(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051878
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 39/10 20230101AFI20240404BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L31/04 120
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158254
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 優也
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB15
5F151EA03
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA11
5F151EA16
5F151EA20
5F151FA04
5F151JA02
5F151JA03
5F151JA04
5F251AA11
5F251BA18
5F251CB13
5F251CB15
5F251EA03
5F251EA09
5F251EA10
5F251EA11
5F251EA16
5F251EA20
5F251FA04
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA04
(57)【要約】
【課題】モジュール内への水蒸気および酸素の流入を十分に抑制でき、封止性能に優れた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である太陽電池モジュール1は、基材2と、基材2上に設けられた第1電極層11と、第1電極層11上に設けられた光電変換層10と、光電変換層10上に設けられた第2電極層12と、取り出し電極層20と、封止層30とを備える。封止層30は、取り出し電極層20に対応した領域に開口30Aを有する。そして、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、開口30Aから取り出し電極層20が露出し、取り出し電極層20の周縁部を封止層30が覆っている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられた光電変換層と、
前記光電変換層上に設けられた第2電極層と、
前記基材上において、当該基材を平面視したときに前記光電変換層と重ならない領域に設けられた取り出し電極層と、
前記第1電極層、前記光電変換層、前記第2電極層、および前記取り出し電極層を覆うように設けられ、前記取り出し電極層に対応した領域に開口を有する封止層と、
を備え、
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記開口から前記取り出し電極層が露出し、前記取り出し電極層の周縁部を前記封止層が覆っている、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記封止層は、前記取り出し電極層に対応した領域に第1の開口を有する第1の層と、前記第1の層を覆うように設けられ、前記取り出し電極層に対応した領域に第2の開口を有する第2の層とを含み、
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記第1および前記第2の開口から前記取り出し電極層が露出し、
前記第2の開口は、前記第1の開口より小さく形成されている、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記取り出し電極層の周縁部を前記第1および前記第2の層が覆っている、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記光電変換層は、光吸収層と、電子輸送層と、正孔輸送層とを有し、
前記光吸収層は、ペロブスカイト化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
基材上に第1電極層、光電変換層、および第2電極層をこの順に設ける工程と、
前記基材上において、当該基材を平面視したときに前記光電変換層と重ならない領域に取り出し電極層を設ける工程と、
前記第2電極層および前記取り出し電極層上に、開口を有する封止層を設ける工程と、
を含み、
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記取り出し電極が前記開口を介して露出し、前記取り出し電極層の周縁部が覆われるように前記封止層を設ける、太陽電池モジュールの製造方法
【請求項6】
基材上に第1電極層、光電変換層、および第2電極層をこの順に設ける工程と、
前記基材上において、当該基材を平面視したときに前記光電変換層と重ならない領域に取り出し電極層を設ける工程と、
前記第2電極層および前記取り出し電極層上に、封止層を設ける工程と、
前記封止層の一部を除去して開口を形成する工程と、
を含み、
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記取り出し電極が前記開口を介して露出し、前記封止層により前記取り出し電極層の周縁部が覆われるように、前記封止層に前記開口を形成する、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
基材上に第1電極層、光電変換層、および第2電極層をこの順に設ける工程と、
前記基材上において、当該基材を平面視したときに前記光電変換層と重ならない領域に取り出し電極層を設ける工程と、
前記第2電極層および前記取り出し電極層上に第1の封止層を設ける工程であって、前記取り出し電極層に対応した領域に第1の開口を有する第1の封止層を設ける工程と、
前記第1の封止層上に第2の封止層を設ける工程と、
前記第2の封止層の一部を除去して第2の開口を形成する工程と、
を含み、
前記基材を前記光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、前記取り出し電極が前記第1および前記第2の開口を介して露出し、前記第1および前記第2の封止層の少なくとも一方により前記取り出し電極層の周縁部が覆われるように、前記第1および前記第2の封止層を設け、前記第2の開口を形成する、太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関し、より詳しくはガラス基材等の絶縁基材上に光電変換層が成膜された太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基材等の絶縁基材上に光電変換層が形成されてなる太陽電池モジュールが知られている。特許文献1には、基板と、基板上に形成された複数の太陽電池セルと、基板上に形成され、複数の太陽電池セルから電荷を取り出す取り出し電極と、取り出し電極から電荷を収集する取出し配線材と、取り出し配線材を覆う被覆材と、封止材とを備えた太陽電池モジュールが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、陰極と、陽極と、陰極と陽極との間に配置された光電変換層と、陰極上又は陽極上のいずれか一方に配置された樹脂層とを有する太陽電池セルが開示されている。特許文献2には、光電変換層が、一般式R-M-X3(但し、Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-188211号公報
【特許文献2】特開2016-174151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池セルの光電変換層は、水蒸気、酸素、および光の存在により、出力性能が大きく低下するため、特許文献1,2に記載されるように、光電変換層に水蒸気および酸素が作用しないように光電変換層が封止されている。特に、光電変換層がペロブスカイト素子である場合は、水蒸気および酸素の影響による出力低下が顕著である。また、特許文献1に記載されるように、太陽電池モジュールには、太陽電池セルで発電された電力を外部に取り出すための電極が設けられるが、電極の周囲は他の部分と比べて封止性能が低下し易いため、水蒸気および酸素が電極の周囲から流入することが想定される。
【0006】
本開示の目的は、モジュール内への水蒸気および酸素の流入を十分に抑制でき、封止性能に優れた太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る太陽電池モジュールは、基材と、基材上に設けられた第1電極層と、第1電極層上に設けられた光電変換層と、光電変換層上に設けられた第2電極層と、基材上において、当該基材を平面視したときに光電変換層と重ならない領域に設けられた取り出し電極層と、第1電極層、光電変換層、第2電極層、および取り出し電極層を覆うように設けられ、取り出し電極層に対応した領域に開口を有する封止層とを備え、基材を光電変換層が設けられた面側から平面視したときに、開口から取り出し電極層が露出し、取り出し電極層の周縁部を封止層が覆っている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る太陽電池モジュールによれば、モジュール内への水蒸気および酸素の流入を十分に抑制できる。本開示に係る太陽電池モジュールは、封止性能に優れるため、例えば、良好な出力性能を長期にわたって維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図2】第2の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図3】第3の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図4】第1の実施形態である太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図5】第2の実施形態である太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図6】第3の実施形態である太陽電池モジュールの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図7】第4の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図8】第5の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図9】第6の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図10】第7の実施形態である太陽電池モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池モジュールの実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下で説明する複数の実施形態および変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本開示の範囲に含まれている。
【0011】
図1は、第1の実施形態である太陽電池モジュール1をX方向に切断した断面構造を模式的に示す。なお、基材2の表面に沿った第1の方向を「X方向(
図1に図示)」、基材2の表面に沿った、X方向と直交する第2の方向を「Y方向(
図1の紙面に直交する方向)」とする。
図1に示すように、太陽電池モジュール1は、基材2と、基材2上に設けられたセル3とを備える。セル3は、直列に接続された複数のユニットセル4から構成されている。各ユニットセル4は、光電変換層10と、第1電極層11と、第2電極層12とを含む。
【0012】
太陽電池モジュール1は、さらに、取り出し電極層20と、封止層30とを備える。取り出し電極層20は、セル3から電気エネルギーをモジュールの外部に取り出すための電極であって、基材2を平面視したときに光電変換層10と重ならない領域に設けられている。封止層30は、基材2と共にセル3を挟み、モジュール内に水蒸気および酸素が流入することを抑制するための層である。封止層30は、セル3(光電変換層10、第1電極層11、第2電極層12)および取り出し電極層20を覆うように設けられ、取り出し電極層20に対応する領域に開口30Aを有する。
【0013】
太陽電池モジュール1は、基材2上に設けられた無機膜40を備えていてもよい。無機膜40は、基材2と第1電極層11の間に介在している。無機膜40には、例えば、後述する第2の層32のバリア層と同種の無機膜を適用できる。
【0014】
詳しくは後述するが、太陽電池モジュール1では、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、封止層30の開口30Aから取り出し電極層20が露出し、取り出し電極層20の周縁部を封止層30が覆った状態となっている。即ち、基材2と反対側を向いた取り出し電極層20の表面21は、その一部が封止層30の開口30Aから露出し、当該露出部の周囲が封止層30により覆われている。この場合、取り出し電極層20の周囲から水蒸気および酸素がモジュール内に流入することが効果的に抑制される。
【0015】
基材2には、表面に絶縁層が形成された導電性の基材を用いてもよいが、好ましくは絶縁性の基材を用いる。基材2は、例えば、波長400nm以上1000nm以下の太陽光に対する透過性を有し、水蒸気透過率が低い材料で構成される。基材2は、樹脂製の基材であってもよく、ガラス製の基材であってもよい。基材2の厚みは、例えば、0.02mm以上3mm以下である。なお、太陽電池モジュール1は支持体5を備えるため、基材2として、後述するバリアフィルムと同様の樹脂フィルムを用いることも可能である。
【0016】
太陽電池モジュール1は、上記のように、直列に接続された複数のユニットセル4を含む。ユニットセル4は、X方向に複数配置され、X方向に直交するY方向に連続している。本実施形態のユニットセル4は、ペロブスカイト型のセルであって、基材2上に設けられた第1電極層11と、第1電極層11上に設けられた光電変換層10と、光電変換層10上に設けられた第2電極層12とを含む。なお、セル3(各ユニットセル4)の表面を覆う基材2および封止層30の少なくとも一方が光透過性を有する。この場合、基材2側、又は封止層30側、或いは両側からモジュール内に光が入射し、各ユニットセル4の光電変換層10に吸収されるが、本実施形態では、封止層30が不透明であり、基材2の表面がモジュールの受光面となる。
【0017】
光電変換層10は、光吸収層13と、電子輸送層14と、正孔輸送層15とを含み、電子輸送層14および正孔輸送層15が光吸収層13を両側から挟むように配置された積層構造を有する。本実施形態の光電変換層10では、後述の溝が形成された部分を除き、基材2側から順に、電子輸送層14、光吸収層13、および正孔輸送層15が配置されている。光吸収層22は、例えば、組成式ABX3(式中、Aは1価のカチオン、Bは2価のカチオン、Xはハロゲンアニオン)で示されるペロブスカイト化合物を含む。
【0018】
電子輸送層14は、n型半導体により構成され、n層とも呼ばれる。電子輸送層14を構成する電子輸送材料としては、アナターゼ型酸化チタン、酸化錫などが例示される。正孔輸送層15は、p型半導体により構成され、p層とも呼ばれる。正孔輸送層15は、酸化還元部位を有する正孔輸送材料を含む。正孔輸送層15を構成する正孔輸送材料としては、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N’-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)などが例示される。
【0019】
上記ペロブスカイト化合物(ABX3)のAの一例は、R1R2R3-N-Hで表される1価のカチオンである。R1およびR2がH、R3がCH3である場合、Aはメチルアンモニウム(CH3NH3)となる。官能基R1、R2、R3は、例えば、炭素、水素、窒素、および酸素から選択される少なくとも1種の元素を含む。官能基R1、R2、R3が炭素原子を含む場合、官能基R1、R2、R3の炭素数の合計は4以下であることが好ましい。官能基R1、R2、R3は、Rb、Cs等の第1族元素を含んでいてもよい。
【0020】
ABX3のBは、上記の通り、2価のカチオンである。Bは、例えば、遷移金属又は第13族元素、第14族元素、又は第15族元素の2価のカチオンである。Bの具体例としては、Pb2+、Ge2+、Sn2+が挙げられる。Bは、Pb2+およびSn2+から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、Pb2+、Sn2+の一部が他の元素に置換されていてもよい。置換元素としては、Bi、Sb、In、Ge、Ni等が例示できる。ABX3のXは、Cl、Br、Iから選択される少なくとも1種である。
【0021】
上記A、M、Xのそれぞれのサイトは、複数種のイオンによって占有されていてもよい。ペロブスカイト化合物(ABX3)の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3CH2NH3PbI3、NH2CHNH2PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CsPbI3、CsPbBr3等が挙げられる。CH3NH3PbI3から構成される光吸収層13は、PVSK素子とも呼ばれる。
【0022】
第1電極層11および第2電極層12は、光透過性を有し、光電変換層10への光の進入を遮らないことが好ましい。各電極層の光線透過率は、例えば、波長450nm以上900nm以下の範囲において85%以上である。また、各電極層のシート抵抗は、200Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下であってもよい。好適な電極層の一例は、酸化インジウム、酸化亜鉛等の金属酸化物に、タングステン、スズ、アンチモン等がドーピングされた、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電性酸化物で構成される透明導電層である。透明導電層の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下である。各電極層は、スパッタリング等の従来公知の方法により成膜できる。
【0023】
図1では、X方向に隣り合う2つのユニットセル4を図示し、左側のユニットセル4を「ユニットセル4A」、右側のユニットセル4を「ユニットセル4B」としている。太陽電池モジュール1に含まれるユニットセル4の数は特に限定されず、3個以上であってもよい。
図1に示す例では、ユニットセル4Aの第2電極層12が、ユニットセル4Bの第1電極層11と電気的に接続されている。3個以上のユニットセル4が含まれる場合、例えば、ユニットセル4Bの第2電極層12が、X方向に隣り合う第3のユニットセル4の第1電極層11と電気的に接続される。このようにして、複数のユニットセル4がX方向に沿って直列に接続される。
【0024】
セル3には、溝16,17,18が形成されている。溝16,17,18は、セル3を構成する層の一部を除去して形成され、Y方向に延びて互いに略平行に形成されている。各溝は、従来公知のスクライブ法などにより形成できる。各溝幅は、例えば、30μm以上300μm以下である。溝17には、溝内に空隙が形成されないように、封止層30を構成する樹脂が充填されている。
【0025】
溝16は、各ユニットセル4の第1電極層11を分割する溝である。溝17は、各ユニットセル4の光吸収層13、正孔輸送層15、および第2電極層12を分割している。なお、溝17は各ユニットセル4の第2電極層12を分割していればよく、光吸収層13と正孔輸送層15は溝17により分割されていなくてもよい。本実施形態では、溝16,17によって各ユニットセル4が区画されているものとする。
【0026】
溝18は、正孔輸送層15、光吸収層13、および電子輸送層14を貫通して、ユニットセル4Bの第1電極層11を露出させるように形成されている。そして、溝18内にはユニットセル4Aの第2電極層12が形成されている。これにより、ユニットセル4Bの第1電極層11が、ユニットセル4Aの第2電極層12と電気的に接続される。即ち、溝18が複数のユニットセル4を直列に接続する導電パスとして機能する。
【0027】
セル3は、例えば、以下の方法により製造される。
(1)基材2上に、第1電極層11および電子輸送層14をこの順で形成する。
(2)第1電極層11の一部をレーザースクライブ処理して溝16を形成する。
(3)電子輸送層14上に、光吸収層13および正孔輸送層15をこの順で形成する。
(4)正孔輸送層15、光吸収層13、および電子輸送層14の一部をメカニカルスクライブ処理して溝18を形成する。
(5)正孔輸送層15上に、第2電極層12を形成する。このとき、溝18内に第2電極層12が形成され、上記導電パスが形成される。
(6)第2電極層12、正孔輸送層15、および光吸収層13の一部をメカニカルスクライブ処理して溝17を形成する。
【0028】
光吸収層13、電子輸送層14、および正孔輸送層15は、例えば、各層の構成材料を溶解させた溶液を基材2の表面に塗布することにより成膜できる。これらの層は、メニスカス塗布法、スピンコート法、又はディスペンサーにより成膜されてもよい。各層の厚みは、特に限定されないが、一例としては、10nm以上500nm以下である。
【0029】
以下、取り出し電極層20および封止層30の構成について詳説する。
【0030】
取り出し電極層20は、金属層が積層された構造を有し、基材2上において、基材2を平面視したときに光電変換層10と重ならない領域に設けられている。言い換えると、取り出し電極層20は、太陽電池モジュール1の厚み方向に光電変換層10と重ならない領域に設けられている。取り出し電極層20には、ユニットセル4Aの第1電極層11と電気的に接続された取り出し電極層20Aと、ユニットセル4Bの第2電極層12と電気的に接続された取り出し電極層20Bとが含まれている。取り出し電極層20Aは基材2のX方向の第1の端部に配置され、取り出し電極層20Bは当該第1の端部と反対側のX方向の第2の端部に配置されている。
【0031】
取り出し電極層20を構成する金属層は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等の金属又はこれらの合金により構成されている。中でも、銀を用いることが好ましい。金属層は、単層構造であってもよく、異種金属層を含む複層構造であってもよい。取り出し電極層20の厚みの一例は、10μm以上100μm以下である。取り出し電極層20は、印刷、スパッタリング、蒸着等により成膜されてもよく、めっき法により成膜されてもよい。
【0032】
封止層30は、セル3の全体を覆う層であって、水蒸気および酸素がモジュール内に流入することを抑制する。また、封止層30は、水蒸気等を捕捉する機能を有していてもよい。封止層30は、取り出し電極層20の厚み方向に沿った側面を覆っている。一方、取り出し電極層20はセル3で発電された電力をモジュール外に取り出すための電極であるから、基材2と反対側を向いた取り出し電極層20の表面21の一部は、封止層30に覆われず露出している。封止層30には、取り出し電極層20の表面21の一部を露出させる開口30Aが形成されている。
【0033】
封止層30は、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、取り出し電極層20の表面21の周縁部を覆っている。封止層30の開口30Aの形状は特に限定されないが、一例としては、平面視円形状である。封止層30の開口30Aは、モジュールの厚み方向に取り出し電極層20の表面21と重なるように配置され、開口面積が最も小さくなった部分は表面21よりも小さくなっている。本実施形態では、表面21と接する部分で開口30Aの面積が最小となっている。
【0034】
封止層30は、単層構造、或いは3つ以上の層を有する多層構造とすることも可能であるが、本実施形態では、第1の層31と第2の層32を含む二層構造を有する。第1の層31は、取り出し電極層20に対応した領域に第1の開口31Aを有する。第2の層32は、第1の層31を覆うように設けられ、取り出し電極層20に対応した領域に第2の開口32Aを有する。詳しくは後述するが、第1の開口31Aと第2の開口32Aは、モジュールの厚み方向に重なって配置され、封止層30の開口30Aを形成している。
【0035】
第1の層31は、セル3に形成された溝17、セル3と取り出し電極層20の間等に充填され、セル3および取り出し電極層20に密着する。第1の層31は、セル3との間に空隙ができないように、セル3と隙間なく密着することが好ましい。この場合、モジュール内への水蒸気および酸素の流入が抑制される。第1の層31は、水蒸気および酸素の透過率が低い樹脂で構成されることが好ましい。第1の層31は、吸湿フィラーを含んでいてもよい。水分を捕捉する機能を有する第1の層31は、ゲッター層とも呼ばれる。
【0036】
第1の層31を構成する樹脂は、水蒸気および酸素の透過率が低く、セル3に対する密着性が良好な樹脂であればよいが、好適な樹脂の一例としては、オレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーは、オレフィンに由来する単位を主たる構成単位とするポリマーである。第1の層31は、例えば、オレフィン系ポリマー中に吸湿フィラーが分散した層である。なお、第1の層31は、オレフィン系ポリマーおよび吸湿フィラー以下の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、粘着付与剤、硬化促進剤、酸化防止剤、可塑剤、ゴム成分等が挙げられる。
【0037】
オレフィン系ポリマーは、2種以上のオレフィンの共重合体、オレフィンと非共役ジエン、スチレン等のオレフィン以外のモノマーとの共重合体であることが好ましい。共重合体の一例としては、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン‐非共役ジエン共重合体、スチレン-イソブテン共重合体、スチレン-イソブテン-スチレン共重合体、イソブテン-イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0038】
オレフィン系ポリマーは、架橋構造を有することが好ましく、第1の反応性官能基を含む共重合体と、第2の反応性官能基を含む共重合体とが反応して得られる。反応性官能基は、エポキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシル基、およびイソシアネート基からなる群より選択でき、互いに反応する組み合わせで用いられる。反応性官能基の組み合わせの具体例としては、エポキシ基とカルボキシ基、エポキシ基と酸無水物基、カルボキシ基と酸無水物基等が挙げられる。
【0039】
吸湿フィラーの一例としては、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、焼成ドロマイト、水素化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、モレキュラーシーブ、シリカ等が挙げられる。
【0040】
第1の層31の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上70μm以下である。第1の層31の厚みが当該範囲内であれば、良好な封止性能、水蒸気等の補足性能を確保できる。第1の層31を構成する材料は、太陽電池モジュール1の製造工程においてフィルム状で供給され、加熱、加圧、又は加熱しながら加圧することにより流動してセル3に隙間なく密着し、セル3の溝内にも充填される。
【0041】
第2の層32は、水蒸気および酸素の透過率が低い層であって、第1の層31の全体を覆うように設けられ、モジュール内への水蒸気および酸素の流入を抑制する。第2の層32は、バリア層を有する樹脂フィルムにより構成されることが好ましい。樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどの樹脂を主成分として構成される。バリア層は、樹脂フィルムの内面、即ち第1の層31側に向いた面に形成されることが好ましい。バリア層の一例としては、シリカ蒸着膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等の無機膜が挙げられる。
【0042】
第2の層32の厚みは、例えば、20μm以上150μm以下であり、好ましくは50μm以上100μm以下である。なお、バリア層の厚みは樹脂フィルムと比べて薄いことから、第2の層32の厚みは、第2の層32を構成する樹脂フィルムの厚みと実質的に同じである。第1の層31と第2の層32の厚みの関係は特に限定されない。
【0043】
第1の層31と第2の層32は、上記のように、基材2側からこの順で積層され、第1の開口31Aと第2の開口32Aが重なるように配置される。取り出し電極層20は、その表面21の一部が封止層30の開口30A(第1の開口31Aおよび第2の開口32A)から露出しているが、表面21は封止層30の表面よりも基材2側に位置し、封止層30に埋設された状態である。本実施形態では、取り出し電極層20の表面21が、第1の層31と第2の層32の界面よりも基材2側に位置する。
【0044】
第1の層31は、取り出し電極層20の表面21の周縁部を覆い、取り出し電極層20の厚み方向に沿った側面に密着していることが好ましい。この場合、モジュール内への水蒸気および酸素の流入がより効果的に抑制される。本実施形態では、第1の層31の第1の開口31Aが、第2の層32の第2の開口32Aより小さく形成されている。第1の開口31Aと第2の開口32Aにより形成される封止層30の開口30Aは、取り出し電極層20の表面21に近づくほど次第に小さくなっていてもよい。
図1に示す例では、第1の開口31Aが表面21に向かって次第に縮径している。
【0045】
第1の層31は、表面21の周縁部の全域を覆っていることが好ましい。即ち、第1の層31は、表面21の第1の開口31Aから露出した部分を囲むように、表面21の周縁部の全周にわたって表面21に密着している。この場合、水蒸気および酸素の流入抑制効果がより顕著になる。第1の層31は、表面21の周縁から略一定の幅で全周にわたって配置されていてもよい。第1の層31は、例えば、表面21の面積の10%以上50%以下の面積を覆っている。本実施形態において、第2の層32の第2の開口32Aは、表面21以上の大きさで形成されている。
【0046】
図2は第2の実施形態である太陽電池モジュール1Xの断面図、
図3は第3の実施形態である太陽電池モジュール1Yの断面図である。
【0047】
図2および
図3に示すように、太陽電池モジュール1X,1Yは、封止層30が第1の層31と第2の層32を含む二層構造を有し、取り出し電極層20の表面21が第1の層31と第2の層32の界面より基材2側に位置する点で、太陽電池モジュール1と共通する。即ち、取り出し電極層20は、第1の層31に埋設された状態である。この場合も、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、第1の開口31Aおよび第2の開口32Aから取り出し電極層20の表面21の一部が露出している。
【0048】
一方、太陽電池モジュール1X,1Yは、第2の層32の第2の開口32Aが、第1の層31の第1の開口31Aよりも小さく形成されている点で、太陽電池モジュール1と異なる。言い換えると、第1の開口31Aが第2の開口32Aよりも広がっている。この場合、太陽電池モジュール1の最外面における開口面積が小さくなるため、開口内に流入する水蒸気および酸素の量を低減できる。
【0049】
図2に示す太陽電池モジュール1Xでは、第2の層32の第2の開口32Aが、取り出し電極層20の表面21の面積よりも小さく形成されている。そして、第2の層32は、表面21の周縁部を全周にわたって覆うように周縁部上に配置されている。なお、取り出し電極層20と第2の層32の間には第1の層31が介在しているため、第2の層32は表面21に接触していない。第2の開口32Aの開口面積は、取り出し電極層20からの電力の取り出しに支障がない範囲で小さいことが好ましく、一例としては表面21の面積の90%以下である。太陽電池モジュール1Xでは、第1の層31の第1の開口31Aが表面21以上の大きさで形成され、表面21の周縁部は第1の層31により覆われていない。
【0050】
図3に示す太陽電池モジュール1Yについても、太陽電池モジュール1Xと同様に、第2の層32の第2の開口32Aが取り出し電極層20の表面21の面積よりも小さく形成され、第2の層32が表面21の周縁部上に配置されている。一方、太陽電池モジュール1Yは、第1の層31の第1の開口31Aが表面21の面積よりも小さく形成され、表面21の周縁部が第1の層31により覆われている点で、太陽電池モジュール1Xと異なる。即ち、表面21>第1の開口31A>第2の開口32Aとなり、表面21の周縁部は第1の層31および第2の層32により覆われている。この場合、水蒸気および酸素の流入抑制効果がより顕著になる。
【0051】
以下、
図4~
図6を参照しながら、上記構成を備えた太陽電池モジュール1,1X,1Yの製造方法の一例について詳説する。
図4~
図6は、製造過程の太陽電池モジュールをX方向に切断した断面構造を示す。
【0052】
太陽電池モジュール1,1X,1Yの製造工程には、例えば、下記の工程が含まれる。
(1)基材2上に、第1電極層11、光電変換層10、および第2電極層12をこの順に設ける工程
(2)基材2上において、基材2を平面視したときに光電変換層10と重ならない領域に取り出し電極層20を設ける工程
(3)第2電極層12および取り出し電極層20上に、封止層30を設ける工程
光電変換層10、第1電極層11、第2電極層12、および取り出し電極層20は、上記のように、従来公知の方法により基材2上に設けることができる。
【0053】
図4~
図6は、封止層30を設ける工程を示す図であって、それぞれ異なる形成方法を図示している。
図4~
図6に示す例では、基材2を支持する支持体5が使用されている。支持体5には、基材2よりも厚みが大きく剛性の高い部材が用いられる。太陽電池モジュールは、例えば、支持体5に載せられた状態で、搬送され、基材2上に各層が形成される。支持体5を用いることより、太陽電池モジュールの安定量産が可能となる。支持体5と基材2の間には、接着用の粘着層が設けられていてもよい。
【0054】
図4は、太陽電池モジュール1の製造工程を示す。
図4に示す例では、第2電極層12および取り出し電極層20上に封止層30を配置した後、封止層30の一部を除去して開口30Aを形成している。開口30Aは、従来公知のスクライブ法などにより、封止層30の取り出し電極層20に対応する領域、即ちモジュールの厚み方向に取り出し電極層20と重なる位置に形成される。基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、取り出し電極層20が開口30Aを介して露出し、封止層30により取り出し電極層20の周縁部が覆われるように開口30Aを形成する。
【0055】
図4に示す例では、第2電極層12および取り出し電極層20を覆うように、第1の層31を構成するフィルム31Fを配置し、さらにその上に第2の層32を構成するフィルム32Fを配置する。各フィルム31F,32Fは予め一体化された後、基材2上に供給されてもよい。基材2上に配置されたフィルム31Fを加熱、加圧、又は加熱しながら加圧することにより、フィルム31Fをセル3等に密着させる。このとき、溝17内にも第1の層31を構成する材料が充填される。
【0056】
図4に示す例では、取り出し電極層20の表面21に近づくほど開口面積が次第に小さくなるように、封止層30の開口30A(第1の層31の第1の開口31A)が形成される。第1の層31は、表面21の周縁部を全周にわたって覆っているが、第1の層31と第2の層32の両方が表面21の周縁部を覆う状態となるように、各フィルム31F,32Fに開口を形成してもよい。即ち、第1の開口31Aと第2の開口32Aの両方が、表面21の面積よりも小さくなるように各開口を形成してもよい。
【0057】
図5は、太陽電池モジュール1Xの製造工程を示す。
図5に示す例では、第2電極層12および取り出し電極層20上に、開口30Aを有する封止層30を配置している。この場合、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、取り出し電極層20が開口30Aを介して露出し、取り出し電極層20の周縁部が覆われるように封止層30が配置される。即ち、この製造工程では、予め開口が形成されたフィルム31F,32Fを基材2上に配置する。より詳しくは、モジュールの厚み方向に取り出し電極層20、第1の開口31A、および第2の開口32Aが重なるようにフィルム31F,32Fを配置する。
【0058】
図5は、太陽電池モジュール1Xの製造工程を示すが、同様の方法で太陽電池モジュール1,1Yを製造可能である。
図5に示す例では、第2の層32の第2の開口32Aが、第1の層31の第1の開口31Aよりも小さく形成され、取り出し電極層20の表面21≧第1の開口31A>第2の開口32Aとなっているが、各開口の大きさを変更することで、太陽電池モジュール1,1Yを製造できる。
【0059】
図6は、太陽電池モジュール1Yの製造工程を示すが、同様の方法で太陽電池モジュール1Xを製造可能である。
図6に示す例では、第2電極層12および取り出し電極層20上に、予め第1の開口31Aが形成された第1の層31を設け、第1の層31上に第2の層32を設けた後、第2の開口32Aを形成している。即ち、この製造工程には、取り出し電極層20に対応した領域に第1の開口31Aを有する第1の層31を設ける工程と、第1の層31上に第2の層32を設ける工程と、第2の層32の一部を除去して第2の開口32Aを形成する工程とが含まれる。
【0060】
図6に示す例では、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、取り出し電極層20が第1の開口31Aおよび第2の開口32Aを介して露出し、第1の層31および第2の層32の少なくとも一方により取り出し電極層20の周縁部が覆われるように、第1の層31および第2の層32を設け、第2の開口32Aを形成する。この製造工程では、モジュールの厚み方向に取り出し電極層20と第1の開口31Aが重なるようにフィルム31Fを配置し、フィルム31F上にフィルム32Fを積層した後、第1の開口31Aと重なる位置に第2の開口32Aを形成する。
【0061】
以下、
図7~
図10を参照しながら、太陽電池モジュールの他の実施形態について説明する。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0062】
図7~
図9に例示する第4~第6の実施形態では、上記実施形態と同様に、取り出し電極層20の表面21が封止層30の表面よりも基材2側に位置し、封止層30に埋設されている。また、取り出し電極層20の表面21は封止層30の開口30Aから露出している。一方、取り出し電極層20の表面21は第1の層31および第2の層32により覆われていない。但し、第4~第6の実施形態に上記第1~第3の実施形態の構成を選択的に適用可能である。この場合、水蒸気および酸素の流入抑制効果がより顕著になる。
【0063】
図7に示すように、第4の実施形態である太陽電池モジュール50では、封止層30の第1の層31が充填される溝17が、基材2から離れるほど次第に拡幅するように形成されている。溝17は、例えば、光電変換層10、正孔輸送層15、および第2電極層12の一部(モジュールの厚み方向に重なる部分)を除去することにより形成されるが、光電変換層10に形成された開口よりも、正孔輸送層15に形成された開口が大きくなっている。さらに、正孔輸送層15の開口よりも、第2電極層12の開口が大きくなっている。
【0064】
太陽電池モジュール50には、上記のように、基材2から離れるほど次第に拡幅した溝17が形成され、溝17内には、第1の層31が形成されている。溝17は、
図7に示すように各層の界面で段階的に幅が変化していてもよく、光電変換層10から第2電極層12に向かって連続的に拡幅していてもよい。このような溝17を有することにより、溝内に第1の層31の構成材料が充填され易くなり、溝内に空隙が形成され難くなる。その結果、モジュール内への水蒸気および酸素の流入が効果的に抑制される。
【0065】
図8に示すように、第5の実施形態である太陽電池モジュール51では、封止層30の第1の層31と接する第2電極層12の表面に微細な凹凸が形成されている。この場合、第1の層31と第2電極層12の接触面積が大きくなり、第1の層31と第2電極層12の密着性が向上する。その結果、第1の層31と第2電極層12の間に空隙が発生し難くなり、モジュール内への水蒸気および酸素の流入が効果的に抑制される。凹凸は第2電極層12の表面のみに形成されてもよいが、
図8に示す例では、光電変換層10の表面に凹凸が形成され、光電変換層10の凹凸に沿って正孔輸送層15および第2電極層12が成膜されることで、第2電極層12の表面に凹凸が形成されている。
【0066】
第2電極層12の表面の算術平均粗さRaは、例えば、1nm以上100nm以下である。算術平均粗さRaが当該範囲内であれば、第1の層31と第2電極層12の密着性の改善効果がより顕著になる。第2電極層12の表面の算術平均粗さRaは、断面TEMにより測定できる。光電変換層10の表面に凹凸を形成する方法は特に限定されないが、一例としては、スピンコート法が挙げられる。
【0067】
図9に示すように、第6の実施形態である太陽電池モジュール52は、取り出し電極層20と電気的に接続された配線材として、スプリング電極60を備える。スプリング電極60は、封止層30の開口30A内に配置され、軸方向一端部が取り出し電極層20の表面21に接触している。スプリング電極60の軸方向他端部は、開口30Aから突出し、図示しない外部装置に接続される。開口30Aには、封止層30とスプリング電極60との隙間を塞ぐ封止材61が充填されていてもよい。封止材61には、例えば、第1の層31の構成材料と同様の材料を用いることができる。
【0068】
図10に示すように、第7の実施形態である太陽電池モジュール53では、取り出し電極層20の周囲において、封止層30を構成する第1の層31の厚みが小さくなっている。取り出し電極層20を封止層30よりも厚く形成し、かつ第1の層31を構成するフィルムの開口を取り出し電極層20との間に隙間が生じる程度に大きくすることにより、フィルムが当該隙間に充填されて基材2側に沈み込む。そして、取り出し電極層20の周囲において、第2の層32が第1の層31に追従し、第2の層32の表面が凹んだ状態となる。このため、取り出し電極層20の表面21およびその近傍は、封止層30から突出している。
【0069】
太陽電池モジュール53によれば、封止層30が取り出し電極層20の側面に強く密着し、取り出し電極層20と封止層30の間に空隙が形成され難くなる。その結果、モジュール内への水蒸気および酸素の流入が効果的に抑制される。
【0070】
以上のように、上記各実施形態の太陽電池モジュールによれば、モジュール内への水蒸気および酸素の流入を十分に抑制できる。上記各実施形態の太陽電池モジュールは、封止性能に優れるため、良好な出力性能を長期にわたって維持できる。特に、第1~第3実施形態の太陽電池モジュール1,1X,1Yのように、基材2を光電変換層10が設けられた面側から平面視したときに、取り出し電極層20の周縁部が封止層30により覆われている場合、取り出し電極層20の周囲から水蒸気および酸素がモジュール内に流入することが効果的に抑制される。
【0071】
なお、上記実施形態は本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更が可能である。上記のように、第4~第6の実施形態に第1~第3の実施形態の構成を選択的に適用でき、この場合、水蒸気および酸素の流入抑制効果がより顕著になる。換言すると、太陽電池モジュール1,1X,1Yに、第4の実施形態の溝17の拡幅形状、第5の実施形態の第2電極層12の表面凹凸、および第6の実施形態のスプリング電極60からなる群より選択される少なくとも1つの構成を適用してもよい。
【0072】
また、封止層は、上記バリア層を中間層として含む1枚のフィルムの状態で太陽電池モジュールの製造工程に供給されてもよい。バリア層は、例えば、2枚の樹脂フィルムで挟まれている。基材2に配置される樹脂フィルムには、上記第1の層31を構成するフィルムと同様の機能を有するフィルムを適用でき、バリア層の外側に配置される樹脂フィルムには、上記第2の層32を構成するフィルムと同様の機能を有するフィルムを適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1,1X,1Y,50,51,52,53 太陽電池モジュール、2 基材、3 セル、4,4A,4B ユニットセル、5 支持体、10 光電変換層、11 第1電極層、12 第2電極層、13 光吸収層、14 電子輸送層、15 正孔輸送層、16,17,18 溝、20,21,20B 取り出し電極層、21 表面、30 封止層、30A 開口、31 第1の層、31A 第1の開口、32 第2の層、32A 第2の開口、40 無機膜、60 スプリング電極、61 封止材