(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051885
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】通信システム、及びリモコン端末装置
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20240404BHJP
【FI】
H04W52/02 110
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158263
(22)【出願日】2022-09-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 :令和3年9月30日 販売した場所:金陵電機株式会社(大阪市淀川区新高3丁目3番11号)
(71)【出願人】
【識別番号】591218857
【氏名又は名称】ミヨシ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 昌庸
(72)【発明者】
【氏名】北山 博之
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE02
5K067GG02
(57)【要約】
【課題】リモートコントローラ機器での無線制御における制御の通信ペア数の不足が課題であった。また、設置前や設置時に無線周波数帯域を調査し、周波数と設置場所を決め、アンテナを調整するために無線技術者が現地に出向く必要があり、コストと工期も大きな課題であった。
【解決手段】本発明の通信システム1は、通信ペア10ペア(P1~P10)が通信チャネル#1を共用できる。16個の通信チャネルがあるため160ペアが同一場所で使用可能となる。通信ペアP1~P10の各々に含まれるリモコン端末装置10は間欠的(0.8ミリ秒)、かつ周期的(20ミリ秒)に信号を送出する。予め定めた周期に乱数のオフセットを付与する信号送出により信号の衝突を回避しているため、10ペア間の信号衝突は発生するものの信号は一定の確率で制御装置に伝達される。160ペアというこれまでの約4倍のペアが使用可能で、かつ、技術者による調整も不要である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモコン端末装置と制御装置との対をN(Nは1以上の整数)対備え、
前記N個のリモコン端末装置の各々は、
予め定められた通信チャネルの無線通信により、自装置と対になる制御装置へデータを送信する無線通信部と、
前記無線通信部による前記無線通信の実行タイミングを、予め定められた周期に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整する制御部と、を有する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記N個のリモコン端末装置の各々が備える前記無線通信部は、
所定時間に亘って前記通信チャネルに間欠的な定周期のバースト送信を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に使用する通信チャネルにおける干渉又は妨害を検知した場合に、通信チャネルの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置の各々が備える前記制御部は、自装置と対になる制御装置へのデータの送信に使用する通信チャネルを前記変更指示に応じて変更する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に使用する通信チャネルにおける干渉又は妨害を検知した場合に、前記通信チャネルとは異なる複数の通信チャネルの各々について干渉又は妨害の有無をサーチすることにより干渉又は妨害の影響を受けにくい通信チャネルを決定し、決定した通信チャネルへの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末へ送信する、
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記変更指示を送信した制御装置は、変更を指示した通信チャネルの無線通信により、自装置と対になるリモコン端末からデータを受信したことを契機として応答を返信し、
前記変更指示に応じて通信チャネルを変更してデータを送信したリモコン端末が前記応答を受信した場合に通信チャネルの変更を完了する、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記変更指示を送信した制御装置は、変更を指示した通信チャネルの無線通信により、自装置と対になるリモコン端末装置からデータを予め定められた回数受信できなかった場合、又は前記変更指示の送信から所定時間が経過するまでに自装置と対になるリモコン端末装置からデータを受信できなかった場合には、元の通信チャネルに戻り再度通信チャネル変更指示を送信する処理を予め定められた回数繰り返し、前記処理を予め定められた回数繰り返しても、通信チャネルの変更が成功しなかった場合は、元の通信チャネルに戻る、又は前記複数の通信チャネルを再度サーチして異なる通信チャネルに変更指示を送信する、
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に使用する通信チャネルにおける干渉又は妨害を検知した場合に、通信チャネルの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置の各々が備える前記制御部は、自装置と対になる制御装置へのデータの送信に使用する通信チャネルを前記変更指示に応じて変更する、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項8】
前記N個のリモコン端末装置の各々は、互いに異なるN個の操作対象機器を遠隔操作するためのリモートコントローラである一方、前記N個の制御装置の各々は前記N個の操作対象機器に一つずつ含まれ、
前記N個の制御装置の各々は、自装置を含む操作対象機器の遠隔保守を行う保守端末から受信した指示に応じた応答を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置における前記制御部は、前記無線通信部を介して受信した前記応答に応じた処理を実行する、
請求項1乃至請求項7の何れかに記載の通信システム。
【請求項9】
予め定められた通信チャネルの無線通信により、自装置と対になる制御装置へデータを送信する無線通信部と、
前記無線通信部による前記無線通信の実行タイミングを、予め定められた周期に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整する制御部と、
を有することを特徴とするリモコン端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、及びリモコン端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信技術が急速に普及しつつある(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-222608号公報
【特許文献2】特開2009-182644号公報
【特許文献3】特開2012-147324号公報
【特許文献4】特開2020-129733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、工場等においては、クレーン等の機器をリモートコントローラ(以下、リモコン)により遠隔操作することが一般に行われており、この遠隔操作のための通信は、安全性を重視するため、主として信頼性が高いと考えられている有線通信により実現されていた。特に動力をともなうコントロールにおいては安全性の確保が重要視される。無線通信を用いることにより、機器とリモコンとを接続する通信線や電源線の配線が不要になるメリットがあるため、工場等における機器の遠隔操作のための通信を有線通信から無線通信に置き換えることが考えられる。リモコンによる遠隔制御を有線から無線に変更するときには、安全性の確保が最重要視される。異常発生時に迅速な対処を確実に実行可能にするという要求を満たす必要があり、そのためには遠隔操作の通信を確実に行えるようにする必要があるため、リモコンと操作対象の機器との対毎に専用の通信チャネル(特定周波数帯域)を割り当て、当該機器の遠隔操作のための通信に当該通信チャネルを占有させることが最善と考えられている。一方、リモコンと操作対象の機器との対毎に専用の通信チャネルを割り当てる方式では、従来の特定小電力無線通信方式(400MHz帯 占有周波数帯幅が8.5kHZ以下の無線設備)では、通信チャネルは46チャンネルであるのでシステムにおける上限は46台、従来の特定小電力無線通信方式(1200MHz帯 占有周波数帯幅が16kHZ以下の無線設備)では通信チャネルは40チャンネルであるのでシステムにおける上限は40台と、チャネル数は有限であるために通信チャネルの不足が懸念される。これに留まらず、他の通信との同一周波数や隣接チャネル間やスプリアス等の干渉が発生することによる誤動作発生の安全面のリスクがあるために、更に通信チャネル数が不足する事態となる。更には、安全を脅かす妨害及び干渉の抑止のために、設置時には使用可能な無線周波数帯域の調査を設置可能な台数の決定や設置場所の決定、アンテナの調整等を、無線技術者が現地に出向いて調整、検査を実施している。従来の特定小電力無線通信方式では先に使用しているチャネルがある場合にはそのチャネルは使用することができず、また同一チャネルでなくても隣接チャネルを先に使用していた場合は干渉の影響が発生するため、現地での調査が必須となる。設置後の問題発生時の調査も含めて、これらにかかる工数も無視できない。
【0005】
本発明は、無線通信制御における安全性の確保とシステムの迅速な動作の達成を目的として、異常発生時での迅速な対処に支障なく、他の通信との干渉によるシステムの誤動作も回避し、設置時の技術者による現地調整の手間を省くことを可能にする、リモートコントローラによる機器の遠隔操作を通信チャネルの独占することのない無線通信を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様による通信システムは、
リモコン端末装置と制御装置との対をN(Nは1以上の整数)対備え、
前記複数のリモコン端末装置の各々は、
予め定められた通信チャネルの無線通信により、自装置と対になる制御装置へデータを送信する無線通信部と、
前記無線通信部による前記無線通信の実行タイミングを、予め定められた周期に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整する制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
より好ましい第2の態様による通信システムは、第1の態様の通信システムにおいて、
前記複数のリモコン端末装置の各々が備える前記無線通信部は、
所定時間に亘って前記通信チャネルに間欠的な定周期送信(以下バースト送信と呼ぶ)を行う、
ことを特徴とする。
【0008】
更に好ましい第3の態様による通信システムは、第2の態様の通信システムにおいて、
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に対する干渉又は妨害を検知した場合に、通信チャネルの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置の各々が備える前記制御部は、自装置と対になる制御装置へのデータの送信に使用する通信チャネルを前記変更指示に応じて変更する、
ことを特徴としてもよい。
【0009】
更に好ましい第4の態様による通信システムは、第3の態様の通信システムにおいて、
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に使用する通信チャネルにおける干渉又は妨害を検知した場合に、前記通信チャネルとは異なる複数の通信チャネルの各々について干渉又は妨害の有無をサーチすることにより干渉又は妨害の影響を受けにくい通信チャネルを決定し、決定した通信チャネルへの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末へ送信する、
ことを特徴としてもよい。
【0010】
更に好ましい第5の態様による通信システムは、第4の態様の通信システムにおいて、
前記変更指示を送信した制御装置は、変更を指示した通信チャネルの無線通信により、自装置と対になるリモコン端末からデータを受信したことを契機として応答を返信し、
前記変更指示に応じて通信チャネルを変更してデータを送信したリモコン端末が前記応答を受信した場合に通信チャネルの変更を完了する、
ことを特徴としてもよい。
【0011】
更に好ましい第6の態様による通信システムは、第5の通信システムにおいて、
前記変更指示を送信した制御装置は、変更を指示した通信チャネルの無線通信により、自装置と対になるリモコン端末装置からデータを予め定められた回数受信できなかった場合、又は前記変更指示の送信から所定時間が経過するまでに自装置と対になるリモコン端末装置からデータを受信できなかった場合には、元の通信チャネルに戻り再度通信チャネル変更指示を送信する処理を予め定められた回数繰り返し、前記処理を予め定められた回数繰り返しても、通信チャネルの変更が成功しなかった場合は、元の通信チャネルに戻る、又は前記複数の通信チャネルを再度サーチして異なる通信チャネルに変更指示を送信する、
ことを特徴としてもよい。
【0012】
また、別の好ましい第7の態様による通信システムは、第2の態様の通信システムにおいて
前記N個の制御装置は、自装置と対になるリモコン端末装置との無線通信に使用する通信チャネルにおける干渉又は妨害を検知した場合に、通信チャネルの変更を指示する変更指示を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置の各々が備える前記制御部は、自装置と対になる制御装置へのデータの送信に使用する通信チャネルを前記変更指示に応じて変更する、
ことを特徴とする。
【0013】
更に好ましい第8の態様による通信システムは、第1~第7の何れかの態様の通信システムにおいて、
前記N個のリモコン端末装置の各々は、互いに異なるN個の操作対象機器を遠隔操作するためのリモートコントローラである一方、前記N個の制御装置の各々は前記N個の操作対象機器に一つずつ含まれ、
前記N個の制御装置の各々は、自装置を含む操作対象機器の遠隔保守を行う保守端末から受信した指示に応じた応答を、自装置と対になるリモコン端末装置へ送信し、
前記N個のリモコン端末装置における前記制御部は、前記無線通信部を介して受信した前記応答に応じた処理を実行する、
ことを特徴としてもよい。
【0014】
本開示のリモコン端末装置は、
予め定められた通信チャネルの無線通信により、自装置と対になる制御装置へデータを送信する無線通信部と、
前記無線通信部による前記無線通信の実行タイミングを、予め定められた周期に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による通信システム1の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、通信システム1における通信チャネル割り当て例を示す図である。
【
図3】
図3は、リモコン端末装置10の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、リモコン端末装置10から制御装置20へ送信される通信電文のフォーマットの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、リモコン端末装置10が実行するバースト送信を説明するための図である。
【
図6】
図6は、リモコン端末装置10によるバースト送信の実行周期の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、送信間隔T2(ms)に対する呼損率の基準をクリアする時間(ms)の関係を示すグラフの図である。
【
図8】
図8は、リモコン端末装置10の制御部110が制御プログラムに従って実行するバースト送信後の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、リモコン端末装置10との無線通信に使用する通信チャネルにおける妨害又は干渉を検出した場合の制御装置20の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、通信システム1での無線上での衝突時の端末間のD/U比と呼損率の実測値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態中の数値等は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0017】
<1.実施形態>
図1は、本開示の一実施形態による通信システム1の構成例を示す図である。
図1に示されるように、通信システム1には、通信ペアP(1)~通信ペアP(M)(Mは1以上の整数、本実施形態ではM=160)のM個の通ペアが含まれる。通信ペアとは、例えばIEEE802.15シリーズ等の所定の無線通信規格に従った無線通信を行うリモコン端末装置と制御装置との対のことをいう。本実施形態では、上記無線通信規格として特定小電力無線通信規格の一つであるIEEE802.15.4 MACが採用されている。これまで実施されていたリモコンと操作対象の機器との対毎に専用の通信チャネルを割り当てる方式では、特定小電力無線通信方式(400MHz帯 占有周波数帯幅が8.5kHZ以下の無線設備)では、通信チャネルは46チャンネルであるのでシステムにおける上限は46台、従来の特定小電力無線通信方式(1200MHz帯 占有周波数帯幅が16kHZ以下の無線設備)では通信チャネルは40チャンネルであるのでシステムにおける上限は40台であることに対して、制御する親機なしに160台がシステムで動作可能であり、かつ干渉にも強くなるために数値比以上に収容台数比は効果がある。
【0018】
通信ペアP(1)には、制御装置20と、リモコン端末装置10A、リモコン端末装置10B、リモコン端末装置10C、及びリモコン端末装置10D等の複数のリモコン端末装置と、が含まれる。
図1には、通信ペアP(1)に2台数のリモコン端末装置が含まれる場合について例示されている。
図1に示されるように、本実施形態における通信ペアP(1)には、リモコン端末装置10Aと制御装置20とが含まれ、リモコン端末装置10Bやリモコン端末装置10Cは、リモコン端末装置10Aに故障が発生した場合の予備として保管、若しくは複数操作機器として設置されている。以下では、リモコン端末装置10Aとリモコン端末装置10Bとを区別する必要がない場合には、リモコン端末装置10A、リモコン端末装置10B、及びリモコン端末装置10C等の各々は「リモコン端末装置10」と称される。
図1では詳細な図示が省略されているが、通信ペアP(2)~通信ペアP(M)の各々には、1つのリモコン端末装置10と、当該リモコン端末装置10と対になる1つの制御装置20と、が含まれる。1つの通信ペアに含まれるリモコン端末装置10と制御装置20とにより1つのPAN(Personal Area Network)が形成される。
【0019】
制御装置20は、例えば工場内や屋内に設置されるクレーンやシャッター等の操作対象機器に設けられた通信モジュールである。リモコン端末装置10は、通信ペアを形成する制御装置20と所定の無線通信規格に従った無線通信を行うことにより、制御装置20が設けられた機器を遠隔操作するためのリモートコントローラである。以下では、制御装置20を含む機器は「操作対象機器」と称される。制御装置20は、リモコン端末装置10から送信されるコマンドの受信を待ち受け、受信したコマンドに従って操作対象機器を駆動させる。本実施形態では、制御装置20からリモコン端末装置10へデータが送信される場合があり、具体的には、干渉回避を目的とした通信周波数の変更指示及び応答、保守端末からの指示への応答が制御装置20からリモコン端末装置10へ送信される。
【0020】
通信システム1では、前述の無線通信規格にて定められたK(Kは1以上の整数、本実施形態ではK=16)個の通信チャネルが使用可能である。
図2は本実施形態における通信チャネルの割り当て例を示す図である。
図2に示されるように、本実施形態では、通信チャネル#1~#16の使用が可能であり、1つの通信チャネルに対してN(Nは1以上且つM以下の整数、本実施形態ではN=10)個の通信ペアが割り当てられ、当該通信チャネルはこれらN個の通信ペアによって共用される。以下では、1つの通信チャネルを共用する通信ペアの個数は「共用ペア数」と称される。本実施形態における共用ペア数はNである。
【0021】
具体的には、
図2に示されるように、通信チャネル#1に対しては通信ペアP(1)~P(10)が割り当てられる。また、
図2では詳細な図示を省略したが、通信チャネル#2に対しては通信ペアP(11)~P(20)が、通信チャネル#3に対しては通信ペアP(21)~P(30)が、通信チャネル#4に対しては通信ペアP(31)~P(40)が、通信チャネル#5に対しては通信ペアP(41)~P(50)が、通信チャネル#6に対しては通信ペアP(51)~P(60)が、通信チャネル#7に対しては通信ペアP(61)~P(70)が、 通信チャネル#8に対しては通信ペアP(71)~P(80)が、通信チャネル#9に対しては通信ペアP(81)~P(90)が、通信チャネル#10に対しては通信ペアP(91)~P(100)が、通信チャネル#11に対しては通信ペアP(101)~P(110)が、通信チャネル#12に対しては通信ペアP(111)~P(120)が、通信チャネル#13に対しては通信ペアP(121)~P(130)が、通信チャネル#14に対しては通信ペアP(131)~P(140)が、通信チャネル#15に対しては通信ペアP(141)~P(150)が、通信チャネル#16に対しては通信ペアP(151)~P(160)が、夫々割り当てられる。
【0022】
1つの通信チャネルを第1の通信ペアと第2の通信ペアとが共用する場合、第1の通信ペアにおけるデータ送信タイミングと第2の通信ペアにおけるデータ送信タイミングとが重なると、夫々の通信が成功する場合もあれば、各々の通信電波が衝突し通信が失敗する場合がある。つまり、1つの通信チャネルを第1の通信ペアと第2の通信ペアとが共用する場合、各通信ペアの通信が常に成功するとは限らない。このため、操作対象機器の遠隔操作を無線通信により実現する場合、従来では通信ペア毎に専用の通信チャネルを割り当て、当該通信ペアに当該通信チャネルを占有させることが最善と考えられていた。通信ペア毎に専用の通信チャネルを割り当て、当該通信ペアに当該通信チャネルを占有させれば、通信電波の衝突が発生しないからである。
【0023】
これに対して本実施形態ではリモコン端末装置10の送信方式を工夫することにより、通信ペア毎に専用の通信チャネルを割り当てることなく(即ち、通信チャネルを通信ペアに占有させることなく)、且つ安全性の確保及び異常発生時の迅速な対処に支障を生じさせることなく、操作対象機器の遠隔操作を無線通信により実現することが可能となっている。以下、本開示の特徴を顕著に示すリモコン端末装置10を中心に説明する。
【0024】
図3は、リモコン端末装置10の構成例を示す図である。
図3に示されるように、リモコン端末装置10は、制御部110、操作部120、通知部130、無線通信部140、及び記憶部150を備える。なお、
図3では詳細な図示が省略されているが、リモコン端末装置10は、制御部110、操作部120、通知部130、無線通信部140、及び記憶部150の各々に動作電力を供給する電源部も備える。電源部の具体例としては、アルカリ乾電池又は二次ニッケル水素電池等の蓄電池が挙げられる。
【0025】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部110は、記憶部150に記憶された制御プログラムPRに従って作動することにより、リモコン端末装置10の制御中枢として機能する。制御プログラムPRに従って制御部110が実行する処理の詳細については後に明らかにする。
【0026】
操作部120は、例えば複数の操作子を含む。リモコン端末装置10のユーザ(操作対象機器の遠隔操作を担当する技術)は、操作部120に含まれる複数の操作子を操作することにより、操作対象機器を遠隔操作するための各種入力を行う。操作部120はユーザにより入力された操作の内容を示す操作内容データを制御部110へ出力する。これにより、ユーザの操作内容が制御部110に伝達される。通知部130は、例えば各々発光色が異なる複数のLED(Light Emitting Diode)を含み、制御部110による制御の下で、これら複数のLEDを発光させる。本実施形態では、複数のLEDのうち発光させるLEDの組み合わせにより、リモコン端末装置10の状態がユーザに通知される。通知部130は、例えば液晶ディスプレイ等、文字又は画像を表示する表示装置を複数のLEDの他に、或いは複数のLEDに代えて含んでもよい。通知部130が表示装置を含む場合、操作部120としてタッチセンサを用い、タッチセンサと表示装置とにより所謂タッチパネルが形成されてもよい。
【0027】
無線通信部140は、例えば無線通信トランシーバであり、例としてIEEE802.154 MACに準拠した通信電文を無線により制御装置20へ送信する。
図4は、本実施形態における通信電文のフォーマとの一例を示す図である。
図4に示されるように、この通信電文はヘッダと、ヘッダに後続するペイロードとを有する。なお、IEEE802.154 MACに準拠した通信電文は、上記ヘッダに先行するプリアンブルを含むが、
図4では当該プリアンブルの図示を省略した。
【0028】
図4に示されるように、ヘッダには、シーケンス番号、PAN-ID、送信先アドレス、及び送信元アドレスが含まれる。シーケンス番号は、0x00~0xFFの範囲で通信電文を送信する毎にカウントアップされる一連番号である。PAN-IDは、通信電文の送信元となるリモコン端末装置10が属するPAN(換言すれば通信ペア)を一意に示す識別情報であり、これにより一意性を保ち、混同することなく通信ペアを形成可能である。リモコン端末装置10の工場出荷時に記憶部150に書き込まれるか、若しくは物理的スイッチ又はデータにより外部から書き込まれることにより一意性を保つ。送信先アドレスは通信電文の送信先となる制御装置20の通信アドレスであり、送信元アドレスは通信電文の送信元であるリモコン端末装置10の通信アドレスである。PAN-IDに加え、送信先アドレス、及び送信元アドレスにより通信ペアの一意性を更に保ち、混同することなく通信ペアを形成可能とする。なお、通信ペア番号、送信元と送信先のアドレスを示すものであればフォーマットは問わない。
【0029】
図4に示されるように、ペイロードには、電文Ver、及び予備情報が含まれる。電文Verは、通信電文のバージョンを示す情報であり、制御装置20は電文Verの値に応じてコマンド情報及び予備情報の解釈を変更することができる。本実施形態では予備情報は未使用であるが、通信チャネルに関する情報、又はリモコン端末装置10の電池残量の制御装置20への伝達に使用することが考えられる。例えば、リモコン端末装置10の電池残量を制御装置20へ伝達することで、リモコン端末装置10の電池交換等に関する報知を制御装置20に実行させることが可能になる。
【0030】
無線通信部140には、制御部110から通信電文を表すデータが与えられ、無線通信部140は、当該データをリモコン端末装置10に割り当てられた通信チャネルの搬送波に重畳させて送信する。この重畳方式としては、種々の方式を該特許の対象とする。本実施形態の例では、FM変調方式とスペクトル拡散方式との何れが採用されてもよいが、衝突時の復調に強いスペクトル拡散方式を採用している。制御装置20は、自装置に割り当てられた通信チャネルを介して通信電文を受信すると、当該通信電文のヘッダからPAN-ID及び送信先アドレスを読み出し、前者が自装置の属するPANのPAN-IDと一致し、且つ後者が自装置の通信アドレスと一致する場合には当該通信電文を自装置宛ての通信電文として受信し、当該電文のペイロードのコマンド情報に書き込まれているコマンドに従って操作対象機器の駆動制御を行う。
【0031】
記憶部150は、不揮発性記憶部152と揮発性記憶部154とを備える。不揮発性記憶部142は、例えばフラッシュROM(Read Only Memory)である。不揮発性記憶部152には、制御プログラムPRと乱数テーブルTBLとが格納される。乱数テーブルTBLには、実数の値を複数配列した乱数列が予め格納されている。また、
図3では詳細な図示が省略されているが、不揮発性記憶部152には、PAN-ID、自装置に割り当てられた通信アドレス、及び自装置と通信ペアを形成する制御装置20に割り当てられた通信アドレスが記憶されている。揮発性記憶部154は例えばRAM(Random Access Memory)である。揮発性記憶部154は、制御プログラムPRを実行する際のワークエリアとして制御部110によって利用される。
【0032】
制御部110は、リモコン端末装置10の電源投入を契機として制御プログラムPRを不揮発性記憶部152から揮発性記憶部154に読み出し、制御プログラムPRの実行を開始する。制御プログラムPRに従って作動している制御部110は、クレーンなどの制御対象機器に動作内容を指示するコマンドを含む通信電文を、所定のコマンド送信時間T1に亘って通信チャネルに、望ましくは間欠的に定周期送信し続けるバースト送信を行い、以降、次のコマンドが入力されるまで、実行タイミングを予め定められた周期(以下、基本周期T2)に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整しつつ当該通信電文のバースト送信を繰り返し実行する。オフセットは平均して0となるように、プラス値もマイナス値を持つ様に乱数を変換する。なお、バースト送信の完了から次のバースト送信の処理開始までの期間(
図6におけるT2+オフセット時間-T1-T3の期間)では、制御部110は、電力消費を抑えるため、省電力モード(スリープモード)で動作する。時刻t1においてスリープモードから起き上がったとすると、時刻t1からコマンド送信が開始までの処理時間T3とコマンド送信時間T1の期間に、制御部110は操作内容データの処理や装置状態や障害の検出とその処理等の制御部を備えた無線通信機器に必要な処理を行う。
【0033】
図5は、リモコン端末装置10が実行するバースト送信の一例を示す図であり、
図6は、リモコン端末装置10によるバースト送信の実行周期の一例を示す図である。本実施形態では、コマンド送信時間T1は0.8ミリ秒であり、基本周期T2は20ミリ秒である。開始までの処理時間T3は0.2ミリ秒であり、制御部はT3とT1の合計1ミリ秒間に必要な処理を実行した後にスリープモードに入る。また、本実施形態におけるオフセットは例えば-19ミリ秒から19ミリ秒の範囲内の値であればよく、20ミリ秒間隔の監視周期の安定性を重視する場合は-2ミリ秒から2ミリ秒の範囲内の値などを取るようにとしてもよいし、衝突の回避性を重視して、ランダム性を重視する場合は-19ミリ秒から19ミリ秒の範囲にしても良い。また、オフセット値の取る値として、連続的なアナログ数値、T1の周期の倍数である1ミリ秒単位とする場合、その半分の0.5ミリ秒単位とする場合などもある。これらは衝突回避可能な確率や周期の安定性、装置の価格等の適用するシステムに求められる要件の重要度合いから決定する。本実施形態では、1つの通信チャネルを共用するN個のリモコン端末装置10の各々に対してバースト送信の実行タイミングが予め設定されている訳ではなく、ユーザの操作に応じて各リモコン端末装置10がバースト送信を即座に実行する(換言すれば、バースト送信がランダムに実行される)アロハ方式が採用されている。厳密には、本開示の一実施形態による通信システム1では、アロハ方式から、受信する制御装置のACK送信の機能を削除した方式を採用している。なお、各リモコン端末装置10におけるバースト送信の実行タイミングが予め設定されている態様としては、基本周期をN個に等分したスロットをN個のリモコン端末装置10の各々に一つずつ一対一に割り当て、リモコン端末装置10には自装置に割り当てられたスロットにおいてバースト送信を実行するタイムデビジョン方式のスロッテッドアロハ方式等の態様が挙げられる。スロッテッドアロハ方式を用いた方がアロハ方式よりも衝突確率が半分に減ることにより衝突回避ができるが、スロット周期タイミングを読み取る機能がリモコン端末装置10側に必要になる。スロット周期タイミングの合わせ込みは、電源立ち上げ時や立上げ後に検知を行うことができる。立上げ後に実施する場合は、自己の属する通信チャネルで他の異なる通信ペアの信号を検出して、スロット同期時間を合わせ込む。複数存在するときは一番電波強度の大きい通信ペアのスロット周期タイミングに合わせ込む。立上げ後に実施する場合は数秒単位、数分単位、数時間単位などで周期的にスリープを停止してサーチを行ってスロット周期タイミングを合わせ込む。若しくは、制御装置20から本実施形態では、例えば1秒などの定期的な周期ごとに1ミリ秒となるスロットタイミング信号もしくは20ミリ秒となるフレームタイミング信号を送信して、リモコン端末装置10がサーチを行ってスロット周期タイミングを合わせ込む機能などにより実現する。
【0034】
本実施形態では、制御部110は、乱数テーブルTBLから乱数を読み出し、この乱数からオフセット値を生成する。オフセット値をT1の周期の倍数である1ミリ秒単位とする場合で、且つ-4ミリ秒から4ミリ秒の範囲に設定するときには、乱数を9で除算し余りから4を引いて、-4、-3,-2,-1,0,1,2,3,4のオフセット値を生成する。乱数テーブルTBLに格納されている乱数列から乱数を読み出しは、乱数列の先頭から順次一つずつ読み出す態様であってもよいし、現在時刻に基づいて所定の演算を行うことにより換算される読出し位置(アドレス)から読み出す態様であってもよい。
【0035】
本実施形態では、乱数テーブルTBLに格納された乱数を用いたが、周知の疑似乱数発生アルゴリズムに従って生成された疑似乱数を乱数の代わりに用いてオフセットが生成されてもよい。つまり、本開示における乱数には、疑似乱数発生アルゴリズムに従って生成される疑似乱数が含まれる。疑似乱数発生アルゴリズムの具体例としては線形合同法による生成アルゴリズム、又はメルセンヌ・ツイスタによる生成アルゴリズムが挙げられる。疑似乱数を用いてオフセットを生成する態様では、リモコン端末装置10の製造元により割り振られる製品番号等の一連番号等のリモコン端末装置10毎に固有の装置識別子が、疑似乱数発生アルゴリズムにおけるシードとして用いられてもよく、当該シードの生成元となるデータとして用いられてもよい。
【0036】
乱数に応じたオフセットを付与することによりバースト送信の実行タイミングを調整する理由は次の通りである。前述したように本実施形態の例では通信ペアにおける無線通信規格としてIEEE802,15.4 MACが採用されており、IEEE802,15.4 MACにおいてリモコン端末装置10と制御装置20とが無線通信を支障なく行える距離がLであったとする。そして、通信ペアP(1)の制御装置20を中心とする半径Lの円内に通信ペアP(2)の制御装置20が配置されており、且つ通信ペアP(1)及び通信ペアP(2)の各々のリモコン端末装置10が当該円内に位置していたとする。
【0037】
この状況下において、例えばある時刻t0において通信ペアP(1)におけるバースト送信の実行タイミングと通信ペアP(2)におけるバースト送信の実行タイミングとが重なり、通信電波の衝突により両者の無線通信が共に失敗したとする。通信ペアP(1)では、時刻t0から20ミリ秒経過したタイミングを通信ペアP(1)に含まれるリモコン端末装置10の乱数テーブルTBLから読み出した乱数R1に応じてオフセットを付与することで調整されたタイミングにおいて再度バースト送信が実行される。一方、通信ペアP(2)では、時刻t0から20ミリ秒経過したタイミングを通信ペアP(2)に含まれるリモコン端末装置10の乱数テーブルTBLから読み出した乱数R2に応じてオフセットを付与することで調整されたタイミングにおいて再度バースト送信が実行される。
【0038】
通信ペアP(1)に含まれるリモコン端末装置10の乱数テーブルの格納内容と通信ペアP(2)に含まれるリモコン端末装置10の乱数テーブルTBLの格納内容とは異なり、時刻t0における乱数R1は乱数R2とは異なる。従って、通信ペアP(1)における再度のバースト送信と通信ペアP(2)における再度のバースト送信とは互いに異なる乱数生成値によるタイミングで実行され、再度両者が失敗することを確率7/9(アロハ方式)で回避できる。確率2/9で再度衝突しても次の乱数により、1-(2/9)2=77/81の確率で2回連続の衝突は回避される。計算を判り易くするために、T2=20ミリ秒、T1=0.8ミリ秒、完全ランダム送出のアロハ方式とし、通信ペア2ペアが干渉する位置にある場合の確率を考える。通信ペア同士の送信時間が少しだけでも被った時には必ず呼損するという厳しい前提条件とする。
【0039】
一つの通信ペアが他の一つの通信ペアのために一回送信当たりに呼損する確率P11、及び次の送出時も呼損する2回連続の呼損確率P12は、夫々以下の通りである。
P11=1.6ms/20ms=0.08=8%。
P12=(P11)2=0.64%。
【0040】
最悪のケースとして、1の通信チャネルに10通信ペアが存在するときを考える。1つの通信ペアが他の9つの通信ペアのために1回送信当たりに呼損する確率P91、及び次の送出時も呼損する2回連続の呼損確率P92は夫々以下の通りである。
P91=1-(1-P11)9≒0.528=53%。
P92=(P91)2=28%。
【0041】
20ミリ秒ごとに送出が行われるので、6回連続の呼損確率、即ち100ミリ秒接続できない確率P96、11回連続の呼損確率、即ち200ミリ秒接続できない確率P911、21回連続の呼損確率、即ち400ミリ秒接続できない確率P921、及び26回連続の呼損確率、即ち500ミリ秒接続できない確率P926は、夫々以下の通りである。
P96=(P91)6≒0.0216=2.2%。
P911=(P91)11=0.08%。
P921=(P91)21=1.5ppm。
P926=(P926)11=0.06ppm。
これらは衝突による信号遅延時間の確率と読み替えることができる。即ち、500ミリ秒以上信号が遅延する確率は0.06ppmとなる。
【0042】
以上は最悪条件で算出しているが、実際には、同一通信チャネルの10通信ペアが干渉しあうということは、半径L内に160通信ペアが密集するときであり、L=50mとしたときには、49(7
2)m
2に同一チャネルのリモコン端末装置の1通信ペアが存在する密度になる。これは距離差から発生する無線受信レベル差により衝突回避ができる計算は入れていないので実際には更に高密度の設置状態となる。今回はP
11=8%で計算したが、IEEE802.15.4 MACに準拠したスペクトラム拡散方式を用いるときには、
図10に示すように実力値としてはP
11=2%程度である。P
91=16.6%。100ミリ秒接続できない確率P
96=21ppm、140ミリ秒接続できない確率P
98=0.6ppmとなる。P
11=2%のときの140ミリ秒接続できない確率0.6ppmは、P
11=8%の時の400ミリ秒接続できない確率1.5ppmよりも低く、実力は格段に良い値である。
【0043】
P11=2%とすると、P96=(P91)6=21ppmから100ミリ秒以上の信号遅延確率は21ppmとなり、P911=(P91)11=0.0027ppmから200ミリ秒以上の信号遅延確率は0.0027ppmとなり、安全上も即時性としても実運用上支障がでない遅延量のレベルである。
【0044】
なお、適用するシステムに求められる要件の重要度合いとして遅延時間の短縮が更に要求されるときは、アロハ方式からスロッテッドアロハ方式にすればP11が半分の値になるので大幅な遅延時間短縮効果が生じる。P11=2%からP11=1%になるので、P96は21ppmから0.4ppmに減ずる。21ppmの確率は100ミリ秒から68ミリ秒に短縮する。呼損率0.1%になる時間は57ミリ秒から36ミリ秒に短縮できる。
【0045】
遅延時間の短縮には各種方策が存在する。例として(1)~(7)までの例を示す。
(1)台数を減らす、(2)通信ペア間の物理的間隔をあけるなどの物理的手段がまず有効である。その他の手段としては、(3)無駄な情報要素を除去した独自の最適プロトコルにして、無線信号の出力時間であるT1を短くする方式方法がある。その他(4)ボタンを押したときや戻したときの変化点から例えば1秒間のみT2=20ミリ秒とし、変化がない場合は例えばT2=100ミリ秒にする方式もある。(5)ボタンを押しているときは動力の動作を要求している重要な信号の場合は、ボタンを押しているときとボタンを戻した変化点から例えば1秒間のみT2=20ミリ秒とし、ボタンを戻して変化がない場合は例えばT2=200ミリ秒にする方式もある。(6)リモコン端末装置も制御装置も無線の送受信機能を持つことになりコスト的には高くなるが、ボタンを押したときや戻したときの変化時には例えばT2=20ミリ秒間隔で連続送信し、制御装置が該信号を受信時にACK信号を返してリモコン端末装置がそれを受信したらリモコン制御装置からの送信を停止する方式もある。なお、安全性確保の観点から500ms以上信号が途絶えたときは動力をオフにする態様も考えられる。
本実施形態ではT2=20ミリ秒とした。しかし、衝突確率の低減や送信遅延時間の最小化においては、衝突しうる通信ペア数により最適値とは言えない。その理由から、(7)T2を最適値にする、方式が存在する。
【0046】
遅延時間を短くするための、T2の最適値の決め方を説明する。
例えば、呼損率を0.1%になる時間をt0.1%と定義すると以下の関数になる。アロハ方式でN個の通信ペアが干渉を及ぼす条件とする。
t0.1%=T2*[-3/log{1-(1-2*T1/T2)N-1}-1]
【0047】
最短時間を決めたいときにはT1とNと呼損率を固定値として、T2を変動させることにより決定する。本実施形態ではN≦10で、T1=0.8ミリ秒、T2=20ミリ秒の例を出した。
N=3で呼損率が0.01%になる最短時間は64.1ミリ秒であり、T2=7.7ミリ秒が条件である。T2=20ミリ秒の条件では最短時間は78.3ミリ秒に延びる。
N=3で呼損率が1%になる最短時間は27.6ミリ秒であり、T2=10.5ミリ秒が条件である。T2=20ミリ秒の条件では最短時間は29.2ミリ秒に延びる。
N=10で呼損率が0.1%になる最短時間は189.59ミリ秒であり、T2=28.5ミリ秒が条件である。T2=20ミリ秒の条件では最短時間は196.2ミリ秒に延びる。
図7に、T2=送信間隔(ms)vs呼損率基準のクリア時間(ms)のグラフを示す。
なお、
図7では横軸がT2である送信間隔(ms)に対応し、縦軸が呼損率の基準をクリアする時間(ms)に対応する。
図7における曲線G1、曲線G2、及び曲線G3は、N=5台、T1=0.8ms、呼損率=1%、0.1%、及び0.01%の各々の場合における送信間隔(ms)vs呼損率基準のクリア時間(ms)の関係を示す。
図7における曲線G4、曲線G5、及び曲線G6は、N=10台、T1=0.8ms、呼損率=1%、0.1%、及び0.01%の各々の場合における送信間隔(ms)vs呼損率基準のクリア時間(ms)の関係を示す。
図7における曲線G7、曲線G8、及び曲線G9は、N=3台、T1=0.8ms、呼損率=1%、0.1%、及び0.01%の各々の場合における送信間隔(ms)vs呼損率基準のクリア時間(ms)の関係を示す。
【0048】
なお、スロッテッドアロハ方式の時には、以下の式となる。
t'0.1%=T2*[-3/log{1-(1-T1/T2)N-1}-1]
【0049】
本実施形態ではオフセット値をT1の周期の倍数である1ミリ秒単位とし、±4ミリ秒の9段階の設定とした。再衝突確率は21%になる。±8ミリ秒の17段階の設定だと定周期性がなくなり、複数サイクルとの衝突が発生し複雑性が増すが、再衝突確率は12%と減る。定周期性を重要視するなら±1ミリ秒の3段階の設定が良いが、再衝突確率は56%と増える。
【0050】
以上の理由から(8)オフセット値の幅を変更する、方式が存在する。
遅延時間を短くするための、オフセット値の幅を変更する、方式について説明する。本実施形態では、アロハ方式で、オフセット値をT1の周期の倍数である1ミリ秒単位とする場合で、且つ-4ミリ秒から4ミリ秒の範囲に設定した。この場合の同一つチャネルを使用する2つの通信ペアが一度衝突した後に、再度衝突する確率を簡易的に計算して2/9とした。
詳細に計算すると、1/9*2/9*8+1/9*2/9*1=17/81=0.210<0.222=2/9、呼損率は少し小さい値となる。今回は±4ミリ秒の範囲としたが、±uミリ秒の範囲の場合の衝突確率は(4u+1)/(2u+1)2となる。ただし、T2が20ミリ秒で、u<7。uが7以上の時は複数サイクル時の衝突の計算が入るため計算式が変わるためである。u=7~9の時は、衝突確率は(4u+1)/(2u+1)2+{6*(u-6)*(3u-19)+1}/2/(2u+1)3である。
u=1のときの衝突時の再衝突の確率は0.556
u=2のときの衝突時の再衝突の確率は0.360
u=3のときの衝突時の再衝突の確率は0.265
u=4のときの衝突時の再衝突の確率は0.210
u=5のときの衝突時の再衝突の確率は0.174
u=6のときの衝突時の再衝突の確率は0.148
u=7のときの衝突時の再衝突の確率は0.131
u=8のときの衝突時の再衝突の確率は0.120
u=9のときの衝突時の再衝突の確率は0.113
u=10のときの衝突時の再衝突の確率は0.107
1/20の完全ランダム発生の呼の場合は2/20=0.100となる。
以上の様にオフセット値を変えることで再衝突確率が減り、呼損率を減じて、遅延時間を短縮することが可能である。一方で定周期性は崩れる方向になる。
【0051】
以上で遅延時間を短縮する方法を述べた。
一方、適用するシステムに求められる要件の重要度合いとして、更にシステム収容台数を増加の要求が生じた場合は、遅延時間を短縮する方策に同じである。同様の検討を行い、方式変更を行えばよい。
【0052】
以上がリモコン端末装置10の構成である。
【0053】
次いで、リモコン端末装置10の動作について説明する。
【0054】
制御プログラムPRに従って作動している制御部110は、制御対象機器(たとえば、クレーン)を遠隔操作するためのボタンの操作が操作部120に対して為されると、当該操作に応じたコマンド(以下、第1のコマンド)を含む通信電文を制御装置20へバースト送信し、バースト送信の完了後、
図8に示す制御方法を実行する。
図8に示されるように、この制御方法は、ステップSA110~ステップSA150の各処理を含む。ステップSA110~ステップSA150の各処理の処理内容は次の通りである。
【0055】
ステップSA110では、制御部110は、自装置の乱数テーブルTBLを参照することにより乱数を取得する。なお、ステップSA110の処理が再度実行される場合は、制御部110は、前回のステップSA110の実行の際とは異なる読出し位置から乱数を読み出す。
【0056】
ステップSA110に後続するステップSA120では、制御部110は、ステップSA110にて取得した乱数を、例えば-4から4の範囲のオフセットに変換し、当該オフセットに周期に応じた時間T2を加算し、T1とT3を減算して得られる値をスリープ時間に設定する。
【0057】
次いで、制御部110は、無線通信部140からバースト送信完了通知を受信すると(ステップSA130)、ステップSA120にて設定したスリープ時間分のスリープを実行する(ステップSA140)。そして、スリープ時間経過後、制御部110は起動処理を実行する(ステップSA150)。
【0058】
図8のフローチャート終了後のバースト送信では、制御部110は、操作部120に対するボタンの状態の入力値を確認し、ボタン操作に変更がない場合には、前回と同じ通信電文をバースト送信すればよく、ボタン操作に変更があり、入力値が変わった場合には操作部120に対する操作に応じて通信電文を再設定し、バースト送信を行えばよい。
【0059】
なお、制御装置20は、予め決定している通信チャネルにおいて干渉波又は妨害波を検知した等の理由により、通信チャネルを変更した方が良いと判断した場合は、
図9のフローチャートに示す動作を実行する。予め決定している通信チャネルにおいて干渉波又は妨害波を検知した場合、制御装置20は、
図9に示されるように、通信チャネル#1~#16をサーチして干渉又は妨害の影響を受けにくい通信チャネルを変更先の通信チャネルに決定する(ステップSB110)。次いで、制御装置20は該通信チャネルへの通信チャネルの変更指示をリモコン端末装置10に送信する(ステップSB120)。リモコン端末装置10の制御部110は、自装置と対になる制御装置20から通信チャネルの変更指示、即ち通信周波数の変更指示を受信した場合には、当該変更指示に応じて変更し、変更後の通信チャネルを用いてバーストを実行する。制御装置20は、変更先の通信チャネルにてバースト送信されるデータの受信を待ち受け(ステップSB130)、当該通信チャネルにてデータを受信した場合(ステップSB130:Yes)には応答を当該通信チャネルへ送信する(ステップSB140)。リモコン端末装置10が当該応答を受信することにより通信チャネルの変更が完了する。変更指示を送信してから所定時間が経過しても制御装置20がデータを受信しなかった場合には、ステップSB130の判定結果は“No”となり、
図9に示される動作例では、制御装置20はステップSB110以降の処理を再度実行する。
【0060】
若しくは、リモコン端末装置10を保守用モードに変更した後に、制御装置20に対して、予め決定している通信チャネルから異なる通信チャネルへの変更を指示する信号を、ボタン操作、若しくは保守端末から設定して送出してもよい。制御装置20は該信号を受信したときは応答信号を返して、その後、制御装置20とリモコン端末装置10は該通信チャネルに変更し、リモコン端末装置10はバースト信号を送信し、応答を返して変更が完了する。保守用の専用のリモコン端末装置10であっても良い。なお、リモコン端末装置10の保守用モードでは、通信チャネル#1~#16をサーチして、干渉又は妨害の影響度を表示する、若しくは制御装置20又は保守端末に影響度を送信する機能が設けられてもよい。制御装置20がリモコン端末装置10からの応答信号を決まった回数、若しくは変更指示の送信から所定時間を待っても受信できなかった場合は、制御装置20は、元のチャネルに戻って再度変更指示を送信する処理を一定回数繰り返してもよい。この処理を予め決めた一定回数繰り返しても、チャネル変更が成功しなかった場合は、元のチャネルに戻る、若しくは通信チャネル#1~#16を再度サーチして異なるチャネルに変更指示を出すアルゴリズムであってもよい。
【0061】
また、保守モード時や保守専用リモコン端末装置、保守端末は予備情報をFF、もしくは送信元アドレスをFF等とする保守信号である旨の識別子を制御機に示す方法が考えられる。送信先アドレスが指定されている時には該アドレスの制御装置のみが保守信号を処理し、送信先アドレスがFFの時は、全制御端末が保守の指示であると識別子を判別して、全端末が保守信号を受信する動作となる。制御装置20を含む操作対象機器が当該操作対象機器の遠隔保守を行う保守端末から指示を受信し、当該指示に応じた処理を実行して保守端末へ応答を返信した場合には、制御装置20は当該応答を、自装置と対になるリモコン端末装置10へ送信する。当該応答を受信したリモコン端末装置10における制御部110は、当該応答を受信した場合に、その時点において実行中のバースト送信を中止する等、当該応答に応じた処理を実行する。
【0062】
本実施形態による効果は具体的には次の通りである。
図10は、通信システム1での無線上での衝突時の端末間のD/U比と呼損率の実測値を示した図である。先に述べた通り、本開示の一実施形態による通信システム1では、T2=20ミリ秒、T1=0.8ミリ秒、完全ランダム送出のアロハ方式で、通信ペア同士の送信時間が少しだけでも被った時には必ず呼損するという厳しい前提条件の時の通信ペア2ペアが衝突する計算上の確率は、P
11=1.6ms/20ms=0.08=8%、である。実測値と計算を比較すると、端末間のD/U比が-3dB以下の時の呼損率は7.2%になっており、計算値に近い値になる。
【0063】
D/U比は、制御装置20が受ける受信電波レベルにおいて、ペアのリモコン端末装置10からの電波強度/ペア以外のリモコン端末装置10からの電波強度、を示す。端末間のD/U比が-3dBとは、ペア以外のリモコン端末装置10からの電波強度がペアとなっているリモコン端末装置10からの電波強度を3dB上回っていることを示し、ペアのリモコン端末装置10の制御装置20からの距離が3mの時に、ペア以外のリモコン端末装置10が制御装置20から2.1m(√2分の1)のところにある、という状態である。
【0064】
一般的には、無線通信での電波の衝突時にD/U比で8dB以上あるときは衝突しても信号再生ができるようになっている。実際には、D/U比が6dB以下で影響が顕著になり、3dB以下になったときは、完全に衝突して信号の再生はできなくなり、衝突の計算に乗った呼損率が発生する。
【0065】
本開示の一実施形態による通信システム1の方式では、データ量を絞ってプリアンブル含んでも0.8ミリ秒に抑え込んだ小さいパケットを用いた方式であり、且つスペクトル拡散方式などを用いている効果で衝突には強くなっている。D/U比が3dB以上で衝突時の呼損率は計算の27%、0dBでも衝突時の呼損率は計算の40%程度と小さく、-3dB以下で衝突した場合には90%で計算値に近くなる。
【0066】
以上説明したように本実施形態によれば、リモコンによる操作対象機器の遠隔制御を、通信チャネルを占有することなく、且つ安全性の確保及び異常発生時の迅速な対処に支障を生じさせることなく、無線通信により実現することが可能になる。また、本実施形態では、無線通信の有効範囲である半径Lの円内に1つの通信チャネルを共用するN個の通信ペアが存在しても安全性の確保及び異常発生時の迅速な対処に支障は生じないので、工場内における各操作対象機器の配置に即して互いに隣接する操作対象機器に同一の通信チャネルが割り当てられないようにする等の調査や測定、設定作業を当該工場に出向いて行う必要はなく、当該作業が必要となる態様に比較して通信システム1の導入コストを低減させることができる。
【0067】
具体的には、通信ペア10ペア(P1~P10)が通信チャネル#1を共用できる。16個の通信チャネルがあるため160ペアが同一場所で使用可能となる。通信ペアP1~P10の各々に含まれるリモコン端末装置10は間欠的(0.8ミリ秒)、かつ周期的(20ミリ秒)に信号を送出する。予め定めた周期に乱数のオフセットを付与する信号送出により信号の衝突を回避しているため、10ペア間の信号衝突は発生するものの信号は一定の確率で制御装置に伝達される。収容台数や通信ペア間の距離により決まる衝突確率や呼損率は、更に制御の遅延時間の関数に変換される。同一チャネルであっても10ペアの混在が許容されている方式のため、160ペアというこれまでの約4倍のペアが使用可能で、かつ、無線技術者による調整も不要である。工場でランダムに設定した機器を据え付けるだけで動作可能である。ここで用いたペア数や周期は一例であり、更に多くの通信ペアを収容することも可能である。制御の遅延時間制約、収容台数、コストの要求に対して、送信周期時間(T2)の調整、送信タイミングのオフセット値の幅の調整により要求への最適化が図れる方式である。また、アロハ方式とスロッテッドアロハ方式、制御機器からの応答の有無、チャネル変更機能の有無の選択などによっても要求への最適化が図れる方式である。
【0068】
<2.変形>
上記実施形態の説明は、本開示を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。また、本開示の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0069】
(1)上記実施形態における操作対象機器は工場に設置されるクレーンであったが、ホイスト、ウィンチ、チェーンブロックでも良い。リモコンにより開閉が制御される防火シャッター、医療用等のポンプの制御、農業用機器の制御、空調機や移動台車やロボットの制御であってもよい。制御は開始・停止のみならず、速度制御や選択のスイッチ制御や非常停止制御などを含む。また、動力をともなう制御や動力を伴わないパソコンやディスプレイやテレビ、照明システム等の制御であってもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、1つの通信チャネルを共有するN個の通信ペアの各々における乱数テーブルTBLの格納内容が互いに異なっていたが、これらN個の乱数テーブルTBLの格納内容が互いに異なることは必ずしも必須ではなく、これらのうちの複数個(N個を含む)が同一であってもよい。N個の乱数テーブルTBLに同一のものが含まれる場合には、装置識別子に基づいてリモコン端末装置10毎に読み出し位置を調整すれば、特段の問題は生じない。つまり、本開示の通信システムは、リモコン端末装置と制御装置との対をN(Nは1以上の整数)対備え、前記複数のリモコン端末装置の各々は、予め定められた通信チャネルの無線通信により、自装置と対になる制御装置へデータを送信する無線通信部と、前記無線通信部による前記無線通信の実行タイミングを、予め定められた周期に応じて定まるタイミングに乱数に応じたオフセットを付与することで調整する制御部と、を有し、更に、前記複数のリモコン端末装置には、各々を一意に識別するための識別情報が付与されており、前記複数のリモコン端末装置の各々が備える前記制御部は、自装置の前記識別情報に基づいて前記乱数を発生させてもよい。
【0071】
(3)本開示は、CPU等の一般的なコンピュータに
図8に示される制御方法を実行させるプログラム(上記実施形態における制御プログラムPR)として規定することもでき、当該プログラムが単体で製造又は提供されてもよい。当該プログラムの具体的な提供態様としては、SDメモリーカード等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布する態様、又はインターネット等の電気通信回線経由のダウンロードにより配布する態様が挙げられる。
【0072】
(4)リモコン端末装置10は、制御装置20との通信にてバースト送信し、制御装置20の通信ができない場合に、一定時間経過等の所定条件を満たせば、制御装置20により制御対象機器の一部又は全部の動作を停止、たとえば、モーター制御を停止などすることもできる。また、リモコン端末装置10は、制御装置20との通信にて無線通信(双方向)を有し、その通信により制御装置20が制御対象機器の一部又は全部の動作を停止、たとえば、モーター制御を停止などすることもできる。
【0073】
(5)本発明の通信システム1は、呼損率や制御遅延時間、収容台数、コストの要求に対して、送信周期時間(T2)を調整して要求への最適化を図れることができる。また、送信タイミングのオフセット値の幅を調整して要求への最適化を図ることもできる。さらに、制御の変化時と無変化時やアイドル時で送信周期時間(T2)を調整して最適化することもできる。
【0074】
(6)また、アロハ方式とスロッテッドアロハ方式、制御機器からの応答の有無、チャネル変更や妨害波のサーチの機能、などの機能の選択が可能で、機能・性能と投資コストの最適化を実現できる。
【0075】
(7)本発明の通信システム1は、一定時間以上リモコン装置から信号が途絶えたときや一定時間以上妨害波を検知したときには自動的に制御機器の動力をオフにする機能、もしくはアラームを上げる機能を備えることで、安全性の高い方式やシステムを提供できる。
【0076】
(8)さらに、本発明の通信システム1は、一定時間以上のリモコン装置からの信号の遮断や妨害波を検知したときには自動的、もしくは手動でチャネル変更を実施する構成とすることで、安全性の高い方式やシステムを提供できる。また、安全な運用のための調査や指示を強制的に実行させるための保守モードを備えることもできる。
【符号の説明】
【0077】
1…通信システム
10、10A,10B、10C,10D…リモコン端末装置
20…制御装置
110…制御部
120…操作部
130…通知部
140…無線通信部
150…記憶部
152…不揮発性記憶部
154…揮発性記憶部