(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051937
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】冷蔵ショーケース
(51)【国際特許分類】
F25D 21/14 20060101AFI20240404BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F25D21/14 L
A47F3/04 F
A47F3/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158335
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208503
【氏名又は名称】大和冷機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】熊本 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B110
3L048
【Fターム(参考)】
3B110AA07
3B110BA04
3B110CA09
3B110CA20
3L048AA06
3L048AA09
3L048BA01
3L048BB02
3L048CA01
3L048CB02
3L048CB06
3L048CB07
3L048DA02
3L048FA01
3L048GA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構造の露受けで結露水を排水管から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供する。
【解決手段】ショーケース本体10は、展示室C2と冷蔵ショーケース1の外部と隔てる透明板20、及び、機械室C1を囲む機械室形成部11を有し、機械室C1及び展示室C2を囲んでいる。露受け60は、透明板20の下縁20bに沿った溝60gを有し、機械室形成部11の外壁11wに固定され、透明板20から機械室形成部11の外壁11wに流下した結露水D1を受ける。排水管65は、露受け60の端部(71b)から落下する結露水D1を開口66から通す。露受け60の溝60gの横断面は、最下部60zにおいて下に凸の向きに折れ曲がっている。平面視において、露受け60において結露水D1が落下する端部(71b)における溝60gの最下部60zが排水管65の開口66の範囲内にある。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースであって、
前記展示室と前記冷蔵ショーケースの外部と隔てる透明板、及び、前記機械室を囲む機械室形成部を有し、前記機械室及び前記展示室を囲むショーケース本体と、
前記透明板の下縁に沿った溝を有し、前記機械室形成部の外壁に固定され、前記透明板から前記機械室形成部の外壁に流下した結露水を受ける露受けと、
前記露受けの端部から落下する前記結露水を開口から通す排水管と、を備え、
前記露受けの溝の横断面は、最下部において下に凸の向きに折れ曲がり、
平面視において、前記露受けにおいて前記結露水が落下する前記端部における前記溝の最下部が前記排水管の開口の範囲内にある、冷蔵ショーケース。
【請求項2】
前記露受けは、第一の傾斜露受け、及び、第二の傾斜露受けを含み、
前記第一の傾斜露受けは、平面視において前記排水管の開口の範囲内に前記溝の最下部が存在する排水管側端部、及び、該排水管側端部とは反対の第一の離隔端部を有し、該第一の離隔端部から前記排水管側端部に向かって下がり、
前記第二の傾斜露受けは、前記第一の傾斜露受けの上方に前記溝の最下部が存在する重なり端部、及び、該重なり端部とは反対の第二の離隔端部を有し、該第二の離隔端部から前記重なり端部に向かって下がり、
前記第二の傾斜露受けにおける前記重なり端部の前記溝の最下部から落下する前記結露水を前記第一の傾斜露受けが受け、該第一の傾斜露受けにおける前記排水管側端部の前記溝の最下部から前記排水管の開口に前記結露水が落下する、請求項1に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項3】
前記透明板は、前記展示室の正面にある正面透明板、及び、前記展示室の側面にある側面透明板を含み、
前記露受けは、前記正面透明板の下縁に沿った溝を有して前記機械室形成部の前面に固定された正面露受け、及び、前記側面透明板の下縁に沿った溝を有して前記機械室形成部の側面に固定された側面露受けを含み、
前記側面露受けの前端における前記溝の最下部は、前記正面露受けの上方にあり、
前記側面露受けの前端における前記溝の最下部から落下する前記結露水を前記正面露受けが受け、該正面露受けの端部における前記溝の最下部から前記排水管の開口に前記結露水が落下する、請求項1に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項4】
前記側面露受けは、後端から前端に向かって下がっている、請求項3に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項5】
前記ショーケース本体は、前記露受けが固定された前記機械室形成部の外壁との間に通路を形成する通路形成部を有し、
前記冷蔵ショーケースは、前記通路を介して前記機械室から前記透明板に前記機械室の暖気を送る曇り止め送風部をさらに備え、
前記通路にある前記露受けの下面には、前記溝に対応する形状の突条があり、該突条の頂部を起点として前記機械室形成部の外壁から離れるほど上がる傾斜面が存在する、請求項1又は請求項2に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項6】
前記ショーケース本体は、前記露受けが固定された前記機械室形成部の側面との間に通路を形成する通路形成部を有し、
前記冷蔵ショーケースは、前記通路を介して前記機械室から前記側面透明板に前記機械室の暖気を送る曇り止め送風部をさらに備え、
前記側面露受けは、前記機械室形成部の側面に固定された鉛直面部、及び、該鉛直面部の下縁を起点として前記機械室形成部の側面から離れるほど上がる傾斜面部とを有し、
前記通路にある前記側面露受けの下面には、前記傾斜面部に対応する傾斜面が存在する、請求項3又は請求項4に記載の冷蔵ショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
洋菓子店等の店舗では、ケーキ等の商品を冷やした状態で展示するために冷蔵ショーケースが用いられている(例えば特許文献1参照)。店舗に来た客に対面する位置にある正面ガラスや側面ガラスが曇ることを防ぐため、商品が入る展示室の下方にある機械室の暖気をガラス表面に吹き付ける曇り止め用ファンが機械室に設けられている。店舗の閉店時間には、冷蔵ショーケースのお手入れをするため、展示室から商品を取り出して冷蔵ショーケースの運転を停止することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵ショーケースの周囲の湿度が高かったり、冷蔵ショーケースの運転停止により曇り止め用ファンが停止したりすると、ガラス表面に結露水が付着することがある。ガラス表面の結露水が流下すると、結露水が暖気の吹き出しスリットから機械室に落下する可能性がある。製造の手間を考慮して、簡易な構造の露受けで結露水を排出させることが望まれる。
【0005】
本発明は、簡易な構造の露受けで結露水を排水管から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵ショーケースは、冷凍ユニットが設置された機械室の上方に展示室を有する冷蔵ショーケースであって、
前記展示室と前記冷蔵ショーケースの外部と隔てる透明板、及び、前記機械室を囲む機械室形成部を有し、前記機械室及び前記展示室を囲むショーケース本体と、
前記透明板の下縁に沿った溝を有し、前記機械室形成部の外壁に固定され、前記透明板から前記機械室形成部の外壁に流下した結露水を受ける露受けと、
前記露受けの端部から落下する前記結露水を開口から通す排水管と、を備え、
前記露受けの溝の横断面は、最下部において下に凸の向きに折れ曲がり、
平面視において、前記露受けにおいて前記結露水が落下する前記端部における前記溝の最下部が前記排水管の開口の範囲内にある、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構造の露受けで結露水を排水管から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】冷蔵ショーケースの例を模式的に示す斜視図。
【
図2】冷蔵ショーケースの前後方向に沿った縦断面の例を模式的に示す断面図。
【
図3】通路形成部が取り外された冷蔵ショーケースの例を模式的に示す斜視図。
【
図4】露受けと排水管との位置関係の例を模式的に示す平面図。
【
図6】第一の傾斜露受けの例を模式的に示す斜視図。
【
図7】第二の傾斜露受けの例を模式的に示す斜視図。
【
図10】排水構造の例を模式的に示す拡大右側面図。
【
図11】比較例に係る冷蔵ショーケースにおける正面露受けと側面露受けとの位置関係を模式的に示す斜視図。
【
図12】比較例に係る冷蔵ショーケースの排水構造の要部を模式的に示す拡大斜視図。
【
図13】比較例に係る冷蔵ショーケースの排水構造を模式的に示す拡大正面図。
【
図14】比較例に係る冷蔵ショーケースの排水構造を模式的に示す拡大右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~14に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0011】
図1~10に例示するように、本技術の一態様に係る冷蔵ショーケース1は、冷凍ユニット40が設置された機械室C1の上方に展示室C2を有する冷蔵ショーケース1であって、ショーケース本体10、露受け60、及び、排水管65を備える。前記ショーケース本体10は、前記展示室C2と前記冷蔵ショーケース1の外部と隔てる透明板20、及び、前記機械室C1を囲む機械室形成部11を有し、前記機械室C1及び前記展示室C2を囲んでいる。前記露受け60は、前記透明板20の下縁20bに沿った溝60gを有し、前記機械室形成部11の外壁11wに固定され、前記透明板20から前記機械室形成部11の外壁11wに流下した結露水D1を受ける。前記排水管65は、前記露受け60の端部(例えば排水管側端部71b)から落下する前記結露水D1を開口66から通す。前記露受け60の溝60gの横断面は、最下部60zにおいて下に凸の向きに折れ曲がっている。平面視において、前記露受け60において前記結露水D1が落下する前記端部(71b)における前記溝60gの最下部60zが前記排水管65の開口66の範囲内にある。
【0012】
展示室C2と冷蔵ショーケース1の外部と隔てる透明板20に付着した結露水D1は、機械室形成部11の外壁11wに流下すると露受け60に入る。ここで、露受け60の溝60gの横断面は、底面が水平ではなく、最下部60zにおいて下に凸の向きに折れ曲がっている。これにより、露受け60内の結露水D1は、溝60gの最下部60zに沿って流れる。平面視において露受け60において結露水D1が落下する端部(71b)における溝60gの最下部60zが排水管65の開口66の範囲内にあることにより、露受け60の端部(71b)から結露水D1が落下して排水管65に入る。従って、本態様は、露受け60の制作コストが抑えられ、簡易な構造の露受け60で結露水D1を排水管65から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【0013】
ここで、冷蔵ショーケース1は、冷却機能を有するショーケースであればよく、展示室C2の温度が氷点を下回らないショーケースに限定されず、展示室C2の温度が氷点を下回るショーケースでもよい。
透明板20の下縁20bに沿った溝60gは、位置に応じて下縁20bとの距離が徐々に変わってもよく、下縁20bと平行であることに限定されない。従って、溝60gは、傾斜していてもよい。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
図3,4等に例示するように、前記露受け60は、第一の離隔端部71aから排水管側端部71bに向かって下が第一の傾斜露受け71、及び、第二の離隔端部72aから重なり端部72bに向かって下がる第二の傾斜露受け72を含んでいてもよい。前記第二の傾斜露受け72における前記重なり端部72bの前記溝61g(60g)の最下部61z(60z)から落下する前記結露水D1を前記第一の傾斜露受け71が受けてもよく、該第一の傾斜露受け71における前記排水管側端部71bの前記溝61g(60g)の最下部61z(60z)から前記排水管65の開口66に前記結露水D1が落下してもよい。本態様は、露受け60の制作コストがさらに抑えられ、より効果的に結露水D1を排水管65から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
ここで、本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
前記透明板20は、前記展示室C2の正面にある正面透明板(例えば正面ガラス21)、及び、前記展示室C2の側面にある側面透明板(例えば側面ガラス22)を含んでいてもよい。前記露受け60は、前記機械室形成部11の前面11aに固定された正面露受け61、及び、前記機械室形成部11の側面11cに固定された側面露受け62を含んでいてもよい。前記側面露受け62の前端62aにおける前記溝62g(60g)の最下部62z(60z)から落下する前記結露水D1を前記正面露受け61が受けてもよく、該正面露受け61の端部(71b)における前記溝61g(60g)の最下部61z(60z)から前記排水管65の開口66に前記結露水D1が落下してもよい。本態様も、より効果的に結露水D1を排水管65から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。また、側面露受け62が後端62bから前端62aに向かって下がっている態様は、露受け60の制作コストがさらに抑えられ、さらに効果的に結露水D1を排水管65から排出させることが可能な冷蔵ショーケースを提供することができる。
【0016】
図2,9,10に例示するように、前記ショーケース本体10は、前記露受け60が固定された前記機械室形成部11の外壁11wとの間に通路P1を形成する通路形成部15を有していてもよい。前記冷蔵ショーケース1は、前記通路P1を介して前記機械室C1から前記透明板20に前記機械室C1の暖気W1を送る曇り止め送風部41をさらに備えていてもよい。前記通路P1にある前記露受け60の下面には、
図5~7等に例示するように、前記溝60gに対応する形状の突条60pがあり、該突条60pの頂部60tを起点として前記機械室形成部11の外壁11wから離れるほど上がる傾斜面60sが存在してもよい。本態様は、機械室C1から展示室C2に繋がる通路P1にある露受け60の傾斜面60sに沿って暖気W1が流れるので、曇り止めの効率を向上させることができる。
また、前記側面露受け62は、前記機械室形成部11の側面11cに固定された鉛直面部63、及び、該鉛直面部63の下縁(例えば頂部62t)を起点として前記機械室形成部11の側面11cから離れるほど上がる傾斜面部64とを有していてもよい。前記通路P1にある前記側面露受け62の下面には、前記傾斜面部64に対応する傾斜面60sが存在してもよい。本態様は、鉛直面部63の下縁(62t)を起点とする傾斜面部64に対応する傾斜面60sに沿って暖気W1が流れるので、機械室C1から展示室C2に暖気W1が流れやすくなり、曇り止めの効率をさらに向上させることができる。
【0017】
(2)冷蔵ショーケースの具体例:
図1,2は、冷蔵ショーケースの例を示している。
図1は、冷蔵ショーケース1を模式的に示す斜視図である。
図2は、冷蔵ショーケース1の前後方向に沿った縦断面の例を模式的に示す断面図である。
冷蔵ショーケース1は、例えば、洋菓子店のような店舗等において販売用の商品等を展示室C2に入れて展示するために用いられる。
【0018】
図1,2に示す冷蔵ショーケース1は、機械室C1の上方に冷却室C3を有し、該冷却室C3の上方に展示室C2を有している。冷蔵ショーケース1は、これら(C1~C3)を囲むショーケース本体10、棚25、冷凍ユニット40、曇り止め送風部41、化粧部材50、蒸発器80、ファン81、着脱可能な床部材82、着脱可能な通気部材83、等を備えている。床部材82は、スノコや陳列板とも呼ばれる。機械室C1には、冷凍ユニット40が設置されている。冷凍ユニット40は、圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファン、等を有している。機械室C1の上方にある展示室C2において、棚25と床部材82に商品が載置される。展示室C2の下方にある冷却室C3には、展示室C2の空気A1を冷却室C3に通して展示室C2に戻すためのファン81、展示室C2から吸引された空気A1を冷却する蒸発器80、等が設置されている。冷凍ユニット40と蒸発器80は、冷凍サイクルを構成する。
【0019】
ショーケース本体10は、機械室C1を囲む機械室形成部11、機械室C1の正面にある機械正面部12、展示室C2と冷蔵ショーケース1の外部と隔てる透明板20、及び、展示室C2の下側にある冷却室形成部30を含んでいる。
透明板20は、展示室C2の正面にある正面ガラス21(正面透明板の例)、展示室C2の側面にある側面ガラス22(側面透明板の例)、及び、展示室C2の背面にあるスライド扉23を含んでいる。正面ガラス21は、機械正面部12の上側に存在する。スライド扉23には、透明ガラス板が嵌め込まれている。尚、透明板は、ガラスに限定されず、透明な樹脂板等でもよい。スライド扉23は左右に開閉可能であるので、ユーザーは冷蔵ショーケース1の背面から展示室C2に対して商品を出し入れすることができる。展示室C2は、床部材82及び通気部材83の上側にあり、透明板20、床部材82、及び、通気部材83により区画される。冷却室C3は、床部材82及び通気部材83の下側にあり、冷却室形成部30、床部材82、及び、通気部材83により区画される。
【0020】
機械正面部12は、下部に後退した蹴込み部13を有している。機械正面部12の前側には、化粧部材50が固定されている。また、ショーケース本体10は、機械室形成部11の外側に通路P1を形成する通路形成部15を有している。通路P1は、機械室C1から正面ガラス21及び側面ガラス22の表面に繋がる通路P1が形成されている。通路P1に向かって送風する曇り止め用ファン42を有する曇り止め送風部41は、正面ガラス21及び側面ガラス22の結露を抑制するために、通路P1を介して機械室C1から正面ガラス21及び側面ガラス22の表面に機械室C1の排熱(暖気W1)を送る。
【0021】
冷却室C3において、蒸発器80の前側にファン81が配置され、蒸発器80の後側に排水口86が配置されている。床部材82と正面ガラス21との間には吸い込み口85が設けられ、通気部材83は蒸発器80を通過した空気A1が通過する複数のスリット83h(通気穴の例)を有している。ファン81が動作すると、展示室C2の空気A1は、吸い込み口85から冷却室C3に入り、ファン81と蒸発器80を通過して冷気となる。該冷気は、複数のスリット83hを通過して展示室C2に入る。
冷却室形成部30の床面30aは、排水口86に向かって下向きに傾斜している。床面30aに落下した水は、排水口86からドレン管を介して冷却室C3外に排出される。
【0022】
ところで、店舗の閉店時間には、冷蔵ショーケース1のお手入れをするため、展示室C2から商品を取り出して冷蔵ショーケース1の運転を停止することがある。冷蔵ショーケース1の周囲の湿度が高かったり、冷蔵ショーケース1の運転停止により曇り止め用ファン42が停止したりすると、正面ガラス21や側面ガラス22の表面に結露水が付着することがある。ガラス表面の結露水が流下すると、結露水が暖気W1の吹き出しスリットから機械室C1に落下する可能性がある。そこで、機械室形成部11の外壁に露受けを設けることが考えられる。
【0023】
図11は、比較例に係る冷蔵ショーケースにおける正面露受け961と側面露受け962との位置関係を模式的に示す斜視図である。
図12は、比較例に係る冷蔵ショーケースの排水構造の要部を模式的に示す拡大斜視図である。
図13は、比較例に係る冷蔵ショーケース901の排水構造を模式的に示す拡大正面図である。
図14は、比較例に係る冷蔵ショーケース901の排水構造を模式的に示す拡大右側面図である。
図11,12,14に示す正面露受け961は、正面ガラス21の水平向きの下縁21bに沿った溝を有し、機械室形成部11の前面11aに固定されている。
図11~13に示す側面露受け962は、側面ガラス22の水平向きの下縁22bに沿った溝を有し、機械室形成部11の側面11cに固定されている。
【0024】
両露受け(961,962)は、板金を折り曲げることにより上方が開口した溝状に形成され、水平に配置されている。正面露受け961は、側面露受け962よりも低い位置にある。
図14に示すように、正面露受け961の底面961hは、水平である。従って、正面露受け961は、結露水D1が滞留し易い構造である。正面露受け961の下部には、底面961hに対応する水平面部963が形成されている。水平面部963には、底面961hに開口961oを有する排水管965が溶接により固定されている。正面露受け961の両端には、結露水D1の漏出を防ぐように折り曲げられた水漏れ防止部961pが形成されている。
図13に示すように、側面露受け962の底面962hも、水平である。従って、側面露受け962も、結露水D1が滞留し易い構造である。側面露受け962の下部には、底面962hに対応する水平面部964が形成されている。側面露受け962の後端962bには、結露水D1の漏出を防ぐように折り曲げられた水漏れ防止部962p(
図11参照)が形成されている。側面露受け962の前端962aには、結露水D1を側面露受け962から正面露受け961に落下させるために下方へ折り曲げられた結露水案内部962d(
図12参照)が形成されている。
【0025】
以上より、正面ガラス21の表面に付着した結露水D1は、機械室形成部11の前面11aに落下すると、正面露受け961に入る。側面ガラス22の表面に付着した結露水D1は、機械室形成部11の側面11cに落下すると側面露受け962に入る。側面露受け962内の結露水D1は、結露水案内部962dに案内されて正面露受け961に入る。正面露受け961内の結露水D1は、排水管965から機械室の排水皿(不図示)に排出される。
【0026】
図11,12に示すように、正面露受け961は、折り曲げられた水漏れ防止部961pが必要な複雑な形状であるうえ、排水管965の溶接も必要である。側面露受け962は、折り曲げられた水漏れ防止部962pや結露水案内部962dが必要な複雑な形状である。従って、露受け(961,962)を形成するために、多くの手間がかかる。
また、露受け(961,962)は、曇り止め用の暖気W1が流れる通路P1にある。
図13に示すように、水平面部964を有する側面露受け962は、暖気W1の流れを妨げる構造である。
図14に示すように、水平面部963を有する正面露受け961も、暖気W1の流れを妨げる構造である。いずれの露受け(961,962)も、ガラス(21,22)の曇り止めにとって非効率的な構造となっている。
【0027】
本具体例では、露受け60(
図3~10参照)の溝の横断面を「断面V字状」のように最下部において下に凸の向きに折れ曲がった形状にすることにより、排水管の溶接を不要にさせ、露受けを形成する手間を少なくさせ、ガラス(21,22)の曇り止めの効率を向上させている。また、露受け60を水平から傾斜させることにより、露受け端部の水漏れ防止部を不要にさせ、露受けを形成する手間をさらに少なくさせている。
【0028】
図3は、通路形成部15が取り外された冷蔵ショーケース1の例を模式的に示す斜視図である。
図4は、露受け60と排水管65との位置関係の例を模式的に示す平面図である。
図4の上部にある二点鎖線の囲み内には、露受け60と排水管65の位置関係の斜視図が模式的に示されている。
図5は、側面露受け62の例を模式的に示す斜視図である。
図5の下部にある二点鎖線の囲み内には、別の向きから側面露受け62が模式的に示されている。尚、
図5に示す側面露受け62は右側面露受け74であり、左側面露受け73は右側面露受け74と左右対称の形状である。
図6は、第一の傾斜露受け71の例を模式的に示す斜視図である。
図7は、第二の傾斜露受け72の例を模式的に示す斜視図である。
図8は、排水構造の例を模式的に示す拡大斜視図である。
図9は、排水構造の例を模式的に示す拡大正面図である。
図10は、排水構造の例を模式的に示す拡大右側面図である。
【0029】
図3~10に示すように、冷蔵ショーケース1は、ショーケース本体10、曇り止め送風部41、露受け60、排水管65、及び、排水皿68を備えている。
図2,9,10に示すように、ショーケース本体10は、露受け60が固定された機械室形成部11の外壁11wとの間に通路P1を形成する通路形成部15を有している。ここで、機械室形成部11の外壁11wは、前面11aと側面11cを総称している。
【0030】
曇り止め送風部41は、通路P1を介して機械室C1から透明板20の表面に機械室C1の暖気W1を送る。ここで、機械室C1の正面に設けられた曇り止め送風部41は、機械室形成部11の前面11aと通路形成部15との間の通路P1を介して機械室C1から正面ガラス21の正面に機械室C1の暖気W1を送る。機械室C1の側面に設けられた曇り止め送風部41は、機械室形成部11の側面11cと通路形成部15との間の通路P1を介して機械室C1から側面ガラス22の表面に機械室C1の暖気W1を送る。
【0031】
露受け60は、透明板20の水平向きの下縁20bに沿った溝60gを有し、機械室形成部11の外壁11wに固定され、透明板20から機械室形成部11の外壁11wに流下した結露水D1を受ける。ここで、露受け60は正面露受け61と側面露受け62を総称し、透明板20は正面ガラス21と側面ガラス22を総称し、下縁20bは下縁21b,22bを総称し、溝60gは溝61g,62gを総称している。正面露受け61は、正面ガラス21の下縁21bに沿った溝61gを有し、機械室形成部11の前面11aに固定されている。正面露受け61は、第一の傾斜露受け71と第二の傾斜露受け72を総称している。側面露受け62は、側面ガラス22の下縁22bに沿った溝62gを有し、機械室形成部11の側面11cに固定されている。側面露受け62は、左側面露受け73と右側面露受け74を総称している。
【0032】
排水管65は、第一の傾斜露受け71の排水管側端部71bから落下する結露水D1を上部の開口66から通す。排水管65の下端は、機械室C1の排水皿68に向けられている。排水管65には、塩化ビニル樹脂といった合成樹脂の曲げ可能なホース等を用いることができる。
【0033】
図5~7等に示すように、露受け60の溝60gの横断面は、いずれも最下部60zにおいて下に凸の向きに折れ曲がっている。露受け60の溝60gの横断面は、断面V字状といえる。通路P1にある露受け60の下面には、溝60gに対応する形状の突条60pがあり、該突条60pの頂部60tを起点として機械室形成部11の外壁11wから離れるほど上がる傾斜面60sが存在する。ここで、最下部60zは最下部61z,62zを総称し、突条60pは突条61p,62pを総称し、頂部60tは頂部61t,62tを総称し、傾斜面60sは傾斜面61s,62sを総称している。
図6,7,10に示すように、正面露受け61には、溝61gに対応する形状の突条61pがあり、該突条61pの頂部61tを起点として機械室形成部11の前面11aから離れるほど上がる傾斜面61sが存在する。
図5,9に示すように、側面露受け62には、溝62gに対応する形状の突条62pがあり、該突条62pの頂部62tを起点として機械室形成部11の側面11cから離れるほど上がる傾斜面62sが存在する。
露受け60に傾斜面60sがあることにより、機械室C1から展示室C2に繋がる通路P1にある露受け60の傾斜面60sに沿って暖気W1が流れるので、曇り止めの効率が向上する。
【0034】
図10に示すように、正面露受け61の頂部61tは、機械室形成部11の前面11aから離隔している。従って、正面露受け61は、
図6,7に示すように、機械室形成部11の前面11aに固定された鉛直面部63、該鉛直面部63の下縁を起点として頂部61tまで下がる下り傾斜面部64a、及び、該下り傾斜面部64aの下縁(頂部61t)を起点として機械室形成部11の前面11aから離れるほど上がる上り傾斜面部64bとを有している。一方、
図9に示すように、側面露受け62は、機械室形成部11の側面11cに固定された鉛直面部63、及び、該鉛直面部63の下縁(頂部62t)を起点として機械室形成部11の側面11cから離れるほど上がる傾斜面部64とを有している。通路P1にある側面露受け62の下面には、傾斜面部64に対応する傾斜面60sが存在する。
機械室形成部11の側面11cに固定された鉛直面部63の下縁(62t)を起点とする傾斜面部64に対応する傾斜面60sに沿って暖気W1が流れるので、機械室C1から展示室C2に暖気W1が流れやすくなり、曇り止めの効率がさらに向上する。
【0035】
第一の傾斜露受け71は、
図4,8等に示すように平面視において排水管65の開口66の範囲内に溝61gの最下部61zが存在する排水管側端部71b、及び、該排水管側端部71bとは反対の第一の離隔端部71aを有している。
図3等に示すように、第一の傾斜露受け71は、第一の離隔端部71aから排水管側端部71bに向かって下がっている。従って、正面ガラス21の水平向きの下縁21bに沿った第一の傾斜露受け71は、右側となるほど徐々に下縁21bから離れている。
第二の傾斜露受け72は、
図4,8等に示すように第一の傾斜露受け71における第一の傾斜露受け71の上方に溝61gの最下部61zが存在する重なり端部72b、及び、該重なり端部72bとは反対の第二の離隔端部72aを有している。第二の傾斜露受け72は、第二の離隔端部72aから重なり端部72bに向かって下がっている。この重なり端部72bにおける溝61gの最下部61zが平面視において排水管65の開口66の範囲内にある。正面ガラス21の水平向きの下縁21bに沿った第二の傾斜露受け72は、左側となるほど徐々に下縁21bから離れている。
【0036】
側面露受け62は、
図3,10に示すように後端62bから前端62aに向かって下がっている。従って、側面ガラス22の水平向きの下縁22bに沿った側面露受け62は、前側となるほど徐々に下縁22bから離れている。側面露受け62の前端62aにおける溝62gの最下部62zは、いずれも正面露受け61の上方にある。左側面露受け73の前端62aにおける溝62gの最下部62zは、第一の傾斜露受け71の上方にある。右側面露受け74の前端62aにおける溝62gの最下部62zは、第二の傾斜露受け72の上方にある。
【0037】
(3)結露水の流れの例:
冷蔵ショーケース1の周囲の湿度が高かったり、冷蔵ショーケース1の運転停止により曇り止め用ファン42が停止したりすると、正面ガラス21や側面ガラス22の表面に結露水D1が付着することがある。以下、結露水D1の流れの例を説明する。
【0038】
正面ガラス21の正面に付着した結露水D1は、機械室形成部11の前面11aに落下すると、第一の傾斜露受け71又は第二の傾斜露受け72に入る。左側の側面ガラス22の表面に付着した結露水D1は、機械室形成部11の左側の側面11cに落下すると、左側面露受け73に入り、溝62gの最下部62zに沿って前端62aの方へ流れる。右側の側面ガラス22の表面に付着した結露水D1は、機械室形成部11の右側の側面11cに落下すると、右側面露受け74に入り、溝62gの最下部62zに沿って前端62aの方へ流れる。
【0039】
左側面露受け73内の結露水D1は、左側面露受け73の前端62aにおける溝62gの最下部62zから第一の傾斜露受け71に落下する。左側面露受け73は断面V字状であり、平面視において左側面露受け73の前端62aにおける溝62gの最下部62zが第一の傾斜露受け71の範囲内にあるので、左側面露受け73の前端62aから第一の傾斜露受け71に結露水D1が確実に落下する。第一の傾斜露受け71は、左側面露受け73の前端62aから落下する結露水D1を受ける。
右側面露受け74内の結露水D1は、右側面露受け74の前端62aにおける溝62gの最下部62zから第二の傾斜露受け72に落下する。右側面露受け74は断面V字状であり、平面視において右側面露受け74の前端62aにおける溝62gの最下部62zが第二の傾斜露受け72の範囲内にあるので、右側面露受け74の前端62aから第二の傾斜露受け72に結露水D1が確実に落下する。第二の傾斜露受け72は、右側面露受け74の前端62aから落下する結露水D1を受ける。
【0040】
第二の傾斜露受け72内の結露水D1は、溝61gの最下部61zに沿って重なり端部72bの方へ流れ、重なり端部72bにおける溝61gの最下部61zから第一の傾斜露受け71に落下する。第二の傾斜露受け72は断面V字状であり、平面視において第二の傾斜露受け72の重なり端部72bにおける溝61gの最下部61zが第一の傾斜露受け71の範囲内にあるので、第二の傾斜露受け72の重なり端部72bから第一の傾斜露受け71に結露水D1が確実に落下する。第一の傾斜露受け71は、第二の傾斜露受け72の重なり端部72bから落下する結露水D1を受ける。
【0041】
第一の傾斜露受け71内の結露水D1は、溝61gの最下部61zに沿って排水管側端部71bの方へ流れ、排水管側端部71bにおける溝61gの最下部61zから排水管65に落下する。第一の傾斜露受け71は断面V字状であり、平面視において第一の傾斜露受け71の排水管側端部71bにおける溝61gの最下部61zが排水管65の開口66の範囲内にあるので、第一の傾斜露受け71の排水管側端部71bから排水管65に結露水D1が確実に落下する。排水管65は、第一の傾斜露受け71の排水管側端部71bから落下する結露水D1を開口66から通し、機械室C1の排水皿68に導く。
【0042】
傾斜露受け(71,72)や側面露受け(73,74)は断面V字状であるので、排水管65の溶接は不要であり、露受けを形成する手間が少なくて済み、ガラス(21,22)の曇り止めの効率が向上する。また、傾斜露受け(71,72)や側面露受け(73,74)が水平から傾斜しているので、傾斜露受け(71,72)の離隔端部(71a,72a)や側面露受け(73,74)の後端62bに水漏れ防止部は不要であり、露受けを形成する手間がさらに少なくて済む。従って、本冷蔵ショーケース1は、露受け60の制作コストが抑えられ、簡易な構造の露受け60で結露水D1を排水管65から排出させることができる。
【0043】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、側面露受け62の形状は、鉛直面部63と傾斜面部64を有する形状が好ましいものの、正面露受け61に類似する形状等でもよい。
冷蔵ショーケース1に側面ガラス22の曇り止め機能は無くてもよいため、冷蔵ショーケース1の側面部に曇り止め送風部41が無くてもよく、冷蔵ショーケース1に側面露受け62が無くてもよい。
【0044】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、簡易な構造の露受けで結露水を排水管から排出させることが可能な冷蔵ショーケース等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…冷蔵ショーケース、
10…ショーケース本体、
11…機械室形成部、11a…前面、11c…側面、11w…外壁、
15…通路形成部、
20…透明板、20b…下縁、
21…正面ガラス(正面透明板の例)、21b…下縁、
22…側面ガラス(側面透明板の例)、22b…下縁、
30…冷却室形成部、30a…床面、
40…冷凍ユニット、41…曇り止め送風部、42…曇り止め用ファン、
60…露受け、
60g…溝、60p…突条、60s…傾斜面、60t…頂部、60z…最下部、
61…正面露受け、
61g…溝、61p…突条、61s…傾斜面、61t…頂部、61z…最下部、
62…側面露受け、62a…前端、62b…後端、
62g…溝、62p…突条、62s…傾斜面、62t…頂部、62z…最下部、
63…鉛直面部、64…傾斜面部、64a…下り傾斜面部、64b…上り傾斜面部、
65…排水管、66…開口、68…排水皿、
71…第一の傾斜露受け、71a…第一の離隔端部、71b…排水管側端部、
72…第二の傾斜露受け、72a…第二の離隔端部、72b…重なり端部、
73…左側面露受け、74…右側面露受け、
C1…機械室、C2…展示室、C3…冷却室、
D1…結露水、
P1…通路、
W1…暖気。