(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051867
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板及び電子装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20240404BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240404BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240404BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240404BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240404BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240404BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240404BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K3/013
C08J5/18 CFC
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158237
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智將
(72)【発明者】
【氏名】大葉 昭良
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J036
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA41
4F071AA42
4F071AA58
4F071AA81
4F071AA86
4F071AB27
4F071AC19
4F071AE02
4F071AF20Y
4F071AF44Y
4F071AH12
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J002CD131
4J002DE076
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ006
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4J002FD016
4J002GJ01
4J002GQ00
4J036AB16
4J036DB06
4J036DC01
4J036DC32
4J036DC38
4J036DD07
4J036DD09
4J036FA01
4J036FA03
4J036FA04
4J036FA05
4J036FB07
4J036FB08
4J036JA06
5F136BB05
5F136BB18
5F136BC01
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上した熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板及び電子装置を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有し、前記エポキシ樹脂(A)が、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含有し、前記硬化剤(B)が、シアネートエステル樹脂(B1)を含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
熱伝導性フィラー(C)と、
を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)が、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含み、
前記硬化剤(B)が、シアネートエステル樹脂(B1)を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記シアネートエステル樹脂(B1)がノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂及びビスフェノールA型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、前記トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の含有量が1質量部以上90質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率が10W/(m・K)以上である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱伝導性フィラー(C)が窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物の合計量を100質量部としたとき、前記熱伝導性フィラー(C)の含有量が10質量部以上99質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物がさらに硬化促進剤(D)を含有し、
前記硬化促進剤(D)が、フェノール樹脂、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、3級アミン類、有機リン化合物、有機金属塩及び有機酸からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記硬化促進剤(D)がフェノール樹脂及びベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂及びアリル化フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により、大気雰囲気下、25℃の条件で測定して得られる厚み方向の熱伝導率が20W/(m・K)以上である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、測定温度範囲30℃から380℃、昇温速度5℃/分、荷重200mN、引張モード、周波数1Hzの条件で熱機械分析して得られるガラス転移温度が200℃以上である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物が樹脂シート形成用である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む樹脂シート。
【請求項14】
前記樹脂組成物層がBステージ状態である、請求項13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む伝導性部材。
【請求項16】
熱伝導性シートである、請求項15に記載の熱伝導性部材。
【請求項17】
金属基板と、
前記金属基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた金属層と、を備え、
前記絶縁層が、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、及び請求項15に記載の熱伝導性部材からなる群から選択される一種または二種以上を含む、金属ベース基板。
【請求項18】
請求項17に記載の金属ベース基板と、
前記金属ベース基板上に設けられた電子部品と、
を備える電子装置。
【請求項19】
パワーモジュールである、請求項18に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の処理能力の向上に伴い、電子装置から発生する熱量は増加傾向にある。そのため、熱を効果的に装置外部へ放散させる放熱対策が重要となっている。このような放熱対策として、金属、セラミックス、樹脂組成物等の放熱材料からなる熱伝導性部材が適用されている。
これらの熱伝導性部材の中でも、樹脂組成物により形成される熱伝導性部材は、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性等が良好であるため、広く使用されている。
【0003】
熱伝導性部材に用いられる樹脂組成物としては、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物が知られている。
例えば、特許文献1には、1)高熱伝導性粒子、2)メソゲンを有するエポキシ樹脂モノマーとエポキシ樹脂用硬化剤とを含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物、及び3)重量平均分子量1万以上の高分子量成分を少なくとも含む高熱伝導樹脂組成物であって、前記2)熱硬化性エポキシ樹脂組成物と、前記3)高分子量成分とが硬化後に相分離することを特徴とする高熱伝導樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子装置の処理能力の更なる向上に伴い、熱伝導性部材には、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスの更なる向上が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上した熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の先行技術にもあるように、樹脂組成物の熱伝導性を向上させる方法として、メソゲン骨格を含む樹脂を用いる方法が知られている。
しかし、本発明者らの検討の結果、メソゲン骨格を含む樹脂を用いた樹脂組成物には、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスに改善の余地があることが明らかとなった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。つまり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上した熱硬化性樹脂組成物を提供することが本発明の目的である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。つまり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上した硬化性樹脂組成物を提供することが本発明の目的である。
【0008】
本発明によれば、以下に示す熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板及び電子装置が提供される。
[1]
エポキシ樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
熱伝導性フィラー(C)と、
を含有し、
前記エポキシ樹脂(A)が、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含み、
前記硬化剤(B)が、シアネートエステル樹脂(B1)を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[2]
前記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記シアネートエステル樹脂(B1)がノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂及びビスフェノールA型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[3]
前記[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、前記トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の含有量が1質量部以上90質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
[4]
前記[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率が10W/(m・K)以上である、熱硬化性樹脂組成物。
[5]
前記[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱伝導性フィラー(C)が窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[6]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物の合計量を100質量部としたとき、前記熱伝導性フィラー(C)の含有量が10質量部以上99質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
[7]
前記[1]~[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物がさらに硬化促進剤(D)を含有し、
前記硬化促進剤(D)が、フェノール樹脂、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、3級アミン類、有機リン化合物、有機金属塩及び有機酸からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[8]
前記[7]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記硬化促進剤(D)がフェノール樹脂及びベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[9]
前記[8]に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂及びアリル化フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[10]
前記[1]~[9]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により、大気雰囲気下、25℃の条件で測定して得られる厚み方向の熱伝導率が20W/(m・K)以上である、熱硬化性樹脂組成物。
[11]
前記[1]~[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、測定温度範囲30℃から380℃、昇温速度5℃/分、荷重200mN、引張モード、周波数1Hzの条件で熱機械分析して得られるガラス転移温度が200℃以上である、熱硬化性樹脂組成物。
[12]
前記[1]~[11]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記熱硬化性樹脂組成物が樹脂シート形成用である、熱硬化性樹脂組成物。
[13]
前記[1]~[12]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む樹脂シート。
[14]
前記樹脂組成物層がBステージ状態である、前記[13]に記載の樹脂シート。
[15]
前記[1]~[12]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む伝導性部材。
[16]
熱伝導性シートである、前記[15]に記載の熱伝導性部材。
[17]
金属基板と、
前記金属基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた金属層と、を備え、
前記絶縁層が、前記[1]~[12]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、及び前記[15]に記載の熱伝導性部材からなる群から選択される一種または二種以上を含む、金属ベース基板。
[18]
前記[17]に記載の金属ベース基板と、
前記金属ベース基板上に設けられた電子部品と、
を備える電子装置。
[19]
パワーモジュールである、前記[18]に記載の電子装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上した硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板及び電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る金属ベース基板の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
[熱硬化性樹脂組成物]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、熱伝導性フィラー(C)と、を含有し、前記エポキシ樹脂(A)が、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含み、前記硬化剤(B)が、シアネートエステル樹脂(B1)を含む。
【0013】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上したものである。このような効果が得られる理由は、以下の通りであると推測される。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含む。トリアリールトリアジン骨格は多官能性、剛直性、直線性及び電子共役を有するとともに対称構造であるため、硬化時に架橋密度及び結晶性を向上させることができ、これが熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランス向上に寄与しているものと推測される。
さらに、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤(B)としてシアネートエステル樹脂(B1)を含む。この成分とエポキシ樹脂(A)との相互作用も、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランス向上に寄与しているものと推測される。
【0014】
以下、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について記載する。
【0015】
<エポキシ樹脂(A)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂(A)を含有する。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(A)が、前述したトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を含有する。
【0016】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の熱伝導性フィラー(C)を除く成分(以下、本明細書において「樹脂成分」と呼ぶ。)の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シート及び熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、更に好ましくは65質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。
【0017】
(トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1))
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)は、例えば、フェノール性水酸基を有するトリアリールトリアジンとエピクロロヒドリン等のエポキシ化合物とから誘導されたエポキシ樹脂である。
【0018】
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の単量体は、例えば、下記式(1)で示される。
【化1】
上記式(1)において、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子又はメチル基を示し、更に好ましくは水素原子を示し、a~cはR
1~R
3の個数を示すものであり、a~cは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1、更に好ましくは0である。
【0019】
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)は、上記式(1)で示される単量体を含有することができる。
また、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)は、上記式(1)で示される単量体(モノマー)が重合した多量体(オリゴマー)を含有することができる。当該オリゴマーに含まれるモノマー単位の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上の整数であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは10以下の整数である。
また、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)は、上記式(1)で示される単量体と、上記(1)で示される単量体が重合した多量体とを両方含有することができる。
【0020】
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は、得られる樹脂シート及び熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、150g/eq以上、好ましくは160g/eq以上、より好ましくは170g/eq以上、更に好ましくは175g/eq以上であり、そして、500g/eq以下、好ましくは475g/eq以下、より好ましくは450g/eq以下、更に好ましくは425g/eq以下である。
【0021】
本明細書におけるエポキシ当量の測定手法を以下に記載する。
エポキシ樹脂をクロロホルムやシクロヘキサノン等の適切な溶媒20mLに溶解する。得られた溶解液に酢酸20mL、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mL(臭化テトラエチルアンモニウム100gに対して酢酸400mLを添加して溶解した溶液)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて電位差自動滴定装置(メトローム社製916 Ti-Touch)により滴定する。ブランクテストを行い、下記式よりエポキシ当量を算出する。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S-B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
【0022】
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、得られる樹脂シート及び熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは360以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは525以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下、さらに好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,500以下、さらに好ましくは4,000以下である。
【0023】
本明細書において、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて分子量分布曲線を得ることにより測定できる。エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出する。
GPCの測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0024】
トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シート及び熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、更に好ましくは18質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは90質量部以下、より好ましくは89質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、更に好ましくは75質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。
【0025】
(エポキシ樹脂(A2))
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)以外のエポキシ樹脂(A2)を含むことができる。
【0026】
エポキシ樹脂(A2)は特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂;1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、1,5―ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、1、4-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,6―ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂等の2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含み、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、及びナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0027】
エポキシ樹脂(A2)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シート及び熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは22質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは90質量部以下、より好ましくは89質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0028】
<硬化剤(B)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は硬化剤(B)を含む。
なお、本明細書における硬化剤(B)とは、エポキシ樹脂(A)と反応して熱硬化性樹脂組成物を硬化させる剤のことである。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物においては、硬化剤(B)がシアネートエステル樹脂(B1)を含有する。
【0029】
硬化剤(B)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
【0030】
(シアネートエステル樹脂(B1))
シアネートエステル樹脂(B1)は、例えば、ノボラック型シアネートエステル樹脂;ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等のビスフェノール型シアネートエステル樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂;及びビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含み、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくはノボラック型シアネートエステル樹脂及びナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0031】
シアネートエステル樹脂(B1)は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、耐熱性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂及びビスフェノールA型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、耐熱性の観点からノボラック型シアネートエステル樹脂およびジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂から選ばれる一種または二種を含むことがより好ましい。
【0032】
ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、例えば、下記式(I)で示されるものが挙げられる。
【化2】
上記式(I)で示されるノボラック型シアネートエステル樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、ノボラック型シアネートエステル樹脂の耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上の整数であり、そして、溶融粘度が高くなるのをより一層抑制する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは7以下の整数である。
【0033】
シアネートエステル樹脂(B1)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、耐熱性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
【0034】
<熱伝導性フィラー(C)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性を向上させる観点から、熱伝導性フィラー(C)を含む。
【0035】
熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性をより一層向上させる観点から、好ましくは10W/(m・K)以上、より好ましくは20W/(m・K)以上、更に好ましくは30W/(m・K)以上、更に好ましくは40W/(m・K)以上、更に好ましくは50W/(m・K)以上であり、そして、例えば300W/(m・K)以下である。
なお、上記熱伝導性フィラー(C)の熱伝導率は、JIS R 1611:2010に準拠し、Xeフラッシュ法により測定することができる。
【0036】
熱伝導性フィラー(C)は、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び硫酸バリウムからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
また、熱伝導性フィラー(C)は、熱伝導性をより一層向上させる観点から、好ましくは、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及びアルミナからなる群から選択される一種または二種以上を含み、さらに好ましくは、窒化ホウ素を含む。
【0037】
上記窒化ホウ素は、好ましくは鱗片状窒化ホウ素を含み、より好ましくは鱗片状窒化ホウ素の単分散粒子及び鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子からなる群から選択される一種または二種以上を含み、更に好ましくは鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を含む。
鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
【0038】
熱伝導性フィラー(C)の平均粒径は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性をより一層向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
ここで、熱伝導性フィラー(C)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により、粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメディアン径(D50)である。
【0039】
熱伝導性フィラー(C)は、上記窒化ホウ素を好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含むことができ、そして、好ましくは100質量%以下含むことができる。
【0040】
熱伝導性フィラー(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性をより一層向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、更に好ましくは70質量部以上であり、そして、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより一層向上させる観点から、好ましくは99質量部以下、より好ましくは95質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、更に好ましくは87質量部以下、更に好ましくは85質量部以下である。
【0041】
<任意成分>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、熱伝導性フィラー(C)以外の任意成分を、必要に応じて含有することができる。
以下、熱硬化性樹脂組成物が含有することができる任意成分について記載する。
【0042】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性をより一層向上させる観点から、さらに硬化促進剤(D)を含有することが好ましい。上記硬化促進剤(D)は特に限定されないが、フェノール樹脂、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、3級アミン類、有機リン化合物、有機金属塩及び有機酸からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
本明細書における硬化促進剤(D)とは、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の反応、及び/または硬化剤(B)どうしの反応を促進する剤のことである。
【0043】
上記硬化促進剤(D)は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくはフェノール樹脂及びベンゾオキサジン化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0044】
フェノール樹脂は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型フェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;アリル化フェノールノボラック樹脂等のアリル化フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;レゾール型フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含有し、より好ましくはノボラック型フェノール樹脂及びアリル化フェノール樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0045】
フェノール化合物は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノニルフェノール、アリルフェノール、及び2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンからなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0046】
3級アミン類は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7からなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0047】
有機リン化合物は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタンからなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0048】
有機金属塩は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)からなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0049】
有機酸は、耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは、酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸からなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0050】
硬化促進剤(D)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、熱硬化性、反応性及び耐熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.20質量部以上、更に好ましくは0.50質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0051】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(D)以外の任意成分を含有することができる。硬化促進剤(D)以外の任意成分としては、例えば、熱伝導性フィラー(C)以外のフィラー、カップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、分散安定剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
<物性>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により、大気雰囲気下、25℃の条件で測定して得られる厚み方向の熱伝導率は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは20W/(m・K)以上、より好ましくは21W/(m・K)以上、更に好ましくは22W/(m・K)以上であり、そして、例えば200W/(m・K)以下であり、100W/(m・K)以下であってもよく、50W/(m・K)以下であってもよく、40W/(m・K)以下であってもよい。
上記熱伝導率は、具体的には、Xeフラッシュ法(ハーフタイム法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS-K-6911に準拠して測定した密度(ρ)より次式を用いて算出することができる。
熱伝導率[W/(m・K)]=α[m2/s]×Cp[J/(kg・K)]×ρ[kg/m3]
上記熱伝導率は、上記樹脂硬化物層を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することができる。
【0053】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで得られる厚み0.3mmの硬化物を、測定温度範囲30℃から380℃、昇温速度5℃/分、荷重50N、引張モード、周波数1Hzの条件で熱機械分析して得られるガラス転移温度は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、例えば450℃以下であり、400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよく、320℃以下であってもよい。
上記ガラス転移温度は、熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することができる。
【0054】
<用途>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、樹脂シート形成用とすることが好ましい。例えば、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスの観点から、パワーモジュール用基板の材料に用いられる樹脂シートの形成用とすることが好ましい。
【0055】
<熱硬化性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法として、例えば、次のような方法がある。
【0056】
まず、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、熱伝導性フィラー(C)、硬化促進剤(D)及び添加剤を、溶媒中で混合することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調製する。この混合は、三本ロール、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、自転公転式分散方式等の各種混合機を用いることができる。
上記溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、及びN-メチルピロリドンからなる群から選択される一種または二種以上を含有する。
【0057】
[樹脂シート]
本実施形態に係る樹脂シートは、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む。上記樹脂組成物層は、好ましくはBステージ状態である。
本実施形態に係る樹脂シートの具体的な形態は、例えば、基材と、基材上に設けられた、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、を備えるものである。
【0058】
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を基材上に塗布して得られた塗布膜に対して、溶媒除去処理を行うことにより得ることができる。上記樹脂シート中の溶媒含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることが好ましい。例えば、80℃以上200℃以下、1分間以上30分間以下の条件で、上記溶媒除去処理を行うことができる。
【0059】
本実施形態に係る樹脂シートの平面形状は、特に限定されず、放熱体や発熱体等の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば矩形とすることができる。
本実施形態に係る樹脂シートの樹脂組成物層の膜厚は、例えば、機械的強度、耐熱性、絶縁性及び放熱性のバランスをより一層向上させる観点から、50μm以上500μm以下である。
【0060】
上記基材は、例えば、樹脂フィルム及び金属箔からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
樹脂フィルムは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素系樹脂フィルム;及びポリイミド樹脂フィルムからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅箔、銅系合金箔、アルミ箔、アルミ系合金箔、鉄箔、鉄系合金箔、銀箔、銀系合金箔、金箔、金系合金箔、亜鉛箔、亜鉛系合金箔、ニッケル箔、ニッケル系合金箔、錫箔及び錫系合金箔からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
上記基材の厚みは、例えば、10μm以上500μm以下である。
【0061】
本実施形態に係る樹脂シートは、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板の材料として好適に用いることができる。
【0062】
[熱伝導性部材]
本実施形態に係る熱伝導性部材は、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む。上記樹脂硬化物層は、好ましくはCステージ状態である。
本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、前述した本実施形態に係る樹脂シートを硬化し、必要に応じて基材を剥離することによって得ることができる。
また、本実施形態に係る熱伝導性部材は好ましくは熱伝導性シートである。
【0063】
本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、発熱体と、放熱体との間に介在する熱伝導材として使用される。
発熱体としては、半導体素子、LED素子、半導体素子やLED素子等が搭載された基板、Central Processing Unit(CPU)、パワー半導体、リチウムイオン電池、燃料電池等を挙げることができる。
放熱体としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、放熱(冷却)フィン等を挙げることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、電子装置内の高熱伝導性が要求される接合界面に設けられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進することができる。これにより、半導体チップ等における特性変動に起因した故障を抑え、電子装置の安定性の向上が図られている。
【0065】
本実施形態に係る熱伝導性部材の平面形状は、特に限定されず、放熱体や発熱体等の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば矩形とすることができる。
本実施形態に係る熱伝導性部材における樹脂硬化物層の厚みは、機械的強度、耐熱性及び絶縁性をより一層向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、そして、放熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、更に好ましくは250μm以下である。
【0066】
本実施形態に係る熱伝導性部材の樹脂硬化物層を、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により、大気雰囲気下、25℃の条件で測定して得られる厚み方向の熱伝導率は、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは20W/(m・K)以上、より好ましくは21W/(m・K)以上、更に好ましくは22W/(m・K)以上であり、そして、例えば200W/(m・K)以下であり、100W/(m・K)以下であってもよく、50W/(m・K)以下であってもよく、40W/(m・K)以下であってもよい。
上記熱伝導率は、具体的には、Xeフラッシュ法(ハーフタイム法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS-K-6911に準拠して測定した密度(ρ)より次式を用いて算出することができる。
熱伝導率[W/(m・K)]=α[m2/s]×Cp[J/(kg・K)]×ρ[kg/m3]
上記熱伝導率は、上記樹脂硬化物層を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することができる。
【0067】
本実施形態に係る熱伝導性部材の樹脂硬化物層を、測定温度範囲30℃から380℃、昇温速度5℃/分、荷重50N、引張モード、周波数1Hzの条件で熱機械分析して得られるガラス転移温度は、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、例えば450℃以下であり、400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよく、320℃以下であってもよい。
上記ガラス転移温度は、上記樹脂硬化物層を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することができる。
【0068】
本実施形態に係る熱伝導性部材は、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板の材料として好適に用いることができる。
【0069】
[金属ベース基板]
本実施形態に係る金属ベース基板は、金属基板と、上記金属基板上に設けられた絶縁層と、上記絶縁層上に設けられた金属層と、を備え、上記絶縁層が、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、及び前述した本実施形態に係る熱伝導性部材からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0070】
図1は、本実施形態に係る金属ベース基板100の構成の一例を示す概略断面図である。
本実施形態に係る金属ベース基板100は、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備え、絶縁層102が、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、及び前述した本実施形態に係る熱伝導性部材からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0071】
絶縁層102は、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の樹脂組成物層で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる樹脂硬化物層であってもよい。
【0072】
絶縁層102の厚みは、機械的強度、耐熱性及び絶縁性をより一層向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、そして、金属ベース基板100全体における放熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、更に好ましくは250μm以下である。
【0073】
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄及び錫等からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
金属層103は、回路加工性をより一層向上させる観点から、好ましくは銅層及びアルミニウム層からなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは銅層を含む。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
【0074】
金属層103の厚みは、高電流を要する用途であっても、回路パターンの発熱をより抑制する観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.10mm以上、更に好ましくは0.25mm以上であり、そして、回路加工性をより一層向上できるとともに、基板全体をより薄型化できる観点から、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。
【0075】
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、好ましくは銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板及びアルミニウム合金基板からなる群から選択される一種または二種以上を含み、放熱性をより一層向上させる観点から、より好ましくは銅基板及びアルミニウム基板からなる群から選択される一種または二種以上を含み、更に好ましくは銅基板を含む。
【0076】
金属基板101の厚みは特に限定されないが、外形加工や切り出し加工等における加工性をより一層向上できるとともに、基板全体をより薄型化できる観点から、好ましくは20.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であり、そして、放熱性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは2.0mm以上である。
【0077】
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
【0078】
本実施形態に係る金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板として好適に用いることができる。
【0079】
[電子装置]
本実施形態に係る電子装置は、前述した本実施形態に係る金属ベース基板と、上記金属ベース基板上に設けられた電子部品と、を備える
【0080】
本実施形態に係る金属ベース基板100は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、例えば半導体装置等の電子装置に用いることができる。
図2は、本実施形態に係る電子装置200の構成の一例を示す概略断面図である。
本実施形態に係る電子装置200は、前述した本実施形態に係る金属ベース基板100と、金属ベース基板100上に設けられた電子部品201と、を備える。
動作により発熱する電子部品201(各種の発熱素子)からの熱に対して、金属ベース基板100はヒートスプレッターとして機能することができる。
【0081】
図2に示す電子装置200は、金属ベース基板100の金属層103上に、ダイアタッチ材等の接着層202を介して半導体素子等の電子部品201が搭載されている。電子部品201は、ボンディングワイヤ203を介して金属ベース基板100に形成された接続用電極部に接続されており、金属ベース基板100に実装されている。そして、電子部品201は、金属ベース基板100上に封止樹脂層205により一括封止されている。
金属ベース基板100の金属基板101側には、熱伝導層209(サーマル・インターフェース材(TIM))を介してヒートシンク207が設けられている。ヒートシンク207は熱伝導性に優れた材料から構成されており、アルミニウム、鉄、銅などの金属が挙げられる。
【0082】
電子部品201としては、パワー半導体素子を用いることができる。これにより、本実施形態に係る電子装置200をパワーモジュールとすることが可能である。パワーモジュールにおいては、パワー半導体素子以外にも、他の電子部品が金属ベース基板100上に搭載されていてもよい。
パワー半導体素子は、例えば、SiC、GaN、Ga2O3、又はダイヤモンドのようなワイドバンドギャップ材料を使用したものであり、高電圧・大電流で使用されるように設計されているため、通常のシリコンチップ(半導体素子)よりも発熱量が大きくなるので、さらに高温の環境下で動作することになる。パワー半導体素子には、例えば、200℃以上や250℃以上等の高温の動作環境下で、長時間の使用が要求される。パワー半導体素子としては、例えば、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0084】
以下、本発明について実施例及び比較例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例の記載に何ら限定されるものではない。
【0085】
[トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)の製造]
J.M. Pin etc., Polym. Chem., 2016, 7, 1221?1225に記載された製法により、下記式(11)により示されるトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)を得た。
【化3】
【0086】
<エポキシ当量>
上記の製法により得られたトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂をシクロヘキサノン20mLに溶解した。得られた溶解液に酢酸20mL、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mL(臭化テトラエチルアンモニウム100gに対して酢酸400mLを添加して溶解した溶液)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて電位差自動滴定装置(メトローム社製916 Ti-Touch)により滴定した。ブランクテストを行い、下記式よりエポキシ当量を算出した。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S-B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
【0087】
上記の製法により得られたトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は220g/eqであった。
【0088】
<重量平均分子量(Mw)>
上記の製法により得られたトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出した。
GPCの測定条件は、以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0089】
上記の製法により得られたトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は1,400であった。
【0090】
[熱硬化性樹脂組成物の作製]
実施例及び比較例について、以下のように熱硬化性樹脂組成物を作製した。
表1に示す熱硬化性樹脂組成物の組成に従い、樹脂成分、フィラー成分を溶媒(シクロヘキサノン)中に均一に溶解・分散させたワニス状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表1中の各成分の量の単位は質量部である。
【0091】
<エポキシ樹脂(A)>
・トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂1
上記の製法により得られたトリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(A1)
・その他のエポキシ樹脂1
ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、日本化薬社製、製品名:XD-1000
・その他のエポキシ樹脂2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC社製、製品名:EPICLON 830
・その他のエポキシ樹脂3
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、DIC社製、製品名:EPICLON HP-4032D
・その他のエポキシ樹脂4
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、新日鉄住金マテリアルズ社製、製品名:YP-55
【0092】
<硬化剤(B)>
・シアネートエステル樹脂1
ノボラック型シアネートエステル樹脂、ロンザ社製、製品名:PT-30
・シアネートエステル樹脂2
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ロンザ社製、製品名:DT-4000
・その他の硬化剤1
2-メチルイミダゾール、四国化成社製、製品名:2-メチルイミダゾール
・その他の硬化剤2
ジアミノジフェニルメタン、東京化成工業社製、製品名:ジアミノジフェニルメタン
【0093】
<熱伝導性フィラー(C)>
・窒化ホウ素1
顆粒状に造粒された鱗片状窒化ホウ素、JFEミネラル社製、HP-40 MF100
【0094】
<硬化促進剤(D)>
・フェノール樹脂1
ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト社製、PR-55617
【0095】
[物性評価]
上記の製法により得られた熱硬化性樹脂組成物の物性を下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0096】
<製膜性>
表1に示す樹脂成分の組成に従い、樹脂成分の原料を溶媒(シクロヘキサノン)中に均一に溶解・分散させ、ワニス状の混合物を得た。得られた混合物を、アプリケーターを用いてPETフィルム上に塗布し、115℃のオーブンにて15分加熱し、乾燥させた。得られた混合物により膜が形成できたものを「可」、形成できなかったものを「不可」とした。
【0097】
<熱伝導率(λ)>
上記の製法により得られた熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで厚み0.3mmの硬化物を得た。
得られた硬化物の厚み方向の熱伝導率を、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD-1RTVを用いて、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により、大気雰囲気下、25℃の条件で測定した。
【0098】
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた硬化物のガラス転移温度を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することで厚み0.3mmの硬化物を得た。
得られた硬化物のガラス転移温度を、日立ハイテク社製の動的粘弾性測定装置DMA-6100を用いて、測定温度範囲30℃から380℃、昇温速度5℃/分、荷重50N、引張モード、周波数1Hzの条件で熱機械分析することにより得た。
【0099】
<貯蔵弾性率(E´)>
上記の製法により得られた熱硬化性樹脂組成物を30℃から180℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、続けて60分間加熱することでサイズ50mm×8mm×0.3mmの硬化物を得た。
得られた硬化物の貯蔵弾性率(E´)を、日立ハイテック社製DMA-6100を用いて、測定温度50℃または175℃、荷重200mN、引張モード、周波数1Hzの条件で測定することにより得た。
【0100】
【0101】
表1に示された結果を検討する。
硬化剤としてシアネートエステル樹脂を用いなかった比較例2及び3では樹脂組成物を製膜することができなかった。このことから、トリアリールトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂を組み合わせて使用することにより製膜性が向上したことがわかる。
また、実施例では熱伝導性の指標となる熱伝導率が比較例に比べ向上していた。
さらに、実施例では耐熱性の指標となるガラス転移温度及び高温(175℃)での貯蔵弾性率が比較例に比べ向上していた。
これらのことから、実施例の熱硬化性樹脂組成物は熱伝導性、耐熱性及び製膜性のバランスが向上していたことがわかる。