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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051911
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】溶着方法および溶着装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E04D5/14 F
E04D5/14 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158298
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良範
(72)【発明者】
【氏名】木村 真吾
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 昌博
(72)【発明者】
【氏名】小梶 夏男
(57)【要約】
【課題】第1基材と第2基材とを、時間と手間を要することなく、効率よく溶着することができる溶着方法、および、かかる溶着方法が適用された溶着装置を提供すること。
【解決手段】本発明の溶着装置100は、水平方向に沿った第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部20と、上下方向に沿った第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部30と、水平方向に沿った第5位置と第6位置とを取り得る加熱部40とを備え、加熱部40は、第2位置に位置する水平搬送部20と第3位置に位置する上下搬送部30との間の第6位置に位置して、水平搬送部20に配置された第1基材(防水シート10)と、上下搬送部30に吸着された第2基材(配置部材50)との双方を加熱することで、樹脂材料が溶融した状態とし、その後、第5位置に移動するよう構成されていること。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも前記第1基材の短手方向における一方の縁部および前記第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、溶着する溶着方法であって、
水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部と、
前記水平搬送部の上側に設置され、上下方向に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部と、
前記上下方向において、前記水平搬送部と、前記第3位置に位置する前記上下搬送部との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得る加熱部とを備える溶着装置が用いられ、
前記水平搬送部が前記第1位置に位置するときに、未溶着の前記第1基材と前記第2基材とを、前記第1基材を下側として積層された状態で、前記水平搬送部に配置させた後に、前記水平搬送部を前記第2位置に移動させる第1工程と、
前記水平搬送部が前記第2位置に位置した後に、前記上下搬送部を前記第4位置に位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第2基材を前記上下搬送部で選択的に吸着し、その後、前記上下搬送部で前記第2基材を吸着した状態を維持して、前記上下搬送部を前記第3位置に移動させる第2工程と、
前記上下搬送部が前記第3位置に位置した後に、前記水平搬送部と前記上下搬送部との間の前記第6位置に前記加熱部を位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材との双方を前記加熱部により加熱することで、前記樹脂材料が溶融した状態とし、その後、前記加熱部を前記第5位置に移動させる第3工程と、
前記加熱部が前記第5位置に位置した後に、前記上下搬送部を前記第4位置に位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材とを圧着することで、溶着された前記第1基材と前記第2基材とを得る第4工程とを有することを特徴とする溶着方法。
【請求項2】
前記第1基材は、前記樹脂材料を主材料として構成された樹脂シートである請求項1に記載の溶着方法。
【請求項3】
前記第2基材は、鋼板と、該鋼板の表面を被覆する、前記樹脂材料を主材料として構成された樹脂層とを備える被覆鋼板である請求項1に記載の溶着方法。
【請求項4】
前記上下搬送部は、電磁石を備え、前記第2工程において、前記上下搬送部が前記第4位置に位置した際に、前記電磁石の磁力により、前記上下搬送部に前記第2基材を吸着させる請求項3に記載の溶着方法。
【請求項5】
少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも前記第1基材の短手方向における一方の縁部および前記第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、溶着するのに用いられる溶着装置であって、
水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部と、
前記水平搬送部の上側に設置され、上下方向に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部と、
前記上下方向において、前記水平搬送部と、前記第3位置に位置する前記上下搬送部との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得る加熱部とを備え、
前記水平搬送部は、前記第1位置に位置するときに、未溶着の前記第1基材と前記第2基材とを、前記第1基材を下側として積層された状態で、前記水平搬送部に配置された後に、前記第2位置に移動するよう構成され、
前記上下搬送部は、前記水平搬送部が前記第2位置に位置した後に、前記第4位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第2基材を選択的に吸着し、その後、前記第2基材を吸着した状態を維持して、前記第3位置に移動するよう構成され、
前記加熱部は、前記上下搬送部が前記第3位置に位置した後に、前記水平搬送部と前記上下搬送部との間の前記第6位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材との双方を加熱することで、前記樹脂材料が溶融した状態とし、その後、前記第5位置に移動するよう構成され、
さらに、前記上下搬送部は、前記加熱部が前記第5位置に位置した後に、前記第4位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材とを圧着するよう構成されていることを特徴とする溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着方法および溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の躯体において、樹脂シートを敷設施工したシート防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このシート防水構造では、例えば、屋上の床部と、床部の外縁に沿って立設して設けられた壁部との境界部に、塩化ビニル系樹脂で被覆された鋼板(金属板)を配置し、この鋼板の少なくとも一部を、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する防水シートを用いて覆う構成となっており、これにより、屋上の境界部に対して防水が施される。
【0004】
ここで、防水が施工される屋上等の形状は、当然、様々である。そのため、前記鋼板としては、複数の種類の形状のものが予め用意され、実際に施工される屋上等の境界部の形状に対応したものが複数選択される。そして、これら鋼板は、前記境界部にその形状に対応するように、複数のものが並べられ、この状態で防水シートにより覆われる。
【0005】
上記の通り、複数の種類の形状を有する鋼板が防水シートで被覆されるが、この鋼板の防水シートによる被覆が、鋼板と防水シートとの溶着により実施されている。そのため、シート防水構造の施工現場において、鋼板と防水シートとの溶着を、各鋼板に対応して実施すると、時間と手間を要すると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-70877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる問題点について、シート防水構造の施工現場での負担軽減を図ることを、本発明者が考慮したところ、複数の種類の形状をなしている鋼板のうち、全体形状が短冊状をなすものは、シート防水構造を施す躯体の形状に関係することなく用いられる。そのため、防水シートについても、鋼板と同様に、全体形状が短冊状をなし、これら鋼板と防水シートとが、少なくとも防水シートの短手方向における一方の縁部および鋼板の短手方向における他方の縁部同士において、溶着された接合体については、シート防水構造を施す躯体の形状に関係することなく必要となってくる。そこで、施工現場において、シート防水構造を施工するのに先立って、ともに全体形状が短冊状をなしている鋼板と防水シートとを、これら同士が少なくとも防水シートの短手方向における一方の縁部および鋼板の短手方向における他方の縁部において、溶着された接合体とした状態で、施工現場に搬入することにすれば、シート防水構造の施工現場での負担軽減を図ることができる。
【0008】
したがって、ともに全体形状が短冊状をなしている鋼板と防水シートとについて、施工現場への搬入に先立って、これら同士が少なくとも防水シートの短手方向における一方の縁部および鋼板の短手方向における他方の縁部において、溶着された接合体とすることができる溶着方法、および、この溶着方法が適用された溶着装置について、その開発が求められていると言える。
【0009】
なお、この溶着方法および溶着装置については、ともに全体形状が短冊状をなしている鋼板と防水シートとを溶着する場合に限定されず、ともに全体形状が短冊状をなし、少なくとも表面が樹脂材料で構成されている第1基材と第2基材とを溶着する場合にまで適用可能であることは明らかである。
【0010】
そのため、本発明の目的は、少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも第1基材の短手方向における一方の縁部および第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、時間と手間を要することなく、効率よく溶着することができる溶着方法、および、かかる溶着方法が適用された溶着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(5)に記載の本発明により達成される。
(1) 少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも前記第1基材の短手方向における一方の縁部および前記第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、溶着する溶着方法であって、
水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部と、
前記水平搬送部の上側に設置され、上下方向に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部と、
前記上下方向において、前記水平搬送部と、前記第3位置に位置する前記上下搬送部との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得る加熱部とを備える溶着装置が用いられ、
前記水平搬送部が前記第1位置に位置するときに、未溶着の前記第1基材と前記第2基材とを、前記第1基材を下側として積層された状態で、前記水平搬送部に配置させた後に、前記水平搬送部を前記第2位置に移動させる第1工程と、
前記水平搬送部が前記第2位置に位置した後に、前記上下搬送部を前記第4位置に位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第2基材を前記上下搬送部で選択的に吸着し、その後、前記上下搬送部で前記第2基材を吸着した状態を維持して、前記上下搬送部を前記第3位置に移動させる第2工程と、
前記上下搬送部が前記第3位置に位置した後に、前記水平搬送部と前記上下搬送部との間の前記第6位置に前記加熱部を位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材との双方を前記加熱部により加熱することで、前記樹脂材料が溶融した状態とし、その後、前記加熱部を前記第5位置に移動させる第3工程と、
前記加熱部が前記第5位置に位置した後に、前記上下搬送部を前記第4位置に位置させて、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材とを圧着することで、溶着された前記第1基材と前記第2基材とを得る第4工程とを有することを特徴とする溶着方法。
【0012】
(2) 前記第1基材は、前記樹脂材料を主材料として構成された樹脂シートである上記(1)に記載の溶着方法。
【0013】
(3) 前記第2基材は、鋼板と、該鋼板の表面を被覆する、前記樹脂材料を主材料として構成された樹脂層とを備える被覆鋼板である上記(1)または(2)に記載の溶着方法。
【0014】
(4) 前記上下搬送部は、電磁石を備え、前記第2工程において、前記上下搬送部が前記第4位置に位置した際に、前記電磁石の磁力により、前記上下搬送部に前記第2基材を吸着させる上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の溶着方法。
【0015】
(5) 少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも前記第1基材の短手方向における一方の縁部および前記第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、溶着するのに用いられる溶着装置であって、
水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部と、
前記水平搬送部の上側に設置され、上下方向に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部と、
前記上下方向において、前記水平搬送部と、前記第3位置に位置する前記上下搬送部との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得る加熱部とを備え、
前記水平搬送部は、前記第1位置に位置するときに、未溶着の前記第1基材と前記第2基材とを、前記第1基材を下側として積層された状態で、前記水平搬送部に配置された後に、前記第2位置に移動するよう構成され、
前記上下搬送部は、前記水平搬送部が前記第2位置に位置した後に、前記第4位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第2基材を選択的に吸着し、その後、前記第2基材を吸着した状態を維持して、前記第3位置に移動するよう構成され、
前記加熱部は、前記上下搬送部が前記第3位置に位置した後に、前記水平搬送部と前記上下搬送部との間の前記第6位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材との双方を加熱することで、前記樹脂材料が溶融した状態とし、その後、前記第5位置に移動するよう構成され、
さらに、前記上下搬送部は、前記加熱部が前記第5位置に位置した後に、前記第4位置に位置して、前記水平搬送部に配置された前記第1基材と、前記上下搬送部に吸着された前記第2基材とを圧着するよう構成されていることを特徴とする溶着装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも第1基材の短手方向における一方の縁部および第2基材の短手方向における他方の縁部同士において溶着する際に、この溶着を、時間と手間を要することなく、効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の溶着方法が適用された溶着装置(本発明の溶着装置)の実施形態の斜視図である。
図2図1に示す溶着装置が備える加熱部を示す図((a):側面図、(b):平面図)である。
図3図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第1実施形態を説明するための側面図である。
図4図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第1実施形態を説明するための側面図である。
図5図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第1実施形態を説明するための側面図である。
図6図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第2実施形態を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の溶着方法および溶着装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本発明の溶着方法は、少なくとも表面が樹脂材料を主材料として構成され、全体形状が短冊状をなしている第1基材と第2基材とを、少なくとも第1基材の短手方向における一方の縁部および第2基材の短手方向における他方の縁部同士において、溶着することで、第1基材と第2基材とが溶着(接合)された接合体を得る方法である。また、本発明の溶着装置は、本発明の溶着方法が適用され、前記接合体を得るのに用いられるものである。
【0020】
これら溶着方法および溶着装置において、第1基材としては、樹脂材料を主材料として含有する防水シート(樹脂シート)が、また、第2基材としては、樹脂材料を含有する樹脂層で被覆された鋼板(金属板)で構成される配置部材が、それぞれ、好適に選択される。そのため、以下では、第1基材が防水シート10であり、第2基材が配置部材50である場合について、一例として説明する。
【0021】
以下では、まず、本発明の溶着方法を説明するのに先立って、本発明の溶着方法が適用された本発明の溶着装置について説明する。
【0022】
<溶着装置>
図1は、本発明の溶着方法が適用された溶着装置(本発明の溶着装置)の実施形態の斜視図、図2は、図1に示す溶着装置が備える加熱部を示す図((a):側面図、(b):平面図)、図3図5は、図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第1実施形態を説明するための側面図、図6は、図1に示す溶着装置を用いた、本発明の溶着方法の第2実施形態を説明するための側面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図3図6中の上側を「上」または「+z軸方向」、下側を「下」または「-z軸方向」と言い、右側を「右」または「+x軸方向」、左側を「左」または「-x軸方向」と言い、紙面奥側を「後」または「+y軸方向」、紙面手前側を「前」または「-y軸方向」と言う。
【0023】
溶着装置100は、水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得る水平搬送部20と、水平搬送部20の上側に設置され、上下方向(鉛直方向)に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得る上下搬送部30と、上下方向において、水平搬送部20と、第3位置に位置する上下搬送部30との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得る加熱部40とを備えている。
【0024】
なお、溶着装置100において、水平搬送部20が第2位置に位置し、上下搬送部30が第3位置および第4位置に位置し、加熱部40が第6位置に位置するときに、水平搬送部20、上下搬送部30および加熱部40は、上下方向(z軸方向)において同一軸線上に位置する領域(溶着領域)に配置され、この溶着領域において、防水シート10と配置部材50とを溶着(接合)するための各工程が実施される。
【0025】
また、水平搬送部20および加熱部40は、例えば、溶着装置100全体を支持するフレーム(図示せず)に、水平方向(左右方向;x軸方向)に移動可能に支持され、さらに、上下搬送部30は、溶着装置100全体を支持するフレーム(図示せず)に、垂直方向(上下方向;z軸方向)に移動可能に支持されている。
【0026】
さらに、水平搬送部20、上下搬送部30および加熱部40は、それぞれ独立して、例えば、図示しない、無端ベルトと、無端ベルトの長手方向における途中が接触して、無端ベルトに張力が掛かる状態で、掛け回されつつ回転する少なくとも2つのテンショナとを有している。そして、各無端ベルトの途中が、それぞれ独立して、水平搬送部20、上下搬送部30および加熱部40に接合されており、さらに、各無端ベルトに掛け回されたテンショナのうちの少なくとも1つにモータが接続されている。したがって、このモータの作動により、モータが接続されたテンショナが回転し、その結果、無端ベルトが送り出さされる。そのため、水平搬送部20、上下搬送部30および加熱部40を独立して移動させることができる。よって、テンショナに接続されたモータの作動により、水平搬送部20を第1位置および第2位置に、上下搬送部30を第3位置および第4位置に、加熱部40を第5位置および第6位置に、独立して配置させることができる。
【0027】
以下、溶着装置100が備える各部について説明する。
水平搬送部20は、水平方向に移動可能に設けられることで、第1位置と第2位置とを取り得るものであり、本実施形態では、第2位置よりも左側(-x軸方向)に位置する第1位置(図1図3(a)等参照)と、溶着領域に対応する位置となる、第1位置よりも右側(+x軸方向)の第2位置(図3(b)等参照)とを取り得るものである。
【0028】
この水平搬送部20は、防水シート10と配置部材50とを重ね合わせた状態で、これらが載置される載置板21と、載置板21から右側に延伸して設けられた保護板22とを有しており、水平搬送部20が第1位置に位置するときに、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とが載置板21に載置され、水平搬送部20を第2位置に移動させることで、防水シート10と配置部材50とを、載置板21に載置された状態で、第2位置すなわち溶着領域に位置させる。
【0029】
載置板21は、本実施形態では、図1に示すように、前後方向(y軸方向)に伸びる長尺をなす平板であり、第1位置に位置するときに、防水シート10と配置部材50とが重ね合わされて載置される。このとき、ともに全体形状が短冊状をなしている防水シート10と配置部材50とは、配置部材50を上側とし防水シート10を下側として、左右方向における右側の端部(一方の端部)が上下方向において一致するようにした状態で、前後方向に沿って、載置板21に配置される。
【0030】
また、保護板22は、載置板21と同様に、本実施形態では、図1に示すように、前後方向(y軸方向)に伸びる長尺をなす平板であり、載置板21から右側に延伸して設けられることで、載置板21が第1位置に位置するときに、第2位置に位置するものであり、これにより、防水シート10および配置部材50が不本意に、水平搬送部20(載置板21)の下側に落下するのを防止する。
【0031】
なお、この保護板22は、図1に示すように、載置板21に接触して、載置板21から右側に延伸して設けられているが、本実施形態では、図6(c)、図6(d)に示すように、載置板21が第1位置に位置するときに、載置板21から右方向(+x軸方向)に離間した、第2位置よりも右側の第7位置に位置し得るよう構成されている。
【0032】
また、後述する第2実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法の第5工程を除き、防水シート10および配置部材50は、保護板22に載置されることなく、載置板21に載置されることから、「水平搬送部20が第1位置(または第2位置)に位置する」とは、「載置板21が第1位置(または第2位置)に位置する」ときのことを言うこととする。
【0033】
上下搬送部30は、水平搬送部20の上側に設置され、上下方向に移動可能に設けられることで、第3位置と第4位置とを取り得るものであり、本実施形態では、水平搬送部20の第1位置よりも右側(+x軸方向)の第2位置(図3(b)等参照)に対応した溶着領域において、水平搬送部20が第2位置に位置する際に、上下方向において、上側に位置する第3位置(図3(b)等参照)と、下側に位置する第4位置(図3(c)等参照)とを取り得るものである。
【0034】
この上下搬送部30は、本体部31と、この本体部31の下側に接触して設けられた吸着部32とを有しており、水平搬送部20が第2位置に位置するときに、上下搬送部30を第4位置に位置させるとともに、吸着部32を作動させることで、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とのうち、上側に位置する配置部材50が選択的に吸着される。また、この状態で、上下搬送部30を第3位置に位置させることで、第3位置に位置する上下搬送部30に配置部材50が吸着され、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)に防水シート10のみが載置されることとなる。
【0035】
なお、第2位置に位置する水平搬送部20に対して、上下搬送部30を第4位置に位置させたときにおける、水平搬送部20と上下搬送部30との離間距離は、水平搬送部20と上下搬送部30とで、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とが挟持される程度の大きさに設定されている。そのため、上下搬送部30(吸着部32)による配置部材50の吸着が優れた精度で実施される。
【0036】
本体部31は、本実施形態では、図1に示すように、前後方向(y軸方向)に伸びる長尺をなす直方体であり、平面視において、配置部材50を包含する大きさに設定されている。そのため、前後方向に沿って載置板21に配置された配置部材50を、載置板21が第2位置に位置する際に、上下搬送部30(本体部31)を第4位置に位置させて、吸着部32を作動させることにより、上下搬送部30で配置部材50を、吸着することができる。
【0037】
また、吸着部32は、図1に示すように、本体部31の下側に対応して設けられており、第2位置に位置する載置板21に配置された、配置部材50および防水シート10のうち、上側に位置する配置部材50を、上下搬送部30が第4位置に位置するときに、選択的に吸着(ピックアップ)する吸着機構を構成している。
【0038】
この吸着部32は、配置部材50および防水シート10のうち、上側に位置する配置部材50を、選択的に吸着し得るものであれば、特に限定されず、例えば、エアーの吸引により吸着する構成のものや、磁力により吸着する電磁石で構成されるもの等が挙げられるが、中でも、本実施形態のように、吸着させるものが配置部材50のような磁性体である場合、電磁石で構成されることが好ましい。これにより、電磁石に対する導通のオン/オフの切り替えにより、吸着部32(上下搬送部30)に配置部材50を確実に吸着させて上下搬送部30を第3位置に位置させることができ、かつ、その吸着を所望のタイミングで解除することができる。
【0039】
加熱部40は、上下方向において、水平搬送部20と、第3位置に位置する上下搬送部30との間に設置され、水平方向に移動可能に設けられることで、第5位置と第6位置とを取り得るものであり、本実施形態では、第2位置に対応した溶着領域に水平搬送部20が位置し、かつ、第3位置に対応した溶着領域に上下搬送部30が位置するときに(図3(b)等参照)、第6位置よりも右側(+x軸方向)に位置する第5位置(図1図4(a)等参照)と、溶着領域に対応する位置となる、第5位置よりも左側(-x軸方向)の第6位置(図4(b)等参照)とを取り得るものである。
【0040】
この加熱部40は、図2に示すように、本体部41と、この本体部41の内側(内部)に埋設して設けられた近赤外ランプ43とを有しており、水平搬送部20が第2位置に位置し、さらに上下搬送部30が第3位置に位置するときに、加熱部40を第6位置に位置させるとともに、近赤外ランプ43を作動させることで、上下搬送部30に吸着された配置部材50と、水平搬送部20(載置板21)に載置された防水シート10との双方を加熱することができる。
【0041】
本体部41は、本実施形態では、図1図2に示すように、前後方向(y軸方向)に伸びる長尺をなす直方体であり、平面視において、配置部材50および防水シート10を包含する大きさに設定されている。そのため、水平搬送部20が第2位置に位置し、さらに上下搬送部30が第3位置に位置するときに、加熱部40を第6位置に位置させて、近赤外ランプ43を作動させることで、上下搬送部30に吸着された配置部材50と、水平搬送部20(載置板21)に載置された防水シート10との双方を、確実に加熱することができる。
【0042】
さらに、近赤外ランプ43は、図2に示すように、本体部41の内側に埋設して設けられており、水平搬送部20が第2位置に位置し、さらに上下搬送部30が第3位置に位置するときに、加熱部40を第6位置に位置させて近赤外ランプ43を作動させることで、上下搬送部30に吸着された配置部材50と水平搬送部20(載置板21)に載置された防水シート10とを加熱する加熱機構を構成している。
【0043】
この近赤外ランプ43は、本実施形態では、配置部材50および防水シート10の短手方向(左右方向)における、配置部材50および防水シート10の幅よりも細幅の長尺をなす円筒形状をなしており、本体部41の長手方向(前後方向)に沿って、本体部41内に設けられている。また、近赤外ランプ43は、図2に示すように、合計10個のものが、本体部41内の上側および下側の2段をなして、左右方向に5個ずつほぼ等間隔をなして並んで埋設されている。このように、本体部41内の上側および下側の2段に分けて近赤外ランプ43を配置させることで、上段に位置する近赤外ランプ43で配置部材50を、また、下段に位置する近赤外ランプ43で防水シート10を、それぞれ選択的に加熱することができる。そのため、上段に位置する近赤外ランプ43および下段に位置する近赤外ランプ43による加熱温度をそれぞれ独立して設定することで、配置部材50の加熱温度および防水シート10の加熱温度を、それぞれ所望の温度に設定することができる。
【0044】
以上のような溶着装置100を用いて、ともに全体形状が短冊状をなしている配置部材50と防水シート10とが、重ね合わされた状態で、溶着することで接合された接合体を得ることができる。
【0045】
以下、溶着装置100を用いて、配置部材50と防水シート10とが、溶着により接合された接合体を得る方法、すなわち、溶着装置100を用いた配置部材50と防水シート10との溶着方法(本発明の溶着方向)の各実施形態について、順次説明する。
【0046】
(溶着装置を用いた配置部材と防水シートとの溶着方法)
<第1実施形態>
この溶着装置100を用いた配置部材50と防水シート10との溶着方法は、本実施形態では、水平搬送部20が第1位置に位置するときに、未溶着の防水シート10と配置部材50とを、防水シート10を下側とし配置部材50を上側として重ね合わされた(積層された)状態で、水平搬送部20に配置させた後に、水平搬送部20を第2位置に移動させる第1工程と、水平搬送部20が第2位置に位置した後に、上下搬送部30を第4位置に位置させて、水平搬送部20に配置された配置部材50を上下搬送部30で選択的に吸着し、その後、上下搬送部30で配置部材50を吸着した状態を維持して、上下搬送部30を第3位置に移動させる第2工程と、上下搬送部30が第3位置に位置した後に、水平搬送部20と上下搬送部30との間の第6位置に加熱部40を位置させて、水平搬送部20に配置された防水シート10と、上下搬送部30に吸着された配置部材50との双方を加熱部40により加熱することで、樹脂材料が溶融した状態とし、その後、加熱部40を第5位置に移動させる第3工程と、加熱部40が第5位置に位置した後に、上下搬送部30を第4位置に位置させて、水平搬送部20に配置された防水シート10と、上下搬送部30に吸着された配置部材50とを圧着することで、溶着された防水シート10と配置部材50とを得る第4工程と、上下搬送部30を第3位置に位置させた後に、溶着された防水シート10と配置部材50とが配置された水平搬送部20を第1位置に位置させる第5工程と、を有する。
【0047】
以下、溶着装置100を用いた配置部材50と防水シート10との溶着方法の各工程について、順次、説明する。
【0048】
(第1工程)
まず、水平搬送部20が第1位置に位置するときに、未溶着の防水シート10と配置部材50とを、防水シート10を下側とし配置部材50を上側として重ね合わされた(積層された)状態で、水平搬送部20に配置させた後に、水平搬送部20を第2位置に移動させる。
【0049】
(1A-1)まず、未溶着の防水シート10と配置部材50とを用意し、これらを、防水シート10を下側とし配置部材50を上側として重ね合わされた(積層された)状態として、第1位置に位置させた水平搬送部20(載置板21)に載置(配置)する(図3(a)参照)。
【0050】
防水シート10と配置部材50との載置板21への載置は、本実施形態では、図1に示すように、ともに全体形状が短冊状をなしている防水シート10と配置部材50とを、防水シート10を下側、配置部材50を上側とし、それぞれの左右方向における右側(一方)の端部が上下方向において一致するようにした状態で、載置板の前後方向に沿うようにして、これらを載置板21に配置させることにより実施される。
【0051】
また、防水シート10は、樹脂材料を主材料として構成される樹脂シートであるが、この樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート10の配置部材50に対する溶着性の向上を図ることができる。
【0052】
また、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0053】
さらに、防水シート10は、樹脂材料の他に、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート10をより優れた柔軟性を有するものとし得る。
【0054】
なお、可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、DIBP(ジイソブチルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)のようなフタル酸エステル系可塑剤、DOA(ジ-2-エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジ-2-エチルヘキシルセバセート)のような脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、エチレングリコールのベンゾエート類のような芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、およびTOTM(トリオクチルトリメリテート)のようなトリメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、配置部材50は、鋼板(金属板)と、この鋼板の表面を被覆する、樹脂材料を主材料として構成された樹脂層とを備える被覆鋼板で構成されるが、金属板としては、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等が挙げられるが、鋼板が好ましく選択される。これにより、配置部材50を優れた強度を有するものとし得る。また、吸着部32が電磁石で構成される場合、電磁石の磁力により吸着部32(上下搬送部30)に配置部材50を確実に吸着させることができる。また、樹脂層に含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。すなわち、防水シート10を構成する樹脂材料と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層(配置部材50)と防水シート10との密着性の向上を図ることができる。
【0056】
(1A-2)次いで、第1位置に位置する水平搬送部20を右側に移動させることで、水平搬送部20を第2位置に位置させる(図3(b)参照)。
【0057】
なお、このとき、上下搬送部30および加熱部40は、それぞれ、第3位置および第5位置に配置されている。
【0058】
(第2工程)
次に、水平搬送部20が第2位置に位置した後に、上下搬送部30を第4位置に位置させて、水平搬送部20に配置された配置部材50を上下搬送部30で選択的に吸着し、その後、上下搬送部30で配置部材50を吸着した状態を維持して、上下搬送部30を第3位置に移動させる。
【0059】
(2A-1)まず、前記工程(1A-2)において、水平搬送部20を第2位置に位置させた後に、本工程(2A-1)において、第3位置に位置する上下搬送部30を下側に移動させることで、上下搬送部30を第4位置に位置させる(図3(c)参照)。
【0060】
なお、上下搬送部30を第4位置に位置させたときにおける、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30との離間距離は、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30とで、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とを挟持し得る程度の大きさに設定されている。
【0061】
(2A-2)次いで、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)に、重ね合わされて配置された防水シート10と配置部材50とのうち、上側に配置された配置部材50を上下搬送部30で選択的に吸着する。
【0062】
この上下搬送部30による配置部材50の吸着(ピックアップ)は、前記工程(2A-1)において、上下搬送部30を第4位置に位置させることで、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30とで、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とが挟持されている。そのため、この状態で、上下搬送部30が備える吸着部32を作動させることにより実施することができる。
【0063】
(2A-3)次いで、前記工程(2A-2)における、上下搬送部30による配置部材50の吸着を維持した状態で、第4位置に位置する上下搬送部30を上側に移動させることで、上下搬送部30を第3位置に位置させる(図4(a)参照)。
【0064】
これにより、第3位置に位置する上下搬送部30により配置部材50が吸着され、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)に防水シート10が載置された状態とされる。
【0065】
(第3工程)
次に、上下搬送部30が第3位置に位置した後に、水平搬送部20と上下搬送部30との間の第6位置に加熱部40を位置させて、水平搬送部20に配置された防水シート10と、上下搬送部30に吸着された配置部材50との双方を加熱部40により加熱することで、樹脂材料が溶融した状態とし、その後、加熱部40を第5位置に移動させる。
【0066】
(3A-1)まず、前記工程(2A-3)において、上下搬送部30が第3位置に位置した後に、本工程(3A-1)において、第5位置に位置する加熱部40を左側に移動させることで、第2位置に位置する水平搬送部20と第3位置に位置する上下搬送部30との間の第6位置に加熱部40を位置させる(図4(b)参照)。
【0067】
このとき、上下搬送部30により配置部材50が吸着され、また、水平搬送部20(載置板21)に防水シート10が載置されている。そのため、配置部材50と防水シート10との間に、加熱部40が配置されることとなる。
【0068】
(3A-2)次いで、水平搬送部20に配置された防水シート10と、上下搬送部30に吸着された配置部材50との双方を加熱部40により加熱する。
【0069】
前記工程(3A-1)において、加熱部40を第6位置に位置させることで、第3位置に位置する上下搬送部30に吸着された配置部材50と、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)に載置された防水シート10との間に加熱部40が配置されている。そのため、この状態で、加熱部40が備える近赤外ランプ43を作動させることで、加熱部40による配置部材50と防水シート10との加熱を実施し得る。
【0070】
この加熱部40(近赤外ランプ43)により、配置部材50と防水シート10との双方が加熱され、その結果、防水シート10に含まれる樹脂材料、および、配置部材50が備える鋼板を被覆する樹脂材料が溶融した状態、すなわち、防水シート10および配置部材50を構成する樹脂材料が溶融した状態となる。
【0071】
(3A-3)次いで、第6位置に位置する加熱部40を、右側に移動させることで、加熱部40を第5位置に位置させる(図4(c)参照)。
【0072】
なお、このとき、水平搬送部20は、第2位置に位置し、上下搬送部30は、第3位置に位置した状態を維持している。
【0073】
(第4工程)
次に、加熱部40が第5位置に位置した後に、上下搬送部30を第4位置に位置させて、水平搬送部20に配置された防水シート10と、上下搬送部30に吸着された配置部材50とを圧着することで、溶着された防水シート10と配置部材50とを得る。
【0074】
(4A-1)前記工程(3A-3)において、加熱部40を第5位置に位置させた後に、本工程(4A-1)において、第3位置に位置する上下搬送部30を下側に移動させることで、上下搬送部30を第4位置に位置させる(図5(a)参照)。
【0075】
このように、上下搬送部30を第4位置に位置させたときにおける、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30との離間距離は、前述の通り、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30とで、重ね合わされた防水シート10と配置部材50とを挟持し得る程度の大きさに設定されている。
【0076】
また、このとき、前記工程(3A-2)を経ることで、上下搬送部30に吸着された配置部材50と、水平搬送部20(載置板21)に載置された防水シート10とは、これらを構成する樹脂材料が溶融した状態となっている。
【0077】
そのため、上下搬送部30を第4位置に位置させて、水平搬送部20(載置板21)と上下搬送部30とで防水シート10と配置部材50とを挟持することで、樹脂材料が溶融した状態で防水シート10と配置部材50とが圧着されることから、溶着された防水シート10と配置部材50とを、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体とすることができる。
【0078】
このように、本工程(4A-1)では、水平搬送部20および上下搬送部30は、それぞれ、樹脂材料が溶融した状態とされた防水シート10と配置部材50とを挟持することで、防水シート10と配置部材50とを圧着するための下金型および上金型としての機能を発揮する。
【0079】
(第5工程)
次に、上下搬送部30を第3位置に位置させた後に、溶着された防水シート10と配置部材50とが配置された水平搬送部20を第1位置に位置させる。
【0080】
(5A-1)まず、前記工程(4A-1)において、上下搬送部30を第4位置に位置せることで、溶融した状態の防水シート10と配置部材50とを圧着して、溶着された防水シート10と配置部材50とを得た後に、本工程(5A-1)において、第4位置に位置する上下搬送部30を上側に移動させることで、上下搬送部30を第3位置に位置させる(図5(b)参照)。
【0081】
この上下搬送部30の第3位置への移動に先立って、本工程(5A-1)では、上下搬送部30の吸着部32による配置部材50の吸着を解除している。そのため、上下搬送部30の第3位置への移動の際には、上下搬送部30が単独で第3位置に向かって移動する。したがって、溶着された防水シート10と配置部材50とは、すなわち、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体は、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)に載置された状態とされる。
【0082】
(5A-2)次いで、第2位置に位置する水平搬送部20を左側に移動させることで、水平搬送部20を第1位置に位置させる(図5(c)参照)。
【0083】
このとき、水平搬送部20(載置板21)には、前述の通り、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体が載置されている。
【0084】
したがって、本工程(5A-2)において、水平搬送部20(載置板21)を第1位置に位置させることで、水平搬送部20(載置板21)に載置された前記接合体をも第1位置に位置させることができる。そのため、水平搬送部20(載置板21)の第1位置において、前記接合体を、溶着装置100の操作者により回収することができる。
【0085】
以上のような、溶着装置100を用いた、第1工程~第5工程を経ることで、溶着された防水シート10と配置部材50とを、すなわち、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体を、時間と手間を要することなく、効率よく得ることができる。
【0086】
換言すれば、溶着装置100を用いることで、シート防水構造の施工現場への搬入に先立って、接合体を、時間と手間を要することなく、効率よく得ることができるため、施工現場での負担軽減を図ることができる。
【0087】
また、溶着装置100を用いた配置部材50と防水シート10との溶着方法は、前述した第1実施形態の構成の方法の他、以下に示すような第2実施形態の構成の方法としても、前記接合体を、時間と手間を要することなく、効率よく得ることができる。
【0088】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法について説明するが、第1実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0089】
第2実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法では、溶着された防水シート10と配置部材50とを搬送する第5工程が異なること以外は、第1実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法と同様である。すなわち、第2実施形態の溶着方法は、第1実施形態の溶着方法の第1工程~第4工程と同様であり、第1実施形態の溶着方法の第5工程と異なっている。
【0090】
したがって、以下では、第2実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法における、第5工程について説明する。
【0091】
(第5工程)
第2実施形態の溶着装置100を用いた溶着方法では、第5工程において、溶着された防水シート10と配置部材50とが配置される位置を、水平搬送部20の載置板21から保護板22に移動させた後に、溶着された防水シート10と配置部材50とが配置された保護板22を第7位置に位置させる。
【0092】
(5B-1)まず、前記第1実施形態の前記工程(4A-1)において、図6(a)に示すように、上下搬送部30を第4位置に位置せることで、溶融した状態の防水シート10と配置部材50とを圧着して、溶着された防水シート10と配置部材50とを得た後に、第2実施形態の本工程(5B-1)において、第4位置に位置する上下搬送部30を上側に移動させることで、上下搬送部30を第3位置に位置させる(図6(b)参照)。
【0093】
この上下搬送部30の第3位置への移動に先立って、本工程(5B-1)では、上下搬送部30の吸着部32による配置部材50の吸着を解除することなく維持している。そのため、上下搬送部30の第3位置への移動の際には、上下搬送部30は、溶着された防水シート10と配置部材50とを、すなわち、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体を、吸着させた状態で第3位置に向かって移動する。
【0094】
よって、本工程(5B-1)を経ることで、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体は、第3位置に位置する上下搬送部30に吸着された状態とされ、第2位置に位置する水平搬送部20(載置板21)には、前記接合体が載置されていない状態とされる。
【0095】
(5B-2)次いで、第2位置に位置する水平搬送部20を左側に移動させることで、水平搬送部20の載置板21を第1位置に位置させて、水平搬送部20の保護板22を第2位置に位置させる。
【0096】
(5B-3)次いで、水平搬送部20の保護板22を第2位置に位置させた状態で、第3位置に位置する上下搬送部30を下側に移動させることで、上下搬送部30を第4位置に位置させた後に、上下搬送部30に吸着された前記接合体の吸着を解除する。
【0097】
これにより、第2位置に位置する保護板22に、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体を載置し、その後、上下搬送部30を上側に移動させることで、上下搬送部30を第3位置に位置させる(図6(c)参照)。
【0098】
(5B-4)次いで、第2位置に位置する水平搬送部20の保護板22を、載置板21から離脱させた後に、右側に移動させることで、保護板22を第7位置に位置させる(図6(d)参照)。
【0099】
このとき、保護板22には、前述の通り、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体が載置されている。
【0100】
したがって、本工程(5B-4)において、保護板22を第7位置に位置させることで、保護板22に載置された前記接合体をも第7位置に位置させることができる。そのため、保護板22の第7位置において、前記接合体を、溶着装置100の操作者により回収することができる。
【0101】
以上のような、溶着装置100を用いた、第2実施形態の前記第5工程を経ることで、保護板22の第7位置において、前記接合体が回収され、前記第1工程では、水平搬送部20が備える載置板21の第1位置において、重ね合わされた配置部材50と防水シート10との載置が行われる。このように、本実施形態では、前記接合体の回収と、配置部材50および防水シート10の載置とが異なる位置で実施される。したがって、前記接合体の回収と、次に溶着すべき配置部材50と防水シート10との載置とを、ほぼ同時に実施し得ることから、配置部材50と防水シート10とが重ね合わされた状態で接合された接合体を、より優れた作業効率で得ることができる。
【0102】
以上、本発明の溶着方法および溶着装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、本発明の溶着方法では、任意の目的で、第1工程の前工程、第1工程~第5工程の各工程同士の間に存在する中間工程、または第5工程の後工程を追加するようにしてもよい。
【0104】
また、本発明の溶着装置は、上記の構成のものに限定されず、溶着装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0105】
具体的には、例えば、前記実施形態では、水平搬送部20は、溶着領域に対応する第2位置に対して、左側(-x軸方向側)に位置する第1位置から移動するものとして説明したが、これに限定されず、第1位置は、第2位置を含むxy平面に位置するものであれば、第2位置に対して、右側(+x軸方向側)、前側(-y軸方向側)、後側(+y軸方向側)のように如何なる角度に位置していてもよく、水平搬送部20は、このような角度に位置する第1位置から第2位置に移動するものであってもよい。
【0106】
また、加熱部40は、前記実施形態では、溶着領域に対応する第6位置に対して、右側(+x軸方向側)に位置する第5位置から移動するものとして説明したが、水平搬送部20と同様に、これに限定されず、第5位置は、第6位置を含むxy平面に位置するものであれば、第6位置に対して、左側(-x軸方向側)、前側(-y軸方向側)、後側(+y軸方向側)のように如何なる角度に位置していてもよく、加熱部40は、このような角度に位置する第5位置から第6位置に移動するものであってもよい。
【0107】
さらに、加熱部40は、加熱機構として、近赤外ランプ43を備えることとしたが、配置部材50および防水シート10を加熱し得るものであれば、いかなる構成をなすものであってもよく、例えば、配置部材50および防水シート10に、それぞれ、熱風を吹き付ける構成をなすもの等であってもよい。
【0108】
また、前記実施形態では、第1基材が、樹脂材料を主材料として含有する防水シート10であり、第2基材が、樹脂材料を含有する樹脂層で被覆された鋼板で構成される配置部材50である場合について説明したが、第1基材および第2基材は、この場合に限定されず、それぞれ、少なくとも表面が樹脂材料で構成され、ともにその全体形状が短冊状をなしていれば、いかなる構成をなすものであってもよい。
【0109】
さらに、前記実施形態では、ともに全体形状が短冊状をなしている第1基材としての防水シートと第2基材としての配置部材とを、配置部材(第2基材)を上側として、左右方向における右側の端部が上下方向において一致するように重ね合わせた状態で、水平搬送部に配置することとしたが、少なくとも第1基材の左右方向(短手方向)における右側(一方)の縁部および第2基材の左右方向(短手方向)における左側(他方)の縁部同士、すなわち、第1基材と第2基材との少なくとも左右反対側の端部同士において、第2基材を上側として、これらが重なっていれば、第1基材と第2基材とを、いかなる位置で重ね合わせるようにしてもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、ともに全体形状が短冊状をなしている第1基材(防水シート)と第2基材(配置部材)とを、重ね合わせた状態で、前後方向に沿って、水平搬送部に配置することとしたが、第1基材および第2基材の長手方向に沿った長さが短いものであれば、第1基材と第2基材とを、前後方向に沿って水平搬送部に配置する必要はなく、例えば、第1基材と第2基材とを、重ね合わせた状態で、左右方向に沿って水平搬送部に配置することもできる。
【符号の説明】
【0111】
10 防水シート
20 水平搬送部
21 載置板
22 保護板
30 上下搬送部
31 本体部
32 吸着部
40 加熱部
41 本体部
43 近赤外ランプ
50 配置部材
100 溶着装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6