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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051935
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】冷蔵ショーケース
(51)【国際特許分類】
   A47F 3/04 20060101AFI20240404BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A47F3/04 F
A47F3/04 Z
F25D19/00 560B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158333
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208503
【氏名又は名称】大和冷機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】熊本 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B110
【Fターム(参考)】
3B110AA08
3B110CA19
3B110EA06
(57)【要約】
【課題】正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが可能な冷蔵ショーケースを提供する。
【解決手段】機械正面部12は、下部に後退した蹴込み部13を有する。化粧部材50は、正面化粧部(51)、該正面化粧部(51)の上端51aから上側へ延出し機械正面部12から外すことができるように機械正面部12に引っ掛かる係合部53、及び、正面化粧部(51)の下端51bから後側へ延出し延出端55bが蹴込み部13から外すことができるように蹴込み部13に固定される下部延出部(55)を有する。機械正面部12は、係合部53が隠れる状態で該係合部53が引っ掛かる引掛部14を備える。機械正面部12の前側に取り付けられた化粧部材50の下部延出部(55)の延出端55bを蹴込み部13から外し係合部53を機械正面部12から外すことにより、機械正面部12の前側から化粧部材50が取り外される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースであって、
前記機械室の正面にある機械正面部を有し、前記機械室及び前記展示室を囲むショーケース本体と、
前記機械正面部の前側に取り付けられる化粧部材と、を備え、
前記機械正面部は、下部に後退した蹴込み部を有し、
前記化粧部材は、前記冷蔵ショーケースの正面に現れる正面化粧部、該正面化粧部の上端から上側へ延出し前記機械正面部から外すことができるように前記機械正面部に引っ掛かる係合部、及び、前記正面化粧部の下端から後側へ延出し延出端が前記蹴込み部から外すことができるように前記蹴込み部に固定される下部延出部を有し、
前記機械正面部は、前記係合部が隠れる状態で該係合部が引っ掛かる引掛部を備え、
前記機械正面部の前側に取り付けられた前記化粧部材の前記下部延出部の延出端を前記蹴込み部から外し前記係合部を前記機械正面部から外すことにより前記機械正面部の前側から前記化粧部材を取り外すことが可能である、冷蔵ショーケース。
【請求項2】
前記係合部は、前記正面化粧部の上端から前方斜め上に延出し、
前記引掛部は、前記係合部を引き抜くことができるように挿入可能な差込穴を有し、
前記差込穴に前記係合部が挿入された状態で前記蹴込み部に前記下部延出部の延出端がねじで固定されることにより前記機械正面部の前側に前記化粧部材が取り付けられ、前記ねじを外し前記差込穴から前記係合部を引き抜くことにより前記機械正面部の前側から前記化粧部材を取り外すことが可能である、請求項1に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項3】
前記化粧部材は、前記係合部を有して前記正面化粧部の背面を支持する鉛直支持板を備え、
該鉛直支持板の下端が前記下部延出部の上面に固定され、
前記下部延出部の前端は、前記鉛直支持板よりも前側に出て前記正面化粧部の下側に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項4】
前記下部延出部は、前記正面化粧部の下端から後側へ延出し延出端が下側へ折り曲げられた下部延出板であり、
前記下部延出板における延出端の背面が前記蹴込み部の前面に合わせられて該延出端が前記蹴込み部から外すことができるように前記蹴込み部に固定され、
前記鉛直支持板の下端が後側へ折り曲げられ、
前記鉛直支持板における下端の下面が前記下部延出部の上面に合わせられて該下端が前記下部延出部の上面に固定されている、請求項3に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項5】
前記ショーケース本体は、前記機械室を囲む機械室形成部を有し、さらに、前記展示室の正面にある正面透明板を前記機械正面部の上側に有し、
前記機械正面部は、前記機械室形成部から取り外すことができるように前記機械室形成部の前側に取り付けられる前側通路形成部材を有し、
前記冷蔵ショーケースは、前記機械室形成部と前記前側通路形成部材との間の通路を介して前記機械室から前記正面透明板に前記機械室の暖気を送る曇り止め送風部をさらに備え、
前記機械正面部の前側から前記化粧部材が取り外された状態で前記機械室形成部から前記前側通路形成部材を取り外すことが可能である、請求項1又は請求項2に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項6】
前記曇り止め送風部は、前記通路に向かって斜め上向きの回転軸を中心として回転する曇り止め用ファンを備える、請求項5に記載の冷蔵ショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子店等の店舗では、ケーキ等の商品を冷やした状態で展示するために冷蔵ショーケースが用いられている(例えば特許文献1参照)。店舗に来た客に対面する位置にある正面ガラスが曇ることを防ぐため、商品が入る展示室の下方にある機械室の暖気を正面ガラス表面に吹き付ける曇り止め用ファンが機械室の正面側に設けられている。冷蔵ショーケースの正面は、客に対面するため、意匠性が重要視される。そこで、機械室の前側となる正面ガラスの下側は、リベットや溶接により固定された化粧パネルで覆われている。冷蔵ショーケースの正面には曇り止め用ファンにアクセスするための窓等は無い。曇り止め用ファンのメンテナンス時には、機械室の背面側を開けることにより曇り止め用ファンのメンテナンスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-63816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍ユニットや電装部品が設置されている機械室の正面側に設けられている曇り止め用ファンに機械室の背面側から手を伸ばすメンテナンスは、行い難い。一方で、冷蔵ショーケースの正面側の意匠性は、重要である。そこで、冷蔵ショーケースの正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが望まれる。
【0005】
本発明は、正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが可能な冷蔵ショーケースを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵ショーケースは、冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースであって、
前記機械室の正面にある機械正面部を有し、前記機械室及び前記展示室を囲むショーケース本体と、
前記機械正面部の前側に取り付けられる化粧部材と、を備え、
前記機械正面部は、下部に後退した蹴込み部を有し、
前記化粧部材は、前記冷蔵ショーケースの正面に現れる正面化粧部、該正面化粧部の上端から上側へ延出し前記機械正面部から外すことができるように前記機械正面部に引っ掛かる係合部、及び、前記正面化粧部の下端から後側へ延出し延出端が前記蹴込み部から外すことができるように前記蹴込み部に固定される下部延出部を有し、
前記機械正面部は、前記係合部が隠れる状態で該係合部が引っ掛かる引掛部を備え、
前記機械正面部の前側に取り付けられた前記化粧部材の前記下部延出部の延出端を前記蹴込み部から外し前記係合部を前記機械正面部から外すことにより前記機械正面部の前側から前記化粧部材を取り外すことが可能である、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】冷蔵ショーケースの例を模式的に示す斜視図。
図2】冷蔵ショーケースの前後方向に沿った縦断面の例を模式的に示す断面図。
図3】化粧部材及びその周辺の例を模式的に示す拡大縦断面図。
図4】化粧部材の例を模式的に示す斜視図。
図5】化粧部材上部の引掛構造の例を模式的に示す拡大縦断面図。
図6】化粧部材下部の固定構造の例を模式的に示す拡大縦断面図。
図7】化粧部材が取り外された冷蔵ショーケースの例を模式的に示す斜視図。
図8】前側通路形成部材の例を模式的に示す斜視図。
図9】前側通路形成部材が取り外された冷蔵ショーケースの例を模式的に示す斜視図。
図10】前側通路形成部材が取り外された冷蔵ショーケースの例を模式的に示す拡大縦断面図。
図11】曇り止め送風部の例を模式的に示す斜視図。
図12】比較例に係る冷蔵ショーケースの化粧パネル及びその周辺を模式的に示す拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~12に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0011】
図1~7等に例示するように、本技術の一態様に係る冷蔵ショーケース1は、冷凍ユニット40が設置された機械室C1の上方に展示室C2を有する冷蔵ショーケース1であって、前記機械室C1の正面にある機械正面部12を有し前記機械室C1及び前記展示室C2を囲むショーケース本体10と、前記機械正面部12の前側に取り付けられる化粧部材50と、を備える。前記機械正面部12は、下部に後退した蹴込み部13を有する。前記化粧部材50は、前記冷蔵ショーケース1の正面に現れる正面化粧部(例えば正面化粧板51)、該正面化粧部(51)の上端51aから上側へ延出し前記機械正面部12から外すことができるように前記機械正面部12に引っ掛かる係合部53、及び、前記正面化粧部(51)の下端51bから後側へ延出し延出端55bが前記蹴込み部13から外すことができるように前記蹴込み部13に固定される下部延出部(55)を有する。前記機械正面部12は、前記係合部53が隠れる状態で該係合部53が引っ掛かる引掛部14を備えている。前記機械正面部12の前側に取り付けられた前記化粧部材50の前記下部延出部(55)の延出端55bを前記蹴込み部13から外し前記係合部53を前記機械正面部12から外すことにより前記機械正面部12の前側から前記化粧部材50を取り外すことが可能である。
【0012】
機械正面部12の前側に取り付けられている化粧部材50において、機械正面部12に引っ掛かっている係合部53は隠れ、蹴込み部13に固定されている下部延出部(55)の延出端55bは冷蔵ショーケース1の正面側から見え難い。機械正面部12の前側に取り付けられた化粧部材50の下部延出部(55)の延出端55bを蹴込み部13から外し係合部53を機械正面部12から外すことにより、機械正面部12の前側から化粧部材50を取り外すことができる。これにより、正面側から機械室C1のメンテナンスを行うことができ、サービス性が向上する。従って、本態様は、正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【0013】
ここで、冷蔵ショーケース1は、冷却機能を有するショーケースであればよく、展示室C2の温度が氷点を下回らないショーケースに限定されず、展示室C2の温度が氷点を下回るショーケースでもよい。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
図3~6等に例示するように、前記化粧部材50は、前記係合部53を有して前記正面化粧部(51)の背面を支持する鉛直支持板52を備えていてもよい。これにより、機械正面部12に引っ掛かる係合部53を設けることができない様々な正面化粧部(51)を使用することができ、様々な正面化粧部(51)を有する冷蔵ショーケースを提供することができる。また、前記下部延出部(55)の前端55aは、前記鉛直支持板52よりも前側に出て前記正面化粧部(51)の下側に配置されてもよい。鉛直支持板52に背面を支持される正面化粧部(51)の下側に下部延出部(55)の前端55aが存在することにより、正面化粧部(51)が鉛直支持板52から脱落することが抑制される好適な構造を有する化粧部材50が提供される。前記下部延出部は、前記正面化粧部(51)の下端51bから後側へ延出し延出端55bが下側へ折り曲げられた下部延出板55でもよい。
【0015】
さらに、前記ショーケース本体10は、前記機械室C1を囲む機械室形成部11を有していてもよい。当該ショーケース本体10は、前記展示室C2の正面にある正面透明板(例えば正面ガラス21)を前記機械正面部12の上側に有していてもよい。図2~10に例示するように、前記機械正面部12は、前記機械室形成部11から取り外すことができるように前記機械室形成部11の前側に取り付けられる前側通路形成部材15を有していてもよい。前記冷蔵ショーケース1は、前記機械室形成部11と前記前側通路形成部材15との間の通路P1を介して前記機械室C1から前記正面透明板(21)に前記機械室C1の暖気W1を送る曇り止め送風部41をさらに備えていてもよい。前記機械正面部12の前側から前記化粧部材50が取り外された状態で前記機械室形成部11から前記前側通路形成部材15を取り外すことが可能でもよい。
以上の場合、冷蔵ショーケース1のユーザーは、前側通路形成部材15を有する機械正面部12の前側から化粧部材50を取り外し、機械室形成部11から前側通路形成部材15を取り外すと、機械室形成部11の正面が開放される。従って、上記態様は、正面側から機械室C1のメンテナンスをさらにし易くさせることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【0016】
また、機械室形成部11の正面が開放されることにより、通路P1に向かって斜め上向きの回転軸AX1を中心として回転する曇り止め用ファン42を機械室形成部11の正面に取り付けることができる。曇り止め送風部41は、このような曇り止め用ファン42を備えていてもよい。この場合、曇り止め用ファン42の風向きが通路P1に向かって斜め上向きとなる。従って、本態様は、曇り止めの効率を向上させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【0017】
(2)冷蔵ショーケースの具体例:
図1,2は、冷蔵ショーケースの例を示している。図1は、冷蔵ショーケース1を模式的に示す斜視図である。図2は、冷蔵ショーケース1の前後方向に沿った縦断面の例を模式的に示す断面図である。
冷蔵ショーケース1は、例えば、洋菓子店のような店舗等において販売用の商品等を展示室C2に入れて展示するために用いられる。
【0018】
図1,2に示す冷蔵ショーケース1は、機械室C1の上方に冷却室C3を有し、該冷却室C3の上方に展示室C2を有している。冷蔵ショーケース1は、これら(C1~C3)を囲むショーケース本体10、棚25、冷凍ユニット40、曇り止め送風部41、化粧部材50、蒸発器80、ファン81、着脱可能な床部材82、着脱可能な通気部材83、等を備えている。床部材82は、スノコや陳列板とも呼ばれる。機械室C1には、冷凍ユニット40が設置されている。冷凍ユニット40は、圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファン、等を有している。機械室C1の上方にある展示室C2において、棚25と床部材82に商品が載置される。展示室C2の下方にある冷却室C3には、展示室C2の空気A1を冷却室C3に通して展示室C2に戻すためのファン81、展示室C2から吸引された空気A1を冷却する蒸発器80、等が設置されている。冷凍ユニット40と蒸発器80は、冷凍サイクルを構成する。
【0019】
ショーケース本体10は、機械室C1を囲む機械室形成部11、機械室C1の正面にある機械正面部12、展示室C2と冷蔵ショーケース1の外部と隔てる透明板20、及び、展示室C2の下側にある冷却室形成部30を含んでいる。
透明板20は、展示室C2の正面にある正面ガラス21(正面透明板の例)、展示室C2の側面にある側面ガラス22(側面透明板の例)、及び、展示室C2の背面にあるスライド扉23を含んでいる。正面ガラス21は、機械正面部12の上側に存在する。スライド扉23には、透明ガラス板が嵌め込まれている。尚、透明板は、ガラスに限定されず、透明な樹脂板等でもよい。スライド扉23は左右に開閉可能であるので、ユーザーは冷蔵ショーケース1の背面から展示室C2に対して商品を出し入れすることができる。展示室C2は、床部材82及び通気部材83の上側にあり、透明板20、床部材82、及び、通気部材83により区画される。冷却室C3は、床部材82及び通気部材83の下側にあり、冷却室形成部30、床部材82、及び、通気部材83により区画される。
【0020】
機械正面部12は、下部に後退した蹴込み部13を有している。機械正面部12の前側には、化粧部材50が固定されている。また、機械正面部12は、機械室形成部11の前側に固定された前側通路形成部材15を有している。機械室形成部11と前側通路形成部材15との間には、機械室C1から正面ガラス21の正面に繋がる通路P1が形成されている。通路P1に向かって送風する曇り止め用ファン42を有する曇り止め送風部41は、正面ガラス21の結露を抑制するために、通路P1を介して機械室C1から正面ガラス21の正面に機械室C1の排熱(暖気W1)を送る。
【0021】
冷却室C3において、蒸発器80の前側にファン81が配置され、蒸発器80の後側に排水口86が配置されている。床部材82と正面ガラス21との間には吸い込み口85が設けられ、通気部材83は蒸発器80を通過した空気A1が通過する複数のスリット83h(通気穴の例)を有している。ファン81が動作すると、展示室C2の空気A1は、吸い込み口85から冷却室C3に入り、ファン81と蒸発器80を通過して冷気となる。該冷気は、複数のスリット83hを通過して展示室C2に入る。
冷却室形成部30の床面30aは、排水口86に向かって下向きに傾斜している。床面30aに落下した水は、排水口86からドレン管を介して冷却室C3外に排出される。
【0022】
ところで、冷蔵ショーケースの正面は、客に対面するため、意匠性が重要視される。図12は、比較例に係る冷蔵ショーケース901の化粧パネル950及びその周辺を模式的に示す拡大縦断面図である。図12に示す冷蔵ショーケース901において、機械室C1の前側となる正面ガラス21の下側は、リベットや溶接により固定された化粧パネル950で覆われている。冷蔵ショーケース901の正面には曇り止め用ファン942にアクセスするための窓等は無い。曇り止め用ファン942のメンテナンス時には、機械室C1の背面側を開けることにより曇り止め用ファン942のメンテナンスが行われる。しかし、冷凍ユニット40や電装部品が設置されている機械室C1の正面側に設けられている曇り止め用ファン942に機械室C1の背面側から手を伸ばすメンテナンスは、行い難い。一方で、冷蔵ショーケースの正面側の意匠性は、重要である。
本具体例では、機械正面部12の前側に着脱可能な化粧部材50を設けることにより、機械室C1の正面側から曇り止め用ファン42のメンテナンスを可能にしている。
【0023】
図3は、化粧部材50及びその周辺の例を模式的に示す拡大縦断面図である。図3の下部にある二点鎖線の囲み内には、正面化粧板51の下端51b及びその周辺の拡大図が模式的に示されている。図4は、化粧部材50の例を模式的に示す斜視図である。図4の下部にある二点鎖線の囲み内には、別の向きから化粧部材50が模式的に示されている。図5は、化粧部材50上部の引掛構造の例を模式的に示す拡大縦断面図である。図6は、化粧部材50下部の固定構造の例を模式的に示す拡大縦断面図である。図7は、化粧部材50が取り外された冷蔵ショーケース1の例を模式的に示す斜視図である。図8は、前側通路形成部材15の例を模式的に示す斜視図である。図9は、前側通路形成部材15が取り外された冷蔵ショーケース1の例を模式的に示す斜視図である。図10は、前側通路形成部材15が取り外された冷蔵ショーケース1の例を模式的に示す拡大縦断面図である。図11は、曇り止め送風部41の例を模式的に示す斜視図である。図11の下部にある二点鎖線の囲み内には、別の向きから曇り止め送風部41が模式的に示されている。
【0024】
図3~6に示すように、化粧部材50は、冷蔵ショーケース1の正面に現れる正面化粧板51(正面化粧部の例)、正面化粧板51の背面を支持する鉛直支持板52、及び、正面化粧板51の下端51bから後側へ延出した下部延出板55(下部延出部の例)を備えている。
鉛直支持板52は、板金を折り曲げることにより形成されており、上端52aに係合部53を有し、下端52bが後側へ折り曲げられている。鉛直支持板52において後側へ折り曲げられた部位を下部折曲部54と呼ぶことにする。鉛直支持板52は、係合部53と下部折曲部54との間で正面化粧板51の背面を支持する。
【0025】
鉛直支持板52の係合部53は、正面化粧板51の上端51aから上側へ延出し、機械正面部12から外すことができるように機械正面部12に引っ掛かる。図5等に示す係合部53は、正面化粧板51の上端51aから前方斜め上(前側に傾いた上側)に延出している。機械正面部12は、係合部53が隠れる状態で該係合部53が引っ掛かる引掛部14を備えている。引掛部14は、係合部53を引き抜くことができるように挿入可能なスリット状の差込穴14hを有している。
図6等に示す下部折曲部54は、正面化粧板51の下端51bから後方へ延出している。下部折曲部54と下部延出板55とは、下部折曲部54の下面54bが下部延出板55の上面55cに当たっている状態で例えばリベット等といった締結具により互いに固定されている。従って、鉛直支持板52の下端52bが下部延出板55の上面55cに合わせられて該下端52bが下部延出板55の上面55cに固定されている。
【0026】
正面化粧板51には、カラーガラス、板金にシートを貼り付けたもの、木材、等を用いることができる。正面化粧板51の背面は、例えば、両面テープ等の接着手段により鉛直支持板52の正面に貼り付けられている。例えば、カラーガラス自体には、機械正面部12に引っ掛かる係合部53を設けることが困難である。鉛直支持板52に係合部53を設けることにより、係合部53を設けることができない様々な正面化粧板51を使用することができる。
【0027】
下部延出板55は、板金を折り曲げることにより形成されており、正面化粧板51の下端51bから後側へ延出し延出端55bが下側へ折り曲げられている。下部延出板55において下側へ折り曲げられた部位を後部折曲部56と呼ぶことにする。後部折曲部56には、小ねじであるビスV1(ねじの例)で蹴込み部13の前面13aに取り付けるためのねじ挿通穴56hがある。蹴込み部13には、ビスV1と螺合するねじ穴13hがある。後部折曲部56と蹴込み部13とは、後部折曲部56の背面56bが蹴込み部13の前面13aに当たっている状態でビスV1により互いに固定されている。従って、差込穴14hに係合部53が挿入された状態で下部延出板55における延出端55bの背面56bが蹴込み部13の前面13aに合わせられて蹴込み部13に後部折曲部56がビスV1で固定されることにより、延出端55bが蹴込み部13から外すことができるように蹴込み部13に固定されている。下部延出板55の前端55aは、鉛直支持板52よりも前側に出て正面化粧板51の下側に配置されている。鉛直支持板52に背面を支持される正面化粧板51の下側に下部延出板55の前端55aが存在することにより、正面化粧板51が鉛直支持板52から脱落することが抑制される。
【0028】
図7に示すように化粧部材50が機械正面部12から取り外されると、機械室形成部11から取り外すことができるように機械室形成部11の前側に取り付けられた前側通路形成部材15が現れる。図8に示すように、前側通路形成部材15は、大部分を占める鉛直部15c、及び、該鉛直部15cの上縁から後方斜め上(後側に傾いた上側)に延出した傾斜部15dを含んでいる。鉛直部15cには、図7に示すビスV2で機械室形成部11の前面に取り付けるためのねじ挿通穴15hがある。傾斜部15dは、通路P1を流れる暖気W1を正面ガラス21の正面に誘導する機能を有する。前側通路形成部材15の下端15bは、一段後退し、ビスV2で機械室形成部11の前面に取り付けるためのねじ挿通穴15hがある。機械室形成部11には、ビスV2と螺合するねじ穴11hがある。前側通路形成部材15の上端15aは、前側へ折り曲げられ、前側通路形成部材15が機械室形成部11に取り付けられると機械正面部12において正面ガラス21近傍の部位に当たるようにされている。尚、機械室形成部11に取り付けられた前側通路形成部材15は化粧部材50で隠されるので、ビスV2で前側通路形成部材15が機械室形成部11に固定されても冷蔵ショーケース1の正面側の意匠に影響しない。
以上より、前側通路形成部材15は、機械正面部12の前側から化粧部材50が取り外された状態でビスV2を外すことにより機械室形成部11から取り外すことが可能である。
【0029】
図9,10に示すように前側通路形成部材15が機械室形成部11から取り外されると、機械室形成部11から取り外すことができるように機械室形成部11の前側に取り付けられた曇り止め送風部41が現れる。曇り止め送風部41は、通路P1に向かって斜め上向きの回転軸AX1を中心として回転する曇り止め用ファン42、及び、該曇り止め用ファン42を支持する支持板43を含んでいる。
曇り止め用ファン42の風向きは、通路P1に向かって斜め上向きである。従って、正面ガラス21の曇り止めを効率よく機能させることができる。
【0030】
図10,11に示すように、支持板43は、曇り止め用ファン42が嵌められた開口43oを有するファン配置部43c、及び、該ファン配置部43cの上縁から前方斜め上に延出した前方斜め上延出部43dを含んでいる。支持板43の上端43aは、上方へ折り曲げられ、ビスV3で機械室形成部11の前面に取り付けるためのねじ挿通穴43h1がある。機械室形成部11には、ビスV3と螺合するねじ穴がある。支持板43の下端43bは、下方へ折り曲げられ、前側通路形成部材15とともにビスV2で機械室形成部11の前面に取り付けるためのねじ挿通穴43h2がある。
以上より、曇り止め送風部41は、機械室形成部11から前側通路形成部材15が取り外された状態でビスV3を外すことにより機械室形成部11から取り外すことが可能である。
【0031】
(3)機械室正面側のメンテナンス方法の具体例:
冷蔵ショーケース1において曇り止め送風部41等のメンテナンスを行う作業者は、冷蔵ショーケース1の運転を停止してからメンテナンス作業を開始する。まず、図1~3,5,6に示すように機械正面部12の前側に化粧部材50が取り付けられている状態において、作業者は、化粧部材50を支えながら、蹴込み部13に後部折曲部56を固定しているビスV1を外す。ビスV1が外れると、作業者は、化粧部材50の係合部53を機械正面部12の差込穴14hから係合部53を引き抜くことにより、機械正面部12から化粧部材50を取り外すことができる。このように、機械正面部12の前側に取り付けられた化粧部材50の下部延出板55の延出端55bを蹴込み部13から外し係合部53を機械正面部12から外すことにより、機械正面部12の前側から化粧部材50を取り外すことが可能である。
【0032】
図7に示すように機械正面部12から化粧部材50が取り外された状態において、作業者は、前側通路形成部材15を支えながら、機械室形成部11に前側通路形成部材15を固定しているビスV2を外す。これにより、機械室形成部11から前側通路形成部材15が取り外され、図9,10に示すように曇り止め送風部41が現れる。そこで、作業者は、機械室形成部11に曇り止め送風部41を固定しているビスV3を外すことにより、機械室形成部11から曇り止め送風部41を取り外すことができる。
【0033】
曇り止め送風部41のメンテナンス後、作業者は、図9,10に示すように曇り止め送風部41を機械室形成部11にビスV3で固定することができる。曇り止め送風部41の固定後、作業者は、図7に示すように前側通路形成部材15を機械室形成部11にビスV2で固定することができる。前側通路形成部材15の固定後、作業者は、図1~3,5,6に示すように化粧部材50を機械正面部12の前側にビスV1で固定することができる。
【0034】
以上説明したように、機械正面部12の前側から化粧部材50を取り外すことができるので、冷蔵ショーケース1の正面側から機械室C1、例えば、曇り止め送風部41のメンテナンスを行うことができる。また、機械室形成部11の前側から前側通路形成部材15を取り外すことができるので、冷蔵ショーケース1の正面側から機械室C1のメンテナンスを行い易い。ここで、冷蔵ショーケース1を正面から見た時、化粧部材50において機械正面部12に引っ掛かっている係合部53は隠れ、化粧部材50において蹴込み部13に固定されている後部折曲部56は見え難い。従って、本冷蔵ショーケース1は、正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることができ、サービス性を向上させることができる。
【0035】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、曇り止め用ファン42の回転軸AX1は、通路P1に向かって斜め上向きが好ましいものの、水平な前向き等でもよい。
冷蔵ショーケース1に正面ガラス21の曇り止め機能は無くてもよいため、冷蔵ショーケース1に曇り止め送風部41が無くてもよく、冷蔵ショーケース1に前側通路形成部材15が無くてもよい。
【0036】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、正面側の意匠性を維持しながら機械室正面側のメンテナンスをし易くさせることが可能な冷蔵ショーケース等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…冷蔵ショーケース、
10…ショーケース本体、
11…機械室形成部、
12…機械正面部、13…蹴込み部、13a…前面、14…引掛部、14h…差込穴、
15…前側通路形成部材、15a…上端、15b…下端、
20…透明板、
21…正面ガラス(正面透明板の例)、22…側面ガラス(側面透明板の例)、
30…冷却室形成部、30a…床面、
40…冷凍ユニット、41…曇り止め送風部、42…曇り止め用ファン、
43…支持板、43a…上端、43b…下端、43o…開口、
50…化粧部材、
51…正面化粧板(正面化粧部の例)、51a…上端、51b…下端、
52…鉛直支持板、52a…上端、52b…下端、
53…係合部、54…下部折曲部、54b…下面、
55…下部延出板(下部延出部の例)、55a…前端、55b…延出端、55c…上面、
56…後部折曲部、56b…背面、
AX1…回転軸、
C1…機械室、C2…展示室、C3…冷却室、
P1…通路、
V1…ビス(ねじの例)、
W1…暖気。
図1
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