が形成されていないものの、コア1の周りがシェル2で覆われている構造になる。
【0019】
以下、粒子について詳細に説明する。
【0020】
<添加元素>
添加元素が酸化チタンの光触媒活性を低くするメカニズムは定かではないが、例えば、酸化チタンのエネルギーバンドに添加元素の不純物準位が形成される等のメカニズムが考えられる。この不純物準位に光励起された電子がホールと再結合することにより、光触媒活性が低下すると考えられる。
【0021】
添加元素として、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Al、Zr、Nd等が挙げられる。シェルはこれらの元素のうち少なくとも1種以上含むことが好ましい。添加元素としてMg、Al、Zr、Ndを用いると、粒子に色が着き難い。着色が少ない粒子は光学用途で有用である。一方、添加元素としてCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuを用いると、粒子は着色するものの、粒子の光触媒活性が低くなり易い。粒子を着色させる添加元素を用いる場合、シェルに含まれる添加元素(M)とチタン(Ti)の重量比(M/Ti)は0.05以下がより好ましく、0.02以下がさらに好ましい。特に、添加元素としてMn、Co、Niを用いる場合、Feよりも粒子は着色するが、粒子の光触媒活性が低くなり易い。このとき、シェルに含まれる添加元素(M)とチタン(Ti)の重量比(M/Ti)が0.02以下であることにより、粒子の着色を低減できる。光触媒活性の低下の効果と、着色とのバランスがよいので、添加元素としてFeが扱いやすい。
【0022】
添加元素としてFeまたはNiの少なくとも一方と、ZrまたはMgの少なくとも一方と、を粒子が含むことにより、粒子の光触媒活性がさらに低くなる。このとき、粒子中のZrとMgのモル量の合計(片方しか含まれない場合は、そのモル量)が、粒子中のチタンのモル量に対して1.5~9%、粒子中のFeとNiのモル量の合計(片方しか含まれない場合は、そのモル量)が、粒子中のチタンのモル量に対して0.3~4%であることにより、光触媒活性がさらに低くなる。
【0023】
シェル中に含まれるZrとMgの重量の合計(片方しか含まれない場合は、その重量)と、チタンの重量との重量比(〔Zr+Mg〕/Ti)が0.03~0.3、シェル中に含まれるFeとNiの重量の合計(片方しか含まれない場合は、その重量)と、チタンの重量との重量比(〔Fe+Ni〕/Ti)が0.002~0.04であることにより、光触媒活性がさらに低くなる。重量比(〔Zr+Mg〕/Ti)は0.05~0.15、重量比(〔Fe+Ni〕/Ti)は0.005~0.02であることがより好ましい。
【0024】
粒子の添加元素含有率が高いほど、粒子の光触媒活性が低くなり易い。そのため、添加元素含有率は0.25重量%以上が好ましい。一方、この添加元素含有率が低いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。そのため、この添加元素含有率は15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。この添加元素含有率は1重量%以下がさらに好ましい。ここで、添加元素含有率は、添加元素の酸化物の含有率である。例えば、添加元素含有率は、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Al、Zr、NdをそれぞれCrO2、MnO、Fe2O3,CoO、NiO、MgO、Al2O3、ZrO2,Nd2O3に換算したときの濃度である。これら以外の添加元素(M)の添加元素含有率は、MOに換算したときの濃度である。
【0025】
シェルの添加元素含有率が高いほど、粒子の光触媒活性を低くできる。シェルの添加元素含有率は0.5重量%以上が好ましい。一方、シェルの添加元素含有率が低いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。そのため、シェルの添加元素含有率は30重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
【0026】
コアには光が当たり難いので、コアの光触媒活性は粒子表面への影響が小さいと考えられる。そのため、コアには添加元素が含まれなくてもよい。コアの添加元素含有率が低いほど、コアの酸化チタン含有率を高くすることができる。そのため、コアの添加元素含有率は酸化物換算で0.01重量%以下が好ましい。
【0027】
粒子の光触媒活性を受けたサンセットイエロー(SY)の退色率が低いほど、粒子の光触媒活性が低い。粒子の退色率Lと、リファレンス粒子(以下、リファレンスと称す)の退色率Rとの比(L/R)〔退色率減少度〕が2以上であると、粒子の光触媒活性が低下しているといえる。リファレンスの条件は以下のとおりである。リファレンスの酸化チタン含有率は80重量%以上であり、リファレンスの平均粒子径は、粒子の平均粒子径の±5nmの範囲に入る。リファレンスは、粒子と結晶構造が同じであり、シェルに添加元素は含まれない。粒子の結晶構造がルチル型の場合、リファレンスのコアに添加元素が含まれない。粒子の結晶構造がルチル型以外の場合、必要に応じてリファレンスのコアにも添加元素が含まれていてよい。ただし、リファレンスのコアの添加元素含有率より粒子の添加元素含有率が同じか高くなるようにし、リファレンスと粒子のコアに含まれる添加元素は同種となるようにする。粒子のコアに添加元素が含まれない場合は、リファレンスがコアシェル構造である必要はない。この比は5以上が好ましく、10以上がさらに好ましい。退色率の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0028】
<シェル>
シェルには添加元素が存在するので、シェルが厚いほど、粒子の光触媒活性が低くなる。そのため、シェルの厚さは1nm以上が好ましい。一方、シェルが薄いほど、シェルの結晶構造はコア粒子と同じになり易い。そのため、シェルの厚さは5nm以下が好ましい。
【0029】
シェルの酸化チタン含有率が高いほど、粒子の酸化チタン含有率が高くなる。シェルの酸化チタン含有率は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
【0030】
<コア>
コアが大きいほど、粒子を大きくできる。コアの平均粒子径は10nmより大きいことが好ましい。一方、コアが小さいほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。そのため、コアの平均粒子径は、23nm以下が好ましい。
【0031】
また、コアの結晶子径が大きいほど、粒子の結晶子径を大きくできる。コアの結晶子径は5nm以上が好ましい。一方、コアの結晶子径が小さいほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。この酸化チタン含有率を高くするために、コアの結晶子径は、8nm以下が好ましい。
【0032】
コアの酸化スズ含有率が高いほど、粒子の結晶構造がルチル型になり易い。そのため、コアの酸化スズ含有率は5重量%以上が好ましく、8重量%以上がより好ましい。一方、この酸化スズ含有率が低いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。そのため、コアの酸化スズ含有率は15重量%以下が好ましい。コアの酸化チタン含有率は、65重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、85重量%以上がさらに好ましい。
【0033】
<中間層>
中間層の酸化チタン含有率が高いほど、粒子の酸化チタン含有率が高くなる。そのため、中間層の酸化チタン含有率は95重量%以上が好ましい。この酸化チタン含有率は97重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましい。
【0034】
中間層が厚いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。中間層の厚さは0.5nm以上が好ましい。一方、中間層が薄いほど、中間層やシェルの結晶構造がコアと同じになり易い。そのため、中間層の厚さは6nm以下が好ましい。
【0035】
<粒子>
粒子の結晶子径が大きいほど、粒子の比表面積は小さく、粒子の密度が高い。そのため、粒子の屈折率が高くなる。また、粒子の結晶子径が大きいほど、粒子の比表面積が小さくなるため、粒子が溶媒に分散し易くなる。これらの理由から、粒子の結晶子径は5nm以上であることが好ましい。粒子の結晶子径は、7nm以上がより好ましく、9nm以上がさらに好ましい。12nm以上がさらに好ましい。
【0036】
粒子が大きいほど、粒子の比表面積は小さく、粒子の密度が高い。そのため、粒子の屈折率が高くなる。そのため、粒子の平均粒子径は15nm以上であることが好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上がさらに好ましい。一方、平均粒子径が小さいほど、溶媒中で粒子は沈降し難い。そのため、平均粒子径は500nm以下が好ましい。平均粒子径が100nm以下の粒子は光を散乱し難い。
【0037】
粒子の屈折率は、粒子の組成、密度、結晶構造、結晶子径などの因子により変動する。この屈折率は1.95以上が好ましく、2.05以上がより好ましく、2.10以上がさらに好ましい。屈折率が2.8以上の粒子を得ることは困難である。
【0038】
粒子の形状は、例えば、球状、楕球体(ラグビーボール)状、繭状、金平糖状、鎖状、サイコロ状などが挙げられる。この形状が球状に近いと、塗布液や膜中に均一に分散し易い。
【0039】
コアとシェルが同じ結晶子内に存在すると、コアとシェルの隙間がなくなるので、粒子の密度が高くなる。そのため、粒子の屈折率が高くなる。
【0040】
以下、粒子の製造方法について説明する。まず、酸化チタンを含むコアの水分散液(以下、第一ゾルと称す)と、添加元素とチタンとを含む添加元素含有化合物の水分散液(以下、第一分散液と称す)と、を準備する(それぞれ、<第一ゾルを準備する工程>、<第一分散液を準備する工程>と称す)。第一ゾルと第一分散液とを混合し、第一混合液を調製する<混合工程>。第一混合液を80℃以上にする<結晶成長工程>。これにより、コアを基に結晶成長させる。結晶成長後に、第一分散液中の固形分が粒子のシェルになる。このような方法で調製した粒子では、シェルに添加元素が含まれるため、光触媒活性が低くなる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0041】
<第一ゾルを準備する工程>
本工程では第一ゾル(コアの水分散液)を準備する。コアの特徴は前述のとおりである。コアの結晶構造がルチル型であることにより、添加元素含有化合物に酸化スズが含まれていなくても、結晶構造がルチル型のシェルを形成することができる。
【0042】
コアの結晶子径が大きいほど、粒子の結晶子径を大きくできる。また、結晶成長が速くなる。以下のような中和・解膠法によりコアを調製すると、コアの結晶子径を5nm以上に調整できる。まず、チタン化合物を中和することによりゲルを得る。このゲルを解膠することによりチタン含有化合物の水分散液が得られる。この水分散液を熟成することにより、コアの第一ゾルを調製できる。熟成の前にスズ化合物を添加することにより、コアの結晶構造をルチル型にすることができる。
【0043】
チタン化合物は、水溶性であればよい。チタン化合物として、具体的には四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、水素化チタン等が挙げられる。アンモニアを用いてチタン化合物を中和すると、粒子の結晶子径が大きくなり易い。アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等を用いてチタン化合物を中和した場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属がコアの結晶子径を小さくしてしまう可能性がある。
【0044】
中和により生成したゲル中にはチタンの水酸化物が存在する。ゲルを水で洗浄し、ゲル中に残った塩を取り除くと、膜屈折率や粒子の分散性を高くすることができる。過酸化水素を用いてゲルを解膠すると、コアの結晶構造がルチル型になり易い。過酸化水素をゲルに添加した後、ゲルを50℃~100℃の状態にすると、ゲルが解膠し易い。過酸化水素の添加量がゲルの固形分の重量に対して4倍以上であると、ゲルが解膠し易い。一方、過酸化水素の添加量が低いほど、生産効率が高くなる。そのため、過酸化水素の添加量はゲルの固形分の重量に対して15倍以下が好ましい。ゲルをスラリー化した後、過酸化水素を添加すると、ゲルが解膠し易い。
【0045】
熟成の温度は80℃以上である。これより低いと、反応が不十分となるため、黄色いチタン含有化合物が残存してしまう。熟成に水熱合成(オートクレーブ処理)を用いると、100℃以上で熟成できる。水熱合成の温度が高いほど、結晶子径が大きくなる。そのため、この温度は130℃以上が好ましい。一方、この温度が300℃以下だと、生産効率が高くなる。この温度は、250℃以下がより好ましい。また、水熱合成の時間が長いほど、密度の高い粒子となる。そのため、この時間は1時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、10時間以上がさらに好ましい。一方、この時間が50時間以下だと、生産効率が高くなる。この時間は、40時間以下がより好ましく、20時間以下がさらに好ましい。
【0046】
スズ化合物は、水溶性であればよい。スズ化合物として、塩化スズや硝酸スズ等のスズ塩、スズ酸カリウムなどのスズ酸塩、スズの水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属やアルカリ土類金属等の元素のスズ酸塩を用いる場合、これらの元素は結晶子径が小さくなる原因となる。そのため、スズ酸塩を添加した後にこれらの元素を除去することが好ましい。除去する方法として、陽イオン交換樹脂が挙げられる。
【0047】
<添加元素含有化合物の第一分散液を準備する工程>
本工程では添加元素含有化合物の第一分散液を準備する。添加元素含有化合物は、チタンと添加元素の酸化物や水酸化物を含んでいてよい。上述のチタン含有化合物の分散液を得る工程で、チタン化合物の代わりに、チタン化合物と添加元素化合物を中和することにより、第一分散液を得ることができる。中和する際、チタン化合物と添加元素化合物を同時に中和すると生産効率が高い。これらを別々に中和した後、混合・解膠してもよい。添加元素化合物として、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Al、Zr、Ndなどの塩(塩化物、硝酸塩、硫酸塩等)や水酸化物が挙げられる。特に塩化物は水に溶け易いので、チタン化合物と混ざり易くなる。そのため、粒子の光触媒活性が低くなり易い。
【0048】
一度の結晶成長で厚いシェルを形成するためには、平均粒子径が20nm以上の第一分散液用いることが好ましい。この平均粒子径は30nm以上がより好ましい。一方、シェルの結晶構造をルチル型にするためには、この平均粒子径は50nm以下が好ましい。平均粒子径は40nm以下がより好ましい。上述の工程によれば、平均粒子径は20~50nmの第一分散液を得易い。
【0049】
添加元素含有化合物の添加元素含有率が高いほど、粒子の光触媒活性が低くなり易い。そのため、この添加元素含有率は酸化物換算で0.05重量%以上が好ましい。一方、この添加元素含有率が低いほど、粒子の酸化チタン含有率を高くすることができる。この添加元素含有率は酸化物換算で10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
【0050】
添加元素含有化合物の酸化チタン含有率が高いほど、粒子の屈折率が高くなる。この酸化チタン含有率は80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。酸化チタン含有率は93重量%以上がさらに好ましい。
90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
【0051】
水分散液の溶媒中の水の濃度が95重量%以上であると、コアや粒子が凝集し難い。
【0052】
<混合工程>
本工程では、第一ゾルと第一分散液とを混合することにより、第一混合液を調製する。結晶構造がルチル型のコアの等電点は5~6の範囲である。第一ゾルのpHがこの範囲から外れると、コアが凝集し難くなる。また、pHが3~12である場合、粗大粒子が発生し難くなる。これらを踏まえると、第一ゾルのpHは3~5または6~12の範囲であることが好ましい。作業性を考慮すると、pHは範囲の広い6~12がより好ましい。pHがこの範囲の場合、第一分散液のpHが6~12であることにより、第一混合液のpHはこの範囲に入り易い。
【0053】
添加元素含有化合物とコアの重量比(添加元素含有化合物の重量/コアの重量)が7以下であることにより、ルチル型以外の結晶が生成し難くなる。また、この比が低いほど、粒子のCV値が低くなり易い。そのため、この比は5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。添加元素含有化合物とコアの重量は、これらに含まれるTi、Sn、および添加元素の酸化物の重量の合計値とした。TiとSnの酸化物の重量はそれぞれTiO2、SnO2に換算した重量とした。添加元素酸化物の重量は、上述の添加元素含有率と同様に換算した重量とした。
【0054】
<結晶成長工程>
本工程では、第一混合液を80℃以上にする。これにより、コアを基に結晶成長させる。混合液が80℃未満の場合、結晶成長の速度が遅いため、粒子の結晶子径が小さくなる。また、この場合、反応が不十分となるため、黄色いチタン含有化合物が残存してしまう。第一混合液を水熱合成(オートクレーブ処理)すれば、混合液を100℃以上で反応させることができる。水熱合成の温度が高いほど、結晶子径が大きくなる。そのため、この温度は130℃以上が好ましい。一方、この温度が300℃以下だと、生産性が高くなる。この温度は、250℃以下がより好ましい。また、水熱合成の時間が長いほど、密度の高い粒子となる。そのため、この時間は1時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、10時間以上がさらに好ましい。一方、この時間が50時間以下だと、生産効率が高くなる。この時間は、40時間以下がより好ましく、20時間以下がさらに好ましい。
【0055】
結晶成長後の粒子をコアとして用いて、再度結晶成長させて(混合工程と結晶成長工程を行って)もよい。すなわち、シェルを2回以上形成してもよい。複数回形成されたシェルは厚くなる。
【0056】
シェルを形成する前に、コアに中間層を形成してもよい。以下のように、中間層を形成できる。上述のチタン含有化合物を含む水分散液(この水分散液はコア粒子の調製に用いるチタン含有化合物の水分散液と異なっていてもよい。以下第二分散液と称す)を準備する。この第二分散液を第一ゾルと混合することにより第二混合液を調製する。この第二混合液を80℃以上にすることにより、第二ゾルを調製する。このとき、チタン含有化合物が中間層になる。中間層は第二ゾルの表面に形成されている。第一ゾルの代わりに第二ゾルを用いて結晶成長させる(混合工程と結晶成長工程を行う)と、中間層が形成された粒子を調製できる。
【0057】
中間層の形成は複数回行ってもよい。この回数が多いほど、粒子の酸化チタン含有率が高くなる。また、結晶子径と粒子径が大きくなる。一方、この回数が多過ぎると、粒子にルチル型以外の結晶構造が生成し易くなる。そのため、この回数は、5回以下が好ましい。2回目以降の中間層の形成では、中間層を形成した粒子の分散液を第一ゾルとして用いて、同様の操作を行う。
【0058】
以下、粒子の分散液について説明する。粒子の分散液は、上述の粒子と溶媒を含む。溶媒が水のとき、粒子の結晶子径が7nm以上であることにより、20重量%以上の粒子が安定して水に分散できる。表面処理剤で粒子表面が処理されていれば、上述の粒子は有機溶媒にも分散することができる。表面処理剤は粒子に化学結合または物理吸着する。この表面処理剤の一部は、粒子に結合・吸着せず、有機溶媒に分散していても構わない。化学結合する表面処理剤として、ケイ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物等が例示できる。このうち、ケイ素化合物が工業的に取り扱い易い。物理吸着する表面処理剤として、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤が挙げられる。粒子の結晶子径が大きいほど、必要な表面処理剤の量が少なくなる。
【0059】
粒子の分散液を乾燥させ、粒子を粉末にしても、結晶子径が5nm以上であることにより粒子の粉末を溶媒に再度分散させることができる。このときの粒子は乾燥前の特徴を維持することができる。
【0060】
以下、塗布液について説明する。塗布液は、粒子と、表面処理剤と、バインダと、有機溶媒とを含む。上述の粒子を含む塗布液で膜を形成することにより、膜屈折率が高くなる。バインダを含む塗布液を用いると、膜を形成できる。表面処理剤の一部がバインダとして機能する場合は、バインダを含まなくてもよい。バインダとして、例えば、重合する前のモノマーや、オリゴマーや、これらが重合された後のポリマー等が挙げられる。この内、モノマーまたはオリゴマーが好ましい。膜を硬化する場合、ポリマーを含む塗布液よりも、モノマーやオリゴマーを含む塗布液を用いた方が、膜が緻密になり易い。塗布液を調製する際に添加するバインダの種類によって、有機溶媒を適宜選択できる。
【0061】
塗布液の固形分濃度が高いほど、厚い膜を形成し易い。また、塗布液を工業的に扱い易い。従って、この濃度は10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。一方で、この濃度が50重量%以下だと、塗布液の粘度が低くなり易い。粘度が低いと、基材に塗布液を塗布し易い。この濃度は30重量%以下が好ましい。
【0062】
有機溶媒の沸点が80℃以上であると、塗布液をゆっくり乾燥できるため、膜が緻密になる。この沸点は100℃以上がより好ましい。一方で、この沸点が200℃以下であると、有機溶媒が残存し難いため、膜が収縮し易くなる。そのため、膜の硬度が高くなる。この沸点は180℃以下がより好ましい。
【0063】
[実施例1]
以下、粒子の分散液の製造方法と物性について具体的に説明する。粒子の調製条件を表1に示す。
【0064】
〔粒子の調製〕
<第一ゾルを準備する工程>
まず、以下のようにチタン含有化合物の水分散液を調製した。まず、TiO2換算で7.66質量%の四塩化チタン水溶液523gを15質量%のアンモニア水を用いて中和することにより、pH9.2の白色のスラリー(ゲル)を調製した。スラリーをろ過した後、固形分を純水で洗浄することにより、固形分が10質量%のケーキ400gを得た。このケーキを純水で1.5質量%に希釈することにより、再度スラリーを得た。このスラリーに35質量%の過酸化水素水457gを加えた後、80℃で1時間加熱することにより、このスラリーを解膠した。さらに、純水876gを添加することにより、チタン含有化合物の水分散液(酸化チタン濃度はTiO2換算で1.0重量%)を得た。この水分散液のpHは7.8、レーザー粒子径は、21nmであった。水を用いて、この水分散液の酸化チタン濃度を0.01重量%に希釈した後、大塚電子社製のELSZ(登録商標)-2000Sを用いて電気泳動光散乱法でレーザー粒子径(平均粒子径)を測定した。他の実施例および比較例では、レーザー粒子径を全てこの条件で測定した。
【0065】
チタン含有化合物の水分散液4000gに、陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)を添加した。1重量%のスズ酸カリウム(昭和化工社製)水溶液500gをこの水分散液に添加した後、この水分散液からイオン交換樹脂を分離した。オートクレーブを用いて165℃で18時間この水分散液を水熱合成することにより、コアの第一ゾルを調製した。この第一ゾルのレーザー粒子径は、21nmであった。
【0066】
<第一分散液を準備する工程>
まず、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液601gと、7.75質量%の塩化第二鉄水溶液(東亜合成社製、高品位塩化第二鉄液)5.2g混合することにより、チタン化合物と添加元素化合物の水溶液を調製した。この水溶液を15質量%のアンモニア水を用いて中和することにより、pH9.2の白色のスラリー(ゲル)を調製した。スラリーをろ過した後、純水を用いて洗浄することにより、固形分が10質量%のケーキ450gを得た。このケーキを純水で1.5質量%に希釈することにより、再度スラリーを得た。このスラリーに35質量%の過酸化水素水514gを加えた後、80℃の温度で1時間加熱することにより、スラリーを解膠した。さらに、純水986gを添加することにより、添加元素含有化合物の第一分散液(酸化チタン濃度はTiO2換算で1.0重量%)を得た。この第一分散液のpHは8.3、レーザー粒子径は、33nmであった。
【0067】
<混合工程>
第一ゾル4500gに第一分散液4500gを混合することにより、第一混合液を調製した。第一混合液のレーザー粒子径は33nmであった。
【0068】
<結晶成長工程>
オートクレーブを用いて第一混合液を水熱合成することにより、コアを結晶成長させ、粒子の分散液を調製した。水熱合成の条件は165℃で18時間とした。この粒子のレーザー粒子径は26nmであった。乾燥機を用いてこの分散液を乾燥することにより、粒子の粉末を得た。
【0069】
〔有機溶媒分散液の調製〕
次に、粒子の有機溶媒分散液を調製する。有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を70.9gと、界面活性剤としてプライサーフ(登録商標)A219B(第一工業製薬社製)を4.6gと、粒子の粉末17.7gと、を容器に入れた。これらを10分間撹拌・混合した。これにジルコニアビーズ(ビーズ径は0.1mmφ)を添加して、ビーズミル(アイメックス社製 イージーナノ(RMBII))を用いてレーザー粒子径が26nmになるまで粒子の粉末を解砕した。これにより、粒子の有機溶媒分散液(固形分濃度が20質量%)を得た。
【0070】
〔塗布液の調製〕
粒子の有機溶媒分散液45.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)51.4g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、共栄社化学社製:ライトアクレートDPE-6A)3.0g、および重合開始剤としてジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGMResinsB.V.社製:OMNIRAD(登録商標)TPO-H)0.2gを混合することにより、塗布液を調製した。
【0071】
粒子の物性を以下の方法で測定した。他の実施例と比較例の結果も併せて表2、3に示す。
【0072】
(1)コアとシェル中の添加元素とTiとの重量比(M/Ti)
コアやシェル中の添加元素(またはスズ)とチタン(Ti)との重量比(M/Ti)は、X線光電子分光分析(XPS)により測定できる。しかし、粒子のみでは測定が困難であるため、測定試料として粒子を含む膜(以下、粒子膜と称す)を形成する。粒子膜のみを測定すると、粒子膜の最表面ではシェルとコアの元素が同時に測定されてしまい、シェルの各元素の重量濃度が測定できない。そこで、粒子膜の上に樹脂膜を形成することにより、測定試料(膜付基材)を作成する。樹脂膜の表面をエッチングしていき、チタンが検出される地点をシェルとした。チタンが検出された後、さらにエッチングを続けるとコアに到達する。コアにスズが存在する場合、スズとチタンの重量比(Sn/Ti)が0.01以上となった地点をコアとした。一方、コアにスズが存在しない場合、添加元素を基準とする。この場合、添加元素の重量濃度が0.2重量%未満となった地点がコアとなる。このように、シェルとコアを分けて、シェルとコアの各元素の重量濃度をXPSで測定した。ここでスズやチタンの重量濃度は、炭素、酸素、チタン、スズの重量の合計でスズやチタンの重量をそれぞれ除した値である。これらの重量濃度からスズの重量濃度とチタン重量濃度の比〔実質的に重量比(Sn/Ti)〕を算出した。他の実施例と比較例の結果も併せて表2に示す。
【0073】
以下、具体的な測定方法を説明する。以下のように粒子膜と樹脂膜を形成するための塗布液を調製し、それらを用いて膜付基材(測定試料)を作製する。まず、固形分濃度20質量%の粒子の有機溶媒分散液を125.5gと、ライトアクリレートDPE-6Aを13.5gと、光重合開始剤としてOmnirad TPO-Hを0.8gと、PGMEAを160.2gとを混合することにより、粒子を含む塗布液を調製した。次に、ライトアクリレートDPE-6Aを3.0gと、ジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを0.2gと、PGMEAを296.8gとを混合することにより、樹脂膜を形成するための塗布液を調製した。シリコンウエハ(松崎製作社製:6インチダミーウエハ(P型)、厚さ:625μm)上にスピンコート法で粒子を含む塗布液を塗布し、この塗布液を80℃で2分間乾燥した。高圧水銀ランプ(GSユアサ社製:EYEUVMETER)を用いて3000mJ/cm2の条件で紫外光を乾燥した塗布液に照射することにより、粒子膜を形成した。次に、樹脂膜を形成するための塗布液を粒子膜上に塗布した。この塗布液を80℃で2分間乾燥することにより、樹脂膜を形成した。これを膜付基材(測定試料とした)。測定試料(樹脂膜側)をエッチングし、チタンが検出される地点をシェルとした。本実施例では、チタンが検出される3~5nmまでエッチングして測定を行っている。チタンが検出されるとは、チタンの重量濃度が0.2重量%以上になったときである。膜の表面から0.7nmの深さでの測定では、1分間のArエッチングを行っている。すなわち、0.7nm/分でArエッチングを行っている。チタンが検出された後、さらにエッチングを続けるとコアに到達する。
【0074】
X線光電子分光分析装置は、島津製作所社製のKRATOS(登録商標) ULTRA2を使用した。スペクトル測定条件は、X-Ray:225W、Pass Energy:Wide160eV,Narrow80eV、分析径:300×700μm、Charge Neutralizer:Onで行っている。Ion gunは、ArGass Cluster Ionを用いて、加速電圧:5kV、エッチングレート:0.7nm/minで測定を実施した。1s(C-H)の結合エネルギーの較正は285.0eVで実施した。炭素、酸素、チタン、スズ、ジルコニウム、ニッケル、マグネシウムの重量濃度は、それぞれC1s、O1s、Ti2p、Sn3d5、Zr3d、Ni2p、Mg2pのピーク面積から算出した。測定時に、他の元素のピークと被る場合は、別のエネルギー順位のピークを用いて元素の重量濃度を求めてもよい。C1sのピークのエネルギー強度は274~295eVで観測している。O1sは518~538eV、Ti2pは446~467eV、Sn3d5は476~500eV、Zr3dは175~188eV、Ni2pは845~885、Mg2pは45~55evで観測している。
【0075】
(2)粒子の組成
以下の方法で、粒子のTi、Sn、Si、Fe、Zr、NiおよびMnの含有率を測定しそれぞれ、TiO2、SnO2、SiO2、Fe2O3、ZrO2、NiO,MnOの含有率に換算した。Ti、およびSn含有率を測定する際の前処理は以下のように行った。まず、粒子の有機溶媒分散液1gを100℃で30分乾燥し、粉末を得た。バーナーを用いて、粉末中の有機物を灰化した。その後、粉末に過酸化ナトリウムと水酸化ナトリウムを加えて、粉末を溶融した。さらに、硫酸と塩酸を加えて、粉末を溶解することにより、試料溶液を調製した。Fe、Zr、およびP含有率を測定する際の前処理は以下のように行った。まず、粒子の有機溶媒分散液1gを100℃で30分乾燥することにより、粉末を得た。これにフッ化水素酸と硫酸を加えて、サンドバス上で、硫酸の白煙が発生するまで加熱する。さらに、水を加え、希釈することにより、試験溶液を調製した。ICP-OES(SII社製SPS5520または島津製作所社製ICPS(登録商標)-8100)を用いて、試料溶液中のTi、Sn、Fe、ZrおよびP濃度を測定した。この濃度をそれぞれTiO2、SnO2、Fe2O3、ZrO2、およびP2O5の酸化物に換算した。
【0076】
(3)結晶構造・結晶子径
測定試料が2gになるように、粒子の水分散液を110℃で20時間乾燥することにより、測定試料を調製した。リガク社製のRINT(登録商標)1400を用いて、サンプルのX線構造解析測定を行った。PDXLを用いて回折ピークのパターンを解析し、粒子の結晶構造がルチル型であることを確認した。Scherrerの式(D=K×λ/(β×cosθ))を用いて、回折ピークの半値幅から、粒子の結晶子径を算出した。回折ピークとして、ルチル型のミラー指数(110)を選択した。Dは結晶子サイズ(nm)、Kはシェラー定数、λはX線の波長(nm)、βは回折線幅の広がり(rad)、θはブラッグ角(rad)である。
【0077】
(4)粒子屈折率Np’
以下の方法で粒子屈折率Np’を決定した。以下の実施例および比較例においても、同様に屈折率Np’を決定した。
【0078】
まず、三水準の塗布液(a)~(c)を調製した後、シリコンウエハ(松崎製作社製:6インチダミーウエハ(P型)、厚さ:625μm)上にスピンコート法でこの塗布液を塗布した。この塗布液を80℃で2分間乾燥した。EYEUVMETERを用いて3000mJ/cm2の条件で紫外光を乾燥した塗布液に照射することにより、膜付基材(シリコンウエハ)を作製した。分光エリプソメトリー(日本セミラボ社製:SE―2000)を用いて、これらの膜付基材(シリコンウエハ)の屈折率Nav’を実測した。
【0079】
以下のように三水準の塗布液(a)~(c)を調製した。
【0080】
(a)重量比〔粒子:ADDA=6:4〕の塗布液の調製
固形分濃度20質量%の粒子の有機溶媒分散液60.0gと、ADDA8.0gと、Omnirad TPO-H 0.5gを混合した。これにPGMEA60.0gを添加することにより、塗布液(a)を調製した。
【0081】
(b)重量比〔粒子:ADDA=7:3〕の塗布液の調製
固形分濃度20質量%の粒子の有機溶媒分散液70.0gと、ADDA6.0gと、Omnirad TPO-H0.4gを混合した。これにPGMEA70.0gを添加することにより、塗布液(b)を調製した。
【0082】
(c)重量比〔粒子:ADDA=8:2〕の塗布液の調製
固形分濃度20質量%の粒子の有機溶媒分散液80.0gと、ADDA4.0gと、Omnirad TPO-H0.3gを混合した。これにPGMEA80.0gを添加することにより、塗布液(c)を調製した。
【0083】
次に、式1(体積分率・重量分率の変換式)と式2(Maxwell―Garnettの式)を用いて膜屈折率Nav(計算値)を算出する。
【0084】
【0085】
式1において、f(m)は全固形分に対する粒子の体積分率である。mは全固形分に対する粒子の重量分率、dmはバインダの比重(ここでは、ADDAの比重である1.1g/mlとする。)、dpは粒子の比重である。ここで、比重dpは粒子に含まれる各成分の含有率と比重の積の合計である。これらの粒子に含まれる成分TiO2、SiO2、SnO2の比重dpはそれぞれ4.3(比較例4のみアナターゼ型であるため3.8g/mlとした)、2.2、7.0g/mlとした。各成分の含有率は、(1)粒子の組成で得られた含有率(質量%)を100で割った値である。
【0086】
【0087】
式2において、Navは膜屈折率、Nmはバインダの屈折率(ここでは、ADDAの屈折率を1.7とする。)、Npは粒子屈折率である。
【0088】
塗布液(a)~(c)における粒子の重量分率m、バインダの比重dm、粒子の比重dpを式1に代入した。重量分率mは(a)~(c)の三水準分あるため、三水準のf(m)を求めたことになる。1.70~2.70の範囲において0.01刻みの値を式2の粒子屈折率Npに代入し、膜屈折率Navを算出した。三水準のf(m)において、これら膜屈折率Navをそれぞれ算出した。これら膜屈折率Nav(計算値)と膜屈折率Nav’(実測)の偏差σ(Nav-Nav’)を求めた。これらの偏差から偏差平方σ2と偏差平方和Σσ2をそれぞれ算出した。これらのうち偏差平方和Σσ2が最小値となる粒子屈折率Npを粒子屈折率Np’とした。すなわち、最小二乗法により粒子屈折率Np’を決定した。この方法で決定した粒子屈折率Np’は、膜中のバインダに対する粒子の親和性や、粒子径、粒子の形状、粒子表面の性質(表面処理剤の量や粒子表面の組成・構造等)等の因子を含む。
(5)酸化チタン粒子の光触媒活性の評価(退色速度の測定)
以下のように測定試料を調製した。まず、本実施例で得た粒子の有機溶媒分散液をチタン濃度(TiO2換算)が0.335重量%となるようにPGMで希釈した。次いで、この有機溶媒分散液に固形分濃度0.02質量%のサンセットイエローFCF染料のグリセリン溶液を添加することにより、測定試料を調製した。このとき、有機溶媒分散液とグリセリン溶液の質量比(有機溶媒分散液質量/グリセリン溶液質量)が1/3となるように混合した。この測定試料を奥行き1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れた。この測定試料の波長490nmにおける紫外線照射前の吸光度(A0)およびn時間紫外線照射後の吸光度(An)を紫外可視光分光光度計(JASCO社製、V-550)で測定し、以下の式からUV照射2時間時点での染料の退色率(SY退色率)を算出した。比較例1で調製した粒子をリファレンスとして、粒子の退色率Lと、リファレンスの退色率Rとの比(L/R)〔退色率減少度〕を算出した。
退色率=(An-A0)/A0×100(%)
【0089】
紫外線の照射条件は以下のとおりである。石英セルの幅1cm×高さ5cmの面に対して強度が0.4mW/cm2(波長365nm換算)となる位置に、I線(波長365nm)の波長域が選択された紫外線ランプ(AS ONE社製LUV-6)を設置する。この紫外線ランプを用いて石英セルに入った測定試料に紫外線を照射する。
【0090】
〔膜付基材の作製〕
以下のとおりに、ガラス基材と、シリコンウエハそれぞれに、塗布液を用いて膜を形成し、膜付基材(ガラス基材)と膜付基材(シリコンウエハ)を作製した。ヘーズメーター(日本電色工業社製:COH 400)を用いて、膜付基材(ガラス基材)の全光線透過率、ヘーズ、およびb*値を測定した。また、分光エリプソメトリー(日本セミラボ社製:SE―2000)を用いて、膜付基材(シリコンウエハ)の屈折率と膜厚を評価した。他の実施例と比較例の測定・評価結果も併せて表4に示す。
【0091】
(膜付基材(ガラス基板)の製造)
ガラス基板(浜新社製:FL硝子、厚さ:3mm、屈折率:1.51)にスピンコート法で塗布液を塗布した。80℃で2分間塗布液を乾燥した。EYEUVMETERを用いて、3000mJ/cm2の条件で紫外光を乾燥した塗布液に照射することにより、膜付基材(ガラス基板)を作製した。なお、未塗布のガラス基板は全光線透過率が99.0%、ヘーズが0.1%、b*値は0であった。
【0092】
(膜付基材(シリコンウエハ)の製造)
シリコンウエハ(松崎製作社製:6インチダミーウエハ(P型)、厚さ:625μm)にスピンコート法で塗布液を塗布した。80℃で2分間塗布液を乾燥した。EYEUVMETERを用いて3000mJ/cm2の条件で紫外光を乾燥した塗布液に照射することにより、膜付基材(シリコンウエハ)を作製した。
【0093】
[実施例2]
第一ゾルを準備する工程において、スズ酸カリウム水溶液の量を273gとしたこと以外は実施例1と同様に粒子の分散液と塗布液を調製した。
【0094】
[実施例3]
実施例1の第一ゾル4500gとチタン含有化合物の水分散液4500gとを混合することにより、第二混合液を調製した。この水分散液のレーザー粒子径は33nmであった。オートクレーブを用いて第二混合液を水熱合成することにより、コアを結晶成長させ、第二ゾルを調製した。水熱合成の条件は165℃で18時間とした。第二ゾルのレーザー粒子径は、26nmであった。この第二ゾル4500gに実施例1で調製した第一分散液4500gを混合することにより、第一混合液を調製した。この第一混合液のレーザー粒子径は33nmであった。オートクレーブを用いてこの第一混合液を水熱合成することにより、コアを結晶成長させ、粒子の分散液を調製した。水熱合成の条件は165℃で18時間とした。この分散液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置を用いて濃縮した。この分散液のレーザー粒子径は33nmであった。乾燥機を用いてこの分散液を乾燥することにより、粒子の粉末を調製した。
【0095】
粒子の有機溶媒分散液の調製において、本実施例で得た粒子の粉末を用いたこと、およびプライサーフA219Bの量を3.8gとしたこと以外は実施例1と同様に粒子の有機溶媒分散液を調製した。
【0096】
塗布液の調製において、本実施例で得た粒子の有機溶媒分散液を用いたこと、および粒子の有機溶媒分散液の量を48.6g、PGMEAの量を48.2gとした以外は実施例1と同様に塗布液を調製した。
【0097】
[実施例4]
第一分散液を準備する工程において、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液601gと、7.75質量%含むオキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工社製)48gとを混合することにより、チタン化合物と添加元素化合物の水溶液を調製すること以外は実施例1と同様に添加元素含有化合物の第一分散液を調製した。混合工程において、この第一分散液を用いたこと以外は実施例1と同様に粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0098】
[実施例5]
第一分散液を準備する工程において、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液601gと、7.75質量%の高品位過鉄水溶液5gと、7.75質量%含むオキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工社製)48gと、を混合することにより、チタン化合物と添加元素化合物の水溶液を調製すること以外は実施例1と同様に粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0099】
[実施例6]
第一分散液を準備する工程において、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液601gと、7.75質量%の塩化ニッケル水溶液4.8gと、を混合することにより、チタン化合物と添加元素化合物の水溶液を調製すること以外は実施例1と同様に粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0100】
[実施例7]
第一分散液を準備する工程において、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液601gと、7.75質量%の塩化マンガン水溶液5.6gと、を混合することにより、チタン化合物と添加元素化合物の水溶液を調製すること以外は実施例1と同様に粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0101】
[実施例8]
第一分散液を準備する工程において、塩化第二鉄水溶液の量を15gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0102】
[実施例9]
第一分散液を準備する工程において、塩化第二鉄水溶液の量を2gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0103】
[実施例10]
実施例1で調製したチタン含有化合物の水分散液4000gに、陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)を添加した。1重量%のスズ酸カリウム(昭和化工社製)水溶液を500gこの水分散液に添加した後、この水分散液からイオン交換樹脂を分離した。15重量%のシリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイド(登録商標)SN-350、シリカ粒子の比表面積が375m2/g)19.3gをこの水分散液に添加・混合した後、オートクレーブ中にて165℃で18時間、水熱合成することにより、第一ゾルを得た。この第一ゾルのレーザー粒子径は、20nmであった。この第一ゾルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、粒子の分散液や塗布液を調製した。
【0104】
[比較例1]
実施例3の第二ゾルを乾燥させることにより、粒子の粉末を得た。粒子の有機溶媒分散液を調製する際に、この粉末を用いたこと以外は実施例1と同様に塗布液を調製した。
【0105】
[比較例2]
第一ゾルを準備する工程において、チタン含有化合物の水分散液の代わりに実施例4で調製した添加元素含有化合物の第一分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、コアの第一ゾルを調製した。オートクレーブを用いて165℃で18時間この第一ゾルを水熱合成したところ、粒子は沈降していた。
【0106】
[比較例3]
まず、TiO2換算で7.75質量%の四塩化チタン水溶液668gと、7.75質量%の高品位過鉄水溶液6.0gと、7.75質量%のオキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工社製)54.7gと、を15質量%のアンモニア水を用いて中和することにより、pH9.5の白色のスラリー(ゲル)を調製した。スラリーをろ過した後、固形分を水で洗浄することにより、固形分が10質量%のケーキ560gを得た。このケーキに35質量%の過酸化水素水347gおよび水1145gを加えた後、80℃の温度で1時間加熱した。これに水328gを添加することにより、解膠液2020gを得た。この解膠液のpHは8.5であり、解膠液中の粒子の平均粒子径は25nmであった。この解膠液2020gに陽イオン交換樹脂を混合した後、スズ酸カリウムをSnO2換算で1質量%含むスズ酸カリウム水溶液273gを撹拌下で添加した。解膠液に含まれる陽イオン交換樹脂を分離した後、アルミニウムをAl2O3換算で0.4質量%含有するシリカゾル(平均粒子径16nm(動的散乱法を用いて得られた値)、比表面積375m2/g、pH2.2、固形分濃度16質量%:特開2009-197078号公報の実施例1「シリカゾルの調製」に記載された方法を参考に調製)32.5gおよび水508gを混合し前駆体を調製した。この前駆体をオートクレーブ中で165℃、18時間、加熱した。これを室温まで冷却した後、乾燥機を用いて乾燥することにより、粒子の粉末を調製した。
【0107】
粒子の有機溶媒分散液を調製する工程において、本比較例で得た粒子の粉末を用いたこと、およびPGMを62.2g、プライサーフA219Bを13.3g、粒子の粉末を15.5gとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒子の有機溶媒分散液を調製した。
【0108】
塗布液の調製において、粒子の有機溶媒分散液を31.3g、PGMEAを65.6gとしたこと以外は実施例1と同様に塗布液を調製した。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【符号の説明】
【0113】
1:コア
2:シェル
3:中間層